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第14回「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」議事要旨


 日時
 平成16年4月23日(金)15:30〜17:30


 場所
 経済産業省別館1014号会議室(10階)


 出席者
委員
石井委員、磯部委員、上田委員、金子委員、倉知委員、下川委員、高橋座長、竹島委員、舘委員、中嶋委員、長尾委員、畠山委員、松為委員、松矢委員、山口委員、輪島委員
オブザーバー
矢島精神保健福祉課長
事務局
太田高齢・障害者雇用対策部長、谷中障害者雇用対策課長、今井調査官、赤松課長補佐、平川課長補佐、工藤障害者雇用専門官他
(欠席された委員)
 荒井委員、西島委員、野中委員


 議題
○とりまとめに向けて


 配布資料
資料1 障害者の雇用促進について(案)


 議事要旨
 事務局から議題「とりまとめに向けて」に関して、資料1「障害者の雇用促進について(案)」に基づき説明が行われた。
 資料1の説明に対して、以下のような質疑応答があった。

座長
 これまで13回にわたる膨大な検討の結果をまとめてご報告いただいた。議事の進め方だが、本研究会の課題は、精神障害者を雇用義務制度の対象とする方向での取組みについての検討であるので、結論部分である5番の雇用支援策、6番の雇用率の適用ということについて、まず意見交換をしていただき、その後、その他の部分について意見交換を行いたいと思う。まとめの段階であり、委員の方々の意向を是非反映させたいので、できるだけ多くの方々のご発言をいただきたい。
 それでは、第5章「雇用支援策について」についてご意見をお願いする。
委員
 この素案はこれまでの検討結果をよく反映しており、しかも前向きなもので、とても良い素案だと感謝している。ただ、二点、感じた点を指摘したい。
 一つは、5番の最近の労働行政の精神障害者雇用施策に関する評価について、確か昭和61年の「職適」が初めてだったと思うが、それに比べて、非常にメニューも内容も充実してきていると思う。もはや雇用率適用、この場合は「みなし」を私は考えているが、雇用支援施策が不十分であるという理由から時期尚早であるとは言えない段階にきているのではないか。むしろ、このタイミングを逸してしまうと、我々の関心や関係者の努力が失速してしまいかねないということを恐れている。
 二点目は、6番とも関係するが、雇用率制度こそ最大の雇用支援策という視点が重要ではないか。この素案では分けて書いているが、雇用率制度によって雇用支援施策は活性化されるはずである。私はいろいろなところを見たが、障害を前提に働いている方はたくさんいらっしゃった。そういう方から雇用率にカウントするという「みなし雇用」を雇用支援施策の一環、あるいは雇用環境の整備の一つとして提案していく必要があるのではないかと思う。
委員
 この素案の中で示している職業リハビリテーションの進め方については基本的に賛成だが、私としては、この支援策の現状と今後のあり方について意見を述べさせていただき、できれば、内容等について修正を検討していただければと思う。
 私の意見は、簡単に言えば、二つポイントがある。一つは、精神障害者の職業リハビリテーションを進めていく時に、障害者職業センターあるいは高障機構を中核的な機関として明確に位置づけるべきではないか。同時に、それができるための体制整備というものをきちっと作るべきだということを盛り込んでいただきたい。
 中核と位置づけるべきだということは先ほどの説明の中にもあったし、私もこの研究会で皆さんに職業センター等の就労施策の取組みをご報告したと思う。ここ最近の取組み状況についても、職業センターあるいは高障機構が中心となってやっている。それぞれの対策について、中心的にやっているというだけではなくて、職業センターそのものが、法律の中でも職業安定所とともに職業リハビリテーションを推進する中核施設であると規定されているし、全国的に職リハを進めていくという、そういう組織である。こういう雇用対策を全国的に進めていくには、そういう機関が中心としてやっていかないと進まないのではないか。また、それを実施していくためには、当然そういうものについてエネルギーが要るし、人的なパワーもいる。これは今後の障害者雇用対策の最大の課題、精神障害者の問題になっていると思うが、職業センター等を中心にやっていくべきといっても、そのための財政的なもの、予算的なもの、人的なものが、例えば中期目標とかに盛り込まれていない。これを実施していくためには体制整備が必要ということを盛り込んでいただきたいと思う。これは、車の両輪だと思う。
 そういうことで、まず最初の「最近の取組み状況」のところ、1の(1)障害者就業・生活支援センター、(2)職場適応援助者、ジョブコーチという形で項目建てしてあるが、私としては、(1)として「障害者職業センターの支援」とすべきと思う。そして(2)とか(3)を、例えば(1)として「地域障害者職業センターの職場適応援助者による支援」、(2)を「地域障害者職業センターの障害者雇用機会創出事業、トライアル雇用」、それからリワークを(3)として「障害者職業総合センターの職場復帰支援プログラムの試行的実施」という形で項目を再整理していただきたいと思う。そして、(2)として「障害者就業・生活支援センターの相談支援」、(3)として「助成金の対象拡大」、そして最後(6)は(4)として「障害者団体による精神障害者職業自立等啓発事業」というふうな形で、私が先ほど述べた趣旨を明確にしていただければと思う。
座長
 事務局、今の修正、項目建ての修正点はよろしいか。
事務局
 もし直したものがあれば、メール等でいただきたい。その上で整理について考えたい。
委員
 その並びに関わる問題であるが、あとで個別に修正意見をメールで言えばいいのか。今の意見は、書きぶりとして主語が職業センターになり、職業センターがやっている事業で並べていくということになり、事業ごとに並んでいるものを書き換えることになるが、それでよろしいのか。
座長
 あとでメモでいただいて、それを修文してもらい、次回皆さんにみてもらう機会がある。
事務局
 何か具体的なものを多分お持ちだと思うので、それをいただければと思う。
座長
