04/03/09 第10回社会保障審議会介護保険部会議事録           社会保障審議会 第10回介護保険部会議事録 1 日時及び場所 : 平成16年3月9日(火) 17時から19時            厚生労働省省議室 2 出席委員:貝塚、上田、青井、市川、漆原、大村、小川、喜多、木村、京極、        見坊、下村、田近、中田、永島、秦、花井、矢野、山崎、山本の各委員        潮谷委員は欠席 3 議題:負担の在り方 ○渡辺企画官より資料2に沿って説明。 (喜多委員) [以下提出資料に沿って説明]  1号保険料の算定については個人保険料と言いながら世帯概念が導入されており、不 公平の要因となっている。保険料算定から世帯概念を外すべき。  低所得者問題に関しては、本来は社会保障における低所得者の定義が必要だと思うが、 少なくとも介護保険制度上だけでも明確に低所得者の定義をしていただきたい。  生活保護受給者を被保険者から外すべきだ。くすのき広域連合の場合、これで保険料 が月額平均367円減額となる。もしくは、生活保護受給者は少なくとも第3段階の保険 料とすべきだ。この場合、保険料は月額平均70円下がる。医療保険制度との整合性を考 えれば外すのは当然だと思っている。  保険料の徴収問題については遺族年金、障害年金等、現行は普通徴収になっている分 についても特別徴収にしてほしい。  調整交付金が5%を下回る保険者にあっては18%を超えた1号保険者の負担になって いるわけだ。くすのき広域連合の1号保険者はそれによって約350円の保険料を超過負 担していることになる。各市町村ごとに保険料を計算するということになればバラツキ がでるのは当然であり、高齢化率が高く若者が少ないところでは保険料が高くなるのは 初めからわかっていたことだ。5%を上回る調整費交付金を受けながら、独自減免をし ている保険者があること自体おかしい。超過負担をしている1号被保険者は納得できな い。国庫負担25%を担保し、調整交付金が必要ならば別途予算を設けるべきだ。  将来の財源負担についてだが、平成22年の介護総費用は平成12年の2.5倍になる、と 制度立上げの時から国は言っていた。給付費が増大してきているが、まだ国が最初に示 した枠の中で推移しているということだ。保険給付費が年々増加して制度導入時に設計 した数値に近付きつつある中、1号保険料の確保等を含めて財源の在り方について、正 確にその確保の案について御説明いただいたことは今までない。継続的な制度づくりを 考えた財源の在り方を検討すべきだ。財源不足の責任を被保険者へ転嫁し、財源対策と して2号保険者を20歳まで下げるということであれば決してこの保険は長続きしない。  国費の担保をはっきりすると同時に、地方財源についても一般財源化というような美 名ではなく、きっちりとした負担ができるような制度を皆が議論して決めることが必要 ではないか。 (秦委員) [以下提出資料に沿って説明]  主治医意見書の8割は勤務医が書いている。実際に生活の現場を見ていない人が主治 医意見書を書くのでは困る。地域かかりつけ医を明確に位置付けてほしい。  実際にグループホームを見て回ったが、中身はグループホームとは言えない。鍵をか けていたり、食事を職員が一生懸命作っていたりと、まだ人材がきちんと育っていない。 第三者評価は非常に大事だと思う。また、評価の項目は市民が参加して決めてほしい。 (田近委員)  ベッドは計画で供給が限られているから施設サービスは伸びようがないが、思った以 上に居宅サービスが増えている。その結果、保険料が2期目で平均3,290円になった。 財政安定化基金から、財政の厳しくなった市町村に貸し付けしているが、12年度末は貸 付残高が6億円程度だったのが、13年には110億円、14年には400億円に増えてきている。 もう既に保険者は十分な負担ができなくなっている。  介護保険は、市町村は給付費の18%を集めてくださいという約束だが、現実は払えな くなってきている。また、決して悪いことではないが、居宅サービスが増えて負担が増 えている。