04/03/04 薬事・食品衛生審議会医療材料部会 平成16年3月4日議事録           薬事・食品衛生審議会 医療材料部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年3月4日(木) 15:15〜   全社協・灘尾ホール 2.出席委員(11名)五十音順   小  田   豊、 川 田 志 朗、 勝 呂   徹、 武 谷 雄 二、   田 野 保 雄、◎土 屋 利 江、 新 田 澄 郎、○長谷川 紘 司、   松 田 武 久、 松 村 英 雄、 山 口 照 英 (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人1名   欠席委員(5名)  北 畠   顕、 北 村 惣一郎、 倉  田   毅、 櫻 井 秀 也、   橋 本 信 夫、 橋 本 久 邦 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、   北 條 泰 輔(医療機器審査管理官)、    豊  島   聰(医薬品医療機器審査センター長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。           ── これより医療材料部会 ── ○事務局 それでは次に医療材料部会に入らせていただきます。土屋部会長、以後の進 行をよろしくお願いいたします。 ○土屋部会長 では審議に入ります前に資料の確認と、資料作成に関与された委員の報 告を行ってください。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日は資料6があらかじめお送 りさせていただいた資料でございまして、「医療用具Cypherステントの生物由来製品又 は特定生物由来製品の指定の要否、輸入承認の可否及び再審査期間の指定について」で ございます。それから資料7は医療材料部会報告品目、資料8は再審査の結果について でございます。  次に、本日の委員の中には審議品目の資料作成に関与された委員はいないことを御報 告させていただきます。以上です。 ○土屋部会長 では本日は、審議事項としまして新医療用具の承認の可否及び再審査期 間の指定1件、報告事項としまして医療用具の承認7件です。  それでは審議に入りたいと思います。本日の部会にはCypherステントの専門協議に参 加していただきました、国立循環器病センター緊急部長の野々木先生に参考人として参 加していただいております。まず議題1について、審査センターから審査報告書に基づ く審査概要の説明をお願いします。 ── スライドによる説明 ── ○事務局 審査センターより御説明申し上げます。お手元にお配りしたスライドのハン ドアウト、及び資料6を御覧ください。本品の審査においては医薬品医療機器審査セン ター審査第四部での審査に当たり、今井委員、澤田委員 佐藤委員、多久和委員、高久 田委員、土屋委員、永井委員、中谷委員、野々木委員、山口委員、由谷委員の御意見を 頂きました。  本申請品目の外観写真をお示しいたします。本日は見本としましてCypherステント と、その土台ステントとなるBXステントを御用意いたしましたので御覧ください。  本品は経皮的冠動脈ステント留置術を実施するに際し、血管内腔確保及び再狭窄抑制 を目的に、病変部に挿入留置して使用するステントセットです。外観上は既存のBXス テントと同じで肉眼では区別がつかないのですが、Cypherステントにはステント表面に 免疫抑制剤であるシロリムスがコーティングされております。  本ステントのコーティングについて、ステントを輪切りにした断面図でお示しします。 土台ステントであるBXステントを構成しております316Lステンレスの上に、下地と して□□□、□□□□□、その上にベースコートとしてシロリムス、ポリ(ブチルメタク リレート)(以下PBMA)、ポリエチレンビニルアセテート(以下PEVA)を混和した溶 液が噴霧され、更にトップコートとしてPBMAがコーティングされております。この ような三層コートにすることにより、溶出量がコントロールされております。  ステント留置とそれに伴い生じるステント内再狭窄について御説明いたします。動脈 硬化等により狭くなった冠動脈は、このまま放置すると心筋梗塞等の重篤な心疾患を引 き起こすことがありますので、狭窄部を開存することが必要となります。そのためには、 現在はバルーンに乗せたステントを病変部で展開し血管を開存させます。しかし生体で は異物であるステントを留置すると炎症が起こり、その後に内膜の増殖が生じ、再び血 管が狭窄してしまいます。これが再狭窄です。本ステントはコーティングしたシロリム スが留置部において内膜等に作用し、新生内膜の増殖を抑制することにより、ステント 内再狭窄を抑制することを目的として開発されました。  シロリムスの作用機序をお示しします。ステント留置により留置部位において血管損 傷が起こり炎症が惹起されると、免疫担当細胞などからグロースファクターやサイトカ インが分泌され、平滑筋細胞の増殖が促されます。シロリムスはT細胞等の免疫担当細 胞の増殖を抑制し炎症を抑えるほか、細胞周期に作用することにより直接的に平滑筋細 胞の増殖を抑制し、結果的に新生内膜増殖を抑制します。  本品は2003年12月現在、米国、EUを含め世界68か国において承認されております。 米国では昨年4月に承認され、8か月で約40万本が販売されております。海外において こちらにお示ししますような不具合が報告されておりますが、不具合の種類については 既存のステントにおいても発生するものであり、未知の不具合は報告されておりません。  次に有害事象についてまとめます。発生頻度も含め、これらの有害事象はいずれも既 知のものでした。  コーティングにかかわる物理的化学的試験として、こちらにお示しする試験が行われ ました。これらの物理的化学的試験の成績は妥当なものとして、審査センターは了承し ました。