04/01/22 第2回非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方 検討会議事録  第2回「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」                       日時 平成16年1月22日(木)                          10:00〜                       場所 経済産業省別館944号会議室 ○島崎座長  定刻になりましたので、ただいまから第2回の「非医療従事者による自動体外式除細 動器(AED)の使用のあり方検討会」を開催いたします。お忙しい中、お集まりいた だきまして本当にありがとうございます。第1回に引き続き、本日、3名の有識者から の発表を予定しております。その後、本研究会のとりまとめに向けて、整理すべき論点 を議論したり、フリーディスカッションの形で、議論したいと思っております。  まず、本日ご発表していただく先生方3名を紹介させていただきます。最初に、慶應 義塾大学医学部心臓病先進治療学教授の三田村秀雄先生です。NPOセントジョンアン ビュランスジャパン協会理事の松井道宣先生です。株式会社レールダルメディカルジャ パンのマーケティング部マネージャーの藤井彰二先生です。以上3名の先生方にお願い したいと思います。  では、事務局のほうから出欠状況の確認と資料の確認をお願いいたします。 ○佐藤補佐  本日の出席状況ですが、委員の先生方、皆様ご出席のご連絡をいただいております。 竹下先生が若干遅れているようですが、後ほどお見えになるかと思います。  お手元の資料の確認ですが、議事次第の後に配付資料ということで資料1に、非医療 従事者のAED使用に向けて整理すべき論点の案と、資料2、参考資料として、(1) (2)(3)の3つです。  それに加えて、発表資料ということで、本日のお三方の先生分の発表資料3つがあ り、合計7つの資料がお手元にあろうかと思います。過不足等ございましたらご連絡い ただければと思います。 ○島崎座長  早速、慶應義塾大学の三田村先生から「日本における心臓突然死救命体制の現状と今 後」ということで、ご発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。                 (スライド使用) ○三田村先生  本日私のほうからお話させていただくことは、私ども循環器学会のAED検討委員会 で、2年前の暮れに、厚生労働大臣宛に提言書を提出させていただきましたが、その背 景となったことと、あり方検討会ですから、今後の体制の問題に参考になるようなお話 をと思っております。  最初に、特にこの提言書を出したきっかけとなった背景ですが、3つ大きな問題点を 意識しております。ここに3つありますが、順にお話したいと思います。まず最初に、 救急救命士制度の問題点ですが、これが1991年に導入されましたが、これが導入された 結果として、救命率が飛躍的に改善したかというと、そういうわけではないようです。 救急救命士制度の問題点は、まずそもそもが、救急救命士隊の充足率といいますか、普 及している率が、およそ3分の2ぐらいの率ということで、まだ救急救命士をもってい ない隊がかなり全国的にあるということです。ここにまず、大きな問題があると思いま す。  また、救命効果検証委員会の報告によりますと救急救命士がかかわった心肺停止例、 心原性の心肺停止、1169例のうちの生存退院例が3%と、かなり低い救命率だという問 題があります。  もう一つは、患者の接触までの平均時間、これはなかなか正確なデータが少ないので すが、広島大学の谷川先生が、前に福岡大におられたときに出された、全国の224の消 防隊での成績を報告されましたが、患者接触までの平均時間が12.7分という数字でし た。救急車が出発して到着するまでは6分ぐらいですが、その前後の時間というのが、 現実にはかなりかかっておりまして、倒れてから119番に電話をして覚知するまでだけ でも、約5分ぐらいというふうに推測されています。  また、救急車が到着してから、やはり1.5分ぐらいかかるということで、合計すると 患者さんの所にたどり着くまでが12.7分となります。それから以前ですと、医師の指示 を得てから除細動でした。いまは、その指示は必須でなくなりましたが、その時点で 12.7分というと、これは平均ですが、そこまでかかるとなると、かなり救命は難しいだ ろうということです。  その理由ですが、これは連続記録で、突然死の瞬間を記録されたものですが、ご覧に なっておわかりいただけると思いますが、突然に心室頻拍、そして心室細動になって、 最後のほうがフラットになっている様子が見られると思います。除細動器があった場合 に助かるのは、心室頻拍、あるいは心室細動、かなり波が荒いような状況だけで、いち ばん下のフラットに近いところでは、もはや除細動器があっても間に合わないわけで す。  この時間を見ていただくと、およそ5分でかなり波が小さくなって、10分後にはこの 方の場合ですと、もうフラットになっている。そういう状況ですから、救急救命士が、 先ほど言ったように12.7分でもしここに来るとすると、そのときにはフラットになって いる確率が非常に高いということになります。  そういう状況なので、いわゆる救急救命体制を、医師あるいは救急救命士に力を入れ て工夫をしても、それには限界があるということがおわかりいただけると思います。  結局、倒れてから何分後に除細動ができるかということにかかっているわけですか ら、その時間が早ければ早いほど、助かる。大体、1分経つごとに7%から10%ぐら い、助かる可能性が減ってきます。その最初の数分というのは、いちばん助けられる確 率が高いわけですが、そこには救急救命士はいないわけで、結局そこで役に立つのは、 現場にいる市民しかあり得ないということになります。  2つ目の問題は、海外の動向です。救命ということに関しては、日本だけの問題では なくて、世界共通の方法があっていいはずで、2000年に蘇生法の国際ガイドラインが新 しく出て、そこでAEDというのが非常に重要であるということが発表されて、その 後、いろいろとエビデンスも蓄積しているわけです。  有名なのが、この救命の輪というものですが、ガイドライン2000では、特にこのAE Dというものが、市民の手によって、現場の人によって行われることが1つの鍵である という認識です。ACLSは別ですが、それ以前の段階というのは現場で、素人によっ ても可能だということです。  それから、やはり2000年ですが、2000年の5月に当時のアメリカのクリントン大統領 がラジオ演説をしていて、そこではすべての連邦政府ビル、それから公的私的を問わず 必要な場所に、そしてすべての旅客機に、このAEDを搭載することを推奨していま す。  このすぐ後に、「CASA」と言われる法案で、それが承認されて、翌年から連邦航 空局が、3年以内にすべての機種に搭載することを命令しております。  具体的に、やはりこれも2000年に発表されたデータですが、アメリカンエアラインズ のデータでは、VF例の4割が救命されております。そのペーパーでは、もう一つ重要 なこととして、このAEDを使ったときに、VFに対して、除細動の指示が、これは 100%正確にできているということと、VF以外のときに、この除細動器が、ショック の必要はないということを診断しているわけで、診断性の正しさ、信頼性ということを 証明しています。  また、やはりこれも2000年に出たペーパーですが、ラスベガスのカジノで、警備員に よる除細動という行為が行われ、そこでは、かなり早くに除細動ができるということ で、特に3分以内に除細動を行った場合は、74%の症例が救命されています。  このとき、実際に平均すると4.4分で除細動されているのですが、救急隊が到着した のは9.8分後ということで、やはり現場で、たとえそれが救急にかかわる人でなくても、 除細動器を使ってやることによって、現実に4分の3も助かるということは、非常に衝 撃的なデータだったわけです。  さらに、つい最近ですが、昨年暮れにAmerican Heart Associationのミーティングで 発表された、多分、まだ一部しか公表されていないと思いますが、PAD Trial というの があります。PADというのは、Public Access Defibrillationの略ですが、これは一 般市民有志2万人を2つの群に分けて、CPRだけをした場合、もう一つの群はCPR +AEDを使わせるということをしています。  アメリカとカナダのいくつかの地域で、実際にそういう2つの群でどうかということ を見ています。結果の一部しかまだ発表されていませんが、平均21.5カ月のフォローア ップで、CPRのみの群では15例が、そしてプラスAEDを使った群では29例、およそ 2倍助かったということが報告されています。  いまのPAD Trialでもう一つ重要なことは、かなりの市民が加わっていますが、特に 事故は起きていないということも言われています。  そして3番目は、2001年の暮れに、日本でも客室乗務員が緊急時に除細動をしてよい ということになりましたが、この問題、空の上というか、機内では除細動してよいとい うことになりましたが、依然として地上ではというか、新幹線も含めて、どこにもそう いった除細動器は置いていない。それから、このときには、客室乗務員が使えるように なりましたが、地上では、いわゆる一般の救急隊員とか消防士、あるいは警官、その 他、やはりそういった生死にかかわるような現場にいる人でさえも、この除細動器を使 うことが許されていなかった。  また、救急救命士にしても、指示なし除細動ができるようになったのは2003年4月と いうことで、これについては2001年12月から、客室乗務員ができるようになっています ので、その辺の時間のズレというのがあるわけです。  そういった問題、矛盾点を感じて、とにかく一刻も早くそういった矛盾点を解消しな ければいけないということで、厚生労働大臣宛の提言書を出し、また、構造改革特区提 案を提出したわけです。  これから、このPADを成功に導くために、いくつか提案させていただきますが、重 要なことは、3つあります。まずAEDを数多く配備する必要があります。これについ ては、ここに5つ挙げましたが、この2番目の価格の問題で、まだ日本ではおよそ60万 円から80万円ぐらいすると思いますが、米国ですと1,500ドル〜3,000ドルぐらいだと思 います。その辺の差があって、まだ値段が高いという問題がありますが、価格のほう は、普及とともに下がる可能性はあるかもしれません。  メディケアについては、今年1月から、アメリカでICDの適用患者で、手術ができ ないような人の場合には、このメディケアが適用されるということが決まっておりま す。  いまどんどんと新しい機種が開発されて、実際にもう販売されていますが、そういっ た機種ほど、User Friendlyにできていて、市民が使う場合には、少しでもそういった 新しい機種のほうが好ましいわけです。  そういうときに、その承認手続が遅れていると、日本だけ古い機械を使わなければい けないという事態となりますので、その辺を少し早めないといけない。これは特に生存 率に関係する可能性さえありますので、そういった意識をもつことが重要だと思いま す。  それから、単相波、二相波という問題の議論が以前ありましたが、これも昨年11月の American Heart Associationで、ORBITという大規模スタディで、単相波と二相波 を比較して、除細動率、あるいは心拍再開、あるいは生存率、すべて有意差はなかった ということが発表されているので、その辺の問題はあまりこだわる必要はないと考えて おります。  どういった所に配備するかというのは、いろいろな需要があると思いますが、医学的 な需要は当然ですが、消費者が望んで購入したいということもあるでしょうし、営業上 のメリットから、これを配備するということもあると思います。  それから、「公共の必要性」、これは特に行政府がかなり推進していただかないとい けないと思うのですが、ある程度義務づけるという部分も含まれると思います。旅客 機、客船、新幹線、空港、駅、学校、競技場、そういった所が候補としてあり得ると思 います。  これ以外にも、例えば、VIPといいますか、要職にある人の警備に警察の方もつい ていらっしゃると思いますが、以前、高円宮殿下が亡くなられたように、そういった方 の警備というのが非常に重要な問題となってきます。これも、ちょっと需要としては特 殊な需要かもしれませんが、AEDの配備を本当に一刻も急がないと、国益に影響する のではないかというぐらいに思っております。  それから、アメリカの例ですが、2つの州で、新しい法律ができています。ニューヨ ーク州では、2002年5月に、生徒数が1,000人以上の学校にはAEDを配備して、学校 行事に最低1名、使える人員を確保するというような指令が出ております。  それから、2003年6月には、アリゾナ州で、州のビルで新築か改装にある程度お金が かかるような場合には、AEDを配備する。そういうような法案が通っています。  このように、法律は規制するというより、むしろ救命を促進する方向で、それを手助 けする。そういうふうであるべきだろうと思うわけです。  ニューヨーク州の公立高校の食堂のドアの横にAEDがありますが、このように義務 化しているので、これによって現実に助かったという症例が出ています。  ちなみに、私どもの慶應では、慶應高校のニューヨーク学院というのがありますが、 そこはやはり、命令ですでにAEDが配備されています。  学校はやはり、生徒さん、あるいは父兄、教師の突然死が、少なくともときどきはあ るので、そのときに機械があるかどうかというのは非常に大きな違いを産むことは事実 です。  それから、配備するときのもう一つの考慮は、効率性ですが、どういう場所に心停止 がたくさん高頻度に起こっているかということを調べることが望まれます。これはある 地域で出たペーパーですが、5年間で、CAというのはCardiac arrest、心停止が何例 ぐらい出ているかということをいちばん左側に示して、そのような場所がその地域で何 箇所あるか。  いちばん右側は、1つの場所単位で、どのぐらい心停止が起こっているかということ を示したものです。  AHAは、5年に1回以上、そういったCardiac arrestが起こるような場所にAED を配備することを推奨していますが、それでいくと、いちばん右で0.2以上というのが、 それに相当すると思います。そのようにして、この場所は、AEDを早目に置いたほう がいいということを、ある程度は予測することができると思います。  有名なのは、シカゴのオヘア空港で、早足で60秒から90秒歩くと必ず1台、目にする と思います。いまアメリカではかなりの空港で、このようにAEDがいろいろな目につ く場所に置いてあります。  置いてあるだけでなく、実際にボックスを開けると、そこでけたたましいアラームが 鳴ります。またそれが、有線でつながっていて、センターに伝わるという仕組みになっ ているようです。  それ以外では、いまも、ある程度の規模の施設ということを言いましたが、誰でもが 取りに行ける公共の場所にあるといいと思います。