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未定稿
社保審―医療保険部会 資料1
第7回 (H16.5.13)

高齢者医療制度に関する論点案

事項 論点案 当面の検討の方向性(案)
<基本的な考え方> ○社会保険方式の維持
我が国の医療保険制度においては、社会保険方式の下で、被用者保険加入者以外の者を全て国民健康保険でカバーすることにより「国民皆保険」を達成した。
老人保健制度創設以前においては、「国民皆保険」の下で地域や職域における「連帯」を基礎として形成された保険集団(保険者)ごとに医療費を賄い、また、高齢者については、その医療費や所得の実態から見て、同世代内だけで医療費を支えることは困難であり、保険原理の下で、個々の保険者の内部において「世代間の連帯を含めた保険集団全体の連帯」に立って、医療費の負担が行われていた。
しかし、高齢化の進展や税財源による老人医療費無料化等により医療費全体に占める高齢者医療費の割合が高まるとともに、産業構造の変化により国民健康保険に加入する若齢者が相対的に減少する一方、退職により被用者保険から国民健康保険に移行する者が増加したことから、
1)  老人加入率の格差によって生じた、被用者保険と国民健康保険の間での老人医療費の負担の不均衡を是正することを目的として
2)  医療保険からの拠出金、老人医療費に着目した公費負担、患者一部負担で賄う
老人保健制度を創設した。
以上のように、老人保健制度は従来よりあった「保険集団ごとの世代間の連帯」を国民皆保険という、より大きな枠組みで維持したものといえる。
さらに、全人口に占める70歳以上の者の比率が将来の75歳以上の者の比率の水準であることから後期高齢者への重点化を図るため、平成14年制度改正において75歳への対象年齢引上げと公費負担割合の5割への引上げを段階的に行うこととした。
65歳以上の者を対象とし、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度
老人保健制度・退職者医療制度の廃止
医療保険給付全体における公費の割合を維持
世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化
 
心身の特性を踏まえた高齢者医療の在り方という観点からみて、75歳で制度を分けることをどのように考えるか。
後期高齢者については、地域において医療サービスと介護サービスとの適切な分担が行われ、高齢者に相応しいQOLが確保されるようにすべきではないか。

新たな高齢者医療制度の創設に当たって、後期高齢者については、
1) 生理的能力等が低下していることに起因する医療・受療行動の特性を考慮し、国民皆保険の枠組みを堅持しつつも後期高齢者をそれ以外の集団と分けた上で、後期高齢者に相応しい負担の仕組みを採るとともに、
2) 給付面においても、地域において医療サービスを介護サービスと連携して提供することにより生活の質(QOL)の向上を図ることが必要であることに着目して、
独立した保険制度とする。(これにより、医療費負担における財政責任を担う主体(保険者)が明確化される。)
この場合、後期高齢者については、保険制度としてみた場合定型的にリスクが高い集団であることから、その特性に相応しい負担の仕組みとして、
公費負担を5割としつつ、
後期高齢者自ら現役世代との均衡を考慮した適切な水準の保険料を負担した上で、
若齢者から「社会連帯的な保険料」としての支援を求める。
一方、前期高齢者については被用者本人として働いている者も多いことなどから、従来の医療保険制度での加入関係を残すことをどのように考えるか。
前期高齢者については、生活習慣病の外来受療率が、65歳の前後で途切れることなく壮年期から一貫して増加しているという傾向がみられる中で、制度設計に当たっては、むしろ予防に重点を置くためにも、医療保険制度での加入関係を残した上で、保健事業をはじめとする保険者機能を強化すべきではないか。
 65歳以上75歳未満の前期高齢者は、
1) 医療のあり方から見て、重症化予防を含めた「予防」の観点を重視しつつ、QOLの向上や医療費適正化を図るべきであるとともに、
2) 経済的にみても現役世代と遜色のない負担能力を有することに着目し、
現役世代と区分することのない被保険者として従来通りの保険集団に属することが妥当である。
 これまで老人保健制度に達しない高齢退職者(退職に伴い被用者保険から国民健康保険に移行する者)については、医療費が高まる年齢層となる一方で、その医療費については国民健康保険の若齢者に重い負担となるという問題を解決するため、被用者保険OBについては被用者保険が支えるとの考え方に基づき退職者医療制度において負担を行ってきた。
 しかしながら、今後の退職年齢である65歳以上の前期高齢者については、雇用の流動化を背景として被用者保険が支えるグループとそうでないグループの境目が曖昧になっていることから、医療費が高い点に着目し健康づくりや効率的で適切な医療サービスの在り方を求めつつ、当該年齢層で被保険者がいずれの保険制度に加入・移行しようとも、公平な負担の下に医療が保障されるよう調整を行う制度に移行する。この場合、各保険制度において高齢被扶養者を含め保険料負担を求める。
 併せて、前期高齢期に達する前から、個々の保険者が保健事業を実施し健康づくりに努めることやそれによる医療費適正化の成果が、調整に際して有利になる仕組みを検討する。
<保険料>
保険料の水準
現役世代との均衡を考慮した適切な負担
低所得者への配慮
保険料徴収の在り方
年金制度が成熟する中で、一般的に高齢者も現役世代と比べて経済的に遜色のない負担能力を持っていることから、前期高齢者、後期高齢者ともに、新たな体系で現役世代との均衡を考慮した適切な水準の保険料負担を求める。この場合、
1) 後期高齢者医療制度においては、まず後期高齢者自身が一定の保険料を負担することを前提とした上で現役世代から支援を求めることから、保険料負担については、受益に応じた負担(応益)と負担能力に応じた負担(応能)を組合わせることが適切ではないか。
2) 前期高齢者についても、これに準じた保険料負担を求めることが適切ではないか。
3) なお、前期高齢期の被扶養者は、国民皆年金制度の下で、年金という定型的な収入があることから負担を求め得るものであり、高齢被扶養者の取扱が子供を含めた若齢期の被扶養者に対して保険料負担を求めることにつながらないのではないか。
<社会連帯的な保険料>
「社会連帯的な保険料」の性格
「社会連帯的な保険料」の費用負担の方法
後期高齢者医療制度における「社会連帯的な保険料」の保険料としての性格をどのように考えるか。
1) 従来から、「世代間の連帯」を含めた「保険集団全体の連帯」により国民皆保険制度が成立している。したがって、その中で、医療・受療行動の特性に着目しそれ以外の集団と区別して後期高齢者を独立させたとしても、国民皆保険を成立させる中では、同様の連帯が成り立つのではないか。
2) 国民皆保険制度を採る我が国において、後期高齢者は、自らが現役世代であったときに、当時の高齢者の給付を確保するために保険料を負担しており、いわば順送りで後期高齢者以外の世代の負担が充てられることによって給付が確保されている。
3) したがって、後期高齢者の医療・受療特性に着目し、公費負担5割の下で高齢者自身の保険料を先充てするとともに、2)を踏まえ、後期高齢者に対する給付を確保するためのそれ以外の世代からの拠出を「社会連帯的な保険料」と位置づけることができるのではないか。
4) この場合、あわせて医療保険における滞納問題についても考えることが必要ではないか。

