審議会議事録  厚生労働省ホームページ

  厚生科学審議会 疾病対策部会
  第17回 臓器移植委員会  議事録
日時   平成16年5月6日(木)
15:00〜17:15
場所   中央合同庁舎5号館
専用第22会議室(18階)
事務局(井内補佐)
 定刻になりましたので、ただいまより第17回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。
 本日は山勢委員からご欠席、山本委員からは遅れるとのご連絡をいただいております。本日は議事に即しまして(社)日本臓器移植ネットワーク菊地チーフコーディネーターに参考人としてご出席いただいております。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 1枚めくっていただきますと、配布資料一覧でございます。
  資料1 平成16年度臓器移植対策予算の概要
  資料2 臓器移植患者負担金の医療費控除適用について
  資料3 あっせん機関の業務に関する指示に基づく改善報告書
  資料4 心臓レシピエント選択基準について
  資料5 カード・インコンプリートの問題について
  資料6 臓器提供施設拡大について
 となってございます。資料のご不備がありましたら、事務局までお申し出ください。
 それでは、議事進行を委員長よろしくお願いいたします。

黒川委員長
 資料よろしいでしょうか。それでは久しぶりですが、本日の議事に入る前に委員の交代がありましたので、ご紹介いたします。日本医師会から澤委員が出ておられましたが、医師会の執行部の交代で橋本信也先生が日本医師会の常任理事ということで新たに委員に就任されました。一言どうぞ

橋本委員
 ご紹介いただきました橋本でございます。4月に執行部が変わりました。私の担当は学術・生涯教育・国際関係などでございます。以前、慈恵医大の内科におりました。どうぞよろしくお願いいたします。

黒川委員長
 それでは、報告事項等から行きます。先生方ご存じのように、医療制度については大きな変化が来て、国立大学が法人化されるということで大変ゴタゴタしていると。それから、大学病院のほうは診療が丸めになってきたということですね。フレキシブルな対応をしていた病院はそれによって、いまのところはいいんですけど、いずれ財務省は財源が減ってくるとぎしぎし締めるという陰謀があるのかもしれない。いろんなことが一度に起きている。そして、今年から卒後研修が2年間義務化されて、なるべく自分のところではなくて外でやろうということになると、学生がどういうところがいい研修が受けられるのだろうかということで、自分たちで探しだしますので、大学病院ではパニックになってるところもないわけじゃない。なぜかというと、大学では一生懸命研修をしていたわけじゃないからですけど。そういう話になると、世の中が変わってくるわけですが、ご存じのように、最近新聞を賑わせてるのは、北海道大学とか東北大学の上納金とお医者さんの派遣。医局制度が悪いんだ、なんていうんだけれども、それはお医者さんも厚労省もよく知ってたことなんだけど、そういういままでのいろんな問題が社会問題化してきた。これは医局制度が悪いわけじゃなくて、いままでの制度がもうもたなくなっているという根本的な問題なのです。医療費も32兆円なんていうけど、国が出してるのは10兆円で、残りは選べない保険制度ということで、選べないんだからどうしようもないところもある。自己負担も増やそう、保険料も増やそう。みんなますます元気がなくなる。不安でしょうがないという世の中になって、これでいいのかね、ということです。そんなことで日本は大転換期ですけれども、なかなか政策的に変われないというところに問題がある。ということで、さて、どうしたらいいかというのは、私もしょっちゅう書いてますけど、皆さんご意見あると思いますが、そういうわけで今日は久しぶりの臓器移植委員会ということですが、医師会の執行部も交代して、是非期待したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、報告事項ということで、いま医療界に激動が走ってるんだけど、これは医療界だけじゃなくて、もちろん、銀行から何から、日本の経済もいま上向きになっていますけど、中国への輸出が増えた分だけの話で何も変わってないんじゃないの、なんて書かれてますけど、どうでしょうか。
 そんなことで長々話しても仕方がないので、今日はまず、報告事項の16年度の予算の概要ということですね。医療費控除その他については、法的な枠組みについての報告を事務局からしていただきます。よろしくお願いいたします。

塚本室長
 それでは私から、予算と医療費控除の話、2点ご報告させていただきます。まず、資料116年度臓器移植対策関係予算でございます。1年前に15年度予算について臓器移植ネットワークに対する補助金の増額等、ご説明させていただいたかと思いますが、16年度におきましても、臓器移植対策関係全体で4億8千万から、四捨五入しますと同じ4億8千万でございますが、若干の増額を図っております。15年度におきましては、事業内容のeにありますように、システム改修関係経費を単年度で4200万円ほど手当てをしておりましたので、これが単年度ということで0に戻る。そういったものを含めて若干の増額まで戻しているという状況です。
 具体的にどういったところに増額したかと申しますと、主な増減要因のところですが、(1)あっせん業務関係従事者の配置の見直し (2)臓器提供の推進のためにそれぞれの地域で提供施設の医師やネットワークのコーディネーター等が相互に連携を図るような事業分ということで4700万円を計上したところです。
 2ページが全体的なイメージということですが、15年度に単年度経費だった分を経常的な経費に振り替える形で各地域における臓器提供推進のための連携を図るような事業への補助という形に振り替えているということです。
 次に、資料2ですが、実はいま現在でも臓器移植ネットワークは登録に当たっての登録料、そして、移植に当たって10万円ほどの患者負担金を患者さんからいただいているということですが、時期的には1年半ほど前になりますが、税制改正の中で、この患者負担金を医療費控除の対象にするようにという要望をしておりました。それを認めるという方向になりまして、2ページをご覧いただきますと、私どもの健康局長から国税庁課税部長に昨年12月付で、能書きはいろいろと書いてありますが、要は、患者負担金、平成15年分から所得税、あるいは住民税の医療費控除の対象となるということについて、照会文書を投げ、国税当局から1ページのような、それで差し支えないという形で回答をいただいているということでございます。15年の所得税の医療費控除は16年2月から3月にかけての確定申告で処理するという形になっていますので、15年分を12月ってずいぶん遅いなと思われるかもしれませんが。12月に回答を得て、1月から臓器移植ネットワークで再度、医療費控除の取り扱いと領収証を発行して患者さんにお送りして、患者さんのほうで2月から3月の確定申告の中で処理をしていただくという形で処理をさせていただいたところでございます。以上、予算と税制についてのご報告でございます。

黒川委員長
 ありがとうございました。何かご質問その他、ございますか。これは普通だと医療費の控除なんだけど、それとは別になるのかな、払ってるところが別だから。

塚本室長
 通常、病院に払うようなものは医療費控除という扱いになっているのですが、これまでネットワークが患者さんからいただいていたものについては必ずしも医療費控除の扱いが受けられていなかったということもあって、今回、医療費控除の対象になるように整理をしたということでございます。

黒川委員長
 よろしいでしょうか。医療機関だとそういうのはみんな持っていて控除しているんだけど、ネットワークが受け方ですから、こういうふうにしていただくというのは大変いいことだと思います。そのほかに、予算関係はどうですか、資料1、こんなの出されてもなかなかよくわからない、というところはたしかにあるんだけど。
 そのほかに、移植のいろんなプロモーションすることについての研究費はまた別の厚生科学のようなのがありますよね。それはいくつか、心臓移植、臓器移植の推進、あるいは現状の調査とか。

井内補佐
 厚生科学研究でございます。

黒川委員長
 大島先生、何か。もらってなかったっけ。

大島委員
 もらっています。

黒川委員長
 ちゃんと役に立つ調査研究してるの。

大島委員
 やっています。もっとたくさん欲しいんですけれども。

黒川委員長
 ということでありますが、何かありますか。よろしいでしょうか。
 それではその次に、腎移植におけるHLA型の取り扱いに関する誤運用ということがマスコミその他で報告されまして、ネットワークから5月6日付で厚生労働大臣に最終報告書が提出されていますので、これについて今日は菊地コーディネーターが来ておられますので、よろしくお願いいたします。

菊地参考人
 それでは資料3に基づきまして、当委員会にはまだ報告をしておりませんので、今日私から簡単に報告をさせていただきたいと思います。
 資料3の3ページですが、まず経緯からお話させていただきます。
 平成16年1月15日 支部のコーディネーターよりダブル抗原とブランクの入力に関する問い合わせがございました。ダブル抗原といいますのは、例えば、Aローカスですと、A9、A9と同じものが揃った場合にダブル抗原という呼び方をしております。
 そのドナーがダブル抗原の場合のみ検索を行った場合に不具合があることが判明いたしました。それは平成14年1月10日から運用されている腎移植希望者の選択基準でのレシピエント検索を行った事例です。これは平成14年1月10日は従来行っておりましたHLAのマッチ方式からミスマッチ方式に切り替わった日でございます。
1月16日 各支部の主席コーディネーターへ連絡し、現状を報告いたしました。
1月17日 最終的な検証結果をとりまとめ、ネットワークの緊急幹部会議を行っており  ます。と同時に、対象のレシピエントに連絡を始めました。
1月18日 平成14年1月10日から運用している腎移植希望者選択基準のプログラムをミスマッチに変更した際に不具合が発覚し、2002年1月10日から2004年1月15日までの提供事例 130件を検証した結果、5件についてミスがあり、その結果、6名の腎移植希望者に本来移植を受ける可能性があったことを公表いたしました。これは資料12〜15ページに公表の資料を添付しております。
1月17日〜1月27日 本来腎臓移植を受けることができた可能性があった6名の方々に、電話による事情説明と謝罪を行った後、直接訪問して謝罪を行いました。
1月21日 平成13年12月25日に通知された「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正について」を基に、ミスマッチ方式に切り替わった期間の選択の再検証を開始したところ、この通達に記載されていない取り扱いがありましたので、その部分についての取り扱いを厚生労働省の臓器移植対策室に疑義照会をいたしました。
再検証については、1件につき3名から5名が担当して、HLAのミスマッチ方式についてはわからない部分は専門家に尋ねるという形をとりました。事例 130件について、この時点では報告した5件以外に選定ミスはございませんでした。
1月26日 疑義照会に対する厚生労働省からの回答を受けて、そのとおりの条件付けで、ミスマッチをカウントした場合に正しいカウントがされない場合があることが判明しました。これは19ページの表をご覧ください。例4〜6については、当初発覚したミスマッチのカウントの不具合です。例1〜3については、新たな疑義解釈から発生した不具合です。
簡単に申し上げますと、ドナーが例えば、A9、A9という抗原を持っている場合に、例1の、同じAローカスでA2、A11を持っている方のところに移植が行われますと、本来であれば、A9というのは1つの抗原として取り扱いますので、1ミスマッチというカウントが行われるべきであったのですが、双方のA9からA11とA2を読みに行くというようなコンピュータのアルゴリズムを組んでいましたので、ネットワークのカウント方式では2個ともミスマッチであるというカウントがなされていたものです。
1月26日〜2月9日 この間、それらのアルゴリズムを正しく反映させて検査をした結果、公表した5件6名のうち、2件2名については順位どおりの選択が行われていることがわかりましたので、最終的には腎移植希望者で移植を受けられる可能性があった方は3件4名となりました。
2月10日 この件について、中間報告として、16ページの資料を元に記者発表をしました。
結果的には、1月18日以降、本報告書では16件となっておりますが、5月1日現在で38件の検索確認を行い、31名の方から提供をいただいております。それらについてはすべて現地と医療本部でリアルタイムでダブルチェックを行うなど、再発防止体制をとって移植を行っております。
 また、5月6日本日付の改善報告にありますように、他の臓器についてもすべて検証を行いました。
 心臓や肝臓など、腎臓以外の他臓器については、待機日数やサイズの適合などを手計算、そして、血液型、緊急度等を目視でチェックするなど、すべての条件について確認しましたところ、コンピュータには選択基準が適正に反映されており、間違いなく運用されていることが確認できました。
 最後に再発防止策ですが、これらについては、先ほど申し上げましたように、レシピエント検索を当該支部と医療本部において、ダブルチェックを目視でも行うこと。それから、正しいプログラムをコンピュータに反映させますが、まずデモ機を作成していただいて、多くの確認を行ってから正しい基準のものに切り替える。また、コーディネーターのHLAに関する習熟に努力をするということを報告しております。
 現時点では、不具合で報告させていただいた腎臓の患者さん、それ以外の方選定ミスはございませんでした。他臓器については、すべて適正に行われていることが確認されたことを報告させていただきます。以上です。