そういう意味では、これは、この前 来られた河村先生もおっしゃっていましたが、コンビニなどはいいのではないか、ある いはガソリンスタンドとか、そういった所は、人もある程度いる場所で、しかも皆さん よく場所がわかっているので、非常にいいだろうということです。もちろん、そこに配 備する場合には、それなりの補助が必要かもしれません。  また、現場への急行を可能にする工夫としては、いわゆる、動ける車、そういったも のにAEDを積んでおくという意味で、従来の救急車だけではなく、巡回できるような パトカー、あるいは白バイ、あるいは自転車、あるいは交番の警官、自衛消防隊、いろ いろな手段を利用して、少しでも現場に早く持って行けるようにという工夫が重要では ないかと思います。  2番目に、AEDを使える人を増やすことですが、そのためには、緊急時に使用する わけですから、それに資格とか規制というものを決めておくと、かえってそれを妨げる ことになる可能性があるので、その辺のハードルを低くしなければいけないだろうと思 っています。講習も多様化されて、これはもちろん推奨はしますが、選択可能にするの が望ましいのではないか。若い層には、ある程度積極的に教育という形で提供するのが 望ましいと思っています。  AEDを使うに当たって、どれくらいの予備知識が必要かというと、実際にご覧にな った先生方はもちろんおわかりだと思いますが、非常に単純にできていますから、これ は小学校6年生でも、救急救命士とそれほど大差なく、これはマネキンでですが使える というデータで、これ以外にも小学校3年生でも使えるというデータもあります。  それから、シカゴのオヘア空港で、心室細動、18例中11例が救命されているのです が、そのうちの6例では通行人が、いわゆる空港の職員ではなくて通行人が、しかも初 めてAEDを使ったということが言われています。初めて使ってもそのようにして、人 の命を救うことができたということです。  これはイタリアのデータですが、ピアセンツァというその都市で、一般市民にAED の使い方だけを教えて、実はこのスタディでは、CPRの方法は教えないで、AEDだ け教えていますが、何かイベントがあったときに、そういった素人、市民のグループ と、救急隊の両方に連絡して、現場に早く到着したほうがAEDを使って除細動をす る。そういうやり方をとったところ、市民を活用したほうが、ご覧になってわかるよう に、早目に到着しますし、それから現場で記録されるVT、VFのパーセントも高い し、そして、何とその生存率が3倍も高かったというデータが報告されています。  そのように、必ずしもいろいろな知識がなくても、このAEDが使えるということが まず重要だと思います。そういう意味では、あまり資格とか、そういったことを規制す ることは好ましくないと思っていますけれども、いわゆる教育という意味での講習会 は、大いにすべきだろうと思っています。ただ、その講習会のやり方に関して落とし穴 というのは、しばしば講習会というのが、完璧を期すような講習会が多いものですか ら、時間も長くなって、かなりいろんなことを教え込むということがあります。そうす ると、現実には3カ月もすると忘れてしまうというような方が多いというふうに聞いて います。また、その講習が長いと、なかなか受講する人が少なくなってしまって、市民 のごく一部の人しか受けないというようなことになりかねない。  従来、講習は、やりたいという人が来ますけれども、あまり講習に興味がないという 人は、全く行かないわけですから、それではPADは成功しないので、あまり普段講習 に興味のないような人でも、行ってみようかと思うような、そういう魅力的なものがで きるといいと思います。  講習を、少しシンプルにする工夫ですが、これも有名ですが、従来、マウス・トゥ・ マウス、いわゆる人工呼吸は、当然、BLSの1つとして推奨されていますが、シアト ルのデータで、これは電話でその使い方を教えながらCPRをしていて、心臓マッサー ジだけを教えた群と、心臓マッサージ、プラス、マウス・トゥ・マウスの両方という群 の生存率を比較していますが、結果としては有意差はなかった。  そういう意味で、片方の心臓マッサージだけでも十分に、同じぐらいの効果が出せ る。どういうことかというと、単純なほうが、真剣に1つのことをやるのでそれなりの 効果をあげられる可能性があるということです。  それから、除細動前のCPRについて、2つほどデータがあります。これもシアトル のデータとノルウェーのデータです。これはどちらかというと救急隊員のデータですが いきなり現場に到着して、まずショックをかけるか、それとも先にCPRをして、それ からショックをかけるかということで、左側は90秒間のCPRをしてから、右側は3分 間のCPRをしてからのデータで、4分あるいは5分を超えた場合には、CPRを予め したほうが成績がよくて、それより短い場合には、あまり差がないということです。  そういう意味で、もしAEDというものを3分以内に除細動できるような場所に置い ておいてということが前提になれば、目の前にあるときには、CPRはそれほど重要で ないという言い方はちょっと語弊がありますが、必ずしもCPRの仕方を知っていなく ても、AEDだけで救える可能性があるということです。  ただ、AEDが傍にないときとか、救急車を待たないといけないときには、当然CP Rが必要だということです。  いまのと重なりますが、確かにCPRはよい点はあるのですが、問題点として、なか なか難しい、あるいは危害を加える可能性がある。あるいはやりたくない。そういった 問題点があることは事実です。  結局、このAEDを使ったPADを普及させるためには、一部の人が講習を受けて、 心肺蘇生術、AEDを知っているだけでは駄目で、多くの人が、この救命に協力しなけ ればいけない。そのAEDが、パブリックの場所、あるいは自宅、いろんな場所に置い てある、そのAEDを、傍にいる人が使うということが大事で、このAEDは、いちば ん簡単なわけですから、講習に必要な時間というのはこれは推測ですが、全く知らなく ても使える可能性もありますが、15分ぐらいで、かなり理解はできると思います。  当然、心臓マッサージを加えたほうがいいのですが、その場合ですと、30分以上かか ると思います。さらに、人工呼吸も加えた場合には、2時間を超える講習が必要になっ てくる。ただ、その分受講する人が減ってくるという問題があるので、講習は多様化さ せる、そしてハードルを低くするというようなことが重要ではないか。そして、これを 普及させるためには、少しでもAEDの存在とか効用をよく知ってもらうような工夫が 必要で、それが提案の3番目ですが、あとは、配布資料を読んでいただければわかるか と思います。  今後、ここでいろいろな議論をされると思いますが、いちばん強調したいことは、法 律あるいは行政府、あるいは医者が規制をするというよりも、むしろお願いして一般市 民に促して、少しでもAEDを手に取って使ってもらうように、そういうふうにサポー トするという姿勢が重要だろうと思います。 ○島崎座長  ただいまの三田村先生のご発表について、何か質問等ございますか。何なりとどう ぞ。 ○杉山委員  現在はそのための教育はしていないのですが、実際には、教育から始めないと、なか なか思うようには行かないと思います。これから若い人に、率先してこれをやっていた だくわけですが、教育のシステムは、どういうような形になっていますか。 ○三田村先生  教育というのは広い意味があると思います。使い方の説明でしたら、先ほどちょっと 言いましたように、15分もあれば十分です。あるいは、いまアメリカなどでもときどき 行われていますが、例えば空港とか、そういう所にスクリーンがあって、テレビを見る ような感じで、そこでAEDの使い方を説明する。そういうビデオを流しておくとか。 ○杉山委員  それは現場の教育ですね。それでなくて、実際に小学校、中学校、高等学校の生徒に 対して、これからどのようにして教育していかなければいけないかです。この点につい ては、いかがでしょうか。 ○三田村先生  これは、なかなか即答はできませんが、慶應でも、例えば我々の学校でも、小学校、 中学校、高校と、それぞれいわゆる課外授業のような形で行われています。いまのとこ ろはCPRが中心ですが、そういった授業を、課外授業だけでなく、ある程度は義務教 育的に組み込むことのほうが望ましいのではないかと思っています。  なるべくフレキシブルにすべきですが、こういったことはやはり教え込んだほうが効 率が上がるだろうというふうに考えております。 ○島崎座長  杉山先生のいまのご質問だと、では誰が教えるのかというところまでいくと思います が、これは後のディスカッションで、またいたしましょうか。  ほかにいかがでしょうか。いま、特にご質問が思いつかれなくても、あるいはなくて も、後でまとめてまたディスカッションの中ででも、ご質問いただくということにした いと思います。よろしいですか。それでは三田村先生、ありがとうございました。  続きまして、NPOセントジョンアンビュランスジャパン協会の松井先生から、NP Oセントジョンアンビュランスジャパン協会の活動について、よろしくお願いいたしま す。                 (スライド使用) ○松井先生  セントジョンアンビュランスジャパン協会の松井と申します。本日は発表の機会を与 えていただきまして、本当にありがとうございます。セントジョンアンビュランスジャ パン協会というのは、救急救命法の普及を目的とした団体です。このセントジョンアン ビュランスジャパン協会の母体である、St.John Ambulance Associationというのは、イ ギリスのロンドンに本部があって、同じように、応急手当や心肺蘇生法を市民に教育す るための組織として活動しております。  歴史は古くて、1887年にロンドンで活動が始まっているのですが、これは当時、ビク トリア女王の勅許によって活動が始まっていて、現在のエリザベス2世女王が名誉総裁 を務めておられるという、ちょっと由緒正しいところを宣伝させていただきます。  本日は、私どもセントジョンアンビュランスジャパン協会の活動についてお話をさせ ていただきたいと思います。活動理念ですが、これは、どこのNPOでも同じようなこ とを理念としていると思いますが、まず人類への奉仕、そしてその理念達成のためのボ ランティア活動というのを中心に行っております。  ボランティアによる組織的First Aid活動の実施、First Aidというのは、現場で倒れ ている人を見かけたときに、最初にリスポンサーになるという人たちの活動のことを言 っていて、最近よく言われている、バイスタンダーと言われているのと、同じ意味だと いうふうにご理解いただければよいと思います。  First Aidの重要性と意義の社会への普及、それからFirst Aidの研修と認定証の交 付、定期的な知識と実技のリフレッシュ講習というものを行っております。  そのほかに、グローバルなネットワークによる、“In the Service of Mankind”と いう理念の世界的実現への努力。それから、そういう救急救命用具の開発と普及を行っ ておりまして、現在、世界22カ国に支部を擁して、40カ国以上でFirst Aiderが活動し ております。  日本では、1999年4月に、NPOとして当時の経済企画庁により認可を受け、活動を 開始しております。主な活動は、ご覧のとおりです。まずFirst Aiderの養成、トレー ナー、いわゆるインストラクターのことですが、トレーナーの養成。大規模なイベント における救急救命活動を目的としたボランティア活動、ボランティアとして参加してお ります。地域コミュニティーに貢献する社会福祉的な活動を支援、上記活動に関連した 講習・教育活動、それから器具についての販売等を行っております。  私どもが、セントジョンというイギリスの組織の教育方法というものを導入しようと したきっかけには、実はこの教育方法、カリキュラムにあって、技術指導に関するED IPシステムというものを取り入れております。これは、ISOの9001の認証を受けて いる教育システムですが、まず説明をする受講者に技術の目的、意図、一般的な労働を 提供するために設計されています。  その次に、“Demonstration”、デモンストレーションは、トレーナーが1つ1つの 手段を説明した完全な技術のデモンストレーションを行う。要するに、説明した後にデ モンストレーションを行って見せるということを行います。  次に、“Imitation”これは、受講者に真似をさせるという段階を踏んで、最後に、 “Practice”、繰り返しその練習をさせるということになりますが、これは、見たこ と、聞いたことはそのときはわかったつもりでも、ほとんど覚えていない。体験させる ことによって、本当にその人の力となるというようなことから考案された教育システム です。  トレーナーは、それを教育するトレーナーですが、実はこのトレーナーになるのは大 変難しくて、これらの講習を行うトレーナーは、少なくとも“Basic First Aid Course ”という、基本的なコースを終了したFirst Aiderであること。さらに、5日間、40時 間の教育に関するこういう基礎的なトレーニングを受けます。  そして、基礎コース終了後に、実はそれぞれの実技に関して、別にまた補足コースと いうものを受講して、これを終了した後、エグザミナーという試験監督が合否を判定し ます。合否というのは、そのときにただちに判定されるのではなく、その後、最終的な 認定には長期間を要して、実習と称して、サブトレーナーとして、少なくとも1年以 上、トレーナーと一緒に活動するということが求められております。  トレーナーは、技術伝達の方法を学ぶだけでなく、人格的にもトレーナーとしてある べき姿というものを教育されるのですが、少なくともこれは、現在、スライドにある、 “Neutral”であること、“Open”であること、“Enthusiastic”であること、 “Supportive”であること、“Warm”であること、“Friendly”であること、これらの ことが求められているということです。  英国では、2002年から、このSt.John Ambulance Associationでも、AEDコースが 開始されています。このコースは、事前にFirst Aid Course、一般の救急救命法の講習 を受講していなくても、受講することが可能です。ですから、誰でもいいということに なっております。  講習時間は最低4時間で、講習内容はご覧のとおりですが、ようこそいらっしゃいま したというところから、このコースの目的、そして、事例の管理、初期診断、それから CPRができるということ、それから、救命の連鎖というものを理解していること、A EDが傷病者に対して使えるということ等を要求され講習を受けます。  その講習の結果、こういうことが習得されていることが求められるのですが、現在講 習は必ずトレーナー1人に対して、受講者6名以下で行われております。通常は受講者 12名に対し、3名のトレーナーで講習を行っております。2人が6名ずつの受講者を見 て、1人はスーパーバイザーとして、12名の受講者全員を監督するというような立場で す。講習の最初の2時間は、事例の管理、傷病者の評価、それからCPRについて行わ れて、あとの2時間でAEDの操作について学びます。