04/04/23 感染症分科会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会第五回議事録 厚生科学審議会感染症分科会感染症部会 新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会                      平成16年4月23日(金)                   10:00〜12:00                                    日比谷松本楼(2F花水木の間)                   議  事  次  第 1.開  会 2.議  題 1)新型インフルエンザに対するレベル別対応について 2)新型インフルエンザ流行時の医療供給体制の確保について 3)インフルエンザA/H5N1の臨床について 4)ノイラミニダーゼ阻害剤を中心とした新型インフルエンザ対    策について 5)その他 <資料> 資料1   新型インフルエンザに対するレベル別対応について 資料2   新型インフルエンザ流行時の医療供給体制の確保について 資料2−1 カナダのインフルエンザ・パンデミックの影響について 資料2−2 オランダのインフルエンザ・パンデミックの分析について 資料2−3 感染症指定医療機関の指定状況(平成15年12月末現在)    資料2−4 SARS患者対応陰圧病床病床数及び入院対応病床数(平成16年1月6日現在) 資料3    インフルエンザA/H5N1の臨床について 資料4   ノイラミニダーゼ阻害剤を中心とした新型インフルエンザ対策について 資料2 1資料1資料1参考資料2−2 鳥インフルエンザ緊急総       合対策について ○廣田委員長 それでは、時間がまいりましたので、開会いたします。最初に感染症情 報管理室の滝本室長よりごあいさつをお願いいたします。 ○滝本感染症情報管理室長 おはようございます。委員の先生方にはお忙しいところ、第5回新型インフルエンザ 対策に関する検討小委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。こ の4月より感染症情報管理室長に着任をしております滝本と申します。以後よろしくお 願いをいたします。 結核感染症課長も出席を予定しておりましたけれども、国会関係の所用が入りました ので、今回は欠席ということでございます。御了承いただければと思います。 さて、本日の議題でございますが、まず、新型インフルエンザに対するレベル別対応 につきまして、前回の委員会で御指摘をいただきました点につきまして、見直しをして おりますので、これを踏まえて、改めて御意見をいただければと思います。 次に新型インフルエンザによるパンデミックが発生した場合には、医療需要が増える わけでございます。その規模に応じた医療体制を確保していく必要がございます。平成 9年の検討会におきましても、これにつきまして、試算がなされておりますし、本日は これに加えまして、CDCモデルによるカナダの試算等を事務局から御紹介いたしまし た上で、委員の先生方の御意見をいければと考えておる次第でございます。 次に、本日はお二人の先生にお越しをいただきまして、プレゼンテーションをしてい ただく予定でございます。私の方から御紹介をさせていただきますが、まずお一人目で ございますけれども、久留米大学の名誉教授の加地正郎先生でございます。加地先生は 新型インフルエンザ・パンデミック等の著書もございますように、インフルエンザ臨床 の第一人者のお一人でございまして、アジア風邪についてもお詳しく、また、97年の香 港の新型インフルエンザについては、実際に現地に行かれまして、調査・分析もなされ た御経験もおありでございます。 本日は過去の事例も踏まえましたお話がお伺いできるというふうに聞いております。 お二人目は、けいゆう病院小児科部長の菅谷憲夫先生でございます。菅谷先生も皆様 御承知のとおり、インフルエンザの臨床、特にノイラミニダーゼ阻害剤による治療につ いては、非常に多くの経験をお持ちの先生でございまして、また、3月にカナダで行わ れた世界健康安全保障行動グループ、パンデミック・インフルエンザ技術作業部会に、 日本からのメンバーとして参加をいただいております。 本日はノイラミニダーゼ阻害剤を中心とした新型インフルエンザ対策について、プレ ゼンテーションをいただく予定でございます。 以上が本日の議題の御紹介になります。 最後になりますが、本日もレベル別対応を始め、新型インフルエンザ対策につきまし て、忌憚のない御議論をいただければと思っておりますので、よろしくお願いをしたい と思います 。 ○廣田委員長 事務局の方から資料の確認をしていただけますか。 ○事務局 それでは、事務局の方から資料について御説明いたします。 まず、議事次第がございまして、1枚めくっていただきまして、資料1「新型インフ ルエンザに対するレベル別対応について」。 2ページが資料2「新型インフルエンザ流行時医療供給体制の確保について」。 資料2−1がカナダの例、資料2−2がオランダの分析でございます。 資料2−3、資料2−4として、それぞれ参考資料を付けてございます。 資料3が「インフルエンザA/H5N1の臨床について」、加地正郎先生のプレゼン 資料でございます。それが7枚ございます。 15ページに資料4としまして、菅谷先生のプレゼンテーション資料が4枚、以上でご ざいます。 ○廣田委員長 それでは早速議題の1「新型インフルエンザに対するレベル別対応につ いて」に入りたいと思います。事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、事務局の方から御説明いたします。資料1をごらんください。 「新型インフルエンザに対するレベル別対応について」は、前回御指摘いただきまし た事項を踏まえて、レベル0とレベルVを追加しております。今回は変更点、修正点の みを御説明させていただきます。 まず、平常時から準備しておくべきことを定めるために、レベル0を設定しておりま す。この場合の主な対応といたしましては、「インフルエンザサーベイランス」「一般 ワクチン接種の推進」「インフルエンザ治療の普及」「新型インフルエンザに関する研 究」「医薬品の安定供給(備蓄)」を追加する。以上を挙げております。 続きまして、国内において新型インフルエンザが汎流行した場合を想定してレベルV を設定しております。この場合、日本が海外へ新型インフルエンザを広げないようにす るという努力が求められることになると思われますので、その対応といたしまして、出 国時の健康審査の実施、出国の自粛勧告、こういったものを例として挙げております。 また、国内において発生が確認された初期の段階では、患者が少ないと思われますけ れども、こういう状態では、例えば感染症法に基づく入院勧告といった措置はよくなる と思われますが、広く流行した場合、この場合においては、そういった措置というのは 必ずしも有効ではなくなるといったことも考えなければなりませんので、そういった場 合に対応しまして、集会の自粛、例えば学校の閉鎖等というのを挙げております。 更にこの場合、医療需要が非常に多くなるといったことが考えられますので、公民館、 体育館等における患者への治療を挙げております。 最後にもう一点、前回、海外において高病原性鳥インフルエンザや新型インフルエン ザが発生した場合には、現地に専門家を派遣すべしという御意見をいただいておりまし たので、レベルIとレベルIII、海外においての事例のときに専門家の派遣を追加して おります。 以上でございます。 ○廣田委員長 ただいまの説明について、御質問がございましたらお願いいたします ○田代委員 これは前回も指摘したと思うんですけれども、この書きぶりは高病原性鳥 インフルエンザウイルスに由来する人のヒトの新型インフルエンザの話ですね。今回の この会議の目的というのはそこなんですか。それとも、過去の過去新型インフルエンザ というのは、我々百年間で経験しているのはすべて弱毒の鳥インフルエンザに由来する ヒトの新型インフルエンザによって起こったわけです。そうすると、今後もそういう可 能性は当然あるわけです。一旦起こってしまえば高病原性鳥インフルエンザ由来するヒ トの新型インフルエンザが起こった場合の健康被害は当然多いことで予想されますけれ ども、弱毒の新型インフルエンザウイルスによって起こったパンデミットも、過去の健 康被害の程度は十分に起こる可能性はあるわけです。 そうしますと、過去の例を考えると、弱毒の鳥インフルエンザウイルスがそこらで広 がっていたとしても、我々は気がつかないわけですから、ここに書かれているレベルの IとIIというのは事前に検知できない可能性がある。そうすると、当然それに対する対 応というのはできないわけです。突然IIIの段階から入ってくる可能性があると思うん です。 ○事務局 ただいま田代先生からお話がありましたように、察知できないということで すので、なかなかそれに対応した行政的な対応というのも取りにくいのかなと思いまし て、レベルI、IIについては、高病原性鳥インフルエンザが発生すれば家禽等が大量に 死ぬということをもっと察知できるし、それに対応したものとして、殺処分等の行政的 な対応も出てくるということで、I、IIの対応を整理しております。 御指摘のとおり、弱毒性の高病原性でない鳥インフルエンザが発生した場合には、地 下に潜ってしまう、察知できないということになりますので、新型インフルエンザ発生 時ということでIII、あるいはIVという形でI、IIを経ずに出てくるということも十分 にあり得るだろうと考えております。 ですから、0、I、II、III、IVと順番に経過していくということではなくて、0か らIIIになる、あるいはIVになるということも十分に想定した上での対応を考えておく必 要があるだろうと考えています。 ○廣田委員長 喜田先生、何か補足がございましたら。 ○喜田委員 ここに高病原性鳥インフルエンザ発生時と書いてあるのは、鳥におけるイ ンフルエンザのことですね。これはこれでいいんじゃないかと思うんですけれども、低 病原性のインフルエンザウイルスの中で。H5とH7のHAを持っているウイルスにつ いては、高病原性鳥インフルエンザウイルスというふうに農水の方では定義しておりま すので、H5とH7に関しては、これと同じに進めることができると思います。 ほかのH5、H7以外のHAを持っているウイルスについては、これはどうしようも ないので、農水の方の伝染病予防法では、弱毒のインフルエンザウイルスで、これはた だの鳥インフルエンザとして扱われておりますので、ここに入ってこないことになりま す。 したがって、そういうタイプのHAを持ったウイルスがヒトに入った場合にはIIIと いうことになると思います。 ○廣田委員長 加地先生、この後、加地先生のプレゼンテーションをお伺いすることに なっておりますけれども、何か今のところでコメントがございましたら、お願いいたし ます。 ○加地参考人 今のお話の問題は、高病原性というのは、鳥についての高病原性 ですね。ヒトについてはまだわからない。ただ、今回のH5N1は、後で申し上げます けれども、報告された症例に限って言えば非常に高率に肺炎を起こすし、致死率も高い ということはございますけれども、その辺の病原性の問題というのも、今のところ鳥の 問題についてのお話ですから、特に私が申し上げることはありません。 ○岡部委員 例えば具体的にはH9などがヒトで出たりするということが今まであって も、鼻風邪程度で治まるわけですけれども、仮にヒトからH9が出た場合は、今回これ のどれに入るのか。それがお伺いしたいのが1つ。 もう一つは、前にも申し上げたんですけれども、例えばこのままの文章で行っても、 国内において高病原性インフルエンザウイルスがヒトへの感染が確認された場合、レベ ルIIになるわけですけれども、こういったようなときに海外への情報の提供、交換とい うのは非常に求められることになると思うので、そのレベルIIの場合、あるいはレベル IVの場合には、それをきちんと書いておかないと混乱が起きるのではないかと思います。 それと、こういうところに書くべき問題ではないのかもしれませんけれども、そうい うものが出たときに、例えば外国で出れば日本は株が欲しいというわけですが、日本で 出たときには株は提供するんですか。それもどこかで議論しておかないと、その場でも のすごい混乱が起きると思います。 ○事務局 まず、レベルII、レベルIVについて、海外の情報提供を入れるべしという ことは、この中に盛り込んでいきたいと思います。 また、海外に株を提供するのかということについては、今後議論の中で詰めていきた いと思うんですけれども、やはり理論的にはそういったこともしていかなければいけな いのではないかと考えます。 また、H9をどこに入れていくかという点についてですけれども、これは高病原性鳥 インフルエンザとしては農水は定めていないということですので、そのときの状況は、 ヒトのを見ながら改めて考えさせていただきたいと思います。 ○事務局 H9は私も十分承知しておりませんが、このIII、IVの基準としましては、 括弧内に書いてありますとおり、高頻度のヒトからヒトへの感染があるかどうか。そう いうところで判断しようと思っていますので、H9がどの程度の感染力を持つかという ところで、IIIに入れるか、IVに入れるか、そこら辺を判断していくことになるのかと 思うんですが、感染力がない場合でも、そこはうまく入る場所がないというのは問題点 としてあるんだろうと思います。 ○田代委員 私は新型インフルエンザ対策というのは、弱毒も強毒もないと思っていま す。