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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

(注)  枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成13年1月7日1:37頃、頭痛が増強したため、救急外来を受診。その後、1月18日に主治医が脳死に近い状態と説明したところ、家族より患者は生前に臓器の提供を希望していたとのことであった。
 その後、1月19日18:26に主治医は患者を臨床的に脳死と診断。主治医が家族に病状を説明したところ、家族から臓器提供意思表示カードの提示があり、家族からネットワークコーディネーターの説明を受けたいとの申出があったため、同日19:27に病院は関東甲信越ブロックセンターに連絡。
 同日21:15に、ネットワークのコーディネーター3名及び都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行った。
 同日22:35にネットワークのコーディネーター2名及び都道府県コーディネーター1名が家族(夫、弟)に面談し、脳死判定・臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。脳死判定・臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。その際、「夫婦で話し合ってカードを書いたので、本人の意思を尊重したいが、本人が特定される情報は出してほしくない。病院名も知られたくない。私の職場に知られたくない。マスコミが病院に迷惑をかけないか心配。」との発言があったため、コーディネーターはいったん退席し、病院側に、家族が病院に迷惑をかけることを心配している旨を伝えるとともに、マスコミに対する病院の体制等を確認した。
 その後23:43に、主治医、病院長同席の下、ネットワークのコーディネーター2名及び都道府県コーディネーター1名が再度家族(夫、弟)に面談し、脳死判定・臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認した。
 1月20日0:10に、コーディネーターが、家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○  コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。

 ○  家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定・臓器提供等の内容・手続を記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への脳死判定の説明等は適正に行われたものと評価できる。

2.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 1月20日3:25に、心臓、肺、肝臓、小腸のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同日7:42よりレシピエント候補者の選定を開始している。
 法的脳死判定が終了した後、同日14:45より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎
臓、小腸の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。
 心臓については、第1候補者の移植実施施設側はドナーの心臓が小さいため、移植を辞退し、第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾。
 肺については、第1候補者の移植実施施設側が両側片肺の移植を受諾するも、気管支鏡の結果ドナーの右肺に多量の膿性痰を認め、移植実施施設側は移植を辞退し、第2候補者の移植実施施設側が左片肺の移植を受諾している。また、第3候補者の移植実施施設側が右片肺の移植を受諾したが、気管支鏡の結果ドナーの右肺に多量の膿性痰を認め、移植実施施設側は移植を辞退している。
 肝臓については、第1候補者から第11候補者まで意思確認が行われたが、脂肪肝等により移植実施施設側が移植を辞退し、ネットワークはあっせんを中止。
 膵臓・左腎臓同時移植については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。右腎臓については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 小腸については、第1候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 また、感染症やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○  今回の事例におけるレシピエントの選択は、レシピエント選択基準に基づきコンピューターにより選択された順位に従って、上位の患者から意思確認等を行った結果決定されており、公平かつ適正に行われたと評価できる。

 ○  なお、本事例において、ネットワークの総合メディカルコンサルタントが、移植チームとして移植に関わったことについては、次のように評価できる。
(1)  レシピエントの選択には、総合メディカルコンサルタントの関与は認められず、選択自体は公平かつ適正に行われている。特に、総合メディカルコンサルタントが、自らの患者が臓器のレシピエントとして選択される可能性が高いと推測したことや、本事例に際しての総合メディカルコンサルタントの動きについても、検証したところであるが、特段不正な点は認められなかった。
(2)  秘密保持及び個人情報保護(ドナーとレシピエントの匿名性の確保)の観点からも、問題は認められていない。

 ○  さらに、この件に関連して、検証会議において、ネットワークより、
(1)  あらかじめ、ネットワークから、各臓器ごとに複数の医師を委嘱しておき、実際に助言が必要となった際には、あっせん対策本部長の指示により、コーディネーターがそれら複数の医師に助言を求める形とすること。
(2)  今回改めた取扱いについては、あっせん業務の手続として明確にし、それに従ってあっせん業務を遂行することとすること。
との方針が示されたところであり、検証会議としてもこの方針を評価したところである。

 ○  また、ドナーの医学的検査等は適正に行われている。

3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 1月20日12:45に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより、家族に対して、右肺については感染症のため、また肝臓については脂肪肝等のため、主治医の判断により移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○  法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。

4.臓器の搬送
 1月20日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○  臓器の搬送は適正に行われた。

5.臓器摘出後の家族への支援
 1月21日臓器摘出手術終了後、ネットワークのコーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告している。御遺体のお見送りについては家族だけで行いたいとのことであったため、コーディネーターは立ち会わなかった。
 1月22日、ネットワークのコーディネーターより家族に、全てのレシピエントについて移植後順調に経過している旨を報告している。
 1月23日にネットワークのコーディネーター2名が、お通夜に参列し、移植を受けられた方々の経過が順調であることを報告している。その際、家族からは「そうですか。それはよかった。」との発言があった。特に小腸移植のレシピエントのことを気にされており、「小腸移植は初めてで難しいのでしょう?」と質問される。今のところ経過は順調な旨を伝えると、「是非、移植を受けられた皆さん5人とも成功してほしい。」とのことであった。
 4月7日にはネットワークのコーディネーターより、電話にて移植後のレシピエントの経過報告及び感謝状の準備ができ近々訪問させていただきたい旨を伝えるが、多忙のため、再度連絡をとってほしいとのことであった。レシピエントの移植後の経過が順調なことを伝えると、「小腸移植の子供さんはいかがですか?」と気にされていたので、近況を報告している。
 9月11日に小腸の移植実施施設より、1月21日に実施した小腸移植のレシピエントが亡くなられた旨の報告を受け、直ちにネットワークのコーディネーターより家族にその旨を報告している。その際、家族からは「それは残念です・・・。他の方はいかがですか」との発言があったので、他の方の経過が順調であることを報告している。
 その後もレシピエントからのサンクスレター郵送する等、ネットワークのコーディネーターが適宜報告を行っている。

【評価】
 ○  コーディネーターにより、お通夜への参列、家族への報告等適切な対応が採られている。


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