04/03/18 第1回社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類専門委員会議事録    第1回社会保障審議会統計分科会 疾病、傷害及び死因分類専門委員会議事録 1 日時 平成16年3月18日(木) 10:00 〜12:00 2 場所 経済産業省別館846号会議室 3 出席者   <五十音順>    大江和彦委員、菅野健太郎委員、田中紘一委員、藤原研司委員、松尾宣武委員、    松田晋哉委員、山本修三委員    事務局       統計情報部長、企画課長、人口動態・保健統計課長、       疾病傷害死因分類調査室長 4 議題   (1) 委員長の選出   (2) 2003年世界保健機関国際分類ファミリー協力センター分類改正委員会にお      ける保留14項目の検討   (3) その他 5 議事内容 ○疾病傷害死因分類調査室長  予定の時間となりましたので、第1回「社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死 因分類専門委員会」を開催いたします。  各委員の先生方にはお忙しいところ本委員会に御参加いただきまして、本当にありが とうございました。感謝申し上げます。  議事に先立ちまして、統計情報部長よりごあいさつ申し上げます。 ○統計情報部長  本日は、大変お忙しい中を社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類専門委 員会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  ICDすなわち「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」につきましては、我が国は WHOより1900年にその初版が刊行されると同時に使用し始めるなど、ICDに関する リーダー国として世界的にも評価されております。  ICDは、これまで医学の進歩等に対応するために10年ごとに大幅な改訂が行われ、 1990年に第10回版である『ICD−10』が刊行されております。WHOではこの『IC D−10』の刊行を機に10年ごとの大幅な改訂に代えまして、1年に1度の小改正、3年 に1度の大改正によりICD−10のアップデート(改正)をしていくことを決めており ます。この改正作業はWHO−FIC国際分類ファミリーの中の、URC(分類改正委 員会)が担当し、そこでの検討内容は年に1回開催されますWHO−FIC協力センタ ー長会議において討議・採択され、それをWHOが正式に採用することとなっておりま す。  昨年も10月に開催されておりますが、会議で決定できなかった14項目の改正事項につ きまして、内容が専門的かつ多岐にわたることなどから、各国に意見を求めることとな っております。本委員会では、この14項目につきまして御検討いただき、WHOへの我 が国としての回答のための貴重な御意見を賜りたいと考えておりますので、どうぞよろ しくお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長  議事に先立ちまして、事務局より運営について御説明させていただきます。3点ござ います。  第1点、本委員会の運営については、社会保障審議会の運営に準ずること。  第2点、会議は原則公開であること。  第3点、議事録も原則公開されること。  以上でございます。  委員長が選出されるまで、事務局にて議事を進めさせていただきます。  それでは、議事の1にあります、本委員会の委員長の選出を行いたいと思います。ど なたか委員の先生方で立候補もしくは推薦される方はいらっしゃいませんでしょうか。 ○松尾委員  山本委員を御推薦いたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長  今、山本委員が御推薦されましたが、各委員の先生方、いかがでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○疾病傷害死因分類調査室長  異議なしとのことですので、本委員会の委員長には山本委員にお願いしたく存じま す。  それでは、山本先生、よろしくお願いします。 ○山本委員長  山本でございます。この委員会の中では一番年長ということで御推薦いただいたもの と思っております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、早速、議事を進めたいと思います。  検討に入る前にこの委員会の役割あるいはICDなどについて資料がございますの で、事務局から説明をお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長  まず、本委員会の役割等について御説明させていただきます。これについてはお手元 にある資料1をごらんください。  本委員会設置の目的でございますが、本委員会は、社会保障審議会統計分科会に設置 された専門委員会であり、世界保健機関国際分類ファミリー協力センター長会議の分類 改正委員会から提案された、ICD−10の適用に関する案件を検討するためICD及び 適用分類の領域を専門とする方々にお集まり願ったということでございます。  委員会は本日の検討事項に応じて随時開催させていただきたいと考えております。委 員会の任期は本年末日までとなっております。  次に、参考資料の1をご覧ください。この資料は平成13年7月30日の社会保障審議会 統計分科会において了解された事項であります。ICDに関する専門委員会は、社会保 障審議会の下にある統計分科会の下に設置されるものです。専門委員会で検討するIC Dに関する審議事項は統計分科会において以下に御説明いたします3点とされておりま して、委員会での検討結果は統計分科会に報告することとされております。その3点に ついて御説明申し上げます。  第1、「疾病、傷害及び死因分類」の普及を目的とする補助分類の作成。  第2、「疾病、傷害及び死因分類」の軽微な変更。  第3、その他「疾病、傷害及び死因分類」に係る個別専門的事項、となっています。  今回設置された専門委員会は今申し上げました審議事項のうち2番目と3番目に該当 する項目を検討するものです。具体的には平成15年10月のWHO協力センター長会議、 FICと略させていただきますが、WHO−FIC協力センター長会議で再検討が必要 とされた14項目についての検討を行うために設置されたということでございます。  以上の3つの審議事項に当てはまらない、例えば、ICD−10そのものの見直しなど の大規模改正の場合は、別途検討することとされております。  続きまして、この委員会の議論の参考のために、ICDに関する事項について説明さ せていただきます。参考資料の2です。現在のICDに関する動向について御説明申し 上げます。  我が国で統計調査に用いる「疾病、傷害及び死因分類」は、1990年WHOより定めら れた「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」、ICDと略しますが、この第10回改正 ICD−10に基づく公示によると政令で定められています。この公示は、平成6年10月 に総務庁が告示を行っております。  次に、現在のICD−10の改善に関する動向等について御説明させていただきます。  まず、ICD−10のアップデート(改善)についてですが、ICDについては1900年 の第1回刊行以来、医学の進歩等に対応するために10年ごとに大幅改訂を行ってまいり ましたが、第10回改訂以降は3年ごとの大改正(次回は2006年を予定いたしております )と1年ごとの小改正を行っております。現在使用しているICD−10は、1990年にW HO版が刊行し、日本語版は1995年に刊行いたしております。WHOではICD−11へ の改訂を行わず、1年ごとの小改正、3年ごとの大改正で改善を図る方針であります。  WHOはICDに関して専門家から意見を求める場として、FIC協力センター長会 議を設置しており、その中に置かれたURC(国際分類ファミリー分類改正委員会)に おいて、ICDの改正等に関する検討が行われております。WHOではURCの検討結 果を踏まえて、ICDの改正等を検討することとされています。  これまでWHOは1990年以降ICD−10に関する改正を行っていますが、これらの改 正事項について我が国としての対応を決定していないものがあり、我が国としてはまず それらの事項への対応を検討することが必要であると考えております。  URCは我が国を含むWHO−FIC協力センター長会議の各メンバーから、改正に 関する検討項目について、意見をもらうこととしております。  また、こちらには書いてございませんが、WHOの方では国際精神科ジャーナルにI CD−10の大幅見直しの必要性というものを発表いたしておりまして、2003年カイロで WPA(世界精神学会)と連携をとりまして、ワーキンググループを発足させておりま す。  昨年ドイツ、ケルン市で行われましたFICセンター長会議で、ICD−10の見直し に関する意見がありましたので、参考のため、具体的にどのような提案がなされたかを お示ししました。オーストラリアが提案したICD−11案の例でございます。  次に、「ICD−10コードと標準病名及びカルテ病名の関係」について説明させてい ただきます。  