審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第5回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録



1 日時 平成16年2月24日(火)10:00〜12:00

2 場所 厚生労働省専用第13会議室

3 出席者
 【委員】 公益委員 渡辺会長、今野委員、岡部委員、勝委員

 労働者側委員 弥富委員、加藤委員、久保委員、中野委員、
 山口委員、横山委員

 使用者側委員 池田委員、内海委員、川本委員、杉山委員、東條委員、原川委員

 配付資料

 資料1 前回の議論における論点(改定のあり方)

 資料2 前回の議論における論点(金額水準)

 資料3 生活保護制度の概要

 資料4 標準生計費(1人世帯、月額)

 資料5 都道府県別一般賃金に対する最低賃金比率

 資料6 地域別最低賃金と所定内給与との関係



 議事内容

○会長
 ただいまから第5回「目安制度のあり方に関する全員協議会」を開催いたします。第4回「目安制度のあり方に関する全員協議会」でご了解いただいたスケジュールに従い、本日の全員協議会では、「改定のあり方」及び「金額水準」について検討を行いたいと思います。最初に「改定のあり方」について検討を行いたいと思います。事務局より配付資料に関する説明をお願いいたします。

○事務局
 配付資料についてご説明いたします。資料は6点あります。資料No.1が「改定のあり方」の関係、資料No.2〜No.6が「金額水準」の関係となっております。お手元にファイルを用意してあり、これまでの全員協議会の資料一式です。それでは、資料No.1を説明いたします。
 資料No.1は、改定のあり方にかかるこれまでの議論を事務局の責任でまとめたものです。意見としては2つあり、「数年に一回など新たなルールを決めて審議することが適当」という意見と「毎年審議することが必要」との意見に分かれると思われますが、それぞれの部分について資料を読み上げます。
 1の「数年に一回など新たなルールを決めて審議することが適当」との意見ですが、「賃金の引き上げが低くなる中、毎年改定することの効果が薄れているので、3年に1回なら3年に1回とルールを作って、3年前と当年を比べて、引き上げなり引き下げをすればいい。20年前とは経済環境が変わってきているのだということをもう少し考えるべき。
 マイナス改定もあり得るのであれば、毎年改定する意味はあるが、上げることしかできないのであれば毎年改定する必要はない。
 年々企業がコスト削減をしているように行政もコスト削減が必要。その意味から毎年中央最低賃金審議会、地方最低賃金審議会で最低賃金の議論をするのはかなりの経費がかかる。
 いままで積み上げてきたデータから、自動的に算出できる方法というのもこの際探ってみてもいいのではないか」といったものがありました。
 2の「毎年審議することが必要」という意見としては、「毎年諮問をして、審議会で議論をして目安を示すという現行の仕組みで、基本的にいいのではないか。
 諮問をするしないのルール化が難しい中で、行政コストはかかるかもしれないが、最低賃金制の重要性を考えれば毎年審議をするのはやむを得ないのではないか」といったものがありました。
 3の「その他」としては、「毎年諮問をしないのであれば、中央最低賃金審議会も地方最低賃金審議会も両方とも諮問しないという形にして欲しいとの意見があった。
 物価スライド制は上にも下にもスパイラル傾向があるので、慎重にしたほうがいい。
 水準自体がみんなが納得する水準であれば引上げではなく引下げがあってもいいが、現実にはそうなっていない」などの意見が出ております。
 また先月実施した地方最低賃金審議会会長からのヒアリングの際に、目安について、地方最低賃金審議会の会長より出された意見として「参考」でまとめてあります。「組織労働者の賃金が、毎年改定されており、その観点からも毎年改定の審議を行う必要があるので地方最低賃金審議会に毎年目安を示してもらう必要がある。
 地方最低賃金審議会としてはどのような経済状況であっても、目安は示して欲しい。特に今日のような経済状況の中では目安がないと結論に到達できない」といった意見がありました。以上です。

○会長
 これまでのフリーディスカッションの際に、いろいろな角度から議論が出されておりましたが、最初にその議論を整理をしておきたいと思います。いま出されましたように、毎年改定するかどうかが、改定のあり方として議論されてきたわけですが、この問題を広く捉えますと、中央最低賃金審議会における目安審議と地方最低賃金審議会における最低賃金の審議と2つの局面で問題になります。地方最低賃金審議会における最低賃金の審議については、都道府県労働局長が地方最低賃金審議会に諮問するもので、この場での議論は中央最低賃金審議会での目安審議について行うことが適当と思います。
 現在、毎年中央最低賃金審議会が目安を示すとする昭和52年答申を尊重して、厚生労働大臣から毎年の目安の諮問が行われており、これに応えて中央最低賃金審議会が目安の調査審議を行っています。したがって、今回この中央最低賃金審議会として検討すべきことは、諮問するかしないかということではなく、厚生労働大臣の諮問を受けるか受けないかということではなく、毎年目安を示すとする昭和52年の答申を維持するかどうかだと思います。非常に根本的な問題ですが、そうした観点で、これからご議論をお願いしたいと思います。
 それでは、事務局から行っていただきましたこれまでのフリーディスカッションの整理で、「数年に1回諮問すべきだ」という考え方と「毎年諮問が必要である」という考え方の2つに分けて整理がありました。「参考」に地方最低賃金審議会会長からのヒアリング結果もこのような見解であったと示されておりますので、ご自由にご意見をいただきたいと思います。

○公益委員
 前回、この場におりませんでしたので、前回議論があれば繰り返しになってしまいますが、二通りの意見があります。技術的な問題で、3年に1回というルールにして、その賃金状況を調査するときに、3年ごとに1回だと3年前の賃金を聞くという形になり、それと今と比較してどうかという話になるかと思います。特に小さい会社は、3年前の賃金を書けと言われても難しそうな気がするのですが、その辺の技術的な問題はどう考えられているのかということと、ここで議論があったらお聞かせいただきたいということです。
 もう一点は、経済環境が変わっているので、毎年1回諮問する必要性はどうかという意見が、資料No.1にもあります。「参考」にある地方最低賃金審議会の会長からのヒアリングにも書いてありますが、組織労働者は、今でも毎年1回改定をしているわけで、いま何となく改定の必要がなさそうに見えるのは、ベアゼロの状況が大手企業を中心に広がっているので、そのように見えるかと思いますが、それにもかかわらず毎年1回やっています。特にベアゼロは大手企業の問題で、大手企業の場合はベアゼロと言っても定期昇給がありますので、それが1つの基準になっているわけです。中小の場合は定期昇給という概念がはっきりしない会社が多いわけですから、そこでは特に毎年1回賃金改定の交渉を行うことが非常に重要だというのが現実だろうと思います。特に最低賃金で対象になっている労働者は中小企業のほうが、直接的に影響が大きいだろうと思いますし、関連する労働者は多いと思います。そうすると、私は少なくとも当面は1年に1回は必要かと考えていますが、いかがですか。

○会長
 最初の問題は、賃金改定状況調査を毎年している。それが3年に1回ということになると、調査の技術的な側面でいろいろ問題が出てきはしないか。フリーディスカッションの中に出てきた問題ですが、改めて重要な問題ですので、事務局で何かお考えがありますか。

○事務局
 特に考えというほど検討しているわけではありませんが、現在やっている賃金改定状況調査は、今年の賃金と昨年の賃金を並べて書いてもらうことになりますので、仮に3年に1回なり2年に1回なりすると、2年前、3年前の賃金を聞くことにならざるを得ないかと思います。