講習終了後、技術評価が行われ て、以下のことができると認められた受講者に対して、認定証というものが発行される わけです。  何が必要かというと、アクションプランが作れるということ。要するに、事例に遭遇 したときにどういうふうに動いたらいいかということがわかっているということ。それ から、傷病者の評価ができるということ。CPRができるということ。傷病者のリカバ リー・ポジション、安静が保てるということ。それから、講習を受けた機器について、 AEDが使用できるということ。それから、心停止によってAEDを使った傷病者に対 して、酸素吸引、その他の蘇生手段を用いないで、ちゃんと事例をマネジメントでき る。これらのことができると認められた時点で、認定証を発行するというようなことを しております。  最後に、三田村先生のお話にもございましたが、我が国において救急救命率を向上さ せるために何が必要であるのかということは、十分理解されているわけですが、救急先 進国と言われている国々とのギャップは、まだ大きなものがあると思います。人的に国 境がなくなりつつある現代において、我が国の救急医療体制の状況は、早急に改善され ることが望まれます。世界とのギャップが存在している状況では、世界的に安全、安心 な国という評価は受けられない。いま必要なことは、市民による救命の連鎖への参加だ というふうに思っております。  セントジョンアンビュランスジャパン協会だけでなく、こういうことの普及を目的に している多くのNPOは、等しく市民に迅速な心肺蘇生法を正しく行うための知識を普 及させること、市民に迅速な除細動を正しく行うための知識と技術を習得させること、 そして、身近に傷病者が発生した場合、躊躇することなく、手を差し延べることができ るように、市民を啓発することを目的として活動しているということを述べさせていた だきます。本日はどうもありがとうございました。 ○島崎座長  ただいまの内容について、何かご質問等ございますか。 ○小林委員  先ほどの三田村先生のお話では、なるべくハードルを低くして、たくさんの人に使っ てもらうのが大事であるというお話だったのですが、先生のいまのお話だと、少しハー ドルが高いですよね。  それで、本家のイギリスでは、多くの人にAEDを使用してもらうために、どんな工 夫が行われているのでしょうか。あるいはアメリカとの対比でも結構ですが、実際にこ ういうやり方でトレーニングをして、どの程度の人が実際にAEDを使って、どれぐら いの救命効果を上げているのか。そのあたりの情報があれば、教えてください。 ○松井先生  その件については、実は、アメリカでは、先ほどの三田村先生のお話ですと、2000年 からスタートということだと思うのですが、セントジョンのほうは2002年からのスター トで、まだAEDに関しては活動を始めて2年弱、1年ちょっとですね。そういうこと で、現在の詳細なデータ等については、まだ明らかになっていないということだそうで す。  ただ、法律で50名以上集まる、そういうイベントとか、50名以上の市民が集まるよう な場所に、50名に対して1人のFirst Aider、それは、例えばAEDの使用に精通して いることが望ましいという状況にいま現在あるということで、その中で、現実にどれだ けの救命率が上がったとか何とかというデータは持ち合わせていないのですが、そうい う取組みをしているというふうに聞いております。  確かにハードルは高いのですが、イギリスというのはご承知のように、結構厳格な国 で、こういう手続を踏まないとという国民性があるのではないかというふうに考えてお ります。  それにしても、AEDの使用に関しては、心肺蘇生法についての講習を受けていなく ても、広く誰でも受講ができるという状況になっているというのは、三田村先生の趣旨 と変わらないと思います。 ○丸川委員  いまのご質問と似ているのですが、このスチューデントは一般市民と考えてよろしい のですか。 ○松井先生  そうです。 ○丸川委員  それで、こういうことをしていますよということを宣言するだけでなくて、先ほど、 市民啓発が大事だとおっしゃいましたが、一体、どういうふうな市民啓発というか、市 民に対して受講への働きかけをなさっているのか。あるいは、国としてイギリスが何か 特別なことをしているのでしょうか。 ○松井先生  イギリス政府として特別な活動は、私の認識する限りでは聞いていないのですが、セ ントジョンアンビュランスというのは、もともとイギリス本国では、例えば民間救急と いうふうにイメージしていただいたらどうかと思うのですが、イギリス圏のニュージー ランドとかカナダでも同じでして、救急車とかを走らせていますし、そういういろいろ な公的な、公共性の高い催し物とか、そういうものにボランティアとして参加するとい うようなことで、市民にその存在価値を示しているというレベルだと思います。 ○五阿弥委員  受講していない人がAEDを使うということはあるのでしょうか。つまり、たまたま 倒れたときに、受講していない人がいるというケースは結構あると思うのですが、そこ に機械があって使用することは禁じられているわけですか。それとも、そういう場合は 受講していない人でも使っていいということですか。 ○松井先生  申しわけありません。その件については、問い合わせ中で、設置されている場所は、 空港とか、公共の50名以上の人が集まるとされる所というふうに聞いているのですが、 法的にどうかというのは、聞いていません。確認できていません。 ○島崎座長  それは、できるだけ教えていただきたいですね。三田村先生、何かその点、アメリカ とは少し事情が違うみたいですからね。 ○三田村先生  先ほど提示させていただきましたが、シカゴのオヘア空港で、現実にいま6例は通行 人によって救命されていますが、そのときには、受講していない人も当然いるわけで、 それが後で何か問題になるということは起きていません。 ○島崎座長  まあ基本的に、「よきサマリア人」の概念でやるんでしょうね。ヨーロッパも、基本 的には同じだとは思うのですが、それは調べていただかないとわからない。 ○佐藤先生  関連です、アメリカに関しては、グッド・サマリタン・ローという法律を持っており ますが、イギリスの場合は、コモンローの国ですので、基本的に明文化された、そうい うものについては基本的にはない。  ただ、我々事務局で把握している限りだけで申しますと、イギリスの場合には、そう いった法律がないというふうな観点から、市民に対して、こういった講習をできる限り 受けることが、自らの責任を回避する上でも、大変望ましいことなんだといったふう な、これは救命の現場に立った場合に、当然、こういったことを実施することの危険性 もあるわけですが、実施しない場合の危険性といった観点も当然あるので、そういう意 味では、できるだけこういう講習を受けたほうがいいといったふうなことを、イギリス の心肺蘇生の委員会が進めているといったふうな記載を、私どものほうで確認はしてお ります。 ○竹下委員  先ほどのご質問について、先生、こういうプログラムが始まって、実際に実効がどの ぐらい上がったか、まだわからないとおっしゃいましたが、この4時間の講習会を受け て認定証を発行された数はおわかりでしょうか。 ○松井先生  すみません。そのことについても、まだ確認できておりません。何人の方がAEDコ ースを終了されたかということについて、まだ確認できておりません。 ○竹下委員  これがかなりの数に上らないことには、社会として見た場合に、あまり有効性が達成 できないと思うのです。 ○松井先生  おっしゃるとおりだと思います。 ○島崎座長  ほかにいかがですか。よろしいですか。また後ほどでもまとめて、時間がありました らご質問等受けたいと思います。どうもありがとうございました。  最後になりますが、株式会社レールダルメディカルジャパンのマーケティング部の藤 井先生のほうから、「海外事例に見る早期除細動の効果と装置の安全性について」とい うことで、よろしくお願いいたします。                 (スライド使用) ○藤井先生  レールダルメディカルのマーケティング部の藤井と申します。今回、このような機会 を与えていただいて、まことにありがとうございます。  実は、今回この提案をさせていただいたことは、昨年、私どもが一営利企業として 「構造改革特区提案」に申請をさせていただきました。なぜそういう営利企業が、こう いう提案をさせていただいたかというところから、ちょっとお話をさせていただきたい と思います。  実は、これは私ども、レールダルメディカルの会社の理念に基づくものでございま す。いま出ているのが、私どもの会社のロゴマークですが、このマークの下に書いてあ る、“Helping save lives”、1人でも多くの人命の救助に貢献すること、これを会社 の理念としております。この理念に基づいて、今回提案させていただきました。  続いて、いま“Chain of Survival”という言葉が広く普及しておりますが、実は私 どもではもう一つ、救命の連鎖があるのではないかというふうに考えています。これ は、まず、よく「人・物・金」と申しますが、まずテクノロジー、これは、医療機器、 その他の性能、安全性、技術の進歩によるもの、それから今度は、教育・訓練、人にか かわるもの、そして、それを支えて推進していく社会、この3つが兼ね合ってはじめて 救命率、生存率が向上するのではないかというふうに、私どもでは考えております。  例えば、全くこれは、私が勝手に書いた数字ですが、では医療機器がいま50%、本来 あるべき姿の中で50%進歩しているとします。では、それを使うために必要な市民、医 療従事者、その他の教育とかトレーニングはどれぐらいできているか。これを30%とし ます。そして、それを支えるべき社会があるべき姿に対して30%ということで、これを 掛け算すると、0.5×0.3×0.3、すなわちこれが救命率4.5%。これは本当に実例に基づ く数字ではありませんが、これが、やはりあるべき姿としては、このそれぞれが100%、 すなわち、1.0であることで3つを掛け合わせて、初めて失わずに済む貴重な人命を救 助できるのではないかというふうに私どもの会社では考えております。  私どもは、機械の安全性ということでお話しました。これは、AEDという機械その ものは、除細動器の中でも非常に操作が簡単です。今回、電気的な安全性とか、そうい う安全性のところはお話しないで、これはまず機械が、テクノロジーの進化によって小 型軽量化され、安全性が向上して、操作性も優れましたというところです。  実際に電源を入れて、機械のガイドに従って、パッド、電極を装着して、あとは機械 が解析しますので、ボタンを押すだけの簡単な操作です。これは、先ほど三田村先生、 松井先生がおっしゃったように、AEDを使うことそのもの、操作に関しては、本当に 児童からでも使うことができるものです。  これは、先ほど、三田村先生が、単相性、二相性ということで、ここの中では、1つ は除細動にかかるエネルギーが低エネルギーになってきているということを申し上げた いと思います。  除細動の安全性ですが、先ほど三田村先生からありましたように、ショックが必要で ない患者さんに対して、ショックをしてしまう可能性は、ここでは「検出する能力」と 書いてありますが、これは0%です。非常に間違って、必要のない患者さんに除細動し てしまう可能性は0%であるということを強調させていただきたいと思います。  ここまでは、よく皆さんご存じだと思うのですが、もう一つ、除細動器の装置の中 で、あまりご存じでない安全性に対する取組みの機能があります。それを今日、ご覧い ただきたいと思います。  今回、AEDを持ってきています。実際の患者ではなくて、心電波形をシミュレート して出せる装置をつないでいます。                  (ビデオ使用)  「パッドを患者の胸に装着してください。ランプが点滅しているソケットに、パッド のコネクターを接続してください。パッドを装着してください。コネクターを接続、心 電図を解析中です」。  これはいまVF、心室細動のリズムを出しています。機械が自動的に解析し、ショッ クが必要か判断します。この場合、ショックが必要ですので、自動的に充電が始まりま す。  このときにリズムがもう1回戻った場合、このように常に解析をしていますので、必 要ない場合はすぐにショックがキャンセルされます。ですから、間違って、波形がサイ ナスに戻った患者に対してかける危険性というのは非常に少なくなっています。  もう1つ、これは除細動をかけて戻った場合です。ところが、搬送中などにまたVF を再発してしまった。この場合もパッドをつけたままだと、波形が変わったことを即座 に認識して解析が始まります。そして、ショックが必要か不要かの判断をすることがで きるようになっています。  ショック自身はいまのオレンジボタンを押すだけの操作になります。中にデータカー ドが入っていて、この音声すべて、周りの音を統制化、心電波形を検証して、あとで記 録できるようになっています。  先ほどのテクノロジーということで、「物」のほうからお話させていただきました。 その次が「人」にかかわるものです。これは松井先生もおっしゃいましたように、やは り使うため、バイスタンダーを1人でも多く育てるためには、市民や児童が一丸となっ てトレーニング、訓練といった啓蒙活動が必要だと思います。この心肺蘇生法が普及す ることにより、より多くのバイスタンダーが誕生するようになると思っています。  そのためのトレーニング、必要なマネキンやAEDのトレーナーも用意されていま す。これはアメリカ心臓協会(AHA)の“Heartsaver AED”というコースになりま す。このあと内容をお話しようかと思ったのですが、添付資料にありますので割愛させ ていただきます。  早期除細動の必要性はさんざん出てきていますけれども、何もしないでショックを12 分後にかけた場合の生存率は僅か2%ですが、まず119番通報して、除細動ショックを 5分以内にかけ、それから病院に搬送して、二次救命処置をするという社会の流れ、連 鎖がつながることにより、救命率は飛躍的に向上いたします。  これから見ていただくのは、アメリカの空港で実際に倒れた患者の方に対して除細動 したニュースがありました。それをご覧いただきたいと思います。                (英語によるニュース) ○藤井先生  いま見ていただいたように、空港で倒れたときに、最初にAEDを持って駆けつけた のは空港職員でした。わずか2分後にAEDが到着して、このとき中にあったように救 急隊が到着したのは9分後でした。このときにはもう既に除細動のショックが終わっ て、患者の方は蘇生している状態です。この患者の方はいまご覧いただいたように社会 復帰され、元気で仕事をされていらっしゃいます。  このあと、三田村先生などとも発表がかぶりますので、簡単に進めさせていだきたい と思います。これは三田村先生からありました、シカゴのオヘア空港の設置例です。倒 れてからAEDを取りに行く。その次、下の段ですが、これが空港内のディスパッチ・ センターというか、救急の指令室がありまして、そちらへ同時に通報が行くようになっ ています。  AEDを取った救助者の方が最初のショックを起こされます。通報を受けたとき、同 時に警察官、セキュリティーガードの方が現場に急行するようなシステムになっていま す。