ステント及びデリバリーシステムにかかわる物理的化学的試験として、米国F DAのガイダンスに基づきこちらに示す試験が行われました。審査センターはこれらの 成績を妥当なものとして了承いたしました。  本品には御覧のとおりの規格試験が設定されており、すべての試験に適合することを 確認し了承しております。  本品の安定性はシロリムスコーティングを中心に検討されました。室温で行われた長 期保存試験の結果、保存期間3か月においてすべての実測値が規格値を満たしておりま した。また、加速試験では経時劣化が顕著であったことから、本品の有効期間は3か月、 室温保存とすることが妥当であると審査センターは判断いたしました。しかし医療現場 での使用現状を考慮すると有効期間の延長が望ましいことから、「有効期間を延長する ための対策を至急講じること」を承認条件として課すことといたしました。  コーティングポリマーに関する生物学的及び化学的安全性について、このスライドに お示しする項目について試験され、いずれの試験においても陰性の成績を示しました。  シロリムスの毒性試験としては、こちらにお示しするようにWyeth Pharmaceuticals 社がシロリムスの承認申請に当たってFDAに提出した資料のうち、該当部分が提出さ れました。シロリムスにおいてもほかの免疫抑制剤と同様の毒性を示しましたが、Cypher ステント留置後の最高血中濃度が医薬品としてのシロリムスのトラフ値を下回ったこ と、Cypherステントから溶出するシロリムスの総量が極めて少ないことから、シロリム スによる毒性は許容できるものと判断しました。  本品の性能試験としまして、こちらにお示しするシロリムス用量に関する試験、組織 内放出に関する試験、局所濃度に関する試験、ステントの長期有効性、安全性に関する 前臨床動物試験が行われ、その成績が提出されました。シロリムス用量に関して明確な 用量相関が認められなかったことについて申請者に説明を求めたところ、実際に本ステ ントにコーティングされている量に相当する180μg/ステントにおいては、新生内膜増 殖の抑制作用が確認され、□□□□□μg/ステントまでの用量においては毒性が認めら れなかったことから、180μg/ステントを標準臨床用量とした申請者の説明を審査センタ ーは了承いたしました。  長期有効性・安全性を担保する目的で、ブタを用いた180日冠動脈留置試験が実施さ れました。180日留置後の成績において、新生内膜増殖の抑制効果が認められず、炎症 の遷延化が認められたことから、本ステントの長期有効性、安全性が懸念されました。 しかし、臨床試験において長期有効性、安全性を疑わせる症例が認められなかったこと に加え、臨床試験においてヒトにおける有効性が認められておりますことから、審査セ ンターとしてはリスク・ベネフィットを踏まえ承認しても差し支えないのではないかと 考えております。しかし、長期予後を慎重に観察する必要がありますので、現在最も長 くフォローアップされているこれらの臨床試験のフォローアップ成績を報告させるとと もに、最も大規模な市販後臨床試験である米国の市販後臨床試験の追跡調査の解析結果 を報告させることを承認条件とし、長期予後の情報をいち早く収集できるようにしまし た。さらに、日本人の長期予後のデータを保管することも重要ですので、最長5年間の 追跡調査を含む2,000例の市販後調査をすることを承認条件としました。  本ステントの臨床試験は目的を変えて数多く行われております。まず、初めてヒトに 使用したファーストインマン試験、小規模の比較臨床試験であるRAVEL試験が行われま した。それらの試験成績を踏まえ、大規模臨床試験であるSIRIUS試験及び二つの薬物動 態試験が行われました。なお、スライドには添付資料として提出されたものを黄色でお 示ししました。  本品の臨床試験としては、米国の53施設で行われたSIRIUS試験の成績が提出されま した。本試験の詳細については、こちらにお示ししたとおりです。主要評価項目として、 手技後9か月以内の標的血管不全(以下TVF)、有効性評価項目、安全性評価項目とし ては、こちらにお示しした項目について行われました。  有効性評価項目の試験成績の一覧をお示しいたします。主要評価項目である手技後9 か月以内のTVF、有効性評価項目である手技8か月後のバイナリー再狭窄率について は、本ステントを使用した群において、土台ステントであるBXステントを用いた対照 群と比して有意に優れた成績を示しました。  安全性評価項目に関する試験成績を一覧でお示しいたします。手技後9か月以内のM ACE、TLRは、Cypherステント群において対照群よりも優れた成績を示しました。  次に薬物動態試験の詳細を示します。二つの薬物動態試験はこちらにお示しする評価 方法によって行いました。各設定時間に採血し、LC/MS/MSにより測定し、このスライド にお示しする薬物動態パラメータを計算いたしました。結果についてはお示しいたしま せんが、国内薬物動態試験で算出された最高血中濃度2ng/mLがシロリムスを免疫抑制 剤として反復経口投与したときの全血中シロリムスのトラフ濃度平均値である8.6ng/mL よりも低値を示していることから、本ステント留置によってシロリムスによる全身性薬 理作用が発現する可能性は低いことが予想されました。  本ステントの適応血管径、病変長とステントサイズについて、SIRIUS試験の成績から 考察しました。特にSIRIUS試験では18mmまでのステントしか臨床試験で使用しており ませんので、18mm長を超える長さのステントの有効性、安全性をどのように担保するか 説明を求めました。その回答で、ステント1本群と2本以上使用群で比較したところ、 同等以上の成績が2本以上群で得られたこと、病変長別で解析した場合でも18mmを超え る長さのステントが使用される病変長において、有効性、安全性が確認できたこと、ほ かの臨床試験において用いた23、28、33mm長のステントの試験成績から有効性、安全性 が確認できたことから、審査センターは今回臨床試験で使用していない18mmを超える長 さのステントに関しても承認して差し支えないと判断いたしました。  