○会長
 賃金台帳は、労働基準法で3年保存の義務がありますから、ないことはないかもしれませんが、調査がかなり複雑になるということはあるかもしれません。

○使側委員
 商工会議所としても、行政コストの面から言いますと、毎年やる必要はないのではないかというスタンスがあるわけです。同時に地方もそれなりのコストがかかりますから、今の経済情勢からいえば、必要のないものはやる必要がないのではないかという観点があります。いままでの慣例と違って、マイナス改定もあり得るのだという前提条件がなければ、これからは毎年やっていく意味がないのではないかということは、強く主張したいと思います。
 質問ですが、地方の方は毎年やってほしいという要望が非常に強いと聞いています。昭和52年の答申が、ここで翻された場合に、地方が本当に納得するのかというのは疑問を持ちます。ここでやるのをやめようということになっても、47都道府県がどういう形になるのか分からないところがあります。
 全部のランクをやる必要があるのか、特別必要が生じているランクを絞ってやることも1つの選択としてあるのではないかと思います。

○会長
 毎年やらないとした場合、地方最低賃金審議会がそれをどう受け止めるか、実際どういうことが予想されるかというのが問題のようです。その点については予測の話になりますので。

○労側委員
 前回の発言の繰り返しになるので控えていましたが、改めて労働者側の立場として、毎年目安改定の審議を行うべきだという立場で、最低賃金が及ぼす影響なり最低賃金の果たしている役割は、審議に使う行政コストでは測れないほど重いものがあるのではないかと思います。
 最低賃金の改定については、地方最低賃金審議会ごとに決定されるわけで、中央最低賃金審議会の果たす役割は地方最低賃金審議会に対する目安額を提示するということですので、それに対して中央最低賃金審議会が一定の判断基準を設けて諮問をする、しないという取り扱いをすることになると、審議が複雑になるのではないかと思いますし、そうしないほうがいいのではないかと思います。
 昭和52年の中央最低賃金審議会答申で、毎年目安を提示することになっていますので、地方最低賃金審議会の円滑な審議運営に資するうえでも、毎年厚生労働大臣からの諮問を受けて、その時々の経済や経営状況、雇用などのマクロ環境に加えて、私どもの立場から言えば、賃金も変動するわけです。賃金の動向や生計費の実態なども踏まえながら、その時々の状況を慎重に精査しながら、結論を導き出すことが、その年の地方における最低賃金額を決めるうえで、非常に重要ではないかと思っております。繰り返しになりますが、毎年目安を示すべきだという考え方です。

○会長
 昭和52年の答申では、「できるだけ全国的に整合性ある決定が行われるよう、中央最低賃金審議会が、最低賃金額の改定について毎年目安を提示するものとする」ということで、昭和52年答申で、全国的整合性を図ることが大きな理由になっており、それ以降、毎年やってきたのです。

○公益委員
 1のいちばん下の・で、自動的に算出できる方法はないかというのは、理想的なものができれば夢のような話で大変素晴らしいこととは思います。しかしながら、現実には、この最低賃金の問題は、そういうことができないから、過去に大変苦労してきた歴史があるのだろうと思います。つまり、経済情勢、雇用情勢、労使の意向など諸般の事情を考慮しながら決めていくという意味で、この中央最低賃金審議会の役割もあるのだろうと思います。自動的に算出できる方式は、これからももちろん研究しなければいけませんが、確信の持てるようなものができるまで、そういう方式はおいそれとはできないのではないかという感じがします。

○使側委員
 私も今回が初回で、前の議論を聞いておりませんので、その点では発言しにくいところがあります。今日は基本的にフリーディスカッションの延長で、労働者側、使用者側というある程度のまとめをしたうえでの話ではないということを前提として、私の疑問を含めての考え方を述べさせていただきます。
 2年とか3年とか据置くとすると、据置くための基準を決める必要があると思います。例えば、消費者物価上昇率、賃金の上昇率など特定の基準を決めて、それに基づいてやるとしますと、先ほど公益委員からあった諸般の事情を前提として決めているものを、特定の基準だけで決められるのか。議論した末で結論が出てくるものを、まず議論しない前に前提として、今年はゼロだろうからやらないということが、素人考えではありますが、論理的に可能なのだろうかという気がします。
 非常に基準が難しいのではないか。したがって、その基準をここで決め得るなら別ですが、それは自動的に決められるというところに結び付く議論になるわけで、その意味では無理を承知で言っているとも言えるのです。そういう点について条件として入れる必要があるような気がします。

○会長
 おっしゃるように仮に毎年諮問しないこともあり得るとした場合に、どういう場合に諮問があって、どういう場合に諮問がないかについて、厚生労働大臣が中央最低賃金審議会に諮問するということなのですが、そのことについて、この場で議論する余地がなく、結果的に諮問されなければ最低賃金に動きがないということにもなりかねません。する、しないの基準を予め決めておくことは大変難しいことです。しかし、諮問を受けたが、上げることも不適当、下げることも不適当で据置きということも、目安審議会のいわば自主的な調査・審議・精査の結果、そういう結論が出てくるならば、それはそれでよしということで、諮問がなかったのと同じ効果になるわけです。
 私もいまおっしゃられたことを前々から感じており、諮問するか、しないかを中央最低賃金審議会の場ではなく、厚生労働大臣がまず決めてしまおうという決める際の基準を、ここで決めることもできるのかどうかは、大変難しいことではないかという感じを強く持って議論を聞いていました。

○使側委員
 私からも一言いまの延長で意見を申し上げたいと思います。最初に会長がお話になったように、中央最低賃金審議会の目安審議と地方最低賃金審議会の審議とは全く別で、あくまでも地方最低賃金審議会で、その状況で各都道府県で決めています。それについて昭和52年の答申の意味は、各地方で決めるときの整合性を図るために、中央最低賃金審議会としては目安を出そうということが役割になっていますので、整合性をとる必要がない状況においては、目安を出さなくてもいいということがあり得るかもしれませんが、果たしてそのように言い切れるかどうかという状況があると思います。
 もう1つは、本来は目安が中央最低賃金審議会から出ようと出まいと地方は地方で審議するかしないかを決めてやることになるのだと思いますが、この前のヒアリング等を聞いていても、現在のところ、目安が非常に必要であるという意見もありましたので、それも踏まえて、今回のこの件については答を出さなければいけないと思っています。

○使側委員
 この前と重複するかもしれませんが、技術的な、データ的な問題はあると思っています。1つの流れというか、時代の流れがあるのではないかと思います。企業は、ここのところ毎年賃上げができる環境ではなくなりつつあって、当面は賃上げ一辺倒の時代から変わりつつあるのではないかと認識しております。
 中小企業は、特にコスト削減が企業の死命を制する最大の課題になっているという観点から、総人件費の管理というか抑制が必要になってくるわけです。その一方で、雇用の維持の重要性が言われており、その要請があります。例えば、若年者の雇用もそうですし、この前決定した65歳の継続雇用の要請もありますし、ワークシェアリングや短時間労働の問題もあります。そういうときに現在でも人を増やすことは、企業としてはなかなか難しく、特に中小企業は難しいということです。例えば、65歳の継続雇用を図る場合には、中小企業はあまり定期昇給はありませんが、ベアをやめたり、賞与を削ったりということで、総額を増やさない形で対処していかざるを得ないのです。これは今年とか来年だけの問題ではなく、1つの流れではないかと思います。
 もう1つは、年金問題もそうですが、これから介護保険や医療保険の見直しの問題が出てきます。企業に負担を被せるような流れもコスト負担増につながるものとして、将来的に中小企業の間で、非常に大きな不安を抱かせるものです。
 春闘等の動きを見ますと、日本経団連では、闘う春闘ではなく、話合う春闘だと主張しておりますし、労働組合のほうでも、何が何でも賃上げ一辺倒ということから少し変わりつつあるという感じもします。状況が変わりつつあるということを、中央最低賃金審議会でもよく考えるべきだと思います。
 3年に1回というのは極端かもしれませんが、2年でも隔年でもなるべく合理的に行う。民間の賃金交渉が、毎年大幅な引上げを実現する時代ではなくなってきた中で、毎年改定することはどういう意義があるのか、効果があるのかということもよく考えなければなりません。そういうことで賃上げに対する考え方、賃金に対する考え方が時代の節目に差し掛かってきたのかなということで、どのようにするのが合理的かを申し上げたつもりです。
 いろいろ今まで積み上げてきたものについて、それを変更することは非常に難しい面があると思いますが、大きな流れの中で考えていくべきこともあるのではないかと思います。ここでは中央最低賃金審議会の議論ということですが、中央最低賃金審議会で目安を毎年示さないことになれば、地方最低賃金審議会もそれに合わせる形ができないかということも、1つあるのではないかと思います。