このように、消火器のように空港内の至る所にあります。ただ、セキュリティーガ ードの方が日常的に定期点検を繰り返していらっしゃいます。  あと、こういうサイン、それからこれも同じ空港内まで運びます。これは三田村先生 からあった、VF発生患者が18件あった。このうち11件が蘇生に成功され、8件は病院 到着前に意識を回復されています。6人の救助者の方は全くAEDを使ったことのな い、素人の方が助けられていらっしゃいます。この空港の例では、救命率は61%でし た。1年後の生存率としても55.6%ございます。  カジノの例です。こちらのカジノでもAEDがカジノの中に配備され、セキュリティ ーの方がすべてトレーニングを受けていらっしゃいます。ここでは70%を超える、非常 に高い救命率が確保されています。  もう1つ、私どもからお話したいのは警察です。特に日本と違うのは、欧米で警察官 がAEDを使って救命率を上げたという例が数多く報告されています。これはマイアミ デード郡で行われた資料です。このときにAEDを全警察官に配備され、緊急コールが あったとき緊急隊員は出動するけれども、警察のパトロール車も出動するという、ペア でそこに対する出動指令が下っています。これを現場の到着時間で見ますと、警察官の ほうが救急隊が到着するよりも約1分以上平均で早く到着している。全件数420回の中の 56%において、警察のほうが救急隊より先に現場に着くというデータが出ています。当 然ながら早く現場に到着しますので、警察官により救命された方は28人、救急隊による 救命が11人と、こちらでも早期除細動ということで行われた結果が出ているかと思いま す。  これも先ほど三田村先生からありましたが、イタリアのピアセンツァ市における地域 としての取組みです。ここは公共施設で、突然心停止が発生する危険の高い所にAED を12台、救命士ではない救急隊に対してAEDを12台、警察のパトロールカーに15台配 備しました。  1999年6月から始まり、22カ月で354件の突然心停止症例が発生しました。このうち 中に書いてありますが市民ボランティア、1,285人に簡単なAEDのトレーニングだけ を行いました。心肺蘇生、CPRトレーニングなしに、AEDの使用のトレーニングだ けを施したボランティアが活動しました。このときボランティアの対応により、生存率 が10.5%、通常のEMSの3.3%を3倍上回ったという結果が出ています。  最後として、もう1度私どもからの提案として、人命救助のために産業、学問、社 会、この3つの連携によって、1人でも多くの貴重な人命を救いたいと願っています。 どうもありがとうございました。 ○島崎座長  ありがとうございました。ただいまの内容について何かご質問はありますか。 ○古橋委員  ただいま、機種の信頼性の高さというものをお話いただきました。いま実現している 機械というのは、これで完璧なのでしょうか。改良点のテーマはどの辺にあるのでしょ うか。もう1つ、誤通電の確率は0というお話がありました。これはどのぐらいの症例 から、そういう形の結論が導き出されているのでしょうか。通電エラーというか、スイ ッチを押したけれども作動がうまくいかないというような、装置、機械の信頼度という あたりについて何か実態的に教えていただくことはあるのでしょうか。 ○藤井先生  まず機械のほうのテーマなのですが、機械というのは常に完全であるということはな くて、常に進化しているものであると思っています。ただいまご紹介した機種にして も、まだまだ緊急時に運んでそのときに重さや小型軽量化が次のテーマになっていま す。  あと、実際、先ほどのように音声でガイドが出てきて、画面でもテキスト情報が出て きます。これを今度、さらに対象者が小学生の児童などであれば、その辺のメッセージ なども変えていく必要があるかと思います。  併せまして、まだ日本のほうは持ってきていませんが、実はホームユースのAEDと いうものも既に欧米では発売されています。これはもっと小型軽量化し、価格も安くな っています。その辺の兼ね合いになると、これは電池で動くものですので、電池の寿 命、それから電極そのものの粘着性や有効期間があります。こういったものが今後の改 良点ではないかと思っています。  信頼性ですが、間違って押す確率は先ほど0%と申し上げました。これは3,000症例 での検証データです。 ○五阿弥委員  2つあります。1つは、「気道を確保する」、「CPRを開始してください」という 言葉というのはもう少し検討したほうがいいのではないかということです。  もう1つは価格についてです。普及を進める場合に価格の問題というのは非常に重要 だと思います。いまご紹介いただいたものはいくらぐらいで、今後アメリカ並みの値段 になるにはどのぐらい普及しなければいけないのか。人命救助を理念に掲げる企業に大 いに頑張ってもらいたいと思いますが、価格の見通しを伺いたいと思います。 ○藤井先生  まず最初の質問、これは先ほど申しましたように小学生の方とか、一切、心肺蘇生 法、CPRがわからない方に対してのメッセージが、先ほど言ったような将来の検討課 題だと思っています。価格はいまご覧いただいた心電図表示機能が付いたもので、定価 が78万円でございます。この機種が確かに、アメリカのインターネット等では約3,000 ドルで販売されています。1つは日本に持ってくるときに薬事承認など、いろいろな申 請手続の費用がかかる問題、輸入コストの問題、それから日本語化するようなコストが 入っているために欧米よりも高くなっています。  例えば、これが1万台、2万台、さらに10万台となったら、価格は欧米並みに落ちる と思います。ただし、その中で、AEDの使用の用途がこのような公共の施設で使われ るもの、家庭内に置かれるものと用途が変わってきています。そちらに新しい機種が出 て、さらに安価で、一般の市民の方が買いやすい機種が登場してくることと思います。 ○島崎座長  ありがとうございました、いろいろ説明いただきました。まず古橋委員の質問、いま の場合二相性のものそのものにもまだまだ改良の余地というか、研究途上と言うのでし ょうか。三田村先生もちょっとおっしゃっていたモノファージックなもの、それから二 相性のとであまり差がなかったというORBITの試験でデータがあります。あのよう なことも含めて、二相型そのものも波形の形とか、まだまだいろいろ問題があるようで す。いまのご質問で「改良」というのは、小児新生児用などはどうなっていますか。 ○藤井先生  小児新生児用は機械の機能として、小児用電極というものがあります。これについて は残念ながら、まだ日本のほうでは承認が取れていない状況です。 ○島崎座長  向こうはあるのですか。 ○藤井先生  アメリカでは取れています。アメリカではFDAのほうで、例えば動物実験によるデ ータも考慮して承認されるという形になっていますので、アメリカでは既にFDAの認 可が承認されています。 ○島崎座長  小児突然死等を含めて、そういうものを使い出すといいかもわかりません。価格の面 ですが、いまのところ2倍ぐらいです。企業ですからできるだけ利益追求があるのでし ょうが、イメージとして他人の生命を救うものですから、是非ともいろいろ考えていた だきたいということもあろうかと思います。その点はよろしくお願いします。 ○藤井先生  わかりました。 ○丸川委員  お答えにくいでしょうが、あえてお聞きします。一科学者としてお答えください。A EDを進めていくと、多分いろいろな会社のいろいろな機械が参入してくると思いま す。いまのお話では非常に正確な解析であるということですが、参入したほかの会社の 機械も同じ性能であると考えていいのか。それとも、そうではないという認識を持つべ きなのでしょうか。非常にお答えにくいと思いますが、そういう認識を持つべきかどう かだけでも結構です。 ○藤井先生  このAEDの装置そのものが欧米を含め、承認されているということは、それだけの 信頼性は最低レベルで十分満たされているものと思います。その中で各社、各機種によ り若干、ある面ではそこが優れて、ある面では劣っているというようなデコボコがある というように認識しています。 ○丸川委員  おっしゃることは、解析の正確精度に関しては問題がないという認識でよろしいので しょうか。それとも、例えばこの委員会か何かがどこかに委託して、もう1度全部洗い 直さなければいけないということなのでしょうか。 ○藤井先生  解析の精度については、欧米では既に10万台近いトータル設置件数があります。解析 による問題点が起きているというような事例報告は受けておりませんので、そちらのほ うは大丈夫ではないかと思います。 ○丸川委員  ありがとうございます。 ○野々木委員  3,000例の解析例というお話がありました。耐久試験というか環境条件、例えば温度 や直射日光といったものを変えた状況で、同じように3,000例に間違いなく解析できた という試験はされていますでしょうか。 ○藤井先生  解析ですが、これは症例検討のほうが3,000例で、機械の耐久精度とは別の試験にな ります。こちらはいわゆるJISのような工業規格により、対衝撃性とか落下性、電磁 誘導性、それからスプラッシュの防滴性、そういったものの規格でございます。  ただ、この機械そのものにしても作動環境条件もあり、いまは詳しく覚えておりませ んが、温度のほうは摂氏50度以下で、マイナスが16度だったと思いますが、その範囲内 であれば試験に合格しているという形で使用を決めています。 ○野々木委員  設置されたとき、最初はともかくとして、例えばどれぐらいの年数がたって、そうい う状況にずっと置かれたままで耐え得るのか。先ほどパッドのお話がありましたが、そ れは別にしても、例えば3年目、5年目、6年目がたっても、その温度と条件の中であ れば同じように解析ができるという試験をされているのでしょうか。 ○藤井先生  申し訳ありません、そこまでのデータは持ち合わせておりません。 ○島崎座長  いまのお話に関連してですが、オヘアなどで設置、あるいはカジノに設置してかなり 時間がたつと思います。何年に1回とか、定期点検されているということなのですが、 機械そのものの交換などは法律的に決まっているのですか。 ○藤井先生  これに対しては法定耐用年数というようなものはありません。ただし、いま私どもの ほうでは、バッテリーの寿命は全くさらの状態で入れて5年間です。先ほどの耐久なの ですが、機械のほうは必ず24時間に1回、1週間に1回、1カ月に1回、「自己診断テ スト」を自動で繰り返しています。その中で異常が発生すると、警報音とメッセージが 表示されるようになっています。 ○島崎座長  それはコントロール室へ警報が通じるということですか。誰もいないところで警報が 鳴っても仕方がないでしょう。ずっと鳴りっ放しなのですか。 ○藤井先生  鳴りっ放しになります。あと、先ほどの空港のように公共の場所であればガードマン の方とか、日常の点検プロシージャーみたいなものを作っていく必要があるのではない かと思っています。 ○島崎座長  三田村先生もちょっとおっしゃっていた定期点検の期間は、自動解析と別にどれぐら いの期間でやっているのですか。空港警備員が定期点検でチェックされているとおっし ゃっていたのですが、期間はどれぐらいでしょうか。 ○大越委員  私どもは国際線の機材に100機ぐらい置いています。毎回、フライトの前にきちんと作 動しているかどうかを見ます。インジケーターがあって、緑色になっていると正常に作 動していると判断しますので、それをチェックします。もしアラームが鳴った場合は、 自動的にこちらのほうに送り返されてくることになります。いままで送り返されてきた ものは入替えのときにフタが開いてしまったというトラブルで、機械の性能自体のトラ ブルはいまのところ、搭載してから2年3カ月たちますがありません。 ○島崎座長  ある種法律的に、その辺のところはまだきちんと決まっていないということですか。 ○大越委員  1年に1回、定期的に全部取り下ろしてチェックするようなことをしています。 ○丸山委員  音声指示どおりに使った場合、安全性が高いというのは何回も説明されているのです が、指示を守らなかった場合はどうなるのか。「患者から離れてください」という指示 がありますが、患者に触っている場合はどうなるのでしょうか。それから、今日はお話 がなかったかと思うのですが、前回の坂本先生のときに「濡れた場所では使わないよう に」という注意があったかと思います。その2点、患者に触れている場合にどういう作 動をするのか、それから、濡れた場所で使った場合にどういう作動をするのかを教えて いただきたいと思います。 ○藤井先生  患者に触れた場合というのは、実際にはそのような症例が報告されていないのでわか りません。ただし、除細動のエネルギーというのは大体初期電圧で1,700V、電流で20A 強の電流が流れます。それが大体0.02秒、20ミリセカンドぐらいの長さで流れます。実 際に体表に電極を貼り、心臓を経過するのはそのうちの約5%、残りの95%が電極が体 表を通過すると言われています。電気ですのでいちばん最短距離、電極間を通過する電 力が最も大きくなりますの例えば足元などですとさらに心臓を経過する5%より以下の 電流が流れることになるかと思います。  ただし、触られる方が今度、逆に身体的に、例えば心臓疾患を持っていらっしゃる方 なども考えられます。やはり、安全面を考える意味では触らないように、特に先ほどA EDの使用の中で解析中、ショック時について患者に触らないようにという指示が出 て、それを守っていただけるようにと思います。  水についてですけれども、身体が水の中に浸っている場合は除細動はできません。水 のほうが抵抗がありませんので、そのまま流れてしまいます。また、実際に救助者に感 電してしまう可能性がありますので駄目なのです。例えば、プールの中でおぼれた患者 の方をプールサイドに引き上げた状態で使う場合、床面が濡れていても、例えばそれが 鉄板であっても大丈夫です。ただ、患者の方の胸が濡れていると必要な除細動電流が心 臓に流れなくなりますので、必ず体表はタオルなどで拭いて乾燥させて、電極を貼って 使用していただくようにという注意事項をつけています。 ○島崎座長  時間が少し押していますので、質問はこれぐらいとします。もし時間があれば、また 聞いていただいてもいいかと思います。どうもありがとうございました。  議題2へ進みたいと思います。「今後、本検討会の議論を進めていく上で整理すべき 論点です。資料2として参考資料が提出されています。そこのところ、まずオブザーバ ーである総務省消防庁の救急救助課、三井委員、野々木委員、事務局からそれぞれご説 明をお願いします。事務局の方、よろしくお願いします。 ○佐藤補佐  お手元に資料No.1、参考資料(1)、(2)、(3)があろうかと思います。最初 に参考資料から説明します。参考資料(1)について総務省消防庁から、参考資料(2 )について三井委員から、参考資料(3)について野々木委員からご説明を賜りたいと 思います。 ○藤井補佐  総務省消防庁からご説明いたします。資料としては参考資料(1)、「応急手当指導 員及び応急手当普及員の現状」、「消防機関による応急手当の普及の実施状況」、「応 急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」といった順番でお付けしています。  まず、応急手当の関係については「実施要綱」で各規定が設けられています。