03/12/24 第3回 新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会議事録                   日時 平成15年12月24日(水)                      10:00〜                   場所 厚生労働省専用18,19,20会議室 出席委員   石垣靖子、井部俊子、川村治子、瀬戸山元一、高田早苗、高橋真理子、        竹内美惠子、西澤寛俊、野地金子、廣瀬千也子、星北斗、正木治恵、        宮城征四郎、村上睦子、山田百合子(五十音順、敬称略) 参考人 日本赤十字社医療センター看護師 斎藤水誉     筑波メディカルセンター病院看護師 宇都宮百恵 ○田村看護課長  ただいまから第3回「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」を開催い たします。委員の先生方におかれましては、年の瀬の大変お忙しい時期と重なる中、ご 出席を賜り本当にありがとうございます。本日は山本委員から欠席の連絡をいただいて おります。  本日は参考人として、日本赤十字社医療センター看護師の齋藤水誉さん、筑波メディ カルセンター病院看護師の宇都宮百恵さんにご出席をいただいております。齋藤さんは 臨床経験2年目で、昨年の新人看護職員研修について、受けた経験等に基づき、意見等 を発表していただきます。また、宇都宮さんは5年目ということで、これまでの新人看 護職員に対する指導を担当していただいた中での意見等を発表していただきます。それ では、井部座長、議事進行をお願いいたします。 ○井部座長  それでは本日の議事に入ります。お手元に議事次第がございますが、議題の第1は新 人看護職員研修に関するヒアリング、第2は新人看護職員研修到達目標、新人看護職員 研修指導指針(案)について、第3は報告書の起草委員の選出について、こういう予定 になっております。事務局より資料の確認と説明をお願いします。 ○岩澤補佐  お手元にお配りした資料を確認させていただきます。資料1は「就職時からの1年間 を振り返って」という24頁のもの、また資料1の参考資料として14頁の資料があります。 資料2は「新人看護職員指導担当になって」という10頁の資料です。資料3は「新人看 護職員研修到達目標、新人看護職員研修指導指針(案)」で全部で19頁のものです。資 料3については先週、委員の皆様方に未定稿という形で「新人看護職員研修到達目標、 新人看護職員研修指導指針(案)」を配りましたが、その後事務局でもう一度修正をし ている段階で数箇所訂正していますのでご了承ください。もう1つは第2回目の議事録 です。 ○井部座長  議題1「新人看護職員研修に関するヒアリング」ということで、参考人からそれぞれ 10分程度の意見発表をお願いします。意見発表に関する質疑はお二人の意見発表終了後 に受けたいと思います。まず新人看護職員の立場から、日本赤十字社医療センター看護 師の齋藤水誉さん、お願いいたします。 ○齋藤参考人  はじめに当センターの概要について、お手元に配付された資料1の参考資料に沿って 説明します。当センターは病床数963床を有し、赤十字精神「人道・博愛」の実践を理 念として、急性期医療を実施しています。看護職員数は約670名、新採用の看護職員は 毎年80名前後となっています。平成14年度における看護職員の職種構成及び基礎教育背 景などは5〜6頁に示すとおりです。  次に看護部の教育についてご説明します。参考資料の4頁及び7頁以降をご参照くだ さい。看護部の理念を実現する看護職員の育成を教育目的とし、教育目標として、当セ ンターに期待される看護職像を示しています。院内教育はOJTを重視し、新人教育の 支援システムとしてプリセプターシップを導入しています。また、平成14年度より教育 システムとしてキャリア開発ラダーを開始し、新卒看護職員は当該年度末までにレベル 1を取得することを目標に、各職場での教育計画に沿ったプログラムを進めています。  off−JTは看護部、各職場、看護職有志の主催による院内研修プログラムで構成 されています。看護部では6月に新採用者フォローアップ研修を実施し、それ以外に、 プリセプターシップ・プログラムを成功させるために、病棟の教育担当者を対象とした OJT研修、プリセプターを対象とした研修、サポートチームのリーダーを育成するリ ーダーシップ研修等の教育プログラムを実施しています。これら新人のサポートシステ ムとoff−JT研修を図式化したものを8頁に示しましたのでご参照ください。  私が配属された脳神経外科病棟の概要を述べます。病床数は40床。急性期や術後の全 身管理から慢性期の日常生活のケアを行っています。詳しい内容はお手元の資料の1頁 をご参照ください。私は、はじめての学生実習をこの病棟で2週間実施し、麻痺のある 患者さんの食事や移動の介助などを体験することができました。  次に新人としての1年間の教育及び実践についてご説明します。院内の集合研修とし て、4月に新採用者オリエンテーションを3日間受けました。内容は、病院の理念には じまり、看護部の組織と教育、安全対策、感染防止対策、災害対策、接遇などでした。  病棟では勤務初日から4日間にわたりオリエンテーションが行われました。内容は別 添1をご参照ください。5日目以降は別添2に沿って複数の患者さんのケアを担当する こととなりました。各勤務帯の業務内容は4〜6頁に示すとおりです。  各勤務帯の業務を初めて担当する際は一人先輩ナースが指導に付いて、いつでも相談 できるような体制になっていました。看護記録もすべて確認され、アドバイスや注意を 受けました。また勤務が終わると、その日の同じ勤務帯の看護師全員で5分程度の反省 会を開き、アドバイスをいただきました。一人立ちしてからも、新しい手技を行うとき は必ず、初めて行うことを伝え、先輩ナースが行うのを見学するか、実際に自分で行う のを見てもらい、それから1人で行うようになっていきました。また、自信のない看護 技術は何度か先輩ナースと行い、手技を確認してもらいました。  別添3と4に示すとおり、1年を通して先輩ナースからの指導があり、また、資料に は示しておりませんが、院内で行われている勉強会に参加するなど、教育は非常に充実 しておりました。そして、別添5と6のキャリア開発ラダーの共通チェックリストを3 カ月、6カ月、12カ月目にプリセプターとともにチェックし、同僚評価会の後にレベル 1の認定を申請しました。  プライマリーナースの活動としては、就職してから4カ月目ごろに、プリセプターと ともに患者さんを受け持ち、看護計画を立案し、プリセプターに評価していただきまし た。その後は1人で患者さんを受け持つようになりましたが、2、3回はプリセプター にアセスメントや看護計画を見ていただいてからカンファレンスで発表していました。  就職当初の気持ちについて述べたいと思います。学生のころに、実習で看護師の仕事 を垣間見てはいましたが、実際に働いてみて、その忙しさと責任の重さを実感しました。 病棟勤務初日で、患者さんの状態や器械の操作方法がよくわからないうちにケアに参加 して、事故を起こすのではないかと怖かったのを覚えています。はじめは指導者が付い ているとはいえ、何が危険なのかを知らない自分が働いていることも怖いと思いました。  学生のころは1人の患者さんしか受け持ったことがなく、複数の患者さんの受け持ち をする場合、1日に10人以上の患者さんの状態を把握しなければならず、とても大変で した。  6月に初めて夜勤業務につきましたが、もう少し疾患を理解し、技術や器械に慣れて からにしてほしいと思いました。夜勤では、自分一人で急変が発見できるのか、急変が 起きたら対応できるのかという更なる不安がありました。講義や実践で疾患や技術に関 して学んでも、少し間があくと忘れてしまい、わからないことばかりで混乱していまし た。覚えることに必死で、なぜそれが必要か、なぜこの方法なのかという根本的な理由 をよく考えずにケアを行っていた面があったと思います。  いま振り返れば、判断能力も乏しいため看護過程の展開ができず、記録に時間がかか るなど、患者さんや病気が部分的にしか見えていない状態でした。また、一つひとつ確 認しなくては仕事ができないため、先輩ナースに迷惑をかけているのではないかと感じ たり、急変などで忙しいときは、わからないことを聞きづらい雰囲気もありました。自 分の行動やミスがプリセプターの耳にも入るため、いつも迷惑をかけて申し訳ない、迷 惑をかけないようにしたいと思っていました。  患者さんやその家族の支えになるような看護師になりたいと希望を抱いていましたが、 看護業務のあまりの忙しさと、疾患や技術に関して無知で動けない、説明できない無力 な自分に直面し、自信を無くしたこともありました。  このように、就職当初は、自分の行った行為が人の生死に直結する可能性がある仕事 だということを実感し、いつも医療事故を起こさないか、不安な気持でいっぱいで、緊 張が絶えませんでした。  また、仕事をしながら講義を受けたり、課題を提出するなど、休みの日でも仕事が頭 から離れず、気が休まりませんでした。感情的に不安定な状態でしたが、プリセプター や先輩ナースに話を聞いていただき、また同期や大学時代の友人に悩みを相談すること で仕事を続けることができていたのだと思います。そして、患者さんの離床が進み、歩 いたり会話したりできるようになる様子を見て、少しずつ仕事にやりがいを感じるよう にもなっていきました。  集合教育や職場教育で役に立ったことや、さらに必要であったと思われることを述べ ます。新採用者フォローアップ研修では、ほかの職場の同期生と話す機会を持つことが でき、また、プログラムを通して自分と同じようなことで悩んでいることを知り安心し ました。職場から離れた場所での研修でリフレッシュもでき、精神的に落ち着くことが できました。  職場教育では、キャリア開発ラダーをもとにプリセプターと面接を行い、2時間ぐら いかけて共通チェックリストの項目を、1つひとつ質疑応答しながら評価することで、 自分に何ができていて、何ができていないのかを振り返るきっかけとなり、それらを意 識できるようになりました。  日々の業務で未経験の手技や不安のある手技に関しては、看護部にある教育ビデオを 借りて自己学習するようにもなりました。そして、経験していない手技などは自己アピ ールをして、できるだけ経験できるように配慮してもらいました。  必要だと思う支援ですが、キャリア開発ラダーの技術チェックは、自己評価を基に多 くが口頭試問で行われるため、実際に提供している技術が適切かを客観的にチェックし てもらう機会や時間があると、さらに自信につながると思いました。また、先輩によっ て指導内容が異なる点があるため、その職場で統一したオリエンテーション・マニュア ル、または指導のポイントが明確になっているとよいと思いました。  