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移送

 要介護高齢者の外出は、通院目的が多いと考えられ、自家用車、タクシー、電車・バス、徒歩など様々な手段が利用されている。また、外出時の困難とその対応策として、「道路等やバス等の乗降口の段差の解消」などが多く挙げられている。
 これらに対応するものとして、「交通バリアフリー法」によるバリアフリー化が推進されているほか、デマンドバス等といった柔軟なサービス等も提供されている。
1.要介護高齢者の外出等について
 (1)外出手段
 仙台市が要介護者を対象として実施した調査(以下「仙台市調査」という。)によれば、要介護者等の外出の際の交通手段(複数回答)は、(1)自家用車(送迎してもらう)、(2)タクシー、(3)徒歩、(4)バス、地下鉄等の順となっている。要介護度別に見ると、要介護が低いほど「徒歩」や「バス、地下鉄等」が多く、「タクシー」もその傾向にある。

 
  全体 要支援 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
自家用車
(送迎してもらう)
39.9% 23.7% 38.8% 55.8% 42.4% 50.8% 45.0%
タクシー 31.2% 33.5% 35.2% 27.4% 28.2% 24.6% 17.5%
徒歩 28.9% 44.7% 31.2% 22.1% 18.8% 9.2% 5.0%
バス、地下鉄、電車 14.1% 27.0% 15.9% 6.3% 3.5% 3.1% 2.5%
車いす 12.7% 1.9% 7.6% 13.9% 25.9% 32.3% 50.0%
自転車、バイク 1.9% 3.3% 2.4% 0% 1.2% 0% 2.5%
自家用車
(自分で運転する)
1.9% 2.8% 1.5% 1.9% 1.2% 0% 0%
仙台市介護保険事業計画及び高齢者保健福祉計画策定のための実態調査―要介護者等調査―(H14.3)
回答者数は、965人。要介護認定が不明の者、回答が「その他」「無回答」の欄は割愛した。

 (2) 外出(移送サービス利用時)の目的
 移送サービス(タクシー、NPO等)を利用時の要介護高齢者の目的としては、通院がほとんどであり、通院以外は公共機関の利用などである。
 (外出介助の目的地)
病院 福祉施設 公共機関 その他
94.7% 3.0% 0.6% 1.8%
 ※訪問介護業務内容調査(H14.2)。指定訪問介護事業所を受けているタクシー会社(165)に対する調査

 (3) 外出の際に困ったこと
@ 仙台市調査によれば、要介護者が「外出の際に困ること」(複数回答)として、「道路や駅などの段差」が最も多く、次に「バス、地下鉄、電車などの乗り降り」となっている。
 
  全体 要支援 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
道路や駅どの階段や段差 45.0% 48.8% 49.5% 45.2% 42.4% 30.8% 22.5%
バス、地下鉄、電車などの
乗り降り
33.4% 47.9% 35.2% 26.9% 22.4% 23.1% 12.5%
外出先で利用する建物の
手すりなどの不足
25.0% 24.2% 29.7% 27.4% 24.7% 13.8% 10.0%
街を走っている車が危険なこと 23.7% 26.1% 27.2% 22.1% 22.4% 18.5% 7.5%
交通費がかかること 21.6% 20.9% 24.2% 19.7% 22.4% 16.9% 20.0%
介助者がいないこと 18.7% 14.9% 20.2% 19.2% 17.6% 23.1% 22.5%
特にない 17.3% 14.9% 18.3% 16.3% 16.5% 20.0% 27.5%
 仙台市介護保険事業計画及び高齢者保健福祉計画策定のための実態調査―要介護者等調査―(H14.3)
 回答者数は、965人。要介護認定が不明の者、回答が「その他」「無回答」の欄は割愛した。

  A また、「都市交通に関する世論調査」(H11内閣府)によれば、都市交通についての「高齢者・障害者等」への対応(複数回答)として、「バスの乗降口、駅のホーム等における段差の解消」、「駅、空港等交通施設におけるエスカレーター・エレベーターの設置」が多く挙げられている。

高齢者・障害者等への対応のグラフ


2.要介護高齢者の移動に対する取組みについて

 (1) 公共交通機関、交通施設のバリアフリー化
平成12年の「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」の施行もあり、公共交通事業者や関係行政機関において、移動の円滑化の促進が図られているところ。

具体的な取組み内容(交通バリアフリー法の仕組み)
  主務大臣が定める基本方針の下、以下の措置等を推進するもの
(1) 公共交通事業者(電車、バス)が講ずべき措置
新設の旅客施設、車両についての公共交通事業者の義務(既存施設等は努力義務)
 旅客施設 … エレベーター等の設置、視覚障害者誘導ブロックの設置 等
 車両 … 鉄道車両の車いすスペースの確保、低床バスの導入 等
(2) 重点整備地区におけるバリアフリー化の重点的・一体的な推進

(H14年度国土交通白書より作成)

 (2) 柔軟な路線を持つ公共交通機関とSTSなど
 上記のような公共交通機関のバリアフリー化により公共交通機関による移動の円滑化が図られるとともに、利用者の身近でアクセスできるデマンドバスや、福祉車両等のタクシーやNPO、ボランティア等により介助を伴うドア・トゥ・ドア型の移送サービス(Special Transport Service)が提供されている。また、これらのサービスについて、地域交通の確保の観点からも、コーディネイトや支援を行っている自治体もある。