給付の見直しとあわせて、制度全体でどうやって負担しあうかについて、利 用者が負担する分を増やすという議論を始めなければ、我々は利用している人に対して も不誠実だし、将来世代に対してはもっと不誠実である。負担を公費に求めることで済 む問題ではないわけで、1割の自己負担、また9割の給付に占める1号保険料の割合と いったものについて正面から議論せざるを得ない。 (矢野委員)  介護保険制度の改革は、社会保障制度、税制、財政との一体的な改革が必要だと思っ ている。将来的に消費税を含めた税財源の在り方についても検討することが大事である。 そこで、介護保険の財源を検討するに当たって、給付の将来見通しが不可欠なので、で きるだけ早い時期に示していただきたい。  在宅サービスと施設サービスはバランスを欠いており、施設入所時の食費、居住費相 当分は自己負担とすべき。介護保険制度全体で介護給付費に占める居住費、食費の金額 や割合がどのぐらいかをお示しいただきたい。私どもの試算では、食費は給付費で4,000 億円、居住費は5,000億円を超えている。  第2号被保険者は、介護給付費の見込み額が増えれば自動的に1人当たりの保険料が 上がる仕組みになっている。医療保険の一般保険料率が法定化され上限が決められてい るのと比べると、介護保険では保険料率の決定について当事者が十分に関与する場がな い。来年度の政管健保の介護保険料率を見ると、およそ16%上がる。この仕組みについ て再検討する必要があるのではないか。給付を本当に必要な人に重点化することで適正 化するのは当然だが、さらに2号保険料率についても一般保険料率並みに法定化すべき ではないか。また、医療保険制度によって国庫負担割合が異なっていることから、第2 号被保険者の間でも介護保険料の負担に実質的な不公平が生じているのではないか。  第1号保険料については、老齢年金以外に遺族年金から特別徴収することも検討して いいと思う。  調整交付金は保険者間の年齢、所得の格差について一定の調整機能を果たしていると 理解している。今後、保険者機能の強化を図ったり、保険者の広域化という選択肢を設 けた上で、保険者の効率化努力を促すような公費及び介護給付費交付金の配分を検討し てはどうか。例えば、一定金額以上は配分率を落とすというような工夫もあり得るので はないか。 (下村委員)  保険料問題や財政問題は介護保険創設時からの根本的な問題だ。  政府管掌健康保険の介護保険料率は平成12年4月に6‰だったのが、13年度には10.8 ‰になった。しかし、政府管掌健康保険がこの保険料決定について何か言っているわけ でもない。健保組合も全く同じであり、政管健保より料率は少し低いが同じような状況 となっている。  政管健保も健保組合も保険料が自動的に上がった。我々健保連は、保険料の増加につ いて発言権や決定権はない。介護保険料は介護納付金という形で健保組合や政管健保の 保険者が納付義務を負っており、払わないと税金並みの14.5%の延滞利息が課せられる。 だから、健保組合としては絶対延滞を起こすわけにはいかない。金利を考えると、健保 組合は老人医療費の拠出金や介護の保険料を先に払った方が間違いなく得だが、健保組 合が介護の保険料を優先して負担しなければいけないのは本来おかしいわけで、健康保 険の本来の会計と介護や老人医療は分離して考えるべきだ。  また、トータルの負担がどうなるかは、将来展望とあわせて検討しなければならない 問題である。低所得の問題はもっともだと思うが、現状で低所得対策だけやるとその低 所得の方を安くした分は全体が負担することになる。調整交付金も似たところがあり、 一律25%を配分すれば当然保険料を上げる保険者が出てくる。したがって、財源問題や 将来展望を考えるべきということになる。そこまでの見直しを本当にやるのか。政府は 5年後あたりに税制改正と合わせて年金問題、介護の問題、老人医療の問題をやるとい うことだろう。  年金の保険料がこれから毎年上がるかもしれない中で、18年になると介護保険料も上 げる。