黒川委員長
 ありがとうございます。そういうわけで、選択のクライテリアというか、標準というか、マッチの数からミスマッチの数に移したんですけれども、そうした理由はなぜかというと、日本も含めて、移植の結果、組織適合性がどのぐらい合えばいいのかという話と、合わない分がどのくらい少なければいいかという話の結果が、どんどん出てきますから、それによって全部、例えば6つ合うということではなくて、2つ合わないのがあっても大丈夫だよといっても差がないよ、ということになってくるとシステムを替えるわけですが、そのときにコンピュータが全部変えるかというところについての問題が生じているということによって、不利を受けた人もいるんだけれども、もともと直さなければその人たちは不利だったか、不利でなかったかというのはまた別の問題になるわけで、そういう話が一旦変わると、コンピュータの不具合もあるんだけれども、いろんな理由があって、直したところに不十分なところがあったと。これは全部目視をしていればまた違うんだけれども、それだけのマンパワーがあるかというと、ないわけなので、そういう問題があるということで、改善した結果、再チェックして、ミスが起こった理由についてもわかりましたので、それを直した結果、そこについてはそういうミスはなくなりました、ということであります。
 ただ、これはそういう一つのポリシーを決めたことについてのコンピュータの問題ですから、バイオロジカルにはこれがミスになったかどうかということは、必ずしもそうじゃなくて、そういうプログラムでは不利を受けた人がいるんだけれども、元のプログラムであればどうだったかというのは、別の問題だということであります。
 おわかりでしょうか。もし、そうであれば、事務局から膵腎移植その他ありますので。

井内補佐
 委員長のおっしゃったとおりだと思います。いまお話がありました経緯で事が運んでおりましたが、ちょっと事務局から補足でご説明させていただきます。
 資料の23ページを見ていただきますと、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準になっています。これがいま委員長からご説明いただきましたルールそのものでございます。前提条件と優先条件がありまして、その下のところのHLA型の適合度というところでミスマッチ数に合わせて点数がついて順位付けがなされるという位置付けのものでございました。実際に、こういった形でレシピエント選択基準というものが出されておりまして、このルールの中で選ばれております。
 さらに、25ページ、具体的には26ページからになりますが、HLA型の取り扱いということで、解説という形で資料をつけさせていただいております。これは、先ほど菊地コーディネーターから詳細なご説明がございましたが、そういったことが書かれたものです。
 32ページは、当時、平成13年に出た選択基準の取り扱いですが、一部補足しておいたほうがよりわかりやすいのではないかという部分が出て参りましたので、これも今回の見直しと併せて、我々のほうでさせていただいたということです。基本的に趣旨は全く変わっておりませんで、補足してよりわかりやすく直したものです。
 一番後ろ、39ページに、新旧表をつけてございます。要は、完全に補足という位置付けと思っていただければと思います。実際、これについて、出すのは臓器移植ネットワークが主になりますが、こういった形で出させていただきたいと思っております。
 レシピエント選択基準自体はここの委員会の下の作業班で決めていただきまして、ここでご承認いただくという手続きを踏んでおります。今回のこれにつきましても、趣旨は同じですが、訂正して出させていただきたいと考えております。以上です。

黒川委員長
 よろしいでしょうか。なんとかく雰囲気がわかっていただければと思いますが、それ程左様に、医学の進歩もそうだし、HLAももともとは抗体で測っていたんですが、だんだんDNAでわかるといった技術の進歩もありますし、実際のリアルタイムでかなりいろんなことをやらなくちゃならないので、コーディネーターも実際にドナーが出たとき、レシピエントを選ぶ、電話をする、返事を貰う、さあ、ほんとにマッチするだろうかとか、いろんなことがありますので、大変なんですが、あるルールを決めたらば、そのルールにしたがってやらざるをえない。そのルールを変えた根拠は何かというと、ある程度データが集まってきたときに、こういう根拠で同じというのであれば変えましょう、ということをここで最終的に決めているわけですが、例えば、毎日20件ずつ移植があるとして、アメリカだと腎臓だけで年間12000 ありますから、毎日20あるとすると、ある日、ルールを変えると、前日までのルールだったら私が受けられたのに、変えたお蔭でできなかったという人はいくらでも出てくるわけですよ。だから、それはルールを変えるという根拠と、変えたことによって不利益が出る人は、ルールを変えたことのポリシーは間違ってなくても、それによって利益、不利益が出てくるのはやむをえないので、どうして変えたんだといわれたら、こういう根拠で変えました、という話はあり得るんだけど、これはそういう意味ではルールを変えたときのコンピュータのミスと、バイオロジカルないろんなミスマッチのところがあったので、それは修正いたしました、ということですので、しょっちゅうチェックをしているというのはすごく大事なことですので、そういうことをやっていますという話でございます。
 あとは何も言うことはありませんか。膵腎移植の話もいいのね。

井内補佐
 はい、基本的に同じです。

黒川委員長
 じゃあ、そういうことで、いままでは報告事項ですので、調査の結果このようになりました、正しく直しました。その結果、このようになりました、ということですので、ありがとうございました。ご苦労様でした。菊地さん、ありがとう。
 それでは、今日の議題に移りまして、まず北村委員から「心臓のレシピエントの選択基準について」資料が提出されておりまして、これについて、北村委員から資料4にしたがって説明していただきます。よろしくお願いします。

北村委員
 それでは資料4の4ページをご覧いただきたいと思います。
 心臓移植希望者、レシピエントの選択基準ですが、これはおそらく平成9年10月にいまの健康局長から出されたものと考えていいですね。ですので、この選択基準は心臓移植がわが国で実際に始まる以前に形づくられてきたものなんですが、4ページの一番上の(2)医学的緊急度というところに(ア)から(エ)までの4つの患者さんをStatus1、緊急度の高いものとして優先する、という決まりになっています。この中で、(ア)(イ)(ウ)はこのままいけますが、(エ)の部分ですが「ICU、CCU等の重症室に収容され、かつ、カテコラミン等、」この等というところが非常に重要なところでございまして、「等の強心薬の持続的な点滴投与が必要な状態」ということになっています。
 ここで、この数年来、新たな薬として、1ページに戻っていただきまして、PDEIII(ホスホダイエステレースIII)という阻害剤のアムリノンとかミルリノンという薬が登場いたしまして、血管拡張性と強心作用があるということで、もちろん保険収載にもなっておりますし、非常に好んで末期的心不全の患者に使用されるようになっています。
 そこで、従来のカテコラミンと新たに併合する場合も極めて多い薬ですが、単独でも持続投与されているのが現状でして、このPDEIII阻害剤、主に現在ではミルリノンという薬ですが、これの投与を続けている患者さんをStatus1と判断してよいかどうか、ということです。いろいろ施設間で取りあつかいに違いが出てきているということです。ご存じのように、心臓移植のレシピエントの客観的な判断を日本循環器学会の心臓移植委員会の適応検討小委員会というのがございまして、そこでやっていますが、そこでの取り扱いもPDEIII阻害剤の持続投与を、カテコラミン等の等のところに入れているとしています。そして、既に昨年度から現在の心臓移植の施設に新たに加わった4施設でも、入れている施設もあれば、判断していない施設もあるというようなことで、これはネットワークとしても、あるいは循環器学会としても正式に決めなくてはならないという意見が出て参りました。現在、2ページにあります7施設が心臓移植の施設として承認されておりまして、それぞれのところでレシピエントを登録しています。その中で意見を確認させていただきましたが、PDEIII阻害剤をカテコラミン等の等のところに含めていきたい、よいと考える施設が全施設でありました。
 それと同時に、こういう話し合いにおきまして、実際、心臓移植が始まりますと、補助人工心臓の使用期間が当初とても考えられないくらい長期化して、それで延命しているという事態もあって、人工心臓をつけている患者の限界的な期間を日本でははるかに越えるケースが大変多いということから、補助人工心臓をつけている患者さんのStatusを上げる、例えば、米国のような形の1A、1Bというような形に分けてはかどうかという意見がありましたが、一応ここでは賛成派と反対派、それに、条件設定がないと反対であるという非賛成というのがありますが、こういう形で意見が分かれていました。
 そこで、心臓移植のレシピエントの適応基準をそろそろ見直してみて、検討してみてはどうかという意見が多かったのでありますが、アムリノン等のPDEIII阻害剤のカテコラミン等と中に含めるという形で曖昧にしておくのではなくて、今後また新たな薬が登場してくる可能性があります。今度はPDEV阻害剤も有効であるとか、そういったものが出てくる可能性もあるので、明確にカテコラミン、あるいは併合もよろしいですが、薬品の名称をStatus1の(エ)に書き加えていかただけないかという要望がございました。
 それから、補助人工心臓の取り扱いはいろいろ問題もございますが、条件設定ができれば、それを高いStatusにもっていくことも検討すべきではないかという意見もありましたので、このあたり小委員会を開くことが妥当であるかどうかのご判断をいただきたいということでございます。以上でございます。

黒川委員長
 いかがでしょうか。医学の進歩というか、治療もいろいろ新しい薬剤も出てくるし、新しい治験も出てくると、重症の心筋症とか、心臓の病気も新しい薬剤、あるいは治療法がいろいろ開発されてくると、従来とは合わない、合わないわけじゃない、さらに有力であれば、そういうのも加えてもいいのではないかという状況になってくると。そうすると、どういうふうにしましょうか、ということですね。いままでこの委員会では、そういうことがあれば、小委員会がありますから、その小委員会で検討していただいて、どんなものですかねという話を諮問して、また返していただいて、それをまた検討して認めていただければ、それは専門家の集まりですから、そういうことでやっていくのがこの委員会の役割ではないかというかっこうになるので、それを検討したらどうかということでありますが、相川先生、何かありますか。