この前 の「AHAガイドライン」に基づき、「心肺蘇生法委員会」において救急蘇生法の指針 が出ましたので、それを踏まえて改正を行ったというところです。これに従い、消防機 関のほうで応急手当の普及啓発を図っているところです。  普及啓発を行う指導員や普及員がどういった方々で、どういった態勢で臨んでいるの かといった点ですが、まず応急手当指導員、応急手当普及員というものがあります。指 導員というのは、基本的に普通講習等で指導をするという形の方々です。上級救命講習 と普通救命講習がございます。応急手当普及員のほうは、主に事業所や防災組織の従業 員に対して普通救命講習を行うというものです。  普通救命講習というのは3時間、上級救命講習というのは8時間のコースという形に なっています。  応急手当指導員の認定者、指導員としてどういう方々が指導しておられるか。これは 認定制度を取っておりまして、例えば指導員講習が8時間とか24時間とか、これは救急 救命士や救急隊員の資格等によって時間数が異なります。これらを消防本部の長が認 定、有効期間は3年間、再講習も必要という形になっています。いままで、資格を認定 された方が約10万6,687名いらっしゃいます。再講習なさらなかった方、抹消などを除 き、現認定者は10万5,945名という形になっています。  内訳については、消防職員が9万7,000、ほとんどというところです。この中には救急 救命士である消防職員が含まれます。ほかに消防団員、医療関係従事者等については、 消防職員でない救急救命士の方や看護師の方々等が考えられるところです。  応急手当普及員認定者については約5万人というところです。これは普通救命講習3 時間ですので、実際に事業所や防災組織の従業員の方が24時間の講習などを受けられて 自分自身の事業所の方々に教える側に回るという、「その他」が多い形になっていま す。  ちなみに消防職員や救急隊員等の概念について、なかなかわかりづらいところもあり ましょうから、下に現状を掲げています。消防職員は24時間態勢で勤務している方々で すが、これが約15万人です。このうち、救急隊員の有資格者が約10万人、この中には救 急救命士も含まれます。実際に働いておられる救急隊員の方々は5万8,000人近くです。 このうち、救急救命士有資格者は1万3,000人程度というところです。  また、消防機関においては普段は一般の仕事に就いておられて、いざとなったら出動 するという消防団員の方々が約93万人いらっしゃいます。また、自主防災組織が約11万 程度、婦人防火クラブが約227万という形になっています。  次の資料に移ります。こういった体制における応急手当の講習ですが、先ほどの指導 員講習という形、これは指導する側の講習です。24時間、16時間、それぞれコースが資 格によって違います。そういった方々についてはこのような形で最近は約7,000〜8,000 人、普及員も7,000〜8,000人が講習を受けています。  一般の方々に対する上級救命講習(8時間)、これが約5〜6万人あります。それか ら普通講習3時間、基礎的なところで心肺蘇生法を教えるのですが、毎年着実に増えて いて97万人を超えています。上級講習、普通講習を併せて102〜103万人となります。こ れはこちらが出している要綱に沿って認定証をお出しします。その認定も登録して、と いう方がこの数になります。  その右側に「その他短期講習」、例えば止血法など必要に応じて教えてほしい、そう いった形で、いろいろ要綱にとらわれずにお願いしたいということに対応しているのが 約200万人いらっしゃいます。大体、300万人以上について応急手当の普及啓発を図って いるという現状です。  その次から付けている要綱については、この中身について規定した根拠となるもので す。最近は先ほど申し上げたとおり、AHAガイドライン2000に基づいて、心肺蘇生法 委員会の指針に従って改正を行ったところです。  ちなみに、「参考情報」というところですが、要綱の後ろに「自動対外式除細動器( ADE)使用の普及啓発方策について」というところで、消防庁としての施策をお配り しています。いま申し上げたとおり、要綱に沿ってのものが103万人ぐらい、それ以外に 「ご要望に応じて」というところを含めると年間300万人となります。消防庁としては本 検討会において、AEDの使用条件等についてご検討いただき、可能となり次第、普及 啓発を推進できるように準備しているところです。  平成16年度の施策というところですが、昨年の予算内示で「全国モデル講習会」とい ったものについて内示をいただいています。また、消防庁としては各都道府県に最低1 台はAEDを配らせていただいて、モデル講習会を行っていただきたいという形での支 援措置も準備しています。主な想定対象者としては消防隊員や官公庁職員等、その他こ ちらに書いてあるような方々を考えています。  各施設における配備については、また各関係省庁がありますので、そちらでというこ とでございますが、啓発の対象という点においては考えているところです。また、さら なる普及のためにということで、救急の日等イベントを活用したPRや、消防団員93万 人へのPR等を考えています。また、自主防災組織約十数万という方々への啓発も考え ています。以上です。 ○島崎座長  ありがとうございました。続いて参考資料(2)、三井委員からお願いします。 ○三井委員  参考資料(2)をご覧いただきたいと思います。日本赤十字社が実施している、救急 法指導員の養成のプロセスをここでご紹介したいと思います。私ども救急法指導員の役 割ですが、国民の方々に救急法の知識と技術を普及することが役割です。  救急法の指導員に達するまでのプロセスですが、まず最低要件としては、これは昨年 11月の第1回検討会のときに資料が添えられ、事務局からご説明いただいたのですが、 救急員の養成講習には18時間の養成講習を受けて、さらに検定に合格した者となりま す。18時間と申しますと、最低でも3日間かかるということでございます。直近3年間 で11万7,000人を養成していますから、年間平均すると4万人弱ということになります。 矢印の枠の中に掲げてありますが、18時間の内訳の中で心肺蘇生法に費やす時間が最も 長いわけです。学科に1時間、実技に4時間20分と、かなりの時間を費やしていること をここでお示ししておきたいと思います。  そのような資格をお持ちの方が、指導員になろうという意思をお持ちになったら説明 会に参加をしていただく。これは1日のプログラムで、赤十字の救急講習の普及事業 等、あるいは指導員の役割等についてご説明申し上げたり、やり取りをするというもの です。  そこを通過すると、次は(3)になります。救急員という立場で、救急員養成講習の指 導員アシスタントとして現場へ出ていただく。講習会へ出向いていただく。  (4)は「救急法の実技勉強会への参加」、これが1日から2日間かかります。救急員 養成講習における内容が確実に行えるように、ここで学習をしていただく。  (5)がいわゆる「本講習」と言っていますが、指導員養成講習を受講していただきま す。時間数にすると、講習そのものが最低30時間です。それに検定をプラスしますの で、最低5日間ということになります。講習会の事柄、指導の方法等をこの中で学習し ていただく。これには検定が付随していますので、その検定に合格をする必要があると いうことです。  直近の3年間で、全国で780名ほどの指導員が養成されています。年間でおよそ20回 ですから、3年間で60回、780名ほどの指導員ということです。現在、その蓄積がおよ そ5,000名ほどいます。蓄積というのは更新をしながら、指導員という資格を続けてお 持ちの方が現在、全国に5,000人ぐらいいらっしゃるというものです。  (6)ですが、合格をしたという暁には「新任指導員研修会」に参加いただきます。こ れは2日間ですが、指導員として講習を展開していくために必要な事柄を身につけてい ただくということです。  最後に3頁、救急法指導員としての現任教育というか、技術等の維持向上のために各 講習会に指導者として参加しなければならない。それから、毎年行われる指導員研修会 を受けなくてはならない。こういったことが指導員として、1単位3カ年ですので、3 カ年をさらに更新していくための要件です。さらに、3カ年ごとの更新が3回目に当た る年には審査を行って、そこで指導員としての資質を審査し、お続けいただくか、引い ていただくかをお決めいただくことになります。  以上が指導員になるためのプロセスですが、かなりの時間を費やして指導員になって いただいています。現任5,000人ほどいらっしゃいますが、そのうちの8割はボラン ティア、有給職員ではない、一般市民の方々が約8割を占めているというようにご承知 おきいただきたいと思います。以上です。 ○島崎座長  ありがとうございました。続いて参考資料(3)、野々木先生、お願いします。 ○野々木委員  米国心臓協会(AHA)が一般人向けの“Heartsaver AED”というAEDとBLSに 関するコースを開催しています。事務局で用意いただいた参考資料(3)はすべて英語 になっています。“Heartsaver AED”のテキストに関しては三田村先生とJRCの岡田 先生により、翻訳が終了し近々日本語訳が出る予定です。今日はこのコース内容につい てお話し致します。  AEDを含むBLS講習ですが、先ほどもお話しにあったようにできるだけ受講者へ のハードルを低くするという目的のため、AHAでも受講者に合わせて、複数のコース 内容を準備しています。昨年、AHAのインストラクター養成コースがあり、日本から 各学会の代表10人が参加してインストラクター資格を取得してきました。  医療従事者向けのBLSは、既に我が国でもそのインストラクターを中心にして開始 されています。ただ、これは成人、小児、乳幼児のBLS、AED、試験も含めて約10 時間のコースになります。指導者1人に3人から4人の受講者という形です。  この“Heartsaver AED”はもっと簡略化した形で、一般の方も含めたコースです。成 人、小児のBLS、小児のAEDも今回の改定で含まれています。それから乳幼児のB LS、試験を含めて約4時間となります。かなり短くはなっているのですが、これでも ハードルが高いとなるとやはり日本独自の簡略化したものを考える必要があります。  また、先ほど英国の紹介と同様に実技を重視するということで、ビデオを見てそれぞ れの手技を実際にトレーニングする方式です。  HeartSaver AEDのビデオが手に入りましたので見ていただきます。まず成人のAE Dのビデオです。ビデオを見ながら、その都度手技を繰り返します。                  (ビデオ使用)  AEDが入手されればスイッチを入れて、音声の通りに従います。小児と成人用の2 つのパドルが付いています。この場合は成人のパドルを選んで「パドルを貼りなさい 」、次に「コネクターを接続しなさい」という音声に従います。  これで自動解析が始まるわけです。この後、「除細動ボタンを押しなさい」という指 示で除細動が終了するわけです。  この“Heartsaver AED”には成人のBLSも入っていて、通常の心肺蘇生法の実技も 入っています。それから、今回ガイドラインの改訂で、1歳から8歳の小児に対して米 国ではAED使用が認可されました。小児でも意識を確認し、人を集め、AEDを取っ てきなさいという指示を出します。AEDが来るまでは心肺蘇生法を実施しているとい う状況です。  AEDの機種は成人と同じ機種です。小児用パドルは150ジュールを50ジュールにダ ンピングして、成人と同じ機種を小児に使用できるようにしています。これが既にFD Aで認可され、使われ始めているという米国の状況です。   小児 と 乳幼児のBLSも“Heartsaver AED”には含まれています。以上がHeart Saver AEDのビデオです。  このスライドは、ワシントン・ダラス空港のAEDを示します。先ほど、誰でも使っ ていいのかというお話がありましたが、AEDが収容されているケースのとびらに、 「トレーニングを受けた人に限る」という警告が小さな文字で書かれています。  緊急避難的には通行人で、トレーニングされていない人が使用して救命し得たという シカゴ空港の例が提示されました。したがいまして出来るだけ講習を受けなさいという メッセージと解釈できると思います。  米国の全ての連邦施設には「AEDを置きなさい」という、クリントン大統領の勧告 がありました。昨年NIHを視察してきましたが、各エレベーターホールにAEDが各 1台ずつあって、しかもポケットマスクまで全部配置されていました。やはり、このよ うに米国は相当AEDの一般への普及を考えているという状況です。以上です。 ○島崎座長  ありがとうございました。続いて資料1、佐藤先生からお願いします。 ○佐藤補佐  資料1の「非医療従事者のAED使用に向けて整理すべき論点(案)」をご覧くださ い。本検討会において、今後検討を行う上での論点整理といった事務局作成のペーパー です。  まず1、「非医療従事者のAED使用条件の具体的あり方」です。(1)「非医療従 事者によるAED使用と医師法との法的整理」という観点であります。(2)ですが 「『特区本部決定』に示された4条件についての踏み込んだ検討」とあります。具体的 にここに掲げられている4条件というものを提示しています。例えば(2)の部分、「使 用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認している」といった条件がありました。 これに関して、前回、帝京大学の坂本先生からのご指摘があったような、脈拍の確認と 申せるような循環の際の確認方法ですが、どういった確認方法が考えられるのか、ある いはどういったものを条件とすべきかどうかといったような観点があろうかと思いま す。(3)は、「『必要な講習』の具体的なあり方」ということで、内容、時間数、講師 の要件といったことが検討すべき内容となっております。(4)では、「使用されるAE Dが医療用具としての薬事法上の承認を得ていること」といった状況になっています。 この点に関しては前回の資料の中で、平成17年度を目途に自動体外式除細動器の区分 が、薬事法の中にできるといった説明をさせていただきました。こういう区分ができれ ば、薬事法上もまさにPADとして使用可能な機種といった区分がなされます。(3) は、このほかに条件として示すべきものがあるかといったことです。例えば「適応と禁 忌」の問題があります。今日のご議論でもありましたように現在、小児に関して国内で 承認されている機種はありません。こういった問題についてどう考えるかといった点 が、論点になります。  2番は、「非医療従事者によるAED使用の普及方策」です。(1)では、「国民の 理解の促進、気運醸成に係る方策」についてどう考えるか、(2)では「『必要な講習 』の展開」ということで、一般市民を対象としたもの、企業、職域におけるもの、教育 現場におけるものについてどのように考えていくか、(3)では、「医療従事者等の積 極的な協力」ということで、必要な講習のための講師の確保等について、どう考えてい くか、(4)では「AEDの配置状況に関する情報提供」をどのように取り扱っていく か、こういった観点があろうかと思います。  