次に併用薬剤の違いについて検討するよう求めました。こちらにお示しする解析結果 から、クロピドグレル、IIbIIIa拮抗薬が使用できない我が国においても、本ステント を臨床応用することは可能であると判断いたしました。  次に抗血小板療法についてまとめました。シロリムスの作用機序から内皮化の遅れが 懸念され、その結果血栓症が起こることが危惧されます。現在までに集計した米国での 市販後の状況からは、血栓症の発生率は金属ステントと比べて同等以下であると報告さ れております。しかし更なる安全性を確保するため、亜急性血栓症、遅発性血栓症の報 告義務を課し、慎重に追跡することといたしました。また、血栓症の発症と密接に関連 する抗血小板薬の使用方法については、チクロピジンの3か月投与を基本的に推奨する ことといたしました。  審査センターでは提出された申請内容について以上のとおり審査した結果、「性能、 使用目的、効能又は効果」欄の使用目的をスライドにお示ししたとおりとし、承認して 差し支えないと判断いたしました。また、再審査に関しては3年間の調査を実施するこ とが必要であると考えております。さらに、生物由来製品又は特定生物由来製品につい ては非該当と判断いたしました。承認条件はこちらにお示ししたとおりでございます。  本案件に関して北畠委員よりコメントを頂いておりますので、御紹介させていただき ます。国立医薬品食品衛生研究所の審査結果にあるように、1.本製品は生物由来製品又 は特定生物由来製品に該当しない、2.輸入を早急に承認する、3.再審査期間は3年と することが妥当と考える。Cypherに代表されるドラッグエルーティングステントは冠動 脈形成術の治療成績向上、再狭窄率の低下に大きく貢献することが期待され、本邦にお いても早急に臨床応用を開始することが必要と考える。ただし、現時点で幾つかの不明 な事項もあることから、以下のような注意が必要であると頂きました。その内容としま しては、抗血小板薬、特にチクロピジンの使用期間についてでございます。内容をちょ っと御説明させていただきますと、ラパマイシンの血管内皮細胞に対する細胞増殖抑制 効果については、反応性に種差があることが明らかである。ヒト臨床使用例においては、 Cypherステントの表面に内皮が被覆している様子を植え込み後6か月にて確認したとす る報告があるのみであるということから、本製品が認可された後にヒト臨床例でのステ ント部再内皮化に関する知見が集積するまでの間、チクロピジンの使用期間としては3 〜6か月を推奨することが望ましいと考えるという御意見を頂いております。  本件について御指摘のあったチクロピジンの投与期間に関して、事前に電話で北畠委 員と御相談させていただきました。米国でのCypherステントによる血栓症の98%が3 か月以内に生じていること。添付文書の「使用上の注意」欄に「ただし、患者の状態に 応じて適宜延長又は短縮すること」と記載している旨を御連絡させていただきましたと ころ、チクロピジンの投与期間に関する添付文書の記載については、特に変更する必要 はないということで御了解いただいております。以上でございます。御審議のほどよろ しくお願いいたします。 ○土屋部会長 どうもありがとうございました。それでは野々木先生、ただいまの審査 センターの報告に更に御追加、コメント等ございましたらお願いいたします。 ○野々木専門委員 専門委員として参加させていただきました国立循環器病センターの 野々木と申します。冠動脈疾患治療の現状を説明させていただいた上で、このCypherス テントの意義についてコメントさせていただきたいと思います。  この経皮的冠動脈形成術、以下PTCAと略しますが、これは約30年の歴史を持ち、 今や冠動脈バイパス術と同等の手技として確立された方法ではあります。しかし、再狭 窄が一番大きな問題でありまして、バルーンを使ったPTCAの再狭窄率が40〜50%と 高く、ステントの出現によってこの再狭窄率が半分になりましたが、なお20〜30%の再 狭窄が生じるのが現状であります。特に大きな問題は、ステント後の再狭窄というのは ステントの中すべてが狭窄になるという、いわゆるびまん性再狭窄が多く、他の方法で 治療することが非常に困難なことが多いわけであります。  その対策として開発されたものが局所に高濃度の薬物を送達させるという治療法で、 Cypherステントはその一つであります。呈示されましたように、再狭窄率が従来のステ ントに比べるとほぼ半減し10%以下になっています。もう一つの特徴はSIRIUS試験で 報告され、再狭窄が生じたとしても非常に限局した再狭窄で、別の治療法で開大するに しても治療が非常に容易になるというメリットもあります。以上のような特性から、臨 床の現場ではこのステントの認可を心待ちにしているところであります。  もう一つの問題点は、動物実験からのデータとヒトのデータが随分乖離していること が懸念されるところであります。今御提示があったように、米国あるいはヨーロッパか らのデータというのはエンドポイントが9か月までだったのですが、今最長5年までレ ポートすることが義務化されております。多分一番長い症例で3年ぐらいのデータが出 ていると思うのですが、今のところ不具合が生じておりませんので安全性はかなり高い とは思うのですが、動物実験との乖離がありますので、やはり今審査センターから提示 があったとおり、市販後の確実な調査が必須になるのではないかと思います。したがっ て、今のところ安全性に関しては臨床的には大きな問題がないということだろうと思い ます。以上コメントをさせていただきました。 ○土屋部会長 どうもありがとうございました。本品は初めての薬剤リリースタイプの ステントでございまして、ブタの実験では炎症反応が見られておりますが、ブタの場合 は正常な血管での試験が行われております。