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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

(注)  枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成13年3月10日17:00頃、バイクにて帰宅途中に乗用車と衝突し、17:55に救急車にて臓器提供施設に搬送される。その際、同施設は患者の所持品の中にドナーカードを認めている。
 その後3月16日12:20に、主治医が患者を臨床的に脳死と診断し、家族に病状を説明したところ、家族から臓器提供意思表示カードの提示があった。家族からネットワークコーディネーターの説明を受けたいとの申出があったため、同日14:38に病院は近畿ブロックセンターに連絡した。
 同日17:10に、ネットワークのコーディネーター3名及び都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を 収集し一次評価等を行った。
 3月17日13:55より、ネットワークのコーディネーター2名及び都道府県コーディネーター1名が家族(患者の母、叔母、兄及び義姉)に面談し、主治医及び看護師の同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認した。
 3月18日15:23に家族が脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○  コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。

 ○  家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定・臓器提供等の内容・手続を記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への脳死判定の説明等は適正に行われたものと評価できる。


2.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 3月18日18:41より、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、3月19日0:50よりレシピエント候補者の選定を開始している。
 法的脳死判定が終了し検視が行われた後、同日5:58より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認が開始された。
 心臓については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾。
 肺については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾。
 肝臓については、第1候補者及び第3候補者はドナーの医学的理由(ビリルビン値が高いこと)により、第2候補者はレシピエントの医学的理由(感染症)のため移植実施施設側が移植を辞退、第4候補者の移植実施施設側が移植を受諾。

 膵臓については、第1候補者の移植実施施設側が移植を受諾したが、リンパ球直接交差試験陽性のため移植実施施設側が移植を辞退し、第2候補者はレシピエントの医学的理由(発熱)にて、移植実施施設側が移植を辞退した。次順位以下は適合患者不在のため、移植が見送られることとなった。
 腎臓については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 また、感染症やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。
 なお、眼球については、奈良県アイバンクによりあっせんが行われ、2眼の移 植が行われている。

【評価】
 ○  今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続が行われたものと評価できる。

 ○  また、ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 3月19日4:47に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより、家族に対して、膵臓移植については適合者不在のため移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○  法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


4.臓器の搬送
 3月19日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○  臓器の搬送は適正に行われた。


5.臓器摘出後の家族への支援
 3月19日臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともに御遺体をお見送りしている。
 3月20日にネットワークのコーディネーターが家族に電話をし、移植手術が無事終了したことの報告及び告別式出席の了承をいただいている。
 また、何か問題になっていることがないかどうかを確認したところ、家族からは「ニュースのことくらいでしょうか。報道で病院名が出ていたし、知っている人は知っているみたいです。こればかりはどうしようもないので仕方ないです。」とのことであった。
 3月21日にネットワークのコーディネーター4名と都道府県コーディネーター1名が告別式に出席。友人代表の追悼にて「・・・君は何人もの人の命を救った」と臓器提供に感銘したとの発言があった。
 平成13年4月21日にネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が自宅を訪問してご霊前にお参りし、厚生労働大臣の感謝状を手渡しその後の経過報告を行っている。
 平成13年5月25日に移植実施施設よりネットワークに、肝臓移植を受けたレシピエントが死亡したとの報告を受けた。直ちにネットワークのコーディネーターよりご家族に電話にてその旨の報告を行っている。
 平成13年6月8日に、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が自宅を訪問し、移植を受けたレシピエントの経過を報告し、肺移植を受けたレシピエントと、心臓移植を受けたレシピエント及びその家族からのサンクスレターを届けている。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントからのサンクスレター郵送、また、家族からネットワークのコーディネーターに電話が入る等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 ○  コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、告別式の出席、家族への報告等適切な対応が採られている。


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