医療保険料もどこかで上げなければいけないかもしれない。なかなか難しい状態 を打破するのにはどうすればいいか。今年は年金改革の議論をして、来年は介護、再来 年は医療と、毎年毎年制度改革の話が断続的に出てきても困るのではないか。総合的な 展望や検討がどこかで必要になると思っている。しかし、今それができる時期ではない。 それではその間どうするかが問題になるのではないか。今の見直しの議論は、その間ど うするのかという議論なのか、それとも根本的にやるという議論なのかが疑問である。 (貝塚部会長)  保険料は非常に複雑だ。介護保険は医療保険あるいは年金も関係して全体は錯綜した 状況にある。一方を動かしたら別の方が影響を受ける。介護保険の趣旨の一つは医療保 険の給付費がある程度抑えられるのではないかという予測があった。要するに保険料だ けではなくて医療保険の給付の話も関係している。相当複雑な関係だ。 (下村委員)  どの程度の状況が将来予測されるのかはやってみる必要があると思う。老人医療費を 払っているのもどちらかと言えば現役で、介護の費用を払っているのも現役で、自分た ちの医療費も払っているが、払う財布は同じだ。やはり総合的な検討や展望がどこかで 必要になる。ただ、あてもなくやってはだめなので検討すれば答えが出るのかどうかと いうことをお伺いしたい。  平成12年に介護保険が始まった時は、医療費は落ちたように見えたが、結局、最終的 には減ることはなかった。介護給付費を合わせてみると、むしろ膨らんだ。本部会で問 題になっている要支援や要介護度1、2が恐らく一番膨らんでいる。介護保険創設時、 厚生労働省側は医療費は減りますと説明したが決してそんなことはなかった。当時は、 要支援等への給付は予防的な効果があると盛んに言われたわけで、今回も予防やリハビ リの話が出るとまたかと思う。効果とか評価もはっきりしないでまた同じことを言って いるのではないかというような印象を受ける。予防に反対ということではないが、やる のであれば評価をしっかりやってほしい。 (京極委員)  介護保険は制度設立当初から問題だった点と、運営してみて発見された問題と2つあ る。  遺族、障害年金への特別徴収の拡大は、制度発足当時から我々審議会メンバーはやる べきだという意見だったが、政治状況があって難しいということだった。これはいずれ 課題になってくるということは分かっていた。  低所得者の配慮については、余り十分に議論しないでスタートした。非課税世帯につ いては、階層的には非課税ということでまとまっているが中身が違うわけで、具体的な メルクマークを作成し、もっときめ細かく徴収することが必要不可欠だ。ただ、生活保 護者を排除するというのはいかがなものかと思う。ここで議論をしても仕方がないが、 市町村の負担が若干大きくなるが、結局負担は巡って国の税金が増えることになる。  調整交付金は財政的に豊かな市町村にとっては若干苦しいと思うが、そうではない市 町村には大きな役割を果たしている。全額払ってしまうと調整機能がなくなってしまう。 自分としては、当初考えているよりも役に立っているという印象だ。  第2号被保険者については、現行の保険料徴収機構を使わない手はないので、市町村 の国保、健保その他で徴収しようということになった。これがなれば介護保険の徴収コ ストはものすごく高くなってしまっていた。既存の医療保険の仕組みを使って徴収する というやり方しかない。 (喜多委員)  大阪府で調整交付金を5%以上もらっている5団体のうち、4団体は保険料の減免を 行っている。お金を出している方の立場から言えば、我々の金で減免しているのはおか しいということになる。調整交付金は高齢化率と所得階層だけで算定しているからおか しくなる。減免をすれば、減免対象者の減免分を残りの者で負担することになる。制度 立上げのときに、そんなことをやるのはおかしいという議論は相当あった。  市町村も国民健康保険を抱えており、2号保険料を徴収しているが、滞納がだんだん 出てきている。特に都市部で滞納が多い。市町村はその滞納分を全部抱えている。  