ヒトの場合は病気の患者さんに使われてお りまして、また部位も違うと。それから観察期間がブタの場合には6か月ですが、ヒト の場合には9か月までの時点でございます。薬剤も非常に局所的に入れますので、全身 に経口的に入れる場合、あるいは注射で入れる場合と違いまして、副作用も少ないとい うすばらしいものでございます。それでは皆様方の御意見、コメント等をお願いいたし ます。どうぞ。 ○川田委員 私も元心臓血管外科でこの方面のことをして、野々木専門委員からいろい ろ御説明のあったとおりですが、この方面の治療ではもちろんPTCA、あるいはステ ント治療というものがあるわけですが、約半数、あるいは厳密に言うと恐らく三分の一 でしょうか、再狭窄があるということで、本来こういう治療というのは必ずしも許され なかったはずなのです。しかし事の重大さにかんがみて、恐らくサルベージができる、 再狭窄例に再度トライできるということで許された治療として行われてきたのだと思い ます。我々もともと外科医から見ると、よくぞこういう治療が世界的にできてきた、最 初のスタートラインがよくぞやったなと思うのですが、今はもう常識的にこの治療法が 普及してきました。しかし残された三分の一の再狭窄はどうしてくれるかということな ので、そういう意味ではこういう新しい薬剤コーティングのものが長く待たれていたわ けです。  今の専門委員の御説明と重複するかと思うのですけれども、やはり何となく心配なの はいかに局所治療といっても、こういういわゆる抗免疫抑制剤、私も腎臓移植などの患 者さんをたくさん見てきたのですが、やはり長期にわたればがん原性の要素も持ってい る、移植患者さんは明らかにがんの発生率が高いわけです。もちろん量は少ないとはい うものの、そういうものがあると。それから、例えばいろいろな抗生物質とかそういう ものを投与するときに、全身投与と局所投与ではむしろ局所投与の方が抵抗性を高める ということで、最初我々外科医は大量を使うのが嫌で局所を使っていたころの方がむし ろ逆に抵抗性を得る、抵抗力を付けてしまうということで、現在では余り局所使用とい うのはしないわけです。そのようなことを思い出して、今の冠動脈の局所にそういう特 殊な薬剤を使うことに多少の危惧を抱いたのですが、これは動物なりあるいは臨床治験 である期間されているので、このこともある程度解決されているものと思います。  最後に、先ほどアメリカでの500例を対象とした大掛かりな治験がありましたし、ま た8か月間で40万本も出荷されたと。すなわち皆さんもこれを待っていたわけで、そう するとこのものが一般に使用され出すと従来のステントはどうなるのですか。市場の混 乱の懸念。  それともう一つは、何でもそうですけれども、これは値段が高価なのかどうか私は知 りませんが、先ほど言った再狭窄例だけに使うのか、最初からどんな例でも…。要する にPTCA、ステントの適用のある例は、最初からこの新しいCypherが許されるのか。 そこら辺をある程度決めておかないと、かなり市場の混乱を来すのではないかという気 がいたしました。ちょっと途中までで気が付いたことを幾つか述べました。 ○土屋部会長 どうもありがとうございました。これについて審査センター等コメント ありますでしょうか。 ○事務局 最後にこれはどういう例に使われるかという御指摘があったかと思います が、臨床試験では新規病変のみでやっておりますので、基本的には通常のPTCA、ス テント留置術と同じく、まだステントを入れていないところに使うということを原則と して、そういう使用方法で最初は承認する予定でいます。それからいわゆるベールアウ トと言われる、バルーンで1回開いた後にそこで乖離が生じて急性閉塞が起こるような 場合については承認を与えておりませんので、そちらには使わないと。あくまで狭心症 の場合の待機的な症例に使うという使用方法に限って承認する予定でおります。 ○土屋部会長 野々木先生、臨床の御立場からコメント等をお願いいたします。 ○野々木専門委員 では今の御質問にコメントさせていただきます。現状でもバルーン 使用のみで十分開大できた例では、ステントは使用していません。ですから、このCypher ステントが認可されてもやはり同じようなことになると思います。通常のバルーンで十 分開大ができた症例はCypherステントを使用する必要がないことになると思います。  それから、従来のステントでも血管径が3.5mm以上で、狭窄の長さが15mm未満という ような非常に局所的な狭窄では、再狭窄率が10%前後と低率です。ということは、価格 差によるかもしれませんが、恐らく従来のステントとこのCypherステントを病変により 使い分けることになると思います。従来のステントを入れても再狭窄が高い病態は分か っておりますので、そのような例にはCypherステントを適用することになると思いま す。 ○土屋部会長 どうもありがとうございました。川田先生、よろしいでしょうか。100 %はこれにはならないというお話のようでございますが、それだけ有効性があるという ことで、米国では非常に大きな市場を占めている状況で、恐らく日本も似たような状況 になると思います。先生方、そのほかコメント等ございませんでしょうか。松田先生、 どうぞ。 ○松田委員 安定性のことですが、経日的にアクティビティがどんどん下がってくると いうことで、この3か月という有効性がどうかという話があるのですけれども、有効期 間を延長する対策を至急講じることというと、審査センターの方は実際にはどういうこ とを要求されているのでしょうか。全く新しいコーティングの仕方をやることなのか、 それから貯蔵の方法を考えるとか、そういうことでございますか。 ○土屋部会長 貯蔵の方法だと思いますけれども、審査センターの方からどうぞ。 ○事務局 今土屋先生もおっしゃったように、これは40℃、75%の湿度で行った加速試 験において非常に早く経時劣化が見られているという例もありますので、この保存の状 態として、例えば温度を下げるとかそういったことをすると、それだけで大分安定性が 伸びているという、簡単に見るとそういうデータが出ているところがあります。それな らば、その貯蔵方法等を工夫することによって、もしかしたら有効期間を延ばせるよう なデータが出せるかもしれないということもあります。まず第一としては温度の辺りを 変えたような条件ということで…、やはり実測のデータがないとなかなか承認すること はできませんので、今申請者に追加のデータを出してくださいと要求しているところで ございます。ただ申請者としましては、それだけではなく、できるならばバリデートさ れたもっと違う方法によってそうしたいということもコメントしていますので、貯蔵方 法だけではなくて違う方法によって…。ただ、やはりコーティングとかそういったとこ ろを変えると有効性等に影響が出てきますので、そういったところには余り触らずに、 できたら貯蔵方法等を変えていくことによって有効期間を延ばしていただくと。そうい ったような指導をさせていただいております。 ○土屋部会長 先生の今の御意見は専門協議でも出てまいりまして、やはり3か月では 余りにも短いと。いろいろなサイズのものをそろえて3か月で使えなくなるのではコス ト面でも非常に大変だということで、せめて1年とか2年ぐらいは安定なものを使用で きるようにした方がいいのではないかということで、追加の意見が審査センターから出 されております。 ○松田委員 規格値以下になるという規格値というのは、実際には定義としてはどのよ うな形…、企業の規格値ということですか。 ○土屋部会長 そのときの企業の基になる規格値のデータについて、コメントをお願い します。 ○事務局 今回は規格値がシロリムスの質量として予定している量の80〜110%と、確 かに非常に広い規格値を設定しております。この設定根拠というのは、これはもちろん 申請者に問い合わせたのですけれども、細かい設定根拠はないのですが、ただその上限 下限においては有効性、安全性の部分は確保されている量ということで、基準があって その量を決めているわけではないということです。お答えにはなっていないかもしれま せんけれども、一応80〜110%という数字でやっております。 ○川田委員 ちょっと今思い出したのですが、私自身は使用経験はないのですけれども、 かつて心臓の植え込み型ペースメーカで植え込み時の閾値が高くなるのを抑制するとい うことで、カテーテル電極の先端にステロイドを染みこませて…。特に初期、植え込ん で1週間ぐらいの間に閾値が上昇する傾向があるということで、それを抑える意味でス テロイドを浸食したものが使われた時期が…、もしかしたら今でもあるかと思いますが、 これはそれと非常に似た製剤なのか。もちろん薬剤は違いますけれども、薬剤をコーテ ィングしたという意味では非常に似ているのではないかという気がしたので、ちょっと そういうものがあるということを…。 ○土屋部会長 抗炎症剤ということでステロイドを使われたと思いますが、こちらは免 疫抑制剤ということで、リンパ球などを抑制してサイトカインを抑えるということで増 殖を抑えていると。病気の患者さんと健康なブタ、健康なブタと言ったらおかしいです が、それと適用されている部位が違うということが一応言葉では「種差」となっており ますけれども、その辺りについて審査センターでも更に追加してデータを求めておりま すので、市販後も慎重な経緯をたどりながら見守っていきたいということです。ブタで のリスクに比べて有効性の方はまあまあということで、今回審査センターでは出しきた ものでございます。 ○松田委員 このブタの実験というのは、動脈硬化モデルなのか普通の正常モデルなの かどうなのですか。ヒトの場合には当然動脈硬化の患者さんに対してのデータになって いると思うのですが、正常の場合にそういう免疫抑制剤と…、これは免疫抑制だけでは なく、先ほどのメカニズムからいうと増殖抑制剤でもあるわけですね。G0〜G1の何 とかというセルサイクルをG1で止めているという、免疫抑制以外に非常に複合的な機 能があると思うのですね。ですから、私の理解ではそういう意味でこの薬剤が注目され ていると思うのです。ただ、そういうときに正常な冠動脈に入れた場合には逆の効果が あるかもしれないとちょっとふっと思ったのですが。 ○土屋部会長 不具合が出やすいという炎症…。 ○松田委員 不具合というか、何か過剰に反応するのかなと思ったり…。 ○土屋部会長 元気が良過ぎてという…。 ○松田委員 どうなのですかね。 ○川田委員 確かに留置する病変部の両端は健常部なわけですね。ですから、松田先生 のおっしゃるのはそこのことですよね。健常な血管壁…。 ○松田委員 どんな論文を読んでみても、このドラッグエルーティングステントという のは次世代ステントという形で、極めて熱いまなざしを注がれていることは確かだと思 います。 ○土屋部会長 従来のステントはサスだけとか、あるいはニチノールですので、やはり 徐々に金属イオンも出てきますし、そういう意味ではやがては狭窄するという心配があ るのですが、ここではドラッグデリバリーがそこで局所に効くということで、確かに有 効な差はあるだろうと考えます。先ほど言われましたように、炎症の話についてはやは り動物とヒトとの反応の違いもあるかもしれませんが、病態での炎症系の細胞の出現率 が違うと、炎症している細胞に特異的に効けば当然そこでの効果は出やすいと。正常の 場合はただ炎症の反応だけは普通に見られているということで、そこの差もあるかもし れませんけれども、そこは更に詳細な解析をしないと明確なことは言えないと、企業も そう言っておりますので。 ○川田委員 松田先生は、恐らくこの世界は次のあれをねらっていて、きっとこんな冠 動脈の増殖うんぬんだけではなくて、次に例えば心筋梗塞の細胞を生かすための再生の それを送り込むとか、今の免疫抑制剤ぐらいにとどまらず、きっと次にいろいろなもの を考えているのだと思うのです。