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2 勤労控除(基礎控除)の経緯
 (1)過去の勤労控除(基礎控除)の考え方
業種別基礎控除 収入金額別基礎控除
 昭和23年創設
 生活扶助基準の第1類費が非稼働を前提として算定されていることに対応し、稼働者の追加栄養分(エネルギー)等を補填するために創設されたものであり、稼働日数によって適用率を設定。
 定額控除的な色彩が強い(収入額とは無関係)。
 内容
(1)  飲食物費(職種別算定)
 勤労に伴って必要となる増加エネルギーの補填
 → 軽労作とのカロリー差を補填する趣旨で職業別に設定(※)される。
 ※) 中労作:事務員・運転手等、強労作:日雇・農業等、重労作:坑内夫等
(2)  その他の経費(職業間同一額)
 勤労に伴って必要となる経常的職業経費(被服・身の回り品・職場交際費等)に対応するものとして設定。
(3)  適用率(稼働日数に応じるもの)
  10日以内 :40%  11〜15日以内 :60%
  16〜20日以内 :80%  21日以上 :100%
 保護開始時の要否判定に用いる。
 昭和41年創設
 業種別基礎控除が収入額を考慮しないため、定額的な色彩が強いことから、より多くの勤労収入を得るための必要経費を補填すると共に勤労意欲の増進、自立の助長を図るという目的で創設されたもの。
 業種別基礎控除の適用率が100%の者のみ適用する。
 内容
 控除額は、職業別(中労作〜重労作)に定められる控除限度額の範囲内で収入額に応じて設定。
 保護開始時の要否判定に用いない。
<参考>
 ○  業種別基礎控除額:100%適用額
(昭和60年・1級地)
中労作 強労作 重労作
17,980円 23,950円 30,140円
└────────────────────┬──────────────────┘
   ↓
基礎控除を収入金額比例方式へ一元化(昭和61年)

 (2)昭和61年度における改正内容

(1) 改正の趣旨
 勤労に伴う諸々の必要経費を補填するというこれまでの基本的な性格は維持しつつ、職種区分を撤廃するとともに、勤労意欲増進のための経費としての性格を強めるため収入金額比例方式に一元化する。

(2) 改正の内容
 一般低所得勤労者世帯における職業的必要経費が勤労収入の増に比例して増加しており、特に知識・教養のための経費の伸びが顕著となっていることから、控除額は収入の金額に比例して増加させる方式に一元化することとし、控除率については、その職業関連経費の支出状況から約20%(一定額を超える分は約7%)とした。(ただし、4,000円までは全額控除)※ 現在、8,000円まで全額控除
 職種間の職業的必要経費は総体的に差がなくなっていることから、職種区分を撤廃。
 同一世帯内で複数の就労者がいる場合、その職業関連経費には共通する部分があることから、2人目以降の控除額は一定割合を減じる。
 保護開始時の要否判定には、これまでの業種別基礎控除に含まれていた追加栄養量補填分を考慮し、基礎控除額に70%を乗じた額を用いることとした。
 国民生活の変化等に対応した生活保護制度のあり方について(意見具申)−要旨−
(昭和60年12月17日 中央社会福祉審議会)
 ○ 勤労控除制度のあり方
 制度創設以来相当の年数を経て、基準生活費の水準の充実及び勤労者の消費構造や就業形態が変化したことに伴い、最低生活保障水準との関係で勤労控除の水準及び職種区分の設定のあり方について検討する必要性が増大しており、また、自立助長を促進するという観点から勤労意欲の増進が効果的に図られるよう制度を見直す必要がある。
 このような認識のもとに、基礎控除のあり方について、低所得勤労者世帯の家計消費の状況等、各種の資料をもとに検討した結果、次のような所見を得た。
(1) 稼働者と非稼働者の食費の支出差がなくなっていること。
(2) 家計に占める食費割合の相対的減少傾向に伴い、勤労による追加栄養量の補填分は、ほぼ生活扶助基準で満たされていること。
(3) 職種間の職業的必要経費は総体的に差がなくなっていること。
(4) 職業的必要経費は勤労収入の増に比例して増加しており、内容的には被服等の最低限必要となる経費よりも、知識・教育向上等のための経費の伸びが顕著であること
 今後の勤労控除のあり方としては、勤労に伴う職業的必要経費という基本的性格を踏まえつつ、勤労意欲を増進するための経費としての性格をより強めるために、職種区分を撤廃し、収入金額比例方式に一元化するとともに、被保護世帯の自立を促進する観点に立ち、個人単位から世帯単位の収入合算額に着目する方向で検討すべきであること。


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