御理解いただきやすいように模式図を付けましたので、それと適宜対比させていただ ければと思います。  第1番目は、ICD−10の1つのコードというものは複数の病名に対応するもので す。つまり、複数の病名があってもICDでは1つのコードになってしまうということ です。現在、標準病名としては「標準病名集」というものがございます。  第2番目は、現在、カルテに記載されている病名は現在の「標準病名集」より多くな っております。図の一番下の「カルテ病名」と書かれているものが、真ん中にございま す標準病名よりも多いということです。  3番目に、電子カルテの導入化により、医療機関内の業務の効率化に資するのみなら ず、医療の質の向上に大きく資するため、電子カルテに記載する病名を「標準病名」に 統一し、コードの標準化を図ることとされています。このために現存の「標準病名」の 補充・見直しが進められているところです。  最後に「注」と書いてある用語の説明をさせていただきます。「一般レセプト病名」 についてですけれども、現在一般レセプトに書かれている病名は現在の「標準病名集」 より多いということと、一般レセプトに書かれる病名は「標準病名」に統一し、コード 化を図ることとされています。このコードはICD−10より細かいものです。  次に、「DPCレセプト病名」ですが、カルテではICD−10コードより細かい標 準病名で管理しますけれども、DPCレセプトではその標準病名に対応するICD−10 コードに変換して記載するということになっております。 ○山本委員長  どうもありがとうございました。  ただいま事務局から、この委員会の設置趣旨あるいは審議事項、あるいはICDに関 する最近の動向等について御説明をいただきましたけれども、どなたか質問ございます でしょうか。どうぞ、菅野先生。 ○菅野委員  WHO−FICセンター長会議では、オーストラリアからICD−11案が提出されて おりますけれども、WHOの意向として当面はICD−10の大改訂だけで対応してい くのか、それともICD−11を視野に入れた上で対応しているのか、どうなっているの か。  ICD−10については、日本語版が出ていますが、ICD−10について行われて きた改正に対応してきたのか、あるいは今後対応する予定なのか、2点お伺いしたい。 ○山本委員長  今の問題は、議題「その他」で扱った方がいいかなと思いますが、それでもよろしい でしょうか。 ○菅野委員  はい。それでも結構です。 ○山本委員長  14項目の処理の問題をまず検討していただいて、その後、議題「その他」の中で、全 般的な問題、先ほど質問のあった問題は大変重要な問題でございますので、是非、事務 局の方からお答えをいただきたいと思っておりますが、そのような進め方でよろしいで すか。 ○菅野委員  はい、結構です。 ○山本委員長  そのほかに今の説明の中で何か御質問ございますか。はい、どうぞ。 ○大江委員  この参考資料2の2枚目ですが、それの上の方に「これまでのWHOにおいて90年以 降ICD−10に関する改正が行われているが、これらの改正事項について我が国の対応 を決定していないものがあって、まず、これの対応の検討をすることが必要である」と ありますが、そうしますと、今回こういう14項目の検討を行って、URCへ持ち上げた ときに、WHOとしてあるいはURCとして改正の見解を出したとしても、それをまた 更に日本に反映させる部分で、どのように今後手続を取って国内に反映させていくのか ということを御説明していただきたい。 ○山本委員長  どうぞ、事務局。 ○人口動態・保健統計課長  先ほど説明がありましたように、ICD−10というのは、それまでのICD−9や8 と扱いが違う。ICD−8や9の場合には10年に1回だけ改訂、その途中何もないとい う状態できたのが、ICD−10からは1年の小改正と、それから3年ごとの大改正を行 う。大改正といっても、版を変えるのではなくて、ICD−10のまま改善するもので アップデートと言っています。  日本のICD−10への対応につきましては、WHOから示されたものについて日本で 審議し、日本独自の分類というのも幾つか加えて国内で運用しております。WHOは既 に何回かアップデートを行ってきておりますが、それらの中で実際にまだ対応を検討し ていないものがあって、対応しなければならないのです。しかしながら、我が国は年に 1回FICセンター長会議に出席していて、国として討議に参加している中で、取り急 ぎ検討して回答しなければいけない部分があり、それについて、本委員会で検討してい ただきたい。それをまず最優先させていただく。当然ながら、これまでの分につきまし ても、当然、今後対応していかなければいけないとは考えておりますが、まずこちらか ら検討する。その次にしかるべき場も考えながら対応していきたいと考えておるところ でございます。 ○山本委員長  よろしいでしょうか。 ○大江委員  お答えがはっきりわかりません。順序としてこの14項目を検討して、意見をまとめて 上げることは理解していますが、その意見が取り入れられて、WHOとして決めた改正 をどういう手順で、日本の基準に反映させるでしょうか。これまでのWHOの改正も日 本として対応を決定していないものがあるということですと、意見は言ったけれども、 改正されたものは国内に反映させるかどうかはわからないというように聞こえてしまい ます。この委員会での議論がどのように日本の基準に反映されて、我々の役に立つので しょうか。 ○山本委員長  お願いします。 ○人口動態・保健統計課長  先ほど説明させていただきましたが、参考資料1をご覧いただきたいと思います。平 成13年7月30日付け、専門委員会の親である統計分科会の了解事項でございます。  詳しく御説明申し上げなかったのでございますが、委員会の設置につきましては、参 考資料1の設置趣旨のとおりでございます。「疾病、傷害及び死因分類」につきまして は産業分類とともに重要な位置を占めるということで、特に政令に基づき総務省から告 示が行われ、それを使って統計をまとめるということになっています。本分類の作成に 当たっては国際的な趨勢に、WHOなどですが、配慮しつつ、必要がある場合には、統 計分科会において審議を行うということであり、統計分科会の審議事項であるという認 識がここに示されています。  ただし、この分類につきましては極めて広範囲に渡る検討を要するため、個別具体的 なことについては、分野ごとに専門委員会を設置して検討するということでございま す。それから一番下の行です。「疾病、傷害及び死因分類の大規模改正の場合は別途検 討」とあります。もともと統計分科会で疾病、傷害及び死因分類について扱うというこ とでございます。大規模改正は別途検討という書き方ですが、もともとが統計分科会で 扱う事項ですので、現在アップデートされてきた事柄について、統計分科会そのもので 全部やるのか、あるいは本委員会のように専門に当たる部分は専門委員会を設置して検 討していただき、分科会で決定するのか、いずれかで対応する必要があります。しか し、現在まだ進め方については分科会とも御相談してないところでございます。いずれ にしてもやらなければいけない事柄として認識しているということでございます。 ○大江委員  わかりました。 ○山本委員長  どうぞ、先生。 ○藤原委員  そもそもICDを我が国に導入した趣旨というのは一体何だったんですか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  ICDというのは、1900年にWHOにより刊行されました。その当時は主に死因の国 際的な標準の物差しを決めて、死因統計を取りましょうという意図で作られました。我 が国も国際社会の一員として参加していくという形でICDが導入されたということで す。 ○藤原委員  我が国の必要性というよりは国際協力という立場で導入したというふうな理解でよろ しゅうございますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  国際協力ということだけではなくて、我が国の疾病統計あるいは死因統計そのものの 質の向上という面でも大きく資するところがございますので、国内的にも非常に有益で あるということでICDが導入されました。 ○人口動態・保健統計課長  勿論、このICDがWHOのインターナショナルな基準ということですから、おっし ゃるように各国との比較、あるいは各国へ情報を提供するといった協力とか貢献とかい ろんな意味合いもあるのはおっしゃるとおりでございます。 ○山本委員長  今、各委員から、基本的な問題にかかわることが幾つか提起されましたけれども、ま さに非常に大きな問題だと思います。第1回ですので、少し時間かけて是非、その議論 をこの後やらせていただくということで、まず本日のテーマでございますWHOで決ま らず、WHOから尋ねられている14項目、日本としてどういうふうに考えるか、この議 題をまず済ませていただきたい。その後、今の基本的な問題を是非議論していただきた いと思いますのでよろしくお願いいたします。  それでは、ここで議題2に入りたいと思います。2003年にWHOの国際分類ファミリ ー協力センター分類改正委員会と日本語に直すと大変長い委員会があり、そこでの保留 14項目というものがございます。その検討を行いますので、事務局より御説明をいただ きたいと思います。 ○疾病傷害死因分類調査室長  それでは、議事の2の方でございます。日本語にすると非常に長いと山本委員長がお っしゃったので、WHO−FIC、URCにおける14項目と呼ばせていただきます。