すべて新型というか、今までヒトの世界になかったウイルスがヒトの世界に感染し たと。1例が出た場合には、WHOではフェーズ0のステージ1、複数出た場合にはレ ベルIIに上げる。ヒトとヒトのトランスミッションが確認された場合にはレベルIII です。その段階でもまだパンデミックではないわけですから、インターパンデミックス テージですけれども、それは弱毒のウイルスであろうと、強毒のウイルスであろうと、 同じヒトの世界に対してパンデミックになる危険性は同じにあるわけです。ただヒトの 世界でパンデミックを起こした後の病原性の違いというのは、強毒の鳥のウイルスに由 来した方が大きな健康被害が出るということは十分想定されているということだと思い ます。 ○廣田委員長 そうしますと、ここで高頻度のヒトからヒトへの感染が確認されという、 1つのレベルの定義がある。先生の御意見ではこの定義自体はよろしいわけですね。 ○田代委員 それは新型インフルエンザ発生時ですから、それはそれでいいわけです。 ですけれども、それよりも前の段階が問題なわけです。起こったら、それは何か対策を 取るしかないわけですけれども、起こる前にどういうふうに対応できるかということが 大きなポイントになると思います。 ○廣田委員長 ほかにございますでしょうか。 ○加地参考人 鳥での病原性とヒトでの病原性は、必ずしも同じではないわけですから、 これはどういう新しい方が出たにしても、一応全部こういうのに入れて対応しなければ いけないんだろうと。そういう意味では田代先生おっしゃるのと大体同じだろうと思う んです。鳥の高病原性だからヒトにも病原性が強いと。病原性が弱い鳥のウイルスが人 間にかかったら、人間の方は必ずしも症状が弱いとは限らない。ヒトの病原性と鳥の病 原性は必ずしも一致するとまだわかっていないわけですから、新しい型が出れば、やは りそういう取り扱いをした方がいいと思います。 ○喜田委員 鳥に発生したときとヒトに発生したときを混同されているように思うんで すが、家禽に発生して、家禽に対して強い病原性を示すのがH5とH7で、病原性を示 さないけれどもH5とH7か分離された場合には、高病原性鳥インフルエンザとして扱 うことになっています。 ヒトでの新型ウイルスというのは、どのインフルエンザウイルスも可能性は否定でき ないので、ヒトで発生が確認された場合は、III、IVで書かれていると思うんです。 ○廣田委員長 ありがとうございます。ほかにございますか。 ○事務局 1つ事務局の中で、今、相談した結果、御相談なんですが、例えばI、IIの ところで、こちらの高病原性鳥インフルエンザということでI、IIを設定しているんで すが、ヒトに感染が確認された場合、これは低病原性の鳥インフルエンザであっても、 大体同じような対応を取ることになるかのなと思いますので、このレベルの設定の仕方 として、またはヒトへの感染が確認された場合と書いておりますが、または鳥インフル エンザのヒトへの感染が確認された場合ということで、ヒトに感染が確認された場合に ついては、高病原性、低病原性にかかわらず、こちらに書いてあるような対応を取ると いう整理の仕方ではいかがでしょうか。 ○岡部委員 それは鳥インフルエンザではなくて、鳥インフルエンザウイルスだと思うんです。 ○事務局 そこは直します。 ○廣田委員 田代先生、よろしいですか。 それでは、次の議題もございますので、また御意見があったら、この点に関しては、 後ほどまた御発言いただきたいと思います。 次に議題の2「新型インフルエンザ流行時の医療供給体制の確保について」、事務局 から説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、御説明いたします。資料2をごらんいただきたいと思います。 こちらは前回の報告書の内容の抜粋で、わかりやすく整理したものでございます。前 回、平成9年にまとめた報告書では、一応国民の25%が罹患、発病すると想定した場合、 あと、アジア風邪流行時と同規模の患者数が発生すると想定した場合ということで2つ の想定の下に、どの程度の患者が発生し、また、どの程度の入院患者が出てくるかとい うところを推計をしております。 (1)のところが、国民の25%が罹患、発病すると想定した場合の推計でございます が、全罹患数が約3,200 万人、4人に1人ということで、こういうような数字になりま す。これは一時期に3,200 万人が罹患するということではなくて、数か月続く全流行期 間累計の数字として3,200 万人罹患するということでございます。 このうちある程度症状の重いものが入院するということで、入院患者については約25 0 万人くらいだろうという推計になっております。 そうしますと、これは全流行期間累計でございますので、一時点での入院患者数とい うことで見ると、最大で14万人から32万人くらいが一時点での入院患者数としては想 定されるのではないかという推計になっております。 (2)、こちらも同じような考え方で推計をしておりますが、全罹患数が約1,000 万 人、全入院患者が約80万人、一時点の入院患者数が4万人から10万人くらいだろうと。 最大でこれくらいだろうという推計をしております。 これに対して、対応する病床の数ですが、2番目のところで空床数ということでまと めております。これは平成9年の数字ですので、念のため、直近のデータを括弧内に記 しております。一般病床の空床数ですが、これは約24万床あるということで、現在は2 3万床数くらいになっております。 結核病床の空床数、こちらが2万床、現在は1万床くらいまで減っております。一般 診療所の空床数、こちらが15万床ある。現在は13万床くらいになっております。 合計しますと、全部で41万床あるということで、当時の報告書では、結論としては、 十分対応できるくらいの空床があるという説明をしております。現在、37万床というこ とですので、この数字を見ても、大体収まる数字になっております。 課題といたしまして、何点が指摘されておりました。読み上げますと、実際にインフ ルエンザ患者が入院する病棟は小児科、内科等が中心になるということで、先ほど一般 病床24万床と言いましたが、ほかの病床に入院させるということはなかなか難しいのか もしれないという指摘があります。 2点目としましては、これらの病床が各病院、診療所において予備用として取り扱わ れており、すぐには稼働できない可能性があるということ。常時看護師等を張り付けて いるものではないものも含まれるということが指摘されています。 3点目が、実際の汎流行の場合には、医療従事者がインフルエンザに罹患して病床稼 働率の減少が想定される。病床があっても、医師、看護師等がいなければ稼働できない ということで、汎流行時にはそういった医療従事者が寝込んでいるということも十分考 えておかなければいけないという指摘です。 4点目が、新型インフルエンザが各都道府県や二次医療圏の病床密度に応じて流行す るとは限らないということで、一部地域に集中して患者が出るということになれば、そ の地域での病床が不足してしまうということも想定されるという指摘がされております。 以上が前回の報告書の内容のサマリーでございます。 次に資料2−1でございますが、海外でもこの新型インフルエンザの計画をつくるよ うな動きがございまして、これはカナダのパンデミック・インフルエンザのプランを該 当するところを抜粋したものでございます。 1枚おめくりいただきますと、テーブル1のところで、患者数の推計をしております。 カナダではAttack Rate15 %とAttack Rate35 %、2つの想定の下で患者数を推計して おります。 患者がすべてがすべて入院が必要かというと、そういうことではないということで、 例えばAttack Rate15 %のところを見ていただきますと、トータルでは454 万人くらい 患者が出てまいりますが、そのうち死亡するのが1万7,000 人くらい。入院するのが4 万6,000 人くらい。外来の治療が必要なものというのが200 万人くらい。半分以上に当 たる239 万人、こちらについては、特段の治療が必要のないような、そういうものが半 分以上を占めるんだという推計をしております。 資料2−2をごらんいただきたいと思いますが、こちらがオランダの計画から抜粋し たものでございまして、細かくいろんな推計をしておりますが、パンデミック10%、30 %、50%と3つの前提の下で、どれくらいの患者が出るかというところを推計しており ます。 年齢階級でも分けておりまして、一番上のところのnormal epidemic のところ を見ていただきますと、0〜19歳が12.5、これはパーセンテージです。この年齢に該当 する人口の12.5%が罹患します。 20〜64歳の人は9.5 %、65歳以上の人は7.7 %が罹患する。そのようなことを推計 してているということで、オランダ、カナダ、いずれも大体15〜35、オランダであれば 10、30、50というくらいの人が罹患するという想定の下で計画をつくっているというこ とでございます。 資料2−3でございますが、こちらの感染症法に基づく指定医療機関の数、現状をお 示したものでございます。特定感染症指定医療機関が2医療機関6床ございます。これ は新感受性の患者を入院させるためのものということで国が指定するものでございます。 第一種が14医療機関、26床ということで、こちらは一類感染症に対応するもの。 第二種が303 医療機関、1,710 床ということで、二類感染症対応のための医療機関が これだけの病床を指定されているということでございます。 SARSの流行時にも問題になりましたが、なかなかこの数だけでは対応できない部 分もあるということで、資料2−4でございますが、各都道府県において行動計画を作 成いたしました。その中で各都道府県で確保した陰圧病床の数をこちらにまとめており ます。陰圧病床数を持つ医療機関数が337 医療機関、陰圧病床数総数が2,534 床、その ようなことで存在するということがわかっております。 あと下の方でSARS患者入院対応病床数でございますが、1,290 床確保できている ということで、これはSARSの対応のために確保したものではありますが、インフル エンザについても十分活用できるだろうということで参考までにお示しいたしました。 事務局からの説明は以上でございます。 ○廣田委員長 最初にカナダの例で出てきましたCDCのメルツァー博士のメルツァー モデルですけれども、資料2−1の最後のパラグラフの2行目、ここでの発病率の定義 ですけれども、どのような人を発病者としているかというと、「they would be unabl to attend work or other activities for at least a falf a day」、半日以上仕事を 休んだり、日常の活動を休む。半日以上寝込むくらいの感じの発病と定義しているのが このモデルの特徴でして、これは1997年の新型インフルエンザの会議のときも発病率を 考えた場合、どこからが発病かというのは、必ずしも明確にはしていなかった。これは 全世界中そうでしたけれども、このメルツァーモデルでそこら辺をきちっとしようとい うので、少なくとも半日以上寝込むのを発病とする。 このメルツァーモデルは米国CDCは勿論ですが、オーストラリア、カナダ、オラン ダ、いろんな国がこれに基づいて予測をしております。ちょっと補足させていただきま す。 これにつきまして、御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。このモデ ルだけではなくて、この議題についてでございます。 ○稲松委員 従来インフルエンザの患者さんを入院させると、インフルエンザの院内感 染ということがかなり広範にこれまで起こっておりまして、それが恐らく患者数をうん と増幅していく大きな要因になるだろうと。病院機能自体も失うと。 片一方で、では入院させないという、患者さんのたらい回しという現象が起きる。そ ういう意味で必要病床数の推定というのは、どのレベルを要求するかでかなり違ってく る可能性があるんですね。 そういう意味でインフルエンザ院内感染対策として、このレベルのものが必要なんで すというおおざっぱなガイドラインを出してこないと、なかなかのこの数が読めないん じゃないかと。SARSレベルのものを求めるのか、従来どおりでいいのか。後から菅 谷先生からお話があると思いますけれども、ノイライミニダーゼインピタを使用すれば、 この程度対応で十分対応できるんだとか、そういうおおざっぱな方向性を出しておかな いと、数の予測自体が空理空論になってしまう可能性があるんじゃないかと思います。 ○廣田委員長 先ほどのメルツァーモデルですけれども、これはワクチン接種とか、い わゆる治療、抗ウイルス薬、そういったのが使用されない前提でのモデルになっており ます。だから、マキシマムを。 ○稲松委員 そういう意味ではノイラミニダーゼインピタを使うと随分話が違ってくる ところがありますので、では、こういうときには例えば病院の中でもこの一角に患者を 集めてノイラミニダーゼインピタを使えという指導をするのかしないのか。そこのとこ ろが随分あるんじゃないかと思うんです。 逆にそういうことを下手に騒ぎますと、この間聞いた話で、インフルエンザ脳症の患 者さんを入院させようと思ったら、病院の中ではやると困るからといって病院をたらい 回しになったという話があるんです。それは大変人道に反する問題なんで、病院として も大変情ない話ですけれども、では、入院させて周りに広がったら病院の責任はどうす るかという話にだれが答えられるか。そういう問題なんです。 ○廣田委員長 先ほどのモデルでは、マキシマム・バードンを計算しておりまして、そ れに対応する医療供給体制となっておりますので、その中で治療が行われた場合は、恐 らくこの医療供給体制は満たすことになる。その中でてすので、その治療自体のスペシ フィックなことを議論するのは、供給体制の確保というところでは混乱するといけませ んので、この後の議題でよろしゅうございますでしょうか。 ○稲松委員 数を出す上で、そういうところをある程度出ていないと、数の出しようが ないなという気がするんです。 ○廣田委員長 わかりました。 ○事務局 事務局からよろしいでしょうか。資料1の方でレベル分けをしておりますが、 レベルのIVに該当するところで、感染症法に基づく措置をして、入院勧告等を入れてお ります。ただ、これは患者の数がまだまだ少数にとどまっている段階での対応というこ とで、少数であれば先ほど御説明したSARS対応医療の陰圧病床などもフルに活用し て、ある程度入院勧告のような隔離措置みたいなことができるだろうということで書い ておりますが、WHOでの専門家の会議、前回の会議でも中嶋補佐の方から御報告いた しましたが、SARSと違って、新型インフルエンザの場合ですと、入院させるという 対応だけでは流行を食い止めることができない。むしろ流行速度を緩やかにするための 対応として、入院させるような措置を考えているようです。 ですから、ある程度大規模に流行してしまった事態を想定したものがレベルのVとい うことで、そういった事態においては、場合によってはこちらに書いてある公民館、体 育館がいいのかどうかという議論はあるかと思いますが、こういうところに入院させる ということ。あるいは自宅での治療ということも想定した対応になってくるんだろうと 考えております。そこら辺のところをこの場で御議論いただければありがたいと考えて おります。○雪下委員 現場の医療機関ということでは、新型インフルエンザの場合、 パンデミックになる以前の問題が重要だと考えているわけですけれども、仮にこのパン デミックで資料2で出された25%の場合の14万人から32万人くらい入院が必要だろう というようなことに対して、現状の話をされましたが、たかだかこれはSARSの臨時 指定された医療機関全部を含めましても、わずか5,000 〜6,000 、恐らく1万は行って いないだろうと思っているわけですが、それについて今の説明では、一般の医療機関に 入れるような話をされていますけれども、現場としては、新型インフルエンザの場合、 一般医療機関に、到底これは入れることはできないと思っているわけですが、この数字 については、これからいろいろ治療の問題等で出てくるかもしれませんけれども、現在 のところ、厚生労働省では数が、これで対応できるだろうと思っておられるのか。とて も足らないから何とかしようと思っておられるのか。その辺のところを感じだけで結構 ですから、教えていただきたいと思います。 ○事務局 私もどのような規模の流行が起こるかということで、大規模な流行になって しまえば、当然足りなくなる事態も出てくるだろうということで、それが大規模発生時 ということで、5番目の最悪の事態を想定した対応ということで、病院以外の場所での 患者の治療ということも一応考えておく必要があるだろうということで入れております。 雪下先生御指摘のとおり、SARS対応病床数、都道府県の行動計画に入っているも のが1,290 床ということですので、これで収まるかというお尋ねについては、ごくごく 初期の段階での対応のための病床になるだろうというふうに認識しております。 ですから、レベルIVの段階では、この1,290 床の中でフルに対応し、なるべく蔓延 の速度を緩めるということになるでしょうし、それで対応できない事態になれば、それ 以外の一般病床、あるいは場合によっては医療機関以外の場所での治療ということも想 定しておく必要はあるかと思います。 ○廣田委員長 ほかに御意見ございますか。 ○菅谷参考人 今の雪下先生の御意見を聞いていますと、ちょっと違和感を覚えたんで す。 実は新型インフルエンザが出れば、多分インフルエンザだから、普通の一般医療 機関でやるに決まっているし、恐らく何千万という患者さんがすぐ出てきますから、一 般の医療機関に入院するし、一般医療機関で当然診察するだろうと私は思っています。 何か特別なSARSみたいな病気とは全く違いますから、出ればインフルエンザで多数 の患者さんが出ると私は思っています。 ○廣田委員長 ほかにございますか。 ○雪下委員 新型インフルエンザというものはどんな形にしろ、今の一般のインフルエ ンザの対応ということで一般医療機関では考えていていいということでよろしいんでし ょうか。 ○菅谷参考人 そうです。 ○加地参考人 以前バンデミック、例えばアジア風邪とかいうときのことを思い出して おりますと、どういう流行になるか。いろいろ可能性は論じられますけれども、実際は わからないんです。 それと、各地区、あるいは病院ごとでもいろんな事情が違いますから、一応ここはい ろんな書き方は必要でありまして、それくらいにやっていただいておきながら、要する に臨床の場で言えば、臨機応変にやらないとしようがないんです。そう思います。 ○岡部委員 アウトブレークが起きたときの定義というのはなかなか難しいと思うんで す。状況、あるいは病気によっても違うわけで、数人でアウトブレークと言うときもあ るし、数千人でアウトブレークの場合もあるんですけれども、新型インフルエンザとい う形でヒト・ヒト感染が広がれば、菅谷先生言うように、だれもかかる病気になってし まうので、制限をかける必要がないんですけれども、以前のパンデミック、アジア型な どと違うのは、あのときは気がついたらみんなかかっていたという状況で、今はむしろ その前の例えば数人の段階、あるい一人の段階でもヒトにとっての新型はわかってしま う。それはそれでいいわけですけれども、何人くらいのときにこういう対応をするか。 余り根拠がなくなるかもしれませんけれども、規模ということで想定をしていおく必要 があるんじゃないかと思うんです。 つまり、ヒトがどのくらいの、10人くらいの単位だったらこうだけれども、1,000 人 になるのか、あるいは地域で何分の1になるか、そういうようなことによって随分対応 が違ってくると思うんです。数人の段階で雪下先生が御心配になるように、一般の医療 機関でというのは恐らく無理だろうと思いますけれども、それが特定の病床を全部を占 めるような状況になっても、なおかつ特定の病床を使えというのは非現実的だと思いま す。 ○事務局 そういう意味では資料2−4、SARSの経験が1つの目安になるかなと思 っていまして、全国で1,290 床、各都道府県で指定してもらっております。全国ならせ ばこれだけの病床があるということですが、その分布も考える必要がございますので、 各都道府県単位で見ると、数十床ですかね。そのくらいの規模であれば感染症法に基づ く、これは指定感染症に指定するという準備もしておりますので、入院勧告という対応 は可能かと思います。 ○廣田委員長 ほかにございますでしょうか。 資料2−2、5ページでございますけれども、このモデルですが、これの特徴は、ま ず全部で発病率が30%、50%というのとは別に、年齢を3つの段階に分けておる。この 表の中では出てきませんけれども、各年齢グループ別にハイリクスグループの割合、ハ イリスク者の割合、ハイリクス者以外の割合というのを設定しております。そして、そ のハイリクスとハイリクス以外のおのおので外来・通院の割合、入院の割合、死亡の割 合というのを決めております。 だから、全部で6段階、6つのグループに分けての推定でございます。したがって、 例えば今まで80%かかるとか、せいぜい20%だろうとか、いろんな自分が観察した対象 ・集団でいろんな意見があったんですけれども、このモデルはそれを克服したモデルに なっております。 したがって、この表も例えば一番下のCDCが設定した数値、通院、入院、死亡の割 合、それもハイリクス、ハイリスク以外といったようなもので分けた一番下の分でいき ますと、全体の発病率は30%でも、そのとき0〜19歳では49.3%が発病する。だから、 この上から49.3、25.6、15.0、この3段階の人口構成の構成割合、例えば人口のうち0 〜19歳が何%というのをかけた加重平均を取ったら30%になるというモデルになって おります。 だから、全体としては30%でも、これだけの年齢構成によってはばらつきが出てくる ということでございます。 それと、これでは発病というのを、あくまで半日以上寝込むということで定義して、 その中でもまた通院するのはその一部であり、入院するのは一部であり、死亡するのは 一部と、こういった段階的なレベルに応じた推定をしております。 それでは、次の議題3「インフルエンザA/H5N1の臨床について」で、加地参考 人にプレゼンテーションをお願いいたします。 ○加地参考人 資料3がございますので、ごらんいただきたいと思います。 先生型に図の方を見ながら私が申し上げることを聞いていただきたいと思います。 まずは現在、毎年流行しておりますインフルエンザというものはどういう症状、経過 を取るかということがA/H5N1のときと比べまして、どう違うかということになる かと思います。 図1をごらんいただきますように、私どもが一般に風邪という、風邪というのは余り いい使い方ではないんですが、言っておりますものは、ここに書いてありますように、 インフルエンザは勿論その1つでありますけれども、あと「普通感冒」と書いてあるも のとか、「咽頭炎」が顕著な方とか、いろんな形でございます。その中でインフルエン ザというのは非常に特徴的なものと申しますと、急激に高い熱で発病しまして、頭痛と か腰痛とか筋肉痛とか、全身の痛み、あるいは全身の倦怠感というような、全身症状が 強いというのがほかの形の風邪と違う。しかも、それと同時に、あるいは少し遅れて鼻 汁とか咽頭痛、咳といった呼吸器症状が出てくるということでありまして、体温がやは り急に上昇して38度、39度になりますし、1日ないし3病日くらいまでで最高体温に 達した後、次第に下がってまいります。全体の経過としては大体1週間、肺炎などの合 併症を起こさない限り、1週間くらいの経過で治癒に向かう。あと少し咳が残ったり、 全身倦怠感が残ることもございますが、大体そういう経過を取ってくる病気であるとい うことでありますけれども、そういう典型的なインフルエンザ以外に、私ども流行に際 して受診される患者さんを診てまいりますと、図2に書いて、いろんなケースを、実際 にインフルエンザウイルスの感染が確認された症例でありますけれども、図2を見てい ただきますと、熱もほとんど出ないで、これでありますと、初めの左上の2つくらいは コモン・コールドみたいな形で、あとは典型的な熱が出て、いろんな症状が出てくる、 いわゆるインフルエンザと私どもが臨床的に診断する形もありますし、もうちょっと重 症な形もあるということで、実際にはインフルエンザウイルスに感染症という立場から 見てまいりますと、典型的なインフルエンザの病像以外に、軽いものから重いものまで、 いろいろありますということが図2に書いてございまして、その例を挙げております。 結局、インフルエンザというのはどう考えたらいいかと言いますと、図3を見ていた だきますと、一番上の横に「病型」と書いておりますが、いわゆる臨床的にインフルエ ンザと診断するものは、縦に見ていただきますと、インフルエンザウイルスの感染で起 こってくるのは勿論多いわけでありますが、臨床的に私どもがインフルエンザと診断い たしましても、実はインフルエンザ以外のウイルスで、バラインフルエンザとか、いろ んなもので起こっているものもございます。これはごく少数であります。 逆に、ここが問題ですが、インフルエンザという臨床病型ではなくて、呼吸器にイン フルエンザウイルスが感染したらどういう病像を呈してくるかというのは、このウイル スという欄の一番上を見ていただいて、インフルエンザウイルスが呼吸器に感染したら どういう臨床症状を呈してくるかと言いますと、これを右の方にインフルエンザウイル スの欄を見ていただきますと、勿論、大部分は臨床的にインフルエンザという臨床症状 を呈してくる。しかしながら先ほど幾つかの症例をごらんいただきましたように、ごく 軽く済んでしまう非定形的な形、あるいはもっと重症の多気道感染の症状がもっとひど くなってくる形というものまで実はいろいろある。 私どもが実際に臨床の立場で扱っておりますのは、インフルエンザの病型でインフル エンザウイルスが起こっておる。その辺を扱っておるかと思いますけれども、実際には インフルエンザウイルスが呼吸器に感染しましても、典型的なインフルエンザという病 型を呈してくるだけではなくて、非常に軽いものから、非定型的なものまでいろいろ混 じっておる可能性がありますということであります。 その次に、やはりインフルエンザの場合は、H5N1でもそうですし、従来のインフ ルエンザもそうでありますけれども、表1に示しますように、肺炎合併症が一番問題に なります。脳炎というのもございますけれども、数から行って、インフルエンザ肺炎の 合併症というのが非常に問題でありますが、これまでの流行で見てまいりますと、アジ ア風邪も含めまして、インフルエンザ肺炎というものが起こってまいります頻度という のは、大体5%から10%くらい、10%以下だろうと思います。 ところで、例外的にはと申しますか、高齢者におきましては、一番下の2行をごらん いただきますように、20%とか25%くらいは肺炎を合併してくる。高齢者はハイリスク であります。