 また、通院のための移動については、病院が送迎を行っていたり、患者団体が自らの構成員の送迎を行っているケースもある。

(参考)

@ デマンドバスシステム
@ デマンドバスシステムの図
(H14国土交通白書より)

A 東京都武蔵野市における「レモンキャブ」
  電車やバス,タクシーなどの公共交通機関の利用が困難な高齢者・障害者の外出支援を目的とし、通院や買い物など個別のニーズに対応した移送サービス事業を実施しています。
本事業では、福祉公社に登録された商店主を中心とした地域の運行協力員が福祉型軽自動車(レモンキャブ)を運転し、ドア・ツー・ドアのサービスを提供しています。ぜひ、ご利用ください。

利用対象者 市内在住で、公共交通機関の利用が困難な高齢者、障害者の方で、福祉公社に利用登録をされた方
年会費 1,000円
利用料 30分につき800円
運行範囲 市内および隣接市区
利用日時 原則として月曜日〜土曜日の午前8時から午後6時
 (但し、祝日、年末年始は除きます。)
車両 車椅子でそのまま乗り込めるタイプ:4台
 (内、2台は少し大きめの電動車いすにも対応)
後部座席がリフトになっているタイプ:3台
 (ノンステップでご乗車できます)
福祉型軽自動車(レモンキャブ)の写真

福祉型軽自動車(レモンキャブ)の写真

福祉型軽自動車(レモンキャブ)の写真
(武蔵野市福祉公社ホームページより)

B タクシーによる福祉輸送サービス(例)
 (1) 車両の種類 タクシーによる福祉輸送サービス(例)の写真
 ・  寝台(ストレッチャー)専用車
 ・  車椅子専用車
 ・  寝台・車椅子兼用車
 ・  回転シート車両
 (2) サービスの例
 ・  ストレッチャー等による通院や転院時の移動など
 ・  車椅子等での駅や空港への送迎
 ・  車椅子等での冠婚葬祭や親戚・友人宅への訪問
 ・  車椅子等での趣味の会や観劇・買い物などの外出
「福祉輸送サービスご利用の手引き」(財団法人全国福祉輸送サービス協会)より作成


3.当部会における意見等
 ○ 介護移送は市中での買物、食事、親しい友人宅を訪問、病院の受診などに不可欠。
 ○ 移送に対する支援は、介護保険の外出のための身体介護とは別に、公共交通機関のバリアフリーや福祉移送サービスなどにより総合的に進められるべきではないか。

 (参考)介護保険(訪問介護)における「移送」行為の取扱い

 現在、訪問介護の行為には、移送行為(C:訪問介護員の運転中)は含めておらず、介護報酬上も評価していない。
 具体的には、訪問介護に伴い同一の訪問介護員が移送を伴う場合は、下記A及びBの行為について、乗降等介助(100単位)で評価している(注)

(参考)介護保険(訪問介護)における「移送」行為の取扱いの図

 (注) ただし、以下の場合は、身体介護の算定を可としている。
 @ 重度の介護者で介助行為に一定の時間を要する場合
A 外出目的の介助行為以外の介助行為等を併せて行う場合であって、当該行為等に一定の時間を要する場合

<「乗降等介助」の請求状況>

(データ)「通院等乗降介助」の請求事業所数と総請求回数

  H15年4月 5月 6月 7月 8月 9月
請求事業所(か所) 1329 1556 2053 2487 2599 2696
総請求回数(千回) 306 330 348 386 378 409
*介護給付費実態調査



外出支援サービス事業実施状況

高齢者が医療機関等へ外出する際に、市町村の一般財源により送迎を行う事業として、「外出支援サービス事業」が行われている。(国1/2、都道府県1/4補助)
送迎先としては、居宅と医療機関、在宅福祉サービスや介護予防事業提供場所との間の送迎が多い。

○実施状況(平成14年度:有効回答数1,632市町村)

1.事業内容(複数回答)
 
居宅と医療機関、在宅福祉サービスや介護予防事業提供場所との間の送迎 1,587市町村 97.2%
  居宅と医療機関との間の送迎 1,021市町村 62.6%
居宅と在宅福祉サービスや介護予防事業提供場所との間の送迎 1,267市町村 77.6%

2.送迎エリア
 
市町村内 856市町村 52.5%
市町村を越えて実施 737市町村 45.2%

3.実施体制
 (1)直営・委託の別
 
直営のみ 86市町村 5.3%
委託のみ 1,502市町村 92.0%
直営及び委託 42市町村 2.6%

 (2)主な委託先(複数回答)
 
市町村社協等 995市町村 64.4% シルバー人材センター 71市町村 4.6%
社会福祉法人 457市町村 29.6% 医療法人 51市町村 3.3%
営利法人(タクシー会社等) 207市町村 13.4% NPO法人 40市町村 2.6%

4.年度別実施状況(平成12〜15年度:有効回答数1,835市町村)
 
  平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
実施市町村数 1,236 1,463 1,632 1,784
利用者数 197,027人 277,046人 344,380人 473,198人
  1市あたり平均利用者数 159人 189人 211人 265人
利用延回数 1,970千回 2,681千回 3,108千回 3,701千回
  1人あたり平均利用回数 10.0回 9.7回 9.0回 7.8回


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