相川委員
 ちょっと質問させていただいてよろしいですか。この(エ)のカテコラミン等、のところですけども、カテコラミン製剤に関しては、ドースは規定してないんでしょうか。例えば、ドーパミンのスモールドース、3〜5μg/kg/分ぐらいのものもこれに入るかどうかということ、ちょっと質問ですが。

北村委員
 これは規定されていませんですね。

相川委員
 そうしますと、イノトロピックアクションがないですが、ランセットの論文などでは否定されてるんですけど、スーモルドースドーパミン持続投与するということは日本ではまだ行われている可能性がありますし、そういうものを投与しておけば順位が上がるということになってしまうわけですか。

北村委員
 おっしゃるとおりです。ですから、性悪説をとれば、ミルリノンという薬剤は非常に副作用が少のうございますので、少量のミルリノンを、大抵多くの心臓移植のレシピエントの患者さんは末梢の点滴等を持っておりますので、しかも末梢点滴からの投与が可能であるぐらいの少量で続けておくと、Statusを上げて申請することは可能になると。性悪説をとればそういうことが可能です。カテコラミンも極めて少量のドーパミンで持続点滴を末梢からできますので、実際それをつけながらスタスタ歩いている、というようなことがあってはいけないというので、ICU、CCU等の重症室の規定がついてはいるわけですが、おっしゃることは可能であろうと思います。

相川委員
 そうしますと、この下の委員会に検討していただくことに関して、私は賛成ですが、いまのような状況というのは、(ア)とか(イ)、つまり、補助人工心臓を必要とする、あるいはIABPを必要とするというものに比べては、かなり優先度が低くなる可能性がありますよね。少量のカテコラミン製剤、血管作動薬というようなもの。そのへん、ドース等に関しても検討していただいて、ドースを入れろという意味ではないですけども、そのような問題もどのようにするかということも含めて検討していただく必要があるかと思います。

黒川委員長
 これはかなり医学的な質問になっちゃって、また申し訳ないんですけど、循環器をやってるお医者さんでない人たちにとってはですね。そのぐらいのことも関連したことが、治療のやり方も少しずつ変わってきていますので、そのへんもできればついでに検討してもらったらどうかということが一つですね。そのほかにありますか。
 もう一つは、性悪説、性善説もそうなのかもしれないけれども、といって移植のレベルを上げればドナーが増えるというわけでもないし、それぞれ現場ではベストを尽しているわけですので、そんなことはないと思いますけれども、ベストを尽しているということはそれじゃあ何なのかということになるわけですね。ベストを尽しているというのは、ベストプラクティスと本人が思い込んでいるだけの話というのもなきにしもあらずなのかもしれないので、このへんはそうじゃないんだろうなと思ってるだけの話ですけれども、そういう意味では、こういう場合は特に移植の対象になるのであればなおさらそうですけども、まだ施設が限定的ですから、おそらくかなり普遍性の高い治療になっているだろうと思いますし、そういう施設ばかりですから、そういう懸念は非常に少ないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

北村委員
 そこで極めて少量の持続投与でステータスが上がるということだけでは確かに相川委員がおっしゃるとおりの懸念がございますので「ICU、CCU等の重症室に収容され」という前置きがついているものと判断いたしますが。

松田委員
 北村委員おっしゃったとおりで、これは当初は3施設でいろいろ検討していましたが、施設も増えましたので、下にあるワーキングでいままでの懸案事項をもう一度練り直す時期だと思います。PDE阻害剤については、もうだいぶ前ですけど、現場の担当者では一応、カテコラミンと同等に扱う、というような話し合いもあったように記憶していて、それが明文化されてなかったので混乱していると思います。一度使ってやめて、また使うというような経過もあるので、相川委員もおっしゃったように、難しいですけど、コンセンサスを得るような努力はすべきだと思います。
 ただ、ICU、CCU等の重症室に収容され、というのも、現実的にはなかなか難しいところで、ここにも「等」が入っていますので、みな「等」が入っているので、それに準じてですけれども。
 補助人工心臓の優先順位というのは、これはまた別の意味で問題というか、議論があると思いますので、是非、北村委員も提案されたように作業部会ですか、そこで検討すべき時期だと思います。

黒川委員長
 いかがでしょうか。このへんはあまり細かいところまでやっちゃうと、かえって限定的になってまずいことがよくあるわけなので、あまりごちょごちょ書くよりは、やっている人たちをどこまで信頼できるかということと、やってる人たちが社会に信頼できるだけの透明度と、いろんなことでしょっちゅうやってるのかという話が問題になるわけで、これは別に医療に限ったことではなくて、日本社会全体がそうですね。銀行だってほんとにやってるのかなと思うと、去年か一昨年のみずほのコンピュータのすったもんだがありましたけど、あれは全部大丈夫なの、結局。誰もわからないでうやむやになっちゃったんじゃないですか。足りない分は公金がどこかから入ってると思いますけど、どう? そういう問題は誰も追及しないんだから。そういう話ですよ。そういうのと似たようなもので、性善説というか、自分たちは社会に向かって責任あるようなことをしているのかというと、非常に疑問が多くなってきたということですよね。だから、お医者さんだけじゃないんだけど、一般的にそういうことがよくあるんじゃないの、ということだろうと思います。
 そうすると、カテコラミン等、と書いてあるんだから、何もそんなこと言わなくたって当たり前だ、PDEIII阻害剤も入ってるんだから当然いいじゃないのということで、書かなきゃできないというのもかなり自信のなさそうな話で、等だからいいじゃない、なんて言ってるほうが私はよっぽど素直な気がしますけどね。

相川委員
 私も性悪説といった意味ではなくて、たまたま、例えば腎機能を維持するめという理由で、スモールドースドーパミンが使われていたような患者さんが選択のときに、自分は使っているじゃないか。言葉どおりに読めば、自分はStatus1に来るべきである、というクレームをしたときにどうするかということも含めて検討しなければいけないのです。必ずしも、性悪説で、Statusを上げるために少量やっておこうというようなケースよりは、実際の問題は、少量使っていたときに、それが医学的にはStatus1なのか、1じゃないんだけれども、文章の上で読めばStatus1になると。そういう問題が起こらないためにはっきりと検討しておくべきだというお話をしたいと思います。

黒川委員長
 どうでしょうかね。皆さんのご意見としては、せっかく心臓移植に関する専門委員会があるので、そこでこれについて議論していただく。別に性悪説とかそんなことではなくて、カテコラミン等と書いてあるんだから、結構なことじゃないの、という意見もあるので「等」とは何かといえばどんどん進歩していきますから、全く新規の薬剤が出てくれば、書かなくたって、使ってるのは当たり前だということになるのかなという気もしますので、一応検討していただくということでしょうね。

北村委員
 そのときに、同じような意見で、これらの薬剤を使っている次に、補助人工心臓があるじゃないかと。その人たちを高いほうに置いたらいいじゃないかという意見があるんですが、ただ、わが国の現行の法律に則っても、8歳、9歳、10歳ぐらいの子どもたちには移植可能なケースがあるわけなんですけれども、身体の大きさもありまして、補助人工心臓の適応が非常に難しい場合と、それから複雑心奇形で成人期に達した人たちのような場合には補助人工心臓は有効性が乏しいというような場合もありまして、次のステップとしての補助人工心臓があるからだけでは難しい問題もあるわけです。ですので、補助人工心臓がつけられない何らかの条件、あるいは身体の大きさの問題等々があるような場合には、こういった薬によるエンドステージの維持しかできないケースもありますので、極めて少量でもStatusを上げるためというほかに、疾患によってはこれ以外の選択はもはやないという場合もありますので、総合的に考え直すべき時期、しかも、この適応基準は平成9年の、実際心臓移植が始まる以前にこのあたりが決められていますので、それから約20例の症例が行われていますので、少し検討させていただきたいというのが多くの施設の意見でございます。

黒川委員長
 いかがでしょうか。そういう点も含めて検討していただくということで、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
 では、次の議題ですが、カード・インコンプリート問題、片カナがやたらと多くなってきて、なぜ片カナが多いのかも説明していただくことも必要かもしれませんが、臓器提供及び脳死判定についての書面による意思表示が必要、というふうになっているわけですけど、書面による意思表示ができるだけ簡便に行うことができるように、意思表示カードとシールがお手元にありますので、これも使って説明していただこうと思いますが、実際にはドナーの意思表示その他になってくると、カードとかシールの記載に不備があると、これはだめ、ということになっているわけで、これは臓器を提供したいという意思表示について十分尊重できてないんじゃないの、という話もありますので、このへんも含めて、これは前からしょっちゅう出てますけど、こんなの小さくて見えないよ、ということもあるわけですけど、しかも5人に1人が65歳以上ですから、読める人のほうが少ないというふうになっちゃってるかもしれないけど、それも含めて、事務局から資料の説明をお願いいたします。カード・インコンプリート問題、よくわからないけど、英語としても正しいのかどうかわからないけど、どうでしょうか。