○公益委員
 私も初めて参加させていただいて、今日はいろいろ議論を聞き、過去の議論もペーパーで見せていただきました。3年ごとに審議するという意見の背景としては、行政コストの問題と経済環境が20年前とは大きく変わっているということ、マイナスの改定がないということがベースになっていると思います。20年前と経済環境が変わってきているということはデフレのことを言っているのだと思います。
 もう1つ変わってきているのは経済の変化のスピードが非常に速くなっていることがあるわけです。例えば、市場の環境などは、かなり大きく変わっており、デフレ経済がかなり長く続いているわけですが、この解消もいつ、どういう形でなされるかは、過去と比べれば、かなり速くなっているということは変化としてあるのではないか。
 そうだとすると、数年に1回改定を審議することについては、実情を踏まえたものにはならないのではないかということが第1点です。
 もう1つは、先ほど出ましたが、自動的に算出できる方法があれば3年に1回でも改定審議で賄うことができるというご意見がありましたが、自動的に算出できる方法というのは非常に難しい。つまり、インフレだけで最低賃金が決まるわけではなく、例えば、企業側の支払い能力や賃金の動向、生計費の動向など、さまざまな変数ともかかわってきているということを考えると、毎年審議することが必要なのではないかと思います。
 先ほどの使用者側から、マイナスの改定があれば毎年審議することも容認できるという意見がありましたが、最低賃金に関して、例えば、オランダなどではマイナスの改定があったわけですが、我が国においてはマイナスの改定はあり得ないという認識でよろしいのでしょうか。

○事務局
 今までの経緯で申しますと、マイナスの改定があったことはありませんが、最低賃金法自体にマイナスの改定を禁じるような規定はありません。

○会長
 私の覚えですが、賃金改定状況調査の調査項目を改定するということが、数年前に行われ、今までは賃金引上げ額を改定状況調査として調査対象にしていたのですが、引下げも調査対象にするという形で状況変化に適切に対応していこうという努力は、その中でなされてきたということはあります。結果として目安額がマイナスで示されることは昭和52年以来なかったのは事実です。

○労側委員
 先ほど労働組合というか労働界全体の賃金に対する考え方が変わったと言われましたが、私も変わっていると思います。我々も実際上、賃金カーブ維持という方針は3年目で、経済状況なり世界的な市場状況を見ても、我々が議論しても、そういうところを基本線にすべきだということになっています。その中でパートについては10円上げましょう、生活ができる賃金を目指しましょうという方針を連合は持っています。
 そういう点で先ほどの使側委員のお話も、昔のような恵まれたフルタイムの正社員の賃金の水準のあり方は、労使の中でいま大変議論になっており、賃金制度を労使で議論をして変えている所もありますし、緊急避難的に賃金カットをして企業を守る、職場を守る動きも実際にあるわけです。当該労使がきちんとした議論をしながらやればそれはそれでいいのですが、その底辺としての賃金水準については、我々はいまの最低賃金の水準自体が低い、これでは生活できないというのがあって、そこについてはきちんと上げていくべきだとずっと主張しているわけです。マイナスというのも、きちんとした誰もが納得する水準であれば、物価が下がったら下げるということも理論的にはあってもいいのではないかと思っています。
 ILOの判断をどうするのか、いろいろな議論はありますが、そういう点では使用者側からでもマイナスにすべきだという考えで、目安審議でも最初にそういう発言もありました。そういうことを踏まえながら議論をしています。目安制度ができたときに賃金は上がっていくものだという雰囲気があったのですが、この数年、我々は上げるべきだと言いながら、目安が示されなかったり、ゼロだったりという、中央最低賃金審議会で議論した結果を示しています。この状況が5年も6年も続くとは思っていませんし、少しでもきちんとした経済成長になるように、1%になるのか2%になるのか分かりませんが、少なくとも安定的なものに、国全体がそういう方向に政策的にやっていかなければ中小企業などはもたないと思っています。そういう意味では、そういう変化の中で、毎年審議することについては、是非継続していただきたいと思っています。

○公益委員
 賃金が比較的安定しているから3年に1回というお話だったのですが、3年に1回やった場合、どうなるだろうかを考えてみました。3年に1回やって決めると、3年後まで制約してしまいます。ということは将来に対する不確定要素をいろいろ考えなければいけないということになるわけです。将来予測を入れるということは、極めて難しい要素をたくさん入れるわけですから、議論が大変難しくなるだろうし、先ほどから出ている自動的に計算できる方法がいいなと言って、計算式ができたとしても、将来のインフレ率をどう入れるかとか、また不確定要素が非常に多くなり、非常に難しくなるだろうと思います。
 先ほど使用者側委員が、賃金が上がることが問題だから3年に1回と言われましたが、3年に1回にしてしまうと、賃金が上がってしまう可能性もあります。つまり、不確定要素の中での議論の仕方ですから、賃金を比較的上げないような状況にしていきたいから3年に1回と言われるのですが、上げないような状況と3年に1回とは論理的にはつながっておらず全然別物で、3年に1回にするから上がらないような状況になるかもしれないし、3年に1回にしたから上がる状況になってしまうかもしれません。
 例えば、ヨーロッパなどは賃金を3年に1回というのを協定でやっていますが、3年に1回の協定だから賃金が抑えられているかと言ったら、そんなことはありません。したがって、そこは論理的に切れているのではないかという気がします。しかも今はいろいろな状況が不確定ですから、不確定なときには細かく調整していったほうがリスクが小さいと考えると、毎年やっていったほうが当面はいいかなと思います。

○会長
 非常にさまざまな意見を出していただきましたが、特に付け加えてご意見はございますか。

○使側委員
 賃下げもあり得るかどうかということですが、平成14年の12月に出した産業別最低賃金制度全員協議会報告の中で、最低賃金決定要覧の215頁の2の(1)の(1)の「関係労使当事者間の意思疎通」というのがあって、「産業別最低賃金の決定、改正又は廃止(以下決定等)に関する云々」とありますが、ここの表現を検討したときに、「廃止」を入れましたが、決定、改正、改正には上も下もあるという意味で、「改正」という言葉を使ったと記憶しているのですが、どうでしょうか。

○事務局
 いま手元に議事録などがありませんし、今日は目安制度のあり方の話でしたので持ち合わせておりませんので、あとで確認します。

○会長
 使側委員のご意見も、いろいろなことを考慮のうえ、今後の目安制度をどのような合理的なものにしていくかについての1つの問題提起であるというご意見でしたので、そのように承りました。
 活発なご意見をいただきましたが、冒頭で申し上げましたように、昭和52年答申には中央最低賃金審議会において、毎年目安を提示することになっており、これを今日の段階で根本的に見直すことについては、中央最低賃金審議会に与えられた役割や調査の技術面が、今日いろいろ出ましたが、いろいろな問題があるように思います。地方最低賃金審議会の円滑な審議に資するという面から考えても、毎年目安を示すことが適当で、引き続き昭和52年の答申を踏襲していくことが、最低賃金制度の効果的な運営に寄与するものではないかと考えます。とは言え、まだまだ議論をし足りない向きもあるかもしれませんが、時間の関係もありますので、この問題については、本日はここまでとして、さらに必要があれば後日取り上げることとして、次の議題に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。 (了承)

