04/03/05 第17回医療安全対策検討部会」議事録 第17回医療安全対策検討会議                         日時 平成16年3月5日(金)                            16:00〜                         場所 厚生労働省9階省議室 ○事務局  傍聴の皆さまに申し上げます。傍聴に当たりましては、すでにお配りしています注意 事項をお守りくださるようお願いします。 ○森座長  定刻にもなり、大体お揃いのようですので、第17回医療安全対策検討会議を始めま す。皆さま方お忙しい中、遠方からお出掛けくださった方もあり、まことにありがとう ございます。司会を務めさせていただきます。頂戴している連絡では、本日は飯塚委 員、岩村委員、黒田委員の3名がご欠席です。そのほか若干、早退される方、あるいは 遅れて見える方がいらっしゃいますが、とにかく17名の方がご出席です。  本日の議題はお手元の議事次第のように、1.医療安全対策検討会議関連部会の活動 状況について、2.医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業 )の拡大について、3.平成16年度予算案について、4.医療安全対策の今後のあり方 について、5.その他となっています。それぞれの議題についてご報告を願い、委員の 方々からご質問、ご意見を頂戴したいと考えております。もし事前にご注意があれば伺 いますが、この辺りで議事に入ってよろしいでしょうか。では事務局から資料の確認を お願いします。 ○事務局  資料の確認をいたします。いちばん上が議事次第、2枚目が本日の出席者名簿、3枚 目が座席表です。資料1が「医療安全対策検討会議関連部会の活動状況」、資料2が 「医療安全対策ネットワーク整備事業への協力について」、資料3が「平成16年度予算 案の概要」、資料4が「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピールについて」、資料5が 「医療安全にかかる部会等の見直しについて」です。  参考資料1が「医療機関における医療事故防止対策の強化について」、参考資料2が 「『医療安全推進週間』等における取組状況について」、参考資料3が「『医療安全支 援センター』について」です。その後に医療事故防止緊急対策合同委員会の答申の「医 療安全確保に資する医療事故の防止策について」、医療安全対策委員会の答申の「医療 安全推進のために医師会が果たすべき役割について」という以上の資料があります。欠 落等がありましたらお申し出ください。 ○森座長  もし欠落があればお申し出ください。それでは議事に入ります。先ほど申したよう に、第1の議題が「医療安全対策検討会議関連部会の活動状況について」です。前回の 検討会議が昨年の10月6日で、いまから5カ月前ということになります。この5カ月間 にいくつかの部会、委員会で活動が行われたと承っておりますので、事務局から順次、 報告していただきたいと思います。 ○医療安全推進室長  それでは資料1でご報告します。「医療安全対策検討会議関連部会の活動状況につい て」という資料です。3頁に医療安全対策検討会議関連部会の活動状況というのがあ り、前回の当検討会議を10月6日に開催した後に、部会がそれぞれ開催され、以下のよ うになっています。  4頁には第7回ヒューマンエラー部会議事次第があり、ここでは医療安全対策ネット ワーク整備事業の6、7回の結果のご報告をいただき、加えてシングルユース器材の再 滅菌使用についての調査のご報告がありました。これを受け5頁に、「単回使用の医療 器具の取り扱いについて」という通知を私どもから出させていただいています。  6頁、第7回医薬品・医療用具等対策部会では、ワーキンググループを設置し、例え ば名称が類似している薬剤についてのあり方、あるいは点滴与薬のあり方、眼科与薬の あり方というものについてのご報告をいただいています。  7頁、第6回のヒヤリ・ハット事例検討作業部会で、集計結果の報告に加え、点滴に 関するヒヤリ・ハット事例を京都大学のリスクマネジャーの方から、転倒・転落につい ての取組みを慶應大学の医療安全対策の担当の方からご報告をいただきました。8頁、 ここの会では今後の医療安全対策ネットワーク整備事業の展開等についてということ で、これが始まってからしばらく時間が経っていますので、記述情報とコード化情報の 今後のあり方についてご報告をいたしました。  9頁、事故報告範囲検討委員会については、事故報告を具体的にどのような範囲で第 三者機関にいただくのかを議論し、11頁のように報告を求める事例の範囲について3点 のような事例のご報告にしてはいかがか、という報告書をいただきました。  それぞれの詳細については12、13頁です。内容は明らかに誤った医療行為により、あ るいは管理上の問題により患者さんが死亡、もしくは患者さんに障害が残った事例、あ るいは濃厚な処置で治療を要した事例です。2番目は、同様の死亡、障害、濃厚な治療 を要したけれども、誤った行為は認められないという問題、3番目はそのほかの警鐘的 意義が大きいようなものについて集めて、それを他山の石として医療安全に努められた いというご報告をいただいています。以上です。 ○森座長  以上4つの部会、委員会について開催日、議題、ならびに内容を要約してご説明いた だきました。これらにはヒューマンエラーにしても、医薬品・医療用具等の対策にして も、ヒヤリ・ハット事例検討作業にしても、あるいは事故報告範囲検討にしても、それ ぞれこここにおられる委員の方々の若干が関わってくださっていると思います。何か追 加的に報告、説明はございませんでしょうか。 ○全田委員  内容的には全く問題ないのですが、これだけ細かいデータをお出しになり、どのよう に一般的に普及をするのですか。例えば医療機関、あるいは一般の人たちにどのような 普及の仕方をしようとなさっているのですか。 ○森座長  それはどの部会、あるいはどの委員会についてですか、それとも一般的に、でしょう か。 ○全田委員  そうではなく、これだけご検討をいただいたのが、結局一般国民に知らされなければ 何の意味もないわけです。ですから、そういう普及の方法をどのようにお考えでしょう か。例えば県なら県の衛生部を通して、各県から病院に通ずるのかです。確かに我々も そうなのです。私は日本病院薬剤師会ですから、いろいろな検討をするのだけれども、 結局それがなかなか一般に伝わらないのです。メールリストを見てくれと言っても、見 ない所があるわけです。  ですからこれだけのデータをお作りになったのなら、どのようにして一般国民にこう いう問題があるということを伝えるか、あるいは最低でも医療機関に対して、こういう 問題があるということをどのようにしてお伝えになるか、そのハウツーををお聞きした いのです。 ○医療安全推進室長  このような会議の検討結果について、あるいは検討結果を受けたものについてさまざ まな形で現場なり、あるいは国民なりに周知する努力は、全田先生がご指摘のように大 変重要だと考えております。まずこの会議自体が開催されているということを公表して おり、このように傍聴の方もいらして、場合によっては新聞やテレビ等でこの会議自体 が報道されることがまず一義的なこととして、皆さまにお知らせするという方法になり ます。  もう1つは、先ほど報告したように、この検討会で議論になったことのすべてではな いですが、できるだけかっちりとした形にするという観点では、私どもの数値なりとい ったものの形にして、自治体あるいはその関係団体にお配りしています。その先は自治 体、関係団体がその関連の所にお送りいただいているのだろうと思っております。もち ろんそういうものについては厚生労働省にホームページがありますので、それをもって 公表しております。特に使っていただいていると聞いているのがヒヤリ・ハット事例 で、非常に膨大な資料になりますが、ホームページで公表していますので、多くの方が 検討の材料とされていると聞いております。まだまださまざまな情報伝達の方法を考え なければいけないので、その点についてはいろいろなご指示、ご意見をいただきたいと 考えております。 ○森座長  よろしいでしょうか。 ○全田委員  もう少しよろしいですか。ホームページが開けない施設があるのです。それから確か に私は早起きですから、このごろ朝5時のトップニュースで大体、厚生労働省のいろい ろな医薬品に関係する報道が入ってきているというのは素晴らしいことだと思っていま す。ところが私どもの日病薬もそうですが、日病薬から送るのにホームページをどうし ても持たないグループがあるのです。施設として仕方ないので、その辺にどのようにし て伝えるかが問題だと思うのです。  この間からいろいろな問題が起きていますが、とにかく必死になってこちらが伝えて いるのだけれども、なかなか伝わらない。そこが問題なのです。少なくとも9,000の病 院に送るわけにはいきませんから、それはわかるのです。ルートとしては、県の衛生部 を使うのがひとつだと思っています。