3番は、「地域の救急医療体制における位置付け」です。(1)では、「医療従事者 による病院前救護及びホスピタルケアとの有機的関連の確保」についてどう考えるか、 (2)では、「事後検証の的確な実施」などについて、どのように行っていくか、この ような論点があるのではないかと考えております。 ○島崎座長  今回の3人の先生方と、前回、河村先生、坂本先生、大越委員の3人という計6人の ヒアリングをお聞きして、それらを踏まえて整理すべき論点として資料1を、いま佐藤 補佐から出していただいたわけですが、この具体的な中身のフリーディスカッションは 別として、その前に論点としてここに1、2、3、4と掲げていただいているものにつ いて、何か付け加えるようなご定義なりご意見はありますか。あるいは論点そのものに 対する質問等はありますか。 ○野々木委員  前回も問題になっていましたが、非医療従事者の定義を明らかにする必要がありま す。非医療従事者というのを一般人と考えるのか。救急現場に直接かかわる非医療従事 者としての警察官や消防車、ポンプ車に乗っている消防隊員の方々と、公共スペースの 従事者と、全くの一般人というように、非医療従事者を3ランクに分けるべきではない かと考えています。いかがでしょうか。 ○島崎座長  いかがですか。2の(2)が、いま先生がおっしゃったことですかね。 ○佐藤補佐  前回も申しましたとおり、いま委員が挙げられた方々についても、この検討会の議論 の対象になってまいりますので、まさに論点の一つといったことになってくると思って おります。 ○小林委員  私も野々木委員のご意見に全く賛成ですが、講習のやり方などについては、当然分け るべきだろうと思うのです。本当の一般の人、あるいは家庭で使う可能性の高い人に は、ほんのちょっとビデオを見せるなど、ハードルを低くするということでいいと思う のですが、かなりの確率でAEDを使用する人については、やはりきちんとした講習を 受けさせる必要があると思います。ただ、これを法的に考えたとき、いまの3つのカテ ゴリーの非医療従事者を同一に考えていいのか。要するに1番になると思うのですが、 そのあたりはどうなのでしょうか。 ○島崎座長  それは各論として、フリーディスカッションの中でさせていただきましょうか。全般 的な論点として、いまのようなことも含めて議題として挙がっているかどうかを、まず ちょっとお聞きします。全体的にこれを議論しようという基本的なものが、何かほかに ありますか。例えばインストラクターと言いますか、トレーナー自身がどういうものか というのは、この中に入っているのでしたか。(3)の講師の要件に入るのですね。  時間が押しておりますので、もし論点としてこれを取り上げるべきだというものがあ りましたら、後ほどでもご発言いただくことにいたしましょうか。何かあったら、途中 ででも言っていただければと思います。この論点の中では大きく1、2と2つがあるわ けですが、いまからこの論点についてフリーディスカッションをさせていただきます。 1と2、3、4というように、前半と後半とに分けてやりたいと思います。  前半の1の「非医療従事者のAED使用の条件の具体的あり方」ということで、15分 程度ディスカッションをしたいと思います。まずは医師法との法的整理ということで、 これに関して小林委員がおっしゃった中身で、3職種というか、3つの分類は法理的に は同じと考えていいのでしょうか。 ○泉補佐  現在私どもの内部で検討しております法律上の整理について、簡単にご説明申し上げ ます。今ここに出ている医師法と申しますのは、「医師でなければ医業をなしてはなら ない」と規定しているその規定です。簡単に申しますと、これは偽医者が世の中にはび こることを防止している規定です。ただ一応法律上の整理としては、問題になるという ことです。たまたま心室細動に遭遇した一般の方と、あらかじめ一定の応急措置を反復 して行うことが想定される方というように、法律上はおそらく2つの場合に分けて考え る必要があるのではないかと考えております。  まず、たまたま遭遇された一般の方は、医師法が規定している「反復継続する意思を もって行うこと」という要件を満たしておりませんので、そもそも医師法の問題ではな いと思います。問題になりますのは、あらかじめ一定の応急措置を反復して行うことが 想定される方々です。しかしご案内のとおり、この場合は反復継続してAEDを使用す る意思があるとは言うものの、AEDの使用の危険性が比較的低く、またAEDを使用 しなければ患者が死んでしまうという場合があります。したがって非医療従事者がAE Dを使用したとしても、医師法が守ろうとしている国民の生命の安全を上回る利益があ ると考えることができるだろうと思っております。今回先生方に検討していただくAE D使用の条件というのが、形式的には医師法に反するけれど違法ではない正当行為であ るか、それを判断するよすがになるものと考えております。よろしくお願いします。 ○島崎座長  いまのは法律的解釈ですが、先ほどのヒアリングの中でも話に出た、すべてよきサマ リア人という考え方は、日本にはまだあまり定着していませんよね。よきサマリア人の 観念で、BLSを行った人が法律的に保護されるということは決まっていないですよ ね。 ○佐藤補佐  特区提案の中でも、こういった救急救命、AEDを行った者が民事上も刑事上も問わ れることはないといった提案が、一緒にあります。そういった検討の中で、まず刑事上 は、医事課の医師法との関連が出てまいりますので、こういったところでの見解を示す ということがあります。一方、例えば民事裁判になって損害賠償なり何なりの請求があ るといったことも考えられるわけです。この点に関しても緊急事務管理と申しまして、 日本の民法の制度の中でも民事上、基本的に問われることはないといった見解の回答 を、政府として行っております。そういう点で、基本的には民事上も刑事上も訴えられ る心配はないといった考え方になっております。 ○杉山委員  法的にはそうかもしれませんが、AEDを使って活きると言いますか、利点として は、ある程度プレホスピタル、あるいはホスピタルケアにつながるという一つの条件 が、やはり必要だと思うのです。やりっぱなしではいけないと思います。これは全体に 通じて関係するわけですが、次の頁の3の(1)がある程度そうかも。外国ではAED がどんどん進んでいますが、いまの日本の状態は、プレホスピタルからホスピタルにど うつなげていくかというところに論点があって、ここに今AEDがくっ付いているとい うことなので、その点を全体で認識していかなければいけないのではないかと思ってお ります。 ○島崎座長  人っこ1人いない場所でたまたま見つけた人が、そばにある機械でポッとやって、そ のまま駄目でいなくなってしまったということにはならないのでしょ。ちゃんとそれを やりながら通告の義務があるといったような話もないのですか。そんなことは考えられ ないのですか。杉山委員のお話はそういうことですよね。 ○渡延課長  もちろんAED自体、心肺停止の方でなければ働かないということを想定すれば、か なりの重症者しかあり得ません。そういった方についてAEDを使って心拍が回復して も、ピンピン歩き出すということはなかなか想定し難いでしょう。それと並行して、今 回の4条件の1つである講習が的確に行われる中で、通報の義務や医療連携などが盛り 込まれれば、その点については自ずと解消されていく問題でしょう。いずれにしてもこ の点は非常に重要だと考えているところです。 ○古橋委員  この問題に関しては、先行の判断があります。前回、大越委員からもご報告いただい たところですが、2001年12月18日には、いわゆる旅客機の搭乗員については、医師法に 抵触しないという形で、当事の厚生労働省の判断があったわけです。その判断の背景に は、今日のテーマの中で、緊急事態であること、メディカルコントロールが受けられな い閉鎖的な空間であること等々が、素人なりにもわかるのですが、このときの医師法と の問題に絡む判断には、どういう経緯があったのでしょうか。救命することの優先度の 高さですが、医師のいない所ではよしとしていくのか、そのあたりは何かあったのでし ょうか。そこが分かれば、この問題はスッと開いていくような気がするのです。 ○泉補佐  実は定期航空協会様から私どもに、文書をいただきまして、それに対するお答えとい う形で処理されたのです。ドクターコールを実施しても、医師等による速やかな対応を 得ることが困難な場合等においては、客室乗務員が緊急やむを得ない措置として、AE Dの使用を行ったとしても、医師法第17条違反、または保健婦・助産婦・看護婦法第31 条違反を構成しないということで、その当時文書を交わしております。 ○古橋委員  ということは、「緊急やむを得ない場合は」という括りだけなのですね。 ○泉補佐  書面で現れているのはそういうことで、緊急やむを得ない措置として。 ○島崎座長  基本的にAEDをBLSの中に入れたとしても、全部緊急避難の適応としてやってい るわけですね。 ○泉補佐  このときの整理はそういうことでした。 ○島崎座長  三田村先生、どうぞ。参考意見になりますか。 ○三田村先生  いまの点と絡みますが、当時、厚生労働省は航空機に搭載されるということで、医業 には当たらないという結論を出されました。医業にならないという根拠は、業ではない という判断だったのです。要するに同じ客室乗務員が一生のうち、2回以上やる可能性 はまずないということで、これは医業には当たらないという判断で、医師法違反ではな いと。  その点で私がクリアにしていただきたいのは、医業に当たらないという場合、医行為 でないか、あるいは業でないかという2つがあると思うのです。当時、客室乗務員に対 しては業ではないという解釈で、医業ではないということになったわけですが、医行為 であるかどうかというのも、実は議論されないといけない点ではないかと思います。一 般的な常識では、もちろん救命というのは医行為ですが、法律上の医行為というのは、 専門知識がなくてやると危害を及ぼす可能性のあるような行為です。例えばCPR、心 肺蘇生術をやると、それによって肋骨を折るとか肺炎を起こすといった危害が加わる可 能性があって、やや難しい部分もあるのですが、医行為にはなっていないのです。  AEDのほうがCPRよりも医学的な知識も必要ないし、危害を与える可能性も少な いので、それならそれでAEDを使うこと自体、法律上の医行為としないほうがよいの かもしれません。それであれば、どんな業種の人でも同じように使えると思うのです。 ただ業ということで区分すると、いわゆる救急隊員や看護師などの業である人は、また 別の法律の枠組みをつくらないといけないような、ちょっと混乱するようなことが、も しかしたらあるかもしれないので、その辺をクリアにしていただけると助かると思いま す。 ○島崎座長  まさに非医療従事者という話ですね。今おっしゃったのは、その次の段階で救急隊員 をも含めた医療従事者の話は、これとはまたちょっと離れて、先生がおっしゃるように 違いますかね。 ○小林委員  先ほどお尋ねしたのもその点なのです。要するに救急救命士の資格を持たない救急隊 員が行けば、業になるのかどうか。おそらく一般の人とは明らかに違うわけですよね。 ですから、それが法的にどういう解釈になるのかというところをお聞きしたかったので す。 ○島崎座長  私は、この会自身は非医療従事者ということで、微妙なところはありますが、救急隊 員以上の業としている人の話は、またちょっと別だと思うのです。ですから、これが終 わるか、あるいは別のもう1つの委員会で並行してかどうかは分かりませんが、そうい うものはこの中でするのではなく、別にディスカッションすべきだと考えているので す。ある程度この結論が出た段階で、次にどうするのという話ではないかと、私は解釈 していたのですが、そういう解釈でよろしいのですか。 ○佐藤補佐  この用語の付け方そのものが大変難しかったのですが、ここで「非医療従事者」と書 いてある意味は、先ほど野々木委員からもご指摘がありましたように、いま法律上扱う ことが可能な医師、看護師、救急救命士以外の方すべてを含んでの検討ということで考 えております。そういう点では並行してご検討賜るのがよろしいかと思っております。 ○島崎座長  この中には救急隊員も入るのですね。 ○佐藤補佐  入ります。 ○島崎座長  わかりました。法律的にはBLSの一環として、非医療従事者の中でできるという話 でいいですね。それはちょっと微妙なところですので、ではどうするのかという具体的 な話になると、別に論議したほうがいいかもしれませんね。法的問題に関しては、また いろいろ微妙なところがありますし、ほかの下のディスカッションの話と絡んでくると 思いますので、次の2の話を先にやってしまいたいと思います。特区本部決定に示され た4条件についての踏み込んだ検討ということで4つありますが、これに関してご質問 なりご意見はございますか。 ○小林委員  1番については、もちろんこれはこれでいいと思いますが、方向としては、片一方で は医師を探す努力をしろと言っておきながら、一方ではAEDを一般人がいつでも使用 できるように広めていかなければいけないということで、少し矛盾するところがありま す。どちらに重きを置くのかというところは、少し検討の余地があるのではないかと思 います。 ○島崎座長  努力の仕方と言うのですか。普通大声で、「お医者さんおられませんか」とか、「医 療従事者の方おられませんか」と聞く。飛行機の中はそうみたいですね。スチュワーデ スの方がAEDを使う場合、一応声はかけると。普通の航空機の中ですと、医療従事者 が来るまで10分も15分もじっと待って、もう一度再アナウスみたいなことをやっていま すね。ああいうことがないまま、一応呼んですぐに始めるのではないですか。それで途 中で交代するという話でしょう。 ○小林委員  飛行機の中はわかるのですが、一般の所でこういう条件が前面に出てくると、医師が 来るまでどう対応すればよいのか戸惑ってタイムラグが出ることが危惧されるのです。 ○島崎座長  少しでも早いほうがいいということですから講習の中では、呼びながら同時並行的に やってくださいという話になるのですかね。 ○五阿弥委員  私は個人的に、この1項目はなくてもいいと思っているぐらいです。倒れた人がいた 場合、医師がいればそこに駆けつけるだろうし、駆けつけない人は呼ばれても来ないの ではないかと思います。要するに誰がAEDを使うかというのも、もちろん重要です が、いかに迅速に使うかということのほうが、もっと大事なわけでしょう。先ほどいろ いろな資料が出ましたが、3分以内、5分以内で使わないと、あったとしても、あるい は講習を受けた人が駆けつけて使ったとしても、10分後では意味がないわけです。です から誰が使うか、それを使う人を増やすことはもちろん必要ですが、いかに迅速に使う かというのが極めて重要なのだということを、まずベースとして確認した上で議論すべ きだし、そういう意味からも1の項目がまず最初にきているということ自体、私は問題 ではないかという気がします。 ○島崎座長  ある種の大前提として、医療従事者に優先的にしてくださいということを含めて書い ていると思うのです。その辺のところは皆さんも講習等で、共通のコンセンサスは持っ ておられますから、別にこれで目くじら立てて云々ということはないと思うし、書いて おくことは必要だとは思いますが、私自身、全部書いていなくてもあまり問題はないと 思うのです。