04/02/03 「第6回医療安全対策検討会議ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」議事録            第6回ヒヤリ・ハット事例検討作業部会                        日時 平成16年2月3日(火)                           13:30〜                        場所 経済産業省別館944会議室 ○事務局  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意 事項をお守りくださるようお願いいたします。 ○橋本部会長  ただいまから、今年度の第6回「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」を開催させてい ただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中をご出席いただき、ありがとう ございます。本日は19名の委員全員の出席で、作業部会を開催いたします。また、参考 人として、京都大学医学部附属病院から桑原先生、慶應義塾大学病院から浦澤先生に出 席していただいています。  これから議事に入らせていただきます。まず、資料の確認をお願いします。 ○事務局  資料の確認をさせていただきます。議事次第、委員の座席表、出席者名簿がそれぞれ 1枚ずつあります。これ以降、資料として、資料1−1、資料1−2、資料2−1、資 料2−2、資料3、資料4−1、資料4−2、資料5−1、資料5−2、資料5−3、 資料6−1、資料6−2があります。参考資料として、参考資料1、参考資料2の2つ があります。資料に抜けがありましたら、事務局にお知らせいただきたいと思います。 ○橋本部会長  議事次第ですが、進め方として、これまでとは少し違った形で進めたいと思います。 これまでは、医療安全対策ネットワーク整備事業の中に3つの事業がありますが、それ について1つずつ順番にという形で定例的に行われてきました。今、事例をきちんと見 て、さらにそれと今度のネットワークの分析したものとどうなのか、関連まで行くかど うかわかりませんが、そのような形で少し見てみようということです。  ヒヤリ・ハットに関連した病院での取り組みを発表していただきますが、まず「点滴 に関するヒヤリ・ハット事例の軽減への取り組み」ということで、京都大学医学部附属 病院の桑原先生にお願いします。 ○桑原参考人  当病院でインシデントレポートを集め始めて2、3年経つのですが、今日は点滴のい ろいろな事例の中から、特に自分たち自身で点滴にかかわるヒヤリ・ハット軽減に取り 組んだ一病棟の取り組みをご紹介していきたいと思います。  まず、ヒヤリ・ハットの内容について、少し説明します。この病棟を以降A病棟と称 します。A病棟は、2つの診療科の混合病棟でした。この事例は、昨年度実施された病 棟の診療科再編成によって、新しく加わったC診療科で発生したものです。A病棟で は、輸液ポンプを用いた持続点滴によって、数日間にわたって化学療法が実施されま す。ある時期、看護師が点滴の状況を確認するためにベッドサイドに行くと、化学療法 中の、特に維持液の時間流量が、指示されている流量とは異なる事例が続きました。ま た、その変更については、指示簿に記載されていませんでした。  このA病棟では、以前からインシデントレポートを積極的に提出して、改善に取り組 んでいたところでした。特に平成14年には注射にかかわるインシデントの減少に取り組 んで、平成14年度後半にはかなり減少してきていたのですが、平成15年度に診療科が編 成になったときに、インシデントの数が増えてきたということでした。特にこの事例に よって、「指示の不備」が明確になってきました。  これらの状況を再度、調査・分析したところ、私たちの病院には各部署に看護師、診 療科のリスクマネジャーがいるわけですが、看護師のリスクマネジャーがこの状況を調 査しました。C診療科では、1日の総輸液量から時間注入量を計算して指示はしていま したが、安全性を考慮して、医師が病棟にいる時間帯に抗ガン剤が開始されるように設 定されていました。そのために、輸液の更新には抗ガン剤開始時間を優先して、前の点 滴に多少の残量、例えば10〜20cc程度の残量が生じても、それを廃棄して交換する方針 をとっていました。  指導医は抗ガン剤開始時刻を優先して、10、20の余剰量は無視してもよいと考えてい ましたが、研修医にはその意向が伝わっていなかったために、研修医は抗ガン剤の開始 時間を遵守することと、総輸液量を確実に実施しようとして、輸液ポンプの時間流量を 頻回に変更して微調整を行っていることが判明しました。また、微調整なので、指示簿 を変更するという認識はなく、初めに指示した時間流量を記載したままで、自身が変更 していました。看護師は、指示された時間流量を重視して、計算上、予定時間に多少の 誤差が生じても、輸液が全量投与された時点で次の輸液を追加するという、A病棟従来 からの手順で輸液を開始していました。このように、新診療科が加わる段階で、治療の レジメンは確立していましたが、業務レベルまで詳細にわたった業務マニュアルがなか ったことが判明しました。  そこで、医師と、特に看護師のリスクマネジャーが中心となって、医師のリスクマネ ジャーとともに、ヒヤリ・ハットの事例であっても、きちんとマニュアルを統一してヒ ヤリ・ハットを軽減させようと2人で協議しました。「化学療法の指示記載方法を統一 する」、「化学療法の手順を統一していく」、「業務レベルまで落としたマニュアルを 作成していく」、「医師へのマニュアルの周知・教育の徹底を医師・看護師ともに行う 」ということで進めてまいりました。  例えば指示簿の記載方法については、従来は薬剤名と時間流量を記載するだけだった のを、そのほかにも開始時サイン、実施サインはそこにつながるのですが、新しく薬剤 名、開始時間、時間流量を記載するようになりました。そして、多少の余剰が発生して も更新するという方針は、特に指示に記載されなくてもそういう治療方針でいくという ことで、実施方法をマニュアルに取り入れることとして、ここへの記載は省くことにし ました。  看護師は、C診療科の化学療法について、事前に学習を行っていたのですが、さらに 業務マニュアルに落とすため、再度、理解を深めるために学習会を開催して、医師と共 通認識を持つことにしました。それから、点滴などの指示簿の手順を見直すとともに、 特に化学療法にかかわる指示、手順等の統一を検討いたしました。こういうマニュアル を整備していく中で、これ以外にもお互いの業務を再確認して連携しやすい手順、医師 の出勤してくる時間から、手術、外来に至るまでの時間の調整も行いながら、お互い連 携しやすい手順も検討していきました。このことで、実施時刻を遵守することを前提と した実施方法となりました。  また、医師は、いろいろな指導マニュアルがあるのですが、指示の書き方、連携のと り方、コミュニケーションのとり方も含めたものをマニュアルに織り込んで、指導の徹 底を図ってまいりました。  数的には少ないのですが、この病棟の中では平成14年度、全体の約16%ぐらい、上半 期に指示の不備が約8例ありました。平成14年度下半期には、点滴にかかわるレポート 自身が半減していたのですが、それでも指示の不備にかかわるものは4例ほどありまし た。平成15年度の上半期がC診療科が加わった時点になりますが、指示の不備が6例、 そして取り組みを始めて3例に減少しています。その後、指示の不備に関するレポー ト、あるいはヒヤリ・ハット事例は発生していないという報告を受けています。  当院では、安全管理体制の組織としては、病院長の直結である医療安全管理室を中心 に、医療安全管理の活動を行っています。安全管理室の構成員は、専任医師、専任看護 師長、事務、兼任の職員等で行っていますが、ここではインシデントレポートの中か ら、ジェネラルリスクマネジャーが状況把握・分析を行って、事例の重大性、頻度、他 部署への影響度などを考えて、院内のルールやシステムの変更、部門間の調節を行って います。そして、各部署のリスクマネジャーと連携して、事故防止に努めています。  当院のように1,240床で、職員数も2,000名を超えるような大きな病院になると、リス クマネジメントを隅々まで実施しようと思うと、各部署のリスクマネジャーが安全管理 室と連携してリスクマネジメントを行うことと並行して、非常に些細な事例ではありま したが、今回の報告のように各部署のリスクマネジャーがそれぞれで発生するヒヤリ・ ハット事例を把握して、分析して、職種を超えてより具体的な対策を講じていく、こう いうことの積み重ねが、病院全体の事故防止につながるのではないかと考えています。  この組織図でいくと、今回一病棟の中で議論したのは、看護部の中の看護師のリスク マネジャー(副師長が担当)と診療科(病棟医長が担当)で議論しました。このほか に、化学療法に関しては、レジメンの整備はもちろんどの科でもあるわけですが、いま 薬剤部がかなり業務を拡大して、各診療科で実施される化学療法のプロトコールをきち んと整備しながら、抗ガン剤のミキシングなども薬剤部で実施しています。ただ、マン パワーという点がありますので、いまは3診療科ぐらいですが、徐々に拡大して、安全 に努めているところです。 ○橋本部会長  コード化情報がどうなっているか、これに対応した形で検討したいと思います。武藤 委員からお願いします。 ○武藤委員  コード化情報から、点滴についてお話したいと思います。資料1−2は第1回から第 8回のデータ集計の結果ですが、平成13年8月1日から平成15年6月30日まで、およそ 6万3,000件集まっています。  2頁の図7−1で、これは点滴だけを抜き出していますが、末梢静脈点滴と中心静脈 は、やはり末梢のほうが多いということです。  図7−2ですが、発生月については、5月、6月が少し多くなっています。原因はわ かりませんが、新人のローテーションと関係あるかもしれません。  3頁の図7−4は点滴のヒヤリ・ハットの発生時間帯ですが、午前中の10時〜11時、 午後16時〜17時、深夜帯の0時〜1時と、3つのピークがあるように見えます。  これはあとでまたお話しますが、4頁の図7−6は患者の性別で、男女差があるとい うことで、点滴に関してもやはり男性のほうが優位ということです。  