永野補佐
 お手元の資料5について事務局よりご説明させていただきます。
 まず、カード・インコンプリートの問題ということですが、今日お手元に黄色い意思表示カードと、いまご指摘のありました非常に小さい文字で、運転免許証とか保険証に貼っていただくシールをご用意させていただいております。
 こちらのカードあるいはシールに意思表示をしていただいて、臓器提供をしていただくわけでございますけれども、実際にはカードの誤記入、記入漏れと判断されて、結局は臓器提供まで行き着かないというケースがかなり多く見られているところです。
 このケースについて、数字的に見ますと、資料の10ページの「意思表示カード・シールによる情報」横のグラフで示させていただいておりますが、これは1997年10月から昨年、2003年末までの数字です。734件の意思表示のうち、脳死下の臓器提供の意思表示をされたのが 446件となっております。それに対して記載不備と判断されましたのが一番上の右から2番目で99件となっています。734件のうち、一番下の脳死下での臓器提供まで行き着いた事例は26件、脳死判定は行われましたが、臓器提供に至らなかった事例が1件ございます。この99件が誤記入がなかったら、すべて臓器提供に至っていたということではないと思いますけれども、この99人の方の意思表示は結局のところ生かされなかったという可能性があると考えています。
 資料1ページに戻って、臓器移植法で求められている要件について、1で確認させていただきます。現行の臓器移植法の第6条の第1項と第3項において、臓器を提供する意思と脳死判定に従う意思を書面により表示していることを要件としております。
 第6条 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が臓器の摘出を拒まないとき、又は遺族がないときに提供することができる。
 同じく3項で、臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。
 とされています。ここのところ、つけ加ええさせていただきますが、ここはいまの臓器移植法の形が出来上がるまでに議論になったところでして、そもそも平成6年の臓器移植法の最初のいわゆる森井案と呼ばれているものでは、臓器提供、脳死判定ともにこういった書面による意思表示を必要としておりませんで、家族による承諾のみで臓器の提供ができるという構成となっておりました。
 それが、平成8年12月のいわゆる中山案で、臓器提供に書面による意思表示を要件と課すという形となっておりまして、さらに、臓器移植法が出来上がる直前の平成9年の参議院の修正で臓器提供と脳死判定、ともに書面による意思表示を必要とするという構成になったものでございます。
 即ち、立法時にも焦点とされておりまして、臓器移植法の法律の根幹部分ともいえる部分ではないかと思っております。
 この臓器提供及び脳死判定に関する意思表示ですが、もちろん、こういったカードとかシールによらずに遺言のような形で独自の様式で書き記していただくことも可能ですが、実際そのようなことは非常に困難でございますので、提供者の利便を期すためにこういった画一的な様式のカード、シールを発行させていただいて、これに記入していただくこととしております。
 続きまして、カード、シールによる意思表示の現状をご説明させていただきます。
 数字的には先ほど10ページで説明させていただいたとおりでございますが、実際に記載不備と判断された事例が99件ございますので、この内訳がどうだったか、どういった理由で記載不備と判断したかということをご説明したいと思います。
 資料の4ページから、実際にこういった記入がなされていたということと、判断の理由を書かせていただいておりますが、これは平成9年10月から15年末までのカード情報に基づくものです。詳しく内容を見ていきますと、 1意思表示の内容が不明確であると判断されたもので、(1)法律で求めている、脳死判定に従う意思と臓器提供を行う意思の記載が不明確であると判断されたものと、(2)提供臓器に関する記載が不明確であると判断されたものがあります。
 4ページの1(1)のAは、臓器提供カードの番号に○がなかったという事例が99件のうち64件ございました。この、番号に○がないということは、提供臓器には○をしていただいているのですが、脳死判定に従う意思と臓器提供を行う意思ということが書面によって必ずしも明らかになっていないということから、意思表示カードとして表示の内容が不明確であると判断しております。
 具体的に記入された事例は4ページの中程のようなものとなっております。
 続いて、Bですが、番号の1、2、3、全てに○がある事例が6件ございました。
 これは、番号1が脳死判定に従う意思、及び臓器提供を行う意思が書面により表示されている。番号2が心臓停止後に臓器提供を行う意思が表示されている。番号3が臓器を提供しないという意思表示がされているということですので、結局、臓器を提供したいのか、それとも、臓器を提供したくないのかということが判断できないということから、意思表示の内容が不明確と判断されたものです。
 5ページ、C番号3に○と×の両方が記載されているという事例が1件ございました。番号3は、私は臓器を提供しません、という意思表示ですので、ここに○と×が表示されておりますと、○が最終的な意思表示なのか、×が最終的な意思表示なのか、わからないということになります。もちろん、最初に○をつけて、間違いだったということで×をつけられたという考え方もできるのですが、その前後関係がよくわかりませんので、結局のところ、これは意思表示の内容が不明確だと判断されたものです。(2)提供する臓器が明らかになっていないものです。
 法律では、必ずしも、提供する臓器まで意思表示することを求めているわけではないのですが、実際には、例えば、眼球は提供したくないとか、心臓は提供したくないというふうな、提供したい臓器の希望がそれぞれ個々人におありになるというふうに考えられますので、臓器提供意思表示カードでは、提供したい臓器に○をつけていただくこととなっています。
 D臓器に○がない事例が99件中17件ございました。
 具体的な記載は5ページの下のカードのようなものとなっています。
 6ページは、2書面の有効性が確認できないもので、こちらは、(1)本人の意思表示であるかどうかが不明である、という事例と、(2)カードが矛盾のある書面となっているもの、に大別されます。
 (1)本人の意思表示であるかを判断できないとされたもの 法律では、死亡された方が生存中に脳死判定に従う意思、及び臓器提供を行う意思の表示をしていただくことを要件としていますが、本人の意思表示であるかどうかが不明確だというものです。
 Eは、本人の署名と家族の署名が逆になっている事例が99件中2件ございました。サンプルに示したように、本人は移植太郎さんですが、本人の署名が家族のところにあって、家族の移植花子という署名が本人のところにありますので、これを見ると、外見上は移植花子という方の意思表示であると見えてしまいますので、これでは本人の意思表示かどうかが不明確だということになります。
 そして、実例はございませんが、本人の署名がない場合はもちろん無効でございます。また、家族の署名がない場合は、有効な書面として扱われますが、実際の提供に際しては家族が拒否の意思表示をされた場合は提供は不可能となっていますので、家族の署名は必要ありませんけれども、このカードを書いていただく前に家族でよく話し合っていただいて、できれば家族にも記入をしていただいて、実際にこういう状態になられたときに親しい方が知っているという形にしていただくことが重要だというふうに考えております。
 (2)意思表示カードが矛盾のある書面になっていると判断されたもの 具体的な事例は、F署名年月日があり得ない日付になっているという事例が5件ございまして、これは実際には12ページをご覧いただきますと、意思表示カードの歴史ということで、12ページと13ページにカードがどういうふうに変遷していったかということを資料としてつけさせていただいておりますけれども、このように意思表示がかなり変わってきておりますので、新しいカードの日付はその新しいカードが出た以降の日付でないといけないわけですが、実際に、新しいカードが出る前の日付になっているという事例が見られます。
 6ページにお戻りいただきまして、例えばですが、F署名年月日があり得ない日付になっているという事例のうち、F−1署名年月日が法律施行前である事例が5件ございました。うち1件は、署名年月日のところに生年月日を記入していただいております。
 実際にどうなっているかは、6ページの左下のカードですが、署名年月日以外はすべて適正に記入していただいているんですけれども、署名年月日が1997年1月1日となっております。法律が施行されたのが平成9年10月16日、1997年の10月16日で、このカードの様式が使われ始めたのが1999年の10月からですので、それより前の日付であるということは通常あり得ないわけですので、矛盾のある書面として、意思表示は有効なものでないと判断されたものです。
 右のほうは、署名年月日のところに生年月日を記入されている事例で、こちらも誤記入と判断されました。
 7ページですが、こういったことを考えまして、論点として上がってきますのが、いまのところ、こういった事例はありませんが、法律の施行が平成9年10月16日ですので、その以前であっても、こういう意思表示カード、シールによらないものであっても、法律で必要としているような意思表示に係る要件、即ち、脳死判定に従う意思と臓器提供を行う意思を適正に記入していただいていれば、有効な書面として扱われるのかどうかということが、今後、論点として一つ考えていかなければいけないことになるかと思います。
 続いて、7ページのF−2新様式のカードに新様式カードが発行される以前の期日を記載してあるという事例です。このカードは1998年1月1日に署名をしていただいたということになっていますが、こちらのカードは1999年の10月以降使われ始めたものですので、1999年10月以降の日付になっていないとおかしいのですが、1998年となっています。
 こういったケースは、2003年末までの集計ということでここでは件数として挙がっておりませんが、最近起こった事例でして、ここで聞いておりますのが、もともと古いカードを持っていらっしゃいましたが、カードが新しくなったので、新しいカードに書き変えられるときに古いカードの日付をそのまま書いてしまったという事例であったと伺っております。こちらも書面の有効性が確認されないということで、意思表示カードとして有効でないと判断されたものです。
 3その他ですが、ここはこれまでの事例を複合的に組み合わせたものになっでいますが、G番号、臓器ともに○がない事例が3件ございました。そのうちG−1として、その他のところに(全部)とだけ記入していただいて、署名年月日も本人の署名、家族署名ともなかったという事例です。G−2は、その他のところに(全臓器提供)と記入していただいた事例です。
 8ページの(※)は、番号、臓器に○があって、その他(全部)、その他(総て)といったことが書かれているような場合には、左の例示以外の臓器、組織の提供を行う意思表示として認められているところです。
 実際にどういうふうに書かれているかというのが、8ページの上のほうにある2枚のサンプルです。左は現在の一番新しい様式のカードですが、その他のところに(全て)と書いていただいておりまして、これは皮膚とか組織も提供していただけるという意思表示であると考えられます。
 右は古い様式のカードで、1の小腸の次に眼球が入っておらず、すぐにその他となっておりまして、その他(総て)と書かれているものです。古いカードについては後ほどご説明させていただきますが、眼球という欄がありませんが、ここに(総て)と書かれていますので、眼球も提供していただけるという意思表示と判断されました。
 8ページの中程で、論点2として挙がってきますのが、番号に○があって、臓器に○がなくて、括弧内に(提供できるものは総て)と書かれていた場合に、どういうふうに判断するかということが論点として挙がってくると思います。
 ここは、意思表示カードの現在の様式に(提供できるものは総て)ということで○のしていただく欄がありませんので、そういった意思表示をしたいという場合に括弧に書かれる可能性がありますので、そういう意思表示が出てきた場合にどうするかということを考えていかなければならないと思います。
 最後ですが、H本人の署名のみ記載していただいて、そのほか何も記入していただいていなかったという事例と、何も記入されずにカードだけを持っていらっしゃったという事例です。
 2ページにお戻りいただいて、(参考1)ですが、こういった書面による意思表示を求めているものとして、民法における遺言の事例を見ていきたいと思います。
 民法では、様式性を960条で定めており、この様式に従わなければ、遺言をすることができない、となっています。
 968条で、自筆証書によって遺言する場合には、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。と書かれています。
 この要件を満たさない書面についてどう判断しているかを調べたのが11ページで、最高裁の判例を挙げております。
 ここで3事例挙げていますが、1番目の事例は、自筆遺言証書における日付が間違っていた事例で、こちらは誤記であることが容易に判断できるということで、この日付の誤りは遺言を無効に判断ならしめるものでないという判決になっています。
 これは遺言を書かれた日付が昭和48年だったのですが、実際の遺言書では昭和28年となっていた事例です。
 2番目の最高裁判決は昭和52年のもので、こちらは日付の記載を欠くもので、こちらは遺言として無効と判断されました。
 3番目の判決は、遺言の日付のところに、昭和41年7月吉日、と記載されたもので、これは、吉日ということで日付が明らかになっていないので、遺言として無効にされたというものです。
 資料2ページにお戻りいただきまして、3検討のポイント
 このような状況とか、民法における遺言の取り扱い等に鑑みまして、今後検討していくべきであろうと考えられるポイントとして、
(1)現状において、書面による意思表示の有効性の判断を厳格に行っているが、法律が書面による意思表示を求めていることを考慮しつつも、弾力的に判断することが可能で あるかどうか。
(2)(1)とセットでありますが、意思表示カードの記載に不備がある場合に、例えば、家族の証言等によって補完することを一般的に認める余地があるかどうか。
(3)誤記入を減らすための有効な普及啓発の検討・実施
(4)意思表示カードの様式の見直し これについては、先ほど別紙3で見ましたように、これまでもかなり見直しがされているところです。
 最後に、旧様式における眼球の取り扱いについて説明させていただきます。
 先ほど、12、13ページでご説明させていただきましたように、旧様式のカード、平成11年10月以前のカードには眼球という記載がございませんで、眼球の提供をしていただくという意思表示をしていただくためには、その他の欄に(眼球)とか(総て)と明示していただく必要がございました。現在の意思表示カード、シールにおいては、眼球の記載がありますので、そこに○をつけていただくようになっています。ただし、現在でも提供事例の多くは旧カードによっております。現在の脳死下での眼球の提供について、追加資料1として配布させていただいております(別紙4)をご覧ください。
 現在までに行われた29件の脳死下臓器提供事例の内訳ですが、旧カードによって意思表示をしていただいたのが25件、新カードによって意思表示していただいたのが4件となっております。旧カードには眼球という記載がありませんでしたので、旧カードで眼球の意思表示をしていただかなかった事例が、(参考)の表ですが、19件でした。この内訳が、脳死下で眼球が提供されなかった事例の22件のa)旧カードでその他の欄に記載がなかったのが17件、b)旧カードでその他の欄に記載不備があった事例が2件となっています。
 以上で事務局からの説明を終らせていただきます。

