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諸外国における介護保障制度の比較

 諸外国における介護保障制度について、公的保障制度が中心のヨーロッパ諸国で比較すると、
  (1)  ドイツやオランダのように社会保険方式により介護保障を行っている国と、
  (2) スウェーデンやイギリスのように、基礎的自治体が全住民を対象として税財源により実施する社会サービスの一環として介護保障を行っている国
があるが、いずれの場合も、制度の対象としては年齢や障害種別による区別はな い普遍的な仕組みとなっている。

[ドイツ、オランダ]
  ○ 社会保険方式による介護保障
  ○ 被保険者の範囲には、年齢や障害種別による区別なし

図

[スウェーデン、イギリス]
  ○ 地方自治体が税財源により社会サービス一環として介護サービス提供
  ○ 社会サービス(介護サービス含む)の対象は、年齢や障害種別による区別なし

図



ドイツの介護保障

[制度の概要]
  ○  1994年に創設された介護保険法に基づき、社会保険方式により、保険者である介護金庫(医療保険者である疾病金庫が兼ねる)が、被保険者(公的医療保険加入者)に保険給付を行う。

[対象者]
  ○  介護保険法の被保険者は年齢による区別はなく、公的医療保険に加入している全国民が対象となる。

[給付・サービス]
  ○  給付を受けるに当たっては、要介護認定(3段階)を受けることが必要。要介護状態の判断基準についても年齢による区別はなく、子供の場合には、同年齢の子供と比較して、より多く介護を要する部分を認定する仕組みとなっている。

  要介護状態の基準 時間
I
(中度)
身体・食事・移動の分野で、2つ以上の活動に1日1回介助を必要とし、更に家事に関して週に数回介助を必要とする。 1日平均1.5時間以上
II
(重度)
身体・食事・移動の分野で、2つ以上の活動に1日3回の介助を必要とし、更に家事に関して週に数回介助を必要とする。 1日平均3時間以上
III
(最重度)
身体・食事・移動の分野で、2つ以上の活動に夜間も含めて24時間介助を必要とし、更に家事に関して週に数回介助を必要とする。 1日平均5時間以上

  ○  在宅サービスとしては、訪問介護、通所介護、短期入所介護、福祉用具の貸与・購入などがある。保険給付額は要介護度に応じて設定されており、支給限度額がある。
  ○  施設サービスについても、保険給付額は要介護度に応じて設定されている。なお、障害者施設については、原則として給付対象外となっており、施設利用料の10%(上限256ユーロ/月)を介護金庫から支払う仕組みとなっている。

[負担・財源]
  ○  介護保険は全額保険料財源で賄われており、保険料率は現在、1.7%(労使折半)となっている。



オランダの介護保障

[制度の概要]
  ○  1968年から施行されている「特別医療費保障制度」により全国民の長期療養・介護について、社会保険方式に基づき、保険者である国(ただし、制度の運営は健康保険金庫、民間保険会社等が実施)が、被保険者(全国民)に保険給付を行う。

[対象者]
  ○  特別医療費保障制度の被保険者は年齢による区別はなく、全国民が対象(強制加入)となる。

[給付・サービス]
  ○  給付に当たっては、市町村ごとに設置されたサービス判定委員会が、サービスの必要度を判定し、サービス内容を決定する。また、サービス計画書(指示書)を策定し、民間のサービス提供事業者に指示する。
  ○  在宅サービスとしてはホームヘルプ、訪問看護、デイケア、ショートステイなどがある。また、地方自治体の独自サービスとして配食サービスや移送サービスなどが提供されている。
  ○  施設サービスとしてはナーシングホームや高齢者ホームがある。

[負担・財源]
  ○  特別医療費保障制度は、保険料財源(全体の約4分の3)、利用者負担(全体の約1割)等により賄われており、公費負担はほとんどない。



スウェーデンの介護保障

[制度の概要]
  ○  1982年に施行された「社会サービス法」に基づき、基礎的自治体であるコミューンが、それぞれの行政区域内において、支援を必要とする者に対して社会サービス(介護サービスを含む)を提供する責任を負っている。
  ○  個々のサービス提供の基準の策定等については、各コミューンに委ねられており、各コミューンには、「社会福祉委員会」の設置が義務づけられている。

[対象者]
  ○  社会サービス法は年齢による区別なく全ての者を対象としており、その目的は、民主主義と社会連帯に基づき経済的・社会的安心、生活条件の平等及び社会参加を促進することとされている。

[給付・サービス]
  ○  介護サービスは、本人又は家族の申請に基づき、各コミューンの介護ニーズ判定員による要介護度の判定及びサービス量・内容のアセスメントを経て提供される。判定基準等は各コミューンにより異なる。
  ○  在宅サービスとしては、ホームヘルプ、訪問看護、訪問リハビリ、デイケア、ショートステイ、夜間巡回ヘルプなどがある。
  ○  施設サービスは、1992年のエーデル改革以後、従来の医療・介護の入所施設が、「特別住宅(ケア付き住宅)」となり、自宅で提供されるサービスとの差異はほとんどなく、居住費用や食費は利用者負担となっている。また、特別住宅においてもホームヘルプなど一部の在宅ケアサービスを受けることができる。

[負担・財源]
  ○  介護サービスを含む社会サービスの財源は、各コミューンの税財源及び利用者負担により賄っている。



イギリスの介護保障

[制度の概要]
  ○  1993年に施行された「コミュニティケア法」に基づき、地方自治体がそれぞれの行政区域内において、支援を必要とする者に対して社会サービスを提供する責任を負っている。
  ○  サービス提供の基準の策定等については、各地方自治体に委ねられている。

[対象者]
  ○  コミュニティケア法は年齢による区別なく全ての者を対象としているが、サービスの提供に当たってはミーンズテスト(所得審査)が行われる。

[給付・サービス]
  ○  コミュニティケア法の下では、自治体によるコミュニティケア計画の策定、アセスメントとケアマネジメントの実施が行われる。サービスの提供は自治体が民間事業者に委託する形式が広がっている。
  ○  在宅サービスとしては、ホームヘルプ、訪問看護、デイケア、配食サービス等がある。
  ○  施設サービスとしては、ナーシングホームやレジデンシャルホームがある。

[負担・財源]
  ○  介護サービスを含む社会サービスの財源は、各地方自治体の税財源及び利用者負担により賄っている。
  ○  利用者負担は所得による応能負担となっている。


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