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II 保護の要件の在り方

 1 資産等の活用の在り方

 (1)保護受給中の累積金の取扱い

  (1)  生活保護法における原則
 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。(生活保護法第4条第1項)
 また、保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。(生活保護法第8条第1項)
  (2)  累積金の取扱い
 保護費を貯めて預貯金の形で保有しているものであっても、活用可能な資産として、まずそれを生活の維持のために活用することが必要。
 ただし、被保護者が、生活費の計画的なやりくりを行うこと、例えば、耐久消費財の買い替えを行うために保護費を計画的に使用する場合等、家計のやりくりの中で一定の金銭を貯えることは容認。
 また、入院・施設入所者のうち金銭管理能力のない者であって、各施設の長に金銭管理を委ねている者については、累積金の額が、加算等の6ヶ月分を超える時は、加算等の停止を実施。(近い将来医療が必要な場合はその額を配慮)

 (2) 一般世帯の貯蓄の状況

 
 貯蓄額階級別・所得四分位階級別世帯数

 
所得四分位階級 総数 貯蓄がない 貯蓄がある 不詳 所得四分位階級 貯蓄がない 貯蓄がある 不詳
総数 50万円未満 50〜100万円未満 100〜200 200〜300 300〜400 400〜500 500〜700 700〜1000 1000万円以上 1000〜1500 1500〜2000 2000〜3000 3000万円以上 貯蓄あり額不詳 総数 50万円未満 50〜100万円未満 100〜200 200〜300 300〜400 400〜500 500〜700 700〜1000 1000万円以上 1000〜1500 1500〜2000 2000〜3000 3000万円以上 貯蓄あり額不詳
総数 10,000 824 8,815 626 425 888 694 762 326 986 589 2,324 853 398 478 595 1,195 361 総数 8.24 88.15 6.26 4.25 8.88 6.94 7.62 3.26 9.86 5.89 23.24 8.53 3.98 4.78 5.95 11.95 3.61
 第I 2,500 501 1,858 303 137 225 144 165 51 158 88 263 114 54 48 47 323 142  第I 20.04 74.32 12.12 5.48 9 5.76 6.6 2.04 6.32 3.52 10.52 4.56 2.16 1.92 1.88 12.92 5.68
 第II 2,500 203 2,208 183 144 272 206 183 76 223 125 474 193 80 95 106 321 88  第II 8.12 88.32 7.32 5.76 10.88 8.24 7.32 3.04 8.92 5 18.96 7.72 3.2 3.8 4.24 12.84 3.52
 第III 2,500 89 2,341 102 105 260 201 239 101 307 178 541 209 89 114 129 307 70  第III 3.56 93.64 4.08 4.2 10.4 8.04 9.56 4.04 12.28 7.12 21.64 8.36 3.56 4.56 5.16 12.28 2.8
 第IV 2,500 31 2,408 38 39 131 143 175 98 298 198 1,045 337 174 221 313 244 61  第IV 1.24 96.32 1.52 1.56 5.24 5.72 7 3.92 11.92 7.92 41.8 13.48 6.96 8.84 12.52 9.76 2.44
 
資料: 国民生活基礎調査(平成13年)
注: 「所得四分位階級」とは、調査対象世帯全世帯の所得を低いものから高いものへと順に並べて4等分し、所得の低い世帯群か第I・第II・第III及び第IV四分位階級とするもの。
 
各分位の1世帯あたり平均所得金額
第I・四分位:157.2万円、第II・四分位:373.4万円、第III・四分位:628.7万円、第IV・四分位:1248.9万円
注: 単身者世帯(住み込み、まかない付きの寮・寄宿舎は除く。)を含む。

 
  貯蓄額階級別世帯数の構成割合のグラフ


 
 所得金額階級別にみた貯蓄額階級別世帯数の構成割合

  所得金額階級別にみた貯蓄額階級別世帯数の構成割合のグラフ
 
資料: 国民生活基礎調査(平成13年)
注) 単身者世帯(住み込み、まかない付きの寮・寄宿舎は除く。)を含む。


 一般低所得世帯の貯蓄の状況(世帯主の年齢階級別)

  一般低所得世帯の貯蓄の状況(世帯主の年齢階級別)のグラフ
 
資料: 国民生活基礎調査(平成13年)
注: ここでの低所得世帯は「所得四分位階級」の第I・四分位である。「所得四分位階級」とは、調査対象世帯全世帯の所得を低いものから高いものへと順に並べて4等分し、所得の低い世帯群から第I・第II・第III及び第IV四分位階級としたもの。
 