○会長
 それでは、「金額水準」についての検討に移りたいと思います。事務局から配付資料についての説明をお願いいたします。

○事務局
 「金額水準」の資料について説明いたします。お手元の資料No.2〜No.6が金額水準の関係の資料です。資料No.2では、金額水準に係るこれまでの議論を事務局の責任でまとめたものです。
 金額水準に係る意見としては、「最低賃金の水準は中間賃金や平均賃金に対してどの程度が適当なのかというのは、一つの考え方としてあると思う。
 必要最低生計費をさいたま市で積み上げた場合、14万6,000円という連合としての資料がまとまっている。必要な生計費を担保できるというのも、一つの大きな要素であると思うので、今後とも生計費という意味でその水準論について主張していきたい。
 都道府県別の生計費のグラフに生活保護を重ね合わせ比較してみてはどうか」という意見が出ています。
 また先月の地方最低賃金審議会の会長からのヒアリングの際に、会長から出された意見として「参考」部分ですが、「金額水準は大変難解な問題。現行の金額水準は、地方最低賃金審議会において、公労使が真剣に議論を重ねてきたものであり、最も尊重されるべきと考えている。
 最低賃金と生活保護の最低生活費との比較が出されて、働くほうが生活保護を受けるよりも少ない収入であることはおかしいという主張が労働者側から出されているが、それに明確に答えられる論議は、なかなか見当たらない」といった意見が出ております。
 資料No.3です。これまでのフリーディスカッションにおいて、生活保護についての話がありましたので、基礎資料として「生活保護制度の概要」を準備しました。まず生活保護の目的は、生活に現に困窮している国民に、その困窮の程度に応じ必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立の助長を図ることとなります。
 対象者は、困窮に至った理由については問いませんが、資産、能力等すべてを活用した上でも、生活に困窮する者とされており、各種社会保障施策による支援、不動産等の資産、扶養義務者による扶養、稼働能力などを活用しても生活に困窮する者に限られております。
 保護の内容としては、資料No.3の3頁にも体系を整理していますが、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類から構成されております。
 各扶助によって健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活を保障するということになっています。
 なお、扶助の基準については、要保護者の年齢、世帯の構成、所在地などの事情を考慮して、厚生労働大臣の設定基準に基づくこととなっております。
 保護の実施機関は、都道府県知事及び市町村長により設置される福祉事務所の長となっております。
 保護受給に至る手続は、原則は申請によるものとなっています。申請の手順としては、まず事前の相談があって、保護の申請となります。申請の際には預貯金、保険、不動産等の資産調査、扶養義務者による扶養の可否の調査、年金等の社会保障給付、就労収入等の調査、就労可能性の調査などが行われることになります。
 調査の結果、必要と認められる者については、保護を決定して実施すること、つまり、保護費の支給等が行われることとなっています。
 申請は要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基づくことが原則とされておりますが、急迫した状況があるとき、例えば、行き倒れ等の場合は職権による保護が行われる場合があります。
 保護の要否の判定と支給される保護費ですが、厚生労働大臣が定める基準で測定される最低生活費と収入とを比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用されることになり、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されることになっています。
 保護適用については、世帯の実態に応じ、年2〜12回の訪問調査などが行われ、制度の厳格な運用が行われています。
 3頁では、最低生活費の体系を整理しています。最低生活費を計算する尺度となる保護基準は、厚生労働大臣が要保護者の年齢、世帯の構成、所在地等の事情を考慮して、扶助別に8種類を定めております。ここで生活扶助に着目しますと、食事等の個人単位の経費である第1類費、光熱費等世帯単位の経費である第2類費、老齢加算や母子加算といった各種加算から成り立っています。
 4頁では、最低生活費の算出方法を整理しています。まず(1)の生活扶助基準の第1類費ですが、食事等の個人単位の経費です。年齢階層と級地によって額が設定されています。級地については、例えば、東京都の23区ですと、1級地−1となり、北海道の札幌市などは1級地−2で、地域によって級地が定められています。
 (2)の生活扶助基準の第2類費の部分ですが、光熱費等の世帯単位での経費について、世帯人員と級地から額が設定されております。また暖房費などの冬季加算が別途これに加えて計上されます。
 (3)の加算額については、老人、障害者、母(父)子世帯など個別事情によって、それぞれ級地ごとに加算されることになっています。
 (4)の住宅扶助基準についても、限度額は1級地、2級地、3級地ということで差が設けられています。
 その他として教育扶助、介護扶助、医療扶助など各種扶助が加算され、最終的な最低生活費が認定されている状況になっています。
 資料No.4です。以前事務局より提出した1人世帯の月額の標準生計費のグラフに、今回事務局で新たに試算した生活保護費を加えたグラフです。グラフの中身について再度確認しますと、棒グラフは都道府県人事委員会が試算している標準生計費になります。当標準生計費については、実際の消費水準から計算したもので、たまたま調査対象世帯が高額消費世帯だった場合など、数字がぶれてしまうことになります。千葉県など部分的に高い所が見られますが、そういった調査対象の世帯のぶれが影響していると考えられます。
 太線の折線グラフは、先ほどの標準生計費について、各ランクの平均値を取ったものです。
 ▲でマークしている折線グラフですが、各都道府県の地域別最低賃金額に176時間を掛けたもの、つまり22日×8時間を想定したものになっています。
 今回新たに付け加えた数字が生活保護費で、◆でマークしている点線の折線グラフの部分です。生活保護世帯をどのように見るかということで数字が異なってきますので、今回は18歳単身世帯を想定して賃金時間課で一定の制約を付けて試算しています。
 まず地域については、各都道府県の県庁所在地を取っています。食費等の生活扶助基準の第1類費については18歳でとっています。光熱費等の生活扶助基準の第2類費については、単身世帯ということでとっており、それに加えて暖房費などの冬季加算及び住宅扶助は級地別の平均値で、実際にもらっている額の平均値を加算しています。
 このような設定を設けて計算した生活保護費がグラフのようになっており、概ね最低賃金額よりも低い水準になっています。
 ただ、ここで留意すべきことがあって、例えば、賃金の場合では、当然租税公課がかかりますので、実際にはこれよりも水準として低くなる可能性があると思います。また最低生活費については、今回、生活扶助基準の第1類費、第2類費、冬季加算及び住宅扶助だけに限定しておりますが、実際にはその家庭に応じて他の扶助も加算される可能性があります。
 また世帯人員も今回は単身世帯ですが、2人世帯、3人世帯となれば、当然食費等の第1類費が加算され、加算額が増えることもあると思います。いずれにしても一定の条件を付けて機械的に計算した場合、このような結果になるということで留意いただければと考えております。
 資料No.5です。これについては以前事務局よりすでに当目安制度のあり方に関する全員協議会の場に資料として提出したものですが、これまでの議論の中で最低賃金の水準と一般労働者等の平均賃金との比率を見ることが参考になるかもしれないという意見がありましたので、再度提出したものです。
 平成15年の賃金構造基本統計調査を使って、各都道府県の最低賃金額と一般労働者の単位時間当たりの所定内給与と比較したものです。一般労働者の単位時間当たり所定内給与を分母にとっています。A、B、Cとランクが下がるに従い、比率としてはおおむね高くなっています。また、都道府県別で見ると、東京都の31.4%が最も低く、またDランク、例えば青森県などでは45.3%で非常に高い水準になっております。
 続いて資料No.6です。こちらも以前に事務局より提出した資料ですが、全国ベースで見た場合の地域別最低賃金額と、一般労働者、パートタイム労働者の所定内給与との関係を見たものです。まず一般労働者についてです。産業計で企業規模10人以上でみると、(2)/(5)というところです。昭和53年当時は37%程度だったものが、次第に低下して平成5年には34%程度まで下がっておりましたが、最近はまた36%台で推移しています。一方、企業規模で10〜99人でみると、時間額比の直近では大体43%程度です。
 次の頁は、パートタイム労働者の賃金水準と比較して見ています。時間額比(2)/(3)は、パートタイム労働者全体では時間額比で73%弱になっています。女性に限定して見た場合が、時間額比(2)/(4)ですが、大体74%程度になっています。以上です。