5頁の図7−8は患者の心身状態ですが、睡眠中が多いということです。  6頁の図7−10ですが、ヒヤリ・ハットの当事者の職種は、看護師がいちばん多く 5,400件、次に医師が多くて238件です。  8頁の表7−1、ヒヤリ・ハットの内容としては、いちばん多いのが「投与速度速す ぎ」「無投薬」ということです。  図7−13の発生要因は、「確認」がいちばん大きく、「システム」、「記録等の記載 」となっています。  追加として資料4−2の43頁、図4−12ですが、先ほどの発表にもありましたよう に、医療機械における発生場面・詳細は、「人工呼吸器」と並んで、「輸液・輸注ポン プ」が断トツに多いということです。  44頁の図4−13では、「その他」を除けば、「条件設定間違い」、「設定忘れ」が多 いということになっています。 ○橋本部会長  いまお話しいただいた京都大学附属病院の事例とコード化情報について、どのぐらい 対応するか難しい点はあるかもしれませんが、その辺も絡めて質問をお願いします。 ○佐野委員  京大の資料の4頁の左下の「指示の不備の改善」と、いま武藤委員がお話しになった 資料1−2の2頁、図7−2の「発生月」という所です。まず、京大の資料によると、 平成14年、平成15年、いずれも上半期のほうが多くなってきていること。これと武藤委 員の報告のように、4月から5月、6月にかけて多くなってきているというのは、武藤 委員も先ほど申していたように、新人が入ってきている時期かと思います。特に京大あ たりは人の代わり目になって、どうしてもそこのところは十分なオリエンテーションが 行き届かない部分があって、大学のような所で特に4月、5月に人が異動するときには そういうことが起こり得るのかという感じがします。もしそうだとするなら、この辺り でもう少し強力な新人に対する指導が必要になってくるのかという感じがします。そう でないかもしれませんが、新しい年度にかかるために人が代わる、あるいは人が入って くる、新しい人が来るということに起因しているのかという気がしました。別な要因が あるのかどうか。 ○桑原参考人  レポートを取り始めて1、2年ぐらいなので、もう少し差を見てみないとわからない かもしれませんが、今回、平成15年度の上半期は新人のナースだけではなくて、新しい 診療科が加わったというところが大きなポイントだろうと思います。新しい診療科が加 わって、指導医を含めて、ベテランの医師、ベテランの看護師、研修医も含めて、プロ トコールや治療方針そのものは理解していたのですが、業務レベルまで落とすというと ころで詳細な連携がとれていなかったのが大きな要因だろうと思っています。確かに、 おっしゃるように、今年の下半期が下がってきているという点から見ると、慣れてく る、コミュニケーションのとり方、指示の記載方法など、お互いの注意等で軽減してき ているのかと思います。平成16年度上半期に、そういうことも含めてオリエンテーショ ンしながら、この数がどうなっていくのか、見ていきたいと思います。 ○橋本部会長  大学病院ですから、年間を通して研修医の方がおられて、相対的にその分だけ5月、 6月に危険な状況が出てくる。そこでどうするかという問題だろうと思います。輸液の ことだけではなくて、ちゃんと教えなければならない技術のところは、教育の中に落と していくしかないのかと思います。いま臨床研修のプログラムが、それぞれの臨床研修 病院で最後の追い込みぐらいだと思いますが、出来つつあって、いくつかの所を見ると 実習型のものをかなり入れ始めていて、輸液のことも入っている所があります。1年や ってみて、来年度ぐらいになるのでしょうが、教育の現状を見て、これと比較したいと 思います。 ○原田委員  大変興味深く聞かせていただきました。原因がわかるまでにどのぐらい時間がかかっ て、どういうプロセスで、これが問題だったのだというのがわかったか、教えていただ けますか。 ○桑原参考人  これは、たまたま同じ時期にこの治療があったものですから、あまり長い時間ではな くて、その日、あるいは翌日ぐらいにおかしいと思って、なぜ指示簿を書かないのかと いうところから始まりました。ベッドサイドに行くと、指示簿を確認した流量と違うの で、おかしいと思って誰が変更したのか確かめると、研修医であることは容易にわかり ました。そのことを確認する前に、なぜ指示簿を書かなかったのかというところが、最 初のポイントだったと思います。  そういうことが続きましたので、2日後ぐらいには指導医とリスクマネジャーと話し 合って、その日のうちにわかりました。この3件も長いスパンでなったというよりも、 ある時期一定のときにあったもので、本当に数日間で解決したものです。ただ、マニュ アルに落としたりする作業の段階では、少し時間がかかりました。 ○橋本部会長  この事例を契機に、いくつかマニュアルを作ったり、ルールを作ったりしています。 化学療法は病院全体でやっていないと思いますが、ここだけではないですね。他部署に 広げるためには、どのようにされましたか。 ○桑原参考人  そもそも電子化の中でオーダリングシステムがあるのですが、それがそのまま指示に 使えないといういまの現状があります。指示簿自身はフォーマットが統一されているの ですが、記載方法は各科で若干の違いがあるというのがはっきりしています。そこで、 いま医師のリスクマネジャー全体もそうなのですが、看護師のリスクマネジャーを中心 に、再度、指示の記載方法についての統一を図るためのマニュアルも整備してきていま す。特に今度、臨床研修必修化で、大学病院でも研修医が少なくなってくるし、ローテ ーションも多くなってくるので、その統一をするために、そちらの方向にも向けて行っ ています。ですから今、指示簿の記載方法と記載基準についてまとめているところで す。 ○橋本部会長  そのほかいかがですか。もう1つの事例をお聞きしてから、また話があれば戻したい と思います。  次は「転倒・転落に関する慶應大学病院の取り組み」ということで、浦澤さんからお 話をいただきます。 ○浦澤参考人  慶應義塾大学病院からは、転倒・転落に関する効果のあった方法について、報告した いと思います。  これは看護部の報告書の提出件数の変化ですが、もともと従来の報告書がありました が、リスクマネジメントを強化して、私は平成12年から看護部のリスクマネジメント師 長として専任になりました。その中で、報告を情報ツールとして活用し、それによって どういう問題が起きているか、挙げていただく形をとってやってきたものです。  慶應病院は大学の附属病院で、特定機能病院です。1,072床で、在院日数16.3日、稼働 率91.3%、外来患者数4,376名、教職員数2,375人の病院になります。  この中で緑の部分が転倒・転落の件数になっています。大体、年間400〜450件ぐらい あります。これは平成13年と平成14年の転倒と転落の件数を表したものです。どういう 場所で起きているかというと、病室がいちばん多く、廊下、その他になっています。  年齢から見ると、件数では60代、70代、80代が多いのですが、分母の数がわかりませ んので、発生率ではないです。注目すべきは、20代、30代、40代、50代でも転倒はして いるという事実があります。特に多いのが70代です。  患者影響レベルは、慶應病院の場合は6段階評価を入れています。3以上がアクシデ ントと定義しているので、治療が必要になったり、レベル4になると骨折、硬膜下血腫 という状態になる患者で、年間10何例、3%ぐらいの確率でいます。  これは平成13年度の目的別時間別事故発生件数ですが、赤の折れ線グラフが排泄で、 トータルの469件中201件が排泄によるものです。その中でも注目すべきは、夜中の1時 に突出して転倒しているというのがあります。  これを見て、対策を立てました。「13時」は間違いで訂正してほしいのですが、0時 〜1時の排泄目的による転倒を防止するということで、就寝前に排尿誘導を行うこと。 就寝時の内服薬は、排尿後に与薬する。慶應病院の場合は深夜は23時から開始ですの で、深夜勤務者は23時〜0時に巡視、排尿誘導をすることを徹底的に行っていきまし た。それは講習会において周知・徹底をしたり、師長会、師長・主任会において、看護 部の安全対策委員会の構成メンバーに、リスクマネジメント手法を習得し、各部署に フィードバックすることを目的とした看護師がいます。その看護師のいる病棟はそこを 通してフィードバックして、実践しました。  その結果がこのスライドなのですが、夜中の1時が減ってきています。これは、平成 14年度はピンクで、平成13年度は黄色になります。0時〜2時の強化によって減ってい ます。特に1時は、平成13年度は28例だったのが、年間8例に減っています。0時〜1 時に転倒する方を見ると、排泄が目的で70%以上の人が何らかの薬剤を内服しているこ とがわかります。  分析の結果から言えることは、20代、30代でも身体機能の低下がある場合、身体損傷 の要因としてアセスメントが必要であること、準夜勤から深夜勤に引継ぎ前後の巡視・ 排尿誘導を行えば、転倒・転落の件数は減ること、起こった現象だけでなくて、システ ムや環境・事故の前の状況にも視野を広げ分析することで、対策が確実になるというこ とがわかりました。患者の特性が背景にかなりありますので、必ず多角的な視点で事前 評価が必要であること、事前評価に沿った対策が立てられなければいけないこと、それ をきっちり実施していくことが重要であることがわかりました。  そこで、看護師のアセスメント、看護計画実践の支援が必要であると判断しました。 転倒・転落を防止するために、転倒のリスクを予測して対策を講じることができるよう に、平成14年10月から標準看護計画を導入しました。構成は、転倒・転落のアセスメン トスコアシートで、患者の要因から危険度をアセスメントするシートになっています。 それに沿って看護計画を立てて、その中身となるのが転倒・転落防止のための手引き、 患者・家族の指導のためのパンフレットという構成をとっていますが、それを導入しま した。  これはアセスメントスコアシートを使ったものですが、危険度3で、入院してきた患 者全員が対象になります。内容は状況因子、患者の特性、病態生理因子、薬剤と排泄の 4のカテゴリーが要因で、点数をつける形になっています。危険度1、2、3になって いて、2以上と判断された方は毎日これをつけて、チームで共有する形をとっていま す。  