「社会連帯的な保険料」を負担する現役世代の理解・納得を得られためには、次の点を満たす仕組みとする必要があるのではないか。
1) 老人医療費が世代間でどのように負担されているかについて、考え方を分かりやすくする。
2) 国民健康保険・被用者保険の保険者が何らかの形で関与できる。
3) 医療費適正化に向けた保険者の努力が自らの制度の医療費負担を軽減するのみならず、高齢者医療制度における負担に反映される。
<増大する高齢者の医療費の適正化>

介護保険との関係
医療提供との関係
保健事業との関係
高齢者、とりわけ後期高齢者の状態に相応しい医療サービスの在り方を検討し、医療費の適正化を図るべきではないか。
その際、急性期の医療から退院後の在宅における医療・介護に至るまでのサービスについて、変化する高齢者の状態に応じた適切なサービスが提供されるよう、医療保険と介護保険の役割分担と連携の在り方についても検討すべきではないか。
75歳未満の医療保険制度においては、後期高齢者の医療費適正化、さらには介護予防にもつながることを念頭に置いて、生活習慣病対策など保険者による保健事業を強化すべきではないか。

地域における一連の流れとしての、質の高い効率的・効果的な健康づくり・医療・介護の提供
医療保険事業と介護保険事業支援計画・健康増進計画の整合性確保
地域における医療提供の機能分化・連携の促進
保険者による保健事業の推進
保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者の役割分担・連携
医療費の地域特性の把握・分析・評価
関係者の協議の場
医療費適正化に向けての取組
生理的能力・生活機能の低下が進む後期高齢者については、その心身の状態に相応しい医療サービスの在り方を検討するとともに、介護との役割分担を明確にした上で連携を強化すべきではないか。この場合、介護保険導入後のサービスの移行状況やいわゆる「社会的入院」についてどのように評価するか。

前期高齢期・後期高齢期を通じて患者のQOL向上や医療費の適正化を図る観点から、地域における医療提供の機能分化・連携を促進すべきではないか。
具体的には、地域の医療資源の状況をより詳細に明らかにし、変化する患者の状態に応じ、急性期から退院後の在宅等に至るまでのサービスが確保されるよう、医療提供(医療機関・病床)の機能分化と連携を強化することを検討すべきではないか。

このような地域におけるサービス提供体制の構築に、保険者がより積極的に関与できるようにしていくべきではないか。

加入者の健康度やQOLを向上させるとともに、医療費の適正化に資するよう、生活習慣病対策を中心とする効果的な健康づくりを、地域(市町村による老人保健事業)と保険者が一体的に取り組む体制を構築し、両者の役割分担と連携を明らかにしつつ、保険者自らがより積極的に推進できるようにすべきではないか。
生活習慣病の症状の進行は血圧や血糖値など一定の指標の変化により把握し得るものであることから、個々人の健康時からの健診データを活用すれば、より効果的な予防が可能である。今後、現役世代から前期高齢期については、発症・重症化予防や医療費適正化について一定の成果を上げている事業・手法を検証しつつ、地域・保険者あげて、より効果的な保健事業を展開すべきではないか。
また、医療保険制度においては、保険者のこのような保健事業への努力や医療費適正化の成果が高齢者医療制度の医療費の負担に反映される制度を構築すべきではないか。


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