○会長
 ご質問、ご意見がありましたらお願いします。

○使側委員
 いまの資料No.6の最初の頁で、産業計・企業規模が10〜99人というのがよくわからないです。

○事務局
 10人以上ですと、100人以上の企業も入っていることになりますので、10〜99人と、限定を加えて絞ったものということになります。

○会長
 資料No.4で、最低賃金額と生活扶助費で、東京都の場合も最低賃金額のほうが上回っている数字が出ていますが、おそらくこれは住宅扶助実績額が級地別平均値になっていて、東京都は1級地の1で1万3,000円で、それ以外のところ、2級地も同じ額ですが、3級地は8,000円ですので、全国平均をするとこういう数字になるわけですが、東京都の場合に1万3,000円という住宅扶助費で計算をすれば、上下関係は怪しくなるという事情はすでにいろいろなところで指摘をされているところです。それは間違いないですか。

○事務局
 東京の場合ですと、今回1級地の1の1人世帯の保護費の平均で取っていまして、住宅扶助ですと大体3万円ということで計算しています。1級地の1は限度額が1万3,000円になっているのですが、実際には、地域によりこの額以上の特別基準もあり、もう少しもらえるところがあります。東京都は、1級地の1の地域で平均でもらっている住宅扶助ということで、約3万円で計算しております。

○会長
 3万円で計算して、最低賃金額よりも低いということですか。

○事務局
 はい。試算の結果ではそのようになっております。

○会長
 わかりました。東京都といっても23区と、1級地の1と1級地の2があるのではないかと思うのです。それで生活扶助基準が23区内と、青梅市かどこかの特定の市の1級地の1のところをやると、ちょっと逆転現象が生じるということですね。しかし、東京都全体で見れば、こういう上下の差は確保できているということですね。
 公益委員何かありませんか、この前生活保護費との比較でご意見がありましたが。

○公益委員
 感想めいたことですが、意外と最低賃金と生活保護の間の比というか、想像でかなり生活保護が最低賃金を上回るところが多いのではないかと思っていたのですが、実はそうではないということがわかりました。適切な最低賃金なのかと思っています。

○会長
 あとはパートタイム労働者の賃金と最低賃金との比較が出ていますが、いかがでしょうか。

○労側委員
 先ほど使側委員から、今日はフリーディスカッションの延長というお話もありましたが、私のほうも労働者側のまとまった意見提示の段階ではありませんが、最初に少し概括的な考え方を述べさせていただいて口火を切りたいと思います。その後で、少し論議もしてきたので、先ほどの生活保護基準の見方や、パート賃金の実態に対する評価も含めて、他の労働者側の各委員の皆さんから具体的な考え方なども述べさせていただきたいと思っています。
 第1点は目安制度のあり方の論議なので、水準論議の重要性についてです。目安審議においては、引上げ額の議論だけではなくその水準、絶対額を重視した審議にすべきではないかと考えています。その意味で現行の最低賃金が果たして適正な水準なのか、あるいはその影響度はどんな実態にあるのかなども、改めて評価しておく必要があるのではないかと思っています。水準の変化、つまり上げ下げ以上に、根っこからの高さがより重要ではないかと思っているわけです。
 第2点は、最低賃金の影響度についての評価です。最低賃金の水準はその影響度から見て、端的に申し上げて改善されるべきだと思っています。影響率はファイルの資料ですが、第3回目安制度のあり方に関する全員協議会の資料9にも記載されていますが、企業規模を限定した100人未満規模対象の、各地方局がやっている最低賃金に関する基礎調査のベースで見ても、全国平均で2%に満たない状態が続いているわけです。
 賃金構造基本統計調査による全労働者ベースの推計値も数年前から出していますが、全労働者ベースでは最低賃金の影響率は1%程度という実態です。この最低賃金に関する基礎調査による影響率の推移で見ても、1990年(平成2年)頃は、4.5%程度の影響率となっていましたが、以降、もう趨勢的に低下傾向をたどり、1999年(平成11年)以降は1.9%で変化なく推移をしています。最低賃金はもっと存在感のある水準であるべきで、改善が求められているのではないかという感じを持っています。
 第3点は、今日も資料No.6が配付されていますが、一般労働者など、他の賃金指標との比較についてです。最低賃金は一般労働者の賃金実態、実態賃金と比べても低位にあるのではないかと思っています。賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の推計時間額に対する地域別最低賃金の比率は36%程度に留まっているわけです。時系列的に見ると、1980年代前半は37%台とやや高く、一度35%台まで低下して、1998年頃から再び36%台に回復しているものの、ここ2、3年は低下傾向、足踏み状態ではないかと考えています。
 なお、今後最低賃金の水準について議論をするときには、今日もデータを示してもらっておりますが、最低賃金という性格から考えて、パートタイマーの賃金や、高卒初任給などとの比較も大事だと思っておりますし、生計費の面からも吟味する必要があるのではないかと思っております。
 後ほどまたご紹介させていただきますが、生活保護基準や、連合が昨年マーケットバスケット方式で算定をした勤労者の最低生計費なども、そういう意味では参考になるのではないかと思います。
 4点目に、今日の議論の対象ではないと思っていますが、今後、水準論議を充実させるための目安検討資料についてです。次回テーマになるので具体的な検討は私どももしておりませんので、少し感想めいたことですが、賃金改定状況調査を含め、参考資料をもっと水準論議を重視したものに改善すべきだと思っています。具体的にはまた次回以降、検討もしたいと思っていますし、意見も述べさせていただきたいと思っています。非常に概括的な意見で申し訳ございませんでしたが、最初に口火を切らさせていただきました。