黒川委員長
 さて、皆さんの感想どうですか。疲れた、というぐらい複雑怪奇なことが実際にはあると。で、資料5の10ページを見ていただくと、これはこの委員会に何回か出ていますけれども、意思表示カード・シールによる情報。全体として7百いくつの意思表示のうちの、脳死下臓器提供の条件を満たしているのが446ですけど、記載不備が99、不明が134、この不明って何だっけ。

小中委員
 確実に確認がとれなかったものです。

黒川委員長
 いまは記載不備99の話をしてるのかな。そうすると、字が小さいだけではなくて、世の中にはいろんなことがあると。これを見て皆さん何を感じたでしょうか。

松田委員
 開いた口が塞がらないという感じが改めてするわけです。基本的なことは、最終的に誰が決めれるのかという話で、誰が責任を持って決めているのか、そこがポイントであります。要するに、最終判断は誰がすることに法令上なっているのか。ネットワークが最終判断ができるのか。ネットワークがある意味では責任を持っていると思います。いままでずっと議論してきましたが、そこがはっきりしない。結局、最終判断は厚生労働大臣に行くのかどうなのか。そこをはっきりしておかないと、議論をいろいろやっても進まないと私は従来から感じているのです。ネットワークが主体性を持ってやれればどうなのですか。なぜ生前の意思が生かすことができないのかということを繰り返してきているわけで、そこのところが一番大事なところじゃないですか。

塚本室長
 現状を申し上げれば、こうしたカードの有効性に関する疑義があるときにはネットワークから私どものほうに照会があって、私どもとして、これは有効と考えることは難しいということを申し上げているというのが現状であります。そして、ネットワークに対して1度申し上げた場合に、2度目に同じようなケースがあれば、いちいち私どもに照会はございませんけども、永野から冒頭申し上げたように、法律でああいう議論の末、書面による意思表示、それも臓器提供に関する意思表示、そして、脳死判定に従う旨の意思表示を書面によって表示しなければ、臓器移植法上、脳死判定もできないという法律になっているというなかで、これが書面による意思表示として有効なものかどうかということについて、我々としても疑義があれば判断をせざるをえないというのが現状でございます。

松田委員
 いまから思ってもオーバーアクションだったかなということをおそらく感じられていると思うんですね。オーバーアクションというか、常識的に考えたらの話です。結局そこで、お役所は責任をとるということでやられますけど、なぜもうちょっとオープンな委員会とかコミッティをつくらないのか。これだけ問題事例が続いているのに、なぜいろんな意見を聞いてやれないかというのが現場の要望なんです。ですから、最終的にはどこで判断するというところの議論なしで具体的なことをやっても、議論が空回りしてしまいます。そういうことがないように、いまから進めて頂きたい。

大島委員
 前からこの議論はずっとあったと思うんですね。私なんかはおかしい、おかしいとずっと言い続けてきたんですけれども、要するに、法律の問題と、世の中の一般常識というのか、当たり前に考えて当たり前に判断したらいったいどうなるかというところにギャップがあって、そのギャップの中で一番無難な方法をとってきている。最大限、常識だと多くの人が考えても、中には揚げ足をとって、なんだあれは法律違反だ、と大騒ぎする人間が必ずいますから、その人たちに対して防御するという一番無難な方法をとっていままで来ていると、私はそういうふうに思ってきたんですけれども、いまここでこういうことが議題になって出てきたということは、世間様か、世論か、何かが少しずつ変わりつつあるのかなというふうに思っています。一つ確認をしたいのは、いままでここでこういった議論が問題になって出たことがあると思うんですけれども、その場ではこれをさらに進展させるというような動きは全くなかったわけです。今回は、検討のポイントの中に、弾力的に判断することは可能であるかとか、あるいは、家族の証言等により補完を行うことは一般的に認める余地があるか、というような投げかけが出てきています。これは私は大進歩も大進歩、一大進歩だと思っているんですけれども、少なくとも、この議論をこの委員会でして、ある一定の結論が出たということを全体のコンセンサスにすることは可能だという判断でここに出てきたんですね、これは。そこを確認していただかないと、最後にまた法律上だめですという、この一言ですべて片がついちゃうわけですから、法律上だめですということと、私がもっている常識がずれてるのかどうかは別にして、いわゆる常識感覚とはものすごく大きなずれがあるのを、できるだけ常識感覚のほうに近づけよう。そういった判断を可能にしようという方向性が示されたんだという理解をしているんですけれども、従って、ここで決めたことがある一定のコンセンサスになり得るんだということをはっきりさせていただかないと、何を議論したんだという話になりかねません。町野委員 大島先生が言われましたとおり、一番最初からこの問題はありました。そのとき、我々法律家のグループでは報告書を出しておりまして、それは厚労省に提出した報告書が先程のような線で我々の意見を出していますが、それはそちらに残っているだろうと思います。厚労省がだめとしたのがいくつかあったんですが、それはおかしいということをはっきりと言ったのですが、それっきり議論にならなかったということがあります。
 おそらく、そのときは、大島先生がいわれたとおり、「一点の曇りもない臓器移植」を、ということで少しでも何かミスがあると具合が悪いということでこのようにしたのだと思いますが、私は臓器移植法の議論の過程で意思表示が遺言と結びつけられたためにそれと同じような議論が法律論だと誤解された面がかなりあるだろうと思います。文言をみればわかるとおり、これは意思表示が大切だということなんです。そして、そのことが書面で根拠と示されていれば、それで十分なので、意思表示があるかどうかが大切なんです。それが、書面があるかどうかが大切だという議論になっているので、最初からそれはおかしいということは言っていたんですけれども、その点にお考えが、そのへんご理解いただかないと、私は何回議論しても同じことになるんじゃないかというふうに思います。

山本委員
 もう一つ、違う視点から見ますと、こういう意思表示カードを書く人で、何回も何回も書いている人がいるんですね。だから、最終の意思表示カードがこれなのか、どうなのかというのは、非常にわかりづらいときがあるんです。それで、我々の事例ではなくて、あとからまた新しいのがありましたとかいうのが出てきたときに、これがほんとに一番新しいのかっていうのは誰もわからない。

黒川委員長
 だから、いろいろ面白い問題があるんですね、現場にいる人から言うと。新しいのを書いたら古いのは破って捨ててくれとか、そんなことまで書くのかね、という話になっちゃうしね。たくさんコレクションして毎年書いてる人もいるのかもしれないね、なかには。

山本委員
 そうなんですよ。だから、これ一つひとつではなくて、もっと性善説的に、細かいことはいいじゃないか、という流れがあっても僕はいいんじゃないのかという気がしますけどね。

小中委員
 実務上、困惑したり、家族の意思が尊重できないということを感じていますので、お話したいと思います。遺言というとらえ方でいままで判断されているんですが、7ページにある、署名年月日がカードの発行日以前の日にちを書いたため提供できなかったという、これは現実的に無理な話だと思うんですね。例えば、ネットワークが作成したカードであれば、発行日の確認ができますが、実際には各地域で作成されています。すると、いつこのカードが発行されたかは確認ができない状況になります。
 もう一つ、最初に確認されたかと思うんですが、番号に○がないだけで、本人の意思が明確ではないというのは、納得しにくいです。既に臓器に○があり、また、家族が本人の意思は確実に提供すると話をされているのに、明確に確認ができないとされています。 それともう一つ、遺言というとらえ方であれば、通常の遺言は家族が拒否できないものだと思いますが、この意思表示カードについては、家族がこの臓器は提供したくないといえば、その本人の意思は尊重できないような形になっているのではないかと思います。ですから、遺言と同一視はできないのではないかという思いがしております。

北村委員
 4ページの、一番多い、番号に○なし。私はこれはいかにもおかしいと思うんですね。ご家族が拒否されたらそれで終わる。しかしながら、ご家族の中には本人の意思を尊重してやってくれという場合があるということをコーディネーターの方々からも伺っておるにもかかわらず、本人の意思を最も重要視するという大義名分の観点からも、一番多い、Aの番号に○がないことでだめとしているのは、どう判断してだめかという点で改善を望みたい。本来の、本人の意思尊重という観点、そしてご家族の意思尊重という二点も十分満たしているにもかかわらず、断わっているというのは、おかしいと思います。行政官として、どうしてもこれは承認し難い例があるというのに比べて、この一番多い、番号1に○がないという、臓器にはきれいに全部○がつけてある。この例ではご家族の署名がないんですが、ある場合もあると思います。そして、本人の意思を尊重してやってくれという意見もあると。ここらはまず一番多いところですから、これは認めていこうという判断をお願いしたい。しかも、最初にネットワークから相談を受けたときは、室長さんのレベルで回答をしておられるのか、健康局長まで行くの?これはやめましょう、という判断ですね。もちろん報告は上がると思いますけれども、塚本室長さんがだめとおっしゃって決まるのか。局長まで上がるの?

塚本室長
 この中で私の代にだめだと言ったのはほとんどありませんので。もうほとんど、これまでの判断に照らせばこうだろうということでやっていますので、その時々だと思います。

北村委員
 いま1番が来たら?