一応肺炎が起こってくる率というのはこんなものであるということをごら んいただいたところで、この高齢者、あるいは慢性の心肺疾患、糖尿病といったハイリ クスのグループでは、インフルエンザの病状は重症になりますし、肺炎合併率も高くな るということであります。そういうところでこのH5N1の症状というか、臨床を申し 上げたい思います。 まずは1997年の5月に第1例がH5N1の症例が出まして、12月までに御存じのよ うに感染が確認された例は18例であります。その18例の一覧はは表2にございます。 ここで私も実は先ほど廣田先生から御紹介いただきましたように、流行の最中に香港 まで行って、病院を訪れまして、いろいろ患者さんの病状とか、いろんなことについて ディスカッションもしましたし、調査もさせていただいたんですが、結局、この9ペー ジに「香港1997年のインフルエンザA/H5N1」のインフルエンザ、今まで私が申し 上げました従来のインフルエンザとちょっと違っている点というものをここに8つほど 挙げておきました。 今、18例というものに限ってみれば、肺炎を合併して重症になったのは5例くらいご ざいまして、非常に重症で亡くなっておる。これは単純に申しますれば18例中6例が亡 くなっておる。非常に高率であるということはございます。 そして、発病時の状況は普通のインフルエンザと変わらなかったんですけれども、一 般に嘔吐とか下痢とか腹痛とかいう消化器症状は従来のインフルエンザでも見られます けれども、H5N1の場合は、かなり特徴的に見られておる。 これは一般にもそうですけれども、血液検査でリンパ球の減少というは指摘されてい る。 と同時に、これは余りないことですけれども、肝機能の異常とか腎機能の異常と いうものが見られた例もあります。 やはり一番問題は肺炎の合併ということでありまして、このときに一般では肺炎が合 併するという場合には、インフルエンザウイルスの感染が起こりまして、それに引き続 いて、細菌の二次汚染が起こって、そして肺炎ということが、普通我々の診るインフル エンザ肺炎ということであります。勿論、ウイルスだけで起こってくる肺炎もないこと はないんですけれども、大部分は私ども従来の流行のときに診ますとインフルエンザ肺 炎というのは、細菌の二次感染が加わって起こっておる。 したがって、抗菌療法というのも非常に広く行われることになるわけでありますが、 香港で見ましたH5N1という場合には、余り細菌の二次感染というのは見られていな い肺炎であります。 また、一覧表でごらんいただきますように、肺炎を起こして亡くなっているとか、余 りハイリスクというグループではございません。年齢も若いということであります。 そのときに治療が問題になりまして、当時はアマンタジンは使えるようになっており ました。ノイラミニダーゼインピタはまだ出ておりません。 そのときのはウイルスはアマンタジンとリマンタジンには感受性がございました。し かしながら例数も少なかったし、使う時期というのは、まだいろいろございまして、ど うもこのアマンタジンが有効であるとかいうようなことは臨床的には判断できないまま に18例の発生だけで終わってしまったということであります。 このときを見ましても、子どもさんは非常に軽くて治っております。その点が私、向 こうの担当のドクターにお聞きましたところ、子どもは大事をとって軽くても入れてお るんだといようなことをおっしゃるドクターもありました。実際に病棟に行っていみま すと、子どもさんは私が行きましたときには治って、隔離病棟の中で元気に遊んでおっ たような状態か多うございましたが、そういうところもございました。 必ずしも見ておりまして、18例中6例の死亡。肺炎は5例で、1例は肺血症などを起 こして、褥瘡ができて、肺血症を起こしていたと思いますが、要するに、ここで見る限 りにおいては18例中6例の死亡。そのうち5例は肺炎で非常にひどかったということで あります。 そのうちの1例は御存じのように、1997年5月に発病をした3歳の男のお子さん、こ れは病院に入る前に、どこかほかの病院でアスピリンを投与されておりましたから、ら い症候群まで起こっておりました。これはちょっと別に扱う必要があるかもしれません。 それと同時に今度はベトナムの、これは文献的なものだけで見たわけでありますが、 今度のH5N1は、ベトナムで亡くなった方のうちの10名の報告が出ております。これ も年齢が非常に若い、高い熱と咳は必発でありますし、非常に呼吸困難が強いというこ とで、そのほか下痢とかもございます。 これはミスタイプだと思いますが、「ベトナム2001年のインフルエンザA/H5N 1」のところに、「呼吸青異常(水疱瘡)」と書いてありますが、これは「呼吸音異常 (水疱音)」で、これは聴診器で聞きまして、例のラッセルが聞こえる。肺炎を起こし た所見でありますが、そういうのがあるということで、水疱音で、胸部X線写真で肺炎。 このときもリンパ球の減少とか血小板の減少、それから肝機能異常というようなことあ りまして、この場合も、10例中8例が亡くなっておるということで、こういうところを 見ても非常に重症の印象を受けるということと、この場合、A/H5N1は、アマンタ ジンとリマンタジンに耐性であるという記載がございまして、この10例のうちオセルタ ミビルは、5例に投与されておりますけれども、どうも見てみますと、投与を開始の病 勢は遅いです。これは何とも言えないと思います。 それともう一つ最近出ております。1997年の香港で亡くなりましたA/H5N1の症 例の2例についての剖検報告がございます。そのときに、勿論、肺炎を合併しておりま すし、亡くなるときはMOFを起こして亡くなっておりまして、このときにはリンパ球 の減少とか、血小板の減少であります。 この辺のところから、病理解剖学的な所見として特に強調されておりますのは、いわ ゆるVAHS、つまりウイルス関連貧食症候群ということで、このインフルエンザにつ きましては、もともとインターフェロンとかいろんな産生があって、そのために非常に 高い熱とか全身症状が強いということを言われておりますが、この場合にもサイトカイ ンがいろいろございますけれども、この場合、IL6、インターロイキン6などが異常 産生して、そういうところでこういうVAHSが起こっているんだろうというところで、 サイトカインの異常産生というのが非常に強調されておりました。 そこでちょっと連想しますのは、最近問題になっております子どもさんのインフルエ ンザ脳炎、あれは高サイトカイン血しょうというのが指摘されて問題になっております けれども、こういう点が問題だと思います。 次の10ページを見ていただきますと、結局、今申し上げましたように、1997年の香 港で18例、ベトナムとかいうところでかなり出ておりますけれども、非常に例数は限ら れておりますけれども、非常に高率に肺炎を起こして致命率は高い。どうもA/H5N 1というのが重症であるという点は注目すべきでありますけれども、もう一つは、やは りこれまでの経験からまいますと、インフルエンザというのは、非常に軽い例から重症 例までいろんなものがあるということでありました。それはここの14ページにこういう 1997年のH5N1の流行がありますときに、CDCからも、これは重症例があるのは確 かでありますけれども、その周辺には軽症の例もあるのではないかという可能性を強調 してあるところであります。 ここの上の「引用1 MMWR」のところが書いてありますように、病気のスペクト ルというのが症状のほとんどないものから、致死例までいろいろあるのが我々がこれま で経験したインフルエンザでありますから、今回のH5N1であっても、これはたまた ま入手とした例がこういうことであって、そのほかにいろんな病像を呈しているものが あるのではないかということを特にここに書いてある。その下の現場の香港でも、ドク ターの御意見でありますけれども、いわゆる発病時はインフルエンザの症状であって、 後非常に重症の経過を取っておりますが、一般にはH1N1にしても、H3にしても、 非常に軽いものから重いものまでいろいろあるので、ここで報告されている18例という ものだけで、このインフルエンザH5N1の感染のすべての臨床のスペクトルを表して いるものではなかろうか。非常に軽いものもあるのではなかろうかということでありま す。 実際に流行が終わりまして、いろんな家禽との接触歴を持つ人とか、このH5N1の 患者さんの診療に当たった医療従事者とか、こういう患者さんが出た家族というのを後 で調べてみますと、H5N1に対する抗体を持つ例も少数でありますが、証明されてお ります。 どういう症状を呈しておったか、あるいは不顕性感染であったかということ は特に記載はございませんけれども、いずれにしても、そういう重篤ではないというこ とは考えられるのでないか。 ベトナムで10例のうち8例が亡くなっておる。非常に重篤で致死率が高いという事実 は事実でありますが、その周囲にはいろんな軽症の例、あるいは不顕性感染があるので はないかという可能性を考えておくことも必要ではないかということであります。 最後に先ほど廣田先生からいろんなシミュレーションの25%とか、カナダの例がござ いましたけれども、実際に従来経験しておりますバンデミックのときはどんなものかと。 我が国でのものを調べてみますと、大正7、8年、1918年、1919年のスペイン風邪のと きの第1波が人口5,300 万人のうちの2,100 万人くらいが症状を出しておりますので、 そのときの発病率というのを見ますと、大体40%です。第2波、第3波というのは非常 に少のうございます。全体にこのスペイン風邪の場合に、症状発病率というのは、大体 40%くらいと考えていいのではないかと思っております。 もう一つ、アジア風邪のときには、10ページにグラフが書いてございます。これはア ジア風邪流行史というところにあったものから引用しておりますので、これは罹患率と 書いておりますが、これは感染率でありまして、流行が過ぎ去った後に採血をいたしま して、抗体があるかどうか調べました。この場合には流行が終わってからの1回の採血 でありますけれども、このときのアジア風邪の病原、H2N2というものは70年ぶりに 出現したウイルスでありまして、そういう意味でいわゆる新型なんですけれども、70歳 以上の人はある程度の抗体を持っている人がおりました。そういうことを考えましても、 1回の流行が終わった後で採血をして、抗体があるということであれば、そのときのア ジア風邪の流行に感染したということが言われる。これは感染率であります。年齢的に いろいろ違いますけれども、全体的に見ますと、保健所の職員の方全体で見ますと、第 1波で20%、後で見ますとトータルで45%くらいであったとか、あるいは自衛隊の方で 見ますと、これは特殊な環境で暮らしておられる方だと思いますが、第一波の後に50%、 第2波で70%というのが抗体は陽性であったということで感染したということが考え られますけれども、我が国ではアジア風邪のときの感染率で行くと、大体50%くらいで はないかということが推定されているということです。 以上です。 ○廣田委員長 ありがとうございました。何か御質問等ありましたらどうぞ。 ○加地参考人 結局こういう流行の場合に、割と短期間に全国に患者が多数発生すると いうことでありますので、それに対応する医療供給というものが非常に問題になってく るわけでありますけれども、先ほどのお話のように日本で例えば3,200 万人かかるとか 言いましても、一時期に3,200 万患者さんが発生するわけがない。短期間でありますけ れども、ある程度の時間の広がりの中で患者さんがぽつぽつ発生しまして、割に急速に ピークに達して、割に急速下がってくるということかと思いますけれども、こういうの は恐らくシミュレーションではなくて、実際問題としては、スペイン風邪のときに、大 体そういう経時的に患者さんを各県別に数が上げられた記録が残っております。そうい うのを見れば、いち、どこで、どのくらいの患者さんが発生して、どういう具合にピー クになって、どういう具合に終わっていったか、経時的な患者発生の状況がわかると思 いますし、アジア風邪の場合には、これは週別に大体患者さんの発生数が当時ですから、 出ておりまして、昭和32年ですから、週別に患者さんが全国各地でどんどん出てきて、 ピークに達して終わっているという記録がたしかあると思いますから、そういうのをも う一遍検討してみると、当時に比べて、人口も違いますし、交通機関の普及率も違いま すし、いろいろ社会環境というのは違っておるかもしれませんけれども、インフルエン ザというのはとにかく昔から急速に広がるのはわかっておりまして、記録で見ると、江 戸時代のころから割に短期間で全国に広がっている。やはりスペイン風邪の当時、アジ ア風邪の当時の広がり方の速度というのは大いに参考になるんじゃないかと思っていま す。 ○廣田委員長 ありがとうございました。御意見、御質問等ございましたらどうぞ。 ○岡部委員 97年の香港のH5、あるいは今回のベトナム、タイでもかなり重症化の患 者さんが多いと、これは事実だと思うんですけれども、それはあくまで鳥のインフルエ ンザウイルスが直接に人間に来た場合の症状であって、それがヒト・ヒト感染に行った 場合に、全く同じ症状が出るかというのは未知だと思うんです。重くなるかもしれない し、軽くなるかもしれない。そういったことも一応考えておく必要があると思うんです。 もう一つ、不顕性感染の問題なんですけれども、香港の調査で周辺の特に接触のあっ た方の調査でも、確かに抗体陽性は出ていますけれども、1%行くか行かないかくらい だったと思うので、多数の不顕性感染者がいるというのは、少なくともH5N1の鳥型 インフルエンザそのものである限りはそんなにないのではないか。