 ただいまのお二人のご意見は、基本的にはこの素案の趣旨に賛同というか、サポートするというご意見と思うが、5番の問題、雇用支援策の現状と今後のあり方に関して、他の委員の方はいかがか。
委員
 私もこの原案には基本的に賛成したいと思う。ただ、就業・生活支援センターなどいろいろな支援策があるが、精神保健福祉課の管轄だと思うが、精神障害者の生活支援センターというのを別途、実際の就業とか様々なことに関して絡むことが非常に多いので、そういう医療機関とか精神障害者の生活支援センターとの連携等も少し考えるということを盛り込んでもいいのかなと思う。
座長
 今の点は、別途、精神保健福祉課関係で、地域生活支援のあり方に関する検討会というのがあり、ご存知だと思うが、今後、生活支援センターについてどういう方向付けをするかという議論が行われている。主にはそちらの方で方向性が示されると思うが、私と事務局とで相談して、今の点を少し検討して、どのように盛り込むか、あるいは焦点がぼけるようであれば、他の検討会の方に入れるというようなことでご了承いただきたいと思う。
委員
 二番目の「今後の雇用支援策のあり方」の中の(1)「在職精神障害者に対する雇用支援」の(2)「具体的な雇用支援策の方向性」、「また」以下のところ、「復職支援を円滑に進めるためには企業内において本人、上司、産業医など、企業内の関係者間の意思疎通を密にし」云々ということで、基本的にはこういう方向で議論を進めてきたかと思う。確かに、今後、産業医の存在が大きくなり、位置づけも高いということは認識のとおりだが、産業医の配置基準は50人以上常時雇用する労働者がいる場合になっているが、これは選任するということであり、専従・専属ではない。1,000人以上の事業所のいわゆる大企業の場合には専従・専属の配置があるけれども、1,000人未満のところは嘱託等で月に何回か巡回で入ってくるということだと思う。そのような面で、事業主側の障害者の雇用管理について、産業医と連携するという位置づけで進めていくとは思うが、常時事業所にいる例えば衛生管理者、事業所としての管理体制の責任体制をきちっとした上で衛生管理者も設置されているわけであるから、その面での事業所内の管理体制をしっかりと進めていくという視点を入れながら、それを支援していくという位置づけも少し入れた方がいいのかなという感じがする。産業医に今後頑張っていただくんだということでやっていくのだと思うが、常時事業所内にいる衛生管理者、保健師、健康相談室、企業によってはいろいろやり方があるかと思うが、そういった点を少し入れた上での支援というものを書いた方がいいのかなという感じがする。
 それから三行下がったところに、「本人を取り巻く環境調整を進め」というくだりの辺りが、「環境調整を進め」と一言で入ってしまっているので、この辺りはいわゆる就業をするための、言ってみれば配置転換だとか、仕事内容を変えるとかということもあるし、生活面においても、単身者はなるべく親御さんと一緒に住むとか、身近な人と接触するような、そういう生活面の調整というか、そういうことが一緒にならないとなかなか解決に結び付かないということもある。具体的に記載する形で表現したらいかがかと思っている。
 基本的には、今回出されたこのまとめの案の内容の方向で、私も基本的に賛成するので、是非、そういう事業所内における管理体制を支援するような仕組みを作って、もうちょっと強化していくということを表現していただければと思う。
座長
 大変重要な点のご指摘をいただいたと思う。
委員
 拝見して、まず実雇用率で始まるということは実際的だと思う。企業の中での在職者の問題というのがかなり大事だということは分かっているが、新規雇用の、障害をオープンにして採用された方を受け入れることで、企業の中にも受け入れられた障害者の方にも、企業の中での働き方について、いろいろな経験が蓄積されて、その経験が企業の中で在職者の問題を解決する上ですごく役立っていくというふうに考えられるので、とても新しい一歩だなと思う。それで、今回、具体的な案を提案するということではなくていい、というふうに理解している。
委員
 全体的な感想としては、基本的にさきほどの員とほぼ全く同じ感想を抱いている。
 二点あって、一つは、時期的に今が良い時ではないかということである。雇用率制度による支援策を活性化するという方向にもつながり、次の雇用義務化の第一ステップになり得ると思う。種々の社会制度は実験ができないので、本来的に良いか悪いかは危険性が常に伴うものであり、誰かが負担を被るというのは、法制度の宿命、社会政策の宿命である。もちろん心配な点はあり、特に、企業側の種々の負担と不安感というものについて、重々私も認識しているつもりであるが、社会のあり方として、素案のような方向で、第一歩を踏み出していただきたいという希望を申し上げたい。
 それから、今のご発言で、企業内の管理体制に関して、これは実は大変微妙な問題で、基準局の安全衛生部の方では、企業内外に生じた従業員の健康情報とプライバシーのあり方の検討会があり、特にメンタルヘルスについての検討会も別個にあり、私も参与するつもりであるが、医者以外の方に、企業内の管理体制だからといって、医者ないしはその周辺の医療従事者のほかに、こういう問題にどの程度まで関与させて進めていくかということは、相当慎重でなければならない。つまり、個人情報との関係で、私は、法学の立場からは、その点も十分留意して進めていただく必要があるのではないかと考えている。具体的にどうするかということは、私も今のところ、ちょっと知恵がないが。
委員
 委員の言うとおりだと思う。個人情報に関しては事業主の責任となってくるため、その中の範囲での、事業所に置かれている衛生管理者、安全衛生管理者という立場という位置づけできちっとやってもらうという範疇の話である。
委員
 5番の関係で、最後の短時間労働者に対する支援のところが、次の6番に関わることだと思うが、短時間労働者の雇用にかかる特例を設けることが適当であるという、この特例措置について、今後、議論を詰めないといけない点があるのかなという感じでいる。具体的には、この特例という位置づけでどのように算定するのか。一応、事務局サイドとしてはどのような思いがあるのかをお聞きしたい。
事務局