恐らくそれの先駆けというか、そのような意味もある ので、もちろんここでは何もそれを議論する必要はないのですが、恐らくもっともっと 世界を揺るがすぐらいのものになってくるのではないかという気はします。 ○土屋部会長 やはりセルグロースもすべての細胞に効くのではなくて、内皮細胞には 弱くて、平滑筋とかほかの肥厚しやすい細胞を抑えるというような特異的なものが出れ ばもっとすばらしいものが出ると思うのですが、それはやはりなかなか100%…。 ○松田委員 この薬は内皮細胞に比べるとやはり平滑筋の細胞に対する抑制効果が圧倒 的に強いですね。それは実験データではないですけれども、きちんとパブリッシュされ たヒトのデータを見ていたら、そういう培養細胞で内皮細胞に対する増殖抑制効果は極 めて弱いというので非常にラッキーであると。ところが、それでも細胞の動物種によっ て違うというデータが出ていまして、動物種によっては内皮細胞も平滑筋細胞も同等の 抑制効果があると。 ○土屋部会長 ヒトの場合には内皮細胞には弱くて、平滑筋には…。ある意味では理想 的な…。 ○松田委員 ですから、先ほどステントストラットのところで6か月で内皮化が起こっ ているという事実は良かったのではないですかね。 ○土屋部会長 通常は内皮細胞の方が接着性とかデリケートな細胞と言われているので すが、この場合には抗血栓性に効く内皮細胞は張って平滑筋細胞をより抑えるというこ とで効果が出やすいという松田先生のお話ですが…。そのほかにコメント等ございます か。どうぞ。 ○武谷委員 私はこの領域とは縁遠い立場ではありますが、これは実際に用いるドクタ ーの立場で質問するものでございますけれども、添付文書(案)の通し番号で77ページ、 「4.不具合・有害事象」という説明がございます。「1)不具合」では「カテーテルシ ャフトの折れ/穿孔/ねじれ/断裂」等々がございます。「2)有害事象」では、「死亡」、 「心筋梗塞」等々かなり重篤な生死にかかわるような記載がございます。実際こういう ことが起こった場合に、添付文書の操作の注意事項に沿ってやればこういうことは起こ らないのだというような考えでよろしいのか。あるいはいかなる名人がやろうとも技術 的な瑕疵がなくても、このステントにある一定の確率でこういうものは起こるのだとい う解釈なのか。このように記載してあることは分かるのですが、その不具合、有害事象 というのはどのように解釈したらよろしいのでしょうか。 ○土屋部会長 この点について、審査センターの方からお願いします。 ○事務局 不具合については、やはりカテーテルシャフトの折れとか幾つかのものにつ いては無理な使い方をすることによって起こるという、使用上の注意を守りながら使え ば起こらないようなことも含まれているかもしれませんけれども、やはりコーティング のはがれですとか、一部は通常に使った場合にもある程度の確率で起こるものが含まれ ております。特に有害事象については、もともとが心筋梗塞を持った疾患であったりと か重篤な場合もございますので、こちらに書いてある有害事象等については、やはりあ る一定の確率で起こるものと考えております。 ○武谷委員 これが広く使用されるようになりますと必ずやこういう事象が起こるかと 思いますので、それが起こった場合にこのステントにも内在する本質的な有害事象なの か、これが起こったら明らかに技術的な問題があるということになるか重要な問題と思 われます。 ○川田委員 恐らく先ほどの不具合の最後の6項目以外は全部一般のステントに言える 不具合ですよね。ですから、今までこういうものが起こり得るのだということは認めて きたわけです。もちろん頻度はそれぞれ…。私が説明する立場ではないのですが、一応 最後の「発熱」とか「腎不全」とか、多少このコーティングしてある薬剤に基づくもの であろうというのが新しい項目で、それより上の方は全部従来のものを踏襲しているの だと思います。 ○武谷委員 これは従来のものと共通な問題事項、指摘事項かもしれませんが、現実に この種のものがどんどん出てきた場合に必ずやこういう事故が起こるわけです。いった ん起こった場合に、これはこういうものを使う以上は当然ですよと、ステントを使うよ うな状況自体がこういう危険を含んでいたということなのか、これはステントの使い方 で明らかに初歩的なミスがありましたよという事故なのか、本当はある程度分けて説明 していただいた方が混乱は少ないような気がいたします。これにかかわらず、一般にそ のようなことをこれから少し考えていかなければいけないのではないかと、そのように 思うわけでございます。 ○土屋部会長 従来不具合報告はたくさん書き過ぎるということを幾つかお聞きしたこ ともあるのですが、これからは不具合報告は医療機関からも出すことが義務付けられて おりまして、その中身に応じてそれはミスなのか、あるいはやむを得ないのかというこ とが判断されると思うのです。これらについて、厚生労働省の方からコメント等お願い します。 ○医療機器審査管理官 武谷先生の直接的なお答えにはならないのかもしれませんが、 一応申請者のジョンソン・エンド・ジョンソンの方で、この製品を納入した医療機関の 医師に対して使い方などのトレーニングといいましょうか、そういうことはやっていき たいと。場合によっては米国の方でのトレーニングといいましょうか、そういうものを 含めてそういうサポートはしたいということを言っておりました。多分そういう中で、 こういう緊急時の対応なども含んだいろいろな情報が企業の方から伝達されるのではな いかと我々は期待しております。 ○土屋部会長 よろしいでしょうか。お答えが釈然としないかもしれませんが。 ○武谷委員 これ以上のお答えを期待するのも難しいかとは思うのですが、実際こうい う問題がいろいろとどんどん起こってくるので、何とかこの辺を解決していかなければ いけないような気がいたします。これを個々に論ぜよとするのはなかなか難しいところ がございます。 ○土屋部会長 貴重な御意見をありがとうございます。 ○長谷川部会長代理 私も全く基礎知識を持っていなくて、資料を拝見している中で今 の有害事象との関係で、スライドに出てきました臨床試験結果の初期成功率、この被験 群と対照群と実際には違いはないのですが、恐らく有害事象の一部のものは初期成功率 にかかわっていたと思うのです。病変成功、デバイス成功、手技成功、とりわけデバイ ス成功、手技成功をどうやって区分けされて、あるいは病変成功も含めて教えていただ けたら有り難いのですが。 ○土屋部会長 審査センター、よろしいですか。先生、何ページですか。 ○長谷川部会長代理 このスライドの審査報告の12ページ、「臨床試験結果(有効性評 価項目)」です。術後経過している両者群では比較的被験群の方が好ましい成果を得てい るようですけれども、初期成功率についてはコントロール群と被験群は差がないという 形になるのだろうと思いますが、この初期成功率を三つに分けた分け方というのは…。 細かいことで大変恐縮ですが。 ○土屋部会長 よろしいですか。お願いします。 ○事務局 プロトコルの中に定義されておりまして、実は私は今ここにそのプロトコル を持ってきておりませんで、確かなことが言えなくて申し訳ありませんが、段階によっ て違っていまして、一連の手技を段階の部分で区切って、どこまでが成功すれば病変成 功、デバイス成功、手技成功となっているとしか今お答えできる知識を持っておりませ ん。申し訳ありません。 ○長谷川部会長代理 100%の成功率でない部分が現実には出てきたのだろうと思うの ですが、添付文書中の有害事象との関係の中で、これがいわゆる初期成功率にかかわっ た部分の有害事象と、もう少し時間を置いてからの有害事象とは当然差があるのだろう と思いますが、その辺が少し明確になれば…。取り分け手術直後での初期成功率で良く ない結果が出たというものが、どの辺なのかということが分かれば恐らく…。専門家の 方々がお使いになるのですから意味がないのかとも思いますけれども、私ども素人が拝 見しましてちょっとその辺が…。せっかくここで初期成功率というものが出ているので、 不成功であった事例がどこの有害事象と結び付くのかということが分かれば有り難いな と感じた次第です。 ○土屋部会長 野々木先生の御知識からこの辺りに御意見を頂ければ…。 ○野々木専門委員 コメントさせていただきます。狭窄を開大して成功するというのが 病変成功になりますけれども、そこから出ている分枝が閉塞したとなると、それは病変 成功ですが、分枝閉塞で心筋梗塞を起こすと手技成功にならないのです。また、狭窄の 部分の開大はできたけれども、小さな動脈硬化の破片あるいは血栓が末梢に塞栓として 流れ、末梢の部分での心筋梗塞を起こすと、病変は成功ですけれども、手技全体として は合併症を起こしたということでやはり手技成功にはなりません。手技成功が病変成功 より若干低いのはそういう影響だと解釈できると思います。 ○土屋部会長 デバイス成功というのは…。 ○野々木専門委員 プロトコルを確認する必要がありますが、デバイス成功というのは Cypherステント単独で開大できたということと思います。もし開大できない場合に他の 方法を加えて最終的には病変成功になったということがあり得るため、区別していると 考えられます。これはプロトコルを確認する必要があると思います。 ○土屋部会長 分かりました。どうもありがとうございました。 ○事務局 先ほどお答えできなかったのですが、こちらの資料6の473ページの下の方 にその説明が出ておりまして、今の野々木先生からの御説明でほとんど合っていると思 うのですが、デバイスの成功は「指定の用具のみの使用による」となっておりますし、 病変の成功では「何らかの経皮的方法による」という説明が付いておりますので、そち らに書かれているとおりでございます。 ○土屋部会長 そうしますと、初期成功率は対照群と被験群で若干被験群の方が低い傾 向が見られておりますので、その初期で成功しなかったものが後でどのようになったの か、メーカーに一度聞いておいていただいたらと思うのですが。 ○事務局 そちらの方ですが、不具合が生じた症例についてはこちらの資料にすべて挙 げておりまして、その中に含まれておりますので、そちらの方を見れば出てくるという ことでございます。 ○土屋部会長 ですから、その中のどれに相当するかということですね。 ○事務局 了解いたしました。 ○土屋部会長 それがフィードバックできて、もっと成功が上がればいいわけですから。 ○事務局 分かりました。 ○土屋部会長 どうもありがとうございました。先生、よろしくお願いします。 ○新田委員 私も外科医でございますが、先ほど川田先生が御指摘のステント療法とい うのは本来体内に異物を入れる療法でございますから、それが本来の意味で妥当な治療 法なのかという…。先ほど御指摘のようにこの問題はまだまだ深いものがあって、幾ら ディスカッションしても恐らく現時点では結論は出ないだろうと思うのです。片や今回 のステントについて見てまいりますと、再狭窄率の差が明らかでございますし、それか らなぜ再狭窄率に差が出てくるかというメカニズムはいまいち分からないような現状で ございます。実際に今ディスカッションされたように手技的な問題や何かはほとんど差 がないということになりますと、これはどうしても現場の臨床家、もっと言えば恐らく は患者さん自身がその辺の対象になっているのだろうと考えざるを得ないところがござ います。  ところで、先ほど来添付文書について御意見がございましたが、私も一点ちょっと気 になっているところがございます。75ページの添付文書(案)でございますが、その左上 の5)のところに「肺移植後にシロリムスを経口投与された患者で、まれに気管支吻合部 が裂開することが報告されている」と文献まで引いてあるように書いてございます。私 は呼吸器外科医でございますので、これは非常に違和感を覚えたのですが、なぜここで 肺移植の話とか…、気管支吻合というのは非常に限定された状態でございまして、この ステント療法とは全く別の話ではないかと思いますし、仮にCABGをこの患者さんに やるにいたしましても、その場合の吻合部というのは気管支吻合とは次元の違う話でご ざいます。