こ れらの項目について先生方に御議論いただくのですが、具体的にどのような点について ご議論いただくかということについて御説明申し上げたいと思います。  資料2と資料3をご覧下さい。まず資料2ですが、URC保留14項目とございます。 1つずつ簡単に御説明させていただきたいと思います。  先生方にお願いしたいのは、この対応案を基に御検討いただいて、Yes or No 、ある いは別のコードをご提案いただくという形で御議論をお願いしたいと考えております。  まず、「病的な付着胎盤」でございますが、現状でのコードはOの72.0(分娩後 出血・第3期出血)またはOの73.0(遺残胎盤・出血を伴わない)とされておりま す。この問題点は、今申し上げました2つのコードは、分娩時または分娩後の状態をあ らわすカテゴリーにございます。今、臨床前診断がかなり進んでおりますことから、分 娩前にこういった病態に対するコードを付けることができるのではないか。しかしなが ら、現存のICDにはこれらのコードがないので、臨床的な状況を踏まえ、分娩前の病 態を示すためのコードを新設したらどうかというのがこの案でございます。  対応案としてはOの43.2。Oの43というのは胎盤障害の分類で分娩前でもコー ド可能なカテゴリーでございまして、ここにしたらどうかという対応案が出ております が、決定されませんでした。  第2番目は、「遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病」です。現在でのコードは遺伝性 クロイツフェルト・ヤコブ病というような独自のカテゴリーはございません。クロイツ フェルト・ヤコブ病のA81.0にコードされます。問題点でございますが、この既存 のコードは感染症のカテゴリーでございまして、遺伝性というところに重きを置きます と、ここのコードの意味が全くなくなってしまう。すなわちこの病態をきちんと示すコ ードがないということでございますので、この神経系疾患のカテゴリーで、遺伝性を示 すためのコードを決定したらどうかという議論でございます。  これにつきましては、原本である参考資料3の中に、ディスカッションの内容等が書 かれていますし、参考論文等も付けられてございますが、そもそも遺伝性クロイツフェ ルト・ヤコブ病というのは国際的に受け入れられるものなのかどうかと、そういう議論 もございまして、まだ決定されていないということでございます。  3番目は、「再発性心筋硬塞」です。現状でのコードはIの22.X、Xというのは何 でも入ります。ここでの問題点は、心筋硬塞における急性、急性の方はIの21です が、これと再発性の定義が不明確である。更に慢性Iの25.8と陳旧性(傷跡のある )Iの25.2という定義も不明確である。WHOの方から4週間ということで区切る ということだったのですけれども、これに対して妥当性があるかどうかという議論がま だ済んでおりません。  4番目は、「アイゼンメンゲル症候群」です。既存コードはQの21.8でございま す。これは「心臓中隔のその他の先天奇形」というところにコードされるんですけれど も、海外の小児心臓病専門家からの意見で、「アイゼンメンゲル症候群」は先天性心疾 患に関連する後天性肺血管疾患であるとして、コードとしてはIの27.8が適当では ないか。  あとは用語の問題で、Eisenmenger's defectであるとか、complex であるとか disease であるとか、このような今3つの用語が使われておりますけれども、果たして これが先天性・後天性を鑑別できるかどうかというところで、用語も含めたコーディン グの問題ということが挙げられております。  5番目は、「細菌性肝炎」です。現状でのコードでございますが、起因菌が特定でき れば第1のコードとしてその細菌による感染、例えばAの23です。第2のコードとし て急性肝炎であればKの72.0、慢性肝炎であればKの73とコードされることとな っております。  問題点ですが、Kの77.0、これは星印(*)ですが、これはほかに分類される感 染症及び寄生虫症における肝障害を用いた2重分類で、幾つかの特殊なウイルス性肝炎 や梅毒性肝炎、結核性肝炎をコードすることは可能である。しかし、肝炎の索引、索引 というのはこの第3巻でございますが、索引から引きますと、上記以外の細菌によるも のについての定義がないということで、これをどうしたらいいだろうか。  海外からは起因菌が特定できる場合に対応するコードを新設してはどうかという意見 もございます。例えばKの75.5。しかしながら、我が国は、私を含めた多分ドクタ ーの間から細菌性肝炎の症例というのは果たしていかがなものだろうか、どれほどの頻 度であるのだろうか。こういった議論も出てきております。かなり地域性があるのでは ないか。  6番目は、「新生児の低酸素性虚血性脳症」でございます。現状コードはP91.0 ですが、「新生児低酸素性虚血性脳症」を「新生児脳虚血」と分けて分類したいという 提案でございます。しかしながら、果たしてこれら2つを厳密に分ける必要性があるか どうかという議論も出ておりまして、まだ決定されておりません。  7番目は、「受動喫煙」。これをコード付けをしようというのが提案でございます が、現状では対応するコードはございません。恐らく付けるとしたらZコードに付ける んでしょうけれども、果たして「受動喫煙」というのをどのような病態として定義付け るかという意見がございまして、取り上げるか・取り上げないかという議論も含めてま だ検討中という状況でございます。  8番目は、「くる病による脊柱後弯症」です。現状でのコードは、索引から引きます と、Eの64.3剣印(†)、M49.3星印(*)となっております。これは問題点 が非常に大きくて、Eの64.3というのはくる病の続発後遺症となっておりまして、 後遺症をあらわすコードでありまして、現在のICD−10コーディングルールでは第1 次コードとしては使用しないこととしております。ルールに従って、この疾患をコード するのであれば、Mの40.1でございますが、これだけでは情報不足で、くる病によ る脊柱後弯症をあらわせないことになります。すなわち、これは剣印、星印のルールを 変えることにもなりかねないので、十分にコーディングの議論をする必要があるという ところでございます。  9番目は、「性転換症/性同一性障害」です。現状コードは性転換症はFの64.0、 性同一性障害Fの64といずれも精神科疾患のコードが付けられております。これも参 考文献にございますが、これを先天奇形のカテゴリーに分類できないか、すなわち遺伝 性があるのではないかというペーパーがイギリスセンターを中心に出されまして、コー ドが提案されました。しかしながら、果たしてこの病態そのものをこのような形でとら えていいのかどうかというところの議論が分かれまして、各国に持ち帰って、専門家の 意見を聞くということになりました。  10番目は、「アルコール性膵炎」でございます。現状でのコードは急性の場合はK の85、慢性の場合はKの86となっておりますけれども、海外から急性膵炎でなくて もアルコール性膵炎の分類ができるようにしたいという意見が出ておりまして、Kの 85の中にアルコール性膵炎だけではなくて、薬剤性、術後といったような細分類をつ くったらどうか、細分類をつくるのであれば、どのような形にしたらいいのだろうかと いうところで、まだ、議論が進んでおりません。  11番目、「先天性心疾患国際専門用語プロジェクト」。これは北米とカナダが中心と なって提案したものでございますが、このプロジェクトそのものについては皆の異議は ございませんでしたけれども、ここに用いる用語集といたしまして、International Paediatric Cardiac Code (IPCC)というのとEuropean Pediatric Cardiac Code (EPCC)とFlyer Codes (ボストンから)等の候補が挙がっている。こういったプ ロジェクトが立ち上がったときに、果たして各国についての用語としての適用はどう か。用語集をこれで使っていいかどうか、ほかのものがあれば何か提案してくださいと いうことで、これはコードというよりは用語の標準化に向かった動きでございます。  12番目は、「副反応及び合併症を起こした医療器具」。現在のコードといたしまして はYの70〜80、「治療及び診断に用いて副反応を起こした医療用器具」のカテゴリ ー内のいずれかにコードすることにされております。しかしながら、このY70〜82 とY83〜84(「患者の異常反応または術後反応等を生じた外科的及びその他の医学 的処置で処置時には事故の記載がないもの」)、このカテゴリーとの分類条件が非常に 曖昧だということで、ここのYの70〜84までをきれいに整理しようということでご ざいます。具体的に幾つかの案は出されてはおりますけれども、まだ決定的なものがな いということで、各国に持ち帰ることになりました。  13番目、「家族性非溶血性先天性黄疸」。これは索引からの指摘でございますが、索 引表によるとEの80.5(クリグラー・ナジャー症候群)というふうになってまいり ます。 しかしながら、実際に索引から分類定領の内容例示を見てみますと、Eの 80.4にジルベール症候群といったものもございます。索引から引きますとEの 80.5だけに行ってしまいまして、80.4が取り残されることになります。