○会長
 ありがとうございました。

○労側委員
 私のほうからもご意見申し上げたいと思います。私は昨年から委員になっているのですが、目安の審議の中では前年比較の上げ幅論議に終始したのではないかと思っています。そういう意味から言うと、最低賃金法の最低賃金の原則という立場から言うと、労働者の生計費あるいは類似労働者の賃金、あるいは通常の事業の支払い能力を考慮して定めなければならないという点から言えば、類似労働者の賃金に限って言えば、上げ幅だけではなくて水準を議論しなければいけないのではないかと思っております。
 その水準を議論するときに、比較の対象として、労側委員がおっしゃった影響率がこの間議論されてきただろうと思います。ご指摘のように、ずっと下がってきています。ただ、いろいろこの間議論があってまとまってきたものですので、その中身についてとやかくいう筋合いではありませんが、平成2年の目安制度のあり方に関する全員協議会報告、第1回の目安制度のあり方に関する全員協議会の資料の9頁に載っています。この中では、「ある程度の影響率を持つ水準を設定する必要がある」と報告として記載されています。
 このある程度の水準というのは、平成2年は4.5%だったと思いますが、その水準辺りを念頭に置かれているのだろうと思います。そういう意味から言うと、この全員協議会報告の立場をもう1回確認していただきたいと思っています。
 もう1点は生活保護の水準とのかかわりです。例えば今日の資料No.3の4頁に生活扶助基準の第1類とありますが、この数字がどういうふうに決まっているのか。毎年の水準というのは、たしか予算との関係だったと思うので、政府見通しの民間最終消費支出の動向によって決まっていると理解しています。おそらくこの水準議論についても、生活扶助基準を決めるに当たって相当な議論があるだろうと思います。当該の審議会部会の議論をお聞きしていると、家計調査消費水準の第1十分位を一応の念頭に置いて議論をされていると理解しています。
 そういう立場から言うと、中央最低賃金審議会の賃金審議においても、特定層のモデル的なものを含めた水準比較ができるのではないか。とりわけ先ほどお示しの資料No.4の標準生計費あるいは生活保護費との比較においても、それぞれの標準生計費、生活保護費というのは、単身者世帯だろうと思いますので、単身者世帯の年齢設定なども含めた比較だろうと理解しているので、最低賃金の水準論議としても、特定層の平均の上げ幅だけではなくて、特定層を設定したときの水準比較などがあってもいいのではないかと考えています。以上です。

○労側委員
 資料のところで、パートタイマーの部分の数字が出ていたものですから、少し私が所属している流通業界、サービス業界というのは、いま非常にパートタイマーが増えているということで、少しその現場の実態のことも含めてお話をさせていただきたいと思います。
 全体でもいまパートタイマーの数字は23%ぐらいで、伸びているわけです。昔から流通業界、小売りも含めてサービス業界は、パートタイマーというところに負う部分も多かったわけですが、とみに最近仕事の中身を見ていくと、補助的な業務、一般社員の中のお手伝いというところから、基幹的な仕事を負うような部分も多くなってきています。実際の仕事というところでいくと、店舗等は店長という社員主体の、チーフというところも昔は社員というところが負っていたのですが、その辺りもパートタイマーが多くなっています。
 そういうところがなぜできてきているのかというと、定年退職等の自然退職の穴を正社員では採らないで、そこをパートタイマーで補っているとか、あるいはリストラで少なくなった人員を採る部分ではパートということで。実際に数値で見ても正社員の数はここ数年減っているという実態もあるという中で、現場では仕事の内容は減らないわけで、そこの構成人員が減るということでいくと、仕事の中身が自ずと変わってくることがあると思います。
 そういった、本当にチーフというような特別な人たちは、企業の労使関係の中でということで手当が付いているところもあろうかと思います。そういう人たちを除いたとしても、全体の底上げ、さっき言ったようなところから、一般的な仕事の中身という部分は、かなり昔よりも変わってきているというところがあろうかと思います。
 そうしたところを見て、先ほどのいちばん最後の資料の時間の比較の賃金というところで見ていくと、資料No.6の一般労働者の10人以上、10〜99人というところの時間給の、社員の時間給と、パートタイムというところの時間給を比較してみると、まだ格段に差があります。
 この中を見ていくと、最低賃金制度は、その影響度を考えていくと、そろそろ底上げを図るべき制度なのですが、まだまだその役割を十分に果たしていないのではないかということがあります。まだまだ水準自体、最低賃金のところが低すぎるというところで、改善が必要になってくるのではないかということを申し上げたいと思います。

○労側委員
 私どもで作成した『賃金ミニマム指標プロジェクト』をお渡し、若干の時間で説明させていただきたいと思います。
 連合はここでも主張しているとおり、我々の内部的な運動でも、ミニマム賃金の運動についてきちんとしていこうという議論があって、そのために生計費を考慮した連合のミニマム賃金基準の設定について、2002年の春季生活闘争の中で議論をして、研究をしようということで、この指標プロジェクトを2002年に立ち上げました。
 部会有識者を招いて5回の研究会、地産別19名の委員が集まって9回いろいろな議論をして、2003年7月にこの報告書をまとめました。
 そこでの指標づくりですが、実際の生活にかかる費用を参考に試算するわけですから、地域の設定が当然必要になってきます。今回はさいたま市に設定しました。消費者物価が全国の平均に近いというところと、近くで調査がしやすいという2点で、さいたま市を選びました。
 そこの中でどういう調査をするのかという議論ですが、プロジェクトでは「健康で文化的な最低限度の生活ができる」という、この必要経費の試算をしようという議論になるわけです。これ以下では生きられないとか、文化的生活とはどういうレベルのものかというと、個人の主観によって大変差が大きく、当然レベルも違ってくるので、誰もが納得する絶対水準というのは大変難しい。特に理論から導き出すわけにはいかないということで、食糧費、住宅費、教育費、教養娯楽費など、生活分野ごとに、一般の生活実態を踏まえ、それぞれで必要最低限度とはどういうものだろうかと、個別に議論をしていきました。
 食糧費を例に挙げると、厚生労働省の示す必要栄養所要量が示されていますが、これは年齢、男女により違いますが、これを賄える食費、我々がやるものよりきちんとしたものだということで、女子栄養大学の推計結果を持ってきました。住居費については、国土交通省の示す最低住居水準に、バス、トイレ付き賃貸物件ということで、実際にさいたま市内の全物件についてできる限り調査をして、その中で必要最低限ですから、かなり低位の費用を基礎としています。3万円から7、8万円ぐらいまで分布はかなりありましたが、我々は3万5,000円程度を第1十分位よりちょっと下ぐらいのレベルで算定したのですが、そんなのでは生活できないとか、そんなところに誰が住むのだとか、大議論もあったのですが、必要最低生計費という意味で、実際にそういう人たちが第1十分位レベルでいるということで、そういう数字を持ってきました。
 家具、家事用品については、一般的な生活をするために必要最低限度と思われる品物、お箸、お茶碗1個から、全てそういうものを積み上げて算定しておりました、耐久消費材については一般家庭への普久率は7割、洗濯機、冷蔵庫、クーラーなどを目安に、保有するものとして、その価格調査についても実際に市場価格の調査をして、価格に幅のあるものは低価格でよく売れているものという視点で選んでいます。耐用年数で割って、年割り、月割りをした金額です。1円単位から、ある程度割り切った機械的な部分もあります。
 そういう点で、要するに割り切らないと一定の数字は出てきませんので、実際の市場調査、先ほど話したようなものと、実態生計費の分位数もあまり高くなってないかどうかという、小遣いもそうでしょうし、衣料費関係もそうでしょうし、そういうものを一つ一つの項目で、それなりに我々内部では大変な議論をしながら積み上げていったわけです。
 少し紹介すると、自動車はどうするのだというのがありました。世帯の自動車保有率は8割を超えていますから、必要なものと言える地域もあると思うのですが、必要最低生計費という意味では、中央段階では一応割り切りをしていますが、地方に行ったら絶対に必要なものだという見方もできるので、2本立てで数字としては表しています。
 こうした結果、単身者の年間必要生計費は148万6,000円です。当然これだけを可処分所得と見ますと、税金もかかってきますので、そういう点でそれを所得として、可処分所得として確保するためには賃金として175万円になります。ですから、この差というのも大変大きくて、ある意味ではびっくりしています。この算定については後ろのほうにも細かくお示ししています。
 63頁に先ほど言ったような標準生計費とか、実態生計費、生活保護基準との比較もしています。人事院の標準生計費は住居費が持ち家、公営住宅を含めた平均的なものということで、あまり参考にならないし、毎年の対象が違うことによって大変ぶれることもあります。ただ、65頁にありますが、連合の提起する必要最低生計費と、厚生労働省の生活保護基準とはニアイコールのものになっています。
 先ほども会長からも東京都の例が出ましたが、公益委員がおっしゃったように、本当にあの表を単純に、そのまま受け止めていいものなのかということです。実際上、単純に出したという事務局のこともありますから、それを決して否定するつもりはありませんが、我々の連合試算によると、実際のさいたま市における住宅扶助もまさにニアイコールのものです。
 さいたま市において、いまは678円です。176時間というのも実態の月間平均労働時間ですが、連合は週40時間ですから、365日割る7日、それ掛ける40時間、これ割る12カ月で出すと、173.8時間、閏年もありますからおよそ174時間ということになります。それで連合は月額に換算するのは174時間を使っています。それでザックリいけば、さいたま市で最低賃金で月例を確保するとしたら、11万8,000円です。
 生活保護基準は、我々の試算では12万1,000円です。こちらの方が高く、逆転現象にあるということです。これも18歳とか、何を取るかですから、そんなにギャアギャア言うつもりはないのですが、これでいきますと、可処分所得は、これを賃金で稼ごうとすると14万円ぐらいです。連合が言う148万6,000円を12で割ると、月間12万4,000円程度の必要経費、税金等を含めると14万6,000円という水準になるということです。
 さいたま市の場合、逆転現象が若干見られるかと思います。ところが、Cランク、Dランクへいくと、かなりそうではない部分もあるのは重々承知をしています。我々としても中央段階の資料で全国の話をするつもりもありません。それぞれの地域で、それぞれの賃金実態なり、生活実態があります。いま地方に呼び掛けて、地方でもこういう運動をやろうとしています。地方の最低賃金審議会では、連合が試算した資料を出しながら、具体的な生計費の主張をしていくということにもなっています。
 もう1点、先ほども収入と保護基準と所得という、この関係が大変難しいとは思うのですが、ILOの131号条約を見ても、家族が必要とするという「世帯生計費」という概念もあります。ただ、若年単身者の最低を決めるという意味で、いまの地域別最低賃金の中にそれをそのまま持ってくるべきだという主張をするつもりはありません。しかし、1つの世帯を念頭に置いたミニマム賃金のあり方というのは、大変重要になってくると思います。少なくとも、親子2人世帯が最低生計を送られるような社会的賃金形成という意味で、連合リビングウェイジ的な運動も、これからしていくと。これは直接的には最低賃金の議論にはなじむとは思っていませんが、必要最低生計費という意味からは、そこまで幅広い議論もすべきだということを付け加えて、我々としては、まだまだ改善の余地があるのだという、そういう指標づくりとして今日はお示ししたということです。以上です。