県の衛生部からの通達は、各病院は非常に重く感 じます。もちろんホームページも必要だと思いますが、そういうことも必要だと思いま す。折角こういうデータをお作りいただいても、伝わらなければ意味がないわけです。 だからそういうことを申し上げたいのです。よろしくお願いします。 ○森座長  さて私の理解では、活動状況の報告を承るのが本日の主たる目的ですから、ここで先 ず各部会、各委員会からのご報告を順次承りましょう。それぞれに何等かの結論が出た とき、さらには全体で何かが決まったときには、いまおっしゃったようなことも十分踏 まえ、事務局に出来るだけ広い範囲に行き渡るような方法、私のようにあまり高級な機 械を操作できない人間でもわかるような方法を、いろいろお考えいただきたいと思いま す。それでよろしいですね。  先ほどはこの委員会、部会に携わった当事者の方々から追加的なご説明をと申しまし たが、関与の有無にかかわらず皆さま方、どんなご意見、ご質問でも結構ですからお願 いします。ヒューマンエラーなどもいろいろと問題になったことがありますが、よろし いでしょうか。追加的なことはそのほかにございませんでしょうか。  それでは次は議題2、「医療安全対策ネットワーク整備事業の拡大について」です。 これは現在すでに実施している事業について、事例を収集する対象機関を全国の医療機 関に拡大するという趣旨と承っていますが、事務局からご説明願います。 ○事務局  平成14年4月に本会議でおまとめいただいた「医療安全推進総合対策」の中で、ヒヤ リ・ハット事例の収集範囲の拡大が宿題となっており、それに向かって現在まで来たと ころです。去年8月30日に様式の変更等に関しての通知を出し、今年10月1日の報告か ら従来まではコード化情報、重要事例情報、医薬品等情報と3つに分けて集めておりま したが、10月1日以後、記述情報とコード化情報という形で集めています。  今般、全国展開ということで、従来は特定機能病院、国立病院・療養所、国立高度専 門医療センターを中心にご協力していただいておりましたが、全医療施設に拡大してい くということで都道府県宛に通知を出すものです。  もう1つは、収集機関の見直しということで、記述情報は従来どおり3カ月毎、四半 期毎ということ、全般コード化情報に関しては年2回6カ月毎と修正をしました。定点 という概念をここで、定点化をしていくということを盛り込みました。これはコード化 情報に関して特に統計的な精度をもう少し上げて、経時的な変化などを見ていくことを 計画しているためです。  資料2のように都道府県宛、そして従来からご協力いただいている特定機能病院等に 向けて通知を出すものです。参加登録等の手続がありますが、従来からご協力いただい ている施設に関しては、手続は必要ないということです。しかし定点化も含めてのご協 力をお願いするものです。この事業に関しては、平成16年度からは、財団法人日本医療 機能評価機構において実施する予定で、収集実施機関の変更等については追って通知す る予定です。以上です。 ○森座長  以上がご説明ですが、ご質問をどうぞ。 ○井上委員  これは医薬食品局長名、両局長名で通知が出ていますが、「医療機関」と記載されて いるものについては、薬局も含むと考えてよろしいのでしょうか。 ○医療安全推進室長  従来どおり基本的には病院となっております。 ○井上委員  では副作用の報告、事故の報告について救済基金も入っているわけですが、一般に院 外処方箋が発行され、町の薬局で医療用の医薬品について調剤がいま行われているわけ ですが、それについての報告は、事故が起こっても薬局は報告しなくてもいいというこ とですね。 ○医療安全推進室長  対象の機関等を拡大せよという話がもしあれば、またご議論によるのだろうと思って おりますが、そのような形になるかとも思います。これまでのヒヤリ・ハット事例を集 めてきた経験の中から、そろそろコード化情報と記述情報を分けて広げるところは広 げ、絞るところは絞るというつもりで出している通知です。もし先生がおっしゃるよう な対象の施設を変えるという場合には、今後のご議論のテーマとして取り上げさせてい ただければと思います。 ○全田委員  それはおかしいです。いまは50%分業です。50%分業しているところで当然いろいろ な事故が起こるのです。それを薬局を入れないなどという考えは、やはり間違いだと思 います。50%分業が進んでいるのです。そういう中で医師の処方箋に対するチェックも 当然するだろうし、いろいろなことがある。そういうものを薬局を入れないなどという のは、日本の医療の中で大きなミスを起こすだろうと思っています。 ○森座長  何か答えをおっしゃいますか。ではご意見として承っておきましょう。あるいは、望 月委員など、何かお考えがございますか。 ○三宅委員  定点で収集する病院というのはどういう形ですか。 ○医療安全推進室長  定点医療機関については、今後ご協力いただく医療機関のバランスを見ながら決めさ せていただきたいと思っています。相当定点という場合には、定期的に情報を上げてい ただかないといけないということのほかに、医療におけるヒヤリ・ハット情報の全体像 を把握することが必要かと思いますので、できるだけ偏りのない形の情報収集という意 味で、少し時間をずらした形で定点化をお願いしますというようにしていきたいと考え ています。 ○森座長  その点、私も2、3伺いたいと思っていました。定点ということで、例えば、病床数 がどのくらいで、設立の母体はどういう所かなどと、そのような目安を決めた上でそれ に合致するいくつかのものを選ぶのも1つの方法でしょうが、他方、いろいろな性格の 病院を定点として選ばれるのも1つでしょう。ですからその辺のり方針、定点と言って も全部でいくつぐらいをお考えでしょうか。そういうことはまだ決まっていないのです か。 ○医療安全推進室長  まず定点としてご協力いただけるかどうかが、正直言ってわかっておりません。現在 ヒヤリ・ハット情報を上げていただいている医療機関も、1年に1回の機関もあれば、 毎回きちんと上げていただいている機関もございます。さらにこの対象拡大の中で、協 力していただけるような機関が多ければ、その中から適切に分類して、いま検討してい るのは先生がおっしゃった病床の規模、病床の種別、地域バランスなどを考えてチョイ スすることになるのではないかと考えています。 ○全田委員  しつこいようですがヒヤリ・ハット事例というのは、病院の規模などではないので す。私たちは医薬品に関わる立場ですから、必ずそういう問題というのは起るのです。 ですから病院の規模で協力してくれなどということではなく、やはり当然行政指導をす べきだと思います。強制すべきだと思います。行政指導をすべきだと思うのです。そう でなければ医療事故は絶対なくなりません。だからいろいろなところで何回も同じこと が起こっているというのは、そういう問題なのです。ですから我々は反省して、必死に なって病院薬剤師会としては、どんな小さな病院でも起こさないようにという指導をし ているのです。規模とか協力するとかという問題ではないと思うのですがね。余計なこ とですか。 ○森座長  できるだけ、いろいろな方のご意見を伺うのがいいかと思います。 ○望月委員  薬局がこういうモニタリングの対象になるということはとても重要なことだと思いま す。特に病院等では名称が類似、あるいは外観が類似しているものの場合は、類似して いないものを採用するというようなコントロールをすることで、事故の対策を組み立て ていくことができます。薬局の場合は、いろいろな医療機関からの処方箋を受け付けま すので、自分たちで名称が類似しているからこれは置いておかないとかの裁量がきかな いところがあります。そのためにさまざまな似たものも全部含めて、薬局内に設置して いかなければならないという難しい問題点があります。  そういう中でどういう製品で、どんな事故が起こっているのか。事故までいかないと 思いますが、ヒヤリ・ハット事例を集めて分析するのは、医薬品の開発のときにきちん と考慮して、外観、名称も考えていくという意味で重要な情報を集められるのではない かと思います。そういう意味で是非、薬局は対象に加えていくべきではないかと思いま す。 ○森座長  ヒヤリ・ハット事例収集というのは、それだけで物事が解決するとは思いませんが、 とにかく問題点に取り掛かる上で非常に重要なひとつの入口になると思います。どんな ことでもご質問、ご意見は何かございませんか。堺先生いかがですか。 ○堺委員  ご指名ですので、前に申し上げたことと重複しますが、これまでヒヤリ・ハット事例 は相当な数が集積され、いろいろ統計的なご報告も頂戴しております。いろいろな団体 にも報告を頂戴しております。病院の現場の者の意見として、そういう統計資料はもち ろん自分たちが現場で物を考えるのに、大いに役に立たせていただいております。やは り他の医療機関で、何か具体的な成功事例をもう少し集積していただくと、それを参考 にできるという意見もあります。これは今後、ご検討をお願いしています。 ○森座長  私があまり発言するのはよくないのですが、「定量的分析の精度向上」という言葉が あります。