新人は仕事のやり方や進め方など全くわからないため、例えば具体的な与薬の確認方 法や巡視の方法などを初めに細かく説明し、それを文章にして渡してほしいと感じまし た。  1月に行われた緊急時の看護の研修では講義の後、事例を用いて対応方法を考え、ロ ールプレイ形式で発表しました。臨場感があり、焦ってしまう気持ちや忘れがちな点な どに気付くことができ、勉強になりました。  必要だと思う支援は、もっと早い時期に、例えば夜勤業務に入る時期にこの研修があ るとよいと思いました。また、実際に急変があった場合、新人はほかの患者さんの対応 にあたることが多いのですが、どのような処置が行われ、看護師はどのような行動をと ったらよいのかを知る良い機会だと思うため、新人にも対応に参加させてほしいと思い ました。  次に問題に直面したときの支援と、さらに必要だと感じた支援について述べます。私 は、動揺しているときでもあまり表情や態度に出ないため、周囲に理解してもらえず、 手助けが得られないときがありました。先輩からそのような自分の傾向について指摘さ れ、はじめて顔や態度に出ないということを知り、困っているときは自ら言葉でアピー ルしていこうと心掛けることができました。  また、プライマリーナースとして担当した患者さんの家族とうまくいかず悩んでいた ときには、一人で抱え込まなくていいと声をかけられ、カンファレンスでも多くのアド バイスをいただき、気持ちが楽になりました。  夜勤業務に入り、少しずつ仕事を任されるようになると、失敗も多く、注意をされる と、自分が否定されているような気持ちになり、傷つくこともありました。特にヒヤリ ・ハット体験をした後は落ち込み、さらに自信を無くしていました。教えられたことを 失敗するのは自分が悪かったと反省することができましたが、病棟の決まりなど知らな かったことで注意されたり、知らないために失敗をしたときは、初めに漏れのないよう に教えてほしいと思いました。  失敗が大きかったときには看護師長より個別に指導を受けました。どのようなプロセ スを経ていたのか、そのときの自分の状況や考えを話し、今後どうしていけばよいのか を考える時間を持つことができたと思います。新人は褒められるよりも注意される機会 のほうが多く、自信を失いがちであるため、もっと良い点をフィードバックしていける ような支援があるとよいと思いました。  最後に、1年間の到達目標と達成状況について述べます。自己の目標は資料の1頁に 示したとおりです。未経験の技術や書類の処理など細かい点でわからないことはありま すが、各勤務帯の仕事は安全でスムーズに行えるようになり、おおむね1年の目標は達 成できたと思っています。  プライマリーナースとしては、さまざまな疾患の患者さんを受け持ち、少しずつ対応 にも自信が付き患者さんの家族のニーズをアセスメントしたり、個別性を踏まえて対応 することができるようになってきたと感じています。そして、1年目の最後にキャリア 開発ラダーのレベル1を申請し、認定されました。発表は以上です。ご清聴ありがとう ございました。 ○井部座長  続いて新人看護職員の指導者の立場から、筑波メディカルセンター病院の宇都宮百恵 さんにお願いします。 ○宇都宮参考人  まず病院の概要を説明します。筑波メディカルセンター病院は病床数409床で、救命 救急センター、茨城県地域がんセンター、地域医療支援病院に指定されています。職員 数は890名で、その中で看護職員は約400名です。病院の理念は、患者の権利の尊重、よ り質の高い医療の提供、地域医療機関と連携、協力して医療を進めることです。財団の 理念や組織についてはお手元の資料を参照してください。  1年目の新人看護職員の研修内容について説明します。採用時に全体の病院のオリエ ンテーションとして4日間、そのほか看護部のオリエンテーションとして6日間を使用 しています。その他新人看護職員のフォローアップ研修として、3カ月と6カ月に振り 返りの研修をしています。そのほか各職場でプリセプターシップをとり、また、各病棟 に応じた学習会を取り入れて1年目の指導にあたっています。  プリセプターシップの研修について説明します。研修はプリセプターを初めて受け持 つ看護師に対して前年度の2月に行います。研修内容としては、臨床における人材の育 成や教育の基本的考え方、プリセプターシップの定義、プリセプターの役割、バックア ップシステム、プリセプターの選出とペアリングについて、中間目標の設定、アローチ ャートの作成で、指導方法や評価について細かく、講義形式で研修を行いました。  資料の8頁を見ていただきながら、新人看護職員を指導する立場になっての気持ちに ついてお話します。初めて新人の指導担当になって、私自身、教える立場になるという ことに対して不安がとても大きくありました。いままで指導される立場でいたのが、今 度は教える立場ということで、どのように教えていいか等いろいろな面で立ち止まるこ とが多くありました。また、私が新人のときに感じていたように、先輩看護師を見て、 それを手本として看護業務にあたっていたこともあり、改めて自分が手本になることに 対して、身を引き締める気持で日々業務にあたっていました。  新人看護職員に対しては、技術面は当然のことながら、精神面での支え、頼れる存在 としてサポートできるようにと考えていました。  新人看護職員の指導者の役割とその実施状況についてお話します。役割については、 プリセプターシップの研修の中で学びました。新人看護職員に対しては、仕事面でのサ ポートとして、技術や業務の専門知識を学ぶ手助けをしました。また、それに対する評 価として、成長段階を確認して、評価に基づいて今後の計画を見直していきました。  精神面でのサポートとしては、職場に慣れるようにまずはサポートをし、新しい環境 や責任の重さなどで戸惑う新人に対して話を聞く機会を設け、精神的にアプローチする ようにしました。また、看護職の先輩として、悩みを聞ける立場にいることを心がけま した。  社会人としてのサポートとして、身だしなみや言葉づかいなど社会人として基本的な ことについて研修で学び、また、それを自分の役割として接するようにしました。  病棟のスタッフに対しては、新人教育について、新人に継続した指導ができるように、 病棟のスタッフに指導の依頼をするようにしました。また、病棟スタッフから新人の成 長について報告を受けるよう心がけていました。次に上司の補佐役としては病院・病棟 ・看護部の理念や目標・方針を新人教育に反映させることで新人看護職員に伝えていく ように心がけました。  実施状況に移ります。日常業務の中でおよそ1カ月ほど、日勤業務では一対一で業務 を指導していきました。また、新人看護職員が自立したら、同じ勤務帯のスタッフとし てフォローしていくようになりました。中間目標を設定して1カ月、3カ月、6カ月、 9カ月、12カ月のその時期に新人看護職員の成長段階を確認しました。定期的に評価を 行い、その評価をその後の計画の修正に役立てました。  評価の方法としては、担当新人看護職員との話し合いや新人看護職員の指導担当者会 議において他の指導担当者との意見交換を行い、他者からの評価や助言をもらうように しました。  新人看護職員の指導者になるにあたっての研修は、前年度の2月に行われるプリセプ ターシップの研修の中で、人材育成やプリセプターシップの役割について、また実際の 取組み、中間目標の設定やアローチャートについて行われます。アローチャートと中間 目標が別添の7頁にありますので参照してください。その他ペアリングや学習スタイル、 指導スタイルについて、また指導方法と手順、段階的指導の手順について講義で学びま した。  その中で効果的だった内容としては、指導についての基本的な知識が身につくことで、 初めて受け持ったときでも心構えが出来たり、指導についての基本が身についたと思う ので有効でした。中でも指導方法と手順、段階的な指導手順などは実践に結びつきやす く、実践の指導に反映しやすかったです。  その反面、精神的なサポート知識について研修の中でも学習をしたのですが、指導担 当になるにあたって考えることは多くありました。途中で止まることもあり、心構えや そのほかの知識をもう少し深く学べる機会があったらよかったと感じました。  次に新人職員担当となってのフォローアップ研修が1カ月、6カ月と行われました。 1カ月目の研修では基本的な知識や指導方法についての復習が主に行われました。いま までの関わりの中で困ったことや1カ月の経験でも悩むことが多く、それに対して、同 じ立場にいる者たちと一緒に考えていきました。  6カ月研修では外部より講師を招き、グループワークを行って、それまでの指導内容 を振り返ることや、新人の成長段階に合わせての指導方法や、対話による指導について 学びを深めました。その中で基本的な知識を振り返ることもでき、再び学びの機会にな ることは、私たちの中でも有効でした。また、同じ立場の者が集まって話し合い、同じ ような悩みを経験しているのだということがわかることで解決策を考えることができ、 精神的な負担も軽減することができました。  最後に、私が指導上の問題として感じたことをお話します。担当指導職員と勤務が合 わないことが多く、段階的に問題点を見つけることができませんでした。これについて は、ほかの病棟スタッフや病棟師長に勤務を調整していただいたり助言していただくこ とで、把握をするように心掛けました。  次に技術面で指導する看護職員によって指導の方法が違ったりして個人差が出てしま うことがありました。これについては、看護基準やマニュアルを使用して、できる限り 統一を図るように心掛けたのですが、十分に技術を統一することはできないことが多く ありました。  新人職員の担当になるにあたって、新人の成長が自分の責任と感じてしまうことが多 くありました。これについては病棟間で新人看護職員指導担当者同士で会議を持ち、み んなで考えるよう対応しました。また、新人看護職員が現在どれぐらいの知識や技術を 身につけているかを把握することができないことについて、アローチャートを使用した のですが、これも十分利用されないこともあり、今後の課題になっていると思います。 ご清聴ありがとうございました。 ○井部座長  ただいまの発表について、ご意見やご質問をお願いします。 ○廣瀬委員  筑波メディカルセンター病院の宇都宮さんに質問します。4頁の6番で、プリセプタ ーの選出とペアリングということで(1)〜(4)までありますが、プリセプターの条 件は、経験年数や期間など具体的にどういう人ですか。 ○宇都宮参考人  経験年数は病棟によって差があることが多いのですが、主に3年目から5年目、6年 目の経験者がプリセプターとして選出されています。また、プリセプターとプリセプテ ィーの関係を持つのは1年を期間として設けております。 ○廣瀬委員  この年の新人は何名で、プリセプターは何名でしたか。 ○宇都宮参考人  私の病棟に関しては、新人は7名で、プリセプティーも7名でした。 ○廣瀬委員  プリセプターの院内全体のペアリングの基準のようなものはあるのですか。 ○宇都宮参考人  病棟のペアリングになります。 ○廣瀬委員  8頁の実施状況に、日常業務の中で、およそ1カ月ほどは日勤業務から一対一で業務 を指導していく、ある程度新人看護職員が自立してきたら同じ勤務帯のスタッフとして フォローしていく、とあるのですが、宇都宮さんは1カ月間プリセプターとして専任だ ったのですか。 ○宇都宮参考人  それは日常業務を行いながらの関係になりますし、必ずしも自分の担当する新人看護 職員に対して一対一でフォローができるとは限りませんでした。勤務が合う限り一対一 でフォローができるようになっておりましたが、そのほかの新人を担当することもあり ました。 ○廣瀬委員  6頁の資料ですが、宇都宮さんは2A病棟の方であるという意味での資料でしょうか。 スケジュールに10月から小児とありますが、小児病棟に10月から行くのですか。 ○宇都宮参考人  違います。これは病院の参考資料として違う病棟のものを挙げたものです。2A病棟 というのは成人の集中治療室になり、小児科の集中治療が必要な患者を受け持つという 意味で10月から小児科に行くのです。 ○星委員  赤十字病院の齋藤さんに伺います。さりげなく自分の病院の教育全体のサマリーをや っていただきましたが、今回これを発表するにあたって、プリセプターがどんな研修を 受けているか、病院全体がどんな研修のスタイルになっているかを知ったのか。あるい は、研修に入った時点で病院全体がどんな研修のシステムを持ち、自分に教えてくれる 人たちがどんな学びをしているのかを知ったのか、どちらでしょうか。 ○齋藤参考人  もう一度お願いします。 ○星委員  病院の研修システムや仕組みです。例えば、齋藤さんに教えてくださる人たちがどん な研修を受けているのか、どんなプログラムをもっているのかという全体像ですが、そ れは実際に入職して自分が指導を受けているときにも知っていたことなのか、あるいは 今回発表するために誰か上の方に教えていただいたのか、どちらでしょうかという質問 です。 ○齋藤参考人  1年目のころに院内指導・研修計画(資料1の参考資料9〜10頁)、また職場での計 画(資料1の7頁)を渡していただいたので、2年目の先輩方はこういうプリセプター シップの講義があるということは何となくわかっていたのです。しかし、実際にどんな 内容のことが行われているかというような具体的なことは、今回発表するにあたって教 えていただいた面もあります。  私は2年目で、3年目になるとプリセプターになるので、2月ごろにその研修がまた あるのです。その研修のお知らせなどが来て「プリセプターシップとは」というような ことを知るようになりました。 ○星委員  いまおっしゃったのはプリセプターシップのことだけですが、院内研修の仕組みがこ の先どうなっていくのかという将来像、看護部が持っている基本的な教育に対する考え 方を理解して、1年目というものの位置づけを自分の中で認知していたほうがいいのか、 あるいは、そんなものまで知ってしまうと不安になるので、とりあえず最初の、自分が やらなければいけない範囲だけのことを知っておくほうがいいのか。いま2年目になっ て、どんなふうに感じますか。 ○齋藤参考人  就職した当時は、新しい技術を覚えることと病棟に慣れることに必死になっている状 態なので、看護部の教育や理念などの冊子を頂いて、多少オリエンテーションなどで説 明を受けたのですが、実際に体験するまでは理解できない。書面上のことなので、あま り実感が湧かないような状態で、よくは理解していなかったと思うのです。少し理解し ていたほうが、自分がどのようにフォローされているのかがわかって安心できたのかも しれません。 ○竹内委員  齋藤さんの説明はよくわかりましたが、2点教えていただきたいのです。1点は、あ なたが看護の教育プログラムを受けた教育機関では、それぞれの科目で達成すべき目標 は示されていましたか。2点目は、もし示されていたら、齋藤さんが卒業するときに、 自分にとってこれが課題だということを自分の中で確認なさったでしょうか。到達すべ き目標、例えば成人とか母性とか小児とか、いろいろ科目があったと思います。また、 卒業時に、ここまでは到達すべきであるというゴールがその教育機関で示されていて、 それに向かって学習をされたでしょうか。 ○齋藤参考人  実習の初めに、その実習を受けるにあたって自分はどのようなことを目標としている のかを書きました。実習が終わった後にも、自己評価と指導者からの評価がありました。 ですから、到達できたかどうかを、1つの実習ごとに目標を立てて評価する形をとって いました。最後に総合実習、まとめの実習があったのですが、そのときには学生として の目標は達成できたと、そのころはそう思っていました。 ○竹内委員  その目標と就職したときのそれぞれの病院の目標とは、随分差があったのではありま せんか。 ○齋藤参考人  学生のころは精神面のことなどに目がいっていたのですが、病棟に入ると、キャリア 開発ラダーであるように、技術面を要求されるので、差は少しあったと思います。 ○石垣委員  宇都宮さんに伺います。3E病棟というのはどういう専門の診療科なのか。また、新 人が7名ということですが、全体の看護職員が何名なのか教えていただきたいのです。 新人7名に対して7名のプリセプターが付くわけですか。 ○宇都宮参考人  3E病棟は主にがんセンターの外科病棟になっています。全体職員は25名、その中で 新人7名、プリセプター7名です。 ○石垣委員  そういう状況で新人が育つということですか。 ○宇都宮参考人  そう思います。 ○井部座長  大変興味深い発表をしていただき、ありがとうございました。参考人の方々はこれで 退席していただいて結構です。  第2議題に参ります。第2回目までのワーキンググループの検討結果について、それ ぞれの担当委員から説明をしていただきます。まず山田委員からは新人看護職員研修の 到達目標(案)について説明していただきます。それから、新人看護職員研修指導指針 (案)について、正木委員からの説明をお願いしたいと思います。そして、お2人の発 表を伺った後にご意見をいただきたいと思います。まず山田委員からお願いいたします。 ○山田委員  「到達目標」の前に「指導指針」も含めて両方にかかる現状と課題から説明いたしま す。新人看護職員研修をめぐる現状と課題は第1回と第2回の検討会の中で、それぞれ の立場の方から研究結果や現状の報告がありましたが、以下の6点にまとめられました。 ◎臨床現場において、患者の高齢化・重症化・平均在院日数の短縮化等により、看護に 求められる質が高度化し、その業務量も増加している。 ◎また、医療事故が頻発し、医療安全の確保が最重要課題とされる中で、看護の基礎教 育、卒後教育の強化が必要となっている。 ◎看護基礎教育では、医療機関における医療安全管理体制の強化や、患者、家族の意識 の変化等により、従来患者を対象として実施されてきた看護技術の訓練の範囲や機会が 限定される傾向にある。 ◎一方、新人看護職員については多くの医療機関で研修が実施されているが、臨床現場 では、決められた時間の中で多重の課題に対応しなければならず、更に、ひとつの業務 を遂行する間にも他の業務による中断がある等、高度な実践能力が求められ、新人看護 職員の実践能力はこうした状況に即応できるレベルには到達していない。 ◎更に、医療機関におけるヒヤリ・ハット事例において新人看護職員の占める割合が高 くなっていること等から、新人看護職員の提供する看護ケアの質の向上に向けた取組み が喫緊の課題となっている。 ◎こうした現状から、新人看護職員研修を効果的・系統的に行うために、新人看護職員 が卒後の1年間で備えるべき看護技術等を示した「新人看護職員研修到達目標」、新人 看護職員の指導に必要な要件・指導方法等を示した「新人看護職員研修指導指針」を作 成しました。  「新人看護職員研修の考え方」は以下の4点にまとめられました。 ◎看護は人間の生命に深く関わる職業であり、患者の生命、人格、人権を尊重すること を基本とし、生涯にわたって研鑽されるべきものである。新人看護職員研修は看護実践 の基礎を形成するものであり、極めて重要な意義を有する。 ◎医療における安全の確保、及び質の高い看護ケアの提供は重要な課題である。このた め、医療機関は組織的に全職員の研修に取り組む必要があり、新人看護職員研修はその 一環として位置づけられる性質のものである。 ◎専門職業人として成長するためには、新人看護職員自身がたゆまぬ努力を重ねること は言うまでもないが、新人の時期から生涯にわたり継続的に自己研鑽を積むことができ る研修支援体制が整備されていることが重要である。 ◎各施設内での新人看護職員研修の充実が望まれる一方で、施設内で実施できる研修に 限界がある施設については、新人看護職員研修に実績のある施設、教育機関、専門職能 団体等が積極的に支援を行っていく必要がある。  「新人看護職員研修到達目標、新人看護職員研修指導指針の前提」これは前回の検討 会では「到達目標及び指導指針の考え方」として挙げていた内容と重なる部分ですが、 今回は「到達目標、指導指針を考える上での前提」として以下の6点を挙げました。 ◎到達目標、指導指針は新卒者の就業の状況、安全なケアの提供にあたっての優先度を 加味し、病院でのケアにあたる看護職員を想定して検討した。 ◎到達目標、指導指針の内容は新人看護職員研修として実施されるべき基本事項として 提示するものである。 ◎到達目標、指導指針は施設規模等の各施設の多様性を踏まえつつ、できる限り広く活 用できるものとした。 ◎到達目標に含まれる内容は、生涯にわたる看護実践の基礎となる新卒の1年間に新人 看護職員が習得すべき看護技術等の目標、及び看護職員に必要とされる姿勢、態度とす る。但し、新人助産師については助産技術を付加した。 ◎到達目標の作成にあたっては「看護学教育の在り方に関する検討会」、「看護基礎教 育における技術教育の在り方に関する検討会」等の、看護基礎教育における看護技術教 育の在り方に関する検討結果との連携を考慮した。 ◎新人看護職員は医療機関の各部署に配属されるため、基本的な看護実践能力に加え、 配属部署に関連した専門的知識、技術の習得が必要とされるが、到達目標はすべての看 護職員に必要な看護実践能力を提示した。  「新人看護職員研修到達目標」は3つの側面から「医療人として必要な基本姿勢と態 度」、「看護実践における技術的側面」、「看護実践における管理的側面」としました。 前回の報告の中では教育・研究を挙げていましたが、1年目ということを考えて「医療 人として必要な基本姿勢と態度」の中に含みました。  医療人として必要な基本姿勢と態度における目標は以下の4点になりました。 1「医療人としての自覚を持ち、責任ある行動がとれる」。この中には医療倫理、看護 倫理、医療人としての適切な対応等を含めています。 2「患者の理解に努め、患者・家族と良好な人間関係を確立できる」。この中にはニー ズの把握、患者の尊重、説明と同意、守秘義務等を含めています。 