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1.なぜ、うつ対策?
 近年行われた国内調査で、一般住民の約15人に一人がこれまでにうつ病を経験しているにもかかわらず、うつ病を経験した者の4分の3は医療を受けていなかったことが示され、うつ病は決して一部の人々の問題ではないことが明らかになるとともに、その対応が適切になされていないことが示唆された。世界的にみても、世界保健機関(WHO)が行った障害調整生存年(DALY)による疾病負荷の将来予測によると、うつ病が2000年では総疾病の第4位であったのに対し、2020年には第2位になると予測されており、今後も大きな健康課題になると考えられている。
 しかし、うつ病は本人をはじめ家族や知人が適切に対処し、また、環境を整えることで、早期発見・早期治療ができると言われている。そのためには、地域において、住民の活動、相談や治療を行う支援機関の活動など、さまざまな取り組みが展開されることが求められる。都道府県・市町村は、行政サービスとしてうつ対策を行うとともに、これらの活動の「取りまとめ役」として大きな役割を担うことが期待される。
 具体的には次のような目的を掲げ、うつ対策を行っていくこととなる。

(1) 住民がうつ病について正しく理解することができる
(2) 抑うつ状態にあることに自ら早く気づくことができる
(3) 周囲の人々が抑うつ状態にある人に気づくことができる
(4) ストレスが高い状態や、生き甲斐のなさ、社会的役割喪失などに、一人で悩まず、気がねなく身近で相談することができる
(5) 本人をはじめ周囲の人々が抑うつ状態を改善するための支援(相談、治療)を身近に得ることができる

本ガイドラインの構成

<うつ病対策の基本方策>

うつ病対策の基本方策の図

 本マニュアルで重要視しているのは、正しい理解・気づき、キュアとケアという考え方。
 うつ病は個人を強く苦しめるのはもちろんのこと、社会にも大きな影響を及ぼす疾患で、こうした苦しみを早く解決するためには早期発見、早期治療が重要なことは言うまでもない。これがキュアという考え方。しかし、簡単に治らない場合や再発を繰り返す場合も少なくなく、そうした場合には、長期にわたってその人をケアすることが必要となる。


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