何を言いたいかと言えば、どれだけ負担するのかということを初めから議論しておく べきだった。国民が将来も運営していける、支えていける、そういう制度にするための 議論が絶対必要である。給付費分科会で、出ていく金よりも入ってくる金のことをきっ ちりしないといけない、と申し上げたがどうもそういう認識を国はお持ちでないのでは ないか。 (山本委員)  調整交付金については、国の負担分は25%完全に負担して、5%は枠外にして調整し てください、ということをお願いしていたが聞いていただけなかった。  要支援、要介護度1、2の人にあれだけの福祉用具を貸すのはよくない。我々の年代 になれば歩けばいい。歩くとそれだけ健康になり体力を維持できる。ところが、車いす をどんどん貸すので歩かなくなり要介護度が上がっていく。何年経ったら要介護度が上 がるかという調査を3年間行ったところ、軽度の方は変化がほとんどなかった。人間の 体は1年や2年で急激に悪くなって弱っていくものではないことが分かった。  高齢者を集めて、住宅改修や福祉用具貸与をどんどんやります、と宣伝に来る専門の 業者が増えてきている。そういうことをするから介護の給付費はどんどん上がっていく 。軽度の人に何でも与えます、差し上げますというやり方はやめるべき。給付費をもっ と下げるべきだ。だから、給付を見直して規制をかけることだ。  制度創設当初の時にそういう議論はかなりしたと思う。今日の事務局からの説明内容 は、保険者は皆既に分かっていることであり、解決策の説明がないのは事務局によほど 材料がないということではないか。 (田近委員)  調整交付金の問題は分かるが、ここで談判状を書いて国に5%を外枠で付けろと要求 しても、それは結局我々がどこかで負担するわけであり同じ話である。各市町村の高齢 者は18%の保険料負担義務があるわけだがこれが効いた。給付費を18%だけ負担してく れればうまくいくと。その意味では、老人保健制度に比べ効果的だ。そして、老健拠出 金の代わりに2号保険料になり、自動的に入ってくるようになった。サラリーマンはぶ つぶつ文句を言いながら自然に払わされている。  何が問題かと言えば、何を買っても負担は1割でいいわけで、どうせ1割負担で済む のだったらいいベッドにしようとなる。1割負担でいいベッドを使った人が悪いわけで はない、悪いのは1割で何でも買える仕組みだ。財政が膨らむことは分かっている。や はり自己負担を求めるべきだと思う。今日の議論で足りないのは自己負担の在り方、保 険料をどうきちんと払わせるかということ。1割で買える保険を作っていながら、それ でいっぱい買ったらそれはお前が悪い乱用するな、というようなモグラたたきみたいな ことをやるのか。  所得というのは非常に捕捉がしにくい。それは明らかだ。特にお年寄りはそうだ。な ぜ資産に着目しないのだろうか。亡くなったときに資産からきっちり取る、我々は日本 で生まれて、サービスを受ける以上、生きている間は所得がなくて保険料を払えなくて も、死んだ時に残った財産からはきっちり払う。それは日本に生まれて日本で生活する 以上、国民としての義務なんだ、と国民に訴えないといけない。足下を見直さなければ いけない。 (小川委員)  施設の経費の軽さ、負担の軽さが非常に使う側に混乱を起こしている。もう一度、在 宅とのバランスを考えなければいけない。それから、負担をどこで支えるかについても、 要支援から要介護度5まで一律1割負担でいいのかどうか、ということも考えなければ いけない。  介護保険は地方分権の象徴的な制度だと期待している。利用者のより近いところでい ろいろな仕組みが決定していくことが望ましい。介護予防は自治体の福祉施策として考 えられるものだと思う。そうすると、介護保険の中だけの財源では考えられないので、 福祉予算全体をもう一度縦割りではなく、横割で考えていかなければいけないのではな いか。今後、支援費の問題が出てくると思うので、横割で考えていかなければいけない。 その上で、給付が適正なのかどうかを考えていきたい。 (秦委員)  どうも医療と介護の問題があいまいにされている。その象徴が社会的入院だ。最近の 資料ではあまり出てこないが、もう少しはっきりさせてほしい。  高齢者は年間所得や現金収入は非常に少ないが、家や土地といった資産を持っている 人はかなり多い。前にリバースモーゲージについて発言したが、やはりその人の資産か ら支払ってもらわなければいけない。実際に15万円払える人は少ないから、かなりのグ ループホームが、がらがらになっている。所得の高い人たちは入れるけれども、普通の 人あるいはそれ以下の人は入れない。費用面をきちんと検討しないといけない。 (京極委員)  資産の問題は、社会保障全般に関わる。特に、公的扶助は大きな問題になっており今 議論をしているところだ。社会保険の基準に資産を加味すると、徴収が非常に困難にな ってしまうので、通常は所得でやっている。生活保護では資産をきちんと整理しなくて はいけないということで議論している。  社会的入院については、もし介護保険が無くて高齢化が進展していったらどれだけの 費用がかかるかという計算はできる。確かに全体として余り減っていないじゃないかと いうことは言えるかもしれないが、あくまで仮定の議論だ。  利用者負担の1割に関しては、制度発足時にも議論があった。2割負担という議論も 当然あったが、基礎年金で払えるようにして、例えば月35万円の特養に入った場合、基 礎年金6万円の中から3万5,000円を1割負担として支出し、ある程度生活できるよう にした。実際の老人の生活に即さないといけない。確かに自己負担割合を上げれば財政 は豊かになるけれども、今のお年寄りは貧しい方が多いので、現実を考えて制度設計を せざるを得なかった。介護保険の財政がパンクして大変な状態になっているというのな らばともかく、不満があっても比較的健全に運営されているというのが常識的な評価じ ゃないかと思う。今後財政的に非常に厳しくなってきたら考えざるを得ないが、今のと ころはホテルコストの負担等である程度公平化を図るというのが常識的な対応ではない かと思っている。 (山本委員)  介護保険がなかったとして考えてみると、都市と地方では医療費も違うが、我々のと ころでは老人が入院しても1か月平均で27万円ぐらいだ。介護にかかる費用の方が高い、 要介護度5の方が一月46万くらいかかる。推測だから何とも言えないが、もし介護保険 制度がなかったら医療費が増大するかというと必ずしもそうではないと思う。  要介護度2くらいまでの方は健康を維持するための努力をすれば介護を受けなくてい いと思う。健康になるように、介護が必要にならないようにすることも考えなければい けない。今の介護保険制度が悪いとは言わないが、規制をしっかりしなければいけない。  我々は、市民、町民を説得して回って、保険料の決定を行っているが、保険料が増額 していくと、保険料の決定は大変な苦痛を味わうことになる。保険料を決めるときの苦 痛は保険者でないと分からない。給付と負担がうまく均衡して初めて良い制度になる。 (上田部会長代理)  私が座長になって1月にまとめた、高齢者リハビリテーション研究会の報告書にも、 要支援及び要介護度1、2の方に対して車いすや電動ベッドが給付されていることは非 常に大きな問題であり、介護保険の目的である自立支援に反するものだということがは っきりと書いてある。専門家及び一般市民を含めて議論した結論としては、介護給付を 行う前にリハビリテーションを行い、介護が不要になるようにすべきであり、それがリ ハビリテーションの本来の趣旨であるということである。 (中田委員)  財政論の議論では、利用者が悪者になったような雰囲気がある。次回の部会に資料を 出したいと思うが、例えばデイサービスセンターは、ある意味では要介護度の改善、維 持に貢献しているというデータも出ている。だから、軽度の方の利用状況によって制度 の在り方を論ずるのではなく、もう少しサービス提供システムの在り方等についてきち ん見直した方がいいのではないか。  前回は出席できなかったので、ケアマネジャーの在り方について提案させていただき たい。