 報告書をいただいた後、技術的にはいろいろと詰めていくことがあるかと思うが、例えば今の制度の例で申し上げると、知的障害者、身体障害者は、重度の場合においては、通例、雇用率算定は、週30時間以上でカウントするわけだが、20時間から適用になるというような形になっている。そして、30時間以上はダブルカウントということである。そうした制度的な前提がある。
委員
 具体的な支援策の方向性というのが、それぞれ在職精神障害者と、雇用促進のための支援策ということで示されている。これは施策というか事業のメニュー的なもの、トライアルとか短時間労働への助成とかジョブコーチとかというようなことで示されているが、それと同時に、少しメニューとは違うかもしれないが、こういう具体的な施策を進めるという時は人材をいかに確保するかというような視点と支援機関、人と機関の充実というものをうたわないと、メニューだけでは具体的にならないのではないかと思うので、その辺のところを盛り込んでいただきたいと思う。
座長
 大きな課題かと思うが、それも何らかの形でこの中に盛り込むということで、事務局にも検討していただきたい。
委員
 職場あるいは働いている人たちのセルフヘルプグループをつくっていくということが、支援策の重要な位置付けを持ってくると思う。セルフヘルプグループが医学的な効果があるということは、既に証明されている。これをつくっていくことが、産業医が少ない場合でも、当事者組織に意見を聞くことができる。在職者の場合、リワーク事業を拡大していかなければならないのは急務であるが、そういう場合でも、使用者側だけではなく当事者側と一緒になってやっていく方がより効果があると思う。だから、これを支援してつくっていくことは、雇用支援策の大きな柱になってくると思うし、また「みなし雇用」によって行う場合でも、うつ病はうつ病の、統合失調症は統合失調症のセルフヘルプグループをつくっていくことが、この雇用率をつくっていく上においても効果があるし、雇用率をつくること自体が今度はセルフヘルプグループを活性化していくということにもつながっていく。これは、単に雇用の問題だけではなくて、精神障害者問題の社会に与える影響というのが非常に大きなものがあると思う。その点を踏まえて、このレジュメの趣旨の方向で持って行く、そしてセルフヘルプ活動を活性化させていくということが、大切なことだと思う。
座長
 その点に関しては、6番の中で、当事者同士の互助活動というような表現で、今の趣旨が生かされていると思う。
委員
 まず、5番と6番の関係のところで、字句の関係で事務局にお聞きしたいことがある。お答えをいただいた上で、考えを述べさせていただきたいと思う。
 先ほど、委員がご指摘になった17ページの短時間労働者に関する雇用の特例について、何を意味するのか、そこは、少し理解をしていきたいと思う。それから、17ページの6番の「1 雇用率のあり方」の「しかしながら」の段落で、これは字句の話だが、「責任はまっとうする」のかもしれないが、「社会的責任を果たす」のかなと、日本語が少しおかしいのではないかなと思っており、そういった字句修正は、後ほど事務局にメールで提出をしたい。17ページの一番下の最後から3行目の「疾病横断的に行われるべき」の「疾病横断的」というのは、どういう意味なのか。教えていただきたい。それから、18ページ、二段落目の「なお」書きのところ、プライバシーに配慮した対象者の把握・確認のあり方について「企業にとって参考となるもの」とあるが、これも具体的なイメージがよく分からない。把握・確認のあり方では、ずっと申し上げているように、なかなか企業側から把握・確認の妙案というのがないわけなのだが、「参考になる」というものはどういうものなのかなと思う。それから、「おわりに」のところで、事務局からのご説明では四つに整理した上で、「最後に」と19ページにつながっていくように書いてあるが、その1、2、3、4というのを、改めて書いた上で、18ページの下の方にある「まずは精神障害者の実雇用率の算定を行うことが必要であると考えられる」とは、何回も見たので、また見るのは嫌だなというような気がする。最後の19ページのところので言い切ればいいのではないか。その点、いかがか。
事務局
 まず、短時間の特例について、先ほど委員からもご質問があった採用後精神障害者の雇用率適用・・・、短時間労働者の雇用に係る特例を設けることが適当・・・。これは、先ほど申し上げたように、知的障害者の重度の場合については、通常30時間のところを20時間から雇用率適用がなされる。したがって、そういう前例を見ながら精神障害者についても、その可能性についてこれから検討していきたいということである。
 助成金に関しては、前の方にも出ているが、平成15年4月から採用後精神障害者とともに、就労時間が15時間以上の者について手当てがなされているので、そうしたものの活用も含めて、雇用率ということではないが、検討したいという趣旨である。
 それから、17ページの下から3行目の「疾病横断的に行うべきであることはもちろん」の意味については、病名にはかかわらずという意味合いで、このような表現を用いたつもりである。例えば、統合失調とか、てんかんとか、うつとか、そういったことではなくということである。手帳の判定もそのように行われていると理解している。
 それから、18ページの5行目、プライバシーに配慮した対象者の把握・確認のあり方について、企業にとって参考となるものを示す必要があるという部分に関しては、この研究会でもご指摘をいただいており、先ほどのご発言とも関係するかとは思うが、企業の個人情報の問題で、どの程度のことが把握できるかということを含めて、言ってみれば、範となるようなものができないかということで、こうしたものはやはり法律が成立してから、準備期間の間にということになるかと思うが、検討するという趣旨である。一例を挙げると、個人情報のガイドラインにおいて、雇用率の対象になっているかどうかということは把握してよいものの対象になっている。身体障害者、知的障害者に関してであるが。そうしたようなものが参考になってくるのかなと思う。いずれにしても、そういうことも含めて検討して、何か示すという趣旨である。
 それから、4番目は結論部分であり、ご意見を伺いながら、文章整理をさせていただきたい。
委員
