| コラム: | 村の保健師を中心とした取組が5年ほどの期間で住民を巻き込んだ活動になった事例〜住民活動グループ「わのわ会」誕生まで(高知県高岡郡日高村) |
当事者からの積極的なメッセージを発信したこと、精神疾患を当たり前の問題としたこと、住民活動を活用したこと、有効な方法で精神障害者が「がんばっている」ことを住民に知らせたこと、担当者を支えながら継続した活動を行ったことが主な要因となって、はじめは保健師を中心とした小さな活動が5年で住民全体の精神疾患への理解、行動の変化につながっていった。
平成10年度、知的・身体・精神障害者のデイケア「ヤングハートフルもへい茂平」(以下、茂平)を始める。当初の通所者は8名(知的2名・身体1名・精神6名)。絵画・レザークラフト・バスレク等の活動をする一方、定期的に集まる中でメンバーが中心となって「自分がしたいこと」を見つけるための話し合いを続けていった。
平成11年度、「村民のための心の健康講座」を企画。3カ年計画で、ほとんど精神疾患に関する知識を持たない村民に対して理解を深めることと、職員が専門性を習得することを目的とした。1年目は精神科医と看護師による講演会「心の健康講座」、2年目は精神科医による「心の相談日」、3年目は精神科医と看護師によるケースカンファレンスを企画実施した。心の健康講座には予想以上の参加者が集まり、関心の高さがうかがえた。精神疾患は誰でもかかりうることが、受講者に理解された。また、普段の生活ではほとんど会うことのない精神科医や精神科看護師の「わかりやすい話」を聞くという経験も、村民にとっては精神疾患を身近なものにした。
平成12年度、精神疾患や薬についての学習会を企画。前年度の心の健康講座を受講した当事者が「自分の病気のことを知りたい」と企画されたものであった。服薬学習会「薬(やく)にたつ会」の講師を地元調剤薬局の薬剤師に依頼することで、薬剤師が精神疾患への理解を深めることができたと同時に、当事者と薬剤師との交流が深まり、薬局で当事者と薬剤師が普段から気軽に会話を交わすようになった。「薬(やく)にたつ会」で学んだ知識を村民に発表したいというメンバーの強い希望で「第1回茂平ピック」を開催した。そこで、社会復帰施設職員等医療福祉関係者、心の健康講座の受講者、地元新聞記者等に対して、メンバーは病気のことやこれまでの体験を発表した。「茂平ピック」の状況が地元新聞に掲載され、住民の関心が高まった。
平成13年度、新聞記事の影響か、担当者とメンバーがヘルパー養成講座や近隣の村で講演を行う機会が増えていった。また、茂平の活動で保健センターの調理室を使用する際に「精神病の人がいるのだから、包丁の数は必ず確認するように」と言っていた村民が、障害者スポーツ大会で遠征するメンバーの寄付を募ってくれたり、精神障害者に十分な理解がなかった担当課長が「精神障害が理由で働く場がないことは理不尽だ」として小規模作業所の開設を提案したりと当事者周囲の変化が見られるようになった。これらの人たちが態度を変えた理由は、「障害者のがんばっている姿を見て、応援したくなった」ということであった。住民の間でも、心の健康講座のチラシや茂平ピックの新聞記事を見て、精神疾患や精神障害者に対する「特別な意識」は徐々に薄れていった。「第2回茂平ピック」では、住民活動のリーダー的な村民が司会を務め、後にその者は職親としてメンバーを雇用し、就労支援を行っている。彼は「自分の村にこんな人たち(精神障害者)がいることを知らなかった。知っていたら、もっと前にできることがあったかもしれない。」と言っている。
平成14年度、同じ保健センターで活動していた老人と母親のグループと茂平が合流。母親グループとは、ペアを組んでテニスの試合に出るほどに交流が深まった。その頃、心の相談日で保健センターと連携をとるようになった地元小学校教員の要請で、総合学習で「精神障害者の理解」をテーマとした授業と生徒のデイケア見学の企画に協力した。「第3回茂平ピック」では、前年度司会を務めた村民がメンバーをモデルに演劇を作成し上演した。また、同時に行われた100人シンポジウムでも就労をテーマに、多くの村民が活発な意見を出し合った。地元新聞に毎年「茂平ピック」についての記事が掲載されていることもあり、村民の参加も年々増えている。
平成15年度、小規模作業所「ライフファクトリー茂平」が開所した。それを支える住民グループとして「わのわ会」が発足し、経費削減のため村民が備品を持ち寄り、作れるものは手作りした。作業所に小学生が遊びに行ったり、小学校に招かれ保健センターの担当者とメンバーが授業参観に行ったりするなど、地元小学校と茂平との交流は深まっている。このように、当事者や担当者以外のある村民が精神疾患に関心をもち精神障害者への理解を深めると、その人が別の村民に影響を及ぼし、理解者が徐々に増えるというよい連鎖が起こってきている。平成16年度の「第4回茂平ピック」ではそのことを村民に発信するため、活動の「キーマン」に登場してもらう企画を立てている。
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