これはどういうことですか。 ○堺委員  私はヒヤリ・ハット事例部会の直接のメンバーではありませんが、先ほど室長から医 療機関によって提出する頻度、期間が異なるというお話がありました。そうすると統計 学の専門家ではありませんが、統計的には日本の実情をどの程度信頼性を持って反映し ているかということは、絶えずつきまとう問題かと思います。とは言えやはり最初から 理想的なことを追求すると、いつまでたっても何もできませんので、個人的な意見では 現時点のこれを推進することは、大いに意義があることだろうと考えております。 ○森座長  ほかにいかがでしょうか。ございませんか。そうしますと当面のお考えとしては対象 となる機関の数を拡大し、かつ他方では改善のために定点化を試みるという2つの方法 を並行して行うということですね。すでに対象機関を拡大すると、報告されてくる事例 はどのくらいになるのでしょうか。いまでも相当たくさんあります。 ○医療安全推進室長  いまは6万数千件の実績がありますが、その中で増やそうとしている所は、むしろ非 常に稀な事例について拾えないかと考えています。例示として言われているのが、病棟 でコンセントにフォークを突き立てて感電しそうになったという例があります。そのよ うな例はどこの病棟でもあるものではないのですが、気をつけなければいけないという ことです。こういうものを出来るだけ拾う形で、記述情報を増やそうと思っておりま す。ですから爆発的に増えるということは考えてはおりません。 ○森座長  他にご質問、ご意見はございませんか。将来はおそらく対象とする機関の数を増やす だけではなく、個々の機関の中での報告の頻度、良心を強めるということもしてほしい ですね。  それでは次に移ります。第3の議事で、「平成16年度予算案の概要」です。事務局か ら説明をお願いします。 ○事務局  平成16年度の医療安全対策に係る予算案をご説明します。資料3の2頁、平成15年度 予算として6億5,000万円あったものが、平成16年度の予定では約9億8,000万円になっ ています。3億3,000万円の増です。  増額しているものについてご説明します。1点目が「第三者機関」の運営費で1億 1,500万円を計上しています。「第三者機関」については、現在医療機能評価機構とい うことで調整しています。そのほか増えているものは、「医療事故防止と患者の安全確 保に関する研究」ということで、厚生労働科学研究費で3,400万円の増です。3頁の同 じ厚生労働科学研究費で、「医療の質と信頼の確保に関する研究」で1億6,000万円の 増になっています。4つ下で、これは医薬食品局の予算になりますが、「医薬品表示コ ード化による医療事故防止対策の推進」の経費で、800万円の増額になっています。医 薬品機構の「医薬品の安全確保のための事例の収集体制の整備」ということで、1,600 万円の増額ということになっています。  申し遅れましたが、上から4つ目の大臣官房地方課にある「医療安全対策に関するワ ークショップ」は1,400万円の増となっていますが、これは前の頁の「医療安全対策に 関するワークショップ(本省実施分)」という所に計上されていましたが、そのまま厚 生局分として計上を受けました。主な予算の増額は以上です。 ○森座長  平成16年度の予算についてご質問はございませんか。よろしいですか。細かいことは わからないのですが、平成15年度予算が約6億5,000万円であったものが、平成16年度 予算は約10億円で50%増ということです。これは、いまの国全体の予算の動きから見る と異例のように見えますが、ご感想でもあればいかがでしょうか。 ○医政局長  昨今の医療事故、新聞その他で騒がれている各種の事例があるということで、政府全 体としてもこういう危機管理に対して、予算をもってきちんと対応しろということだろ うと思っています。ご存じのように緊縮予算の中で、来年度予算では臨床研修の必修化 の予算が大きいわけですが、それに伴って全体が削られている中で、医療安全、医療事 故に対するものは増えている。決していいことではないのですが、次の話題にもなりま すが、厚生労働大臣もこの問題を憂慮しており、日本医師会、それぞれ三医師会も含 め、医療事故に対して対応を取っておりますが、次の大臣アピールにもあるようなこと を実行していく上では、一定の予算が必要だということで、財政当局にもご理解をいた だきました。 ○森座長  そのようなことで、省全体としての方針もあるでしょうし、事務局の努力もあったと 思います。それからおそらく、ここにおられる委員の方々が部会、委員会その他でいろ いろ提言してくださったことも側面からの援護射撃にはなっていると考えます。ご質問 はございませんか、よろしいですか。  では、次は、今日のメインテーマになろうかと思いますが、「医療安全対策の今後の あり方」です。1つの象徴として、厚生労働大臣の緊急アピールが出たということで す。他方、日本医師会でも特別な文書をお出しになったということを聞いています。ま ず事務当局から厚生労働大臣医療事故対策緊急アピールについてご説明いただき、その 後で糸氏先生に、日本医師会が医療安全推進のために果たすべき役割について、「患者 の安全確保に資する医療事故の防止策」をご説明いただくということでよろしいです か。  では事務局から大臣のアピールをお願いします。 ○医療安全推進室長  資料4でご説明します。「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」というタイトル があり文章が続いています。相当医療事故の話題が一般化していて、さらに医師が逮捕 されることもあったということです。これは非常に重要なことで、平成14年4月には当 部会を中心として「医療安全推進総合対策」が策定されました。これを受けてさまざま な場面で、医療安全対策推進というものが行われています。ただ昨今こういうことがあ ったけれども、大変医療事故が増えているので、このまま続くと大変なことになるであ ろう。こういうことを防止する施策を進めるために、厚生労働省の担当部局に対して、 「人」「施設」「もの」の3つの柱を立てて、新しい取組みを指示しました。  具体的なものとして、「人」に対する対策として、平成16年度から始まる医師臨床研 修の必修化における安全意識の徹底、生涯教育における同様なもの、医師・歯科医師の 資質向上への取組みによる、医師・歯科医師としてのあるべき知識・技術を徹底する。  続いて、刑事事件とならなかった医療過誤等にかかる医師法上等の処分の強化、刑事 上、民事上の理由を問わず処分を受けた医師・歯科医師に対する再教育制度について検 討する。4頁、一方で医師としての職場環境に対して産業医を十分活用して、医療機関 職員に対する安全・衛生管理の徹底を図る。  「施設」に関する対策としては、第三者機関による事故事例情報の収集・分析・提供 のシステムの整備、あるいは外部評価の促進です。2番目は手術室、あるいは集中治療 室などのリスクの高い部署における要因の明確化、ガイドライン化を進める。3番目と して、手術の画像記録を患者に提供することで、透明性の向上を図る。小児救急システ ムの一層の充実を図る。さらには産科の話ですが、地域の中核となっている周産期医療 施設のオープン病院化の研究を進める。6番目、病院設計における安全思想の導入の強 化を図る。  次は医薬品・医療機器・情報等の「もの」に関する対策として、がんなどの終末期的 な治療を要する場合の選択に関するEBMを確立して、それをガイドライン化する。薬 等に関することですが、二次元コード、あるいはICタグを使って医薬品の管理や名称 ・外観の類似性の評価のためのデータベースの整備をする。抗がん剤等の慎重な取扱い を要する薬剤の処方の条件を明確化することなどを通じて、安全管理の徹底を図る。オ ーダリングシステムの活用や点滴の集中管理、患者がバーコードリーダーを所持して薬 や検査時に自らが確認を行うことなどITを活用した安全対策の推進を図る。  4番目は、輸血の場合の責任医師、あるいは輸血療法委員会設置等の輸血の管理強化 を図る。5番目は、新しい技術を用いた安全面でも優れた医療技術の研究開発などとい った個別のことを推進して、厚生労働省としては国民の医療に対する信頼確保のために 全力を傾けてまいりますので、医療関係者の方々にもご協力いただきたいというもので す。その後に付いているものは参考資料です。以上です。 ○森座長  いまのご説明のように、「人」「施設」「もの」という大きく分けて3つの事柄につ いて述べられております。では糸氏先生、医師会からのご報告を頂戴してよろしいでし ょうか。 ○糸氏委員  資料が1つ出ております。日本医師会から出した2つのうちの1つです。日本医師会 には、少なくとも医療の安全に関わる委員会が5つほどあります。その合同委員会の形 で、厚生労働大臣のアピールの少し前に、最近のいろいろな医療安全に対する国民の不 安に対して、日本医師会としては医療当事者として黙っていられないということで、こ ういう考えを持っているということを書いています。  