各分位の1世帯あたり平均所得金額
第I・四分位:157.2万円、第II・四分位:373.4万円、第III・四分位:628.7万円、第IV・四分位:1248.9万円
注: 年齢階級の「総数」には、年齢不詳を含む。
注: 単身者世帯(住み込み、まかない付きの寮・寄宿舎は除く。)を含む。
注: 貯蓄は、世帯の貯蓄の合計額のみを把握し、種類別(貯蓄(預金)、保険料、有価証券、その他)には把握していない。


 平成15年 家計の金融資産に関する世論調査(金融広報中央委員会調べ)

  所得金額階級別にみた貯蓄額階級別世帯数の構成割合のグラフ


 
 一般低所得世帯の金融資産の状況

  一般低所得世帯の金融資産の状況のグラフ
 
出典: 「社会生活に関する調査 社会保障生計調査 結果報告書」
注) 一般低所得世帯:年間収入階級第I・五分位の世帯(社会保障生計調査(生計簿)の世帯)
注) 金融資産:預貯金、株式・債券等の時価、等を合計したもの
注) 平成14年2月時点の調査(社会生活に関する調査)


 2 稼働能力の評価・活用の在り方

 
 法律
 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる(生活保護法第4条第1項)。
 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない(生活保護法第60条)。

 稼働能力の活用の評価
 生活保護制度において、能力の活用は保護受給の要件とされていることから、保護の実施にあたり、稼働能力の活用について、以下の3つの要素により判断を行う。
 (1)  稼働能力を有するか
 (2)  その稼働能力を活用する意思があるか
 (3)  実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か

3 具体的な評価
(1) 稼働能力の評価
 稼働能力の評価に当たっては、要保護者の年齢、性別、経歴、健 康状態、家族の状況等から総合的に判断。
 傷病等を理由に就労していない者の傷病の程度、就労の可否等については、レセプト点検、主治医訪問、嘱託医協議、必要に応じ生活保護法第28条の規定による検診命令等により把握。
(2) 稼働能力の活用意思や就労の場の有無の評価
 就労可能な被保護者に対し、就労状況及び求職状況の申告を求め、 申告された就労・求職状況と当該地域における求人状況、賃金水準、就労日数、申告者の稼働能力等を勘案し、稼働能力の活用状況を評価。
 稼働能力が十分に活用されていないと判断される場合には、
 就労している者に対しては転職を含む増収指導
 就労していない者に対しては就労指導
等稼働能力の活用について指導を実施。

4 就労指導
(1) 保護申請時における助言援助
 要保護者が、自らの稼働能力等の活用を怠り又は忌避していると認められる場合は、適切な助言援助を行うものとし、要保護者がこれに従わないときは、稼働能力の活用に係る保護の要件を欠くものとして、申請を却下。
(2)保護受給中における指導
  (1)  保護受給中の者については、随時、(1)と同様の助言、指導を行うほか、特に次のような場合においては必要に応じて生活保護法第27条の規定による指導指示を実施。
 傷病その他の理由により離職し、又は就職していなかった者が傷病の回復等により就労(そのために必要な訓練等につくことを含む)を可能とするに至ったとき
 義務教育の終了又は傷病者の介護若しくは乳幼児等の養育にあたることを要しなくなったため就労が可能となったとき
 現に就労の機会を得ていながら、本人の稼働能力、同種の就労者の収入状況等からみて、十分な収入を得ているものとは認めがたいとき
 内職等により少額かつ不安定な収入を得ている者について、健康状態の回復、世帯の事情の改善等により転職が可能なとき
  (2)  指導指示を行うに当たっては、必要に応じて、事前に調査、検診命令等を行い状況の把握に努めるとともに本人の能力、健康状態、世帯の事情等に配慮し、指導指示が形式化することのないよう十分留意。
  (3)  生活保護法第27条の規定による指導指示は、口頭により直接当該被保護者に対して行うことを原則とするが、これによって目的を達せられなかったとき等は、文書による指導指示を実施。
  (4)  文書による指導指示に従わなかったときは、必要に応じて生活保護法第62条の規定により所定の手続を経た上当該世帯又は当該被保護者に対する保護の変更、停止又は廃止を実施。


