03/12/25 第32回労働政策審議会雇用均等分科会            第32回労働政策審議会雇用均等分科会 1 日時:平成15年12月25日(木)10:00〜 2 場所:経済産業省別館1014号会議室  3 出席者   労側委員:稲垣委員、岡本委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員   使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員   公益委員:若菜会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、樋口委員、横溝委員 ○分科会長  ただ今から、第32回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。  早速、議題に入ります。本日は、「仕事と家庭の両立支援対策について」ということ で、前回のご議論を踏まえて修正された報告(案)が事務局から提出されています。本 日は、雇用均等分科会報告として取りまとめをしたいと考えていますので、委員の皆様 のご協力をお願いします。事務局から最終的な報告(案)について説明をお願いしま す。 ○事務局  冒頭に全文を読み上げまして、その後、前回の報告(案)からの修正点について、ご 説明をさせていただきたいと思います。  仕事と家庭の両立支援対策の充実について 1 少子・高齢化の急速な進行等我が国の経済社会をめぐる状況が大きく変化している 中で、男性も女性も、働く人全てが、主体的にその能力を発揮していくことが求められ ており、職業生活と家庭生活のバランスがとれた多様な働き方が選択できるようにして いくことの重要性が高まっている。 2 こうした中で、仕事と子育ての両立支援については、平成3年の「育児休業等に関 する法律」の制定により設けられた育児休業制度を中心として、平成9年には深夜業の 制限の制度が設けられ、平成13年の制度改正では、時間外労働の制限の制度が創設さ れるとともに、育児休業終了後に、労働者が子育てに必要な時間を確保しつつ働き続け ることができるようにするため、勤務時間短縮等の措置の対象となる子の年齢の引上げ や子の看護休暇制度の努力義務化がなされる等、その充実が進められてきたところであ る。 3 このような取組が進む中で、育児休業の取得率は、女性では64%(平成14年度 女性雇用管理基本調査)まで上昇したが、一方で、仕事を続ける希望を持ちながら、妊 娠、出産を機に退職する女性も依然として存在する。また、男性の育児休業の取得状況 や勤務時間短縮等の措置の導入状況を見ても、男女ともに育児をしながら働き続けられ るような職場環境が実現されているとは言い難いのが現状である。 4 他方、夫婦出生力の低下という新たな現象が見られるなど、我が国の少子化は一層 深刻な問題となっているが、その要因の一つとして、仕事と子育ての両立の負担感が軽 減されないことが指摘されており、政府が今年3月に取りまとめた「次世代育成支援に 関する当面の取組方針」などの次世代育成支援対策の中心的な課題の一つとしても、仕 事と子育ての両立のしやすい環境づくりが要請されている。 5 とりわけ、育児休業の取得が進む中で、保育サービスとの関係で育児休業制度をよ り利用しやすい仕組みとすること、職場復帰後の子どもの病気やけがの際に対応できる ようにすること等の課題が指摘されている。このうち、子の看護休暇の問題は、平成1 3年の制度改正に際しても、「当面は」努力義務とすべきとの結論に至ったものである が、第156回国会においても、次世代育成支援関連法案の審議において、その請求権 化を検討することが決議されている。 6 さらに、期間を定めて雇用される者の多くが契約の更新を繰り返すことにより一定 期間継続して雇用される等の雇用形態の多様化が進んでいる状況を踏まえて、期間を定 めて雇用される者の仕事と子育ての両立支援についても、そのあり方を考えることが求 められている。 7 一方、介護の問題については、平成7年に創設された介護休業制度が平成11年4 月から施行されたことに加え、平成12年4月からは、介護保険制度が施行されてお り、介護をとりまく状況は大きく変わっているが、少子・高齢化が進む中で、介護をし ながら仕事を続けるための環境整備も引き続き重要である。 8 以上のような点を総合的に考慮すると、下記の考え方に従って、仕事と家庭の両立 支援策の充実のために必要な法的整備を行うことが適当である。  あわせて、次世代育成支援対策推進法に基づく事業主行動計画の策定、実施等によ り、男性の育児休業の取得促進や、勤務時間短縮等の措置の導入促進を含め、職場にお ける取組を積極的に進める必要がある。 9 また、子育てを社会全体で支援していくことが必要であり、そのためには、仕事と 家庭の両立がしやすい職場環境の整備のみならず、改正児童福祉法及び次世代育成支援 対策推進法に基づいて地方公共団体が策定する保育計画及び行動計画に則って、民間活 力の活用も含め、低年齢児を中心とする保育所等の受入れ児童数の増加を図り、希望す る時期に入所できるようにする等待機児童問題の解消に向けた施策を真摯に推進するこ と、保育サービスの質を確保しつつ、延長保育や病後児保育などの多様なニーズに合わ せた保育サービスの充実を図ること等の取組が強く求められるものである。                     