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平成15年度第3回薬事・食品衛生審議会血液事業部会概要
(※正式な議事録は、おって公開する。)


日時:平成15年10月24日(金)13:00〜15:00

 委員22名中15名が出席

 議題1「遡及調査により個別NAT陽性血液の混入が判明した原料血漿由来の血漿分製剤の取扱いについて」について

 事務局の説明に続き、花井委員から大平・花井委員連名の意見書について説明があった。さらに、本件に係る安全技術調査会の検討結果について、比留間委員から説明があった。これらに係る質疑のほか、以下の議論があった。

 情報提供と回収はセットではないか。血液製剤については現在考え得る最大限の安全性を確保した上で、完全なものではないということは誰もが共有している事実ではないか。それを担保するために情報公開がある。個別の製剤に係る情報提供には理想論と現実論があるかと思うが、他国のように血液事業白書のような年報を出し、報告された陽性事例や原料血漿の使途について、定期的に国民に冊子、インターネット等で公開してもよいのではないか。また、今回示されたバリデーションの数値を根拠にして、その数値が確保されていない製品については、個別NAT陽性血液が混入したらすべて回収ということがあり得るのではないか。
 ウイルスバリデーションには微妙な部分があり、不確定要素も多い。
 混入するウイルス量はまちまちであり、一律にバリデーションの数値をもって規制するのではなく、セーフティマージンをとったほうが実用的ではないか。
 今回、回収はしないけれども出荷を止めているような状況が長く続いている。これは、その製剤を毎日使っている患者にとって余り望ましくない。具体的に個別の事例を検討するとして、その検討がどれくらいでできるのか等を明確にすべきである。
 10の9乗を一つの基準にしてはどうか。しかし、それ以下のものを全部回収するとなると、今回のような事態がなかったら個別NAT陽性血液が混入しているかどうか分からないのであるから、すべて回収しなければならなくなる。現時点では、明確にしたくてもできない現実もあるのではないか。
 今回、検査体制の迅速性が保たれていないために、個別NAT陽性血液が混入してから対応を検討するまでの時間が余りにも長く、社会的に混乱があったと思う。迅速性を保たねばならない。また、グレーゾーンがあるとしたら、もう少しはっきりとしたデータを出していただき、きちんと検証できるような体制が早くできないといけない。科学が先行した総合的な判断をすべき。
 個別の製剤については情報提供を行う必要がないと思うが、それを補う意味で、白書や報告書を出していくというかたちがいいのではないか。
 今回、初めて提示された、個別NAT陽性血液が混入した製剤がどれだけ出回っているかを明らかにした資料などを提示するのがいいのではないか。
 不活化工程でバリデーションの値が10の9乗以上確保されていることを添付文書のようなかたちで書き、それで年に一度、NATの陽性例等を白書のような形で国民に知らせるのはいいことと思う。
 すべてのいろいろなデータを公開する前提で、どのような不活化処理が行われているかということもオープンにして、海外の規格などのいろいろな問題も白書にデータとして明記し、全体として情報公開していくのではないか。
 1948年には、液状血漿を60℃10時間加熱することにより、ウイルスが発見されていない状況において感染が成立していなかった。HIVが発見された1980年代初頭においては、アルブミン製剤についてはエタノール処理と10時間処理があり、検査がまったく行われていなかったがHIVの感染はなかった。その安全性を更に高めるために、例えば10の9乗といった一つの線を引いてみることはあってもいいと思う。また、HBc抗体が陽転した血液を遡及したら個別NATが陽性であった場合、感染して陽転したと一応考えるべきかもしれないが、非常に微量のウイルスを持つキャリアがいるというケースもある。HBc抗体検査は必ずしも先進国で行っているわけではないが、我が国では1980年代に導入後、劇症肝炎が激減したという成果が上がっている。こうした事実を踏まえて、HBc抗体検査の取扱いを検討する必要があるだろう。
 添付文書の書きぶりについては、諸外国のNATのスケールの違いなども踏まえて、兼ね合いを検討していただきたい。
 添付文書に余り詳しく書き込みすぎると使いにくい。ホームページや白書に詳しい情報を書き、必要最小限のことを添付文書に書くようお願いしたい。