お読みいただければ結構ですが、日本医師会は平成9年から医療の安全についての取 組みを行ってきています。一生懸命やってきたつもりですが、依然として重大な医療事 故が跡を絶たないということは、先生方もご存じのとおりです。これを受けて、取りあ えず緊急アピールという形でこういう答申を出したわけです。医療安全に関しては、法 の規定の中で医療施設内での安全の取組みの体制は取るということになっており、義務 付けられています。  それは各病院内で、それぞれのヒヤリ・ハット事例などいろいろなケースを持ち寄り 検討して、今後どうしようか、どうしたら再発が防止できるかということを努力してや っているわけです。もう1つの問題としては施設内だけではなく、他の病院、他の診療 所いろいろな所の情報を収集しながら他山の石としていく、という動きの2つが現在行 われていると考えています。  医療の安全という基本的な問題としては、リスクが全くない、つまりリスクフリーの 状態を意味するわけではない。いかなる技術でも必ず技術が進歩するのに伴って、新し いリスクが生み出されてきます。完全には克服することができないリスクが依然として 残されてしまうわけで、これを残留リスクと言っているわけです。問題は安全というの は、残留リスクが社会的許容範囲であるかどうかでについて国民のコンセンサスを十分 得れておくべきだということです。  努力すれば医療事故は絶対なくなるということを望みたい。しかし、それを阻む何ら かのファクターが依然としてある。我々自身もそれを最少限、ミニマムにしていくため の努力はしなくてはいけないけれども、国民の皆さんにも医療というもの、この個別性 のある生体に対する侵襲という中で、完全な安全、全くリスクフリーということはあり 得ないのだ、というご理解を得ないとなかなか医療の実践は難しいのではないかとは思 っています。  そういうことを踏まえた上で、我々は何ができるかということをこの中に書いており ます。まず国民に対する問いかけ、あるいは我々自身の身内に対する問いかけです。こ こに書いてあるように医療従事者、患者さんとその家族、国民の皆さん、医療界の周辺 のすべての方々に対する呼びかけをしております。日本医師会が独自に取り組むべき具 体的な提案をいろいろ書いていますが、医療の質の向上による安全性の問題等いろいろ あります。基本的には医療安全はいろいろディスカッションされた結果、例えば外から 締めつけて、こうしなかったらこういう罰則を設けるということで達成できるかという と、必ずしもそうではない。  いちばん大切なことは各医療機関、あるいは医療従事者自らが、自主的に医療の安全 を認識し、国民に奉仕するという立場であるという基本的な意識を毎日持ち続け、そし て忘れないでいかに持続しているかが、医療安全への基本的な課題であろうということ です。そのための教育、あるいはウェイクアップするための手段を個人はもちろんのこ と、組織としてどのようにしてやっていくかということが、これからの大きな問題であ ろうと考えています。  そのほか医療安全を巡る問題は非常にたくさんあります。基本的なベースの問題は医 療者自身が、国民のため、患者さんのために奉仕する立場として、あくまでも自主性、 自らやっていくという気概がなければ、いくらいろいろ医療法などで締めつけてもうま くはいかないだろうと思います。まず我々自身のウェイクアップ、意識改革がその日そ の日毎に求められていることを認識することからスタートすべきであり、ほかの細かい 所はお読みいただければと思います。 ○森座長  「精神」をご説明くださったと思います。これで一応ご説明を終わりにして、いまの 議題は「今後の医療安全対策のあり方」ですから、以上2つのご報告に関するご意見、 ご質問でも結構ですし、場合によってはそれを越えて、一般的に今後の医療安全対策の あり方についてでも、できれば委員の方々一言ずつご意見を述べていただきたいと思い ます。 ○岡谷委員  厚生労働大臣のアピールの中に、「人」に関する対策、「施設」に関する対策、「も の」に対する対策ということで、特に「人」の所では医師のことが取り上げられてお り、前からこの対策会議の中でも申し上げているのですが、医療の安全を確保していく ときに、人の配置の問題、配置の手厚さの問題が非常に重要ではないかということで す。  いまは特に特定機能病院、高機能病院ではこの5年間で、政策により平均在院日数が 10日間ぐらい短縮をしてきています。しかし人員配置はそのままですので、結局病院の 努力により傾斜配置等はしています。しかし医療、労働の密度が濃くなってきている中 で、安全に気を配りながら、ヒューマンエラーが多い中でそれを予防するために、さま ざまな働きをしなければならないということは、いまの人員配置、特に看護師の人員配 置では非常に難しい状況にあるのではないかと思います。そういうわけで是非安全とい う観点からも、人の配置をもう少し検討していくべきではないかと思っています。 ○森座長  いまご指摘の点は、おそらく、どちらのご報告なりアピールにも入っていない事柄で す。一部の医療従事者は、医師、看護師、その他の人たちを問わず、非常に過酷な労働 条件の下で働いており、疲労困憊しているという指摘もあります。どうもありがとうご ざいました。ではまず三宅委員、いまのことと関連したご意見のようですからどうぞ。 ○三宅委員  いまのお話にかなり近いことですが、1つは厚生労働大臣の緊急アピールは、「人」 「もの」「施設」ということなのですが、「人」「もの」「施設」だけでは解決しない ので、いまのは「お金」ということだと思います。ですから、それにふさわしいだけの 資金を出しましょうということが必要だと思います。  人の配置、ものの問題、それについてはこの後につながるのかもしれませんが、今後 の検討会の重要な方向性としては、いままでいろいろなヒヤリ・ハット、今後はこうい う事例の検討ということになっていくわけですが、いままで集まったデータの中で、い つどこでどういうふうな事故が起こりやすいのかはかなりわかってきているわけです。 前回のヒューマンエラー部会でも確か慶應の看護師さんの報告だったと思いますが、例 えば転倒・転落について、就寝前に必ず排尿させて就寝させると、転倒・転落は明らか に減ってきたというデータがあるわけです。  そういうきちんとしたデータがあれば、それを特定のいくつかの病院、あるいはいく つかの病棟で実際にもう少し広げて検討して、事実そうであるということであれば、具 体的にそういう政策を進めるということはできると思います。  このアピールの中でも、IT化ということをこれだけ主張されていながら、ITを進 める資金的なことは何も触れていないわけです。これもそのときに少し話題になりまし たが、現実に確認作業ということで、ITを利用することで、どれだけ確認作業におけ る事故が減ったのか、いくつかの病棟、病院で検討して事実、こういうシステムでやれ ばこれだけ減りました、ということがあればそれを全国の病院に広げるべく、厚生労働 省の政策として進めていただきたい。今後は是非具体的な方策を検討して広げていく方 向でやっていただきたいと思っています。 ○中村委員  私が学校長をしている医師会立の看護専門学校は、120人ぐらいの卒業生を出すので すが、かつては求人がなく、自前で看護師を養成していた大病院からの求人が相次いで います。  かねてから非常にリスキーな部門に配属されるのを嫌がるという傾向は聞いておりま すが、それがさらには離職につながるという現象が現在生じており、大変問題だと思っ ています。絶対数が足りない上に、さらに現場から人が離散しているという状況は、早 急に改善する必要があるのではないだろうかと思っています。 ○三宅委員  いまのお話につながることで、これも私は何カ所かでお話したことがありますが、医 師のほうも、いま麻酔科、心臓外科、脳外科、内科系でも循環器など、夜、昼なく働か なければいけない診療科、しかも、非常にリスクを抱えている診療科に入局する医師が 減っていると言われています。特に周産期の産婦人科、小児科というのは、非常に深刻 な問題を抱えています。  ですから、こういう点についても安全に対してはどうすればいいかということを、も っと具体的に検討することと、これはここの話題ではないかもしれませんが、リスクに 応じた評価というか診療報酬につながるのですが、いろいろな評価をしないと、おそら く10年先、20年先には、日本全体の医師が非常に偏ってしまい、医療の供給体制に支障 を来すのではないか。その辺は、今いろいろな手当てをしないと、将来に大きな禍根を 残すのではないかと思っています。 ○森座長  周産期専門の医師の不足については、大臣も随分危機感をお持ちのようで、シンポジ ウムか何かも開かれていますね。いまのご指摘は大事なことで、厚生労働省としても大 臣以下、非常に心配しておられる。シンポジウムには裁判官あるいは弁護士なども参加 しておられたと思います。 ○辻本委員  人に関する問題で、この4月からいよいよ臨床研修の義務化が始まります。情報開示 ということで、私はかねてより「若葉マークということを是非お願いします」と言って いますが、事故は技術が未成熟な研修医などから起きているのも現実です。  