 それでは、5番、6番のところで、皆様のご意見を伺った上で、私どもの考えを述べさせていただきたい。まず、新たな話ではないが、これまで何度か申し上げてきたように、雇用率制度の適用というようなことが書かれているわけだが、このことを何のためにやるのか、それからどうしてやらなければならないのか、ということが今もってよく分からない。委員からいろいろと負担感と不安があるけれども、社会的な制度としては一歩進めるべきではないかというご指摘があったが、それはよく分かる。では、実体的に、在職精神障害者の問題がどれぐらいクリアされるのか。それから、先ほどの短時間労働者の適用の問題は、おそらく、それが大体新規雇用の問題に関わってくるのだと思うのだが、そこも、やはり在職の問題をどういうふうにするのかということが、新規雇用につながっていく。逆も可ではないかとのご指摘なのかもしれないが。この制度全体をこのような形で入れるにしても、在職の方の手帳の促進がどれだけ進むのかということは、まだまだ未知数であるし、新規の雇用についても、短時間であればカウントがどれぐらいになるのかということが、まだまだここの場では議論が尽くされていないわけで、そういう観点からいくと、このような方向性というのは、なかなか私どもとしても、理解が難しいところであるが、これから企業が対応しなければならない実務は、まだまだたくさんある。「みなし雇用」という言葉があったが、「みなし雇用」になった時に、法定雇用率は変わるのか変わらないのか。実際に「みなし雇用」でなくなって、こちらの18ページの「将来展望」というところで、将来的には雇用の義務制度の対象とすることが必要であるというふうに書いてあるが、ではその時に、法定雇用率が何パーセントになるのかというようなことも、今の時点ではつぶさに分からない。それが分からないところで、「みなし雇用」を実験的に入れるというところは、やはり、まだまだ検討の余地があるのではないかと思っている。
 それから、これは余計な心配なのかもしれないが、「みなし雇用」というようなことを入れれば、雇用率制度上の納付金会計というようなものも、大分傷んでいくのではないかと思うが、そういった関係のバランスをどういうふうに取るのかということは、こちらの研究会ではなかなか議論ができないわけであり、企業側から払っている納付金会計の有効的な活用とか、まだまだ解決されていない、議論されていない課題というものが残されている中で、こういう報告書が取りまとめられていくというところに、なかなか釈然としないというか、そういうような気持ちがまだまだあるというようなところである。
座長
 既に6番の「精神障害者に対する雇用率制度の適用について」というところに入ってしまっているが、では、6番と、最後の「おわりに」というところも含めて、ご議論いただきたい。ただいまのご意見は、まだまだ未知数の部分が多いから「みなし雇用」ということでも、時期尚早ではないかというご意見だったが、この点に関してご意見はいかがか。
委員
 今のご意見だが、私は違った立場になってしまう。やはり、なぜやらないのか。なぜ、雇用率に入れていかないのだろうか、というように、逆の見方になってくる。私は雇用義務化すべきだと思っている。ただ、委員がおっしゃったように、どれぐらいの数になっていくのかということは把握が難しいので、多分、どのぐらいの雇用率にしていったらいいのか、今の段階では予測できないだろう。だから、私は、「みなし」という形で雇用率を変えないで、障害者として算定していくというやり方で仕方がないのかなと思っている。本当は義務化すべきだと思っているのだが、現状からみたら仕様がないのかなと思う。先ほどの委員がおっしゃったところというのは、今の仕組みでいる限り変わらないのではないかと思っている。ノウハウにしても、少しずつ経験して分かってくるのではないかと思っているし、実際、「みなし雇用」としてやってみて、踏み込んで初めていろいろなものが見えてくる。今後義務化していくとしたら、どういうふうにしていったらいいのかということが分かってくるのではないかと思う。現段階では、私は、精神障害者だけ外すという障害者間の不平等感だけは何としてでも解消しなければいけないのではないかと思う。これはもう、放っておけないのではないか。それと、雇用している事業所もあるわけで、やはり、その方々の負担感を減らしていきたいという思いもある。もう一つ、雇用率に算定されることで、やはり雇用に対するインセンティブが働くのではないかと思う。それは、企業の方もそうだし我々も含めてである。その三つは、今すぐにでも解消、解決しなければならないことであって、そのためには、本来義務化すべきであろうが、今の段階では、義務化ではなくて「みなし」という形にせざるを得ないのではないかなと思っている。
 それから、もう一つ。この6に入っているが、18ページのところ、上から7、8行目のところに、手帳の写真の貼付ということがあるが、すぐにいくのかなというか、少し時間がかかる、時間的余裕が必要なのではないかと思っているのだが、それが「みなし雇用」の条件にならないようにしなければいけないと思っている。要するに、貼付しなければ、雇用率として算定することは不可能ということはあり得ないと思うので、そこを一つ、留意が必要かなと思っている。
座長
 写真の貼付が絶対条件ということは、あまり考えられないのではないか。
委員
 当事者団体から見れば、ここで引っかかるのは「将来的には」と書かれているわけだが、「将来って、いつなんだろう」という、そういう不安感がある。精神障害者というだけで、もう10年近く、この問題が解決していない。あと10年待てというのか、20年待てというのか、当事者からみれば、すぐにでも雇用義務化をお願いしていきたいというのが願いである。だから、この「将来的には」というのは、非常に含みがあるのかもしれないが、私たちとしては、もう「はい。そうですか。」というふうに、一段階としての「みなし」はあるのかもしれないが、早急に雇用率を適用してもらいたい。
 もう一つは、いわゆる雇用率適用の問題でも思うのだが、「心のバリアフリー宣言」の時でも思ったのだが、やはり実際に接してみないと、いくら言葉とか抽象概念で述べても、私は駄目だと思う。私がいる新しくできた施設の中でも、周辺からの反対問題とかいろいろあったのだが、やはり触れてみないと難しい。だから、まず、受け入れて欲しい。当事者団体からすれば、それを切にお願いしたいということがある。