果たし て、この扱いを一緒にするため索引を直すだけで済むのか、あるいはクリグラー・ナ ジャーとジルベール症候群、非常に有名な病気ではございますが、頻度としては少な い。2つの疾患を一緒にすることはできないのではないか。そういう議論が出ておりま す。  最後に14番目「弁膜疾患」でございます。現状でのコードは非リウマチ性の場合は I34、35、36のカテゴリー内のいずれかにコード。先天性の場合はQ22、23 のカテゴリーいずれかにコード。リウマチ性またはリウマチ性かどうか不明の場合はI の05〜08のカテゴリー内のいずれかにコードすることとなっておりますが、これは 原本の問題でございまして、内容例示表の中で、上記各コードの包含除外分に記載され た表示が非常にわかりにくく、リウマチ性、非リウマチ性、先天性の分類が正しくなさ れない可能性があるとの意見が海外からございました。  我が国でも、検討いただくということですが、我が国の方では言葉の問題から「リウ マチ性の有無にかかわらず」というような但し書きがしてありますので、日本語版にお いては特に混乱の問題はないと考えております。  以上でございます。  続きまして、資料3をごらんいただきたいのですけれども、今まで申し上げました14 項目につきまして、事務局で担当者の割り振りのご提案をさせていただきます。  まず、1番目の病的な付着胎盤は田中委員と松尾委員にお願いしたいと思います。2 番目の遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病に関しては松尾委員。3番目、再発性心筋硬 塞に関しては田中委員、山本委員。4番目、アイゼンメンゲル症候群に関しては松尾委 員。5番目、細菌性肝炎は菅野委員、藤原委員。6番目、新生児の低酸素性虚血性脳症 は松尾委員、山本委員。受動喫煙に関しましては松田委員。8番目のくる病による脊柱 後弯症については田中委員と山本委員。9番目、性転換症/性同一性障害におきまして は、松田委員。10番目アルコール性膵炎については、菅野委員、藤原委員。11番目、先 天性心疾患国際専門用語プロジェクトに関しましては、大江委員と松尾委員。12番目、 副反応及び合併症を起こした医療器具に関しましては田中委員。13番目家族性非溶血性 先天性黄疸に関しましては菅野委員と藤原委員。14番目弁膜疾患に関しましては、松尾 委員にお願いいたしたいと考えております。  以上でございます。 ○山本委員長  ありがとうございます。各論の、しかも大変細かいところに入ってきました。今の御 説明からよくわかりますように、ICD−10ができてもう既に10年以上過ぎて、最近の 医学の進歩に対応できない部分がたくさんある。国際的にも考え方が随分違うというこ とで、WHOでも結論に至らなかった14項目と伺っております。  それに関しまして、最終的には医師が専門的な立場でカテゴリーをどう考えるのか。 どういう適切なコードの考え方があるのか。その辺を整理していただきたいので各専門 家にお願いしたいというのが事務局のお話だと思います。今までの説明の中でご質問や 御意見ございますでしょうか。 ○藤原委員  一つ一つの項目について自分の担当分を整理整頓するというのは比較的困難な作業で はないとは思いますが、基本的なところで、例えばここに先天性疾患としてはどうかと いう話が出ています。例えば性転換の話だとか。「先天性」とは一体何であり、誰が定 義したんですか。「先天性」というといかにも遺伝性素因があるように聞こえますが、 実際は性転換というのは、発生のプロセスの中でのある異常です。生まれたときはすで に異常になっているでしょうが。それも含めて先天性と言うのか。「先天性」の言葉一 つを取り上げてもいろんな内容が入ってくる。だから、それを位置付けながら我々は考 えたらいいのか。その辺の議論が果たしてWHOにあったのかどうか。まず、それが第 1点です。それについて、わからないならわからないで結構ですが、その場合には問い 合わせていただければいいですが。 ○疾病傷害死因分類調査室長  先天性ということに関しては先ほども少し申し上げましたけれども、イギリスのセン ターから提案されたもので、幾つかの論文に基づくものでございます。その論文という のは性転換症が遺伝しているのではないかというような論文でございまして、それをイ ギリスが主張してきたということです。  我が国でも文献を当たってみたところ、未だ決着がついていない問題でございます。 ヒト、人間それぞれ遺伝子で動いているわけですから、それをゲノムのレベルで考えま すと全く遺伝のないものがないと言ってしまっていいのかもしれないですけれども、果 たしてそれを遺伝性ととらえるかどうかというところで大きな議論になりました。それ で、各国の意見としては否定的だったのですけれども、おそらくイギリスあるいはヨー ロッパのセンターで非常に強く推す研究者グループのバックがあり、専門家の意見を聞 いて、どの程度遺伝性とするものを受け入れられるかどうかと各国に持ち帰り見解を出 していただきたいということでございます。 ○藤原委員  もう一点、よろしいですか。例えば、細菌性肝炎です。これは日本では恐らくないと 思う。外国はあるのかもしれない。汚い手で肝臓の中身をいじらない限り恐らく起こり はしない。日本はまずあり得ない。日本ではこういうのはありませんと答える程度でい いことなのか。あるいはそういう世界全体を視野にしながら、我々の意見を挙げていく のか。その辺も言っていただきたい。 ○疾病傷害死因分類調査室長  先生方にお願いしたいのは、まず第一に日本の視野に立ってお答えいただくというこ とです。もう一つ先生方はインターナショナルな場で御活躍の専門家でいらっしゃいま すので、例えば国際的な頻度を考えると、我が国としても国際的にもそんなに数の多い ものでないからこのコード自体は要らないと言ってくだされば、国内的にも国際的にも 意義のあるお答えだと思います。 ○藤原委員  要らないというのは我が国の立場で要らない、ということです。WHOは世界を視野 にしていますから、ある国では結構発生するということはあり得ることです。ですか ら、そういったことを整理しながら答えていけばいいということですか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  基本的には我が国の現状というスタンスでお答えいただきたいと思います。尿路感染 症の例をとっても、コードについてもただし書きというものがあります。感染症の有病 率は各国の地域格差というものがございます。熱帯地域に行けば感染症も多いし、先進 国に行けばそうではない。この場合は、有病率の高低に応じたコードの選択ができま す。今回の問題では、例えば先進国で細菌性肝炎が少ない場合はこのコードはなしと か、そういう形での但し書きを付けることはできると思いますので、まず我が国の意見 としてお出しいただきたい。 ○山本委員長  よろしいですか。 ○菅野委員  先ほどの細菌性肝炎は、そもそも「肝炎」なのかそれとも肝内胆管炎ではないかとい う問題があります。 ○疾病傷害死因分類調査室長  そういった御意見を出していただいても非常に有意義なことでございます。WHOの センター長会議自体に医者の資格を持っている人が少ないものですから、なかなか率直 なディスカッションというのはできなかったんですけれども、各国の意見では、細菌性 肝炎は、余り見たことはない。しかしながら、先生のおっしゃるような意見が各国から 出てくる可能性も大いにございますので、そうなれば、またコードの変更ということに なると思います。 ○菅野委員  アルコール性膵炎を私どもが担当することになっていますが、これについて対応案と して、アルコール性急性膵炎が確かにICD−10にはないのですけれども、そのほかに 最近では代謝性であるとか、自己免疫性であるとか、遺伝性だとかたくさんのカテゴリ ーが出てきて、いわゆる病態あるいは原因で分類するというのが学会の趨勢です。その ような提案というのも、対応案の中に含ませてよろしいのか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  勿論、それは是非お願いしたいところでございます。この項目はまさにアルコール性 膵炎に関する細分類そのものを作り直すという意図でございますので、各国のコンセン サスを得ながら、一番使いやすいものにしていくというのが趣旨でございます。 ○田中委員  よろしいですか。 ○山本委員長  どうぞ。 ○田中委員  参考資料3ですが、これに今御説明の問題点と対応が書かれているということでしょ うか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  そうです。これは最終版でございますが、URCの意見調整というものは、もっとも っと厚いものが何回にもわたって発信されます。例えば、この項に関しては何年版の修 正案を参照とか、いろいろございますので、これらの文書を直接見ていただくと非常に わかりづらいということで、問題点を整理し、日本語にまとめさせていただきました。 ただ、基本的にはこの原本の方に基づいて作成したということです。参考原本に入って いないもので昔の資料に入っているものに関しては、適宜ピックアップしてこちらの日 本語の方にまとめさせていただきました。 ○田中委員  自分のタスクを考えると、例えば、1などでも分娩前診断が確実にできる今の現状の 医学の進歩についてはどう考えるかという、バックグラウンドから理解しないと、とて もタスクに答えることはできないと思います。 ○疾病傷害死因分類調査室長  出生前診断ができる国というのは、主に先進国に限られていますのでご指摘のとおり です。先ほども申し上げましたように、我が国のスタンスでお答えいただくというのが 原則でございます。 ○山本委員長  それでは、今の説明の中で、資料3で検討項目別の担当ということで、お願いすると いうことでよろしいでしょうか。では、お願いいたします。 それでは、宿題の14項目 につきましては、事務局としては、4月末目途に対応案をお願いしたいということです が、いかがですか。それでは早過ぎるとか。よろしいですか。 ○菅野委員  いわゆる様式ですが、提案原文に沿った様式で記載する必要はございますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  それは特にこだわりません。こちらにお寄せいただく方法も、郵送いただいても結構 ですし、メールに添付していただいても結構です。口述でおっしゃると、問題がござい ますが、それ以外でございましたら、どのような方法でも結構です。 ○山本委員長  フォームとか媒体はどれを使ってもいいから、日本の専門家としてのスタンスで整理 をしていただけばよろしい、そういうことでよろしいですね。 ○松尾委員  この11番の項目を大江先生と私が担当するのですけれども、これは4月末日では厳し いと思うんです。関連の学会に問い合わせる必要があるのではないかと思う。個人の意 見を述べるのはできますけれど、どうでしょうか。 ○疾病傷害死因分類調査委員長  最初に松尾委員個人の、御意見をいただいて、後ほど追加情報があれば御送付いただ くということにさせていただきたいと思います。 ○松尾委員  大江先生と私との間で一度話し合って、案を出し合えばいいということですね。 ○山本委員長  はい、どうぞ。大江先生。 ○大江委員  私も続いてこの11番の項目のことを質問しようと思ったところなんですが、いろいろ 候補に挙がっているものという資料は事務局でお持ちで、後で届けていただけるという ことでよろしいんでしょうか。 ○人口動態・保健統計課長  今、説明した内容に幾つか引用したものもございましたので、是非事務局に問い合わ せていただければ、事務局から該当部分について資料提供させていただきますので、よ ろしくお願いいたします。 ○山本委員長  現在、配られている資料は資料1、2、3と参考資料がございますが、この中でとり あえずやってくれという話になりますか。新たに必要な資料は事務局に請求すればいた だけるということですか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  こちらの方にお問い合わせください。 ○山本委員長  それではそういうことで、この議題2はそれで進めさせていただきたい。今日の説明 だけでは不十分な点もございますし、適宜事務局に御連絡をいただきまして、よろしく お願いいたします。  それでは、一番重要な部分になるかと思いますが、ICDへの日本のスタンスあるい は国際的な立場など先ほどから幾つかの問題が提起されていました。例えば、菅野委員 からはICD−11は今後どうなるのか、その改訂は日本にどういうふうに関係してくる のかといったご発言があり、藤原先生からはICDは一体国際協力としてやるのか、日 本のスタンスとしてもし合わないのだったら日本として独自に考えるのかという意味が 入っていると思われる御発言がありました。とりあえず御質問いただいたことに関しま して、事務局の方から、答えてもらい、それから議論に入りたいと思いま。 ○疾病傷害死因分類調査室長  まず、ICD−11についての今のWHOの動向について、御説明させていただきま す。WHOにおいては、10年以上経っているICD−10が、実際の臨床の現場に合わな くなってきているというような議論が出てきております。先ほど申し上げましたよう に、WHOの代表部はICD−10の何らかの形での大規模改正、ICD−11と呼ぶか、 ICD−10の大規模改正版と呼ぶかはネーミングの問題ですが、大規模改正の必要性 についてはWHOの名前で『国際精神科ジャーナル』に述べられております。  それから実際に、精神科領域に関しては、ワーキンググループも発足させて作業を始 めております。  また、WHOのFICセンター長会議におきましては、参考資料の2に付けさせてい ただいたとおり、オーストラリアからICD−11に関する提案が出たというところでご ざいます。このように、WHOの動向といたしましては、必要性があるけれども、どう したらよいかという議論が始まった段階でございます。  ICD−10につきましては先ほどから申し上げておりますように1年ごとの小改正 (マイナーアップデート)と3年ごとの大改正(メジャーアップデート)でやると決め ておりますし、我が国としては、実際にWHOで改正(アップデート)されてきたもの についての対応を検討していないという部分もございますので、まず、そのことを初め に検討した後に、その次のステップに進むというスタンスでございます。 ○人口動態・保健統計課長  先ほど、大江先生にもお答えしましたけれども、もともとICDに関しては統計分科 会の担当ということですので、今後の具体的な進め方等は分科会に諮り専門委員会ある いは分科会本会の対応ということになろうかと思います。 ○山本委員長  今のお話は今後のこの委員会の役割にも関係してくるだろうと思います。少しディス カッションを委員の間でやっていただきたい。いかがでしょうか。 ○菅野委員  繰り返しますと、日本語によるICDの提要という本がございますけれども、あれに はWHOが改正(アップデート)した分は収載されていないという理解でよろしいんで しょうか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  一部のアップデートは対応していますが、対応していないものもございます。 ○山本委員長  どうぞ。 ○大江委員  オーストラリアのICD−11の提案例2に糖尿病の分類の変更で、疾患概念に変更が 生じて従来の分類では対応できなくなったとありますが、こういう例は糖尿病に限らず 現在のICD−10をながめるとあちこちにあります。DPCの導入もあり、以前にも増 してこういう分類概念の変更にICDが対応できていないために、臨床現場が混乱して いるという状況があると思われます。  そうしますと、小改正あるいは3年ごとの大改正では何がアップデートされていて、 そのうちどの部分が我が国日本としてはまだ提要に対応していないのかということを、 どこかの委員会なりで議論されて、急ぐものは早く反映させるということが必須ではな いかと思います。  先ほど、課長から統計分科会で検討すべきことであるというふうにおっしゃいました が、位置付けとしてはそれで理解できるんですが、それでは具体的にその問題をこの委 員会で議論するのか、あるいは別の委員会をある時期に設置してそこで議論するのかと いうようなことも、方針としてはっきり出していっていただいた方が現実的になると思 いますので、もし検討されているのであれば御説明いただきたい。この委員会の役割で あるということであれば、そういうふうに考えて今後活動していくことも必要だろうと 思うのですが、いかがですか。 ○山本委員長  お願いします。 ○人口動態・保健統計課長  了解事項について再度確認方々ご説明をさせていただきます。参考資料の1の、「委 員会の設置について」という見出しが付いているところですが、もともと個別具体的な 事項については、1の「設置趣旨」にありますように、分野ごとの委員会を設置して検 討を行うということです。分科会の下に委員会を設置するに際しましては、予め検討の 範囲を定めるということです。  それから、3番目に、「当面のスケジュール及び構成」とありますけれども、検討の 必要が生じた場合に「統計分科会長の了解を得て設置」するということになっており、 説明の中では省略させていただきましたけれども、統計分科会長の了解を得てこの委員 会を設置しています。つまり、予め検討の範囲を設定して、分科会長の了解を得て設置 したということです。資料の1をごらんいただきますと、今回の委員会の役割は、昨 年、FIC、URCから提案された事項を検討するということです。この委員会は、先 ほど説明しました14の事項についての検討を行うということで、この専門委員会の設置 について、統計分科会長の了解を得て発足しているものでございます。  ですから、この委員会の役割は、この14項目についての検討を行うということではっ きりしております。それ以外の問題につきましてここでいろいろな問題点等を御提起い ただくことは差し支えないことですけれども、検討の設置の趣旨は資料1のとおりで す。  次に、これまでのアップデートの内容、小さな単なる誤植から始まってあるわけです が、そのことについては、参考資料1にありますように、そもそもICD自体が分科会 における審議事項であり、分科会本会あるいは、この委員会の検討の範囲が異なります ので、別の専門委員会なりを設置して検討するのかどうかです。これについては、事務 局としても案をお出しして、統計分科会としてどう進めるかお諮りさせていただいて、 進めていくことということでございます。現段階では、事務局案をお示しできる段階に はございませんが、そういうことでございます。 ○山本委員長  よろしいですか。 ○藤原委員  ICDができ上がった過程の中で、新しい時代の医学を全く反映していないというこ とに加えて、カテゴリーを分類するときに、どういう発想で分類されたものなのかが全 く見えない。