これが手引きなのですが、黄色く線を引いてある所は、例えば患者が動けない状態 で、異常のときの介助はどうするかというと、そばを離れないなど、これを見てどのよ うにケアをすればいいかわかる形のものを作ってあります。  これは、転倒/転落防止の手引きです。まず、入院された患者と家族にこれを説明し ます。この中で、いかに危険であるか教育することと、危険な状態のときにはしゃがみ 込んで転ぶとか、自分でどのように転ぶという安全な転び方などを指導します。  そのような活動を行って、ちょうど1年が経って、いま評価の時期に来ています。危 険度に関する点数が高くなればなるほど、転倒のリスクが高くなるというのが出てきて いるので、それに沿っていまデータを分析している途中です。看護部においていちばん 力を入れているのは、注射の誤薬防止、チューブトラブルといって、患者がいろいろな チューブを抜いてしまうのを防止すること、転倒・転落を防止することです。これは、 赤の所が深夜、グレーの所が日勤、青の所が準夜です。この折れ線グラフを見ると、転 倒・転落とチューブトラブルは日中夜問わず起きているという状況があって、人的に も、システム的にも、いろいろなことをやりながらでも防ぎきれないものがかなりあ る、ということが1つあります。夜勤看護加算の所でのナースの配置の縛りがあるの で、それによってはある程度の限界性もあるのかというところも考えながら活動してい ます。いままでの看護部の活動の中で、報告があったらすぐ状況を見に行って、その場 で必要なことは何だったのかということと、指導していくことをモニターしていく活 動、また現場にフィードバックしていくという活動が、いちばん重要だと考えていま す。 ○橋本部会長  対応するコード化情報はどうなっているか、武藤委員からお願いします。 ○武藤委員  資料2−2、2頁の図8−2の発生月です。なぜか7月、8月、9月が低いのです が、理由がわかりません。図8−3の発生曜日は同じような傾向です。先ほどの発表に もありました発生時間帯ですが、このコード化情報では6時〜7時の起床時にピークが あります。深夜帯の22時〜23時、あるいは0時〜1時も若干増加している傾向がありま すが、大体このような感じです。図8−5の発生場所ですが、「病室」が圧倒的に多く て6,764件、2番目が「その他病棟内」で1,125件です。  4頁の図8−6は先ほどの点滴と同じように患者の性別を見ていますが、男性に優位 です。図8−7ですが、年齢は70歳〜80歳にピークがあります。  5頁の図8−8は患者の心身状態ですが、歩行障害を抱えている患者がいちばん多く て、下肢障害、障害なし、薬剤の影響下、痴呆・健忘が出てくるという状況です。  8頁の表8−1ですが、発生の場面は「その他の療養生活に関する場面」を除けば、 「移動中」が第1位ということです。 ○橋本部会長  参考人の発表といまのコード化も併せて、ご質問、あるいは討議等をお願いしたいと 思います。転倒・転落については、この部会で2回ほど前に重要事例からまとめていた だいて、シェーマを書いていただいた経緯もあります。ただ、その前からずっと川村委 員からいろいろお教えいただいた中では、医療者が場面としてかかわっているものは4 分の1ぐらいです。4分の3ぐらいがその他の所で起こっているということがあって、 そのことだけではないと思いますが、そのことが要因でなかなか防ぎがたい要素はある という印象を持っていますが、いかがでしょうか。 ○松月委員  浦澤さんに質問です。確かに排泄にかかわるものはすごく多いと思うのですが、その 中で0時〜3時に注目したことと、排尿誘導と排尿後に与薬をするという対策をすれば 下がるだろうと考えた、もしデータがなければ、日常絶えず現場に行っていらっしゃる と思いますので、それで感じた根拠になるものはどんなものがあったのか。もう1つ は、確かに0時〜1時も減っているのですが、その次からの時間が増えているので、私 は深夜帯にはあまり変わらなかったのかという印象を受けてしまったのですが、その辺 のところを聞かせていただけますか。 ○浦澤参考人  平成12年、平成13年の2年間で、排尿の目的においてトイレに行こうとして、そのと きに病室で転倒してしまったというデータを基に、そこに焦点化して、転ぶ前に行って 排尿誘導をしようという実践の計画を立てて行ったということです。最後のスライドの ように、そこのところは対策を立てて急激に減ってはいるのですが、全体的に見るとア セスメントまではするのですが、結果的に転んだところにいくと、具体的な実践がチー ムでされていないという実情がありました。そこで、看護部の安全対策委員会が計画 や、どのようにやるのだということを徹底的に指導してやっていかないと、アセスメン トまではして、この人は危ないと思うのですが、あとは大体こんな感じということで、 主観的に実践するというのがあります。今は徹底的にどうしたらいいかというのを必ず やるように介入しています。 ○橋本部会長  排尿誘導は全員にするのですか。 ○浦澤参考人  いいえ、アセスメントして、必要な方にします。 ○中村委員  私たちの病院も転倒・転落が随分増えて、その要因を分析しているのです。1つは、 病棟が変わって、ベッド周りが広くなったのです。老健などの調査では、むしろ大きく 広くなると、転倒・転落の件数は少ないというデータも出ているのですが、うちの病院 ではむしろ病棟が広くなって大きくなったら増えたというのがあります。もう1つ、薬 剤の影響下というのは、特に眠剤です。眠剤の中でも持続時間、あるいは筋弛緩作用の 強い眠剤があります。だから、眠剤との関係を調べて、できるだけ転倒・転落に結び付 きやすい薬剤、特に眠剤は控えるように検討して、若干その部分は減ったのかと思いま すが、その辺りはいかがですか。 ○浦澤参考人  アセスメントスコアシートの要因の中に、薬剤が関連しているだろうということで、 その中に眠剤、利尿剤、降圧剤など、いろいろなものがあるのですが、転んだ人の70% は眠剤を内服しているという背景はあります。 ○橋本部会長  眠剤の種類によって違うということはないですか。 ○浦澤参考人  そこまではちょっとデータとして。 ○橋本部会長  仮説なのですが、血中濃度が一定に上がるまでの時間が速いほうが危ないという話が あって、研究的には検討されているようなのです。それがエビデンスになっているかわ かりませんけれども。 ○浦澤参考人  そういう形でデータを取り扱っていないので、ちょっと答えられないです。 ○嶋森委員  私どもは前々回に、いま部会長がおっしゃったように、転倒・転落についてもう少し 全体的な取り組みが必要だということは提案しました。いくつかアセスメントシートや アセスメントの方法もあると思いますし、対策も不十分ではありますが、こんなことを したらいいのではないかということがある程度見えてきています。実際、重要事例とし て報告された事例でも、転びそうだと思っていたのに転んでしまった、という事例がか なりあります。いま浦澤さんの報告では時間と排泄に注目して、そこの時間はある程度 食い止めることはできたということです。いまお聞きしたら、慶應大学病院は在院日数 も非常に短い急性期病院ですから、転倒・転落するかも知れないとわかっていても手が 届かないということがあるのではないかと考えられます。京大病院では、もっと長くて も、夜、特に神経内科の患者はとても手が届かない。昼間も、患者の移動に付いていく のが精一杯ということがあります。そういう意味で、わかっているけれども、それらを 徹底して実施するようにと言っても、困難な点というのはないのか。その点どういう工 夫をしていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。 ○浦澤参考人  最後のパワーポイントにあるのですが、寝る前にピークが1つあります。それから、 0時〜1時、朝方の排尿の5時〜6時にピークがあるのです。朝方、寝る前、夜中は人 がいちばん少ない時間なので、その時間に人が行えることというと、予測をすること、 事前に排尿誘導等をすること、もう1つは、危険な人が動いたら知らせてくれるような 体動コールと言われるものを導入したことです。歩ける人に関してはドアの入口の所に 離床センサーを置くとか、そういう工夫をしながらやっています。 ○嶋森委員  どこも一緒ですね。私どもも今度、新しい臨床研修制度が導入されますが、これまで 研修医がたくさんいたので、実際問題として、夜中も、看護師以外の人が患者を見てく れていたという面はあります。しかし、その研修医もいなくなるという状況の中で、起 床時と夜中と就寝前、最も病院の要員が少なくなる中で最も事故が起こりやすい状況が あることについては、看護職だけの対応ではなかなか解決困難な問題でだと考えられま すので、検討しなければならないのではないかという意見です。 ○浦澤参考人  限界性もあると思っています。 ○武藤委員  コード化のことで、男のほうが転倒リスクが高いのではないかという気がしたのです が、男は環境適応が悪いとか、体力を過信するということはありますか。実際に、男の ほうが多いような気がしませんか。 ○浦澤参考人  そうなのですが、分母がわかりません。入院患者は、慶應病院の場合、男性のほうが 多いのです。 ○武藤委員  この前の患者調査では、女性患者のほうが多いのです。にもかかわらず男性にヒヤリ ・ハットが多いということは、有意な差があるのではないか。今回のデータで、実際ど うですか。 ○浦澤参考人  いま答えられるのは主観しかないのですが、自分で何とかしたいと思われる患者が多 いです。自分の身体の状況の細胞レベルのことと自分の頭が一致していなくて、このぐ らいはできるのだというようにして動く。 ○武藤委員  確かに男は往々にしてそういうことがあります。アセスメントシートの中で、男のほ うにリスク高いというのをつけたらどうかという提案なのです。 ○橋本部会長  性差はこの部会のテーマというか、大きな話題になっています。確かに日本の病院全 体で見ると女性の入院患者のほうが多くて、年齢階級別にもそうなのですが、ヒヤリ・ ハットが集められている母集団での性差の検証ができていないのです。あとでまたお話 があると思いますが、少しそれができるような仕組みもそろそろ考えなければいけない と思います。  それから、そろそろ介入研究があちこちで始まっているような気がするのですが、そ れらを合わせて検討するメタアナリシス、そういう方法論はまだ誰か考えておられない のでしょうか。