 3 扶養の在り方

 (1)扶養及び扶養調査に係る現行の取扱い

  1 法律
(1) 生活保護法
 民法に定める扶養義務者の扶養は、すべて生活保護法による保護に優先する(第4条第2項)
(2)民法
  (1)  夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。(第752条)
  (2)  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。(第877条第1項)
 夫婦、直系血族及び兄弟姉妹を、生活保護制度では「絶対的扶養義務者」という。
  (3)  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。(第877条第2項)
 三親等内の親族(ただし、絶対的扶養義務者を除く。)を、生活保護制度では「相対的扶養義務者」という。
 実施要領上の取扱い
 要保護者に民法上の扶養義務を履行できる扶養義務者のあるときは、その扶養を保護に優先。
(1) 扶養義務者の有無の調査
 次に掲げる扶養義務者について、本人の申告を受け、必要があれば戸籍謄本等で確認
  (1)  絶対的扶養義務者
  (2)  相対的扶養義務者のうち、現に当該要保護者等を扶養している者
  (3)  相対的扶養義務者のうち、過去に当該要保護者等から扶養を受ける等特別な事情があり、かつ、扶養能力があると推測される者
(2) 扶養の可能性の調査
 (1)の(1)〜(3)の扶養義務者について、要保護者その他により聴取する等の方法で扶養の可能性を調査
(3)扶養能力の調査
  (1)  生活保持義務関係(夫婦、親子(未成熟の子)間)にある扶養義務者
  (2)  扶養の可能性が期待されるその他の扶養義務者について実地や書面等で扶養能力を調査。
(4) 保護開始後の扶養能力及び履行調査
 変動が予想されれば速やかに調査、少なくとも年1回程度実施。
(5) 扶養の履行が期待できない者に対する調査
 要保護者の生活歴等から特別な事情があり、明らかに扶養ができない者、夫の暴力(DV)から逃れてきた母子等、扶養義務者に対し扶養を求めることが要保護者の自立を阻害することとなり、明らかに扶養義務の履行が期待できない場合は、生活保持義務関係にある扶養義務者に対して直接照会せず、関係機関等に対して照会を行い扶養能力を把握。

 (2) 厚生労働省監査実施福祉事務所の扶養能力調査の状況

 
  平成11年度 平成12年度 平成13年度
扶養調査先別件数
総数 (A)
32,484 28,765 34,356
前夫等 (B)
888 955 924
(C)
4,150 3,631 4,378
(D)
8,838 7,939 9,816
その他 (E)
18,608 16,240 19,238
扶養義務履行件数
総数 (F)
1,048 730 737
(F/A) 3.2% 2.5% 2.1%
前夫等 (G)
88 85 85
(G/B) 9.9% 8.9% 9.2%
(H)
145 131 104
(H/C) 3.5% 3.6% 2.4%
(I)
326 298 335
(I/D) 3.7% 3.8% 3.4%
その他 (J)
489 216 213
(J/E) 2.6% 1.3% 1.1%
扶養不能 (K)
24,606 22,743 26,440
(K/A) 75.7% 79.1% 77.0%
未回答(L) (L)
6,815 5,292 6,953
(L/A) 21.0% 18.4% 20.2%
資料: 生活保護法施行事務監査資料

※扶養義務者の状況(平成9年度)
総世帯数 扶養義務者のいる世帯 仕送り者のいる世帯
(A)
仕送り者数(B) 仕送り総額(月額)(C) 仕送り者一世帯当たりの仕送り月額(C/A) 仕送り者一人当たりの仕送り月額(C/B)
(世帯) (世帯) (世帯) (人) (千円) (円) (円)
605,350 564,170 49,670 60,610 701,328 14,120 11,571
資料: 平成9年被保護者全国一斉調査(個別)(7月1日現在)