ケアマネジャーの在り方について公正・中立の問題が問われているが、ケアマネ ジャーを完全にみなし公務員として明確に位置付けることによって、これらの問題が解 決されるのではないかと思っている。  支援費制度についてこれから議論されると思うが、支援費制度で一番大きな問題にな っているのは、いわゆるケアマネジメントが市町村行政の素人職員にゆだねられたとい うことだ。すべてのケースについて専門のケアマネージャーによるケアマネジメントを 位置付けた方がいいのではないかと思う。在宅介護支援センターは本来、行政の業務で ある。実際には、市町村の業務でありながら社会福祉法人等に委託運営されているとこ ろが圧倒的に多いことから、ケアマネのみなし公務員化は不可能でないと思う。場合に よっては、現在の在宅介護支援センターと居宅介護支援事業所を一体化して運営する方 法もあるのではないか。そうすれば、在宅介護支援センターが利用できる住民情報を居 宅介護支援事業所も利用できるようになる。実態は兼務しているところが圧倒的に多い 。ただ、今のような居宅介護支援専門実務研修のような低質なものではなく、より高度 な役割を果たすことができるようなケアマネを養成する研修体制を整備することが前提 だ。  対前年比で在宅サービスが20%を超えた伸びになっているが、この原因は一体何なの か。伸び率の大きな事業は何なのかを御説明いただきたい。  第2号被保険者の年齢引下げや支援費との関係の議論に際しては、障害者部会での議 論の状況や対象年齢引下げによるシミュレーション等についても御報告いただければあ りがたい。 (見坊委員)  高齢者の間でも、これからの社会保障制度について、負担増に耐えるべきかあるいは これ以上の負担増は止めろと声を上げるべきかで意見が分かれている。高齢者の所得格 差は非常に大きい。特に現在の高齢者は所得の低い人が多い。資産から費用を徴収され たり、ホテルコストを負担したりということに耐えられる人と耐えられない人がいる。 資産を担保にして介護保険サービスを受けるにしても、資産に手を付けようとすると子 供や孫が反対する。資産は御先祖様から譲り受けたもので孫、子に伝えるべきものだ、 と言われたら二の句も継げない。一律にホテルコストを負担してくれとを言われて、何 万円も払っていける高齢者がどれほどいるだろうか。  保険料は、収入が月1万5,000円の年金のみという人からも天引きをしており、それ でも我々は払っている。介護保険が始まる時、我々は保険料の負担についてアンケート 調査を行ったが、これなら何とか払うことができるという保険料は1,000円が最大とい う意見が8割だった。しかし、ふたを開けてみたら2,000円、3,000円が当たり前だが、 それでも我々からこの制度をやめろという声は出ていないし、保険料を払っている。  市町村によってはやっているかもしれないが、介護保険の財源がどう使われたか、毎 月きちんと分かるような領収書を、介護サービスを受けた際に利用者に発行してもらい たい。いつどのようなサービスを受けたかということを、はっきり知らせてほしい。同 時に、残りの9割が正確に支払われたのかどうかを通知していただきたい。また、年に 一度くらいは被保険者に対して、運営状況の実態、サービスの内容を報告してもらいた い。それによって被保険者も介護保険制度の現状をはっきり認識することができる。 (山崎委員)  制度創設から関わった者の一人として、今日の経済状況をみると4年前に介護保険を 作っておいて本当によかったと感じている。今回の見直しは、いかに持続可能な制度に していくかということが論点になるが、介護保険についても、社会保障全体の枠組みの 中で考えなければいけない。国、都道府県、市町村の負担の割合が現行でいいのかどう かも含め、社会保障財政全体に関する国の責任についても議論する必要があるのではな いか。  第2号被保険者の範囲については、国保や年金の未加入の問題等を考えると、被保険 者の年齢を下げると、逆に徴収できずに給付だけが伸びていくということにならないの か。