介入研究もある程度のルールを作って、変数がメタアナリシスに耐えら れるようなやり方をしていくことは、まだないですか。まだ要因を探っている状態でし ょうか。 ○川村委員  介入研究というのは、2群に分けて、介入しない群と、する群を分けて考えるわけで すから、なかなかやりにくいですよね。転倒・転落というのは、1つは制度的な問題 と、もう1つは院内での転倒・転落防止に対するトータルマネジメントの問題と思って います。制度的な問題というのは、患者要因が強く絡む問題、例えば夜中の自力排泄行 動による転倒、あるいは先ほどおっしゃったチューブ類の自己抜去などですが、観察す る人的資源の増なくしては防げない問題と、本質的には思っています。例えば夜間ヘル パー導入を診療報酬上認めてくれるような柔軟な制度ができて、介助が必要な方をでき るだけ速やかに介助できればかなり防げる問題だと思うのです。  一方、組織内でのマネジメントの問題というのは、易転倒性をお持ちの患者さんにと って、いちばんリスクのある行動は夜中の排泄行動です。それは、寝たあとで筋力が弛 緩していますし、暗いし、尿意であせって動くのですから、当然行動そのもののリスク は高いわけです。それに対して、患者の易転倒性を軽減する、つまり少しですがコント ロール可能なことは、転びやすい薬剤を何とか減らしていくことぐらいだと思うので す。そうしますと、危険な行動としての排泄行動をどうコントロールするかに主眼を置 かざるを得ないのです。先ほどおっしゃったように、寝る前に介助下で排泄してもらっ て、1時、2時の転倒を減らすといった方法などです。でも、尿は溜まってきますの で、その分転倒が早朝にシフトしていく可能性はあります。  そうしますと、リスクのある行動を減らそうとするやり方では限界で、患者の行動を サポートするような環境をつくっていくことが必要です。先ほどの報告はポータブルト イレとの間で起こっているのか、病棟のトイレで起こっているのかというお話があまり なかったのですが、患者さんの転倒リスクを予測するだけではなくて、排泄行動を予測 して、環境を整備していくことです。トイレの整備や持ち手など、いろいろなことをや っていかなければなりません。それを看護師だけではなくて、薬剤師、リハの方、老年 科医、整形外科医といったチームで、トータルにマネジメントを行うということが、ま だまだ不十分ではないかという感じがしました。それでも、はっきり言いますと、この 夜間の高齢患者の転倒・転落問題というのは、先ほど言いました制度的な解決を少しし ていかないと難しい話ではないかと思っています。 ○橋本部会長  環境の問題が大きくかかわってくるということで、三宅委員、研究会のほうでこの辺 はまだおやりになっていないのですか。 ○三宅委員  いま療養環境の問題を拾い上げて検討しているという段階で、あまり具体的なものは 出てきていません。 ○医療安全推進室長  いま体動センサーという話が出ていたのですが、この前コリガンさんという人が来 て、盛んに「医療安全は次はITだ」と言って帰っていったのです。体動センサーのよ うなものは有効なのですか。ここには、その辺を教えていただけるような方がたくさん いるような気がするのです。 ○松月委員  体動センサーは、確かにすぐにナースが飛んでいければ効果があります。ただ、離床 センサーは駄目です。ベッドに降りてから、患者がスリッパを履くときに既に転びま す。でも、ベッド上で起き上がって動こうかと思うときにコールがなるのは、早く着け ば間に合います。ただ、それも制度との関連があって、鳴っているのはわかっているの ですが、着いたら、遠い部屋だったので手遅れだったということはあります。それ1つ だけではなくて、それが外れたらガッとベッド柵が上がるとか、床がソフトになると か、そこまでITにしてもらわないといけないのではないかと思うのです。 ○嶋森委員  いま松月委員が説明したことの補足のようなものですが、私が知っている限りでは、 センサーには3つあって、ベッドの脇に置いて、降りたら鳴るというのが「マッタ君 」。それはいま言ったように患者がベッドから降りないと鳴らないので、ある程度動け る方で、降りたのを知らせるのに有効です。離床センサーは、ベッドの上に置いてあっ て、患者の背中が離れると鳴るタイプで、起きようとしたときに鳴りますから、患者の 異動を早くつかまえることができます。もう1つ、衣類につけておいて、ベッドから起 き上がろうとしてナースコールから外れると鳴る。中間タイプです。ですから、動き始 めてすぐ鳴るのは体動センサーと言われるもので、それは効果があると思います。アメ リカのある病院では、それをかなりの数買って、転倒・転落をなくしたということを言 っていました。しかし、鳴ったときに行ける体制がないと、難しい問題はあると思いま す。 ○増子委員  いま離床センサーや体動センサーの話がありましたが、これも三宅委員の研究に関連 するのかと思います。私も過去に随分経験があるのですが、新しい患者が入ったら、転 んでしまったり、降りるときにつかまるのに、ベッド柵を必ずつけるということは守っ ていても、結局、ベッド柵が耐えられるのは最大30kgでしょうか。人の体は平均すると 大体60kg。それが持ちこたえられなくて揺らいでしまうと、つかまったために転んでし まう、うまくいかなくて落ちてしまう。ですから、そういうものとの関連もかなりある かと思うのです。ベッド柵の機能は何なのかという辺りも、ひとつ考えなくてはいけな いのかと思います。 ○橋本部会長  排尿のケースが多いということだと思いますが、トイレの位置は、4床ぐらいの病室 でも、病室にトイレがつく建築がそこそこ増えてきています。この件に関していうと、 そういうのは効果があるのですか。 ○三宅委員  いまのベッド柵のことについては、私もこういうことにかかわって知ったのですが、 ベッド柵に巻いたセンサーは、ベッド柵を握れば鳴るというものです。  トイレについては、いま検討中のことですが、私がつい先日聞いた話の範囲でお話す ると、構造的に便器の位置、車椅子が入る場合は車椅子との関係、立ち上がるときの手 摺りの位置、それも水平の棒の位置と横の位置など、そういうことはかなり関係するよ うなのです。ですから、そういうことがかなり煮詰まれば、病院の設計にはそういうも のを必ず取り入れてほしいということをやらないと、一旦出来たトイレを動かすのは大 変なことらしいのです。ですから、そういうことも必要かという気はしています。 ○橋本部会長  かつて高齢者施設で自立排尿ということが盛んに試みられ始めたときに、実際に見に 行きましたが、排尿の誘導をかなり上手にしていた病院がありました。看護師がおやり になるとすれば、排尿促進の技術のようなものも少し関係あるかと思いました。そのほ か、いかがでしょうか。いま主に事例2の転倒・転落の話がされていますが、立ち戻っ て、先ほどの点滴の指示を統一していくというお話についても、ご意見が伺えればと思 います。 ○松月委員  2つの事例と、武藤委員に解説していただいたコード化情報との関連を考えると、や はり見えない。ちょっとは見えるのですが、例えばこれだけ集めたことが医療施設に、 またそういう施設にフィードバックできるほどのものがないというのが、すごくよくわ かる気がするのです。折角こういうことをやるのですから、ここで要因として明確にな ってきつつあるものがあると思いますので、そういうものを集めないと、これ以上収集 していても限界かというように、今回の具体的な報告を聞いて、またさらに強く感じま した。 ○橋本部会長  かなりシビアなご意見で、直接的にはなかなか見えないという状況は、武藤委員は何 かご意見がありますか。 ○武藤委員  今日の事例に関しては、確かにどうでしょうかね。それでも、コード化でこれだけ大 量に集まったことによって見える全体的な傾向、トレンドはわかりますね。それと局所 的なミクロの症例との関係も、全くないというわけではないと思います。そこから対策 を引き出していく、あるいは介入策を引き出していくのは、この作業部会の役目ではな いかと思います。 ○三宅委員  いまの皆さん方のご意見を伺っていて、確かに排泄行為がかなりの誘因になっている とすれば、慶應大学の場合は夜中の1時に着目し、こういう取り組みをされ、それなり の実績があったということであれば、患者の状態を把握することは必要です。先ほど、 スタッフを増やして観察する以外に解決はないのではないかというお話がありました。 少なくとも、例えばある病棟とか、これはお金がかなりかかることですが、こういう取 り組みをする一方で、定点観測という話も出ているようです。いくつかの病院で人手を 増やして、そういう患者のいる所は昼夜を問わず、例えば3時間か4時間経ったら必ず 排泄の介助をしたら、本当にそれは減るのか。そういうことをやってみるべきだと思い ます。それが効果があれば、厚生労働省のほうに十分それだけのスタッフを要求するこ とはできると思います。やはり、いまのこれだけのデータから、少なくとも1つの時間 に着目したことで効果があるとすれば、それを1日全部通して、きちんとした介助をす れば、そういうことはどれだけ減るのか、是非どこかでやってみる必要があるのではな いかという気がします。 ○嶋森委員  私は松月委員の意見にはちょっと疑問があります。いまの2つの事例は、わりと小さ いというか、非常に重要なのですが現場特有の問題、例えば大学病院の研修医のいる所 での化学療法における問題という、かなり狭い範囲の問題だったと思います。個々の病 院は、そういう小さな問題を1つずつ解決しないと問題解決にならないと思います。で すから現場では、いまみたいな個々の問題を取り上げて努力してやってもらう以外にな いと思います。それが全体的な流れとしてどういう変化を起こしているかということ を、大きな目で定期的に把握していくのは必要ではないかと思います。そういう役割が コード化情報の分析にはあると思います。  私は10事例の数の分析を見て、看護職ですから、1年未満の看護師が当事者であり、 それから原因が「確認」というところに非常に多いのが気になっています。しかし、確 認が悪いと言われる中身は何かを、現場でもう少し細かく情報収集をし、解決していき ながら、全体としての「確認」という要因が少なくなっていくかどうか、目印のように 見ていくという意味では、意味があるかなと思います。 ○松月委員  全然意味がないということではないのですが、これだけの数で見えてきたものがある 程度固定化してきているというか、そういうことはあります。例えば、いまの転倒・転 落であれば、先ほど三宅委員が言われたような環境要因、そういう項目を1つでも2つ でも追加できれば、もっと見えてきて解決につなげる糸口みたいなものが出てくるので はないかと思うわけです。それは先ほどの「指示の不備」は、本当に表面的なものだけ を見ていると分からないときもありますが、必ず指示の不備はあると思うのです。だか ら、そういうものをチェックできるといいかなと。そうすると、もっと広がるかなと思 ったものですから。 ○増子委員  私もいまの事例発表を聞いて幾つか考えました。私ども看護師ですから、一斉に起こ して一斉に連れて行って一斉に排泄というのはとても抵抗があります。いま人のいない 中で個人の排泄パターンを一生懸命調べて時間差で起こしていく。一方では、私は非常 に抵抗があったのですが、オープントイレということで、全然囲いを付けずに個室にト イレを付けてしまう。それが臭いだとか、いろいろなことはどうなのだろう、見かけは どうなのだろう、そこにお客様があったりすればどうなのだろうと思っていたのです が、それを造ってみたら臭いもなければ、囲いは小さなカーテンで十分機能することが 分かったのです。  いかに個を大切にしながら、個のことを考えながら、確かにトイレが遠いと看護師、 例えば人を増やすにしても大勢の人が必要だと思います。建物を造るときに建築家の人 たちと相談しながら、オープントイレのようなものを部屋の中に造っていくのも1つな のかなと思ったのです。一斉に動かしていくということと、個人のそういうものはどう いうふうに考えたらいいのか疑問に思ったので発言いたしました。 ○橋本部会長  いつもどんな場面にも出てくる話ですが、そこは効果的な対策をどう打ったらいい か。みんな一遍にやってしまえという議論では必ずしもないということですね。提供者 側のほうにボリュームの問題があるとすれば、そこをどこかで調整しなければいけない というジレンマがどうしても出てくるということですね。 ○山路委員  話を伺っていると、トイレの話もそうなのですが、きちんとした人手があれば介助で きるわけですから、多分事故は起きないで済むだろうと思います。起きないということ はないのでしょうが、介助しても事故が起きる場合があるということは分かりました。 そうなると制度の問題だ、ということも出されたので、そのとおりだろうと思います。 折角こういう形でいろいろデータを分析し、いろいろな問題の所在が出てきているの に、そこだけで自己完結をさせずに、制度の問題だとすれば川村委員が言われたよう な、夜間の、ナースではないケアの体制ができないか、というような制度改革に結び付 けていくような提言を、もうちょっとやったほうがいいのではないかという感じがして います。  素人考えですが、転倒・転落で事故が起きた場合は医療費もかかるわけですから、費 用対効果を考えても、必ずしも体制を増やせばお金がかかるからとても無理だという話 ではなく、三宅委員が言われたように、実際モデル的にやってみて、費用対効果でどう なのかという検証をしてみる価値は十分にあるのではないかという感想を持ちました。 ○橋本部会長  研究の枠の中でそういうことをやりたいですね。結構社会的な実験になりますので、 ちょっとお金はかかるかもしれませんが。確かにケアプラン(MDSラップス)を導入 した病棟と、導入しない病院でどう違うかという研究をやったことがありますが、きち っとやればそれが出てきます。そういうことの積み重ねがいいかもしれません。ただ評 価する指標がうまく作れるかどうか。それと、研究的に言うと本当にコントロールでき るかという問題が残りそうな気が直感的にはします。  制度に関わる、要するに人数の問題だと思いますが、そういうことを提起されたこと は十分受け止めたいと思いますし、厚労省の方もいらっしゃいますので、受け止めてい ただければと思います。  これは余計な話ですが、アメリカの研究の中で、これは報道もされましたのでご存じ だと思いますが、看護師の数が医療安全に寄与している、というエビデンスが出ている という話があります。ボリュームのベースがちょっと違うところでの比較をそのまま日 本に持ち込むことはできないかもしれませんが、そういうエビデンスもあるということ です。 ○原田委員  先ほどITの話が出ましたので一言だけ、コリガンさんのお話は非常に興味深く伺っ たのですが、あそこで強調されている情報系というのは、病棟の中で流れている情報、 情報の流れに関する情報系をIT化していくというお話が中心であったと思います。い まの転倒・転落のお話であったのは、コンピューター系の話でいいますと「ユビキタス 系」といいますか、日常生活、身体、物理空間上にある情報をどうやって電子情報にも っていくかという話で、やや系統の違う話です。  私自身はオーダリング・システムや電子カルテ化という面での情報の流れそのもの、 病院の中にたくさんの情報が流れているそのものを、いかにITとして、しっかりとし たものを作っていくか、ここをきちんとやっていくべきだと思っています。しかし、ユ ビキタス系の、私たちの活動をIT化していくというのは、まさに両刃といいますか非 常に複雑な面があり、一歩間違うとプライバシーの問題に関わってくるところがありま す。また、先ほどお話がありましたように警報は鳴らせるが、それ以下は、とにかく後 はやって、みたいな話になりがちである。データはとれても、それをどううまく使うか が難しいのです。  そういう意味で、ある意味で介入研究のような形で、きちんとしたITの研究をして いくことが必要ではないかと思っております。ユビキタス系のIT化を入れたときに、 何をどこまでITでカバーしていくのかという全体図を考え、効果が上がるように作り 上げていく。システム全体を作っていくというアプローチでの実験・研究が必要であろ うと思います。それなしに、部分的に入れていくことは逆にエラーを増やすことになる と思っております。IT化と一口で言ってしまわないで、その辺を少し分割して考えて いけるといいなと思います。 ○橋本部会長  成功事例をご紹介いただいて、それを範囲の中に入れているコード化情報の様子を見 たということになると思いますが、その報告はこれで一応終わりにさせていただきたい と思います。  それでは、ネットワーク整備事業の「第8回集計結果」について議事を進めていきた いと思います。「全般コード化情報の分析」は武藤委員、「重要事例情報の分析」は嶋 森委員、「医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析」は事務局から報告をしていただき ます。それでは武藤委員からお願いします。 ○武藤委員  資料4−2です。第8回の報告事例は1万2,909件です。  1頁の発生曜日に関してはこのような経過です。今回は5回、6回、7回と全部比べ られるようになっていますが、トレンドは確かに固定しています。  2頁の図1−3は発生時間帯です。これは全事例ですが、やはり8〜9時、10〜11時 にピークがあるのと、その後だんだん減ってきますが、深夜帯の0〜1時に再びピーク になるというトレンドです。図1−4は発生の場所で、病室、ナースステーションで す。  3頁の図1−5は患者の性別で男性に優位です。大体1.3倍ぐらいです。図1−6は 患者の年齢で、61〜70歳、71〜80歳にピークがあるのと、あと0〜10歳にピークがあり ます。  5頁の図1−10は職種経験年数です。0年、1年と減数していきます。  6頁の図1−11は部署配属年数です。これも0年をピークにだんだん減数していま す。6頁の図1−12は発生場面です。「処方・与薬」、「ドレーン・チューブ」、「療 養上の世話」は転倒・転落のことを意味しますが、これが三大ヒヤリ・ハットで、トレ ンドが固定しています。  7頁の図1−13の発生要因は、「確認」が相変わらず多く、「心理的状況」、「勤務 状況」が続きます。  8頁の図1−14は影響度です。「間違いが実施されたが、患者に影響がなかった」と いうのと、実施前に発見したが、もし実際に実行されたとしたら「影響度は大きい」、 「中くらい」、「小さい」に分けてありますが、いちばん多いのは「間違いが実施され たが、患者に影響がなかった」というものです。  ここからは性差について見ていきたいと思います。11頁の図1−15は患者の年齢と患 者の性別です。先ほど全体で見ますと男性が優位でしたが、年齢階級別に見ますと明ら かな特徴があります。50〜80代の男性にヒヤリ・ハット事例が多いです。逆に、その年 代の女性が少ない。あるいは、20〜40代では、あまり差はないですが女性のほうが多 い。ですから中高年の男性にヒヤリ・ハット事例が多く、反対に言うと中高年の女性に ヒヤリ・ハットが少ないという傾向です。図1−16は発生場面と患者の性別です。これ も先ほどの三大ヒヤリ・ハットのすべてについて男性優位です。「処方・与薬」、「ド レーン・チューブ」「転倒・転落」、いずれも男性が多いです。  15頁、いまの三大ヒヤリ・ハットを年齢階級別に見てみました。明らかなのは図1− 17−(8)、71〜80歳の年齢階級では、男性は「処方・与薬」、「ドレーン・チューブ」、 「転倒・転落」はいずれも多く、「ドレーン・チューブ」が非常に多いです。  17頁の図1−19は、患者の影響度と性別の関係を見てみました。先ほど「間違いが実 施されたが、患者に影響が少なかった」というのが多かったのですが、これも男性のほ うが多いです。  26頁、ここから処方・与薬の男女差を見ています。図2−16、処方・与薬の場面では 「内服」と「静脈注射」の点滴にヒヤリ・ハットが多く、「内服」でも「末梢静脈点滴 」でも男性が多いです。この理由はちょっと分かりません。  27頁の図2−17は処方・与薬に関しての内容です。「無投薬」が多く、これも男性が 多いです。「点滴スピードが速すぎる」というのも男性が多いとか、こうなると理由が どうしてなのか。  36頁の図3−16はドレーン・チューブです。ドレーン・チューブのトラブルは「末梢 静脈ライン」がいちばん多く、次が「中心静脈」、「栄養チューブ」、それから少ない ですが「気管カニューレ」もあります。これも「末梢静脈ライン」は男性が多く、特に 「中心静脈」は男性が圧倒的に多く、「栄養チューブ」も多いです。  37頁の図3−17はドレーン・チューブの内容です。