だから、ある疾患を分類する医者からすると、その人がどう考えるか、つ まり医者の裁量によってその疾患の属するカテゴリーが変わってくる。  だから、最終的な目的であるいろんな統計をみても、何がなんだかわけがわからな い。日本では肝硬変の原因はほとんどわからないとか、肝炎などは少ないという話にな ってしまう。それが今一番の問題であって、今問題提起しているんです。  どこか適当な場所で問題意識を持って検討してくれるのならば別にそれで結構です。 その辺の展望についていかがですか。そもそもICDの担当室ができたというのは、国 際協力と我が国の立場を考えるとメリットがあると見込んでのことだと思う。14項目以 外のことの展望についても、担当室の責任で答えていただき、組織内で上にもち上げて いくべきではないかと私は思うのですが、いかがですか。 ○山本委員長  今、藤原委員、非常に重要な問題を提起していると思います。まさにICDの日本に おける根本的な問題が今の問題に含まれていると思います。どなたか御意見ございます でしょうか。 ○菅野委員  今の14項目は非常にマイナーな問題が多いんですけれども、先ほど大江委員がおっし ゃったように、新しい疾患概念がこの十数年の間に随分出てまいりまして、治療もそれ に応じて異なってくる。実際に、恐らくICD−10の精神はそういった疾病、障害の原 因を明らかにして、それに伴う統計を取り、それに対する対策を立てる、つまり治療法 を考える、予防を考える、こういったことにあったのだろうと思います。そうであれ ば、疾病の原因に応じて医学上わかってきたものは、分類あるいは項目を設けて対応し ていくことが妥当なのではないかと個人的には思っています。先ほどの膵炎もそうでご ざいますし、私どもは消化器でございますので、胃炎、肝炎などたくさんの問題がある ということを学会でも討議いたしたことがございます。  そういったことを考えますと、例えばヘリコバクター・ピロリという感染症がないと か、そういったことを日本から逆に提案していくという役割を持っているのではないか と思います。この専門委員会では、そういったことを含めて討議をしていくのかどう か。位置付けのこととも関係すると思いますけれども。 ○山本委員長  今のお2人の委員の御意見に対していかがでしょうか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  先ほど来、人口動態・保健統計課長が繰り返しているように、御提案いただくことは こちらにとっても有意義なことでございます。ただ、本委員会の役割というのは、何度 も申し上げて恐縮でございますけれども、14項目を扱うこと。ただ、それ以外に、この ような場で御意見をいただくということは非常に喜ばしいこと、有益なことだと考えて おります。 ○人口動態・保健統計課長  2つ申し上げます。まず事実関係です。今おっしゃっている医学の進歩に応じてIC D−10がついてこれないところがある部分に関しては、公式にWHOがホームページで 示している資料には、そういう医学の進歩等に応じて1年ごとあるいは3年ごとのアッ プデートという新しい仕組みをつくり、そのためにURCという改正委員会をつくり、 その中で、それぞれのセンター長から意見を聞き、最終的に10月のFICセンター長会 議の中で議論し、アップデートという形でWHOとして認めるという枠組みが公式に示 されております。  それからもう一つ、分科会からこの委員会に託された使命は14項目の検討ということ でございますが、分科会には、専門委員会で検討した結果について報告しなければいけ ません。託された使命の結果について報告するのは当然ですが、それ以外にこのように いろいろ御意見がございますから、御議論があったことを報告することは当然可能だと 考えております。検討の中で、本来の回答のほかにこんな御意見があったという形では 報告はできると考えております。 ○山本委員長  はい、どうぞ。 ○田中委員  課長に一歩踏み込んで説明いただきたい。この委員会の任務はよくわかったのです が、問題はやはりこのICD−10が我が国でどのように普及していくかと、これからど のようにICDに対応していくかということです。分科会が親委員会ですから、分科会 で当然討論していることをこの委員会がまた同じようなことを言っても意味ないわけで す。これまでどういう方向で分科会で討論されたか、あるいはどういう方向に行こうと しているか見えてきているのでしょうか。そこを踏み込んで説明していただけないで しょうか。この委員会の付帯事項としてこういう意見提言は可能と思いますが、このタ スクだけを粛々とやってほしいということなのか、その辺はいかがですか。 ○人口動態・保健統計課長  実は一昨日、統計分科会が開催されましたので、この委員会の設置について事前に当 然分科会長の了解を得ており検討を進めますという報告をいたしました。少なくとも現 段階ではこの分科会においてICDそのものを議題として取り上げていません。 ○田中委員  これからということですか。 ○人口動態・保健統計課長  これから分科会の運営の中でどのように扱っていくかというところでございます。現 段階では、ICDについて分科会では専門委員会の設置以外特に議論していることはご ざいません。 ○山本委員長  どうぞ。 ○大江委員  この委員会に与えられた役割は非常に限定的であるということは理解しました。です から、統計分科会にこういう限定的な問題だけではなくて、ICD−10の改訂に対する 国内の要望あるいは考え方の提出方法を議論する専門委員会を設置してもらいたいとい うような意見を分科会にだしていただきたい。実は松尾先生と私は統計分科会の委員で ありますが、この1年、このような話題が統計分科会で出たことはありません。報告事 項だけだったと記憶しております。用意していない議題を突然提案するという状況では ありませんので、今後そのような準備をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、よろしいでしょうか。 ○山本委員長  はい。 ○大江委員  聞くところによりますと、日本は現在FIC協力センターのオブザーバーではなかっ たかと思いますが、事実として間違いないでしょうか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  間違いございません。 ○大江委員  私はオブザーバーの地位と、オブザーバーでない正規のセンター長会議の出席者の地 位とでどの程度差があるのか存じ上げないで申し上げるのですが、我が国は先進国でI CD−10を翻訳して、これだけ臨床の現場でも使っている国なわけですから、オブザー バーという地位ではなくて、きちっとした地位を確保して、国内に体制をつくって改訂 すべきことはこういう事項であるということを主張してICDに反映していただくとい う体制づくりを是非お願いしたい。  ICD室長はURC委員会の委員であるという理解でよろしいでしょうか。このよう な体制づくりについても是非、統計分科会に持ち上げて考えていただくようにしてほし い。 ○疾病傷害死因分類調査室長  今の大江委員からのオブザーバー国とオブザーバー国でないものの差、地位の差、に ついて御説明申し上げます。  私は就任以来2回のセンター長会議に出席しておりますが、オブザーバー国とオブザ ーバー国でない国の差はございません。発言したいと思えば発言できます。  このオブザーバー国になるか、ならないかという問題につきましては、他のセンター 長は政策決定権のある国そのものが代表となっていないので状況が違います。形式的な ことではWHOの協力センターになるには、いろいろなWHOの基準がございます。こ れはFICに限らず、WHOの様々な活動に対応して設定される協力センター(コラボ レーティングセンター)として認められるためにはさまざまな条件があるということで す。それを国としてクリアすることはなかなか難しいということで、今はオブザーバー 国となっています。WHOコラボレーティングセンターという、いわゆるWHOのロゴ が入った看板を厚生労働省の玄関に掲げることはできません。  実務も、国際的な視野から見ましても、オブザーバー国とオブザーバー国でないとい うことはほとんど差がなく不都合もないということです。ドイツがケルンでの会議を機 会に正式なセンター長国として認められたのですが、主催した組織にとってWHOの正 式センターとして認められるということは非常に大きなことです。何故かと言えば、こ の組織は研究所ですから、そこがWHOのコラボレーティングセンターというロゴをも らうということはドイツ国内におけるその研究所の地位という意味で非常に意義がある ことです。しかしながら、我が国は国としてWHOにICDの代表を送っていますの で、発言権においても、あるいは国内の活動におきましても何ら差し障りがないという ことは御理解いただけると思います。 ○山本委員長  はい、ありがとうございました。松田委員はDPCに関して今、大変な役割を果たし ておられらますけれども、DPCのベースになるICDの疾病分類に関しまして、この 委員会で、こういう問題点がある、あるいはこういうことを言っておきたいということ はございませんでしょうか。 ○松田委員  私が申し上げたいことは、既に大江委員から御指摘がありましたように、臨床現場で 行われている活動とICD−10が合わないために、一部の現場で混乱が出ているという 事実です。  