そういった財政の在り方の見通しもきっちり議論しておかなければならないのでは ないか。  予防給付は、給付の抑制という意味からも非常に重要だと考えている。予防給付をし っかりやっていくということは医療保険にはない優れた部分なので、しっかり議論をし ていく必要がある。  低所得者については、平成14年度に厚生労働省内で低所得者の新たな生活支援システ ムの在り方を御検討されているようなので、低所得者の定義、生活支援システム、負担 と給付議論について教えていただきたい。  本部会と並行して障害部会も議論しているようだ。資料を見ると、現在人口の5%と いわれている障害者655万人のうち、9割が在宅で生活しているという。障害年金等と合 わせて、データをお示しいただきながら議論させていただきたい。 (花井委員)  負担と給付の関係が明確であるということが社会保険方式の特徴であるとすれば、現 在の介護保険は、2号被保険者にとって社会保険からほど遠いのではないか。被保険者 証も交付されていない。本人が申請すれば交付されることになっているが、被保険者と しての意識という観点からしていかがなものか。今後40歳を20歳にするのかどうかとい う議論については、2号被保険者の在り方も検討する余地があるのではないか。  医療保険と介護保険を一緒にしても保険料が上限を超えないからという理由で上限率 を医療保険の上限にしたわけだが、それを途中で別立てにしたという経過からすると、 被用者保険の2号被保険者について上限率を設定すべきではないかと思う。  サービス提供に関して、サービス量に制限をかけるような仕組みを検討できないか。 保険料の設定について、2号被保険者あるいは医療保険者がほとんど関与できない仕組 みになっている。サービスの量、要介護認定率の多さによって保険料が変化するのであ れば、サービス量に制限をかけるような仕組みが考えられないかと思う。  要介護認定率や利用者の1人当たりの利用額に、これほど地域格差がある中で負担を 上げていくのは疑問がある。医療保険で自己負担を上げて給付が抑制されたかというと、 一時的な抑制でしかなかった。様々な課題や地域格差をそのままにして、自己負担率を 上げていくという議論には反対だ。  保険料の徴収について、普通徴収の8%が未納ということだが、その未納の中に遺族 年金と障害年金のほかに1万5,000円未満の年金受給者はどれくらいいるのか。年金が 1万5,000円未満の方たちの介護保険料の払い方、あるいは自己負担の在り方について、 分かれば教えていただきたい。 (中村老健局長)  給付と負担の展望については、今議論いただいているのは介護保険をつくった時の推 計がベースになっている。介護保険が動き出してもう4年近く経っているので、実績も 踏まえ将来推計をし直す必要があるのではないかと思っている。介護保険だけではなく て社会保障全体で考えて欲しいとのことだが、厚生労働省としても年金、医療の推計と ともに作業していきたい。近くご報告できると思う。社会保障の持続可能性、給付と負 担の在り方については国民的議論をいただかないと決まらないことであり、本部会で御 意見を聞かせていただきたく議論をお願いしている。  国の財政責任の話については、社会保障の前に国の財政がむしろ財政破綻に瀕してい る。国は82兆円の支出のうち41兆円しか税収がなく、社会保障は年間82兆円の給付費を 使っているが、55兆円大変な思いをして保険料を集めていただいている。国の破綻しか けている財政状況を前提にして議論いただかなければならないのは心苦しいが、介護保 険がどのような姿で今後進んでいくのかについて、是非御審議いただきたい。  負担の在り方まで一とおりご議論いただいたので、次回はエッセンス的な資料を提出 したい。  障害者福祉との関係については4月に審議を予定しているので、その時までに障害部 会の審議の状況、関係資料を取りそろえて提供したい。 ※ 貝塚部会長より閉会の宣言 照会先  老健局総務課企画法令係  TEL03-5253-1111(3909)