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4.相談支援のために
1)相談窓口
 うつ病について相談できる窓口が設置されれば、住民は相談をしやすくなる。
 すでに保健所や市町村等におかれている精神保健福祉相談の窓口をうつ病の相談窓口として利用する場合には、精神保健福祉相談においてうつ病に関する相談を積極的に受け入れていることを広く広報することが必要である。また、うつ病専用の相談日を作ることなども有効である。
 相談窓口では、十分に時間を割いて本人のみならず家族や周囲の人たちの話を傾聴することが重要である。
 特に、窓口においては、必要に応じて、うつスクリーニングや、医療機関への受診勧奨を行うことは重要である。また、うつ病は多くの者が回復する病気であること、早期に治療を行う程回復が早いこと、早期に医療機関を受診する必要性について説明することも重要である。うつスクリーニングは、その後の適切な診断と治療、フォローアップを十分に行うことではじめて、うつ病治療に対する効果を見込める。そのため、相談窓口担当には、うつ病に関する基本的な知識に加え、面接技法や診断・治療などに関する知識等についても講習会等で習得することが必要である。また、うつ病の治療を受けている住民に対しては、継続治療の重要性を伝えることも必要である。
 うつ病や抑うつ状態は、深い悩み事としてとらえられていたり、疲労や体調不良などの身体的な問題としてとらえられている場合が多い。そのため、一般健康相談や生活・福祉相談にうつ病や抑うつ状態の者が相談することも考えられる。こうした場面で、常にうつ病を意識した問診や相談がなされるとよい。うつスクリーニングを補助的な検査として実施することも考えられる。仕事や人間関係・自分の身体や将来のことなどで悩んでいるのを見たとき、それがうつ病の可能性もあることを想定して、的確に対応することが必要である。

2)相談のための人材育成
 うつ病を正しく認識し、うつ病に悩む人たちがうつ病に気づけるように助言し、うつ病に対して適切な相談対応を行うためには、相談にあたる人に対して、教育・研修などを通じた学習の機会を提供する必要がある。実践的な知識を得るためには、ロールプレイや実習形式の研修を行うのも良い。

 医師、保健師、看護師、助産師、管理栄養士等の保健医療従事者が習得することが望ましいこと。
(1) うつ病者への相談対応における一般的留意点(プライバシーの保護、共感的・受容的傾聴、相手に無理強いすることなく、相手のペースで、相手のニーズに沿った相談の進め方)
(2) うつ病に関する基本的知識を相手にわかりやすく説明する方法
(3) 相談における留意点・事例の見たて方(面接技法、うつスクリーニング方法)
(4) 関係機関とのネットワーク構築方法、特に精神科医療機関への紹介の仕方、その後の連携の取り方
 (3)の相談における留意点・事例の見たて方では、本人を含めその事例全体で、誰が何に一番困っているのかに注目して整理する。特に、本人がどのような困難に直面していると感じているかを把握することが大事である。また、希死念慮や落ち着きのなさが強い場合など緊急性が感じられる場合には、早急に家族や保護者に連絡をとることが必要である。また、こうした現場で仕事をする第一線の職員を支援するため、定期的に会議を開くなど、助言・指導が得られる場を構築することも重要である。
 介護保険従事者、高齢者福祉サービスの従事者などその他の保健福祉従事者が習得することが望ましいこと。
(1) うつ病に関する正しい知識
(2) 高齢者や障害者のうつ病の気づき方、対応の仕方
(3) 市町村の保健センター、保健所、精神保健福祉センターなどの地域の相談機関の利用方法
(4) 家族などと相談しながら医療機関への受診を円滑に勧める方法
 一方、ボランティアなどの、住民と身近に接する非専門家にも、同様な教育・研修が行われているとさらに効果的である。こうした非専門家には、自分の価値観や信念をあてはめず傾聴する、相手の希望、権利、価値観を尊重する、秘密を守る、必要な場合に早期に専門家へ紹介するなどの対応が必要であるとされている。


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