それもヒト・ヒトに なったときにどういうことになるか。これも科学的にはわかっていない部分だと思うん ですけれども、そういうような考え方でよろしいでしょうか。 ○加地参考人 岡部先生おっしゃるとおりでして、不顕性感染はそんなに多いとは思い ません。大体多くても1けたパーセントだと思います。この場合には、流行を広げると いう意味でも、不顕性感染の存在は問題かと思いますけれども、もっと大事なのはさっ きおっしゃいましたように、私もこれが知りたいんですが、鳥からこの場合は直接ヒト に移っている。しかも、鳥との接触がかなり大きいので、濃厚感染かもしれませんけれ ども、それは別としまして、鳥からヒトに移った場合、更にヒト・ヒト感染が起こった という場合に、ヒトからヒトに行っているうちに、ヒトに対する病原性が非常に強くな るのか。そうではないのかというのは私はわからないと思いますが、1つ参考になる問 題は、スペイン風邪のときの第2波のときに、第1波のときには致命率は大したことは なかったんですけれども、第2波のときには致命率が高くなりました。あれはどういう 問題なのか。 つまり、ヒト・ヒトとずっと継代されていくうちにヒトに対する病原性が非常に強く なったのかどうなのか、そこはちょっとわかりませんけれども、ヒト・ヒトといくうち にヒトに対する病原性が強くなってくるのか。そうではないかというのはわからないだ ろうと思います。 ○廣田委員長 私メモを持っているんですけれども、香港で1997年18人の患者が出た ときに、ヒト・ヒト感染が起こったという証明で発表された論文で、患者に接触した医 療従事者、この抗体陽性が3.7 %、患者に接触していない医療従事者の抗体陽性が0.7 %で、患者に接した医療従事者の方が約5倍陽性率が高いというのでヒト・ヒト感染が 起こったと言っております。 それから、当時養鶏に携わっていた人の抗体陽性率が、場所によって違うんですけれ ども、高いところでは10%行っています。そのくらいの不顕性感染はあったということ だと思います。ほかにございませんでしょうか。 ○加地参考人 今、岡部先生がおっしゃいますように、現にヒト・ヒトの感染が起こっ たら、すぐさまそこに行って調べてみないと、インフルエンザの臨床といってもいろい ろ違ってくる可能性はあるんです。鳥からヒトに直接移った第一世代の場合、ヒト・ヒ トと移った場合、どう違うのかというところまで詳しく見ていないといけない。殊に最 近でわかりますのは、いろんな薬の治療も始まっておりますから、それにどう治療効果 があるのか、ないのかというところまでなるべく早くヒトの感染が起こったら調べてお く必要がある。何しろ非常にわからない部分がいっぱいあるだろうと思います。 ○岡部委員 そういったような場合には、仮に家禽での集団発生が見られたような場合、 あるいは、あるところでヒトと思われるインデックスが出た場合には、周辺の血清疫学 調査は絶対に必要なことであると思うんですけれども、そういうことができるような状 況に是非環境を整えていただきたいと思うんです。 ○加地参考人 先生おっしゃるとおりで必要だと思います。それと同時に現地ではいろ んな外来病院には患者が来るわけです。風邪症状、そういう人も全部本当は調べられる なら一番ありがたい。 つまり、非常に重症の肺炎までなる入院しなければいけない人以外に、軽症の人をど のくらいおるのかというのも是非調べていただきたいと思いました。現に1997年も実際 に病院のスタッフはそういうことをおっしゃっておったんですけれども、そういうデー タが出るかと思って随分調べたんですけれども、私見つけることができませんでした。 ○廣田委員長 岡部先生おっしゃった血清疫学調査でございますけれども、大体そうい った大混乱のときには、研究はよしてくれという雰囲気になってしまいますので、これ は研究ではなくて必要な情報を取る。また、それを発信できる情報ですので、これは絶 対に必要なわけで、是非とも御協力をいただきたいと思いますし、そういった広報みた いなことも大事だと思います。 ○岡部委員 よけいなことなんですけれども、そういうときに例えば血清の調査をやる とすると、数日以内で答えが出てこないと、それは緊急の調査ではないということを言 われるんですが、これはやはり全体の対策という意味で、少々時間がかかっても必要な 検査であるということを是非とも強調していただきたいと思うんです。 ○廣田委員長 先ほど1997年の香港のときの養鶏に携わっていた人の陽性率というの は、2002年に発表されておりますので、非常に大事なことだと思います。 それから、加地先生からのアジア風邪ときの感染率でございますけれども、これは流 行が一段落したときに採血すると、どうしても自分はかかったから調べてもらおうかと いう人がどっと出てきまして、正確には取れませんので、事前に、例えば全国保健職員 だったら、協力してくれる人をパンデミックの前から特定しておいて、その中で採血に も協力するという人をちゃんと押さえておくというのは大事だと思います。採血に協力 すると答えた人の方が多く感染するというのはあり得ないわけですので、そういったき ちっとしたスタディーをするというのは大事だと思います。 ○雪下委員 先ほどの関連になるかもしれませんが、パンデミックになる前の、今まで の歴史を踏まえて、どういう対策を取るかということが一番大事なんじゃないかと私は 思うわけで、そうしますと、その前に押さえ込むというためには、今、加地先生が言わ れたように、現場の医療機関にいろんな形でインフルエンザが来るわけで、そのインフ ルエンザに対してそれが新しい形のもので、それに対する対応が十分確立されたという 段階ですと、医療機関での対応は可能ですが、それもまだ確立されていない場合には、 何とかそれを早期にそこで検索して発見していくということが大事になるわけです。そ うしますと、各医療機関では対応ができませんので、身近なところで検索できる、ある いはまず対応して、どういう病気かを確認できる指定医療機関が必要だということを先 ほどから申し上げているわけですが、そういうことから言いますと、新型といってもい ろんな形があるわけでありまして、それには簡単に対応できないのも出てくるんだろう と予測します。 そうしますと、今の第一種の指定医療機関というのが、10件か14件くらいの、重要 医療機関でしかないということになりますと、これは対応できないので、これは法的に 47都道府県には最低1つつくるということになっているわけで、まず、その辺からの整 理を、これはSARSのころから言っておりますが、急いでまずしてもらうと。それで 各医療圏ごとの二次医療、これは大体数はそろっておりますが、もう少し充実したもの にしていくとか、それで安心して現場の医療機関からそういうころへお願いして、早急 に対応できるということが大事なんではないかということを私は思っているわけです。 ○加地参考人 先生のおっしゃるのは非常にごもっともですけれども、昔のインフルエ ンザの流行のときを考えると、今の体制というのは、私から言わせると驚くほど整備さ れてきておるし、情報も早くなってきていると思います。そういうものは是非もう少し 進めていただければと思っております。私ども今の体制は感心しております。 ○廣田委員長 雪下先生にお伺いしたいんですけれども、恐らく初期の段階で、かなり 専門的な医療機関で十分患者を見て、その情報をとにかく提供するというのは大事だと 思うし、それがあって初めてパンテミックの極期を迎えても、今度は一般の医療機関で も対応できるということになると思うんです。その初期の段階で、これを特定感染症指 定医療機関であるとか、第一種感染症指定医療機関であるとか、そういったことに規定 してしまう必要があるかどうか。専門の医療機関であればそれは可能なのか。二種でな いといけないのか、一種でないといけないのか。 ○雪下委員 外来で見ておりまして、一番の初めというのは普通のインフルエンザとは ちょっと違うようだということでもって、それが相談できる医療機関という意味で私は 申し上げているんで、それがどうもこれはもっと専門のところでというと、どこも対応 できないで、たらい回しになるという、先生が先ほど言われたようなことで、その現場 の医療機関が責められても、これは困ってしまういうことなんで、そうかといって、そ のまま、もう少し様子を見ていようと思って見ていますと、それが大きな事故になりま して、後から問題になるということを問われましても、これはどうしようもないと思っ ているわけです。○廣田委員長 ほかに御意見ございますか。 それでは、次の議題で「ノイラミニダーゼ阻害薬を中心とした新型インフルエンザ対 策について」、菅谷参考人より御説明をお願いいたします。 ○菅谷参考人 それでは、新型インフルエンザについて、私の考えを述べてみたいと思 います。 まず、日本のインフルエンザの現状ですけれども、日本では迅速診断を実施して、ノ イラミニダーゼ阻害剤で治療するということが、今はどこの医療機関でも行われており ます。普通の診療所でも、日本各地の診療所で行われております。専門的な医療機関で なくても、これが行われていますが、実はこんなことをやっているは日本だけで、世界 の先進国の中でも迅速診断はほとんど行われていませんし、実はノイラミニダーゼの治 療も行われているのは、日本とアメリカで、アメリカが日本の5分の1か10分の1くら いのレベルでやっております。 このインフルエンザの迅速診断は保険でも認められて、冬のルーチン検査となってい ますが、恐らく世界の90%か95%以上日本で使われていると思います。 ノイラミニダーゼ阻害薬も勿論、これ主にオセルタミフルですけれども、世界で最も 多く使われていて、多いというか、昨年は世界の3分の2くらいを日本が使っていると 思います。 (スライド) これは迅速診断キットとノイラミニダーゼ阻害剤の最近の売り上げですが、ここの20 01年の段階で、オレンジ色のところが迅速診断キットですが、ここで世界一と言われた ので、これは昨年ですけれども、これはドルで表示してありますが、これは120 億円で すけれども、恐らく世界の90%以上に日本が迅速診断キットを使っていると思います。 ノイラミニダーゼ阻害剤も、たしか2002年の段階で世界一と言われておりますが、この 段階では2003年、昨年の流行では世界の3分の2くらいを日本が使い切ったと言われて おります。 (スライド) これはオセルタミフルの昨年の1月〜3月までの売上げをバーセンテージで示したも のですが、日本は昨年の1月から3月はオセルタミフルが不足して大きな社会問題とな りましたが、そのときでさえ、日本はこの1−3月期に世界の76%の売上げがある。そ して、ここでアメリカは日本の5分の1、EUはわずか9%で、結局、ヨーロッパ、ド イツとかフランスとかイギリスではほとんど使われていないということがこれでおわか りになると思います。 (スライド) 次はワクチンですけれども、日本のワクチンは学童集団接種をやっていたために、ず っと世界最高峰のレベルを保っていましたが、94年で学童集団接種をやめて、世界で最 低になっております。その後ずっと回復してきて、ここは2003年ですけれども、昨年は 3,000 ドース、1,500 万本が生産されて、なお足りないという事態になりした。このレ ベルは大変に多く打ったようですが、実際は1987年の学童集団接種を華やかにやってい た時代の最後のレベルと等しいものです。非常に日本はこういうU字型のへこみができ ております。(スライド) これは、ここにいらっしゃる田代先生と私と米国の研究者で2001年に「ニューイング ランド・ジャーナリズム」に発表したデータですが、日本は学童集団接種を華やかにや っていたころは、インフルエンザの死亡率が低くて、やめてからインフルエンザの死亡 率が高くなった。これは主に高齢者の死亡率ですが、インフルエンザの死亡が増えたこ とを発表しております。 (スライド) 日本のインフルエンザワクチンは、そういうわけで今戻ってきました。日本の生産能 力は戻ってきております。今、新型インフルエンザの単一ワクチンをつくれば、4,500 万人が2回接種を受けるくらいのレベルに戻っております。 しかも、日本のインフルエンザワクチンの世界に比べて強いところは、日本はすべて国 内メーカーの生産です。ですから、新型インフルエンザということになれば、輸入とか そういう問題が出てきますが、国内メーカーということが非常に心強い。 それから、今、4,500 万人分が供給できる体制と言いましたが、最近、欧米で話題に なっているアルミニウムのアシュバントを使っているやり方にしますと、この10倍つく れるというから、これは詳しい話はわかりませんが、日本は4億5,000 万人分のインフ ルエンザワクチンを供給できるかもしれません。 (スライド) 新型インフルエンザ対策は、結局、日本は迅速診断はほとんど日本の独壇場で、タミ フルも世界の半分とか3分の2を使っている。圧倒的に世界一です。 インフルエンザワクチンは世界のベスト5くらいに入ってきましたが、しかし、すべ て日本の国産でやっている強みがある。そういう中で新型インフルエンザ対策を考えた 場合、とにかくワクチンが供給されるまで数か月、あるいは半年くらいはかかる。そう すると、普通に浮かんでくるのは、オセルタミフルに予防に使用するという考えが出て きますが、これは後で述べますが不可能です。絶対にこれはできません。普通に考える のは、これは世界の先進国共通のコンセンサスですが、新型インフルエンザの出現当初 は、オセルタミフルを治療に使おうということでございます。 (スライド) 新型インフルエンザ対策の目標となりますが、目標というか、新型インフルエンザが 出現すれば、新型インフルエンザに全員かかると思います。必ず罹患してしまいます。 これも目標ではありませんが、かかって免疫を獲得することが重要になります。 勿論、新型インフルエンザにかかると言っても、死亡とか入院を減らすことは重要な ことになります。それに付随した社会の混乱を防ぐことも重要な目標となります。 (スライド) 新型インフルエンザがしばしばマスコミを通じて報道される中に、エボラ出血熱とか、 天然痘等と比較して、あるいは中世のペストなどと比較して報道されることがあります が、それは私は明らかに間違いだと思います。先ほど3,200 万人と言われましたが、こ れは平均の数字ですが、3,000 万人程度発病することは避けられません。必ず感染する し、新型インフルエンザ出現後は、A型インフルエンザとして毎年必ず流行を繰り返し て、今はやっているA香港型インフルエンザは勿論、出なくなります。 それから、Aソ連型インフルエンザも出なくなって、新型インフルエンザ、何が出る かわかりませんが、これが毎年冬季に流行を繰り返します。 ですから、1年後か2年後くらいには、ここにいらっしゃる皆様方100 %が新型イン フルエンザに感染します。勿論、ここにいらっしゃる皆様方だけではなくて、皆様方の 家族もお子さんも100 %感染します。そういう病気ですから、先ほど言ったかかること が目標というのは非常に変な言い方ですけれども、かかることは絶対に避けられません。 (スライド) この3,000 万人の患者を減らすことは、現在の人口密集とか交通事情からは非常に難 しい。ただ、患者数が多くても、これを治療して、現実にはオセルタミフルしか使えな いと思いますか、オセルタミフルで治療して、できるだけ軽症化することが非常に新型 インフルエンザ対策の重要な目標になると思います。 (スライド) 次は死亡や入院を減らすことについて述べてみたいと思います。 (スライド) ノイラミニダーゼ阻害剤を使いますと、当然新型インフルエンザによる死亡者とか入 院患者を減らすことは可能だと思います。オセルタミフルはすべての鳥インフルエンザ に有効なことがわかっています。ということは、すべての新型インフルエンザに有効な こともわかっています。このことについては後で述べます。24時間以内の治療開始が望 ましいとされております。 (スライド) 新型インフルエンザによる死亡なんですけれども、普通、世界各国の新型インフルエ ンザの対策の担当者とか、インフルエンザの研究者たちは、新型インフルエンザの致死 率は0.1 とか0.3 %を考えています。そういう中で私のようなインフルエンザの専門家 は、そうはいかない。もしかすると、スペイン風邪の再来であれば、今でも致死率は1 %くらいになるということを言っている。普通は0.1 とか0.5 %くらいで新型インフル エンザの対策を考えていると思います。スペイン風邪を考えれば、スペイン風邪のとき には日本の致死率は1.6 %でしたけれども、今は当然オセルタミフルがなくても、ほか の医学レベルが相当発達していますから、私は1%と考えております。 先ほども話が出ておりましたが、H5N1とか鳥インフルエンザの高い死亡率は、新 型インフルエンザの死亡率とは決して直接的な関連はありませんし、私が申し上げたい ことは、国際的な常識はこのような、例えば10%とか20%という死亡率は全く考えられ ていません。そのようなことで新型インフルエンザ対策は、どの国も立てていないと思 います。普通に考えているのは、先ほどのカナダのあれにもあったけれども、あれもこ のくらいを考えていると思います。0.1 〜0.3 %、1%も予測していないと思いますが、 私はこれはあり得ると思っています。 (スライド) オセルタミフルによる治療はどうなるか。例えば致死率を1%とします。ここに赤く 書いたのは、ものすごく高い致死率です。こんなになったら、1%もしも新型インフル エンザで出たら大変なことになります。日本全国で30万人の方が亡くなってしまう。こ れはたまたま例として挙げただけですが、オセルタミフルで治療すれば、0.3 とか0.1 %くらいに低下させる。どのくらい低下するかということについては、専門家によって 意見は異なります。ただ、外国ではり専門家と言っても、ほとんどタミフルを使ったこ とのないインフルエンザの専門家ばかりですから、要するに彼らが使っていない理由は、 タミフルは余り効かないと思っているから使わないんですけれども、日本でこれだけ使 われてきた私の経験からすれば、もしも1%の死亡率であったとしても、0.3 %とか、 もしかしたら0.1 %くらいに低下させることができるのではないかと思っています。そ うすると、30万人が10万人に、恐らく5万人以下くらいに減るかもしれません。 入院患者大幅に減少すると、当然考えられますが、これは今の私たちの臨床の経験で も、今、インフルエンザの入院患者は大幅に減ってきております。 (スライド) これもマスコミで予防内服のことがときどき出てきますが、これは誤りです。そんな ことは絶対できないし、予防内服に使うということは、先進諸国のコンセンサスにはあ りません。アセルタミフルの予防内服は膨大で不可能ということと、予防内服をしても 免疫を獲得することはできないから、これは絶対にできないんですけれども、1億人が 1か月間オセルタミフルを飲み続ければ、その1か月間は勿論、日本ではほとんど完璧 に抑えて、新型インフルエンザは出ないと思いますが、やめた瞬間に大流行が起こる。 ただ、大流行の開始時期を遅らせるだけで意味はないと考えています。 (スライド) もう一つ、社会の混乱を防ぐことという目標があります。 (スライド) 今まで言いましたように、新型インフルエンザの患者数を減らすことは無理です。こ こにいらっしゃる皆さん方だけではなくて、その家族も全員必ずかかりますから、それ は無理だけれども、患者数が幾ら多くても、死亡とか入院が少なければ社会の混乱は余 りないということになると思います。そういうことなんですが、幾ら軽くても、3,000 万人の患者が一時期に集中しないように、先ほどから言われているように、五月雨式に 患者さんか発生するようにするために、学級閉鎖とか映画館、劇場の中止とか、さまざ まな手は考えられると思います。 (スライド) タミフルの実際的な使い方になりますが、現在、多くの医療機関ではオセルタミフル は実際には3日投与で使われています。それは昨年オセルタミフルが不足して社会問題 になったとき、多くの医療機関は2日投与とか3日投与でやりましたが、十分それで効 いているという経験が医者の方にもあります。 それから、患者さんの方にすると、オセルタミフルを投与すると、1日か2日で熱が 下がってしまう。そうすると、私たちが5日投与しても飲んでくれないということもあ ります。ですから、実際問題としては3日投与で使われる。そうすると、新型インフル エンザが出現したときに、これは当然ですけれども、医療関係者というか医者は3に投 与でやります。当然不足するということが肌身でわかっているから、新型インフルエン ザが出ましたともしも厚生労働省が発表すれば、もうその時点で3日投与でしようとす るのに決まっているから、これはもう現実的にはこうなります。3日に短縮することに なると思います。 これは非常に現実に合った、現実にこうなるんですが、いいことだ と思います。というのは、ノイラミニダーゼ阻害剤は広く公平に使用すべきで、必ず治 療が受けられるという保障が国民にあることが大事です。もしも、それでできない。タ ミフルが足りないから優先順位を付けるということがもしもどこかに漏れれば、それは パニックになってしまいます。 (スライド) 新型インフルエンザの患者の治療ですが、日本では新型インフルエンザ患者は迅速診 断をして、タミフルで治療するということになります。これは日本ではということです。 欧米では迅速診断は全然やっていないからできないし、オセルタミフルもほとんど使わ れていないから、勿論、現状ではやれないし、最終的にも余りやらないだろうと思いま す。国民の方も、全然使われていないから、こういうお薬の存在も知らないから、こう いうことは要求してこないかもしれません。ですけれども、日本は新型インフルエンザ の患者を、迅速診断は別としても、タミフルで治療することができなければ大問題にな ってしまうと思います。日本ではオセルタミフルで治療するということが必要になると 思います。 その場合、オセルタミフルを48時間以内にやるというのが国民の常識になっています が、これは24時間以内にやることが有効ということは文献的にも証明されているから、 当然、新型インフルエンザとなれば、普通のインフルエンザより重いから、24時間以内 にやりましょうと。短期治療ということは、現実に医者は当然短期治療でいくと思いま す。これは後で述べますが、耐性の問題も発生してきて、短期の方がいいかもしれない ということはあります。 これは優先順位は設けることはできない。できないという意味は、日本は全員治療す る量を確保する限り社会的な問題になってしまう。大事なのは、公平に必ず治療を受け るということが日本では大事だと思います。 (スライド) 迅速診断ですけれども、これは世界ではほとんど行われていないんですけれども、こ れはパンデミックとなればみんなインフルエンザだから、必要ないという意見もありま す。確かに診断的な必要性は低いけれども、先ほどもちょっと出ておりましたが、加地 先生がおっしゃった第2波の問題もあるし、かかったということを迅速診断でもしもわ かれば、次の第2波で重くなってくるような場合でも、もう自分はかかっているから安 全だとか、そういうことでかかったという証明に私は必要だと思うし、多くの国民は当 然求めてくると思います。夜中でも迅速診断をしてくれと、今のインフルエンザでも来 るわけですから、新型インフルエンザのときは、全員やるかどうかは別として、かなり 希望者は多くなると思います。 それから、証明というのは、今日の話とは余り関係ないのかもしれませんが、ワクチ ンをアルミのパクチンを使った場合に、一旦かかったということがわかっている人にア ルミのアジュバントワクチンを2回接種するというのは非常に副作用が強くなると思う ので、やはりかかった人かどうかというのはねワクチン政策を実際にやっていく場合に も重要だろうと思います。 (スライド) これからこの間、日本感染症学会で発表したタミフルの耐性の問題を述べたいと思い ます。 まズ、オセルタミフルを投与しますと、子どもも大人も翌日には50%が解熱してしま います。2日後には90%が解熱します。ところが乳幼児にオセルタミフルを投与すると、 熱は下がっているけれども、喉からウイルスが合計で1週間から10日くらい出ています。 ところが、大人とか学童ではタミフルを投与すると熱はすぐ下がる。ウイルスも喉から すぐに消えてしまいます。ですから、いかにも抗生物質的な反応をいたします。 ところが、新型インフルエンザが出現したときは、国民全員が初感染で、乳幼児と同 じような形だから、これはウイルス排泄が非常に長引いて、大人でも周囲の感染源にな る可能性があります。 (スライド) タミフルの耐性の方は、東大医化研の河岡先生のグループにやっていただきましたが、 これはタミフルの投与後、ウイルス排泄が長引く乳幼児の30%に耐性ウイルスが検出さ れています。今回の耐性ウイルスは、HAのスパイクの方に変異がなくて、感染性を保 っている可能性がありました。大事なのは、耐性ウイルスが検出された乳幼児は決して 重症化したわけではありません。やはり2日間で熱は下がっています。その様子を見て いると、耐性ウイルスは1週間から10日で消失しています。だから、MRSAとかいう 問題とは全く違います。 ウイルス排泄が短期間の学童とか成人では耐性はほとんど出ておりません。 (スライド) これはその模式図ですが、このピンクの方は大人ですが、タミフルで治療しますと、 これはウイルス量ですが、タミフルで治療するとこの2日間くらいで熱が下がってしま って、喉のウイルス量も下がって消えてしまいます。 ところが、乳幼児はタミフルで治療しても、熱はやはりこの1日目、2日目で下がって しまうんですが、喉のウイルス量はずっと続いていきます。自然と消えていきますが、 このずっと続いていく中の30%くらいの人に耐性ウイルスがこういう遅い時期に出て くるわけです。 ですから、これはまだ全然わかりませんけれども、タミフルの投与を5日間やると、 ここまでやると、むしろ耐性を誘導する可能性があるのではないか。むしろどうせここ で熱が下がってしまうんだったら、この辺でオセルタミフルの投与はやめた方がいいん じゃないか。要するに、3日間投与の方が耐性が少ないんじゃないかということが今後 の研究課題だと思います。 (スライド) そういうことで、上の方はほとんど間違いなく言えると思います。新型インフルエン ザが出現したら、普通だったら大人も1週間くらい寝込むはずなんだけれども、オセル タミフルを使うと2日くらいで、もう3日目くらいから仕事ができるかもしれないけれ ども、そこで出てくれば新型インフルエンザをばらまく可能性があるということです。 だから、大人も1週間くらいは休んでほしい。 もう一つ、耐性を防止するためにも、オセルタミフルを3日間の短期投与した方がい いというのは、今後の研究課題だろうと思います。 (スライド) ワクチンのことについて簡単に触れておきたいと思います。ワクチンは欧米ではアル ミを使ったアジュバントワクチンのことが非常に話題になっていて、その方向に今、進 みつつあると思います。