記 1 期間を定めて雇用される者についても、雇用の継続という観点から、申出時点にお いて、同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者であり、かつ、子が 1歳に達する日を超えて雇用が継続することが見込まれる者(子が1歳に達する日から 1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者を 除く。)については、育児休業の対象に加えることが適当である。  同様に、介護休業についても、申出時点において、同一の事業主に引き続き雇用され た期間が1年以上である者であり、介護休業開始予定日から3か月を経過する日を超え て雇用が継続することが見込まれる者(介護休業開始予定日から3か月を経過する日か ら1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者 を除く。)については、介護休業の対象に加えることが適当である。  なお、期間を定めて雇用される者を育児休業及び介護休業の対象とした場合、休業の 申出や取得を理由として雇止めを行うことは不利益取扱いである。一方、休業の申出や 取得にかかわらない雇止めについては、別途その可否が判断される。  本項については、同一の事業主に引き続き雇用された期間については2年以上とすべ きという意見、同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上ある者は原則として 対象とすべきとする意見もある。 2 育児休業の期間については、子が1歳に達するまでの間を限度としているが、国及 び地方公共団体が待機児童問題の解消に向けた取組をこれまで以上に積極的に推進する こととあわせ、育児休業制度についても、雇用の継続を進め円滑な職場復帰を図る観点 から、その基本的枠組みを維持しつつ、子が1歳に達する時点で保育所に入れない等特 別の事情がある場合については、子が1歳に達した後6か月を限度として、育児休業が できるようにすることが適当である。  なお、育児休業が再度取得できる事由として、配偶者が死亡したこと等により子を養 育することができなくなった場合を追加することが適当である。 3 介護休業を取得できる回数については、介護休業が、労働者の家族が要介護状態に なったときに介護に関する長期的方針を決めるまでの間、当面家族による介護がやむを 得ない期間について休業ができるようにすることにより、雇用の継続を図る制度である との観点から、同一の対象家族1人につき、要介護状態ごとに1回、通算して3か月ま で休業できるようにすることが適当である。 4 子を養育する労働者が子育てをしながら働き続けるためには、労働者にとって避け ることができない子どもの病気やけがの際の対応も大きな課題であり、労働者が申し出 れば、病気やけがをした子の世話をするための子の看護休暇を取得できる法的枠組みを 作ることが適当である。  その内容については、子の病気等により休むことを余儀なくされる日数、年次有給休 暇の付与日数等は労働者により様々であるが、最低基準としては、制度の普及状況等も 考慮し、対象となる子については小学校就学前までの子とし、労働者1人について、年 5日とすることが適当である。 5 短時間勤務制度等労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置に ついては、業種、業態等の多様性を考えると、選択的に措置を講ずることを義務づける 現行の枠組みを維持することが適当である。この場合、労働者が子育てをしながら働き 続けることを支援するためには、現実に働く時間を短縮できる短時間勤務制度を推進す ることが有効であり、この考え方を明らかにすることが適当である。  以上ですが、前回の分科会に提出した案からの修正点について補足します。まず標題 ですが、「仕事と家庭の両立支援対策の充実について」としています。続いて柱書きに ついて2頁の9の下から5行目の部分です。前回の議論を踏まえて、「低年齢児を中心 とする保育所等の受入れ児童数の増加を図り」の後に、「希望する時期に入所できるよ うにする」という文言を新たに挿入しています。  3頁の「記」の1の部分で、いちばん最後のパラグラフを加えています。この期間雇 用者の取扱いについては様々なご意見があり、その意見を附帯意見という形で付け加え ています。  4頁、「記」の5ですが、これは文章を途中で1回切ったほうがいいのではないかと いう意見をいただきました。それを踏まえて、「選択的に措置を講ずることを義務づけ る現行の枠組みを維持することが適当である。」で1回文章を切っています。次の「子 育てをしながら働き続けること」の主語として、「労働者」というのを加えています。 修正点は以上です。 ○分科会長  ただいまの事務局の説明を踏まえて、ご質問、ご意見がございましたらお願いしま す。特にございませんか。  それでは、これまで精力的にいろいろご議論いただき、議論が出尽くしたと思います ので、ほかに特にご発言がなければ、「仕事と家庭の両立支援対策の充実」について、 本日事務局より提出されている案のとおり雇用均等分科会報告をまとめたいと思いま す。これについては労働政策審議会令第6条9項に基づき、本分科会の議決をもって審 議会の議決とすることができるとされています。したがって、この報告により、労働政 策審議会から厚生労働大臣に建議することとしたいと思いますが、よろしいですか。                  (異議なし) ○分科会長  ご異議がないようですので、お手元の案のとおり報告及び建議を取りまとめることに したいと思います。  報告文、建議文の文案をお手元にお配りしました。このとおりにしたいと思います が、いかがですか。よろしいですか。それではご同意をいただいたものとして、そのよ うにさせていただきます。  これで審議会は終わりますが、大変長時間にわたり、仕事と家庭の両立支援対策につ いて、環境の変化を踏まえた上で、精力的にご議論いただいたということで、労使各側 の皆様、公益委員の皆様に心から感謝申し上げます。ご協力ありがとうございました。 ○労側委員  このまとめに関してでなく、今回の審議全体についての感想、意見というのは、この 場で申し上げてもよろしいのですか。それともこれは建議を確認する前段階だったので しょうか。そこが私はわからなかったのです。 ○分科会長  そういうことを伺うつもりで前に申し上げていたのですが、いま、手続が途中までに なっていますので、全部終了した段階で伺いたいと思います。  それでは、労働政策審議会長に代わって建議を提出したいと思います。本日は厚生労 働大臣の代わりとして、雇用均等・児童家庭局長にお渡ししたいと思います。         (分科会長……雇用均等・児童家庭局長に建議を手交) ○分科会長  それでは、雇用均等・児童家庭局長よりご挨拶がございます。 ○雇用均等・児童家庭局長  一言、御礼を申し上げたいと思います。4月から14回にわたりまして大変ご熱心にご 議論いただき、報告書を取りまとめていただきまして大変ありがとうございました。心 から感謝を申し上げたいと思います。今後は、今日いただきましたこの建議をもとに、 私ども、早急に法律の改正案を取りまとめて、来年早々にも本分科会に法案の形でお諮 りして、ご議論をいただきたいと考えています。  私自身は他の業務に追われて、すべて出席できなくて大変申し訳なく思っています が、ここで熱心にご討議いただいた内容につきましては、よく勉強させていただきまし て、また来年の国会審議、あるいは今後の雇用均等行政の運営に十分役立てていきたい と思っていますので、これからもご指導のほどよろしくお願いしたいと思います。大変 ありがとうございました。 ○分科会長  労側委員、どうぞ。 ○労側委員  内容について大変重要な中身でやってきましたので、まだこの他にも両立支援対策と して必要な課題は多くあると思いますが、この間、その他の項目のところで申し上げて きたことを改めて、育児や介護で両立をした働き方をすることが大変重要だということ と併せて、まだまだ現場では妊娠や出産をめぐる働き続けるためのハードルとして、そ の時点で多くの問題を抱えることがあると申し上げてきました。そういう点では、是 非、休業を取って仕事を続ける前の段階としての環境整備は、妊娠、出産をめぐる職場 環境あるいは不利益な取扱いなどがないような対策が、本当に重要だというふうに思っ ていますので、それを最後にもう一度申し上げたかったということです。  もう1つは、有期契約労働者の適用問題で議論してきましたが、そもそも有期契約で 働く人の労働条件とか公正処遇とは何だという意味で、有期契約労働者ということに焦 点を当てた基本的な議論が必要だと思います。それは、この分科会ではないのかもしれ ませんが、そうであるなら、そういった該当の分科会、審議会と是非連携をしていただ いて、有期契約労働者の公正処遇に関する対策などを、一層強めていただきたいと思っ ています。  最後に3点目は、私の印象としてどうしても拭えないのは、介護休業をめぐる議論が 今回、十分できたかというと、問題提起自体の準備不足もありましたが、少子化対策と しての育児休業をめぐる議論は十分必要だという考え方に立って、しかし、法律改正の 議論は介護休業も重要な課題であったと思いますが、その点が不十分であったと思いま すので、介護保険が充実することは望ましいことですし、できることなら休まず仕事を 続け、介護は社会が担うということが重要で、自分の意見としてもそこは変わっていな いのです。しかし、労働者が休業する権利をめぐる介護の問題は十分に今後も議論す る、そういう必要がある、今回はそれが十分ではなかったと思いました。以上を申し上 げておきたいと思います。 ○分科会長  ほかに特にご発言はございませんか。それでは、本日の審議はこれまでとします。な お、この建議に基づきまして、事務局で法案作成作業を速やかに進めていただき、次回 の分科会では法案要綱の諮問をしていただくということで、よろしくお願い申し上げま す。  最後に、今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いします。 ○事務局  いま、分科会長からお話がございましたように、今日の建議を受けて私どものほう で、育児・介護休業法の改正案についての作業を進めさせていただきます。それを踏ま えて、年明け1月に分科会の開催をお願いし、法律案要綱という形で諮問をお願いした いと思っています。日程はいま調整させていただいています。後日、ご連絡させていた だきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。 ○分科会長  本日の分科会はこれで終了します。議事録の署名ですが、吉宮委員、山崎委員にお願 いします。長時間ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 職業家庭両立課 法規係(内線:7856)