塚本室長
 1番がきたら、私のところへすらきません。先ほど申し上げたように、ネットワークのほうで……。

北村委員
 いままでの経過があるわけで、そこでこの委員会でご遺族の希望があるということの確認ができれば、認める方向で行く方向でどうなのか。それが大島委員が言われたように、一番多いAの事例について、ご家族の意思を尊重しようと。いま国会に出ている議論も、ご家族だけの意見でということだが、どうなるかわかりませんけれども、ご家族が本人の意思を尊重してやってくれということまでありながら、却下しているというのは、意思表示ということを一生懸命やってきた現行の法律に基づいてもおかしい。○がなかったらハネている。そこをどうしようかということをこの委員会に上げていただいた。性善的に解釈するとそうなるわけで、でないと、事例の数の報告を挙げてもらっても何のためにここに集まってるのか、例えば、署名がないとか、入れ替わっているのは認め難いというのはわかる。しかし、1の場合のようなのはご遺族の意思を尊重しようという形でネットワークから塚本室長のところに挙げていくとかで対応するのはどうか。

相川委員
 私もいまの北村委員の意見に100%賛成ですね。4ページの1のAの事例に関しては。ちょっと質問ですが、これは家族の署名が空欄になっていますけれども、通常、あると仮定して、ない場合もあったんでしょう、64名のうち、ある場合は特にですが、なくても、ここまで○をつけて署名をした人は、自分は臓器を提供するという意思があると解釈するのが社会通念ですよね。ですから、そのあとの具体的に各臓器に○をつけていることを、1、2、3に○をつけなかったというエラーによって否定していいものかという判断をするべきだと思います。特に99例の中で、ほかの細かいことは別にして、一番頻繁に侵されているエラーであって、各臓器に○をつけ、かつ署名をした意思が生かされなかったということ自体が、これは我々の判断が間違っているということで死んだ人に対して申し訳ないと思います。死んだ人というか、臓器提供をしたいと思っていて脳死になった方で、このカードが出てきたのに、生きている人たちが間違った判断をして、自分の臓器は提供されなかったじゃないかと、きっと彼らはそういうふうに思っていると思いますよ。

藤村委員
 私も先生方の意見に大賛成です。私、大変怠慢でしたけれども、この委員会のメンバーである私でさえ、実はこのカードがこれほどまでに変わってきたということに気がつきませんで、実は私がいま持っておりますカードは5番目のものでございました。それまでは、私は腎臓は提供したいという意思は持っておりましたので、古い古い話ですが、腎臓移植普及会のカードを持っておりまして、それがこの法律ができてからも有効と認められるということでしたので、ずうっとその腎臓移植普及会の昔の腎臓提供者カード、これだけ持っておりました。ところが、日本で初めての脳死移植、高知赤十字で女性の方が提供された、あのときに私も大変考えさせられまして、やはり全部提供していいという意思に変わりました。で、この黄色いハートのカードを持ちまして、一応○印をつけましたが、さらにそれがもう一つ新しいカードになっているということは、ほんとに私の怠慢ですけれども、気がつきませんで、大体このカード、表はみんな同じですよね、このデザインができてから。裏の内容に、眼球とか何かが加えられた以外は表が全部一緒ですから、たぶん素人の一般の方々は、一度自分がこのカードにサインをしたら、それが新しいカードが出ていて、それでないと有効でないとかいうことはほとんどわからないんじゃないでしょうか。私も申し訳ないんですが、ほんとにわかりませんでしたから、他の素人さんというか、私と同じような立場の方がほとんどではないか。そうすると、先ほどの表の有効でなかったということだけでというのが99件もあって意思が生かされなかった例というのは、先生方がおっしゃったとおり、本来ならほんとに有効にそれを役立てるべきだった方たちのご意思だと思うんですね。これはそういう私の立場からですが、一つの例として、もっと一般の方々にわかりやすいアピールの仕方というか、広報がないと、ほんとに皆さんわからないと思いますね、新しいカードになったからでなければ有効でないなんていうことは。

黒川委員長
 それはないんじゃないですか。

藤村委員
 それはないんですか。

黒川委員長
 いいんです、前のでも。変わってるのはちょっぴり変わってるんだけど。

藤村委員
 前のカードでもいいんですか。意思は十分生かされるんですね。

黒川委員長
 いいんです。

藤村委員
 ああそうですか。

山本委員
 ただ、署名の年月日ですよね。たぶん先生は署名年月日を古いのでしていた。それを新しくしたときに、新しいものは、カード発行時より新しいんだ、といわれたって、一番先に古いので署名したときには、これはおかしな話でしょう。

黒川委員長
 だけど、サインをするというのは、した日の話をしているわけで、サラダ記念日じゃないんだから、そうなのかもしれない。
山本委員
 いや、だけど、そういうふうに思う人は絶対いますよ。私が一番はじめに臓器提供を意思した日と。

黒川委員長 でもそうなると、新しいカードにわざわざ書き換える理由は何なのかということになりますね。

大久保委員
 それは、毎年書こうと思っている人もいるし、それは書き換えた日にちではなくて、一番はじめに意思を表明した日をずっと書き続ける人もいると思うので非常に難しい。しかし、これは遺言ではないので、その人の意思がどうあるかということをきちっと見るためのものであって、遺言と同じような形で考える必要はないのではないかと思っています。
 もう一つ、今日はこの話が出てきたのでびっくりするというか、この委員会で、99年当時以降、いくつもこういった問題が出てきましたが、ほとんどがだめということで、それから議論にあがっていなかったのが、先ほど、塚本さんは、自分ではほとんど判断していないということで、ある意味でそれだからできたのかなという気もしないではないけれども、ここにこういう問題が出てきたというのは、ある意味では、日本の臓器移植の脳死移植は数は少ないけれども、それなりの信頼を得てきて、社会的に認められるところまで来たのかなという気はします。ですから、そういう意味では、遺言ではなくて、その人の意思を確かめる一つのツール、それがこの意思表示カードであって、それを補完するのが家族であると。できるかぎりその人の意思を尊重して、臓器を提供できるようにしてあげるというのが我々の基本的なスタンスではないかと思っていますので、そういう方向で議論をして、ここでまとめて、それを実際に運用していただきたいと思います。

黒川委員長
 そこで、どうしようか、ということですね。皆さんの意見を聞いていると、どうしようか、ということになりますが、私としては、まず1つは、実際の例を見ていると、信じられないようなこともあると。だけど、字が小さくて読めないということもある。いろんな問題がたしかにあるということから言うと、先ほど法律家の町野委員もおっしゃったようなことがあるので、カードの運用とその判断についてもう一回論点整理して考えてみるかなということ。
 それからもう一つは、誤記入を減少させるための普及・啓発、カード様式もちょっと考えてみるのがいいのかなというのは、これが出たときといまものすごく違っているのは、例えば、これはNTTとは関係ないんだけれども、少し規制緩和したらヤフーが入ってきたからインターネットを使う人が非常に増えてきたんですね。例えば、ブロードバンドで「移植」でクリックしたら、意思表示カードの使い方、なんていうことはいくらでもできる。いまインターネットを何人ぐらい使っているか知ってますか。8800万人。3人に1人は使っているということになってるわけで、普及するのにそういうところにどれだけそういうサービスをしているのかなという話も考えられるし、厚労省のホームページにアクセスするたびに出てくるかどうか知らないけど、いろんなやり方はたしかにあるような気がして、入れ方の例とかいうような話もあるかもしれないし、そういうことを論点を整理してやってみたらいいんじゃないのかなという話が一つね。
 それから、松田先生がおっしゃったように、誰が責任をとるのかという話があるんだけど、じゃあ、いままで誰かが責任をとるようなことをしたのかというと、そういう話はどこにもない。それは別に役所だけじゃなくて、すべてそうなので、司法の制度もそうだし、大体、行政訴訟なんておっかなくて誰もしないでしょう。そういう世の中なんだから。そういう世の中でこんな話をしてたって始まらないわけで、そうなればお上が判断すれば安心かなとみんな言ってるだけの話で、お上は決して責任は取りませんから、お互いにハッピーということになっているわけですよね、町野先生。行政訴訟なんて思いきり少ないんだからね。
 そういうところですから、これは何回も出てくるんだけど、カードの運用についてもうちょっと検討したらどうかなと、次ね。それから、実際に90いくつのうちの3分の2はこういうことであれば、現場としてはちょっと気の毒だなあということがあるという話がひとつ。それから、最初に町野先生がおっしゃったように、これは遺言とどこかでセットになっちゃったというところがあるわけで、これはもう一回検討させていただいたらどうかなと思います。
 それから、普及あるいは広報活動をするのはどうかという話で、私もいま学術会議をやってみると、非常に面白いのは、例えば、うちのホームページ、いま8800万の人がインターネットを使うようになっている時代に、そういうところにアクセスしている人が多いのにもかかわらず、学術会議のホームページを見てごらんなさい。猛烈にわかりにくい。で、外活しろといって、いま外につくってもらってますけど、彼らに言わせると、役所を見ると、どこも同じようなものですねと。役所なんて、自分のところはインターネットに出しておりますといえば、それで免責になるようなつもりになっていて、ユーザーフレンドリーで構築してるわけじゃないから、そこにも問題があるわけ。そういう意味では、発想の転換も必要だし、そのへんも含めてもう一回整理して議論したらどうかなと思いますね。会社のホームページ、役所のホームページ、いろいろ見てみるとよくわかると思うんだけど、結構ユーザーフレンドリーだというのはあまりないよね。出てますよというのが一番大事だと思ってるんじゃないかと思うので、そのへんも含めて考えたらどうかな。
 しかし、この実際の事例をみると、3分の2はこういうことで、かなり明らかなんだけど、そうじゃないのはいろんなのがあるなと。記念日としてやってるのもあるのかなという話もあるとか。しかし、そんなことをこちらがあまりスペキュレーションしてもしょうがないので、これについて次回、もうちょっと論点を整理してやったらどうかなと思います。
 それから、いま国会でやってるような、オプトアウトしようか、なんていう話はどうなるか、まだわかりませんから、それは別として、こっちはこっちで粛々として、できるだけ臓器提供の啓発運動もそうだし、カードが小さくて見にくいのはたしかに事実ですので、このへんについてもうちょっといろんな方策を考えてみたらどうかな。それで議論していったらどうかな。
 それから、カード・インコンプリート、なんていうのは英語としても変だし、ほんとにそういうのであれば、カルテ・インコンプリとかラテン語にするとか、もうちょっと気のきいたことにしないと、やたらと片カナを使えばいいというわけではないんだから、それをやったらどうかなと思います。
 そのほかに、私がこれを見て、これほど不可解というか、こういうのがあるんだなというのは、ありますけれど、カードの表は変わらないけど、裏が変わってるというのはわかりにくいのはたしかですね。そしてもう一つ、これをみて、最近のことで思ったのは、国民年金と同じだよ。複雑でわかりにくいからやりにくいのよ。このことばかり一生懸命考えてる人がつくってるからこういうことになるわけで、一般の人たちにわかりやすいような国民年金だという話になってるかというと、某財務大臣をやってる東京大学を出て、弁護士の資格を持ってるような人でも、ごめんなさい、なんて言ってるぐらい複雑怪奇なシステムなんじゃないかなと私は思います。
 そういう意味からいうと、制度もさることながら、ユーザーフレンドリーにどうするか。それをやっても、スペースの問題とかいろいろあるので、啓蒙・広報活動をどうしようかという話もまとめて次回議論してみてはどうかなと思います。どうでしょうかね。

貫井委員
 賛成なんですけど、実際に松田先生が最初におっしゃったように、ここで議論して、どういう筋道でいくのかというのがわからないんですね、いま聞いていても。誰も責任を取らない。結局、厚労省臓器移植対策室に困って電話をする。と、この委員会の意見がそこで反映されるのかどうか。いま現実に移植ネットワークが非常に困る。議論をいくらしても、じゃあ、これはどうなるんだというのがよくわからないんです、聞いていて。