その理由は、新型インフルエンザのワクチンの抗体上昇は低い から2回接種が必要だし、効果を上げるためにアジュバントというふうになりますが、 アジュンバントを使うとワクチンの量もすごく倹約できるんです。大体10倍くらい増や せると。日本でも4億人分もつくれるということになります。これは非常にいいことだ けれども、やはりアジュバントワクチンは、日本は皮下接種だから、皮下接種でやると、 アジュバントだと副作用が出る可能性がある。 あと、こういうワクチンを使うのは、インフルエンザがはやってから半年後とか数ヵ 月後にワクチンを使い始めると、その中には3,000 万人の人は新型インフルエンザにか かった人がいるわけです。その人たちにもしもアジュンバントワクチンを2回も接種し たら、副作用の危険性がある。 そういうわけでアジュンバントで行くというのは1つの選択ではあると思いますが、 必ずしもアジュンバントが日本の現状にいいかどうかは、要するに欧米ではほとんどタ ミフルで治療することはけりなんで、欧米ではアジュンバントワクチンで行くというオ プションしかないんです。日本はオセルタミフルの治療というオプションがあるから、 よくこの辺は検討する必要があると思います。 (スライド) 病院の診療体制ですが、これは先ほどから話題になっていますが、病院の診療体制は 強化する必要があります。オセルタミフルの予防投与は、先進諸国の中で唯一、これは 考えようと認められているのは、医療機関です。医療機関のオセルタミフルの予防投与 は、非常によさそうに思えますが、実際にはかなり難しいということを言っておきたい と思います。新型インフルエンザはSARSではありません。SARSではないから、 これは空気感染を起こす新型インフルエンザですから、これは病院内でドクターとナー スだけが危ないわけではありません。空気感染だから、当然事務員も危ないし、栄養士 も危ないし、薬剤師も危ない。ですから、どこまで投与する範囲を広げていくかという ことで、なかなかこれは実際には難しいと思います。 (スライド) 新型インフルエンザの診療体制で、先ほど話題になっていたのは、新型インフルエン ザというよりも、鳥インフルエンザが日本で数人出た場合に、特殊な医療機関に持って いくだと私は理解しましたが、新型インフルエンザだとして、ヒト・ヒト感染が空気感 染で起こるようになれば、到底あの体制では対応できないと思いますし、あのような一 部の医療機関に対応できるくらいの新型インフルエンザだったら、それは余り怖くない ということだと思います。実際には全医療機関が全力で取り組むことになると思います。 一番大事なのは、病院の外来を夜間まで延長して頑張る必要があると思います。これ は日本では今でもインフルエンザの時期になると、夜中でも迅速診断を求めて、オセル タミフルを求めて患者が来院します。特に小児の救急などはつぶれそうですけれども、 新型インフルエンザとなれば、24時間以内に迅速診断とオセルタミフルの投与を求めて 多くの患者が来院することになります。 日ごろから肺炎球菌ワクチンの接種も重要なことだと思います。ワクチンは備蓄でき ない、準備できないと言われておりますが、肺炎球菌ワクチンは十分に備蓄というか、 日ごろから打っておくことはできます。是非これはもっと進めないと、これは実は肺炎 球菌ワクチンの接種は新型インフルエンザ対策の重要なものだと思います。 (スライド) これは最後のスライドですが、日本は3,000 万人と予測されている新型インフルエン ザ患者全員をオセルタミフルで治療する体制が必要だと思います。これは3日投与でも 5日投与でもどちらでもいいんですけれども、もしもこれができなければ、大きな社会 問題になってしまいます。ただ、これができるのは唯一日本だけです。数年経っても世 界各国はこういう体制はなかなか取れないのではないかと思います。唯一日本だけで日 本は昨年の段階で1,400 万人分のオセルタミフルを用意して、それは4日間分だという ので、それを3日投与に直しますと、2,000 万人近くの治療ができる体制が昨年ででき ておりますので、世界各国は先進国も含めてほとんどできないと思いますが、日本は既 にその土台はできていると言えると思います。世界各国はほとんどアルミアジュンバン トにしたワクチンでいくしかないだろうと思います。 日本が進んでいる理由は、日ごろのインフルエンザ対策が非常にハイレベルだから、 新型インフルエンザ対策もハイレベルでできるというわけです。 最後に申し上げたいのは、過大な被害の予測によって、国民の間にパニックを起こし てはならないと思います。私も過大な予測をする方なんですが、10%というのは、SA RSの10%と新型インフルエンザの10%では全然意味が違いますから、国際的な常識の 範囲内の予測にしないといけないし、特にマスコミの間に10%とか20%という話が流れ ているのは、極めて国際常識に反したことが流れていると私は日ごろ感じています。 以上でございます。 ○廣田委員長 ありがとうございました。10%、20%というのは、それは発病率ですか、 致命率ですか 。 ○菅谷参考人 致命率です。 ○廣田委員長 ありがとうございました。菅谷先生のプレゼンテーションに御意見、御質問等ござい ましたらどうぞ。 ○稲松委員 大変参考になる話でありがとうございました。ただ、若干気になるところ がございまして、1つは、タミフルに限定していいかいうことです。私は何年かリゼン ダとタミフルと併用して使っていますけれども、消化器系の副作用の面を考えますと、 むしろリゼンダの方がいい面もあります。ただ、使い方が少し難しいという点がござい ます。ただ、特定メーカーへの寡占状況をつくるような意味もありまして、両方含めた 話にしておいた方がいいような気がいたします。 もう一つは、迅速診断の必要性についての話ですが、実際上、夫婦とか家族で来られ て、そのうちの1人だけ陽性に出て、あとは陰性とかいうのが結構ございまして、むし ろ臨床経過とか流行状況とかの方がインフルエンザの確定診断では非常に有用なわけで、 マイナスだったからインフルエンザではないということとは決してないという意味も含 めて、全例迅速診断が必要だということは多分ないだろうと。むしろそういうことを国 民に認識してもらうことの方が重要な気がいたします。 実際に新型が軽症であるという可能性もあるわけで、重症か軽症か全く予測のつかな い話で、そういう意味では、臨床状況を早く把握するということは大変重要で、そうい う意味ではインフルエンザの定点観測のサーベイランスのシステムもあると思いますけ れども、そこでできだけ早く、どの程度の重さのインフルエンザなのかということを把 握する必要があるんです。 恐らく血清かどうとか、タイプから言えば新型だけれども、症状から言ったらこれま でのインフルエンザの常識では外れる軽症だという可能性もありますし、また、脳症や 出血肺を起こすような重症になる可能性もあるし、それは全くイーブンに両方の可能性 はあるんで、そういったことをむしろ臨床的なサーベイランスという視点で把握すると いうことが非常に重要な気がいたします。 以上です。 ○廣田委員長  ありがとうございました。小児を対象とした立場と成人、大人、高齢者 を対象とした立場とちょっと違うかもしれませんので、加地先生何かアトバイスがござ いましたらお願いします。 ○加地参考人 新型インフルエンザがどういうことなのかわからないというのもあるか もしれませんけれども、私が考えますのは、迅速診断キットとか、抗インフルエンザ薬、 今お話のあったのは、オセルタミフルですけれども、ああいうのを全例にやらなければ いけないかということ。これはそうではないと思います。 ましてや今、日本はああいうのが非常に行きわたっているものですから、この間のイ ンフルエンザでさえパニックになって、患者さんとか家族の方から早く迅速診断をやっ てくれとか、オセルタミフルを投与してくれという要求が多かったということを私は聞 いております。私のところに薬を要求してくる人があったくらいです。 私は新型のインフルエンザの場合でも、日本はパニックが非常に起きやすいと思うん です。こういう場合に、実際に診療に当たられる現場において、前例にキットをやらな ければいけないのか。前例にオセルタミフルをやらなければいけないのか、それはちょ っと疑問に思います。 それと、もう一つは、今お話が全然出ませんが、アマンタジンもちゃんと方に効くよ うになっておりまして、あれも現在は非常に耐性の問題、副作用の問題というのが非常 に強調されて、オセルタミフルの独壇場になっているように思うんですけれども、そこ でいろんな面でアマンタジンというのも考えておいた方がいいと思いますし、そういう 意味でどういう場合にキットが必要である。どういう場合にオセルタミフル、あるいは アマンタジンの投与が必要であると、一応ガイドラインというのか、そういうのをこれ までの経験からつくっておいた方がよろしいんじゃないか。 もう一つは、ワクチンの問題で、アルミワクチンとおゃっていますが、アルミワクチ ンの場合に抗体上昇がどれだけいいのかどうかわかりませんけれども、もう一つは、副 作用とかいう点で十分にこれは検討した上で実施しなければいけない問題だろうと思い ます。 ○廣田委員長 ありがとうございました。ほかに御意見ございませんか。 ○雪下委員 今、最後に過大な予測によってパニックにならないようにというお話がご ざいましたが、菅谷先生は学者であり臨床家でもおありになっていると思いますけれど も、0.1 〜0.3 %の致命率というか、死亡率というか、それがパニックにならないで容 認されるものかどうか。今、厚生労働省の関係でもいろいろ予防接種の問題で出ており ますが、400 万人に1人、500 万人に1人の健康被害に対してワクチンを変えてどうし ようかとか、いろんな問題が討議されているおるときに、何百万人の中で、どうせ移っ てしまってどうしようもないんで、0.1 〜0.3 %くらいの犠牲者が出てしまうというこ とを、果たして今、国民が容認するのかどうか、私は大変疑問に思いながら今、聞いて おりました。 やはりそれ以前にそれを予防するという対策、勿論、ワクチンを含めてそういうもの を学者の先生方にも是非とも、それに対する対応を、国民が安心する対応をつくってい ただきたい要望したいと思います。 ○廣田委員長 それでは、話が出ましたメルツァーのモデルで、これはオーストラリア が推定しているんですけれども、そこではいわゆる半日寝込むという人が発病したとし ますと、その中での致命率が、例えば20〜64歳で普通の人で0.04%、ところが同じ20 〜64歳でもハイリクス状態の人は2.5 %としております。これはまるめて言わずに、年 齢とかハイリクスとかいったので考えていかないと、混乱すると思います。 ○岡部委員 細かい点を議論するときりがないので、2、3お尋ねしたんですけれども、 加地先生もおっしゃっていましたが、アマンタジンも含めて、先生はタミフル、タミフ ルとおっしゃっているけれども、新型インフルエンザに対する対応というのは、タミフ ルというのはたまたま出てきたのか、先生はタミフルが一番いいというふうに言ってい るのか。抗インフルエンザウイルス剤としてお使いになるのかどうか。 それから、世界で唯一日本のみ可能である。これはオセルタミフルのことだと思うん ですけれども、ワクチンの場合は、国産化されているから心配ない。しかし、一方では オセルタミフルでは国内生産ではないということがあるが、それを含めて日本のみが可 能であると考えていらっしゃるのかどうか。 もう一つは、インフルエンザはSARSと違って空気感染だとおっしゃいましたけれ ども、すべて空気感染なのかどうか。私はそうは考えていないんです。空気感染もあり 得るとは思うんですが。 ○菅谷参考人 いっぱい質問があってごちゃごちゃしてしまうと思いますが、まず、オセルタミフル と言ったけれども、勿論、オセルタミフル以外のアマンタジンもいいし、 リゼンダもいいんですけれども、現実問題として、備蓄というか、大量に用意しておく のは、オセルタミフルのカプセルで取っておくのが、国際的なコンセンサスだろうと思 います。 それから、アマンタジンは、これは勿論、実際問題として使えるかもしれな いけれども、大量に使うのは副作用と、オセルタミフルでも耐性が出る可能性が指摘さ れて、現在、アマンタジンを個々のケースで使うのはいいけれども、大量にアマンタジ ンを用意しているから、それはやろうと思います。ただ、リゼンダは本当はいいと思う けれども、リゼンダをつくっている会社自体、グラクソ・スミスクラインがほとんど準 備する気をなくしているみたいなんで、それは無理で、そういう意味で急に期待できる のは今、三共が開発している一回吸入すると、1週間持つというのが開発が進んでくれ ば期待できると思います。リゼンダは本当は耐性の問題はほとんどないと思われるので いいと思っています。 それから何でしたか。岡部さんのですが。 ○岡部委員 世界で唯一日本のみ可能だと。 ○菅谷参考人 日本のみ可能というのは、世界各国は私が見ているところ、ほとんどオセルタミフル は日ごろ使っていないんです。オセルタミフルを日ごろ使っていれば、耐性化はできる けれども、オセルタミフルをほとんど使っていないから、いわゆる備蓄とかはほとんど 不可能だし、彼らが計画している備蓄というのは、日本で考えている以上の、ごく少な い。同じ備蓄と言っても言葉が違います。 もう一つ、日ごろ使っていないところで、オセルタミフルで治療はできないです。そ れは先日カナダでもいろんな人と話したときもそうなんですが、日本では今インフルエ ンザになったら病院に行って迅速診断をうけて、オセルタミフルをもらおうと、いい悪 いは別として夜中でも患者さんが来ますが、欧米では相当無理なんです。