3「組織における役割・心構えを理解し、適切に行動できる」。病院・看護部の理念、 組織と機能、チームの一員としての協働と適切なコミュニケーション等を含めています。 4「生涯にわたる主体的な自己学習の習慣をつける」。ここでは自己の学習課題、学習 課題の解決に向けての取組み、学習の成果を自らの看護実践に活用、という内容を含め ています。  看護実践における技術的側面の目標は以下の4点です。 1「患者の状態を的確にアセスメントし、看護計画を立案することができる」。 2「基本的なケアを提供できる」。看護実践における技術については表1−1、表1− 2の内容を安全かつ確実に実施できることを目標とし、以下の2つの段階で設定しまし た。なお、ここでは高度あるいは複雑な看護ケアを必要とする場合は除いております。 「独力で安全に実施できる」と「指導の下で安全に実施できる」です。技術の習得にあ たっては各施設・部署の条件によって、経験の機会が少ないものについては集合教育を 取り入れる等、習得方法を工夫する必要があるかと思います。 3「患者と良好なコミュニケーションをとることができる」。この中には患者の意思や 価値観の尊重、説明、患者の理解の確認、患者・看護師間の信頼関係を挙げています。 4「看護の場の特性に応じて必要なケアを実践できる」。所属する施設及び部署におき まして表1―1、表1−2以外の必要な知識・技術については各施設で設定することと しました。また表について、独力の項目と指導の下での項目の内容は少し再度検討が必 要かと思いますが、資料を参照していただければと思います。  看護実践における管理的側面は以下の8点から考えました。 1「安全管理」については、医療安全管理体制とインシデント事例や事故事例の報告を 挙げました。 2「感染管理」では院内感染対策の説明、医療廃棄物の取扱い、針刺し事故防止対策、 防護用具の選択、洗浄・消毒・滅菌の選択等を挙げました。 3「情報管理」では医療情報に関する規定、医療情報や記録物の取扱い、看護記録の作 成を挙げました。 4「業務管理」では業務の手順に沿っての実施と業務の優先度、報告・連絡・相談、時 間内の実施を挙げています。 5「薬剤等の管理」では薬剤と血液製剤の請求・受領・保管を挙げています。 6「災害・防災管理」では災害発生時の初期行動と避難誘導を挙げています。 7「物品管理」では医療機器、器具の取扱いと整備・点検を挙げました。 8「コスト管理」では物品を適切に使用できることと、費用対効果を考慮した物品の選 択を挙げました。  次に習得方法ですが、OJTとoff−JT、それから自己学習の方法がありますが、 これらは各施設の条件によって適宜到達目標達成のために適切な方法を取り入れていく こととしました。  評価につきましては「到達目標は1年間で到達するものとし、各部署の特性に応じた 評価内容と評価時期を決定する」としました。評価者では自己評価と他者評価を取り入 れています。評価方法は面接、チェックリスト、レポート等を挙げました。評価の留意 点ですが、安全管理、感染管理については確実な習得を確認するための評価方法を考慮 することと、准看護師については看護実践において医師、看護師等の助言を必要とする 場合があることを加味して評価する、としました。到達目標については以上です。 ○井部座長  続いて新人看護職員研修指導指針(案)について、正木委員にお願いいたします。 ○正木委員  この検討会メンバーとしては石垣委員、村上委員、正木の3名が入りました。13頁以 降を見ていただきながらワーキングの報告をいたします。  大きく分けて5つ検討しましたが、1番目として「施設における教育研修体制の整備 」を挙げております。まず用語の整理として研修指導体制を、どこが責任を持つか。施 設全体と、その下において看護部門、その看護部門の下に各部署。各部署と言っている のは各病棟を想定しています。施設全体が責任を持つ部分、看護部門が責任を持つ部分、 各部署が責任を持つ部分ということで検討しました。  最初の「施設における教育研修体制の整備」に関しては読ませていただきます。 ◎人材育成は医療の質に関わる重要な要素であり、新人看護職員を含めた職員の教育は 施設全体で考え、構築すべきものである。このため、各施設の職員の教育理念を明確に するとともに、施設全体の継続教育を統括する、複数の職種で構成される教育担当部門 (委員会等)を設置することが望ましい。 ◎新人看護職員研修について看護部門の理念を明確にし、看護部門の長の責任において 教育研修体制を構築する必要がある。教育研修体制は看護部門並びに各部署に教育担当 者を設置し、役割を明確化する必要がある。 ◎看護部門の教育責任者は専任とすることが望ましい。 ◎新人看護職員研修は、各職員がそれぞれの立場から関わるものであり、すべての職員 に研修内容が周知される必要がある。研修計画、研修内容については定期的に評価し、 改善することにより充実を図る必要がある。 ◎各施設の看護手順等を整備し、これを基に新人看護職員研修を実施する必要がある。 ◎施設の教育担当者は、新人看護職員研修にあたって医療安全等の担当部署との連携体 制を構築することが必要であり、リスクマネージャー、感染管理等特定分野において専 門的な知識・技術を有する看護職員を新人看護職員研修に参画させる必要がある。 ◎新人看護職員の多くがリアリティショックを経験することから、施設及び各部署での 新人看護職員の相談窓口となる担当者を設置する等、精神的な支援体制を整備すること が望ましい。また、看護部門の長をはじめ、部署の看護管理者や教育担当者、各指導者 が新人看護職員の職場適応のために必要な基礎知識と援助方法を有することが必要であ る。 ◎自施設内での実施が困難な研修内容については、他施設との連携、各種団体等の研修 を利用することも必要であり、院内研修の中に計画的に組み込む必要がある。 ◎新人看護職員研修は看護学生が就職先を選定する上での重要な要因となっており、各 施設は新人看護職員研修が医療安全の確保のみならず、看護職員の人材確保及び離職防 止に貢献するものと認識する必要がある。 ◎また施設、職員においても、新人看護職員研修にあたって改めて自己を振り返り、看 護実践の根拠を確認する必要があることから、研修の質の向上は組織全体としての質の 向上につながることを再認識する必要がある。 以上が組織の整備についてです。  15頁からは「各部署における教育研修体制の整備」です。1点目に関しては各部署に 新人看護研修の実施にあたって「研修の企画、運営の中心となる教育担当者、教育委員 等を設置することが必要である」と明示しております。  2点目は各部署における新人看護職員研修の実地指導にあたる指導者については、指 導者の設置例を以下に4つ挙げました。  1つ目が各新人看護職員に対し、継続的に指導を行う1人の指導者を設置する。これ がいわゆるプリセプターシップ等を活用した、継続的に1人の指導者が付いて行うもの の例です。  2つ目が、各新人看護職員に対し、複数の看護職員を指導者として設置する場合です。 3つ目は、固定チームナーシングにおけるチームの看護職員全体の中で、日々の指導者 を配置する。  4つ目として、上記、3つの方法を就職後の期間別に組み合わせる方法を挙げていま す。  ここでは1つの方法をよしという形では出さないで、各施設、いろいろな状況がある と思われますので、この例を提示して、各施設で望ましい方法を取るのがいいのではな いかという形で提示しています。  3点目は、指導者への負担が過剰にならないように、指導者の役割を明確化しておく 必要があることを述べています。4点目は指導者自身も負担を感じることがありますの で、指導者を支援する臨床経験、教育経験の豊かな看護職員の設置や配置等、補足等を 考えていく必要があることを挙げています。  次は施設への教育計画に基づいて、年間教育計画を明示して、部署のすべての看護職 員に周知しておく必要があるのではないかということです。  次は、各部署、各看護単位は、施設で定めた研修内容のほかに、各部署の特徴に応じ た新人看護職員の教育内容を、明示する必要がある点を挙げています。 最後が各部署における指導は施設で定められた看護手順に基づいて、先ほども発表であ りましたが、ばらばらになる可能性もあるということなので、まず施設が看護手順を整 備して、その手順に基づいていろいろな研修が進められる必要があるのではないかとい うことを挙げました。  16頁は3番目で、「新人看護職員の指導者育成のあり方」に関してです。1点目は指 導者をどういう背景を持った人にするかということですが、ここでは少なくとも3年以 上の臨床実践経験を有することが、指導者としては望ましいということを挙げました。  2点目は、施設内外で新人看護職員の研修を活用していく必要があり、新人看護職員 の指導者育成の場としては、以下に挙げたものが想定されるとしています。地方公共団 体、指導者が所属する施設内、専門職能団体、学術団体、看護基礎教育機関等で実施さ れる講演等、それらを積極的に活用していけるのではないかと挙げています。  その次の○に関しては、施設内外で実施される指導者育成のプログラムには、以下の 内容を含めることが望ましいとして5点挙げています。  次の○に関しては、上記の内容に加え、各施設、各部署の教育計画の実施方法や、各 施設、各部署における指導に必要な事項を追加して計画をする必要がある。  最後に、各施設においては、指導者としての不安・負担感を軽減することを目的とし て、各部署の長等の面接、負担をフォローするサポート体制も、整備する必要があるこ とを挙げています。  17頁、ここは大きな4番目で、「各医療機関における活用」とありますが、ここに書 いた内容は、指導指針を各医療機関はどう活用していっていただきたいかということで 書きました。  1番目の○は、到達目標、次の「指」というのは誤植だと思いますが、到達目標及び 指導指針は、各施設、新人看護職員研修の必須の事項として位置付けるが、施設規模、 看護職員の構成、教育に係る予算等の状況に合わせた調整も必要である。 また、看護職員の経験年数別の教育計画だけではなく、それぞれの看護職員の能力や希 望する将来の専門等が活かせる、より柔軟な教育計画の作成も考慮することが必要であ る。   更に新人看護職員研修は、看護職員の生涯教育の一環であり、新人看護職員研習終了後 の研修計画についても明示しておく必要がある。  最後ですが、チーム医療を円滑に推進するために、新人看護職員研修に関して、他職 種との連携を密に取る必要があること。また、新人看護職員が他職種の業務を理解する ための機会も設けることが望ましいとしております。  18頁、5番目になりますが、これは研修内容を積極的に公開する必要があるのではな いかということで、ホームページ上やいろいろな看護学生の就職先の選定にあたっても 活用できるようなことや、IT等の活用も含めてこういう公開例等が挙げられるのでは ないかということを述べております。  