黒川委員長
 いや、もうちょっとよくしようということについてはコンセンサスがあるわけで、それでも疑義があるときの責任は誰が取るのかというのはネットワークに責任を取らせるわけにいかないんじゃないかというのが一つと、もう一つは、塚本室長のところに行く理由は、日本が法治国家として、行政訴訟が同じような数あるかということを考えれば、当然そんなことはないわけで、それは監督官庁に聞いておいたほうが安全なんじゃないの、という話じゃないですか。大体、今度、国立大学が法人化されるときに、理事とか執行部で文部科学省の人を一切排除したところがありますか。そんなところないでしょう。いまのところはそういうカルチャーなんだから、これが日本の大きな問題だということにはなってきているんじゃないですか、と思いますけどね。

北村委員
 ですから、いま2つ出ました、Aの事例と、新しいカードに古いカードの日付があった場合でも、それを有効とする、この2点ぐらいは可能ではないかと我々は考えるわけなんですね。名前が違っていたりしなければ。例えば、僕も古いのを持ってるんですけど、書き直すときには1997年10月1日というのは記念すべき日だと思ってしまうと、それを書いちゃう人が結構多いと思うね。新しいカードだからと逆登り日時を無効にするというのもおかしいんじゃないかと思うわけです。

黒川委員長
 それも含めて考えましょう、それじゃあ。

北村委員
 だから、対策室にネットワークから電話がかかったときに、どこまで認め得るかを検討して、中で話し合ってもらって、誰が決定するのかそこを示してくださいね。そうすると、このような意見がそういう形で出てきた場合に、誰の承認が必要なのか。最終的には局長の責任となるのか。誰に相談する? 皆さんは。こういう問題が出てきて、認めようと思いますと、対策室が考えた場合にね。

塚本室長
 私どもとしてこういう資料をお出しして、公開の場合でご議論いただいているというのは、そもそもリアルタイムには皆さんにご相談する余裕はない中で我々も照会があれば、例えば、1時間なり2時間の間にネットワークにゴーサインとか、やめておけ、といわざるを得ない。という中で、その時々で判断をし、運用してきたというものについて、私どもとして一切合財、これまでどういう運用をやってきたのかということをこうやって公開の場にお示しさせていただく。で、それをもとにご議論をもう一度していただくという意味で今回も資料をさせていただいております。
 ただ、その一方で、おそらく繰り返しになると思いますが、このAのパターンについて、少し頭を弾力的にしたとして、それで脳死判定に従う旨の意思表示がどうしてこの中から読み取れるんだろうということについて、世の中の人々に対して説得力ある説明を我々としても認められるのであれば、していかなければならないという意味で、繰り返しになりますが、それなりにオープンの場で十分ご議論をいただきたいと思っているということです。

黒川委員長
 町野先生、そういう話をして、Aのような3分の2のケースを、そうだからいいか、とやったときに、そのうち遠くの親戚が出てきて訴えた場合に、これは最高裁まで行くとたぶん負けるかね。

町野委員
 最高裁が何を言うかちょっと私もわかりません。しかし、議論のしかたとして、弾力的というのは非常に結構なんですけれども、無原則であってはいけないわけです。書面による意思表示を要求した趣旨を外れてはいけないのです。だから、時々は、このカードがコンビニにおいてあるのはけしからんという人だっているわけです。よく考えもしないで署名するじゃないかと。他方では、厚労省が勝手に様式をつくってこの様式に合致しないからけしからんというのはまことに失礼な話だ、という議論もあるわけです。もともと、法律では書面であればいいわけで、こんな様式でなければいけないとは一言も言ってないんです。どうして法律が書面による意思表示を要求しているかということの原点から議論しなければ、私はまた無原則だという批判が出てくるだろうと思いますし、それに対してちゃんとした返事はできないだろうと思います。
 問題は二つあるように思います。そもそも書面による意思表示が認められるかという問題と、臓器の提供について○をするところの問題とちょっと次元が違うように思います。もともとは、おそらく臓器提供をします、といえば、どの臓器でもいいという趣旨だろうと解釈するのが普通だろうと思うんですね。ただ、本人が眼球は絶対嫌だといっていたらそれを尊重しましょう、ということだと思います。その点で○をつけさせるというところに実は問題があったと私は思います。嫌いな臓器にはチェックをつけないというアウト方式のほうが妥当ではなかったかと思います。厚労省の初期のいろいろな対応は、私はその当時のことはかなり昔のことですからあまりよく覚えていないところもありますけれども、自分の首を徐々に締めてきたという結果なんだという感じがします。世論の非難を恐れたということはもちろんあるだろうと思いますけれども、どうして書面による意思表示を要求するかということの原点が私はしっかりしていなかったらだめじゃないかと思います。

黒川委員長
 それで次回、次回で決めるかどうかは別として、やろうと思うのは、いま町野先生おっしゃったのはまさにこのポイントで、この移植の委員会がそれじゃあ何のためにあるのかということですよ。そうすると、1例の脳死も出る前にいろんな委員会をつくって、ああじゃこうじゃたくさん議論をして、こうだったらどうだ、ああだったらこうだということのマニュアルに全部書き込んだんですね。実際にやったらマニュアルが厚すぎちゃって、さっきおっしゃった高知の第1例だって、やっているといろんなミスが起こるわけですよ。そうすると、マスコミが、ほら、ミスをした、と言う。こんな時間が差し迫っているときに読めるわけないでしょう。1例もないうちに、この場合はどうだ、あの場合はどうだ、と議論して書き込んだ。なぜそうしてるかというと、すべてに何か言われないためにやってるだけの話で、2例目はどうした、3例目はどうした。結局、4例目までやったときにこの委員会で、もう1回マニュアルを書き直したんですよ、一番多くミスが出るところはどうだとわかったので、チェックリストみたいなのをつくったわけです。そういうことで、実際の体験から、現場では何がわからないのかというのがよくわかってきた。ところが、わからないのに、責任のがれのためにマニュアルばかりが厚くなって、実際にはそれにもかかわらず、それに書いてないような面白いというか、予想もつかないようなケースがぼこぼこ出てくるわけですよ。だから、そういうことは実際に出たところの現場の判断に任せてもいいんじゃないの、というような国民のコンセンサスができればいいんだけど、その前に移植医療が信頼されていたかというところがあるから、わさわさやってただけの話で、そういうことだと思いますよ。
 だから、みずほの事件もどうなったかなあというのは、私はフォローするとよくわからないなと思ってるんですけどね。あれだけコンピュータがおかしくなって、実際口座がなくなってる人、たくさんいますよ。だけど、一般庶民なんてどこにも文句言えなくて、きっと泣いてますよ。そういう世の中だと私は思っています。
 そんなことで、引き続いてやったらどうでしょうか。どう? ここで聞いてるマスメディアの人、どうでしょうか。そういうことは誰かちゃんと追及してるの? 追及の手を弛めちゃだめよ。だって、1995年に住専の問題が出て、6950万のとき、あれだけ大騒ぎしたんだけど、いま、りそなに2兆円あげたって誰もなんとも言わないじゃない。どうしちゃったの、ということも十分考えてください。
 よろしいでしょうか。じゃあ、今日の論点を整理して。特に町野先生の法律の立場からいって、この本来のスピリットは何だったのか。いまになって皆さん言うけど、どうして移植がこれだけがんじがらめになった歴史的背景も書かなくちゃいけないし、どうして最終的には行政に相談するかというのは、誰も責任を取らないからだということになっているんだけれども、その理由は、行政は法律を自分たちでつくって、行政指導までしちゃうんだから、とんでもない国だと思わない? ということをよく考えてくださいね。なんで局長通達なんかするの、そんなのとんでもねえや、といったっていいわけですよ。司法が最終的に独立していれば、そんなこと心配する必要はないんだから。まあ、だけど、それが当たり前の国なんだからしょうがないけどね。
 まあ、そういうわけでございますので、今回はこのへんで引き取らせていただいてですね。だから、今度1のようなケースがあったときに、是非北村総長のところでゴーと、行けと言えばいいんですよ、先生は直轄の国循の総長ですからね。まず、それをやってみなきゃだめですよ。独法化されたところより、直轄のところのほうが強いんだから。そこで司法がどういう判断を下すか。こういうのは面白いと思いますね。
 そういうことで、臓器提供施設拡大につきまして、議論したいという話が前からあって、実は救急医学会と脳神経外科学会について、文章によって検討をお願いしたということを覚えておられるかもしれませんが、両学会からご返事をいただいていますので、事務局から説明してください。資料6ですね。それから、カード・インコンプリートというのはやめようね。

井内補佐
 それでは、資料6のご説明させていただきます。資料6と追加資料、もう1枚のグラフでございます。併せてご説明させていただきます。
 資料6の10、11ページ目ですが、去年月、黒川委員長のお名前で日本救急医学会、日本脳神経外科学会に、いわゆる施設拡大について、ということでご意見をお伺いしております。さらに、資料6の3、4ページが日本救急医学会から、5〜9ページが日本脳神経外科学会からいただいたお答えをそのままつけておりますが、1、2ページに要点を抜粋しておりますので、時間が押しておりますので、これだけ説明させていただきます。
 1ページ目、左側が日本脳神経外科学会、右側が日本救急医学会のご意見でございます。
 施設拡大については、それぞれ、C項施設及び救急科専門医指定施設についてご回答いただいております。
 日本脳神経外科学会のほうは、C項施設について
(1)何らかの公的機関がC項施設に対し、これまでの臓器提供に係わる問題点を説明し、手挙げ方式で臓器提供施設になることを希望するか否かを問い、臓器提供施設としての条件が整っているか否かを審査して認定するという手続きが必要である。
(2)実際にC項施設はA項施設に比べ脳神経外科専門医数及び手術数が少なく、臓器摘出の場を提供するために必要な体制の確保、臓器提供に関する承認を行う施設内の倫理委員会等の委員会に設置、及び適正な脳死判定を行う体制の確立等が困難な施設が多いと思われる。
(3)しかるべき公的機関がC項施設に対し臓器提供施設に関して説明、募集、審査、認定を行う方法を否定するものでなない。
 というただし書きがついております。
 日本救急医学会のほうは、救急科専門医指定施設について  救急科専門医指定施設においては、救急科専門医が複数名勤務しており、施設(病院)全体として臓器提供についての合意が得られる場合であれば、救急科専門医を核としたチーム医療によって、患者家族への十分な説明と脳死判定から臓器の摘出に至る一連のプロセスに充分耐えられるものと考える。
 というお答えをいただいております。
 さらに、提供施設についてのご意見も併せてお聞きしておりましたが、その下にいただいております。
 日本救急医学会では、上段の施設拡大についてのただし書きで条件設定というような形でお答えをいただいております。
 日本脳神経外科学会からは、
(1)臓器提供施設への経済的援助として・臓器提供施設への経済的援助・脳死判定料・臓器提供管理料
日本救急医学会からは、
(1)臓器提供施設の経済的負担の軽減として ・実際に必要となった負担額に相応する額を補う・脳死判定に対する診療報酬上の担保・脳死判定以後の管理に対する経済的補償・他施設からの人的支援に対する費用負担
となっています。
さらに、日本脳神経外科学会からは
(2)脳死者の臓器提供施設への搬送について
(3)提供施設への訴訟等について(4)臓器提供施設以外の施設への脳死判定チームの派遣ということで、お答えをいただいております。(2)の搬送、(4)の脳死判定チームの派遣については、非常に困難だというお答えでございます。
 さらに、追加資料2「脳死下臓器提供関連費用交付金」でございますが、経済的支援について、現在、臓器移植ネットワークからの申請額をつけております。
 左から、50万円まで、100万円まで、150万円まで、200万円まで、200万円超というところで、縦軸が件数です。ネットワークからの申請をいただいたもの、もしくは不要というのも含めて、25症例についての分布でございます。下に平均値、中央値、最高、最低を書いております。
 グラフの色分けですが、薄いのが前半の13例、濃いのが後半の12例ということで、ざっと見ますと、高額になったのは前半の13例の中に多く含まれており、最初はマスコミ等、いろいろなご苦労があったものと考えております。
 用意させていただきました資料、以上です。