患者はこの度、入院の初日だけ、診療報酬ということで研修医を育てることに30点、 お金を払うようになりました。しかし、現実は未熟な人がいる病院に行くことで、なぜ 余分なお金を取られなければいけないのかという、国民の十分な理解が得られていない 状況もあります。  そうした国民の意識啓発も含めて、その辺りをしっかり伝えていただくことと、研修 医は若葉マークではっきり情報開示をしていただき、そこにどういう指導体制が確立さ れているかを患者にアピールすることで、だから、しっかり医療を提供し、そうした関 係づくりに患者と医療者が協働する一歩足を踏み入れることもできると思いますので、 人の配置の問題に直接かかわるかどうかは分からないのですが、研修医の情報開示を是 非お考えいただきたいと患者の立場からお願いいたします。 ○井上委員  この検討会議で、安全文化というものができ、私も含めていろいろな講習会等で安全 文化の普及に現在努めているわけです。これは本当に素晴らしい思想で、この思想を根 付かせることが大事だと思います。  それと同時に、施設整備がこれから必要になってくるのかと思います。安全文化を理 解した安全思想を持った医療従事者が、さまざまな病院や薬局で働き始めるようになっ てくるわけです。大臣アピールの中にもありますように、IT化となると、設備の基 盤、社会基盤の整備、ネットワークなどを使うと、社会基盤の整備も含めた視点になっ てくるわけです。それほど大きなことではないにしても、それぞれの医療機関や薬局で 施設整備がIT化についてなされていかないと、折角安全思想を持った方が、それを役 立てようと思っても、なかなかできる環境にないというのがあります。  そのようなことは診療報酬、調剤報酬を含めて考えられることかもしれませんし、ま た各医療機関や薬局の自らの努力によって、そういう基盤を整備していく必要があるの かもしれません。さまざまな方法があると思います。次のステップとして、施設の基盤 整備をどうしていくのかは、非常に大きな課題かと考えております。 ○森座長  新井委員、歯科医師会などでもお考えですか。 ○新井委員  日本歯科医師会といたしましては、本検討会議等のご意見も踏まえて、安全・安心の 歯科医療提供のために、歯科医師の資質向上対策のとりまとめをしており、大学新卒者 等については、国家試験の見直し等が行われたところです。今年3月に行なわれる国家 試験から資質向上を図っていくということで、内容の見直しが図られたところです。  平成18年度(医師会は平成16年度)からスタートする卒直後の研修等についても、い ま内容の洗い出しをしております。既卒者については、生涯研修等の義務化を進めてお り、特に歯科疾患の特性から、義歯や歯冠修復などの欠損補綴の部門で、院内感染防止 が徹底し切れないというお話も伺いますので、その辺も含めて、特に院内感染防止対策 等を強化してまいりたいと考えております。  事故事例の情報収集等については、昨年医療管理の委員会が、基本的なフォーマット を作成して、47都道府県の歯科医師会にご協力いただき、事故事例については全国から すべて情報が日本歯科医師会に上がるシステムが構築できたところです。諸々、今後、 歯科医師の資質向上を図りながら、歯科における安全・安心医療の徹底を図ってまいり たいと思っております。 ○森座長  歯科医師会でも同じように努力しておられるということですね。川村委員は、かつて ヒヤリ・ハットの事例収集に先鞭を付けられた方です。 ○川村委員  私は「人」に対する対策としては、卒前教育が急務ではないかと思っています。私は 事例を見て、事故防止上必要であったにもかかわらず知らなかったという知識が大変多 いことに気づきました。  現在の卒前教育に、それぞれの医療職によって教育内容が違うにしても、そのリスク を捉えるという見方、そのためには事故事例を分析して事故防止上必要な知識、あるい は観察力、判断力はなにかというような教育の考え方を打ち出していかなければいけな いのではないかと思います。医療安全学という未知なる学問を、完全なものはとうてい できるわけがありませんが、不完全ながらも作ることを目指し、各医療職の卒前教育に 活かしていくことが、とても重要な課題ではないかと思います。  事例を見ますと、確かに、さまざまな医療環境の負荷の中で起こっている事例もあり ますが、事例の半分ぐらいは知ってさえいれば、事故防止上のポイントを実務に照らし て理解してさえいれば防げる事例です。そういう意味で安全のための知識を再構築し て、医療安全学という教育体系を作っていく働きかけをしなければならないのではない かと思っています。 ○森座長  岸委員はジャーナリストのお一人として、何かご注文でもおありでしょうか。 ○岸委員  遅れてきまして途中からですが、マスコミというおっしゃり方をしましたので、つい でといっては何ですが…。医療安全にかかわる事例の収集システムの大枠はできたわけ ですが、私たちジャーナリストは、情報を集めることも仕事ですが、最終的な仕事は、 その情報をうまく加工して読者のニーズに合わせて提供して、初めて我々の仕事は完結 するわけです。  今回のシステムも収集するシステムはできましたが、それをさまざまな医療現場、そ れぞれの特性を持った医療現場に、ニーズに合った形に加工してクリアカットに提供で きるかどうかは、非常に大きなポイントになろうかと思います。ですから、ただ漫然と 収集しました、そしてそれを何種類かに分類して、「では、あとは皆さん自分たちで勝 手にお役立てください」と言っても、医療現場ではそれをうまく使いこなせないのでは ないかと思います。  例えば、開業医なら開業医、あるいは高度な特定機能病院なら特定機能病院という、 それそれの特性に応じて、「お宅にはこういうケースがありませんか」あるいは「こう いう形で、もしかしてお宅に参考になるものがあるのではありませんか」ということ で、すぐ使える、ダイレクトに使える情報に加工する技術を、是非高めていただきたい と思っています。 ○森座長  情報をため込んでいるだけでは何の役にも立たないわけですね。 ○堺委員  今後の医療安全の進め方について、医療機関の立場からお願いしたいことが1つあり ます。それは上部機関の間の調整を、何らかの手段で図っていただけないかということ です。  どういうことかと言いますと、医療機関から見ると、たくさんの上部機関がありま す。例えば、私立の大学病院ですと、全く順不同ですが、日本私立医科大学協会、全国 医学部長病院長会議、日本医師会、日本看護協会、日本薬剤師会等々たくさんあって、 それぞれの上部団体が最近は大変熱心にいろいろ調査をされます。これは大変いいこと だと思うのですが、実際にそういう調査を受ける現場から見ますと、必ずしも横の連絡 が保たれているようには見えないこともあります。  できることなら国にお願いして、医療機関から見た上部機関にはどういうものがあっ て、それがどういう活動をしているかを調査していただいた上で、各機関の間の連携に ついて調整してくださると、医療現場は大変有難いと思っています。 ○森座長  いま言われた調査というのは、患者についてというか、個々の事例についての調査で すか、それとも医療機関の機能や設備などについての調査ですか。 ○堺委員 両方です。 ○桜井委員  アピールと答申を伺った印象を申し上げますと、私は前にもこの検討会議で申し上げ たことがありますが、目標設定がないのです。教育には、何々したい、こうあるべきだ という「意図的教育」と、やったら成績が必ず上がるという「成功的教育」の2種類が あるとよく言われています。  これを見ますと、時間軸がほとんど書いてありません。何年経ったら何をするという 目標を定めて、それに向かって走るのだというゴールが全然見えないのです。ですか ら、結局意図的で、何々すべきであるとか、したほうがいいというものの書き方、見方 になってしまっています。いつまで経っても、「こうすべきである」というのは皆さん のコンセンサスですが、それだけでものが解決するかどうかは非常に疑問で、時間軸を 決めた上での目標設定というのは必要なのではないかという気がします。  先ほど三宅委員も言われましたが、いつまでにこういうことをやって、このようにし たいのだという具体策です。例えば、事故を半減したい。アメリカの場合は、クリント ンが何億ドルかをかけて医療事故を5年で半減すると言っています。そういう定量的な ものの言い方、先ほど定量的分析という話がありましたが、それがほとんどありませ ん。定性的で、かつ意図的というか、何々すべきである論に終始しており、果たしてこ れでうまくいくのかという疑問が起こります。  私どもの委員会は、医薬品や医療用具など、「もの」に関することをやっています が、これもいまワーキンググループの先生方が大変苦労して、間違いやすい名前や何文 字にしたら間違えないで済むかなど、いろいろやっておられます。大臣のアピールにも あるようなICタグ、あるいはバーコードなどを付けてしまえば、名前がどうだろう と、それでパッとなぞれば、スーパーマーケットでやっているような形で間違いが起こ らなくなるわけです。  