19頁、これは今後の新人看護職員研修に向けて、関係各所に期待する事項に関して挙 げさせていただきました。最初の○に関しては、看護職員の資質の向上に関して国に対 して、これまでは中堅看護職員等が中心に行われていたのですが、今後は新人看護職員 研修に関しても支援を充実させていただきたい。  2点目に関しては、各施設以外で実施される研修として、新人看護職員以外にも、そ れらを指導する人たちの研修もつくっていただきたい。3点目は専門職能団体に期待す ること。4点目は学術団体に期待すること。最後は看護基礎教育機関に期待することを 挙げております。以上です。 ○井部座長  ただいまのご説明につきましてご意見ご質問をお願いしたいと思います。 ○廣瀬委員  2つの検討グループの皆様と事務局の皆様の本日の資料のまとめ、ご尽力に私は感謝 いたします。事前に配付されていましたので、私としては10項目程質問とか意見がある のです。  1頁の現状と課題のところですが、この1頁と2頁を含めて、基本的にこの新人研修 の目的は、基本となる看護技術を身に付けることだけではなくて、仮に基礎教育を今後、 充実したとしても、新人研修というのは臨床の現場でなければ学べない。そういうよう な機会を設ける必要があるという記述が是非欲しいなと思いました。そこは1回、2回 目の検討会にかなり私は言ってきたつもりです。そういう臨床の現場でなければ学べな いものがあるので、その機会を設ける必要があるという記述を、是非入れていただけな いものでしょうか。  もう1つは「新人看護職員研修到達目標」というので4頁にありますが、この到達目 標の中で言葉の表現なのですが、何々ができる、何々がとれるという、行動目標の表現 は看護の現場では、評価の際に新人の思考プロセスが評価されない傾向が出てくるので はないかと懸念します。単なるできた、できないというのではなくて、表現は体言止め にする。  例えば1番は「医療人としての自覚と責任ある行動」というような表現が好ましいの ではないでしょうか。次に4頁の1―1)の目標ですが、例えば医療倫理、看護倫理を 理解し、適切に行動できる、とありますが、倫理と漠然と記述をしても具体的なイメー ジができないので、具体的に患者情報の取扱いや、プライバシーの保護、人権の重視等 の文言が表現されることが、望ましいのではないでしょうか。とりあえず3つ言いまし た。 ○井部座長  事前準備を周到にしていただいてありがとうございました。宮城委員どうぞ。 ○宮城委員  お話を聞いていてとても実践的な、しかも目線が本当に患者に向いているという点で 感心をして聞いているのですが、私たち、隣の星委員もそうですが、臨床研修必修化に 向けて何年もやってきた者ですが、こういう新人教育についての看護職員、看護関係者 の方向づけというのは、私は臨床研修医にとても参考になると、これは全部臨床研修医 に当てはまると、相当いいものになるのではないかと思うのです。  1つオーバーオールなことを言うと、研修医も看護職員もそうなのですが、医療人と いうのはすべからく情緒安定型でなければいけないということを、どこかに是非入れて もらいたい。医師も看護職員も情緒不安定な人がいて、それが臨床の現場で大きな迷惑 をかけている。ヒステリー性格であるとか、オステリー性格であるとか。指導医につい ても誉める場合の基準と叱る場合の基準を明確に認識しておく。同じことをしても昨日 は誉められたのに今日は怒られる。これは医療現場でよくあることなのです。そういっ たことのないような指導医を養成していってほしいということです。  スチュワーデスでもデパートの人たちでも、お客サービスについて非常によく考えて、 にこにこは金のかからない最大のサービスだという考え方でやっているのに、医療はサ ービスなのにそういう教育が全くされていない。その辺をもう少し強調してほしいとい うことです。医療人がにこにこと情緒安定的に働くには、仕事を楽しんでいなければ絶 対にあり得ない。だから楽しい職場づくり、楽しい医療の在り方を工夫する必要がある という方向を、是非出してほしい。  指導者とかプリセプターシップとかいう話が出ていますが、私は医療人はすべからく 指導者でなければならないと思います。医師臨床研修制度でもそうなのですが、「屋根 瓦方式」、1年目は2年目が教える。2年目は3年目が教える。教えてはじめて学ぶの ですから、学ぶことは教えることなのですから、あなたは指導者、あなたはプリセプタ ー、私は単なる看護職というような分け方はしてはいけない。医療職に従事する人はす べからく指導的な立場で仕事をしないといけない。医師の臨床教育では「屋根瓦方式」 と言うのですが、是非看護職員にあっても屋根瓦方式を意識してほしい。  教育環境が本当に整っていれば、1年目と2年目、2年目と3年目では、圧倒的な実 力差がなければならない。1年目と2年目、2年目と3年目に実力差がない職場は、私 は教育環境がないのだという評価につながると思いますので、この辺りを配慮した文言 を入れたり、姿勢をつくっていただければと思います。厚労省でも臨床研修検討委員に 井部先生も入ってくださっていますが、井部先生も是非こういったものを臨床研修検討 委員会に出して、看護職ではこういうものを作っているのだということを大いに主張し て、医者はなんですかというような意見を是非出してほしいと思います。 ○井部座長  このプログラムはまだ検討中ですか。 ○宮城委員  実はマッチング委員会は一応今年は成功したので、この3月までに委員会を開かれる 予定はないのですが、今度開かれるときは是非お願いします。 ○井部座長  貴重なご意見をありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。 ○川村委員  4頁の先ほどのお話のところですが、医療人として必要な基本姿勢と態度の1番の所 で、医療人としての自覚というところの2つの目標がありますが、私は医療職が他の職 業と決定的に違うところは、危険なものを扱うということだと思うのです。薬剤にして も医療機器にしても医療ガスにしても、さまざまな危険なものを扱って、こちらが意識 をせずに不用意なことをしたら患者さんを傷つけてしまう。まさに危険職業であるとい うことです。  人権尊重には安全ということを入るべきと思うのです。この鉤括弧の1つに、安全を、 危険なものを扱う職業であるということを認識して、現場に潜む危険なものに対する意 識を強めて、安全行動をとるということを明確に入れていただきたいと思います。1頁 には安全の言葉が出ていません。 ○井部座長  4頁のところですね。 ○川村委員  4頁のところで、最も大事な態度のところです。 ○星委員  全体としてつくりがよく見えないので、つくりの整理をしてほしいなと思います。こ のまま出ていくのではないのだからいいのでしょうが、最初に説明があったとおり、2 つのものがあって、その頭書きがある形になっているので、何か、だらだらといってい るので非常に読みにくいのです。もう1つは1年目の教育を意識しているのは、もちろ んそのとおりですが、ところどころで生涯教育というものとの接点が出てくるのです。 それは当然そうだと思います。そのことが遠慮めに書かれている。本来であれば、例え ば長期産休から帰ってきた人たちに対して再教育をするとか、途中採用の人たちに対す る再教育とか、そういうことに対する意識というのもどこかにあるはずなのに、実はこ こには書かれていないわけです。  初期の1年間の新人研修ということに限ってものを書いてはいますが、その中で全体 の教育のありようというのに、もし触れるのであれば、もう少し系統的に触れてもらわ ないと大変に断片的で、これだけすればいいのかなという気持ちにさせてしまうのは非 常にもったいないというか、ここまで書いていただいて残念だなと思っています。  個別のことでいくつか言いたいことがあるのですが、1つ申し上げておきたいことは、 評価の所に准看の問題が出ています。この件について私はこの書き込みがいいかどうか という話よりも、大切なことを忘れているという指摘をさせてほしいのです。  1つは准看であるかなかろうが、どの学校を出てこようが、どういう大学であろうが なんであろうが、個人のレベルあるいは学校の違いによって、まず持って入って来るレ ベルが違うのだという認識をまず持つこと。その1つに准看の教育というのがあって、 もちろん時間数も違えば到達目標も学校もというより、准看という資格そのものにおい て違いがある。もし違いがあるのであれば、私はそのことも個人の違いとまた別に考え ておく必要があるというのが1点です。  准看の問題を考えるときに忘れてならないのは、法律上できることの違いがあるのか といえば、前にも議論をしましたが、違いはないということです。しかし、法的な位置 づけが違うことは事実ですし、その目標とするところも違っているのであれば、そうい う法的な位置づけの違い、あるいは看護あるいは医療の現場における実態の違い、そし て各個別の病院によっても、それぞれの職種、あるいはそれぞれの能力をどの程度求め るかというものの違い、そして最後に一人ひとりの能力の違い。これらの違いを明確に 意識して、それぞれに合った目標を立て、それぞれに合った評価をしていく。  しかし、そうは言いながらも最低限、これは危険な医療の現場でやる限りにおいて、 このことはみんなが知らなければいけないのだということで整理をしていただくと、私 は非常に読みやすいのだろうなと思います。評価の所だけ准看の話が出てくるので、私 としては理解に苦しみますので、是非ともいま申し上げたような視点を入れて、この全 体の文書の練り直しをしていただくと、私はみんなにとって受け入れやすいものになる のではないかと思います。 ○井部座長  全体構成に関してなのですが、山田委員、正木委員で何か釈明する余地がございます か。生涯教育全体から論じて、新人教育にいくようにという指摘ですね。 ○星委員  生涯教育のところから教育体制とか、全病院を挙げての教育体制ということに、もし 触られるのであれば、全体像をもう少し丁寧にご説明いただいたほうが、どういう教育 体制をつくるのかということを考えている病院、施設にとっては、非常にありがたい条 項になると私は思うという意味です。 ○高橋委員  私はその全体像を書くというのは反対です。ここは新人だけに絞って、むしろ焦点を 絞った形の報告書にしたほうがいいと思います。いちばん最初に星委員が言われたこと には私も全く同感で、到達目標とか指導指針とか書かれていますが、ダブリの部分も随 分あって読みにくい。これを作った目標は何なのかということを考えると、各医療機関 で、これを参考にして新人研修計画をぱっと立てられるみたいな、もっと実用的なもの が出たほうが意義があると思うのです。ただ、ダラダラ文章を書いてあるだけのが出回 っても、ほとんど読まれないで積まれているだけではないかと懸念しますので、書き方 をもっと構造的というのか、それに変える必要があると思うのです。  