今、私たちの研究班ではこの問題を解消しようという目的で、すべての医療機関から 集めさせていただいた疾病、診断名について、日本語のICD−10と、大江先生のおつ くりになったメディス(MEDIS)のいわゆる標準病名との対応表を今つくっております。そ れを大江先生に御提示して、この後の改訂に活用していただくための資料づくりをして いるところでございます。ICD−10と臨床現場の分類があわない例として、例えば心 不全などですと、右心不全、左心不全の分類はありますけれども、急性心不全と慢性心 不全の分類がないことなどがあります。このように現行ICD−10にはいろいろと現場 に合わない点がありますので、実際の運用上問題があると思っております。 ○山本委員長  どうぞ。 ○企画課長  ICD−10をめぐる課題が3つあります。1つはこの委員会で今まさに検討していま すが、14項目を検討して意見をくれと言われていること。次に、この14項目が今年の秋 のセンター長会議で話しWHOが決定すればこれも入るでしょうけれども、今までセン ター長会議を経てWHOで決められてきたことについて我が国としてまだ消化していな い課題があるというのが2点目。それからICD−10そのものについての問題というの が3点目。この3つは後にあげたものほど非常に重い問題だと思います。  そこで、まずできることから進めた方がいい。それから急ぐことから進めた方がい い。そうすると、14項目について意見を求められているわけですから、その対応をまず やらなければいけない。  2点目のこれまでの改正分の我が国として受入れ問題について、ICDの日本語版の コードは、総務省の告示という形で行われるものなので、厚生労働省の意見だけででき るものではありません。日本語版を見直すということになれば、当然総務省とも調整を し、どういうやり方で進めればいいのか検討が必要です。この場合には14項目以外の項 目が入ってくるので、どういう方にお集まりいただけばいいのか、項目を見て検討する ことも必要でしょう。  3点目の、更にICD−10そのものの問題については、ここにお集まりのみなさんも いろんな意見をお持ちだと思います。ICDそのものは国際的にも死因、疾病統計の分 類のためのコードとしてつくられたもので、どちらかと言うとその専門家が集まってつ くったという色彩が強い。それが時を経て、特にアメリカなど医療保険の包括払いが導 入され、そのために使われるようになった。医学担当者の方からの関心も一気に高まっ た。また、病院のIT化の推進により傷病コードという今のICDコードより細かいコ ードの必要性が高まって、関心が高くなった。  ICD−10そのものは統計のための分類という性格がもともとありますが、それが包 括払いなどいろいろ使われるようになってきたことによって、医療の現場でだんだん細 かいものが必要になってきた。このためICDはどういう性格のものなのかというのが 非常に曖昧になってきていると思います。  後進国から見ると余り細かくされても使えないだろうし、統計を取るのであればそん なに要らないという議論もあります。一方、先進国ではもっと細かくしてくれないと医 療の現場では使えない。そういう性格付けの問題が今後議論されていかなければいけな いし、国際的にも必要だと思います。このため、ICD−10をどうするかということに しても方向性が見えないところがあります。医学的な常識が変わったのに、それが反映 されていないというご指摘ですが、その反映のためにも性格付けの問題が大きいと思い ます。  ICD−10そのものについて、我が国として意見を言うとなると相当大掛かりな組織 をつくらないと難しい。仮に国をあげて組織を作って意見を言ってもそれがきちっと国 際的に反映されていくという土俵がない中では、せっかく本当にお忙しい人に集まって もらったにもかかわらず、国際的に生かされないということになります。そのため、W HOの議論をよく見ていて、WHOがそういう大改正をやっていくということがはっき りすれば、当然我が国としても何らかの関与を求められるので、その時きちっと対応す れば、むだなこともありません。  WHOの動向、今はまだそういう議論が始まったばかりだと思うんですけれども、動 向を見極めて対応していく方がいいのではないかと、考えております。 ○藤原委員  現実は今、電子カルテの導入に向けて各施設は困っている。標準病名事務も不備であ る。電子カルテというのは非常に高い金を掛けてつくっても病名一つ直すにも結構金が 掛かると聞いております。例えば200 万円程度かかるとか。そういう話が今国として推 進されています。例えばアメリカはICD−9か何かをモディフィケーション(自国に 合わせる)して使っていると伺っていますので、日本でもICD−10を日本風にモディ フィケーションして、それを国内で使い、国際的に流通するデータはWHO用に編集し て提供するという考え方はございませんか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  先生がお話しになっていらっしゃっているのは、WHOでも話し合われているXMと いうモディフィケーションのことだと思います。先ほど、先生おっしゃいましたよう に、アメリカではICD−9CMというのを使っておりますし、オーストラリアではA M、その他の国でも、いろいろなものを使っております。ただ、モディフィケーション を、つくっているのはDRGなど包括払いが入った国だけです。包括払いが入った国が 何故そういうものをつくったかと申しますと、主にその国の医療費の支払い制度に適合 するようにしなければならなかったからです。  仮に我が国で日本版の議論をするにしても、ICDそのものはどんなに細分化されて も、統計を取るための分類である。それが基本ですから、各国と同じようなスタンスで つくることは問題があるのではないか。  それから、日本版の議論をする前に、ICD−10そのものの適正普及がまだまだ不十 分でございますので、我が国としてはまずそれを推進した上で議論を進ることになるだ ろうと考えております。 ○菅野委員  ここで討議すべきかどうかわからないのですが、標準病名では大江先生が御苦労され ておられますし、包括払いのDPCの分類では松田先生が御苦労されていますが、それ らとICD−10がリンクしてしまった。その理由は、電子カルテの問題と保険の支払い の問題。この2つの問題は厚労省の中で担当が分かれていて、ICD−10をこれらの日 本のシステムと調整しようとすると、話し合いの場が必要になると思います。  そういった場を設けないと、焦眉の懸案が放っておかれてしまう。しかし討議をする 場が実際にはないのではないかと私は感じております。私は大学で保険委員長をやって いて、そういう問題に直面し、このICD−10の問題に気付きました。国としてどう取 り上げていくのか。それは対外的な問題よりも前に、我が国では統合の問題が非常に急 がれるのではないかと思います。そこはどうお考えになっておられて、政策的にどうい うふうに進めていこうされているのか。その辺の見通しは、将来的な方向を考える上で 非常に重要なものになってくると思いますが、いかがでしょうか。 ○企画課長  標準病名や電子カルテは医政局の所管で、そこで取りまとめていますので、どういう 進め方をしようとしているのか現時点では聞いていませんので、きちっとしたお答えは できません。  医療の現場でいろいろ困っているという話がありましたが、それは電子カルテや標準 病名の話であって、医政局で進めている政策の話だと思います。当部は、統計という面 からのかかかわり合いになります。現場で使う細かい傷病名といった話は、医政局が中 心になって、考えていくことになるのではないでしょうか。 ○菅野委員  ICD−10は、医学的に見てその進歩を反映していかないといけないという問題が1 つあります。それは臨床の場にリンクしている問題であり、そうでないと例えば、IC D−11や3年後の大改正に対しても恐らく対応できないと思います。オーストラリアが 既にICD−11の案を出しておりますけれども、案を我が国として、我が国の現状ある いは医学の現状を見た上で出していくとすれば、それなりの準備が必要です。小項目で も2か月、3か月掛かるわけですから。  それから、もう一つは、保険の包括払い問題と、標準病名の問題がICD−10とにリ ンクした。それが第2のICD−10の問題点です。それについて調整を図るということ が必要なのではないか思っています。本委員会とは別個に扱うとしても、別個厚生労働 省としては検討していただかないと、現場の人間が非常に困ります。  この2つのうち、少なくとも前半については統計分科会の仕事とすれば準備は可能で はないかと思います。日本版というものをこの委員会とは別に、準備委員会というよう なものを大改正に備えてつくっていくことが必要なのではないかと思います。 ○山本委員長  先生、どうぞ。 ○藤原委員  先ほどの問題に関連すると思いますが、去年の3月に『死亡診断書記入マニュアル』 というのが出ています。その主体は統計情報部と医政局。ところが面白いことに死亡原 因の診断名の一般的な注意事項の中に「傷病名は医学界で通常用いられているものを記 入し」となっています。  つまり、診療現場では死亡診断書を書くときには今まで医学界で使っているからこれ だと書きますが、一方で、電子カルテという別の話が出てくる。