おっしゃるとおりはとおりですけれども。 ○竹下委員  私はただいまの委員のご意見に、賛成させていただきたいと思います。これは、むし ろないほうがいいのではないかという意見です。 ○島崎座長  しかし、ないと困るでしょう。 ○竹下委員  こういう救急の場では常識的にいろいろなことが判断されて、行われていくと思うの です。当然、そこに医師や看護師などの医療従事者がいれば、そういう方がリーダーシ ップを取られると思うのです。ですから必ずしも明記する必要はないのではないでしょ うか。明記する必要があるかないかというのは、非常に大きな問題ではないのですが、 もしこれで時間をロスするということが、非常に重要だと思うのです。 ○島崎座長  全くBLSにかかわらない人が言葉どおりにこれを読んで、それを探すのに一生懸命 になってということになれば、非常に困りますよね。 ○丸川委員  要するに探す努力の度合を決めればいいのです。例えば後ろには目がないわけですか ら、私が後ろへ立ったときに声をかけてくれれば、振り向けば済むわけですから、その 努力の程度をどう解釈するかという問題で、解決できるのではないかと思うのです。 ○島崎座長  いま言われたように、後ろには目がないわけですから、声をかけて探す人が、ふっと 見たらやっているということであれば、医師にプライオリティを与えなさいというのは 普通ですよね。私が見つけたら私がするという話にはならないわけです。 ○丸山委員  先の2人がおっしゃったほうに、私は賛成します。誰が使っても安全に使えるという ことと、早くすることが肝要だということを1つの項目を消すことによって、シンボル 的に示せるというところがあるのではないかと思うのです。それといま座長がおっしゃ ったように、この文言に拘泥する人が出てきた場合に怖いということを考えると、消し てしまうか、後ろのほうに劣後させてしまうか、いま丸川委員がおっしゃったように、 トーンをうんとダウンさせてしまうかというのが重要ではないかと思うのです。 ○島崎座長  そういう意味ではトーンダウンは必要ですが、消すのは私はやはり問題だと思いま す。 ○杉山委員  前のことと合わせますと、私はやはりこれは必要だと思います。「医師等を探す努力 」というのは要らないのです。その後で折角「非医療従事者」と書いてあるわけですか ら、「医療従事者等による速やかな対応を得ることが困難」ということだけで、私はよ ろしいと思います。後のフォローとか、どうしたらいいかということと非常に関係する ので、これはあったほうがよろしいと思います。 ○島崎座長  確かに最初の文言は要らないかもしれませんね。実際に前提条件でこういうものを書 かれるときの細かい文章は、必要になってくると思うのですが、そのときに杉山委員が おっしゃるように、後の文章だけでもいいし、それをいちばん最後に持ってくることも 必要かもしれませんね。法律的にはないと困るでしょう。 ○渡延課長  おそらく次回以降、踏み込んだ議論になろうかと思いますが、先ほど三田村先生から ご提起のあったAEDの使用が医行為かどうかというところにも、当然絡んでくるだろ うと思います。前回の有識者のお話の中で、AEDの使用については、たしか坂本先生 でしたか、感電の可能性があるので離れるとか、例えば行使するときに胸毛の濃い人な どの場合、火花が飛んで一定の外傷の可能性があるとか、いくつかご指摘になっていま した。そういうことをさらに有識者の先生方に詰めていただいて、行使に当たって人体 に危険があるということになれば、なお医行為であるという整理になる可能性があると 思います。その延長上、1の要件の帰趨というのは自ずと決まってくるだろうと。  ただ、これまでのお話の中で1から4は重要性を示すものでもないし、時系列的なも のを示すわけでもありません。当然、厳密な意味で1が済まないと2に進まないという ものでもないだろうと思います。単に個々の項目のあり方だけでなく、並べ方やウエイ ト付けについても踏み込んだご意見を承っておりますので、さらに次回以降、この点を 深めていただければと思う次第です。 ○島崎座長  ほかに2、3、4も含めて全体的に、私自身質問させていただきたいのですが、PA DはBLSの中に入れてもいいのですよね。その位置づけと言うのですか。AEDによ るPADの位置づけですか。 ○佐藤補佐  その点は今後この検討会の結果次第で、学術的な面でBLSに入れたほうが適切なの かどうかという点は、またあろうかと思います。基本的に法制度上、現行のCPRと変 わらないといった取扱いになるとすれば、そういう可能性も十分出てくると思っており ます。 ○島崎座長  この会で皆さんがそう思われれば、それでいいということですか。 ○佐藤補佐  まず法的な整理として、まさにCPRと同等の取扱いとなるとすれば、そういう取扱 いも考えられるのではないでしょうか。あとは学術的な面で、そういう取扱いでよろし いかどうかという観点はあるかと思いますが。 ○渡延課長  補足いたしますと、ALSやBLS、またそれをアメリカにおいて、世界標準におい て、日本においてどうかということを考えたときに、BLSについて我が国において、 必ずしも何か特別公的なものが絡んだものがあるわけではありません。ただ救急医療財 団が絡んで、心肺蘇生法委員会で一定の市民向けの講習のあり方と言いますか、教える べき内容を示されていることは事実です。ですから、この場での議論が発展した先に、 例えば心肺蘇生法委員会の中で日本版で示しているもののあり方を考えるに当たって、 また有識者の先生方に整理検討いただくというのが、一つの方法ではないでしょうか。 この場で、我が国の中でこれをBLSに位置づけるかどうかというのは、直接のテーマ ではなかろうと考えております。 ○島崎座長  差し当たってはこれだけを議論してほしいということですね。 ○三田村先生  「我が国においては」という表現は、適切な部分もありますが、救命ということで は、やはり世界と日本が違うこと自体、おかしいと思います。市民を考慮した場合は、 なるべく条件づけというものを最小限にすべきです。それからCPRという行為をする ときには、1番、2番、3番といった条件を満たさなければいけないという要求はない わけです。CPRと比べてAEDを使うことは、CPRよりももっと簡単で安全性も高 いという意味で、議論をしていただけると思います。 ○島崎座長  ヒアリングの先生方のご意見は、ある種BLSの一部、あるいはBLSよりまだレベ ルが低いというお考えのご意見ということで、ヒアリングを聞かせていただいたのです が。 ○野見山委員  もうすでに「非医療従事者の」という言葉が付いていますから、これをBLSで考え なかったら、ここで検討する意味そのものがないと思います。定義づけについては心肺 蘇生法委員会でさせていただくとして、基本的にはその概念でいいのではないでしょう か。 ○島崎座長  私が考えていたのは、AEDを教えるときにAED以外のBLSを教えるのかという こととの絡みで考えたのです。 ○鈴木委員  先ほど医事課からご説明いただいた内容からすると、一次救命の範疇というように解 釈できると思うのです。そのときにいま検討している(2)というのは、講習というこ とでここで言っている4条件は必須のものなのか、あるいは望ましい形でこういうこと が言われるということなのか、そこの議論はいかがでしょうか。 ○島崎座長  どうでしょう。ほかのものも含めて、必須かどうかをこれから議論しようということ だと思うのですが。 ○鈴木委員  必須かどうかによって、いま言っている(1)などは非常にウエイトが変わってくるだ ろうと思うのです。本来は一次救命、BLSの範疇であるということであれば、それは 緊急避難として対応できますということになると思うのです。しかしこの器具を使うに 当たっては、講習等を受けることが望ましいと。その講習はこういう講習内容ですとい う位置づけであれば、あえて(1)などは、あまりここで議論しなくてもいいのではない かという気はするのです。 ○渡延課長  もちろん次回以降、さらに議論を深めていただく問題ですが、第1回目に参考資料と してお示しした特区本部の決定でも、この4条件の頭の所で、「AEDを例えば次の場 合等において使用することは、一般的に医師法第17条違反とならないものと考えること とする」という書き方をしているのです。これは何を意味しているかと言えば、こうい ったものを満たしている場合については、通常ならないということを市民向けに明らか にし、AEDの使用が普及していくことが望まれるというスタンスです。この4条件の 世界の外側に、言葉はこなれていませんが、裸の緊急避難の世界があるのです。真に救 命のためにやむを得なくてやってしまう、けれども結果的に刑事免責になるという世界 が、当然この外側に広がっているわけです。したがってその外側の世界のことを考える ならば、これを満たさなかった瞬間に直ちに医師法違反、あるいは傷害罪などに当たる か当たらないかという意味での必須の条件かというお尋ねであるならば、そうではない というお答えになろうかと思います。 ○島崎座長  まさにそうです。ほかに全般的なことでいかがですか。いまの話と2、3などはかぶ さってくるのですが、2に関してはいかがでしょうか。皆さん、どうお考えでしょう か。倒れていれば、まず付けてやってしまうというのと、確認しなさいというのと。確 認しなさいということは、BLSの講習をちゃんと受けなければいけない。BLSと言 うとAEDとは別に、いままでのBLSの講習が必要だという話になってきます。いま 指導課長が言われたような、それから外のより緊急避難的なものは別にして、一般的に こういうものでやっていこうということで。 ○三田村先生  緊急避難というのは、いわゆる心停止に対しては、すべてが緊急避難なのです。した がって緊急避難にいくつもレベルがあるというのはおかしな話です。どんな場合でもこ れは緊急避難という認識が必要かと思います。それをこういう条件下でならやっていい という言い方よりも、どんどんやってほしいというように、普及するには、説得しない といけないわけですから、そういう表現を使って少しでも喚起するという形を取らない といけません。したがって、こういう条件が必要だという言い方は、あまり望ましくな く、こういう講習を受けることが望ましいということは、大いに言うべきだと思いま す。すべてが緊急避難であることは、間違いないと思います。 ○島崎座長  BLSそのものが、先ほどからお話のあったような消防、あるいは赤十字等を含め て、皆さん講習を受けてくださいということでやっていますから、それと同じような感 覚の中に入れれば。 ○三田村先生  ちょっと違うのは、講習を受けに行く人たちというのは、かなりアクティブに、積極 的にやろうという人なのです。例えばお年寄りとか、体力はないけれど、AEDがあっ たらそれだけは使えるという状況があり得るわけです。例えば家に置いてあって、CP Rはできないかもしれないけれど、AEDは使ってみようという、そういう方の善意の 行動をやはり制限してはいけないだろうと思うのです。 ○島崎座長  先ほどの野々木委員のパソコンのでもありましたように、小さく講習はできるだけリ クアイアット云々と書いていますよね。ああいう程度の意味合いの意識は必要で、AE Dに関しては、むしろ受けなくてもいいですというような書き方ではないと思うので す。 ○三田村先生  推奨することは大いに必要だと思いますが、それを前提条件にするのは、目の前にA EDがあるにもかかわらず、そういった条文のためにそれを使わないということになる と、これはかえってマイナスになると思うのです。 ○島崎座長  わかりました。先生のご意見は、参考意見として聞かせていただきます。ほかにはい かがでしょうか。 ○竹下委員  お尋ねします。先ほどの指導課長のお話によりますと、(2)に書いてあることは、 こういう場合には医師法違反にならないということで、4条件が示されたというお話と 理解してよろしいのですか。そうしますとAEDについては医師法違反にならないとい うようにご説明いただいたと思うのですが、政府の見解でそうだということならば、条 件を付ける必要はないですよね。むしろAEDを使用する場合の要望というか、推薦さ れるような事柄、実施に当たってこういうことが望ましいという事柄になるのではない かと思うのです。 ○島崎座長  こういうものを満たしていれば、皆さんがやっても安全ですという意味ですよね。一 般の人がやっても、社会的にも倫理的にもいろいろな問題点等はクリアできますという 条件がここには書かれていると、私はとらえているのです。 ○渡延課長  言葉が足りなかったかもしれませんが、前回の器具の説明の中で、AEDの中には半 自動的なものも含まれるという説明があったのです。例えば半自動式で心肺停止になっ ていない方に電極をはめて通電した場合、それも医師法違反にならないのかといった ら、当然医師法違反になったり、さらに傷害罪になったりすることはあり得るという意 味です。AEDの使用自体が一般的に医師法違反に当たらないということを申している わけではありません。 ○竹下委員  ここではAEDの話をしているわけですよね。それは完全に自動化しているAEDの 話をしているというように理解しているので、それを使用すること自体は医師法違反で はないわけですね。いかに安全であるかということも、先ほどから縷々ご説明いただい ているわけですから、私どもも循環器の医師の立場でも、安全であるということについ ては、あまり疑いを持っていないのです。そういうものを使用するに当たって、いかに すれば安全であるかというのは、あまり問題にならないのではないかと思うのです。や はりこの委員会としては、全く知らない方でも、あまり躊躇なくお使いになっていただ いて、できるだけ普及するという立場で考えていただきたいのです。  できるだけ躊躇なく使っていただくためには、どういうことを望むのか。例えば講習 も是非受けていただきたいとか。しかし、それが必須の条件かどうかというのは、必ず しも私は個人的には必須の条件ではないと思うのですが。しかしここに書いてあります と、講習を受けていないと咎められる可能性もあるというニュアンスが感じられるかも 知れません。これは間違いかもしれません。 ○島崎座長  まさにアメリカのアレに小さい字で書かれている内容を、なしにしてしまうというの は、私は問題があると思うのです。やはり必要な講習を受けた人がこれを使うのが望ま しいという文言は、絶対に必要だと私は個人的に思っております。買ってきたおもちゃ で遊ぶような感覚になられては困るのです。できればきっちりと講習を受ける。緊急避 難はその外です。緊急避難と言うと、それ以上の状況というのがあるわけです。見たこ とも聞いたこともない人がこれを使うという状況では、使ってもいいですよということ だと思うのです。そういうことで、必須というわけではないにしても、必要な講習を受 けたほうがリコメンドできるということで、必要な講習の具体的なあり方、(3)が非常に 問われると思うのです。内容に関してはいろいろ問題があったとしても、先ほどのヒア リングの先生、あるいは参考資料の話ですと、時間にかなりの差がありますよね。この 辺のところである種のコンセンサスを得ておきたいと思うのです。3時間、2時間と2 時間、1日コースなど、結構長いのがいろいろありますが、どの辺のところを皆さんは お考えですか。 ○小林委員  いちばん最初に野々木委員も言われたし、私も言いましたが、非医療従事者というの を全部一緒にして議論するのは、私は間違いだと思うのです。やはり非医療従事者で も、本当に一生の間に1回遭うか遭わないかという人もあるだろうし、業とまではいか ないまでも、遭遇する可能性の非常に高い人もいるので、そのあたりのところを整理し た上で、それぞれ必要な普及方策を考えていく必要があると思います。 ○島崎座長  具体的に言うと委員のお話は、救急隊員はどうかというのと、例えば警察や駅員とい った公的立場の者と、全く一般の人という分かれ方をするのでしょうね。私はミニマム の一般の人に対してどうかということを、皆さんどれぐらい考えておられるのかを、ま ずお聞きしたいのです。 ○野々木委員  冒頭でお話したとおり、非医療従事者を3つに分けるべきだと思っています。先ほど の米国のAEDに記載されている小さな文字に対して誤解を与えるといけませんので補 足致します。AEDを普及するためには、全くの一般人に対して講習は義務化すべきで はないと考えます。ただし救急の場面に従事する人、あるいは公共スペースに従事する 人に関しては、私はやはり講習を受けるべきだろうと思っています。いま心肺蘇生法も 十分に普及していない状況で、一般人に対してAEDが本当に普及するためには、ハー ドルを低くするべきであるという、三田村先生のご意見に私も賛成致します。全くの一 般人に対する講習に関しては、ミニマムで1時間ぐらいで可能だと思います。 ○島崎座長  要するに頸動脈の触知も教えないで、AEDだけを教えるのですね。 ○野々木委員  AEDを実施するとき、安全に行うための最低条件の約束事ぐらいの話と、AEDの 実習という形にすれば、1時間ぐらいで十分コースはできると思います。 ○島崎座長  AEDだけですね。 ○野々木委員  いいえ。AEDに加えて最低限の心臓マッサージ、人工呼吸、意識の確認の実習が含 まれます。 ○島崎座長  それを教えると。 ○野々木委員  それが入っても、1時間ぐらいで可能だと思います。 ○島崎座長  そうですか。まず一般の人については、ミニマム1時間で十分だというお話ですが、 教えないのは別にして、受けるとしたら皆さんも今のようなお話ですか。時間だけ、簡 単におっしゃっていただけますか。 ○竹下委員  私も野々木委員と同じ意見ですが、1つだけお尋ねしたいのです。PAD研究という のがあって、あれで一般市民に対して教育をしていますね。いまAHAではトータルで 4時間になっていましたが、PAD研究での教育はどのぐらい教えたのですか。 ○三田村先生  あれは2時間と4時間です。 ○島崎座長  とても終わりませんので、あと10分間だけディスカッションいたしましょう。PAD は何時間と今おっしゃっていたのですか。 ○三田村先生  PADのプロトコールは、2時間と4時間ということになっています。 ○羽生田先生  今日はこの論点の整理であって、具体的な話を詰めていく協議ではないというスター トをしたはずなのに、各項目をかなり具体的に各論しているわけです。これでは何時間 あっても終わらないですよ。今日は論点をこういう形で進めるのでいいかというところ で留めていただかないと、いつまで経っても終わりません。その予定できているので す。 ○島崎座長  具体的中身も、ある程度ディスカッションしようという話で行っているのです。これ からまた出てきたらお話していただいてもいいのですが、論点はもう最初にこれぐらい だということで、今は具体的中身ということでやっているのです。ですから、ちょっと 具体的に進めていこうということなのです。 ○羽生田先生  しかし全体としての流れはまだ2番で止まっていて、3番まで行っていませんよ。 ○島崎座長  ですから、あと10分で行けるところまで行って、全体を含めても具体的な中身は、も う一度やる必要がありますよね。 ○羽生田先生  いまの議論を聞いているだけでも、具体的なことはもう一度では済まないと思いま す。 ○島崎座長  ですから具体的中身としていろいろ出てきたものを、ある種の大略をまとめたような ものを、次回に出していただこうと思っているのです。いまは一般の人の時間について ですが、1時間、2時間、ほかにはよろしいですか。時間だけ言ってください。 ○杉山委員  ビデオを抜いて1時間で結構です。 ○島崎座長  みんなえらく短いですね。そんなものですかね。では一般に関しては、それぐらいが ミニマムとして教育されればいいだろうと。それからちょっと上のレベルの公的立場で 出くわす可能性が比較的高い警察官、公務員、警備員を含めた方の教育は、皆さん、も う少しやったほうがいいだろうというお話ですね。 ○羽生田先生  まず時間をいくつと決めるのではなく、どういうことが必要なのか、それにはどれだ けの時間が必要なのかという議論をしていただきたいと思います。ついこの間まで、救 命士のAEDに対して4時間やるという話をしていたのは、何だったのかということに なってしまいますから、一般市民に対しては内容的にこれだけのものが必要とか、ある いは先ほど杉山委員、小林委員が言われていたような、救急隊員だったらどうかなど、 内容を吟味した上で時間を決めていくというところで。 ○島崎座長  いままでのヒアリングを聞いていますと、職業としてやっている人は別にして、一般 の人は長くなったら中身が濃くてもみんなやらない、聞かないということなので、私は 少なくともこの辺までは、先に時間を決めてしまうほうがいいかなと思ったのです。そ の時間の中でミニマムエッセンシャルを教えられるような中身にしたいと思っているの です。少なくとも一般はそれでもいいでしょう。救急隊などという話になってきたら、 これと、これと、これという話になってくると思います。 ○羽生田先生  一般に普及を図っているアメリカでも、いま2時間ですよね。それがここで急に1時 間になってしまうという話になるわけですか。 ○島崎座長  いやいや、いまは意見として聞いているだけです。 ○羽生田先生  1時間という意見が多いのですが、アメリカぐらい普及を図っている所でも2時間、 その上が4時間ですから、それを考えても、どうしてここが急に1時間になるのか、私 にはよく分からないのです。 ○島崎座長  座長ですから意見を聞いているだけです。私も短いなと、先ほどちょっと言ったので す。先生は一般の人でも2時間ぐらいは必要だということですか。 ○羽生田先生  ですから、その内容がどの程度のものなのかということで変わってくるだろうと、私 は思っています。 ○三井委員  私はAEDの操作の仕方とCPRを分けて考えていくというのが、どうしても。 ○島崎座長  BLSの中に入れて、BLSも一緒に教えてということは、もっと時間が要るだろう ということですか。 ○三井委員  セットではないかと思うのです。 ○島崎座長  その両方を教えたら、どれぐらいだと思われますか。 ○三井委員  私はやはり5時間ぐらいはかかるのかなと思います。 ○島崎座長  わかりました。一応5時間から1時間ぐらいまで、いろいろな幅の意見があると。警 察、先生、警備員といったところの時間は、もう少しそれに上乗せということになると 思うのですが、中身は別にして、この辺の時間はどれぐらいをお考えですか。 ○野見山委員  話を戻してすみません。うちの病院では看護助手のパートの人にも教えるのです。B LSのビデオを15分ぐらい見せて、あとは大人と子供と赤ちゃんとやります。大体2時 間かかります。ですからAEDは時間的にはそんなにプラスにならないと思います。原 理など必要ありませんので、AEDの操作とBLSを基本的に教えるだけで、2時間は いいと思いますし、実習が主ですから、看護助手クラスの方でも、2時間は聞いてやっ てくれます。警備員などの第二種の職種の人は、4時間か8時間のどちらかぐらいは必 要だと思います。それは理論が必要だからです。 ○島崎座長  時間だけお願いします。 ○三田村先生  昨年シアトルのLeonard Cobb博士に会って、ミニマムはどれぐらい必要かと話したと ころ、ミニマムとして彼がリコメンドするのは、マウス・トゥ・マウスを除いた、心臓 マッサージとAEDだったら30分でできるというのが、彼の提示したミニマムです。逆 に警備員など、特定の場所でやる人にとっては、講義の時間以上に現場でのシミュレー ションスタディを、むしろ大いにやっていただくというように、フレキシブルにお願い したい。 ○島崎座長  それを含めたら、どれぐらいと考えておられますか。 ○三田村先生  時間はちょっと言えません。 ○島崎座長  そういうものも必要だろうと。確かに最近では人工呼吸というのが、あまり意味がな いと言われ出していますよね。心臓マッサージだけと差がなかったというデータも出て います。公的立場の人に教えるとしたら、いま8時間ぐらいというお話でしたか。4〜 8時間でしたか。 ○鈴木委員  いまの公的部分というのは、ファーストレスポンダーになり得る人という範疇のご発 言かどうかは分かりませんが、そういう形で見た場合、いろいろな職種の中で、かなり 違いがあると思います。 ○島崎座長  救急隊はまた後で話しますが、警察、学校の先生、警備員だと、どれぐらいを考えて おられますか。 ○鈴木委員  いわゆる救急隊も含めて、警備員やパトカーに乗る警察官はどうかというようになっ てきますと、みんなバラバラになってくると思うのです。まず大事なことは、AEDに 関していちばん基本となる時間としては、これだけの時間が必要ですというものがあっ て、今度はそれぞれの職種の中で、例えば消防なら消防、警察なら警察職の中で、こう いうものを活用する場合、これだけの時間教育するというものを定めていったほうがよ ろしいのではないですか。 ○島崎座長  そこで警察などだと、どうお考えですか。 ○鈴木委員  例えば私ども消防のこと。 ○島崎座長  消防はまた別で、もう1ランク上だと考えていますから、例えば警察だったら。 ○鈴木委員  その部分で警察官は何時間ということを指定すること自体、いかがなものかと思いま す。それはそれぞれの職種の中で判断すべきではないかと思います。 ○島崎座長  分かりました。ほかにはいかがですか。 ○大越委員  乗務員の場合はCPRの時間を抜けば、2時間あれば十分プロシージャーを習得する ことができると思っています。 ○島崎座長  スチュワーデスなどは、やはり警察、警備員という領域に入るのかな。 ○大越委員  そんな感じですね。 ○島崎座長  2時間ですか。 ○大越委員  どこに物が置いてあって、何と一緒にどういうように持ってくるかという。 ○島崎座長  スチュワーデスはBLSをやっているのでしょ。 ○大越委員  はい、毎年やっておりますので、その時間を除くと2時間ぐらいです。入れると、や はり4時間から6時間ぐらいになると思います。 ○島崎座長  救急隊の時間などはちょっと微妙ですので、救急隊は別にディスカッションしたほう がいいと思います。全体がいま言ったレベルぐらいまでのAEDの教育と講習とを含め てから、その後になると思うので、今日のディスカッションではちょっと置きましょ う。  (2)でもう1つ大きいのは、インストラクターあるいはトレーナーの要件というの が、ここに書かれているのです。この教える人たちを教えるのは誰かというのは、また 別にあるのですが、一般の人たちをいま言ったレベルまで教える人たちというのは、一 般的には救急隊員ぐらいまでが考えられるのですが、例えば日赤のBLSを教えている 指導員の方などは、かなり長い時間かけて、こういう資格を取っておられるわけです。 皆さんは講師の職種をどの辺までお考えでしょうか。それだけどなたか一言あればお願 いします。どうでしょう。 ○鈴木委員  私ども消防の機関では現在、年間約100万人ぐらいの救命講習の修了者を出していま す。指導者としては応急手当普及員というのがいちばん下のランクですが、AEDの指 導者になり得るのは応急手当普及員、いわゆる現在BLSを指導している範疇の人に は、是非認めてほしいと思っています。 ○島崎座長  プールの監視員など、ああいう人たちもやっていますね。 ○三井委員  水上の救助員たちというのは、それを教える資格ではないですよ。実際にその場面に 遭遇したら、救助できるというレベルです。 ○島崎座長  教えるほうには入っていないのですか。 ○三井委員  ええ。それにはまた指導員という認定がありますから、その上になるのでしょうか。 ○島崎座長  いまのお話ですと、少なくともBLSを教える人たちは、すべてAEDを教える講師 としての要件を満たしているのではないかというお話ですが、ほかにはいかがでしょ う。 ○野々木委員  今後AEDをどういうように教えるかという必要がありますから、もし教える立場だ とすれば、せめてHeartsaver AEDに当たるような講習を受けてという形のほうが、私は いいのではないかと思うのです。 ○鈴木委員  私が先程言ったことの前提となるのは、現在応急手当普及員等がやっている内容に は、AEDは入っていないわけですから、それを含めた形で、その時間を何時間取るか は別の問題ですが、それは当然やった上で、指導者として認めるということです。 ○三井委員  私も鈴木委員と同じで、いま実際に一般の方々に教えている方には、新たにAEDに 関する部分を補足してもらって、積み上げてもらって、指導者として活動してもらいた いというのが希望です。 ○島崎座長  進めるという意味ではそのほうがいいし、あまりいい加減なことを教えてもらっては 困るという意味では、もう少し狭めたほうがいいかなという気もするのですが、いまの お話ですと、進めるためにはギリギリまでやったほうがいいのではないかというご意見 だと思います。いまの点はどうですか。あまり急いでやるよりは、そこを含めてもう一 度やりますか。  一応ある種フリーディスカッションというか、ブレーンストーミングという感じで話 していきましたが、いまの講師の要件も、皆さんにもう少し考えていただいて次回、2 を含めて、もう一度やりたいと思います。そうするとフリーディスカッションの時間が もう1回増えるわけですね。中身を具体的にいろいろディスカッションしたい内容が、 結構ありますので、今日の話を聞いて、実は次回にある程度の叩き台を出して、その次 に報告という段取りだったのですが、とてもではないけれど、時間的に無理なので、も う一度フリーディスカッションの時間を設けていただきたいと思います。事務局のほう から何かありますか。 ○渡延課長  大変長時間、ありがとうございました。本日はあくまでも論点というか、フレームの 設定ということで、議題を設定しておりましたが、事務局の作業の便宜のために、座長 に踏み込んで議論していただきました。次回の日程は、各先生方のご予定を伺った上で 調整いたしまして、後日お知らせいたします。よろしくお願いします。 ○島崎座長  長くなりましたが、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございまし た。お疲れ様でした。                      <連絡先>                       厚生労働省医政局指導課                        Tel 03-5253-1111                         佐藤(ex2554)、中田(ex2559)                        Fax 03-3503-8562