事前にいただいておきながら、何も意見を言っていなかったので申し訳ないのですが、 例えば到達目標の所で、技術的側面と管理的側面と2つに分けて検討をされていますが。 この違いは素人である私にはよく分からなくて、管理的側面の中にも技術と関係するよ うな話も入っているように思うのです。  検討段階でこういうふうに2つに分けて検討するのは意味のあることだったと思うの ですが、最終的にはこの2つをまとめて、1年生の看護師が何ができなければいけない のかということを、1つのチャートとして示したほうがいいのではないかと思いました。 技術的と管理的と考えれば、そういうふうに分けられるのかなと思いますが、あえてそ ういうふうに分けて書く必要性が分かりませんでした。  今日の発表で、日赤のほうの評価がC、B、A、Sと積み重なっていくやり方は、大 変いいなと思ったのです。最初Cだったのが最後は自分の目標はSだけれども、まあA でもいいのかもしれないけれども、そういうふうに重なっていくこのチャートというの は、大変いいやり方だなと思ったのです。例えばここでこういうふうに項目を出されて いるのだったら、この通りにしなくてもいいと思うのですが、各医療機関がそのままコ ピーして使えるぐらいの練れたものの形として、チャートをお出しになったほうがいい のではないかと思いました。以上です。 ○高田委員  いまのことに関連してなのですが、私も看護実践能力というのが、この考え方ですと 態度面、技術面、管理面という、この3つの構成要素で成り立っているというような捉 え方で書かれている、ということは読み取れるのですが、実際に1人の新人の中で、こ のことが、いうならば統合して体現されないといけないということになるのだろうと思 うのです。そうすると、またその作業といいますか、そこが見えにくいというのが、い まの高橋委員のご指摘にあったところではないかなと思われますので、こういうふうに 側面として分けるというのが、あまり成功していないのではないかと思われました。  特に実践能力でということになりますと、難しいかもしれないけれども是非とも入れ なければいけないと思われるのが、判断力といいますか、個々の技術をそれそのものと して安全に実施するというスキルの学習、これは基礎教育でももちろんしているわけで すが、それをさまざまな病態の患者に、どのように実施するのかといった判断というの が、特に1年目の教育の中では、もっとも重視されると思うのです。そのことがなけれ ば安全な実施というのは、まずできないのではないかなと思います。  この中を見ますと、そういう面が見えてこない。その意味では技術項目として別表で 挙げることそのものが悪いということではないのですが、全体の構成の中に、これを3 本に分けるのではなくて、その判断を含めた形でなんとか表現できないものかと思うの です。 ○竹内委員  私は2点ございます。まずここまでおつくりいただいた委員の方々に感謝を申し上げ ます。1点は卒業をするまでに完成しておかなければいけない基本的な技術というのは どこなのか、卒業時の到達レベルがどのレベルなのかということがあって新人看護職員 研修到達目標を達成するための研修ということになるのだと思います。ですから、看護 あるいは基礎の教育プログラムで、どこまで到達するか、完全に到達しておかなければ いけないところを、しっかり見定めておくべきではないか。  その後、私たちの業務は保助看法、それから組織の規定に基づいて業務を遂行してい くわけですから、それぞれの組織の中で加えられるべき、それぞれの組織が自分の組織 はここまでのケアを皆さんに提供しますよという、それぞれの病院にケアの基準があっ て、そこにまた積み上げなければいけない卒後の研修があると思うので、その基礎とし て仕上げておかなければいけないものを、整理をしていただきたいのが1点です。  2点目は、私は助産の領域ですが、助産はいまお話がありましたように、必ず診断技 術学というのがありますように、診断に基づいてケアを提供する、このことが安全で満 足なケアを提供できる基本になります。そういう視点から整理を少ししなければいけな いところがあるのではないかと思いました。 ○井部座長  竹内委員の言われるのは、高田委員が言われた判断というところに共通性があるので しょうか。 ○竹内委員  私がいま申し上げましたのは、それもそうですし、また、助産業務というのは独自な 業務で業務独占をしていますので、助産の新人のところでは、やはり診断とケアという ところに力点を置いていただく、ということをお願いしたいと思います。 ○井部座長  すると、先ほどダラダラと書いていると言われたのですが、基礎教育の到達レベルま で入れますと、また更にダラダラとなる可能性があるので、この報告書の範囲をどこに するかを、ある程度考えないといけないかなと思ったのです。 ○竹内委員  私が申し上げましたのは、そこを基盤にして例えば5頁の「基本的なケアを提供でき る」という所は、基礎看護の所で完全に押さえておかなければいけない。例えばバイタ ルサインとかいうのは、生理的な私たちのいろいろな特性を、現象を理解するために、 基礎でしっかり押えておくべき技術、押えておくべき項目の1つであろうかと思うので す。そういうことを整理していただくということです。 ○山田委員  いまの基礎で押えるべきという辺りのご意見なのですが、一応ここにも挙げてあると おり、文部科学省と厚生労働省から出ました基礎教育のところを、一応ベースに考えて、 そこの上にこの技術の見直しをしているというのが1点になります。  助産のところは先ほど説明をしないで申し訳なかったのですが、1年目では正常分娩 のところがきちんと1人で、独力でできるということで、異常に関しては指導の下でで きるレベルでいいのではないか、というような整理の仕方で分けています。  高橋委員から出ていた技術的側面と管理的側面を、なぜこう分けたかという点ですが、 確かにかなりダブる部分があるのです。私たちもやっていく中で、やはりこれは同じこ とを言っているということが随分出てきたのですが、目の前に行ったベッドサイドの技 術に関してを、技術的側面のほうに整理して、管理的側面はその前に、要するに前提と してきちんと理解をしたり、分かっていなければいけないことの考え方で、できるだけ 重複する中身を避けた表現で、一応出したのですが、確かに内容としてはダブッていく 部分があると思います。 ○高橋委員  こういう報告書にまとめる際は、そういう説明が必要なワーディングはしないほうが いいと思うのです。技術的側面というのは実はこれこれこういうことです。管理的側面 はこれこれこうですという説明がないと、きちんと理解できないようなワーディングは 最初から使わないのが望ましいと思います。 ○竹内委員  ただ今の山田委員のご説明に、質問させて頂きます。6頁からあります看護技術の到 達目標の、独力で安全に実践できるというのは、卒業をした後の1年間の研修で独力で 安全に実施できるということでしょうか。 ○山田委員  はい、1年間の中です。 ○竹内委員  そうしますと、バイタルサインとか、症状や生態機能を判断できるようなバイタルサ インとか、身体計測とか。例えば例を挙げますと、卒業後、1年で更にこれを踏むとい うことと理解してよろしいのでしょうか。 ○山田委員  どういう状況の患者にも、このことがきちんとできなければいけないということを考 えますと、もちろん1年間の中でという最終的な目標は置いていますが、技術によって は、例えば病院によってこの技術は半年で到達しなければいけない項目という辺りのと ころは、それぞれ病院の中で検討をしてもいいことかもしれません。最終的には1年間 の中でということを考えていました。 ○竹内委員  3頁目の新人助産師については、助産技術を付加したというのは、いまの説明では分 娩介助ということだけになっているようですが、私どもも助産師外来がありますし、継 続的な家庭訪問も含めて、妊娠・分娩・産褥・新生児期にある女性と、新生児のケアを 診断に基づいて独自で行っていくのだという、その助産師の業務は病院でも分娩介助だ けではないと思いますので、是非ご検討を願いたいと思います。 ○山田委員  分かりました。 ○廣瀬委員  先ほどからの議論で、5頁の技術的側面の基本的ケアを提供できるという1)と2) ですが、この2つの分け方が何を意味しているのか、説明がないですね。新人職員が1 年経ったときに、どのような能力を持っているかというところをきちんと提示しないと、 1)と2)は、それぞれの判断になってしまう、また、6頁の表1―1について、果た してこれが指導の下で安全に実践できるという項目なのかということにも、少し意見が 分かれてしまいますので、もう少しこの辺の説明が必要なのではないかなと思います。  もう1つ、到達目標の側面が基本姿勢、態度、技術的側面と管理と3つに書かれてい ますが、この分類については少しディスカッションが必要なのではないでしょうか。2 回目が終わったときに、意見書を出すとき私どももいろいろ考えて出しました。やはり 管理という側面では、現在出されているのは技術に含まれてくるのではないかと考える ので、いろいろ説明しなくては分かりにくいというような、分け方ではないほうがいい と私は考えます。この側面は大事だと思います。 ○井部座長  もう1つは高橋委員が言われるように、いちいち説明をしなくては分からないような 書き方はしないというのは、基本的にはコンセンサスが得られるのではないかと思いま す。全体の構成としてほかに何かご意見ご指摘がございますか。 ○正木委員  構成に関して、今までワーキングを2つに分けてやっていて、その2つのワーキング の報告を合わせただけなので、これからは内容で構成を考えていかなくてはいけないと 思っています。  先ほど高橋委員から、生涯教育に関して必要ないことは書かなくていいというご発言 があったのですが、私たちワーキングをやっているときに、これは書くべきか書かない ほうがいいのか、書いたことによって弊害が生じることもあるということで、取捨選択 をしなければいけなかったのですが、その基準みたいなご意見、書かないほうがいいと 言われる理由みたいなところを教えていただけると、今後これを書くか書かないかとい うところを、もう少し検討しやすいと思うのです。 ○井部座長  私がいま伺って思ったのは、1つは生涯教育として体系化した大きなものをまず書い て、その中の一部が新人教育だと位置づけるのか、新人教育1年目をどうするかという 実用的なところのガイドラインをつくるのか、そこのところが2班に別れているという 印象を受けたのですが。 ○高橋委員  それはこの会の設置目的が後者だということで、答えが出ると私は思います。 ○井部座長  そこはいかがでしょうか。 ○星委員  高橋委員が言われるとおりで、もしこれをサラリとみんなができるマニュアルにしま しょうというのなら、それはそれで私はいいと思うのです。看護教育も医師の教育もそ うだったのですが、簡単に言えば、なんとなくやってきたと、しかし、これはそういう わけにはいかない時代がきたのだということが、まず出発地点にあるわけです。