 以上の議論を踏まえ、安全技術調査会の検討結果を承認することとされた。
 今後、事務局は、この結論を踏まえ、採血事業者や血漿分画製剤の製造業者に対し、必要に応じて通知の発出等の行政対応を行うとともに、血液事業白書のような形式や、「血液事業の情報ページ」を用いた情報提供を検討することとされた。

 議題2「平成16年度の原料血漿確保目標量(案)」について

 平成16年度の原料血漿確保目標量(案)は、事務局案どおり了承された。

 議題3「その他」について

 事務局より、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の施行状況、生物学的製剤基準の改正(案)、その他の血液製剤に関する報告事項について説明があった。
 日本赤十字社参考人より、輸血用血液の安全対策について説明があった。
 これらの説明に対する質疑のほか、以下の議論があった。

 今回の遡及調査でも、HIVについては輸血後2か月の検査に保険が適用されているが、HBV、HCVについてははっきりしておらず、輸血後検査が殆ど行われていないのが現状である。できればある程度時期を一致させて、6か月前後までに輸血後のHIV、HBV、HCVの検査をするということを保険で認め、輸血前の検査についても保険で認めれば、原因確定が非常にはっきりするのではないかと思う。
 今まで日赤に安全対策をお任せしてきた部分がある。ところが、最終的には各関係者との共同作業であり、日赤でやってきた対策の検証も必要である。その検証結果も白書に盛り込むということが非常に大事ではないかと思う。最近の議論を聴くと、相当安全性が高まっているはずなのに逆行しているとか、大変な危険が新たに出てきた、ととられている方が一般に多い。現実には隠れていた危険性が認識されているだけであって、それに迅速に対応するような会議があってほしい。
 細菌汚染については、菌が検出されたことと敗血症を起こすこととはイコールではない。また、日本では、菌が検出される頻度は欧米の約10分の1くらい。これは血小板製剤や赤血球の保存期限が他国よりも短いことと関係していると思う。日赤の採血技術は非常にいいのではないか。むしろ、今まであったかもしれないというのが出てきたのではないか。ただし、フランスやイギリスでは全国的なサーベイランスが行われていて、その評価が行われ、その結果に基づき、採血当初の2-30cc破棄等を実施することにより細菌汚染の減少などにつなげている。なお、2、30年前は輸血による敗血症の予防がかなり大きな問題だった。現在非常に安全性が高くなっているというのは、肝炎、ウイルス等と同じ経過であると思う。
 採血ドナー、採血方法、保存、注射、すべての経路においてチェックして、解決するような方法で是非お願いしたい。
 因果関係がはっきりしないと、輸血への信頼性が損なわれることが患者にとって一番大きな心配事。日本赤十字社は平成8年から検体保管を始めたといわれるが、検体保管をした場合に、遡及調査をシステマティックに行う形を最初から構築していくことが信頼を生む。きちんと因果関係を調べて、輸血からの感染ではなかったことが早くはっきりできるようにすることが、広報として大変重要なのではないかと思う。
 生物学的製剤基準について、まず、小児用の輸血には、特に赤血球について、大人用の200ccや400ccの全血由来では大きすぎる。分割投与を可能にする項目を一つ入れてもらえないか。また、5単位の新鮮凍結血漿は非常に溶かしにくく、扱いにくい。二つにしてチューブにつなげ、同じ患者に入れられると使い勝手がよくなるという問題がある。是非検討してもらいたい。さらに、400cc全血採血から得られた新鮮凍結血漿は3単位分取れるが、3単位の基準がないために、1単位と2単位に分けている。3単位を新しい1単位として、400cc全血由来を1単位、成分採血由来を2単位ということも考えられるのではないか。加えて、血小板は20単位取れる場合もあるが、一般的に一回使用量は10単位であり、これを分割して供給することはできないか。

 これらの問題については、それぞれ事務局と日本赤十字社で検討することとされた。
(了)


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