 もう一つは、さっき委員も言われたが、いわゆる雇用支援とも関わってくるが、当事者の不安感というのは非常に強いと思う。私もそうだったが、うちの調査でも、働いていて一番困難であるのは、病名を隠していることの不安、発作が再発するかもしれないという不安が非常に強いわけである。それが7割もあるわけなので、自立啓発事業も今年もいろいろな方たちの協力でやっていきたいと思うが、雇用支援策のところでは、当事者のその辺のことはほとんど触れられていなかったので、そのような当事者の願いにも少し触れていただければ助かる。
 いずれにしても、いろいろな書き方があると思うが、多分「みなし雇用」だろうというふうに理解はするけれども、一刻も早く、雇用率の完全適用をしていただきたいという思いである。
座長
 雇用の義務化が先、今やるべきだというご意見が二つ続いたけれども。
委員
 基本的に今回の提案に賛成したいと思う。私は三点にわたって、この雇用率制度の適用ということに賛成したいと思う。
 一つは、今やることの必要性、あるいは効果ということだが、これは二つの点があると思う。一つは、やはり、ずっと従来の議論の中で出てきたうつ病の方々を中心とする採用後発病した精神障害者の問題について、既にかなり規模の大きい企業で、そういう方がいて、また、実雇用率にカウントするということで、実際に雇用は進まないのではないかということについて、そういうご意見もあったが、そういう中でも、雇用が始まっていく、受け入れる企業も出てくると思う。その時に、カウントされるという効果は非常に重要なことなので、実雇用率に入れて、実際に取り組んだ企業に対して、きちんと評価していくことができるというのが一点である。また、そういう中で、ノウハウを蓄積していくということがどうしても必要なので、やはり、それは始めることだと思う。
 第二点は、知的障害者の場合も、実雇用率にカウントする、いわゆる「みなし」という言葉で言われたけれども、いわゆる「みなし」という言葉はあまり好きではないので、今回使って欲しくないと私は提案している。実雇用率にカウントする特例というようにいった方がいいと思う。「みなし」というのは、非常におかしい。知的障害者が働いていて、企業に受け入れられた知的障害者を身体障害者とみなすといういうことは、一体どういうことなのか、とてもおかしい表現だろうと思うので、実雇用率へのカウントというふうにしていただきたい。その特例という表現か何か他にもっといい表現があるかと思うけれども。1997年の改正で、1998年から1.8%の適用となったけれども、その議論の中で、新しい就業支援のシステムが必要だということで、就業・生活支援センターが立ち上がった。そして、それが法定に入った。知的障害者については、就業面の、企業の中の支援だけでなくて、地域生活とか家庭生活とか、そういう生活面の支援が一体とならないといけない。これは、当時の委員が提案してくださったけれども、まさにそういったことが実った。それは、実雇用率のカウントをしながら、やはり、それはやっていかなければいけないという、見えてきた支援策だったと思う。だから、これから実雇用率へのカウントをする中で、精神障害者について、また新しい支援策が見えてくるのではないかと思う。ここではまだ、いろいろなものの連携としか出ていないのだが、場合によっては、きちんと事業名とか人とかを入れた、そういう新しい支援事業というものが見えてくるかもしれない。特に、先ほどから委員から出ているように、職業センターの役割はかなりはっきりと浮上してきている。だから、いろいろやっている事業、事業は並列でもいいので、16ページの新しい窓口を設置するというその辺のところに、地域障害者職業センターの強化をするとともに、そういう窓口、おそらくこれはハローワークか何かを想定されているのかなと思うが、やはり職業センターも強化する。精神障害者について、一番いろいろなメニューをやっているのは職業センターであるし、中核的にまとめていくという点でも、職業センターが一番ノウハウを蓄積していると思う。だから、職業センターを強化するとともに、新しい云々というような、そういう表現方法で、新しいシステムをつくりあげていくということが、この実雇用率への適用で始まっていくんだという、そういうものがまた、見えてくるんだということである。そして、それが次、いつ法定雇用率になるか分からないが、支援方策が見えてくる。そういう意味で、やはり進めるべきだろうというのが二番目である。
 三番目は、先ほど委員から出ていたけれども、本人の方々の役割だと思う。1987年、知的障害者の実雇用率へのカウントから10年経って、今度は法定雇用率の改正となってくる。10年かかったのだが、その間に、例えば「働く広場」で知的障害者の記事がどれだけ出たか。特に重要なのは写真である。その働いている姿、特にその表情、まさに自信を持って働いている当事者の方々の活躍ぶりがどんどん出た。グラビアでもたくさん出た。でも、精神障害者は徐々には出ているが、まだ出ていない。そういう時に、本人の方々を広報誌を使ってアピールしていくというが、こういうふうに制度が実雇用率にカウントすることによって進んでいくのではないかと、私は期待している。絶対にそうなるだろうと思っている。だから、そういう一歩を進めるべきではないかということである。企業の方々が抱えている困難というのはやはり大きくて、それを一歩一歩進めていく。実際に知的障害者の雇用についても、企業の方々が果敢にそれを取り組んでくれ、そこからたくさんのものが生まれた。そういうことを期待したいし、その意味では、一緒に進みたいというふうに思っている
座長
 それでは、この検討会では、「みなし」という言葉はやめて、当分「特例」という言葉を使うこととしようと思うが。
委員
 知的障害者の特例の話をされたので、私もその頃、事務局のお手伝いをしていたので、思い出して話をしてみたい。あれは62年だったと思うが、いわゆる「みなし」の特例が適用されて、それから10年続いて完全適用になったわけであるが、その当時も在職者が7万人いた。だから、新規参入の問題ではなく、在職者の問題というのがやはり非常に大きかったと思う。どういう問題が当時議論になったかというと、一つは、知的障害者の判定基準が曖昧だということである。今回も似ている。それから、生活指導が必要で、雇用管理になじまない。それから、掘り起こしが起きる。この委員会と非常に似たような議論があったのだが、結局先輩方は、雇用企業に報いる、あるいは雇われている方の法的保護という観点から、いわゆる「みなし」雇用に踏み切ったわけだが、その後の知的障害者雇用の隆盛ぶりというのは、みなさんご承知のことだと思う。我々も、先輩方のそういう知恵を学んでいいのではないかと思う。