これま ではどちらかというと、中堅以上の人たちに対する教育を一生懸命にやってきた。これ は最後に皮肉とも取れる書きぶりを見れば分かるのです。しかし、新人教育というもの があって、はじめて上に積み上げるいろいろなものに価値が出てくるのだということに、 我々気付いたわけです。そのためにいまの教育全体をどうするのかという話も、それに 連動して起こってきているわけだと私は思うのです。  どうあるべきかというか、先ほど言った全体像というのはどうあるべきかという議論 をもししないのであれば、全体像というのはありますねと、ただ単に記述していただけ ればいい。こういう全体像の中に、こういう位置づけですねという書き込みだけがあれ ば、私はそれでいいと思います。ただ、1年目分だけパカッと抜き出すと、一体何のた めにしている、ただ単に1年後の出来上がりの姿だけを想定したものであるならば、こ の前も後ろもいらないと私は思います。ただ単に基準をつくってくだされば、それです むということだろうし、ですから位置づけはまさに新人教育の重要性をみんなに共通認 識として持ってもらうことにおいて、必要な部分だけですよという説明が最初に明示さ れるなり、あるいは将来像として書き込まれるなりしていれば、私はそれでいいのだろ うなと思います。 ○田村看護課長  私どものこれまでの看護課の歴史の中で、平成4年に看護職員生涯教育検討会を開い ています。その時に看護職員の生涯教育の体系に関しての案が示され、ある意味ではそ うしたものに基づいて、この間いろいろな中堅看護職員の研修をどのようにするかを広 げてきたということがございます。  その報告書をいま見ますと、新人研修という位置づけはまだなくて、1番目にはリフ レッシュのための教育、2番目には専門性を高めるための教育。その1つ目は看護実務 研修、2番目が専門領域における研修という位置づけになっています。多分実務研修の 初期の部分がいまここで議論をしていただいている、新人看護職員の研修になるのでは ないかと思います。いま星委員が言われましたように、看護職員の生涯教育全体のこと、 総括的に少し報告書をおまとめいただく段階では、これの位置づけをはっきりさせると いう形でしていただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○瀬戸山委員  そうしますと、1回目からのいろいろな議論の中で、卒前教育の問題がいちばん大き いのではないでしょうか。しかし、この「現状と課題」には卒前教育が全然入っていな いのです。もちろん医師教育も卒前教育は大きな問題があろうかと思うのですが、看護 教育は厚生労働省と文部科学省と2つの所が持っています。そして、協調されていると 言いながらも、年限も違う。こういう問題がある中で、実際に卒後という問題を論じる ならば、卒前の所も1つ謳っておかないといけない。  もう1つは、素晴らしい看護のための教育であるとすれば、この謳ったものが卒前教 育にどう影響するのかという問題も、私は謳っておくべきではないかと思いますが、そ れはいかがですか。 ○宮城委員  先ほど竹内委員が盛んに強調していたバイタルなのですが、医療の技術の入口はバイ タルサインなのですよ。そのバイタルサインを看護新人教育の中で、私は徹底してほし い。1回目の時にも話させていただいたのですが、医者も看護職も、まず患者を見たら バイタルから始まるのです。これまで何百年もバイタルを取り続けてきたのは、それに とても大きな意味があるからなのです。ところがそれが、デジタル化されて、その数字 だけを見て、そのバイタルの本当の意味合いを臨床現場が失っているのです。  もっといけないのは、私はいろいろな所に教育回診に行くのですが、どの病院でも今 や呼吸数が抜けているのです。なぜかというと、呼吸数はデジタル化から外れているか らなのです。呼吸数のないバイタルというのは、全く意味もないのに、病院全体がそう いったことを平気でやっていて、何の不都合も感じない。ここに大きな落とし穴がある と私は思っています。ですからデジタル化は絶対に廃止してもらいたい。看護師にとっ ては非常に楽かもしれないが、そのためにバイタルから得られる情報のほとんどを失っ ているのです。私は新人教育の中でデジタルだけは絶対に教えてほしくない。ナマの患 者にちゃんと指で触れ、手で取る、そういうバイタルの教育をしてほしい。これだけは 何回でも言わせてもらいます。 ○井部座長  先生、臨床では呼吸数を測るだけでも情緒不安定になるのです。いろいろなことをや らなくてはいけないと思いながら、呼吸数をじいっと測るというのが、1年目にとって は大変な、修業ですね。呼吸数は大事ですが。 ○瀬戸山委員  12頁の「評価」の所です。ここはあくまでも指導者から教育を受ける者に対する評価 しか謳っていないように思いますが、できれば教育を受ける者から指導者に対する評価 も是非とも入れていただきたい。また、ひょっとしたら施設の評価もあってもいいので はないかと思います。 ○井部座長  まず卒前の教育について言及するということは、この範囲の中に含まれるべきだとい う意見と、あとは評価の所ですね。私は卒前教育については非常に重要だと思うのです が、臨床の現場での教育というのは、卒前教育とは不連続だと思っています。臨床現場 に入って来た新人たちの臨床教育をするかというところが、この指針で明示できるとい いのではないかと思っているのですが、これは基礎教育とは一線を画しているのではな いかという印象が非常に強いのです。ですから、臨床現場で教育をするということがど ういうことなのかを、改めてここに光を当てるべきではないかと思っています。 ○星委員  関連して質問があるのです。皆様にお伺いしたいのですが、どこどこ病院方式とか。 我々は術式にしても何にしても、何々大学方式というので苦労をすることがあります。 それが違う人と一緒にオペに入ると肩がこるとかいろいろな話があるのです。看護の現 場で「学校で教える内容の標準」とあるのですが標準という言葉は使いたくないのです が、均一性あるいは各病院、各病棟、あるいは各一人ひとりの均一性というのはかなり 高いのか。あるいはかなり分布していると考えたほうがいいのか、それは1つの病院し か知らない私にとっては分からない所なのです。ただ、外から来た人たちを受け入れる ときに苦労をするという話も若干聞きますので、その辺りはどうなっているのか教えて もらえると嬉しいのです。 ○村上委員  いまの質問ですが、臨床の場にいまして私どももどういう教育計画を立てていくかと いう時に参考にするのは、学会とか研究会、そういう所に出る。あるいは雑誌等、職能 団体で教えているものは、かなり参考になります。そんなに遠くない近似性はかなり高 いと思っていますし、そういうモデルを使って、自分の施設規模に合ったものを見本と している。そういう意味ではとても有意義な方法だと思うのです。 ○井部座長  つまり基礎教育の違いによって、臨床に入って来ると多くの違いがあるのかどうかと いうことについてはどうですか。 ○村上委員  多分いまは看護技術教育、学校教育の中では、随分たくさん技術教育を受けて来てい るというのは、かなり差がなくなっていると私は思っています。何が違うかというと、 多分、風土というか。これはこういうふうに言っていいかどうかは分かりませんが、ど ういう人がそこにいて指導をするかとか、そういう人間関係の問題、あるいは病院その ものの風土とか、それがかなり大きいのではないかなと思います。そういう意味では、 今回この指針を作っていくときに、確かに到達目標と指針のグループが別々になるのは やりにくかったのですが、私はこれを踏まえながら改めて自分が自己評価をした部分が かなりありまして、奥深いものに入ってきましたので、こういうプロセスを経ないとパ ッと見れるモデルはできないのだということは、今回感じました。 ○井部座長  星委員の質問はそういうことですか。 ○星委員  そういうことも含めてなのですが、私が本当に知りたい所は、いま学会のいろいろな ものを活用して、自分の所の標準的な作法が今日的であるかということを、チェックを しているような医療機関はそうなのでしょうが、一般論としてお作法が違いますね。作 法の違いが現実にいろいろな事故を起こしたりする。その程度にバリエーションがあっ て、そういうものを収束させていかなければいけないという現状なのか。そんなことで はなく、ある程度共通認識として同じ言葉で、同じ表現をすれば、みんなが同じような 手続ができるようになって、ほかの病院にぽっと移っても、すぐにつながっていろいろ なことができるような状況なのですかということを、端的に答えていただけると嬉しい のです。 ○宮城委員  いまのことに関して、看護師は3交替ができているということは、1つの病院の中で はかなり均質化がうまくいっているのだと思います。医師はそれができないから当直医 に任せられなくて、ご存じのように午前の1時、2時まで頑張っているわけです。そう いう意味では、私はいまの医師の働き方は間違っていると、看護師並みに臨床の実力を 均質化して当直医がどんな患者であれちゃんとマネージできる、そういう教育をしてい かないから医師の過労死が生まれているのだと私は思っているわけです。  将来は日本の病院の在り方も、医師は3交替にすべきではないか。医師は超人ではな いのだから、36時間も続けて働いて、なお体力が維持できる人間なんていないわけです。 私はそういう意味では看護職は技術面でも管理の面でも均質化がうまくいっている、医 療の中では最も良い例ではないかと思っているわけです。そういう点で看護職に私たち は学ぶところがあると思っているわけです。  今度、研修が必修化されて大学から随分学外に研修医が出ていきます。皆様の病院で も今まで受け入れられたことのない研修医を受け入れる病院がたくさんあると思います。 初めて研修を受ける人たちとの看護職の対応の仕方、特に新人看護職の中でも新しい研 修医とどうチームを組んでいくのかということも、少し配慮していく必要があるのでは ないかと思います。 ○石垣委員  先ほど井部座長が言われた基礎教育と臨床の不連続性の中で、この報告書の中に、臨 床での研修と言われましたか、それをどう盛り込むかということを提案されましたが、 そのことについては一切触れていないのですね。とにかく入ったときからのことをやっ ているのですが、それをどのようにここで取り上げるかということを話し合うのは、必 要なのではないかと思うのです。 ○井部座長  それは具体的にどういう内容のことでしょうか。 ○石垣委員  例えば不連続性があるので、その不連続性を埋めるための何か方略だとかを、この中 に盛り込んでいったほうがいいのかどうかということです。 ○高田委員  委員長がどういう意味合いで不連続性と言われたのかということにもなるかと思うの ですが、最初の「現状と課題」の4番目の所に、「多重な課題に対応しなければならず 」とかいったことが、新しく盛り込まれていると思います。