「自己抜去」がいちばん多く、圧 倒的に男性が多いです。男性は我慢強くないのでしょうか。  46頁の図4−16は医療機械を見ています。医療機械になるとさらに分からなくなりま すが、「輸液・輸注ポンプ」と「人工呼吸器」のトラブルが多いのですが、これもなぜ か両方とも男性優位です。  67頁の図6−17は療養上の世話を見ています。「転倒」が多く「転落」が次に続きま すが、同様に男性のほうが多いです。一体どうしてでしょうか、皆様のご意見をいただ きたいと思います。 ○橋本部会長  それでは嶋森委員、お願いします。 ○嶋森委員  私からは重要事例の分析についてお話します。資料は5−1〜3で、5−3に464件 の重要事例のすべてが載っております。5−2は13件の、皆さんに参考になればという ことで分析したコメント付きの事例です。  それでは5−1から説明します。収集期間は先ほどの全般コード化と同じで、72施設 から収集された464件の有効件数を分析しています。方法はこれまでと同様です。タイ トルやキーワードは、3頁に載っているものを使って付けております。選定の考え方 は、2頁に掲載されている従来どおりの方針で選定しております。分析結果と考察につ いて、4頁からお話します。  収集された事例の概要ですが、報告件数は479件で、前回に比べて半数程度に減少し ています。これは次の報告件数が非常に多かったので、この時期と次の時期との関連が あると思います。従って今回は半数程度でした。報告数の多い事例の種類は、与薬の、 内服薬と点滴が22%と18%、調剤・与薬準備に関する事例は14%、転倒・転落は9%、 チューブ・カテーテルは7%と、これまでの傾向と変わりありません。  与薬に関する事例では、調剤・与薬準備の際のエラーが多く見られます。本来実施す べき業務の時間帯を早めたり、業務を代行したりしたことによる二重投与です。分析事 例の中にもありますが、準夜帯で忙しいので、夕方やる抗ガン剤を朝の10時から準備し ておいたが、別のものがいってしまったという事例があります。業務の忙しい時間帯を 外して、気をきかせて早く準備したら二重にいったり、間違ったりということがありま す。これまでも述べて来ましたが、やはり仕事を安易にカバーし合うということではな く、それぞれが責任を持って実施する体制の確立が必要だろうと思います。これは人の 問題も含めてです。  隔壁開通忘れは今回もありました。これは前から言っていますように、シールを貼っ て注意を捉すだけでは改善が難しいということです。また、最近はこの製剤には、ビタ ミン剤を別に入れておく所があって、それを折って混合して入れるタイプがあります。 隔壁開通した上に、端っこについている薬剤を入れなければいけないわけですが、複雑 になって、それを入れ忘れたという事例がありました。前もって混合することによっ て、薬剤が変質するということもあって、そういう形になっていると思いますが、それ ぞれに開通忘れが生じています。  薬剤師と看護師が役割分担をして、薬剤師が病棟に出て来て薬剤の混合などをする所 も出てきていますからエラーは少なくなっています。しかし一方でこの重要事例の中に もありますが、個別に分包した内服薬の薬袋に、別の薬の名前が印字されていたという 事例があり、そういう新たなエラーが生じております。解決策が次のエラーを生むとい うことで、リスクマネジメントについては、実施した対策に対する評価を継続していく 必要があるのではないかと感じられます。  危険な薬物、例えば心臓の働きに影響するような薬物、電解質補正剤などによるヒヤ リ・ハットも相変わらずあります。新人が血液が逆流していた点滴を速めているのを見 つけて先輩があわてて止めたのですが、それは心臓に影響のある抗不整脈剤入りの点滴 だったということがありました。こういう薬剤の取扱いは、いつの時点から新人にさせ るかということなど、新人の教育とともに、誰に、いつからその仕事をさせていくの か、という指導体制の検討も必要だろうと考えられました。  電子化が進んでいくのはいいと思いますが、医師の指示を看護師等が入力する仕組み で行っている所があるようです。これは適切だと思えないのですが、入力ミスを起こし ていたという、電子化に当たってはきちんとしたシステムを決めておく必要があるので はないかと思いました。  転倒・転落に関する事例は、これも以前からありますように、キャスターのストッパ ーを止めないでつかまったりというようなヒヤリ・ハットがあります。今日浦澤さんか らご紹介いただきましたが、やはり事前にアセスメントすれば分かるような転倒があり ますので、アセスメントのシステムを導入する必要があるだろうと考えられます。それ から、外泊時に転倒した事例があります。これは病院の責任だろうかという議論があり ましたが、転倒しやすい病状であるということについては、家族への指導も含めて必要 ではないかと考えられました。  チューブ・カテーテル類に関する事例は、医療従事者がいない所で抜去されるという 事例もありますが、一緒にいて、患者を起こしている時に引っ張って抜去するというこ とがあります。ケアをするとき、チューブ類が入っている場合に、どういうふうに起こ すかという基本的なチェックについて、きちんと教育しておく必要があるだろうと思わ れます。  人工呼吸器の付属品なども含めて、固定が十分でないために外れるということがあり ます。チューブ類については非常に重大な結果を招くことがありますから、チューブ類 の入っている患者については、チェックリスト等を用いて、必ず離れるときにはチェッ クをしていくという仕組みが必要だろうという検討がされました。  コミュニケーションに関する事例では、相変わらず手書きの指示の誤読、記載の誤り など、指示がきちんとされていないため起きる事例が見られます。「カタボン12ml/h」 という指示が「2ml」と読めた。そのとき医師に「2ccですね」と確認すると、医師は 返事をしなかったという事例です。返事がなくても、「そのとおり」と言うことだと思 ってそのまま実施されています。いわゆる確認会話がされていません。これは両方の問 題だと思います。前回も手術室での麻酔薬の希釈の事例がありまし。、50万倍と10万倍 の希釈濃度を確認したが返事しなかったので、そのまま了解というふうに思ってしまっ たという事例です。コミュニケーションが不十分なまま業務が進められ、そのことによ るエラーが引き続き起きています。コミュニケーションを適切に行うということを改め て教育していく必要があるだろうと検討されています。  人事異動に伴い新しい体制に慣れないために生じたヒヤリ・ハットや、“医療従事者 間の連絡・伝達ミス”によるヒヤリ・ハットがあります。新しい人が入って来たり、診 療科が新しくなったときには、具体的な行動レベルでの手順などの確認が必要だろうと いうことが検討されました。  交代制勤務に関わる事例があります。看護師の場合は交代制勤務ですから、交代時間 に重なる業務を、次の勤務者が気をきかせて手伝ったり、次の勤務の人の仕事を前の勤 務者が手伝ったりしたため、伝達ミスが重なりエラーを起こすことがあります。それぞ れの業務の責任の明確化をしていく必要があります。できれば自己完結型の業務分担に するべきだろうと思われます。勤務時間以内に終わるような仕事の進め方も検討する必 要があると思われます。  療養環境に関する事例では、ヒヤリ・ハットの誘因になったという事例はありません が、先ほどの転倒・転落事例のように、療養環境、作業環境を改善することによって、 ヒヤリ・ハットを軽減できるのではないかという事例がいくつかありました。新しく病 院を造ったり改築するときに、医師・看護師だけではなく、建築の専門家や機械メーカ ーなどにも入っていただき、療養にふさわしい環境をつくるための基準のようなもの を、今後検討しなければいけないのではないかということが出されました。  インフォームドコンセントに関しては、非常に珍しい事例がありました。一見カツラ とわからないようなカツラが普及しているせいだと思いますが、手術に入ってから金属 製の留め金の付いているカツラを装着していることに気付いた事例です。電気メスなど で熱傷するおそれがあります。手術前に、手術中にどのような問題が起こるかについて 十分説明することが必要だと思われます。義歯やカツラなどは本人は出来れば言いたく ないと思いますから、ご本人のプライバシーや自尊心を傷つけないようにしながら、危 険性を伝えて事前にインフォームドコンセントをしておく必要があるのではないかとい うことです。今後こういうことが増えていく可能性があるのではないかと思われます。  機器では、輸液ポンプに関連して相変わらずヒヤリ・ハットがあります。この検討の 中で臨床工学技士の方から指摘がありました。自動輸液ポンプの時間流量を入力したあ と、1時間流量を確認しようと画面から目を離して何秒か経つと、設定画面が本人が知 らない内に変わってしまうということがあるそうです。自分では時間流量の設定が終わ って次に総流量を入れるつもりが、設定画面は時間流量に戻ってしまっていることがあ るようす。このように機器の特性というか、特徴を十分わかっておくことが重要だと思 われます。看護職、医師も含めてですが、自動輸液ポンプ取扱いマニュアルを読んだ人 は多くないようですから、もう少しきちんと機器を理解することが重要ではないかと考 えられます。  同じような意味で、小児の保育器の酸素濃度を測定するときに、設定が間違って十分 に酸素がいっていなかったという事例がありました。それは新しい機器で酸素の補正の 方法がそれまでの機器と違っていたという事例です。これまでの機器は大気で、簡単に 補正できたのが、新しい機器になって、校正方法が変わっているということが分からな くて起きた事例です。新しい機器で機能が多く、複雑にすることが果たしていいのかど うか考える必要があります。また、新しい機器を入れた場合はその特徴を理解し、使い 方を習熟しなければいけない。機器の使い方はできるだけ単純にする必要があるのでは ないかということなどを検討する必要があります。  物品管理に関しては、ベッドごと移動中、ベッドのマットレスを置く面が外れて落ち たという事例があります。これはベッド枠のナットが外れていた事例です。このような 備品を定期的に点検する仕組みがない病院も多いようです。臨床工学技技士は自動輸液 ポンプ等の機器は点検してくれますが、設備、施設に関連しては管理する人がいないと いうことがあります。