絶対に来ない。 インフルエンザだと思ったら家で寝ているというのが今も常識だし、実際、私はニュー ヨークタイムズとかデイリーテレグラフで見たんですけれども、現在も家で寝ていろ、 家で休養を取れというのが基本的な治療方針だから、オセルタミフルをもしも用意して、 新型インフルエンザだから来いと言っても、恐らくほとんどの患者さんは寝ているだろ うと思います。そういう意味で非常に難しい。 日本は現在、これはもう国と製薬会社の話し合いになると思いますが、昨年の段階で 1,400 万人分の4日分は用意しましたから、そうすると、恐らく2,000 万人分の3日分 くらいにはなるんで、そういうことで日本ではもう少し頑張れば全員の治療は可能だろ うと思います。 迅速診断を全員やれとは、勿論思っていません。迅速診断をやらなくてもいいのかも しれないけれども、そういう要求はすごく高いだろうということです。 あとはオルタミフルの治療は、この人はやらなくてもいい、この人はやるというわけ にはいかないだろうと思います。勿論、医者が判断してそういうふうにやるということ は、医者が幾ら判断して、例えば私は自分の家族はどんなに軽くても飲ませたいし、当 たり前だから、3日分なくても、2日分なくてもいいけれども、絶対に公平にオセルタ ミフルの治療は絶対欲しいと全国民が思ってきて、それを補充することができなければ、 大きな社会問題になってしまうだろうと思っています。 ○岡部委員 時間があるので、全部お答えいただかなくても結構なんですけれども、問 題点としては、例えばオセルタミフル、日本で備蓄したとして、隣の国、あるいは東南 アジアで流行したときにそれをサプライできる覚悟があるのか、あるいは日本だけのた めに取っておくのか。そういう議論も必要ではないかと思います。 それから、その空気感染については、ちょっと認識が違うんじゃないかなというのが あるのと、予防内服は医学的に誤りだとおっしゃっていますけれども、これは全国民が 軽く済ませるために全員に飲ませるのが誤りであって、必要に応じて使う場合があるの で、タイトルとしてセンセーショナルではないかなと思います。 ○菅谷参考人 空気感染のことは、これは岡部先生とは全く意見が違って申し訳ないん ですが、インフルエンザの専門家たちの意見は空気感染です。特に新型インフルエンザ は全員空気感染と考えていると思います。これは田代先生も同じです。 ○田代委員 それは私が言ったことを間違って記憶されているんだと思うんですけれど も、メインは飛沫感染です。空気感染というか、昔から言われている飛沫咳感染ですね。 そういう感染も起こり得ると、そういうことです。ですから、あくまでもメインは飛沫 感染です。 ○加地参考人 感染経路の問題は、飛沫感染も起こり得ると、飛沫咳感染も起こる。実際の問題とし ては、両方起こりますけれども、流行に対して一番大きい役割を演ずるのは空気感染で はないかと。それは閉鎖空間で起こる。多数の人が感染に暴露されるということで空気 感染が流行については大きい役割を持っていると思いますけれども、飛沫感染、飛沫咳 感染両方起こるということだと思います。 ○田代委員 もう一つ、抗ウイルス剤の使い方なんですけれども、世界中限られた量し か今はないと。それをだれから使うかというと、それは先生言われたように公平に全員 に行くというのが現実的には非常に難しい状態だと。そういうときにどういう使い方を するかというと、優先度をある程度決めなけれはいけないだろう。そのときの優先順位 のトップに何が来るかというと、それはヘルスケアワーカーというのが大体世界中のコ ンセンサスです。少なくともそういう人たちについては、どのくらいの長さにするかと ともかくとして、流行期間中は予防投与を可能であればするべきであろうと。それ以外 の一般の人については、初期における菅谷さんと同じような治療投与、それが量がアベ ーラブルである場合の一応のコンセンサスだというふうに私は理解しております。外国 の会議に何回か出ても、みんなそういう結果でした。 ○加地参考人 抗ウイルス剤をすべての患者さんに投与するかというと、そこはいろい ろと問題が、別に差別をしているわけでもないし、それから雪下先生おっしゃいました ように、致死率が幾らあるから、それを初めから容認しておるわけでもないんです。実 際に診療の現場では患者さんというのは、いろんなファクターを持っておられる。症状 も軽重さまざまである。そこで一律にこういう抗インフルエンザ薬を使うということが いいのかどうか。それが例えば薬の副作用も考えなければいけない。耐性の問題もある かもしれません。そこはやはり現場の主治医の一番大事な判断のところだと思いますし、 ごく軽くて、さっき廣田先生おっしゃった半日休むくらいのところ、そういうところに まで全員抗インフルエンザ薬が必要かどうかというところは、私は一律には考えにくい ところがあるのではないか。やはり主治医としては、患者さんの病状というファクター がありますので、それを考えて、治療をしないといけないものであるし、インフルエン ザであっても、抗インフルエンザだけでいいのかどうか。もっとほかにいろんな療法、 稲松先生などはお年寄りを診られるから、一番必要性をお感じになっておられますし、 薬だけ飲ませればいいのかというと、そうじゃないと思うんです。いろんなほかの対症 療法も必要になってくる場合もあるし、患者さんに応じて種々さまざまであろうと思い ます。 ○雪下委員 私は先ほどから投薬、薬全部問題だと思っておりますが、薬のことが今日 は大変話題になっておるので、教えていただきたいんですが、例えば今日の先生のスラ イドにもございましたタミフルの耐性が30%、その数だけが一人歩きしておりまして、 そこをマスコミでも2、3問題にされていたかと思いますが、先生言われとおり、感染 症学会での報告だと思います。 いろいろあとから調べてみますと、あれは乳幼児だけの、約30例ですか、それに対し てしかも投薬もすぐ解熱したものについては除いて、発熱の継続したものに投与されて、 9例か何かに耐性があったということで、30くらいという数字を出されているようです が、それは全体として耐性が30で、先生の話ですと、タミフル大変な問題です。30例 で耐性ができるのかどうか。その辺のところを教えていただきたい もう一つは、ワクチンの製造量のところで、先生4,500 万本は製造可能、しかも、ア ジュバント使用でその10倍くらいは可能であろうと言われましたが、今、毎年インフル エンザがはやって、ワクチンが足らない足らないとあちこちから文句を言われまして、 最大につくるようにということで、1,470 万本昨年はつくったわけでありますが、今の 体制下において4,500 万本はすぐに対応かできるのかどうか。これはニワトリから育て て、1,270 万本が限度から私は常日ごろ聞かされているわけでありますが、その2つを 教えていただきたい。 ○菅谷参考人 まずタミフルの耐性のところは非常に大事な問題で、もう一回お答えしますが、タミ フルの耐性は熱が続いたとかいうお子さんではありません。みんなお薬を使えば熱が下 がって元気になってしまいます。ただ、初感染である乳幼児は、ウイルス排泄が1週間 から10日くらい続いてしまいます。1週間から10日くらい続いている乳幼児を調べてみ ると、その中に30%くらいに耐性ウイルスがあったということです。もしも大人であれ ば4、5日でウイルス排泄は終わってしまいます。タミフルの耐性が出てくるのは、 4、5日目から出てくるので、耐性が出るまでもなくウイルスがいなくなってしまうか ら、大人では問題にならないです。 たた、新型インフルエンザの場合は、全員が乳幼児と同じように免疫が全くないとす ると、ウイルス排泄が長く続く。そこで耐性も相当出るとは思いますが、その耐性ウイ ルスが感染性を持つかどうかはわからないです。 今はやっている、今回やったA香港型インフルエンザウイルスでは、ちょっと専門的 になりますが、感染性がある可能性があるということがわかったけれども、新型インフ ルエンザの場合、恐らく耐性が出ても、これもちょっと専門的になりますが、感染性は 非常に低いだろうと思います。ですから、ウイルス排泄が長引くということが問題だろ うと思います。 もう一つ、ワクチンのことは、今、1,400 万本つくれるということは、新型インフル エンザワクチンは単一ワクチンでありますから、新型インフルエンザだけでつくるから、 3倍に一挙にふやすことができるから、現在、4,500 万人分はつくれると思います。そ こでもしもアジュバントを使えば、抗原が倹約できて10倍くらいに使えるんで、このア ジュンバントを使った場合の試算は、私は正確には、むしろ田代先生の方が詳しいと思 いますが、アジュバントを使えば4億人くらい供給できるかもしれない。 それはさっきの岡部先生の質問のお答えになるんですけれども、つまり、日本はオセ ルタミフルをアジア各国に供給するほどの余裕はないけれども、ワクチンだったら、も しかしたら、4億人分ももしもつくれば、当然日本のワクチンメーカーも売りたいだろ うし、東南アジアに輸出できる。恐らく世界のワクチンメーカーは、アジュンバントの ことを進めているメーカーたちは、そういう絶好のチャンスだと思って待ち構えている んじゃないかと思います。 以上です。 ○喜田委員 新型インフルエンザウイルスというのは、新たなウイルスということでありますか ら、今の診断キットでは新型ウイルスということはわかりません。 それから、香港、ロシア型が、新型ウイルスで消えるという根拠はないと思います。 したがって、新型ウイルスと従来のインフルエンザウイルスによる感染とは区別できま せんので、そこのところはお医者さんがしっかり診断の基本を持つ。新型というのは、 何が出てくるかわからないわけですが、Hが違うものだということがわかればいいので、 それは工夫のしようがあるかと思いますが、それは開発されていないです。 ワクチンのことをちょっとお話ししたいんですが、アルミに限って考える必要はない と思います。HAワクチンになってから、もう三十何年経っておりまして、反省もある かと思うんです。現代の免疫学の常識から少し外れていると思うんです。まるごとのイ ンフルエンザウイルスをなぜ考えないか、私は不思議でしようがないです。 以上です。 ○田代委員 幾つかの今の問題なんですけれども、タミフルというか、抗ウイルス剤の 備蓄の問題ですけれども、日本だけが可能だということなんですけれども、現実には日 本が世界中の70%くらいを消費しているわけですけれども、実際にはアメリカもスイス も、欧米諸国はすべて国の政策として備蓄を考えています。着々と今進めつつある。 イキリスは、国のプランとして、最初は価格の点からアマンタジンの国家備蓄を考え ていたわけですけれども、今回のH5でアマンタジンがどうも効かない可能性があると いうことで、今、考え直している。 カナダのパンデミックプランでも、抗ウイルス剤の備蓄のことは述べられているわけ ですけれども、これも今年の2月にそれが出された後に、今、また再考慮して検討し直 すという状況です。 それから、アジュンバントのワクチンについては、香港のH5N1のときに、それに 対するワチクンを開発しました。我々もしたし、欧米のメーカー3社がやったわけです けれども、現在の毎年使われているインフルエンザワクチンの製法にのっとった製剤で は、ヒトでは抗体が上がってこなかった。そこでどうしたらいいかということで、喜田 先生が言われたような全粒子ワクチンについても我々やりましたけれども、それでも上 がってこなかった。そこで外国の2つの研究グループがアジュバントをそれに加えてみ た。そうしたら、ヒトでは予想以上に上がった。しかも、そこに使うウイルスの抗原、 ワクチンの必要量は8分の1くらいで済んだということで、これが1つ新型インフルエ ンザワクチンの切り札になるんじゃないかという、現在はそういう状況です。 今後それをどのフォーメーションが一番いいかということはまだわかりませんけれど も、それを国際的にヒトにおける野外試験をやろうということになっています。 ○廣田委員長 ありがとうございました。もう時間も過ぎておりますので、この件については今後も 検討委員会で議論する機会があると思います。 それから、先ほど3,000 万人が発病することが避けられないということがありました けれども、ひょっとしたらアジア風邪と一緒だったら1,000 万人で終わるかもしれない わけで、一定のレベルで準備しておこうという意味と理解をお願いしたいと思います。 そのほか何かございますでしょうか。 ○事務局 特にございません 。 ○廣田委員長 一応、本日は新型インフルエンザのパンデミックにおいて、すべての人 が罹患して重症となると世界中が考えているわけではないということです。 それと、必ずしも一度に数千万人の患者が発生するわけではないということ。 オセルタミフル、こういった抗ウイルス薬を1億2,000 万人分も備蓄する必要がある わけではない。そういったことは一応ここで確認できることではないかと思います。 ほかにもないようでございますので、これで閉会したいと思います。どうもありがと うございました。 ○滝本室長 次回の日程につきましては、先生の方からお聞きをいたしまして、後ほど事務局から 確認させていただきたいと思います。 ありがとうございました。 1 (照会)                                厚生労働省健康局結核感染症課                      担当:近藤(内)2379                         佐藤(内)2386         TEL03−5253−1111