委員
 17ページにも出ているが、いわゆる事業主の社会的責任という用語について、従来は確かに雇用義務制度ということで、「これは義務なんだから、それを果たさないのは責任だよ」と、いうような論理になっていくのかなと思う。しかし、実際には、企業にとっては、一生懸命努力しているというところもたくさんあるわけで、その時に「社会的責任を果たしていない」というだけの批判でいいのかどうかというのが、私の率直な疑問である。社会的責任という言葉を使う時に、企業の人はどちらかというと、やや苦笑して言っているようなニュアンスになる。「我々は努力はしているんだ」と。むしろ、「社会貢献」という表現だってあってもいいんじゃないか。精神まで含めて展望していく場合には、単に社会的責任という切り口だけで追求していっても、あまり本当の意味の進展にはならないという気持ちがする。
 もう一つ、こういう方向でいくと、具体性がもっと欲しい。要するにこれができた場合、どういう仕組みになるのかというところが見えてこないと、企業としてはこれ以上反応しようがない部分もたくさんあるので、早急にその辺も並行して詰めていった方が現実味のあるものになってくるのではないかなという気がする。
 それからもう一つ、自己啓発というか、ここにも自立啓発事業がうたわれているが、これは非常に重要なことであり、いろいろな角度から、こういう普及啓発事業をやっていく必要があると思う。その時に、最近、大企業に限らず、社内でいろいろな研修が行われており、例えば、かつては、同和研修というのがよく行われていたし、在日コリアン問題を取り上げたり、セクハラ問題とかいろいろなものを取り上げているが、たまたま私の所属しているグループでは、16年度は障害者雇用問題をテーマにして研修をやろうということになっており、これは何も私のところだけはなく、そういう共通の傾向があちこちに出ているのも事実なので、セミナーに人事の人がポツンと出席して、それで終わるということではなくて、やはり企業自身がそういう場を設けて、現場の管理職を集めて地道にやっていくというベースがあって初めて、最初の話に戻るが、社会的責任とか、社会貢献ということに繋がっていくのではないかと思うので、そういったところも、もうちょっと色濃く出てもいいのではないかなと思う。
座長
 ちょっと教えていただきたいのだが、今までの意見の中で、実雇用率にカウントする、すなわち特例を設けるということは、むしろ企業の負担を少なくするのではないかという、そういうご意見がいくつか出ていたかと思うが、その点についてはいかがか。
委員
 もちろん、そういう面もあるだろうし、そうでない面もあると思う。それだけではないということである。ここに書いてあるように、「雇用している企業の努力に報いる」ような形は、それは美しい表現で、実際に雇用しているところについては、確かにそういう面はあると思う。ただ、それだけではないし、平たく言うと、企業が失うものはないというだけで、それで進むのかというとそうではないと思う。
 それから、先ほどの写真貼付のことだけ、一点お話をさせていただきたい。もともと私どもとの認識が多分違うのだろうと思う。写真貼付は17年4月から早急に取り組んでいただけるということなので、大変高く評価したいと思っているが、写真が貼付されることによって、例えば通勤に補助が出たり、この前の事務局のご説明では、横浜では地下鉄や横浜市営の交通機関はただになる。そうすると、企業は「では、雇いましょう。」となった時に、手帳を持っていることによって、「では、通勤費はかからないんだね。」となると、それは雇用率以上のインセンティブになる。したがって、それがそれとセパレートになるという話ではなくて、それを押していただくわけだから、企業が雇用しやすい雰囲気をつくっていただきたい。写真貼付はマストだ、マストがなければ、今回のこれが動かないということは申し上げないが、それが企業の助けになり、それが進むんだろうと思う。
座長
 今の写真貼付のことに関しては、先ほど話した地域生活支援の検討会でも話題になっており、やはり写真貼付は本人の意向を重要視すべきだという意見が出ている。私が考えるには、自らカミングアウトしたい人は、写真を貼ろうが貼るまいが、それはあまり関係ないわけで、手帳を取って、それが実際の生活上、いろいろメリットがあるということならば、当然写真を貼るだろうと思う。そういうことから、本人を確認するための方法として、写真を貼ろうが貼るまいが、手帳があれば、それは問題ないだろう。そういう意味で、私は発言したわけだが、私の推測としては、写真貼付の方にいって、メリットが拡大するという道筋は付けられつつあるだろうと思う。
委員
 概ね賛成である。ただし、今までの議論でみると、80から90%ぐらいのところで、あと、ここから何%積むかということがすごく大事なことだと思う。身体、知的、精神が共通の土俵に上がるべきであるというのは、これはこのとおりで、私も賛成である。
 ただ、身体と知的と精神と、それぞれの状況の違いがあるということは、頭に置いておかなければならない。例えば知的の場合には、おそらく、知的障害の方が企業の生産現場にたくさんいたという実態はなくて、新たに入ってくる人たちであったということと、精神の場合には、おそらく中にいたということと外にいるということ。その両方が少し性質の違った人たちで、新たな対応を事業主側が求められる面があり、そこのところはやはり一定の違いがある。それに対して、事業主の側から、もう既に雇用しているところは心配はないのであろうが、これからというところについては、一定の不安をもって見るということは当然のことであって、委員の言われていることは非常によく分かる。おそらくは、その不安と一緒に上がっていくような具体的な道筋をきちんと言うことが大事なことではないか。連携とか、それを支援するという曖昧な言葉ではなく、例えば、それに対して、精神保健福祉の領域のサポートがどれだけ就業者の支援と連携をするかという横の問題と、国のレベルのシステムが、例えば都道府県においてどういう形で実行されるかというものを集めていくとか、何かそういう具体的なこと、つまり「雇用主を一人にしない」ということを明言するような文章がちょっと欲しい。