こういうことが学生の時の 実習ではまず直面しない。スタッフとして仕事をするようになると、まさしくこういう 多重課題に直面して、安全にといいますか、それらを遂行していかなければいけないと いうのが、まず1つ大きな違いとしてあるのではないかと思います。  斎藤参考人の話の中でいみじくもあった、10人ぐらいの患者を同時に1日、8時間の 中でケアの責任を負うといったことが、具体的に看護師の仕事として、一人ひとりの患 者のケアを、1日8時間の計画の中で組み込んでそのケアに責任を持つというようなこ とが、むしろ具体的な目標として明記されると、何を目指していったらいいのかという ことが分かりやすくなるのではないか。その意味では委員長が言われた不連続というの は、学生の時と卒後というその辺りは、確かに不連続ではないかなと思うのです。 ○井部座長  私もその点で特に強調したかったのは、川村研究にも明らかなように、業務中断、多 重課題、時間切迫というのが三種の神器のようですから、そういう臨床環境の中で、ど うやって研修をしていくかというところを強調したいと言いたかったのですが、川村委 員どうぞ。 ○川村委員  別のことですが、私は個々の技術習得というのは、大変大事なことだと思うのですが、 ちょっとこの内容は違和感を感じてしまうのです。例えば独力で安全に実施できる、と いうところの6頁で、活動、休息、援助の技術、歩行介助、移動の介助、移送がありま す。患者さんは寝ている方をただ移乗するのではなくて、チューブが入っていたり、麻 痺があるとか、さまざまな病態をもった方を、それぞれ援助していくわけです。  この到達目標が病院に下ろされたときに、安全に実践できるということを、どういう ふうにイメージを描いて評価をしていくのかと思います。移乗・移送なんてこうしてで きる、それで到達できたという評価になるわけではないかと思います。普通にやればで きるケースと、患者さんの病態を考えなければならないケースと、先ほど高田委員が言 われたように、一つひとつのケアの技術の中に判断力が伴うわけです。そういったこと を現場が実践できるという評価の中に入れていけるかとどうかで、随分質が違ってくる と思います。  簡単にできる、できないかという発想で考えていきますと、さまざまな病態へのケア に対する看護の質向上につながっていかないと思います。そうしますと、この項目を出 す際に評価のポイントを明確にする必要があります。普通のケースと、病態をもってい るケースで。例えば口腔ケア1つにしても、普通の口腔ケアと気管内挿管をしている方 の口腔ケアとは全然違います。そのように考えていかなければ安全の面では難しいので はないかと思います。そういう細かな評価も設定しなければならないのではないかと思 います。  それから、与薬の技術の所に「一連の与薬ができる、注射ができるとか、準備ができ るとか、観察ができる」と書かれていて、右のほうの指導下でできるの所に「薬の副作 用・主作用が観察できる」とあります。むしろ私は一般的に使う危険な医薬品の知識が あってこそ、与薬の技術があるのではないかと思います。技術という言葉に時々違和感 を感じます。知識があってこそ、正しい技術ができるはずです。技術という言葉は、知 識も含んだ言葉なのかどうか分かりませんが、もう少し安全にやっていくための知識を 持った上で、与薬の業務がきちんとできるということを謳うべきだと思います。 ○井部座長  そうですね。添付文書を読むことができるとかいうような、内容があってもいいかも しれないですね。 ○村上委員  川村委員がいま言われた安全のことですが、この言葉だけですと、現場でケアの技術 でやるものと、それに必要な安全器械・器具というか、これがいま現場でときどき耳に 入るとよそから転送してきた患者の場合には、とても安全な器具を使っていた場合、当 院では使っていない場合にその購入ができない。そういう1つの問題も発生するので、 この与薬の安全のところでは、もう少しいろいろな視点があるのかなというのを感じて いるのです。どうしても安全な器具を導入してほしくてもできない現状もある中で、た だ、人の観察とか仕方だけに頼っていくのと、観点が違うところもあるので、この辺も どこかで触れなければいけないのかなというのは考えていくといいと思います。 ○川村委員  最も多いのは注射ですが、注射業務では医師と薬剤師の業務範囲はわずかで、ほとん どが看護業務の中でされています。看護業務の視点から見た注射業務の危険性を認識し た上で、正しい業務手順をとれることです。そこには当然一般的に使う危険な医薬品の 知識は必須なのです。そういうことを盛り込んだ上でこの技術が確実にできるとしなけ れば、ただ注射を準備して実施して観察していれば、できるということになると、この 到達目標を作成することの本意ではないと思います。 ○井部座長  そうですね。そういう点では、ベッドメーキングなんていうのは1年がかりで1人で できるというのも、何か違和感がありますので、意識がなくて例えば麻痺がある患者さ んのベッドメーキングができるという1年後にできるものを書いておけば、そこに至る までに当然、空のベッドのベッドメーキングもできなくてはいけないわけですから。1 年後にここまでという、そこを書くという手もありますね。 ○川村委員  その点はケアを受ける患者さんによって違ってくるわけですね。 ○井部座長  さまざまなご意見をいただきまして、時間切れのところがあるのですが、高田委員1 分で終わっていただけますか。 ○高田委員  現実的な観点から、こういうふうに項目で挙げるというのがどうしても異和感が出て くる所は、例えば7頁の転倒転落予防策の実施とか、ライン類の抜去防止策の実施とか。 一方から見るとこれは抑制につながってしまうのではないかということも当然、この項 目の名称を見ると、そのように読み取ってしまうわけです。この点が何を意味すること になるのかというのが、先程来強調している個々の患者にどうしたらいいかという判断 のところが抜きで、こういうことだけがポンと出てくるということは、実際にはあり得 ないと思うので、その辺りをどういうふうに分かっていただけるように表記できるかが、 とても重要になってくるのではないかと思いました。 ○瀬戸山委員  先ほどもそういうことを含めて申し上げたのですが、そういう個々の問題が入ってし まうと、卒前教育とか、看護実習、臨時実習というのは、言葉としては何を目標にして いるのですかということになってしまいます。あまりそこをこと細かに卒後1年生には こういうことがもっと詳しく、もっと詳細に説明をして、最低これだけしなさいよと、 それができればいいのですよ。それは卒前教育にどういうことをしてきたのかというこ となのです。そういうことも含めて考えていけば、ここであまり事細かに論じることは、 今後のこの施行をしていく中で、見直すことがいるだろうと思うのです。 ○山田委員  ワーキンググループの中でも、例えば注射の技術のところで、注射そのものをどうい うふうに本人が事前学習をして、それをどう集合教育で学習をして、それをどう実践に 移していくかという辺りのところを、習得方法について細かく例を挙げて一応やってみ た事例ではあるのです。ただ、そうしたときに、それで本当にいいのかどうかという辺 りのところは、かなり細かくなりますし、逆に、ではほかの項目について、それを全部 出すことは不可能に近い状況でして、その辺のところも少し検討には上がったところな のです。今回の資料の中には示していません。 ○井部座長  時間が不足で申し訳ありませんが、これでひとまずご意見を出していただきましたの で、今後の検討会の予定について事務局からお願いいたします。 ○岩澤補佐  今後につきましては、第1回の検討会で説明させていただきましたように、本日出さ れましたワーキンググループの検討結果をもとに、起草委員の先生方に報告書案として おまとめいただきたいと思います。起草委員には次の方々にお願いしたく思います。井 部座長、高田委員、廣瀬委員、正木委員、村上委員、山田委員にお願いしたく存じます。  本日、まだまだたくさんのご意見をお持ちかと思いますので、後日文書でお送りいた だきたいと思います。1月13日(火)までに事務局にメールまたはFAXでお送りくだ さいますようにお願いいたします。それらを事務局でまとめまして起草委員の先生方に 報告書案をおまとめいただきたいと思います。それにつきましては、第4回の検討会の 前に委員の皆様方にお送りしたく準備いたしますので、どうぞよろしくお願いいたしま す。 ○廣瀬委員  この検討会に意見を反映するために、自分の立場上いろいろな病院に出かけていきま した。それはトップの看護部長の会もありますが、現場の人たちとお話をして、教育背 景の違いとか、その施設の環境、教育関係にいろいろ違いがありまして、現場は悲鳴を 上げているのです。ただ、その時に、現在1年間に新人を何名採用し、1年間でどのぐ らい離職しているのか、その理由はどういうことなのかは、例えば国立大学病院の看護 部長会は持っている。私立大学病院は持っている。多分日赤も持っている。そういうも のを個々に持っているだけです。日本看護協会もそういう実態調査はしますが、厚生労 働省の管下として大きな実態調査の把握を是非していただきたい。私はいろいろな病院 を回ってみて、そういうデータが欲しいなと思いました。私達の調査では、1998年度の 離職率は10.9%で、2002年度との比較したデータでは3年間で0.7ポイント上昇してい ます。その辺是非お願いしたいところなのです。 ○井部座長  これについてはいかがでしょうか。 ○田村看護課長  突然言われた話で、これは看護職員の需給に関する話と受け止めることも可能だと思 います。私ども平成12年の医療法改正の時に、いろいろご議論がございまして、看護職 員の就業実態の調査をやるようにということで、昨年度に取り組んで、もうそろそろそ の調査結果がまとまるところです。若手の職員の離職だけを取り上げた調査をするとい うのは、離れた人を調査するので非常に困難であるということもありまして、看護協会 にあります中央ナースセンター、各都道府県に置かれています都道府県ナースセンター 等の調査結果を活用せていただいているのが実態です。いまの廣瀬委員のご要望が実際 に調査をすることが可能かどうかも含めて、検討をさせていただきたいと思います。 ○井部座長  それでは起草委員の方々よろしくお願いいたします。時間が過ぎてしまいまして申し 訳ありません。本日の検討会はこれで終了したいと思います。事務局から連絡がありま すか。 ○岩澤補佐  第4回の検討会は来年の2月26日(木)10時から開催する予定でおります。詳細につ いては後ほどご連絡申し上げる予定です。 ○井部座長  それでは本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうごさいました。 照会先  厚生労働省医政局看護課 岩澤 田母神 連絡先 03−5253―1111(内線2599、2594)