これについては分析班に病院事務の方がいて、ある市立病院では 施設課が定期的にチェックをし、点検終了のシールを貼る仕組みをやっているそうで す。医療機器だけではなく医療設備の点検も重要な課題だということも出ました。同時 に、物品管理に関しては、今後は病棟でどんなものがいくつあるというように管理する よりも、むしろここに書いてある「SPD」という中央管理システムを作り、効率的 で、しかも適正な運用の仕組みを考える必要があるのではないかということが出まし た。  その他、ミルクとか食事によるアレルギーの問題が事例として出ております。これは 事前の情報管理が必要ではないかということが出されました。現在は業務を行うとき に、これらをIT導入が十分ではないのでいくつものシートを見なければいけない、点 検している間に、記憶違い、見間違いなど、情報の間違いが起きておりますので、IT 化を推進することが必要ではないかと思われます。もしそれができない場合でも、医師 のオーダーはそのまま実施まで使えるとか、転記が必要ならダブルチェック等をする体 制が必要だろうと検討されました。  開口障害のある患者の口の中に虫がいたという、非常に特異な事例がありました。こ れはインシデントとしては珍しく挙げられた事例ですが、看護ケアの質をどう確保して いくかということが重要だと検討されました。  まとめとして、1つは“抗がん剤”や生命に危機の生じる恐れのある医薬品の取扱に 関する事例がありますので、今後きちんとしていく必要があるだろうと思われます。こ のときに、指示の薬をそのまま間違いなく投与するという仕組みを踏んでいくというこ とに焦点がいきすぎているのではないかという点が議論されました。この患者にこの薬 がなぜ必要かということについて、理解が十分でないために間違った薬が間違ったまま いくということがありますので、与薬に関する教育と専門家としての姿勢も必要だろう と検討されました。もう1つは、これらのことをきちんと考えて実施できる業務環境の 改善も必要だろうと思われました。  人工呼吸器の管理等は、きちんとした管理の仕組みを作る。それから、適切な情報の やりとりをするための適切なコミュニケーションの方法、業務のプロセス全体をどうい う仕組みでやっていくかなどを検討していく必要があるだろうということが出されてい ます。  今後の課題としては、事例の記載方法について、もう少し具体的な記載ができるよう に基準化が、必要ではないかということ、教育用のツールも開発することなども必要が あるのではないかという課題が出ました。 ○橋本部会長  次は、事務局のほうから「医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析」についてお願い します。 ○事務局  「第8回医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析」について簡単に説明します。  資料6−1をご覧ください。総事例数は179件です。うち医薬品関連情報が134件で す。この中には諸物品の情報が1件、用具の情報1件が含まれております。医療用具関 連情報は40件です。このうち1件は医薬品についての情報で、6件は諸物品と思われる ような情報が含まれております。また諸物品等関連情報が5件となっております。  2番は医薬品関連情報について要因別の分類をしたものです。今回もいちばん多かっ たのが「規格違い」で31件、23.1%となっております。次が「その他」、3番目に「勘 違い」が14件、10.4%。続いて「名称類似」と「記号違い」が13件、9.7%ずつの報告 です。これについて前回のものを見てみますと、前回も「規格違い」がいちばん多く、 「勘違い」が2番目、「薬効類似」が3番目、「剤型違い」というようなものが4番目 に入っております。今回は「剤型違い」が少なく報告されておりますが、1番目と2番 目の「規格違い」、「勘違い」が相変わらず多く報告されております。今回、「その他 」の中に「確認不足」と考えられるものが10件、「管理が悪い」と考えられるものが6 件、先ほど医薬品のツインバックのお話がありましたが、「未開通」が2件報告されて おります。  2頁、医療用具関連情報の要因別件数では、いちばん多いのは「管理が不十分だった 」が18件、45%。次は「その他」です。また今回は「故障していた」が6件、15%ほど 報告されております。これらも前回のものと比べると、前回は「管理が不十分だった」 が15件といちばん多く、次が「その他」でした。前回は「欠陥品・不良品だった」が2 件報告されていますが、今回はなく「管理不十分だった」が引き続き多く報告されてお ります。  4番は諸物品関連情報が要因別でまとめられておりますが省略させていただきます。  3頁。これは1、2頁と同じような表ですが、前回委員からの御指摘もありましたの で、3頁では「今回」が第8回の医薬品の集計、これは1頁の左側の「今回」と同じで す。右側の「前回」というのは、第5〜7回までの報告件数を集計し対比したもので す。年間でとれなかったのは、医薬品に関連しては第5回から要因のふり直しという か、どういった分類で行うかを変更しておりますので、その変更後、今回と同じ要因分 類の中で集計しております。これを比較しますと、やはり「規格違い」がいちばん多 く、「勘違い」、「その他」が続いている状況です。あとは「名称類似」、今回は若干 少なかったのですが「薬効類似」、薬の効果が同じものの取り間違いが多く報告されて おります。  4頁は医療用具関連情報の第8回の集計と、第5〜7回までの集計を比べたもので す。こちらもやはり「管理が不十分だった」、「その他」、「故障していた」、「欠陥 品・不良品だった」というものが多く、傾向としては同じような感じと考えておりま す。  6−2の個別の事例については、6−1の1頁でいちばん多かった「規格違い」とい うのは、例えば6−2の1頁の4番、5番の事例です。ハルシオンの0.25と0.125とい った含量違いのものが「規格違い」として報告されております。  「その他」の中の「確認不足」という事例ですが、6−2の15頁の93番、同姓患者の 薬を与薬した患者の確認不足。また、20頁の124番の事例、「その他(管理が悪い)」 というのは、定時薬と臨時薬とあって、定時薬のほうだけに注意がいって臨時薬の見落 としが起きたという事例が報告されております。  その他、3番目に多かったのは「勘違い」で、例えば3頁の14番の事例です。これは おそらく薬剤部内の話だと思いますが、となりどうしに薬があって取り間違えたといっ たような事例が報告されております。  続いて多かった「記号違い」というもので申しますと、12頁に何例かの「記号違い 」、例えばピーエヌツインの1号液と2号液、あるいはKN1Aと1Bといった記号の 違うものの取り間違いを起こしているという事例が報告されております  資料6−2の23頁以降は医療用具についてです。今回6例ほど、「故障していた」と いう事例が報告されております。23頁の1〜6番までですが、1〜5番までは、ほぼ同 一機種で、1番の業者名は東洋紡となっておりますが、ミユキエレックスというところ に承継されているものです。これはセンサーの異常によって機械がバックアップの処理 を受けている。機械が止まるのではなく、バックアップとして別の系統で、機械として は動いているのですが、部品について若干不良がありますので、これについては引き続 き、いま業者のほうで調査中です。  2番の事例は治験で用いられている用具で、これについては厚生労働省のほうに治験 中の不具合ということで報告を受けて、今後評価されていくことになります。  6番の事例は不具合報告書の提出を受けて、製品寿命の可能性があるということで引 き続き調査中です。  26頁の11番については、さらに添付文書の改訂等を行い注意喚起をしていく予定で す。輸液セットにおいて脂肪乳剤及び脂肪乳剤を含む医薬品、あるいは、ひまし油等の 油性成分、界面活性剤、またはアルコール等を含む医薬品を使用する場合には、注意を してくださいという注意喚起を更に続けていくように指導をしているところです。 ○橋本部会長  ご質問、ご意見があれば一括してお伺いしたいと思います。 ○石川委員  医療用具のところで、累計で165件ぐらいになって、今回第8回のところで「故障し ていた」というのが6件と目立ったところですが、よく中身を読んでいくと、どちらか というと本体そのものというより、ずいぶん長く使うことによることと、部品の消耗と か、それの寿命という非常に新しいポイントが出てきたと思っております。ものを作っ ているほうも、そういった表示に気をつけなければいけないのかなと。  それから記載の中に、だいぶ「添付文書」という言葉が出てくるようになりましたの で、添付文書制度がお使いになっている方々のほうに、そろそろ浸透してきたのかなと いう気がします。  しかし、添付文書の中味を変えただけで済むかというと、先ほどから看護師の方々か らお話が出ているように、どうもそれだけでは済まないところもありそうなので、何か 工夫をしなければいけないのかなと思います。それがメーカー側だけでやらなければい けないことなのか、使用者側のほうでもやらなければいけないのか、どちらに線を引く かということではなく、お互いに気をつけないと、多分、添付文書の中味を変えること だけは埋まらないのではないか。書いたは書いたのだけどよく判らないということにな ってもいけないし、書いたのだけど読む暇がないというのもまた困る。先ほどの環境の 問題にもなると思うのです。そういうことがありますので、新しい問題がここから出て きたかなと思います。  管理というところも、保守管理ということが非常に重要なことになっており、添付文 書の中には管理を、保守点検をしてくださいとお願いしている機器もありますので、そ ういうところもよく見ていただければと思いました。 ○山本委員  武藤委員の報告の4−2、36頁の表の3−2に栄養チューブの誤接続が5件あるので すが、数はともかくとして、誤接続に関しては3年前に新しい基準ができました。昨 年、調査したときには、新しい基準の製品を使っている医療機関では、ほとんど事故は 起こらないという結果が出ています。ですから、この5件の事例は新しい基準の製品を 使っているのかどうかが問題ではないか、と考えております。  