私がこの間の委員会でお願いしたのは、対策というのはフェイズッドに考えて、明日 できることと、5年先の技術革新を見込んでやること、10年先にはこうなるだろうとい う、いろいろなフェイズを分けて考える必要があるのではないか。  それには当然予算が要るわけです。先ほど予算のご説明がありましたが、省庁の予算 というのはアナムネーズというか、それまでの実績があって、それの何パーセント増し であるという言い方をして、それが増えていれば大変良かったという話になるわけで す。安全に関しては、そういう考え方ではなく、この大臣アピールに書いてあるような 各項目ごとで積算をして、例えば、安全管理をするためには、会議の費用やリスクマネ ージャーの人件費などいろいろ積算すると、100ベッドで1億円ぐらいかかるのではな いかという説もあります。  事ほど左様に、積算をしたような予算の立て方という新しいやり方が必要なのではな いか。今までのアナムネーズでとらえられて何パーセント増しという考え方をすると、 完全な解決にはほど遠いのではないかという印象を持ちました。 ○全田委員  桜井委員がおっしゃったように、今までの医薬品の値段は、安全性が一切考慮されて いないのです。例えば過去に、この薬があったとすると、それにアナローガスであるか ら、このぐらいの値段でいいだろうという点数を付けてきたのです。しかし、それでは 駄目で、我々はリスクマネージメント検討委員会を作って、いろいろします。バーコー ド1つを入れるだけでも安全性は高まるのです。しかし、医薬品にはそういうことをす る値段がないのです。例えば、アンプル1つにバーコードを入れてくれれば、病棟にお いても間違いはないのです。我々の立場からは、安全性の面での行政のお考えをいただ きたいとお願いしたいのです。 ○森座長  まだご発言を伺っていないのが長谷川委員と山崎委員ですが、何かございますでしょ うか。 ○長谷川委員  今日いくつかの資料あるいはご報告をお聞きしていて、大変感慨を深めているところ です。つまり、2002年4月に全般的な対策が立ち上がってから、それぞれの部分につい て、例えば、ヒヤリ・ハットの報告の制度についても苦情相談のシステムにしても、あ るいは検討委員会を通した薬物の類似の募集等についても、一歩一歩着実に進んでいる という印象を持っております。  私どもでは、本日セーフティ・マネジャー(安全管理者)の研修が終わったところで す。22名の管理者が半年間トレーニングを受けて、前年に続いて総勢44名の方が私ども の組織で研修を受けました。そういう方々の研修でいろいろ聞いていても、もう1つそ ういう着実な政策の実行と施設レベルでの執行とがうまく結び付いていないという感が あります。ヒヤリ・ハットは集まったが、分析をして現場にフィードバックできていな いとか、いろいろなことがありますが、結局のところは点検等が増えてしまい、業務が かえって大変になっています。  私の感想ですが、ここでやるべきことは、今までのいろいろな成果を戦略的という か、プライオリティを付けて、このようにいろいろな政策が転換した段階で何が重要 で、何が重要ではないという執行の整理を、国レベル、特に施設レベルでしていくこと は、非常に重要ではないかと思います。そしてそれを執行する体制を作っていく。いわ ゆる安全戦略のようなものを各組織で作っていくことも必要ではないかと感じておりま す。  それから、ヒヤリ・ハット等の分析の手法等がまだ定着していないので、これを全国 に広めていく必要があるのではないか。周りのものが整備されていますので、実際の施 設でそれをどうするかが次の話題になっていることを実感しております。 ○山崎委員  厚生労働大臣からアピールが出されたことは、大変心強いことで、非常に強い関心を 持っていただいていると思います。いまの時点で「人」「施設」「もの」と整理して、 このようなアピールを書いていただいているわけですが、もう1つ、いまの時点で見た ものが、前の時代から変わってきて、またこれが変わっていくという時の流れのような ものがあるわけです。そこに視点を置くことと、行政や医療の立場にいる人の視点と、 先ほど辻本委員からもご発言がありましたように、何よりも大切な生活視野、患者の視 点が入ってこないと完結しないだろうと思います。  三宅委員から、現場での医師の配置というか希望する場所というか、そういう分布と いうか、そういうものが変わってきているというご発言がありましたが、例えば、受診 する患者の疾病の分布みたいなものも大きく変わってきていますし、どういう病気で亡 くなったかという原因別の死亡率も大きく変わっております。大げさに言うと、急性疾 患から慢性疾患の時代に入ってきています。ですから、医療体制もそれに対応した変化 が今までもなされているし、これからも大きくそのようになっていくだろうという視点 が入ってこないと、まずいのではないかという気がします。  ヒヤリ・ハットのことでお話がありましたが、例えば院外処方箋の発行率が50%を超 えているというのは、事実として変化があるわけです。そうすると、調剤薬局で調剤を し、そこでのヒヤリ・ハット事例が無視されていいのかどうかも、時代の流れの中で判 断していきますと、これから問題になっていくのではないかと思います。  この会議でも再三お話が出ましたが、重大な事故の前には必ず前兆があって、正確な 数字は忘れましたが、300を超えるぐらいのヒヤリ・ハット事例があると、1つの重大 事故につながるという専門家のお話がありました。そういう意味では、これから形態が 変わっていく医療の中でのヒヤリ・ハットの捉え方も、そういう新しい視点で見ていか なければいけないのかという気がします。  特に薬の問題で言いますと、厚生労働大臣のアピールの中にも、例えば、コードを完 全にする、ICタグを付けるということでも、誤った使い方をしないというところには 近づけるのですが、間違いのない薬が患者の体内に入ったとしても、もしその患者の体 質に合わない等で副作用が出る場合が往々にしてあります。その場合に、いかにしてそ の副作用を初期症状でとらえて、その被害を未然に防ぐかということまでも含めないと 事故は防げないだろう。間違いなく医薬品が患者の所に届けば、それで事故は防げるの かというと、そういうものではないのだというところにまで踏み込まないといけないだ ろう。そういう意味でいろいろな立場で、その目標に合ったヒヤリ・ハットの収集の仕 方と、その目的に合った分析の仕方が必要になっていくのではないかと感じました。 ○森座長  進行には若干失礼な面もありましたが、お許し下さい。が、とにかくこれでひとわた りお考えを伺いましたので、誰方でも、さらなるご意見を承りたいと思います。 ○中村委員  私はつくづく思うのですが、医療は量から質へ転換しました。ところが、真に医療の 質の向上に向かっているのかと疑問に思っております。確かにアメニティの向上は図ら れつつあるように思います。そのようなことで療養型等は広い廊下などがあるのです が、実はそこに人影が疎らという感じがしてなりません。一般病床から療養型へ転換し たいという病院がいろいろありますが、その辺への新規投資が1つのネックになってい るような感じがします。九州では、医師確保のために事務長が自殺するという事例もあ りました。ハードの部分の質の向上ではなく、マンパワーを中心にした質の向上に、も う一度転換することはできないものでしょうか、お尋ねします。 ○森座長  そうですね、難しいですね。ほかにいかがでしょうか。 ○辻本委員  先ほども応援をいただきましたので、患者の立場で、今後の課題ということで、是非 ご検討に加えていただきたいことを3点ほど申し上げたいと思います。私もいろいろな 病院で発生した事故の外部調査などで、一般の患者では踏み込めないかなりの中枢部に 足を踏み入れさせていただいて、現場の方々の声を聞いております。  改めて思うのは、いま社会や患者が考えている安全ニーズの点と、現場の危機管理シ ステム、あるいは医療者の意識が全く合致していないというずれを何とか埋めていかな ければいけない。そのためにということで3つお話します。  1つは、患者の意識啓発です。100点満点ということではない医療の限界性、不確実性 をどう社会的合意ということで引き受けていくかといったことも、引き続き働き掛けて いただきたい。もう1つは、相談窓口が形としてできました。しかし、残念ながら魂を 入れるのは、まだまだこれからだという実態をあちこちから耳にしております。このこ とをさらにご検討いただきたい。3つ目は、いま国民の不安がピークに達するほど高ま ってきています。その納得のためには医療者、特にドクターの生涯教育の義務化や免許 の更新制などを、もっと広く議論をして、もちろんそこに国民の意見を吸い上げ、前向 きに取り組んでいただきたいと思います。この3つがこのニーズのギャップや現場の苦 悩を埋めていく架け橋になると考えておりますので、是非よろしくお願いしたいと思い ます。 ○森座長  かなり具体的に3点挙げられましたが、何かお答えがありますか。 ○医療安全推進室長  まず、国民の不安が非常に高まっていて、医師等について生涯教育や免許更新制を是 非ということに結び付く話としては、相当私どもで研究をしておりますし、特に免許に ついては、今までの刑事事件についても、一部漏れがあるではないかというご批判もい ただいておりますが、法務省の協力で刑事事件については一定以上のものの情報をいた だくことになっています。  一方、民事事件においても、一定の調査の下で免許について検討するということで、 随分時代が様変わりというか、かつてでは考えにくいようなことが進んでいるのではな いかと考えています。まだまだ生涯教育なども進めていかなければいけないと思ってい ます。  患者の相談窓口については、確かにまだ不十分です。平成15年から始まった事業で、 都道府県で医療安全支援センターを置いていただきたいと自治体にお願いしたのです が、ほかの施策ではあまり見たことがなく、ほぼ100%自治体に置いていただいていま す。そういう意味では、相当進んだなと思います。辻本委員が言われるように、初年度 ですので、内容についてはまだばらつきがあるのだろうと思っています。これは医療機 能評価機構などを通じて、相談を受ける方々に対して、相当インテンシブな教育を行っ て、自治体の方が、なかなかお会いできないような講師の先生をお招きしてやっており ますので、今後、相当能力として、あるいは魂として入るものになるのではないかと考 えております。  患者の意識啓発についても、確かに今まで医療に対する絶対性というか、そういうも のに対する信頼が言われていましたが、昨今、私どもは平成13年からこの会議等を開い ていて、医療安全というのがテーマなのだということが、相当一般に浸透してきたので はないかと思っています。先般、読売新聞の調査で、患者の心配のうちの77%は医療事 故だというデータもありますので、その意味では、これは意識としては随分高まってき たのではないかと思っています。今後もこのような公開の会議、あるいはさまざまな情 報を開示することで進めていかなければいけないのではないかと考えております。 ○森座長  相談窓口で実際に応対するのは、どういう方ですか。 ○医療安全推進室長  構成上は運営委員会を置いておりますので、その中では医師、歯科医師、看護師、薬 剤師等に入っていただいております。もちろん法曹界の方にも入っていただいておりま すが、具体的な窓口は、自治体によって異なりますので、多い所では医療従事者が対応 されています。例えば、東京都のような大きな自治体は、ほぼすべての医療関係職種を 揃えているという所もありますし、「うちはわりと評判がいいのです」と言われる自治 体は、大きな病院に勤められて退職した看護師長などが対応されていると聞いていま す。 ○医薬食品局審議官  医薬品の関係については、だいぶ話が出ましたので、医療機器についてお話したいと 思います。1つは、新しい独立行政法人である医薬品総合機構が4月1日からできます が、特に医療機器の開発の段階、市販後の安全対策について、今まではどちらかという と、薬剤師が中心的にやってきましたが、医師、薬剤師、工学の3者のチームで、もの の性能、安全性事前相談や審査、また市販後の安全対策をチームワークを組んでやって いこうと考えています。そうすることによって、これを開発する企業も、そういうスタ ッフで対応していくのではないかと考えており、画期的な製品の創成につながることを 期待しているわけです。  一方、医療機関においても、医師、薬剤師、工学系のチームプレーについても、今後 検討していただければ、始めから終わりまで、1つの流れが出来上がっていくのではな いかと思います。 ○山崎委員  医療の問題と同様に、いま食の不安が非常に広がっています。この検討会議は医政局 と医薬食品局でやっていただき、非常に素晴らしい先生方にお集まりいただいていま す。食のほうでは内閣府に食品安全委員会ができて、そこが主体になっておられるのだ と思いますが、生活者との食の安全についての意見交換会で、いろいろな意見を交換し ながら、安全と安心の両方を納得していただくという運動があります。私も食のほうに もかかわっていたものですから、何カ所かそういう所での意見交換会に参加させていた だいたことがあります。  医療の安全について、生活者との意見交換の場をいろいろな所で開いたらいいのでは ないかと、食の安全について意見交換会の場にいながら考えておりました。そこに厚生 労働省、農水省といういろいろな立場の方が説明をし、行政はこういうことを考えてい ます、生活者はこういうことが不安なのだ、という意見を交換し合う機会が作れると、 ここでいろいろなことを議論していることが、このようになっていくのだということを 知っていただくいい機会が作れるのではないかと感じたことがありました。ご存じのこ ととは思いますが、ご紹介いたしました。 ○森座長  こういうご意見も場合によっては、将来、安全週間の行事の1つに取り上げられるか もしれませんね。 ○望月委員  先ほど岸委員から情報がきちんと使える形で、それが必要とされる所に伝わることが 重要だというご指摘がありましたが、私も全く同感です。ヒヤリ・ハットがすべてでは ないのですが、非常に繰り返しが多いし、重点項目であるというヒヤリ・ハットがあっ たときに、それにどういう対策を講じることが重要かを、きちんとした形で医療機関に フィードバックしていただくことは大切だと思います。  医薬品では非常に重大な副作用が起こったときに、緊急安全性情報という「イエロー レター」とか「ドクターレター」と呼ばれるものを医療機関に配布しています。十分そ の効果を発揮するようになったのはごく最近だと思います。10年以上前から、いろいろ な形で配布されていますが、その当時は、よその出来事だと医療機関のほうで位置づけ てしまって、医療機関の中で配ったあともあまり浸透していない。あるいは企業もそれ をきちんと全員の医師に届けていなかったようですが、いまはそのツールが非常に効果 的に作用しているように思います。ですから、いかに必要な所に情報が伝わるかという 院内での仕組みを、きちんと確保することが重要ではないかと思います。  例えば、医薬品だから薬剤部に伝えれば全部に伝わると思っていると、実は薬剤部で 止まってしまい、その医薬品を実際に取り扱う看護師や医師にその情報が伝わらないケ ースもあるかもしれません。そこをきちんと伝わるように各医療機関の中で徹底する。 ほかの医療機関で起こったことでも、自分の医療機関でも同様の現象が起こる可能性が あるという意識を育てていただくことが必要ではないかと思います。情報はいくらたく さん発信していても、受け手の意識が変わらないと何の効果も発揮しないと思いますの で、そこをこれからきちんと啓発していくことも必要ではないかと思います。 ○森座長  いまは情報化の時代で、みんなコンピューターの画面ばかり見ていますが、直接生の 声を聞かせていただくのもいいですね。 ○井上委員  インシデントレポートの中からセンチネル・イベントを集めてコース・ケース・アナ リシスをやって、アクションプランを作るのが、普通の事故防止手法ですが、いまイン シデント事例が6万何千集まっているという話です。それをどう分析して、それぞれの 医療職種、医師、看護師、薬剤師、レントゲン技師などにどう伝えるのかという方法 が、具体的に考えられなければいけない時期にきていると思います。  去年、「医療事故を防止する10のポイント」を作ったのですが、毎年同じことを繰り 返すのか。例えば、インシデント事例を集めて、コース・ケース・アナリシスをやって 、アクションプランを作っていくのであれば、極端な言い方をすれば、10のポイントは 毎年変わってもいいと思います。ですから、インシデントなりセンチネル・イベントを 積んでおくだけではなく、実際に現場に還元するシステムを、それも大まかに医療従事 者に向けてというのではなく、それぞれの職種ごとにインシデントがあるわけですか ら、それをきちんと正確に還元できるシステムづくりが必要かという気がしています。 ○森座長  そんなことでよろしゅうございますか。では次に、「今後の医療安全対策のあり方」 です。これについては、事務局も決して拱手傍観しておられるわけでありません。検討 会なり部会、委員会などについても、将来のあり方に関する構想をいろいろ練っておら れるようですから、その説明をしていただきましょうか。 ○医療安全推進室長  それでは、資料5の「医療安全にかかる部会等の見直しについて」です。1つは平成 16年から従来のヒヤリ・ハット事例に加えて、事故事例の収集事業が開始されます。ま たこの部会体制も発足後3年を経たこともあって、それぞれの部会で一定の意見が出さ れていますので、それについて整理しております。  まず現状について説明しますと、基本的には4部会体制になっており、これ以外に事 故の収集の部会がありましたが、基本的に報告が出ており、一応終了しております。続 く部会としては、当会議の医療安全対策検討会議での検討事項となっているのは、医療 安全の基本方針、医療機関の人的又は組織的要因に係る安全管理対策に関する事項、医 薬品・医療用具等の物の要因に係る安全管理対策に関する事項です。  