 もう一つは、雇用主の側から見て、「この人は正直言って、仕事で使いものにならない」「無理だ」と、プロの目から見て判断した場合、でも、その人が「いたい」と言った時にどうするかという問題も出てくると思う。そういったところにおいて、事業主側の「少し難しい」ということを言える仕組みも必要ではないだろうかと思う。そうすることを通じて、雇用経験を持っている人たちの裾野が広がっていくわけなので、それは決してマイナスにはならないと思う。最近、自己責任論がはやりだが、いわゆる一定の独立した大人としての自己責任論というのが、そこに当然あって然るべきなんだろうと思う。逆に言ったら、それがこの精神障害者の雇用というものを進めていくための一つの大事な方策ではないかという気持ちがする。
 それから、多様性ということを言うのはいいが、では一体、どういう人たちを一番手に考えるのか。それもきちんと考えないといけない問題なのであって、片方では、雇用率が無際限に大きくならないと解決しない問題かというと、私はそうではないだろうと思う。精神科の病床が34万床まで増えたことの背景には、病院で病床を利用する期間という概念が、その時代に少し薄かったという問題があるわけなので、やはり、一つの椅子を同じ人がいつまでも座り続けるわけではなしに、いろいろ回して使っていくということであるから、私は一定のサイクルの中で、雇用率という概念にも、自然に上限というものが生まれてくるのではないだろうかという気がする。これは、精神だけではなしに、全体の議論の問題なのであって、それがあるから精神が入らないという理論ではないというような感じがしている。
 あと一つ、重要な論点としては、特に、うつ病系の人の場合には、やはり今までが労働衛生のサービスを利用しているという実態があるので、労働衛生のサービスを障害者の福祉の人たちが利用し易くするという仕組みということも論じられなければいけないのではないかと思う。
 あと、ここは精神保健福祉課長に教えていただきたいのだが、例えば、手帳を1年前に取ったとして、たまたま働きたくて、周りから見ても結構やれそうだという見通しが立ってきて、本人がそこに勤めたいと思った時に、通勤手当が会社から支給あるいは負担が小さくで済むという条件になって、私の手帳を写真付きのものに更新して欲しいといった時、2年満期は来ていないけれども、更新して欲しいとう希望がきた場合に、それは更新できるものなのか。それとも、2年待たないと駄目なのか。
 それから、報告書について、次回、短くまとめた「まとめ」というのを是非付けていただきたいと思う。私はやはり、この報告書の要点は、実際にその障害者の人や、それを支援してきた人たちが、内容を理解できるということがすごく大事なことだと思う。もう一つ、先日も申し上げたが、漢字が多すぎるので、もっと漢字を減らして欲しい。読み易くして欲しいということを、是非お願いをさせていただきたいと思う。
座長
 今まで挙げられた点をメモとして事務局の方に出していただきたい。それをすべて盛り込むことは難しいと思う。市町村の役割とか、連携とか、これは他でも検討しているところなので、ここに書き込むのがなかなか難しいとは思うけれども、検討させていただきたいと思う。
矢島精神保健福祉課長
 多分、今後この検討会の報告を受けて、うちの方で検討することになると思うので、今のご指摘あった点も含めて検討していくことになると思っている。
委員
 写真の問題が出ていたので、その点について、私たちの立場を明確にしておきたいと思うのだが、写真を貼るか貼らないかは中心的な課題ではなくて、手帳で受けられる福祉サービスがどれだけ広がるのかというのが中心課題なんだと思う。写真が無いために、福祉サービスが拡大できないということならば、いつから写真を貼ったっていいのではないかというのが私たちの立場である。是非、手帳で受けられるサービスを一つでも二つでも、とにかく広げていただきたい。特に、交通費の問題については、全国的に要望が非常に高い。一番要望の高いのは、交通費の問題だと思うのだが、JRや飛行機も含めて、是非、手帳でそういう利益、サービスが受けられるような、少なくとも他の障害と同じくなるような、そういうサービスをつくっていただきたいというのが、私たちの願いである。
 それから、雇用の問題については、先ほど委員が発言されているが、私も全く同様に、雇用義務制度を是非適用していただきたいというのが、私たちの願いである。本当はここの場で、スパッと雇用義務制度に入れるというふうになって欲しいなという思いがあるが、いろいろ皆さんのご意見もお聞きしていると、今すぐというのはやはり難しいのかなという感じもあるので、当面は、実雇用率の算定ということで止むを得ないのかなという思いがする。ただ、先ほど、委員も言われたように、将来的ということで、ずっと先延ばしされるというのは、どうも納得できない。せめて、目安ぐらいはどこかに入れて欲しいという思いがしている。知的障害者の場合は10年かかったそうだが、精神障害者の場合、10年もかけられたのではたまらないなというのが正直な意見である。
委員
 将来展望のところであるが、前の障害者雇用促進法の改正の議論の中でも、坂口厚生労働大臣が答弁の中で、この精神障害者の雇用率制度の義務化をどうするかという議員からの質問に対して、なるべく早急にという方向だったかと思うが、今のお話のように、知的の障害者の方たちが10年かかったということを考えると、今回、こういう形で研究会報告書を出して、ではまた10年かなという不安がよぎるということがあるから、やはり「少なくとも」という言い方でいかがか。次期法定雇用率見直しの際には、法定雇用義務化適用に向けて検討すべきであるか、もうちょっと強めの表現がいいかどうか。その辺のところ、最低限のところがどうなのかなという感じがして、研究会報告でその辺を加えてもらう形が必要ではないかと思う。もちろん、そうなってくれば、審議会の中でも検討すべきことだと思うが、少なくとも研究会報告の中でも、それぐらいは必要ではないかなという感じを持っている。
座長
 次回があるので、そこで少しまた検討したらと思う。
委員