○会長
 金額水準についてという検討課題が出てきた経緯からも、本日は労働者側から活発な見解が表明されました。ただ、今後に残されている問題もご指摘になりましたので、もとより今日で出つくすということは考えていないわけで、多くの問題は今後の議論に委ねられていくということです。論議をすべき事項について、相当踏み込んだ、的確なご指摘がなされたと考えます。

○使側委員
 いま労働者側の方々からいろいろご意見が出たところなので、私個人の意見ですが、こちら側も申し上げたいと思います。1つはいま労側委員も言われたとおり、実際は各地方最低賃金審議会がそれぞれの地域に応じて決めているということで、それに先ほど言った整合性を取るという意味で、目安を出していく立場の中での議論になるということは、確認をしておきたいと思います。
 2つ目ですが、目安にしろ、また各地域の地方最低賃金審議会にしろ、あくまでも生計費、類似の労働者の賃金、会社側の賃金の支払い能力、こういうことをずっと議論をしながら積み上げた結果であるということには、もう間違いはないわけで、それは確認をしておきたいと思います。
 あと資料的なことを申し上げますと、先ほど労側委員のほうからも実態賃金の話、資料No.6の辺りの話もありました。資料No.6に一般労働者の比較があり、10人以上だと36%、10〜99人だと43.2%という数字が出ています。
 ただ、ここで一言申し上げておきたいのは、一般労働者の場合、日本の多くの企業に置いては年功型賃金と言われております。勤続なり、年齢で賃金カーブを描いていくという形を取っていて、その中からの資料として取ってきているものと比べますので、職務給概念で決まっている世の中ではありません。それを念頭に置いてこの数字を見る必要があると思います。
 資料No.4ですが、最低賃金と標準生計費と生活保護ということで比較するものを用意いただいたわけです。これについても先ほど事務局からも話があったかと思いますが、あくまでもこの生計費はそのときの消費世帯の実態を見てやっているということで、高額消費があれば当然高めに出るということですので、最低を考えるという意味から言えば、高めに出てきている額になっているということです。そのことも念頭に置いて比較しなければいけないと思っています。
 生活保護もここで比較していただいているわけですが、これはこれで意味があると思いますが、ただ、そもそもは労働の対価として、最低賃金として定めているものと、生活保護というのは、本来意味合いは違うものと考えているわけです。それは申し上げておこうと思います。以上です。

○労側委員
 2点ほど追加をさせていただきます。1点は、いま使側委員のほうから言われた、生活保護と労働の対価は異なるということですが、それはそのとおりだと思います。ただ、この間の生活保護の受給開始理由を見てみると、平成4年度で、失業が生活保護の開始理由というのが10.9%です。平成13年になると28.1%まで増加をしています。
 生活保護の開始が失業となってきたときに、やはり福祉から労働へという考え方でないと、先ほど行政コスト論も出ましたが、生活保護にかかるほうがよほど行政コストがかかるわけです。そういう意味からいって、生活保護の水準を上回る最低賃金水準を確保するのは当然であろうと思います。それもかなり高い水準でなければならないだろうと思います。
 先ほど事務局からの説明もあったように、生活保護には公租公課が入っていませんし、要保護者です。そういう意味からいうと、通常の社会人が健常者として社会生活を行うには交通費もかかりますし、衣類もかかるわけです。さまざまなことを考えると、生活保護の水準を最低賃金の水準として、参考として比較検討することはあり得たとしても、それを重視することはあり得ないと考えています。
 もう1点は、これまでの最低賃金の水準というのは、もちろん地方最低賃金審議会も含めてさまざまなところで議論され、積み上げられた結果です。ただ、積み上げられた議論の中でさまざまな大きな変化がこの間に起きています。例えば、使側委員がおっしゃるように確かに年功制なのでその分で比較はできないと思っています。
 そこで私は、属性をかなりきちんと定めて賃金構造基本統計調査で調べてみました。それは18歳の一般労働者の女性の賃金と、18歳のパート労働者の賃金比較です。1985年当時は90%ぐらいの水準があったのですが、この間に男女雇用機会均等法との関係でかなり女性の賃金が各年齢で随分上がってきています。
 それはそれでいいことなのですが、1985年当時は90%ぐらいだったものが、2002年に84%ぐらいに低下しています。これは均等法との関係の中でかなり改善されてきた女性の賃金の中から、パートの賃金だけが置いていかれている結果ではないかとも思います。そういう変化も含めて、もう1度水準議論をすべきではないかと思っています。以上です。