黒川委員長
 貫井先生、何かありますか。

貫井委員
 いや、別に結構です。

黒川委員長
 山本先生、何か追加すること、あるいはポイントがございますか。

山本委員
 ありません。ただ、ここに専門医指定施設というのは、いままでここに書いてありました認定医指定施設が専門医指定施設になったということです。

黒川委員長
 これはデータを見ると、臓器提供施設についてはいろいろ難しい問題がたくさんあるわけです。前々から議論されていますけれども、1つは、実際に予想していないときに患者さんが飛び込んできて、脳死判定とか、摘出の手術のチームが外から来る。手術室を提供する。何時になるかわからない。そういうときに予定された手術はできない。そういういろんなことがあるわけで、そのコストがどれぐらいかというと、追加資料にあるように、最初の13例ではいろいろばらばらで、最高は 600万円かかったという例もあるし、最低というのはないんだけれども、中央値としてはこのぐらいであると。不要というのもありますけど、実際には、そこにずっと詰めていた看護師さん、ドクター、スタッフ、手術の器具、手術もそうですけど、予定されたのがキャンセルされるとか、いろんな話があるわけです。しかし、後半の12例を見ると、なんとなく正規分布的に100万をピークにしてるなあという感じはしないでもないというところで、こんな安くていいのかなという気もしないでもなくて、実際にはほんとのコストはもっとかかっていると思うんですよ。目に見えないコストというのはかなりあるわけで、つまり、このために手術を延ばされちゃったという人もいるわけなので、といったこともあるんだろうと。
 しかし、日本のいまの医療の状況と、いろんな話をすると、こんな話でさえも予算をつけるといっても数からいえば大したことないわけなので、このぐらいいいんじゃないの、といっても構いませんけども、病院のほうも、国立病院、国立大学でさえも独立行政法人とかになっちゃって、こんな甘い数字じゃいやだよというのかもしれないし、このへんちょっと様子を見てみないと、今年の4月から独法になったばかりですから、もうちょっとリアリスティックに、お医者さんが足りないとか、マンパワーがいま足りないのは明らかで、それが例の医局から派遣してるとか、さっき言った話ですけども、日本は5人に1人が65歳以上になってるにもかかわらず、医療費は相変らずGDPの7.5 %ぐらいでG7では一番低いまんまで、お医者さんがヒィヒィ言って働いてるだけで、やれ事故が起きたなんだかんだといってるだけで、こんなことで世の中みんな大丈夫かねっていう気がしますけども、それも含めて、というとまた1時間ぐらいかかっちゃうから、そうはいかないんだけど、これは予算をつけるか、つけたら増える、というほどでもないんだけど、しかし、参加していただくためにはそれだけのエフォートについて何かしなくちゃいけないんじゃないかなという気はしますけども。

相川委員
 この費用に関してですけど、私どもの慶応義塾大学病院、第2例目の臓器提供をしたわけですけれども、そのときは報道関係の対応、警備員を配置したり、大変なことでそれも含めての費用となると大変なものですけれども、もう一つここに隠れて見えないのが2つあります。
 1つは、医師は超過勤務手当を一切つけていません。ですから、夜中に出て来ようが、夜12時までこれに関して働いていようが、一切、医師の報酬はこれに反映されてなかったわけです。
 もう1つは、この法律が施行された当日から脳死判定の医師、それから脳波の技士をオンコールにして毎日リストをつくっています。しかしながらその人たちには何の手当も出してないで、ボランティア的にいまでもやっています、 365日、誰かがオンコールになってそこで連絡がつくように拘束されているわけです。実際に提供が1例でもあったから、それが報いられたわけですけども、こういうふうに毎日その人たちを拘束しておかなければいけないということもこの費用には含まれていません。そのへんのところはある程度アプリシエイトされるべきだと思います。

山本委員
 この交付金の100万上限というのは、私の聞いたところでは、超過勤務、あるいは時間外手当、職員のものは含まれないという流れで、それはいいんですね。となりますと、いままでの、慶応はどうなってるかわかりませんが、我々のところは、我々の中で4日も5日も徹夜状態で何十人という皆さんが超過勤務したそのものは、この中には入ってないわけで、そこが一番の問題になるところではないのかなと。だから、我々のところは交付金の申請をなかなかしづらいというのがあるわけで、そこを是非お考えいただきたいというふうに心から思っております。

黒川委員長
 いま相川先生がおっしゃったように、最初の頃はマスコミ対策なんかがものすごく大変だったのが、最近はマスメディアも全然クールになっちゃったんじゃないの。最近は来なくなっちゃった集団もあるんじゃないの。

小中委員
 全く来ないということはないんですが、人数がかなり減りました。ですが、提供後の情報公開、情報提供についてはどの施設もなさっています。

黒川委員長
 それだけ信頼が厚くなってきたのか、マスコミが冷めちゃったのか、ニュース性が低いからもうどうでもいいやと思ってるのかもしれないけど、だけど、実際にはなり定着してきた医療になってるということはたしかだと思います。だけど、実際は、いま山本先生、相川先生がおっしゃってるような、かなり隠されたコストがあって、医療事故が1つ起こると大騒ぎをするけど、お医者さんや看護師さん、スタッフは24時間一生懸命働いてりゃいいんだというような風潮だから、これも困ったもので、実際皆さんよくご存じだと思いますけど、例のアメリカのインスティチュード・メルスのクリントンのときの「人間は誤ちを犯すものだ」という話で年間に4万8千から9万人ぐらいの人が医療事故で死んでるって書いて、みんな大騒ぎするけども、その結果、アメリカ政府はどういうリコメンデーションを出したか知ってますか。それによるいろいろな社会的なヒューマンリソースのロスが年間約1兆円になるから、それだったらその1%を100億円をまず出して省庁横断的な対策をしましょう、ということでやってるわけですよ。ただ、頑張れ、頑張れなんて精神論をやってるようなアホな国じゃないわけだから、じゃあ、年間100億円予算をつけましょうということを国民が納得してるから、それに税金を使いましょう、というわけでしょう。実際のコストの1%を出しましょうと。それで何と言ったと思います? これで医療事故をゼロにしましょう、なんてばかなことは言いませんよ。5年で半分を目指そうと。これがリアリスティックなところで、日本は医療事故があるのはけしからん、という調子だから。こういう風潮はどこから出てくるかというと、この間のイラクのNGOを同じですね。右に揺れたり左に揺れたり、要するに、1人で何か考えてるということはほとんどないんだから、メディアもしっかりしてくれよ、と言いたくなるんだけど、多様性とか言ってるけど、ふわふわと右に流れたり、左に流れたりするから、結局のところは誰も責任を取らないから、お役所にお願いしますと。塚本室長のレベルで、局長まで上がらないと。私としては北村さんに一発、この3分の2の66例のようなことをまずやってもらいたいですね、直轄領ですから、この御紋が見えないかと言って最高裁まで行ってもらいたいものだということをまずやってみたらどうかなと思いますが、引き続きこれを検討したらどうかと思います。

北村委員
 是非お願いします。

黒川委員長
 いや、お願いじゃなくて、やっちゃったほうがいいですよ、先生が。

北村委員
 ネットワークから連絡があればやりましょう。

黒川委員長
 やってみたら? そうすると、局長がやめるといってますから、よろしくお願いします、なんてたくさん電話がかかってきますよ、たぶん。

北村委員
 定年までちょっとあるのでやります。

黒川委員長
 定年は関係ないんだから。銀行の頭取みたいなことを言わないでちょうだいね。

北村委員
 いや、それがあるからやれそうだと。

黒川委員長
 そんなことで、大久保委員、何か。

大久保委員
 この前、10月だったと思いますが、それから長いこと経っていますけど、あのときに、提供施設から脳死判定の第1回目の判定のときに移植施設に通報するとかしないとかいう問題もあったと思うんですけど、あれも積み残してると思うので、是非次回はやっていただきたい。希望としては、いまたくさんいろんな問題が出てきているので、皆さんお忙しいでしょうけど、私は暇ですので、いつでも来ますので、もっと委員会を開いてほしいなと思っています。よろしくお願いします。

黒川委員長
 大変いいと思います。たしかに積み残しがある。あまり頻繁にないというのは頻繁に問題が起こってないということがあるんだけれども、引き続いて問題になって解決されてないことはたくさんあるので、次の日程その他について、事務局ということですが、そういう意味では、移植医療そのものは医療としてはかなり定着しているし、移植を受けてうまくいってる患者さんもすごく多いわけで、そういう意味では、あとは脳死というのは結構重い問題ではありますけれども、これを日本の社会がどういうふうに受け入れていくかということにかかってるのかなという気もします。そんなことで引き続きいろいろ問題がありますので、これについて、さっき言ったオプトアウトの話もいま議会でいろいろやっているようですけれども、是非メディアのほうも、医療のいろんな話の根本的な問題はどこにあるのかということをもうちょっと取材して、もっと考えて、国民と共有の問題をシェアしない限りできないわけで、5人に1人が65歳以上、しかもみんな医療が進んでくると、あれも欲しい、これも欲しい。事故が起こっちゃけしからんといってるけど、じゃあ誰がそのコストを払うんですか、ということでメディアの責任も果たしてもらいたいなと思います。
 そんなことで、事務局からどうぞ。

井内補佐
 次回の日程でございますが、先生方の日程を調整させていただきまして、文書にてご連絡させていただきます。本日はゴールデンウィークの谷間で、この日でないと5月は無理だったので先生方にご無理を言いました。今後もご無理をお願いするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

黒川委員長
 大事な問題ですので、今日は終了いたします。やらないと問題点が浮き彫りになって来ない。そのうちまた日常性に埋没するというのはよくあることなんだけど、またよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(了)
問い合わせ先健康局臓器移植対策室
担当者齋藤・永野
内線2362・2366


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