ヒューマンエラー部会というのがあって、医療機関の人的又は組織的要因に係る安全 管理対策に関する事項を検討していただくことになっています。  さらに医薬品・医療用具等対策部会では、医薬品・医療用具等の物の要因に係る安全 管理対策に関する事項を検討していただくことになっています。  具体的なヒヤリ・ハットを扱う検討会議としては、ヒヤリ・ハット事例検討会議があ ります。ここでは、医療安全対策ネットワーク整備事業によって収集された、ヒヤリ・ ハット事例の分析及び改善方策の検討に関する事項、その他、ヒヤリ・ハット事例の活 用等に関する事項が入っています。  ヒューマンエラー部会やヒヤリ・ハット事例検討会議で、会議のあり方について意見 が出されており、ヒューマンエラー部会においては、医療界、製薬・医療機器メーカー と行政が話し合う機会を持つことにより、一層充実した議論ができるのではないか。ヒ ューマンエラー部会には製薬・医療機器メーカーの方が入っていませんので、こういう 議論が出たわけです。もう1つは、ヒヤリ・ハット事例の収集やその分析について随分 時間をかけているが、具体的な対策について、より一層議論をしたいという意見が出て います。  ヒヤリ・ハット事例検討会議においては、収集情報の検討だけではなく、いまここで も議論がありましたように、現場で役立つ一歩進んだ分析が求められているのではない か。それには個別の事例について、より詳細に議論したいという指摘がされています。  これを受けてそれぞれの会議のあり方について、以下の考え方を示しています。まず 当医療安全対策検討会議の役割としては、従来通り、医療安全施策全般に関して検討す ることとしてはどうか。ヒューマンエラー部会については、医療機関の人的、または組 織的要因に係る医療安全施策について、医療界、製薬・医療機器メーカー等関係者の意 見交換を行って、施策の進捗状況についての検討をすることとしてはどうか。  医療安全対策検討会議の医薬品医療用具等対策部会では、医薬品医療用具等の物の要 因に係る医療安全施策について、医療界、製薬・医療機器メーカー等関係者の意見交換 を行って、施策の進捗状況についての検討をすることとしてはどうか。ヒヤリ・ハット 事例検討作業部会としては、医療安全対策ネットワーク整備事業及び医療事故に関する 情報の収集・分析・提供事業に関して検討してはどうか。これは事故が加わるというこ とです。なお、名称にヒヤリ・ハットというのが付いていますので、ここは事例検討作 業部会としてはどうかということです。  3頁に、このような考え方を基にして、それぞれの検討事項を新旧で示しており、左 側が旧、右側が新です。説明については重複しますので割愛いたしますが、このような ことでいかがでしょうかという提案です。4頁は、全体像を図にして示しています。 ○森座長  この文書を見ますと、「してはどうか」という文体で書かれておりますから、委員の 方々にご意見があれば、ぜひ聞かせていただきたいという姿勢だろうと思います。何か ご意見でもございませんか。 ○三宅委員  先ほども申し上げましたが、方向性としてはこのように具体的な対策に進むような方 向で、是非進めていっていただきたいと思っています。 ○森座長  ほかにいかがでしょうか。それでは、特にご意見がなければこういう方針で事務局に は進めていただきたいと思います。  それでは、全体を通して、何かさらなるご意見があれば伺いたいと思います。もしな ければ「参考資料」がいくつか付いていますので、それについて事務局から説明してい ただきます。 ○医療安全推進室長  それでは、参考資料の1です。これは平成15年11月に出された通知で、いまでも起こ っていますが、医薬品の事故が次々に起こった時期です。それについて、このようなこ とをお願いしたいという3点です。まずは、間違いやすい医薬品の採用状況の確認をし ていただきたいというものです。  2頁ですが、これは日本病院薬剤師会の方々が作られたもの等を参考にして、危険な 薬というか間違いやすい薬を3頁にリストアップしています。例えば、アマリールとア ルマールとか、非常に似ている名前で異なった薬効がある薬があるのだということで す。特にこの辺は間違う実例があるものをまとめていただいたものです。  2番目は、間違い予防のために講じている方策です。例えば、病院の中では、この薬 は商品名で呼ぶことにし、これは一般名で呼ぶことにするといったルールを決めている 医療機関がありますが、それをもう一回確認していただきたいということです。  3番目は、特に抗がん剤の使用については、各医療機関でさまざまなルールが決めら れていますが、特に二重確認をするといったことを主に行って、抗がん剤の安全につい ては、特に気を付けていただきたいという通知です。 ○森座長  私は医療の現場を知らないので、こんな質問をするのは恥ずかしいことですが、「医 薬品を採用する」というのは、病院で採用するものですか、それとも個々の医師が採用 するのですか。 ○医療安全推進室長  私が承知している範囲では、大きな病院では、例えば薬剤管理委員会などの名称の委 員会が病院にあって、この中で薬を新たに採用する、あるいはこれは重複しているので 要らないのではないかといった決定をしています。 ○森座長  では、第2の説明をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  参考資料2は「医療安全推進週間」等における取組状況です。これは新たにまとまっ たもので、毎年11月に医療安全推進週間を設けていますが、昨年、どんなことが全国で 行われたかという資料です。2頁ですが、これは私どもがやらせていただいた特定機能 病院に対するワークショップの開催状況です。3頁は、地方厚生(支)局のワークショ ップの状況ですが、これも医療機関を対象にして各厚生局が開催しています。  4頁以降は、自治体がそれぞれの業務を行ったもので、略称で(1)、(2)、(3)、(4)、 (5)、(6)と書いていますが、5頁の下に書いてあり、例えば(1)は研修を行った、(2)は ポスターを配布して普及啓発を行った、(3)はシンポジウムを開催した、(4)は安全管理 体制の見直しを行った、(5)は一般国民に対する周知を行った、(6)はその他ということ で、各自治体は大変いろいろな取組みをされていることが、このリストである程度分か ります。  6頁は、各団体からも私どもは情報をいただいており、いまと同様の情報をリストに したものです。 ○森座長  有難いですね、随分ほうぼうで一生懸命やってくださっているのですね。 ○医療安全推進室長  参考資料3です。これは「医療安全支援センター」についてまとめたものです。2頁 は、各自治体の医療安全支援センター設置状況で、平成15年の事業ですが、ほぼ全県的 に既に設置している、あるいは平成16年の早い時期の4月ないしは5月に設置予定であ るといった、大変積極的な設置状況になっています。  3頁は、総合支援事業といいまして、医療安全支援センターで相談を受ける方々に対 する教育というか研修を積極的に組んでおり、このような形で何回もやって、さまざま な研修を受けていただいています。2は、ホームページでこのような情報を提供してい ます。ガイドブックを作り、検討会議をしています。それから書籍を各支援センターに 提供しています。 ○森座長  以上3点、事務局から説明がありましたが、何かご質問なりご意見はありませんでし ょうか。それでは、これで参考資料のご説明を終わります。何かこれ以上のご意見、ご 質問はございませんでしょうか。 ○長谷川委員  意見ではなく、ご報告です。前回の会議の直後にWHOの医療安全に関する会議があ ることをお知らせしましたが、結果をご報告しておきます。約2年ぐらい前から執行理 事会で医療安全の課題を全世界的に取り組もうということが、イギリスの国立医療病院 局長から提案され、活動が進行してまいりました。昨年11月11日にロンドンで会議が開 かれ、医療安全のための国際連盟のようなものを作ろうという提案がありました。  内容は、各国の医療政策について、あるいは具体的な予防対策についてなどです。具 体的には医療事故の定義を全世界的に統一しようという活動を、いくつかの分科会を設 けてやろうということが提案されています。日本としてもそれに参加して活動していく ことは、お互いにいいのかと感じながら帰ってまいりました。 ○森座長  以上のご報告については、特にご質問はありませんね。 ○事務局  次回の日程ですが、委員の皆様の日程を確認の上、後日ご連絡いたしますので、よろ しくお願いいたします。 ○森座長  それでは、定刻になりましたので、本日は終わりにさせていただきます。長時間、ど うもありがとうございました。                     (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                        電話 03-5253-1111 (内線2579)