したがって、この最初の文章は要らないのではないかと。もし冠動脈が吻合 するようなことがあれば必ずしも免疫抑制剤がそれにいい影響はないかもしれないと、 それほどの注意事項を記載するのであればそれは構わないと思いますが、ここで肺移植 を持ち出す必要は全くないと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○土屋部会長 審査センター、お願いします。 ○事務局 こちらに肺移植に関して記載されているのは、こういった患者さんで起こっ た例があるというそれだけのことでございまして、これは米国の添付文書に合わせてこ ういう記載になっているという現状でございます。ですので、先生御指摘のようにこれ に関してそういう事実を出すことが不適切であるということでございましたら、前段に 関しては削除しまして、「本品留置直後の」という後節の部分だけを残すといった方向 で対応させていただければと思います。 ○川田委員 むしろこれはいい意味で出しているのではないのですか。遠回しに、再狭 窄が起こらない方に何かある程度の期待を込めて書いている文章とは違うのですか。 ○新田委員 そこまでソフィスティケーティッドな添付文書を出されたのでは、ユーザ ーの方がまいってしまうのではないでしょうか。 ○川田委員 それぐらいのデータしかこの国に関してはないのかもしれません。出せと 言われて出したわけですから。 ○新田委員 多分どなたかが御指摘になってわざわざ入れたのではないかとは思うので すが、肺移植に関心を持つ人間からしたら、なぜこんなところでこんなことを言う…。 ○川田委員 これは先生方の仕事を暴いているみたいですが、これは実際本当にあるの ですか。 ○新田委員 そもそも気管支吻合部というのは、普通の手術でつないでもしばしば開い てしまうのです。まして移植をした場合には、当初はそれがつながらないためだけに何 十年も苦労した時代があったわけです。ですから、そういった非常に特異な分野の話を ここへ持ち込む必要はないのではないかと。 ○川田委員 ついでに言うと、この文章は「冠動脈吻合部」となっているのですよね。 そうすると、これは冠動脈のバイパス手術をしたときに、もしこのものを一緒に使うと シロリムスと吻合がうまくいかない、裂開するということを注意しているのですかね。 ○新田委員 多分こういったものを入れた患者さんが手術を受けたときには…。 ○川田委員 ですからちょっと唐突というか、そういう意味では前後の流れからいきま すとおかしいかもしれませんね。私はこのものを支持する意味でここに入れたと思って いたのですが、どうもちょっと文章がちぐはぐですね。急に冠動脈吻合部…、野々木先 生どうですかね。ステント治療をやったときに「冠動脈吻合部」という表現が何か出て きますか。 ○野々木専門委員 これはCypherステントを入れた後に緊急でバイパスするというこ とがあったときに、そのバイパス吻合部に影響して不具合が起こる可能性があるので注 意しなさいというふうにとらえられると思います。 ○事務局 そうしますと、この辺りについてはまた申請者とも前後関係の詳細も踏まえ て確認させていただきます。 ○土屋部会長 表現を少し変えるとかで分かりやすくしていただいて。そのほかに御意 見は…、皆様にたくさん御意見を頂きましたので、それでは再狭窄率が低く有効性があ るということで、市販後も慎重に経過をたどりながら使用するということもございます ので、一応御承認ということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。 それでは承認可ということで、薬事分科会に報告することにいたします。  それでは今後の報告事項について、お願いいたします。 ○事務局 それでは報告事項について、事務局より御説明させていただきます。資料7 と8が報告事項になってございまして、まず資料7でございますが、こちらのものにつ いては承認申請された改良医療用具のうち、平成15年11月1日〜平成16年1月31日 までの間に承認させていただいた医療材料部会関連品目についてのリストでございま す。この期間に承認した品目はステント、IUD等の7品目でございまして、御覧いた だいたとおりでございます。いずれも専門協議の結果、承認したものでございます。申 し訳ございませんが、個々の品目の説明については省略させていただきますけれども、 御覧いただいた上で何かございましたら、後ほど事務局の方へ御連絡をお願いしたいと 思います。  続きまして資料8でございますが、こちらの方は再審査の結果についての御報告にな ってございます。こちらは総数42件、内訳はソフトコンタクトレンズ12件、ハードコ ンタクトレンズ4件、眼内レンズ4件などでございますが、専門協議を行った上ですべ て承認事項の一部変更の必要がないと判断されたものでございます。こちらのものにつ いても個別品目の説明については省略させていただきますが、何かございましたら、後 ほど事務局の方へ御連絡いただければと思っております。以上でございます。 ○土屋部会長 それでは審議事項、報告事項は以上のとおりでございまして、事務局か ら更に連絡事項はございますでしょうか。 ○事務局 先般医療材料部会の中で審議されましたパーフルオロンでございますが、そ ちらの審査報告書の中に、この医療材料部会ではなくて、医療機器・体外診断薬部会で の審議という話になっておりまして、間違いがございましたので訂正させていただきた いと思います。御了解いただきたいと思っております。 ○土屋部会長 それでは本日はどうも長い間ありがとうございました。次回もよろしく お願いいたします。 ( 了 )   連絡先: 医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 束野(内線2912) - 10 -