それと同じく、人工呼吸器も2年前に新しい基準ができ、去年からは新しい基準に沿 った物を納めるということになっております。ただし医療機関には古い機器もあるわけ ですから、新しい基準によって起こった事故なのかどうかを、もう少し明確にすること が重要ではないかと考えます。  私たちも企業として新しい基準に適したものを医療機関にご紹介していますが、なか なか使っていただけないケースがあります。その際、ヒヤリ・ハットの事例等が新しい 基準に沿ったものか、古いものを使っているのか明確であれば、もっと危険性を訴え、 お知らせしていくことができるのではないかと思いますので、是非、その辺りをしっか り解析していただくことが重要であると考えます。このままでは相変わらず栄養チュー ブにもヒヤリ・ハットが起こるとか、人工呼吸器は問題があるという印象を与えてしま います。折角新しい基準を作った意味がないのではないか、というように思っているの で、その辺を分離して解析していただけると有難いと考えています。 ○橋本部会長  それはデータの収集のところで、そういう仕掛けをつくらなければいけないというこ とになりますかね。 ○山本委員  収集か解析かどちらかですね。 ○三宅委員  おそらく、より精密な測定が必要なので、やはり定点観測の中でのテーマになるので はないかと思います。 ○橋本部会長  人工呼吸器だけではなくて、いろいろなものが仕組みが改善されてきて、そのものだ けを採れば良くなっているかもしれないが、混在している状態でどうなのかという、そ この解析をするために1つひとつのことについて、その区分を追加的に、追次的にやる というのは、ちょっと馴染まないかなという気がします。それをやるのだったら、もう ちょっと特別の調査を、追加的にサーベイをかけるというやり方がいいのかもしれない ですね。いずれにしても、折角業界が努力されている、その努力が見えるような分析結 果がほしいですね。 ○川村委員  嶋森委員が言われた重要事例のことで、非常に示唆的と思った事例が1つあります。 それは先ほど新人がカテコールアミンのラインを早送りして危険な状況になったという 事例です。新人の事例をいろいろ整理していますと、トラブルに遭遇したときに何とか それを修復しようとする行動をとりますが、例えば輸液が遅れていたら、何時までに終 わらなければいけないから早めようとか、あるいは詰まりかけて、三方活栓などを閉じ たまま輸液ポンプがセットされていたなどですが、詰まるからあわてて流そうといっ た、修復しようとする行為の中もに、大変リスクがあるのということです。早送り機能 は大変有難い機能ですが、トラブルに遭遇したときの行動特性から考えると、ちょっと 危険なものを持っていると感じます。  最近は循環作動薬とか、厳しく血中濃度で維持すべき薬があります。専門医は輸液ポ ンプよりも精度の高いシリンジポンプをお使いになって、ほとんど原液の薬液が入って います。その中で、何かトラブルがあったときにこういう行動をとろうとすることの危 険性があります。それは投与速度が限定される薬と思いますが、そういうことも教育の 中に入れないといけないですし、機器の中の設計にも反映させなければいけないのでは ないかと思います。 ○橋本部会長  かなり高度なことですがとても大事な話です。破綻が生じたとき以後の行動の質を上 げていくという、そういう教育はなかなか難しいですが、とても必要なことであって、 いいご指摘だったと思います。 ○土屋委員  薬のところですが、機器あるいはシステムを使ったとき、そのシステムの特性などを よく理解していなくて、例えば薬が7種類あるのに5種類しか印字されていなくて、5 種類だと思ったというようなことがあるので、自分の所で採用している調剤機器の特性 をきちんと理解しておかないといけないのかなというのが、このところ結構出ておりま す。例えば供給体制、調剤体制の基本的なところをもう1回見直してやっていかないと いけないのかなと。  あと、いちばん多い「規格違い」、「記号違い」、「剤型違い」は医療機関の中で解 決しないといけない話で、物ではちょっと対応がとれない。3分の1ぐらいが、ずっと 固定して院内で対策をとらなければいけない話が入っておりますので、その辺をきちん としなければいけないだろうということ。  あと、63番の集計事例ですが、口頭で「塩カル1A」という指示に対し「塩カリ1A 」が出ているというのは、極めて危険な状況です。一応「名称類似」とし、また「管理 が悪い」と一方でしたのですが、こういった薬をフラットに見るのではなくて、重要な ものについての管理の仕方、あるいは指示でも、確認の仕方をきちんとしていく。抗が ん剤のピッキングマシンにおける、ほかの所へ入ってしまったというようなこともあり ましたが、薬をフラットに見るのではなく、危険な薬剤についての管理方法、供給体制 をきちんとしていかないと、なかなか厳しいのではないかと思います。 ○橋本部会長  重要な指摘だと思います。それでは「その他」のほうに入りたいと思います。事務局 からご説明いただけますでしょうか。 ○医療安全推進室長  参考資料1をご覧ください。「今後の医療安全対策ネットワーク整備事業の展開等に ついて」ですが、平成16年度から医療事故についての情報収集を行い、それに伴いヒヤ リ・ハット事例についても、日本医療機能評価機構という所で事例を集めることになっ ております。それに伴い、当部会及びヒューマンエラー部会でもさまざまな意見が出て おり、現在このようなことで私どもは進めているという報告です。  まず記述情報、かつては重要事例情報と申しておりましたが、そういうものを全国に 拡大して収集事例を増加させることを目指しています。それから、データベース化をし て、関係者の方々がさまざまな活用ができるようにホームページ上に掲載しようという ことです。ただ、収集期間については、これまでどおり3カ月程度にしたいと考えてお ります。  一方のコード化情報については、そろそろ相当回答が定まってきたというご指摘も多 々いただきまして、あまり意味がないのではないかという指摘もありますので、定点化 して経時的比較をできるようにしようということで、委員の皆様のご意見がある程度一 定の方向に集約されていると考えております。一方、3カ月毎というのは病院にとって 負荷が非常に大きという指摘もあり、これをできれば6カ月程度の収集に変更したいと 考えております。また、分析については、今日も話題が出ましたが、医療機関の属性別 の情報提供も含めてやりたいと考えております。  参考資料2は予算についてで、大きく増えた分、減った分について説明します。いち ばん上の「第三者機関」の運営費は、医療事故の情報について集める機関の費用として 1億1,500万程度要求しており、財務は、よろしいということになっています。下から 2番目は非常に減っていると見られていますが「医療安全対策に関するワークショップ 」です。これは案分の話でして、本省の実施分と、一方で地方厚生局という所があり、 その次の頁の上から4番目の項目、「大臣官房地方課」というところにありますが、そ れに移ったというだけで実態は変更ありません。その下の「医薬食品局」の「医薬品表 示コード化による医療事故防止対策の推進」ということで800万円付いているというこ とです。 ○橋本部会長  参考資料1に「今後の医療安全対策ネットワーク整備事業の展開」ということで、い くつか変わる旨が書いてありました。記述情報については、データベース化を図り、嶋 森委員の報告にもありましたが、活用できるような形に変えていく。従来から言われて いたことですが、それが進むことになります。ただ、医療機関によっては、これがある ことすら知らないという状況もありますので、広報も含めてやっていかなければいけな いかと思います。  コード化情報のことも、これまで分析の限界みたいなことで議論されておりました が、それが定点化をするということで進歩がある。さらには、医療機関の属性情報が加 味され、深い分析ができる可能性があるということです。ここでは「属性情報」という 言い方しかありませんが、いくつか属性の情報も入るわけですが、どういう属性が必要 なのか、結局わからないのではないか、というような話で、また変えるのは難しいし、 あまり入れ込むと報告しにくくなるのではないかという懸念もありますので、その辺は 十分議論したいと思います。是非、分析上有用なこういう情報をとるべきだというご意 見がありましたら、是非、事務局のほうにお寄せいただければと思います。  何かこれについて、ご質問等はありますか。 ○原田委員  1点質問します。医薬品・医療用具等については、どちらの扱いになるのでしょう か。これは記述情報に入ると考えてよろしいでしょうか。 ○医療安全推進室長  医薬品の使い方については、従来どおり記述情報です。 ○原田委員  データベース化ができると考えてよろしいわけですね。 ○医療安全推進室長  はい。 ○原田委員  もう1点、先ほどの山本委員のご意見とも関連しますが、事後の情報収集です。この 事故に関してはこういう情報がいま必要だということが後から出てくる可能性があると 思いますので、特に定点観測化した場合に、病院名はマスキングして、しかし、後から さらに追加情報がメール等で集められるような仕組みを是非ご検討いただきたいと思い ます。 ○橋本部会長  微妙な問題だと思いますが、検討しないといけないと思います。それからコード化情 報を入れるとき、分析をするわけですからデータスクリーニングというのは、通常科学 的な分析をするためにはいちばん最初にやらなければいけないことなので、まず入力さ れるデータが一定の基準に基づいて入力されるような仕組み、つまり入力のための教育 といったものも、今もある程度はあるのですが、もう少ししっかりした区分ができるよ うな教育が病院にされるべきかなと思いますので、その点も検討したいと思います。  それでは、本日の議論はこれまでとしたいと思います。次回の日程について事務局か らご連絡お願いします。 ○事務局  次回の日程は、委員の皆様方のご都合を調整させていただいた上、後日ご連絡させて いただきたいと存じます。 ○橋本部会長  それでは、本日はこれで閉会いたします。お忙しい中ありがとうございました。                     (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係                        電話 03-5253-1111 (内線2579)