 (3)一般世帯の仕送りの状況

  所得の種類別、所得四分位階級別・世帯類型別世帯数

所得四分位階級
所得の種類





世帯類型
世帯数 当該所得のある世帯の割合(%)
総数 雇用者所得 公的年金・恩給 公的年金・恩給以外の社会保障給付金給 仕送り その他 総数 雇用者所得 公的年金・恩給 公的年金・恩給以外の社会保障給付金給 仕送り その他
総数 総数 7,623 5,561 3,482 648 275 2,405 100.0 73.0 45.7 8.5 3.6 31.5
高齢者世帯 1,360 200 1,308 75 43 452 100.0 14.7 96.2 5.5 3.2 33.2
母子世帯 115 104 10 54 3 14 100.0 90.4 8.7 47.0 2.6 12.2
その他の世帯 6,148 5,257 2,164 519 229 1,939 100.0 85.5 35.2 8.4 3.7 31.5
  第I 総数 1,906 697 1,088 193 210 383 100.0 36.6 57.1 10.1 11.0 20.1
高齢者世帯 753 46 710 55 35 149 100.0 6.1 94.3 7.3 4.6 19.8
母子世帯 75 65 4 36 2 9 100.0 86.7 5.3 48.0 2.7 12.0
その他の世帯 1,078 586 374 102 173 225 100.0 54.4 34.7 9.5 16.0 20.9
第II  総数 1,906 1,278 925 177 29 529 100.0 67.1 48.5 9.3 1.5 27.8
高齢者世帯 428 63 425 11 7 156 100.0 14.7 99.3 2.6 1.6 36.4
母子世帯 35 34 4 17 1 3 100.0 97.1 11.4 48.6 2.9 8.6
その他の世帯 1,443 1,181 496 149 21 370 100.0 81.8 34.4 10.3 1.5 25.6
第III  総数 1,905 1,739 705 191 17 620 100.0 91.3 37.0 10.0 0.9 32.5
高齢者世帯 129 54 126 5 1 95 100.0 41.9 97.7 3.9 0.8 73.6
母子世帯 4 4 1 1 - 2 100.0 100.0 25.0 25.0 - 50.0
その他の世帯 1,772 1,681 578 185 16 523 100.0 94.9 32.6 10.4 0.9 29.5
第IV 総数 1,906 1,847 764 87 19 873 100.0 96.9 40.1 4.6 1.0 45.8
高齢者世帯 50 37 47 4 - 52 100.0 74.0 94.0 8.0 - 104.0
母子世帯 1 1 1 - - - 100.0 100.0 100.0 - - -
その他の世帯 1,855 1,809 716 83 19 821 100.0 97.5 38.6 4.5 1.0 44.3
資料: 国民生活基礎調査(平成14年)
注: 「所得四分位階級」とは、調査対象世帯全世帯の所得を低いものから高いものへと順に並べて4等分し、所得の低い世帯群から第I・第II・第III及び第IV四分位階級とするもの。
 
各分位の1世帯あたり平均所得金額
第I・四分位:157.2万円、第II・四分位:373.4万円、第III・四分位:628.7万円、第IV・四分位:1248.9万円
注: 「その他の世帯」には、「父子世帯」を含む。
注: 所得の種類は重複計上になっている。


所得の種類別にみた1世帯当たり平均所得金額の年次推移
 
(単位:万円(年額))
年次 総所得 雇用者所得 公的年金・恩給 年金以外の社会保障給付金 仕送り その他
  1世帯当たり平均所得金額
平成4年 647.8 499.1 58.1 3.1 3.3 84.1
   5 657.5 511.6 56.5 2.5 3.4 83.6
   6 664.2 502.6 63.4 3.8 4.5 89.8
   7 659.6 505.3 67.0 2.8 4.0 80.4
   8 661.2 502.8 74.2 2.9 4.4 76.8
   9 657.7 493.8 75.2 3.6 5.1 79.9
   10 655.2 490.3 81.6 3.2 5.1 75.1
   11 626.0 463.2 81.5 3.8 3.4 74.1
   12 616.9 445.5 87.1 3.4 3.4 68.9
   13 602.0 436.3 90.4 4.5 3.8 62.3
  構成割合(単位:%)
平成4年 100.0 77.0 9.0 0.5 0.5 13.0
   5 100.0 77.8 8.6 0.4 0.5 12.7
   6 100.0 75.7 9.5 0.6 0.7 13.5
   7 100.0 76.6 10.2 0.4 0.6 12.2
   8 100.0 76.0 11.2 0.4 0.7 11.6
   9 100.0 75.1 11.4 0.5 0.8 12.1
   10 100.0 74.8 12.5 0.5 0.8 11.5
   11 100.0 74.0 13.0 0.6 0.5 11.8
   12 100.0 72.2 14.1 0.6 0.5 11.2
   13 100.0 72.5 15.0 0.7 0.6 10.3
資料: 国民生活基礎調査(平成14年)


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