このようなことも現実 になりますので、できるだけ急いで厚生労働省内で調整していただければと考えます。 ○企画課長  標準病名の話についてはいろいろ御意見が出ましたので、医政局にも伝えたいと思い ます。それから、ICDそのものについて国際的に意見をいろいろ言っていくというこ とについては、先ほど申し上げた3番目の課題です。1番、2番目をまず消化しておき たいというのと、WHOそのものが大きな改正に向かってどうするかという議論を始め たところですから、それを見て、我が国として対応していくことになると思います。 ○山本委員長  田中先生、何かございますか。 ○田中委員  だんだん提言の方向になっていって、事が大きくなってきていますが、医療の現場で は、大江先生のところはどうか知らないですけれども、京大病院では、このICD−10 を手元に置いている状況ではない。日本の医療経済あるいはEBMが最近言われていま すし、私も最近国際共同研究をしたのですが、そういう中でICD−10の普及は非常 に重要で切羽詰まった状況です。ICD−10の普及は重要な問題で、ICD−10を普 及する総合的な部門をもっと強化することが非常に重要であるというのが我が国の今の 医療現場の実態ではないかと思う。  そういう中で、恐らく大江先生たちの御努力も、非常に重要と考えているのですが、 京大ですと、関係病院が128 あるんだけれども、大学ですらそういう状況ですから、ま してそういう現場の関係病院では更に遅れている状況です。  提言は、提言としてまとめるにしても、統計分科会の先生方も2人お見えですので、 ICD−10の普及は急いで何らかの形で強化する必要がある。このままでは非常に遅 れるのではないかと思っています。医療の現場でICD−10を普及させていないのに、 日本に国際的な発言力があるかといったら、そんなものはあり得ないと思う。だから、 是非ともこの点についてはもっと皆さん頑張られたらどうですか。 ○山本委員長  わかりました。 ○人口動態・保健統計課長  皆さんにお配りしていなくて恐縮なんですが、「死亡診断書の記入マニュアル」と藤 原先生がおっしゃったのはこれです。それ以外に、もう一つ今の田中先生の御発言に関 連いたしまして、昨年から、『ICDのABC』というパンフレットをつくりまして、 現在は臨床研修の方々には私どもの方から配布して御理解をいただくという形で普及活 動をしているところでございます。更に普及せよということは勿論そのとおりでござい ます。 ○田中委員  それは非常に賛成です。ただ、普及というのは結構継続的にする、持続的にすること が非常に重要です。だから、うちの研修医も使っているんですけれども、最近の若い人 はすぐコンピュータでアクセスします。だから、是非もっと政策的に強くしていただき たいと思う。 ○山本委員長  松尾先生、何かございますか。 ○松尾委員  私は政府の機関にいますが、ほとんど皆様の問題認識と同じです。小児科というのは ICD−10と合わない病名が非常に膨大にある領域で、成育医療センターに入院してく るような複雑な患者さんというのは病名を付けるという作業自体が非常に大変なので、 病名が付いていない、あるいは適切な病名が付いていないというカルテは山積しており ます。14項目だけではなくて、是非全体にチャレンジするテーマを与えていただいた方 がいいのではないかと思います。 ○山本委員長  はい。藤原委員。 ○藤原委員  田中先生の追加になろうかと思いますが、実はほとんどの医者はICDの何が重要か わかっていない。過去はそうだし、今でもまだ田中先生のように管理職になってやっと 身にしみてくる状況です。それで、是非、必要性の普及活動を、もっと広く、いろいろ と広報活動をしてほしい。 ○人口動態・保健統計課長  広報活動を進めたいと思います。 ○山本委員長  大分時間も経ってきましたけれども、まだ御意見、どうしてもこれだけは言っておき たいということはございますでしょうか。よろしいですか。  私、今日の議論を聞いておりまして、今日お集まりの専門家の先生がICD−10に関 して深い理解と関心をお持ちであるとわかり、この専門委員会の設置は意味あることだ と考えております。ICD−10というのは病名なのか病名ではないのかという問題がご ざいます。医師の目で見ると、病名をコード化しているという気がしますが、ICDは 立ち上がりは死因分類ですから、病理がベースになった分類になっていて、臨床病名の 分類になっているわけではない。  ですから、脳外科の先生などがよく言うことは、脳動脈瘤はメインの疾患なんだが、 ICD−10のどこにあるかというと循環器・血管の一番末梢のところにちょこちょこと 出てくる。こんなことは認められるかというニュアンスでお話しをされる方もいます。 確かにそのとおりで、ICD−10は病名の分類ではなくて、病理をベースにした分類で すから、感染症はどうだ、腫瘍はどうだという形で分類されているので、どうしても臨 床とは合わない。  現在、診療記録からICD−10の病名コードを付けていく専門職がございます。診療 情報管理士と言っていますけれども、この診療情報管理士の教育に関して私は10年ほど かかわってきましたが、その人たちは現場で非常に大きな解決がつかない問題を数多く 抱えています。  そこで、先生方が関心をお持ちになって、専門家として疾病のカテゴリー、分類に対 する考え方というものを整理されますと、現場でも働きやすくなって、ICD−10をベ ースにした疾病統計が本当にできるようになる。現在は恐らく厚生労働省でもお持ちで はないと思います。  そういう意味では、今日の議論は大変重要だったと思います。このICDの関与する 部分は疾病統計だけでなくて、やはり疾病記録から治療を行う段階でのEBMにも関係 してまいりますし、いろんな分野で関係してきます。ですから、医師への普及のほか に、ICDの卒前教育が必要なのかどうかといったような問題も含め、いろんな問題が 提起されています。そういうものを含んだ意見などをこの委員会としてもっと事務局に 出して、きちんと整理されていくようなシステムを作る方向に、例えば委員会を立ち上 げるか、そうした方向に是非進んでいただきたいと考えております。  ほかにどなたか御意見ございませんでしょうか。  今日のタスクは大変限定されたところでございましたけれども、そろそろ時間も来ま したが、これでよろしいですか。先生、何か一言ございますか。 ○松田委員  DPC絡みでいろんな国の調査をさせていただいていますけれども、多分、いわゆる 臨床病名とICD−10が臨床現場でくっついてしまったのは日本だけだろうと思いま す。ほかの国は臨床病名は臨床病名で医師が記入して、そのサマリーを基にしてクリニ カルコーダーたちがコーディングするという形で整理をしているのですが、日本は両方 ともくっついてしまった。ある意味で世界の最先端に行ってしまっていますので、WH Oの動向もありますが、そのことが現場の混乱も生んでいる。現在の状況を前提にその 改革等を議論する場が必要になってくるだろうと思います。 ○山本委員長  確かにそのとおりだと思いますが、一方で、ドイツのように各学会の専門医の資格を 取得するのに、自分の専門分野のICDを付けることができることとが資格取得の条件 の中に入っていますので、そういう国も出てきている中で、日本がどう考えていくかと いう話になるのではないかと思います。  ほかにございませんですか。はい、どうぞ。 ○大江委員  今回、保留14項目の検討ということでしたが、そうすると、この直近に開かれたUR Cで保留でなかった解決した項目はどれぐらいの数があってどのような内容だったかと いう情報は要求すればいただけるのでしょうか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  これはインターネットにアクセスすれば手に入ります。申し訳ございますせんが、 今、具体的に何項目かというのをきちんと覚えていません。WHOのホームページでは アップデートされておりません。WHOの方も、2人半で対応している状況でございま すので、なかなかアップデートがままならない。それでWHOが許可した形で、URC の責任国でありますオーストラリア、委員長がオーストラリアの人でございますので、 オーストラリアセンターのホームページに、このような形でアクセスすることが可能で す。(ホームページアドレスは、 http://www2.fhs.usyd.edu.au/ncch/who%20urc/who_urc.html) ○山本委員長  大分時間が迫りましたけれども、もしこれで御意見がなければ、次の委員会はどうい うふうな設定になりますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  それでは、次回の委員会は4月末までに御回答いただいた対応案を事務局の方で整理 いたしまして、委員長とも御相談の上、開催について改めて御連絡させていただくとい うことにしたいと思っておりますので、皆様よろしくお願いいたします。 ○山本委員長  それでは、大変今日はお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございまし た。以上で本日の第1回「社会保障審議会統計分科会疾病、障害及び死因分類専門委員 会」を閉会させていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課     疾病傷害死因分類調査室 電話  (代表)03-5253-1111 (内線)7493