 先ほど、実雇用率に算定することが企業にとってプラスなのかマイナスなのかということだったが、単純に言うと、いろいろなケースがあるということになるかと思う。私の印象としては、全体として、プラスになるだろうから雇用してくれというだけの魅力にはならない話だと思う。だから止めた方がいいというのではなく、今までいろいろな例が出ていたが、既に休職中の人で、相当コストがかかっている。そうすると、新しくもう一人精神の障害を持った方を採用し、その人を短時間労働でやとったという、そんなケースがあるかどうか知らないが、仮にそういうふうに考えると、単に給料を払って休職になっている人よりも、働いてもらえる人に入れ替えたいという発想だってあり得るわけである。実際には、そんなことはしないが。したがって、納付金が調整金に変わるという微妙なところにある企業というのは、それなりにメリットはあるかもしれないが、そういうケースばかりではないので、むしろ、企業が負担しているいろいろなコストについて、水面下でというか、マイナスの部分を少しでもプラス部分に引き上げていく効果はあるだろうという意味で、意味はあると私は思うが、こういうメリットがあるから、実雇用率に入れたんだから、企業はどんどん雇用してくれということにはつながらないなというのが、私の思いである。そういう意味では、最初に申し上げたように、企業というのは、法的な責任ということになると、それは果たさなければいけないという行動をするだろうけれども、長い目で考えると、企業として社会に果たすべき役割の一つとして、やはり社会貢献だと思う。したがって、企業がそう思えるような方向へ持っていかないといけないのであって、雇用率に入れたから、「はい、やりなさい」ということでは、制度は充実していかないと私は思う。
委員
 私は前回のこの委員会の時にも委員をさせてもらい、その時からの思いが強い。前回の岡上先生の委員会では、雇用義務化するか否かという両論併記だった。私はその時に、次回の委員会に思いを馳せて、今度はいくという格好で思っていた。だから、そういう点では、報告書の最終的な結論というのは、先ほどのいわゆる特例的な話であり、最初の思いからするとやや後退という感じは否めない。ただし、実際に現実の世界を動かしていくには、こういったやり方は一番妥当だという格好で、私はこの結論に関しては賛成する。
 それと、先ほど、いわゆる特例の中で動かしていくメリットの大きさについておっしゃったが、在職の精神障害者の方の問題については、本当にきちんとうまくいくのかどうかということになる。ただ、在職の精神障害者の人たちについては、全員がこれをもって救われるとは思わない。前回の研究会の委員と比べて、今回の委員の中では、いわゆる在職のうつの人たちに関しての専門家の人たちが入って来られた。それが契機となったかどうか分からないが、私はここ数年ずっと、うつの人たちのいろいろなリハビリテーションのプログラムを一緒にやっており、よく分かる。特に、メンタルヘルスの人たちは、あまりに職業リハを知らなさ過ぎるということを、はっきり実感している。精神保健の人たちは、精神保健と、それから企業内のいわゆる予防的なことに焦点を絞り過ぎていて、そういったことで、何回か研究会をやって、実際にうつの人たちのケースをやってみると、実は、今までメンタルヘルスをやってきた人たちが、こういった世界があるんだ、職業リハをやって、それから、いわゆる復職のプログラムがあるんだということに関して、非常に関心を持ち、そして、うつの学会等が、いわゆる職業リハに絡んで、本格的に始めようという流れも出てきている。言い換えると、特例という格好でやったにしても、今まで問題でほとんどやってこなかった在職精神障害の人たち、自分たちと全く違う世界だと思っている人たちが、これから先、非常にこの職業リハという絡みの中で、出てくる可能性が高くなるような気がする。今まで、うつの人たちに苦労していた精神保健の人たちは、産業医なんかでもそうだが、復職、復職と言ったって、復職に関する判断機能というのをどこまで持っているかというところは、非常に疑問がある。評価にしても。ところが、そういったことが、こういったことをやっていくに従って、いわゆる特例という格好で、在職の人たちに対して、少ないケースであったにしても、職業リハ、つまり自分たちが今までやってきたことと違う世界の中で大きな情報なり、ノウハウなり、メリットがあるんだということを確認していけると思う。
 そうした流れを考えていくと、私自身は具体的な話をして、雇用率制度までいかないにしても、実雇用率という中でやっていくことのメリット、特に在職精神障害者の人たちに対する具体的なメリットは、これから先、いろいろな意味で期待されるということが考えとして出てくる。そういった意味で、私自身は、この素案に関しては賛成する。特に、前回の報告書とは違い、将来展望という一言どぎつく、何回も何回も書いているけれども、将来展望というのは、今までの報告書の中で見たことがない。そういった意味では、将来展望を非常にきちっと書いているという意味では、道筋が見えてきたと言えると思う。ただし、その道筋自身が、将来的にということに関して、どこまで踏み込んで書いていくか。そこがある種、興味がある。ひとごとみたいだが、いろいろやっておくべきことかと思う。
座長
 時間なので、もしご意見がある方は、後ほど事務局の方にご意見をお寄せいただいて、私の方で事務局と判断して調整したいと思う。そういうことでお許し願えれば、ここで終わりたいと思うが。
委員
 手帳のことなのだが、やはり在職の方、うつの方は取っていらっしゃる方は少ないと思うが、例えば、病院よりも診療所なんかにかかっている方が多いと思うので、そういうところからの周知と、あと、東京都だと、公営住宅は手帳を持っていらっしゃる方はかなり当たる率が高い。交通費の方はまだ動きがないけれども、住宅関係と、それから32条の医療費が安くなるという方のこと、この辺のメリットをもうちょっと在職者の方に伝えられるような仕組みを考えた方がいいなと考えている。
座長
 大変ホットな議論をいただき、5番、6番を検討していただいた。それ以外の部分について、時間がなくて申し訳なかったが、もし、修正が必要であるというようなお考えがあったら、メモをメールでも何でも結構なので、事務局の方にお寄せいただきたいと思う。次回の最終の取りまとめに反映させたいと思う。


 照会先: 職業安定局障害者雇用対策課 雇用対策係(内線5854)


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