○使側委員
 資料No.6の数字を見ますと、昭和53年から平成14年までの間に倍以上に最低賃金が上がっているわけですが、実際的に日本の経済が、戦後神武景気などいろいろあったわけですが、日本の実態経済が上がっているのが少ない時期に、よくこれだけ上げたなという実感があります。
 ここにきて日本の経済自体が世界水準よりも賃金が上がってしまいました。ところが、一般の企業は一生懸命努力をして物価を下げていますから、例えばこの10年間で、電話代などは民営化することによって10分の1になっています。非常に生活費が下がっている部分もあります。このまま上げていったら日本経済が駄目になることは確かなので、ただ人件費だけは上がらなかったと。いまちょうどここで、トップブレーキをニュートラルにして、バックギアに入れられるかどうかというところだと思います。やはりこれはどこかで我慢しないと、現在の水準であれば生活できない水準なのかもしれないが、実態的に他の物価は下がっているけれども実態賃金は下がっていないわけです。これは国際競争があるから企業が努力して下げていますが、日本もこれからどうするのかということになると、企業も努力しなければならないと同時に生活するほうも我慢しなければならないと思います。
 連合で作られた資料の64頁を見ても、本当に下がっていないのは住居費であり、電話代とか、交通費とか、もっと行政のリストラをして下げてもらわなければいけないものがたくさんあるわけです。
 世界的にこれだけの賃金をもっていれば、日本はもっともっと豊かな生活ができるはずなのですが、それができないところに問題があるのではないかと思うので、水準論をする場合には世界的に見て日本の賃金がどうなのか、10年間に他の物価もどれだけ上がっているのかという観点から見て、最低賃金はまだ実態賃金から余裕があるわけですから、現在のものから他のものをどう下げるかという観点から、ある程度我慢しなければいけない時期がもう少しあるのではないかと思うので、単純に現在の生計費から換算しても、人件費は下げていないというこの20年間の実態を踏まえて、それだけ企業も努力しているというところも考えながら、水準を考えていかなければならないのではないかと思います。

○公益委員
 これまで目安は上げ幅でやっていたわけで、上げ幅というのはすごく便利な点があって、それを水準でいこうとするといろいろ考えなければいけないことがあります。1つはいまここで議論されている、水準自身をどう設定するかという考え方の問題はあるのですが、もう1つは、水準である目安を出してしまうとそれが絶対基準になるので、平均賃金の7割とか。これをやると、今度は地域間はどうするのかという問題があります。
 単純に言うと、例えば絶対基準をいまの平均で取ったとすると、沖縄県の最低賃金は下げる、東京都の最低賃金は上げるということをやるようなプレッシャーというか、絶対基準を示したから、ここが高すぎるとか、ここは低すぎるとか、見やすくなってしまうわけです。そうすると大変だという問題もあるという感想です。
 水準自身をどうするかという問題もありますが、地域間の問題はどうするのか。それは先ほどの影響率もそうです。影響率が低すぎるのではないかといったら、いや、沖縄県は影響率が高くて優等生です。だから、その地域間の問題がものすごく大きいので、これをどうするかということも頭に入れておかないと、すぐに水準はこれがいいという話にはなかなかなりそうにもないという感想です。その辺は議論されていますか。

○労側委員
 我々も決して絶対水準を示せというつもりはないです。我々の中でも大変な議論をして、それは基準という1つの参考値だねと、それでも議論をしてつくってみることには価値があるということでつくり上げたものです。
 最低賃金でもそうでしょうから、こういうことで水準論ですから、先ほど言ったように上げ幅の変化の基準を示すべきではないという気はしています。そういう点では、いままで上げ幅だけに議論が集中してきたことに関して、水準というのも、実態生計との関係も重要な参考資料も出していただきたいし、総合的な勘案の中で、いままで以上に議論をすべきだと思います。
 地方の話は確かにそうです。本当かわかりませんが、生活という意味では沖縄県は低いです。沖縄県、宮崎県、長崎県が低いのですが、沖縄県はびっくりするくらい数字は低いです。沖縄県の地方最低賃金審議会の中で、本当にいまの水準がどうなのか、多分そういう議論は公労使でされていると思っています。そういう点で、あそこが地方の影響率が10%だったのがいまは6%ぐらいですか。それはそれなりに影響率を見ながら、毎年そういう議論の中で、きっと今年は上げられる、上げられないという議論もしているように。
 我々が中央で全体的な議論をするということは、地方においても水準を一定の目安にしたり、影響率を目安にしたり、地方の公労使の中できちんとした判断をされるという、いまの制度は、そういう点では目安制度はある意味では大変いい制度だと思っています。あくまでそれを基準としてここまでという、そういう気持ちは労働者側としてはいまのところ議論もしておりません。

○公益委員
 水準を1つの参考にすることはいいのですが、それをここで重視するということは、ある絶対基準から見た地域間の均衡を取ると。例えばわかりやすいものだと、平均賃金の7割、これが参考だとしたときに、それで決めると言わなくても、我々が参考だということを出すということは、そういう基準から見た地域間での均衡を将来的には取りたいというメッセージを我々は出すということなのです。すぐというわけではないけれども、そういう方向でいきましょうというメッセージを出すということです。
 その基準が、生活保護でも、平均賃金でも、パートでもいいのですが、何らかの絶対基準を出して目安の参考にすることは、そういう意味での目安の指標をベースにして地域間の均衡を取りましょうということを、ここでメッセージで出そうということを我々が決めるということを議論するのかなという感じがするのですが。

○使側委員
 公益委員の議論はランク制の問題や、全国整合性の問題ですから、それは上げ幅でやろうと、どうしようと付きまとう問題ではないかと思っていますし、水準の議論と直接は関係ないのではないかと思います。どういう場合であったとしても全国整合性との関係から言えば、地域性は考慮しなければならないと思っています。
 私がここで水準論議を申し上げているのは、短い間ですがちょっと調べてみると、平均の動きと特性値の動きがかなり違う動きをしていて、例えば女性のパートの時間当たり賃金を特性値で調べてみると、第1十分位は12円ほど上がっています。ところが中位数分位でいうと3円下がっています。ですから、かなりいろいろな特性値のグループ層の中でいろいろな動きはしているのではないかと思います。
 そういう意味からいうと、最低賃金を決定するに当たる類似労働者のグループの賃金の動きはどうなっているのかをもう1回精査する形で、議論の俎上に上げないと厳しいのではないかと思っているということです。

○使側委員
 先ほどの東京都と沖縄県の議論なのですが、私も年に1、2回沖縄県に行くのですが、沖縄県は公共事業と基地と観光でもっているといいますが、沖縄県にそんなに悲壮感はなく、地域で十分に暮らしていけるわけです。東京都が異常なのだと我々は思うのです。東京都の生活はこんなに高くていいのかと思うのです。みんな東京都に来てしまって、地方経済が全然潤わないということがあります。
 我々の水準からいくと、先ほどおっしゃったように、国際水準からいけば沖縄県でやっていける、東京都の賃金で沖縄県の生活ができればいちばん理想なので、その辺の水準論からいくと、沖縄県はすごく国際競争力のある県だと思うので、そこまで下げてもいいのではないか、東京都が異常だという観点があるのです。そこがそちらと意見が違うところだと思います。

○会長
 金額水準については、水準自体の絶対水準の議論もあろうかと思いますが、比較をした水準となると、比較の対象をどうしっかりと把握した上で決定するかという、いろいろな議論が今日出たと思います。先ほど申し上げたように本日はこの程度にしたいと思いますが、今後の検討の際に今日出た議論が大いに参考になろうかと思います。本日はここまでとして、次回は予定に従って次の議題に進むということでよろしいでしょうか。

(了承)

○会長
 それでは次回の全員協議会について確認をいたします。次回は3月23日(火)の午後1時から、厚生労働省専用第17会議室(16階)で開催したいと思います。議題は「賃金改定状況調査のあり方について」です。この問題をご検討いただくということでよろしいでしょうか。

(了承)

○会長
 ご了解いただいたということで、これをもって第5回「目安制度のあり方に関する全員協議会」を終わります。本日の議事録の署名は弥富委員と杉山委員にお願いします。本日はどうもありがとうございました。




(照会先)
厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


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