03/12/09 第3回事故報告範囲検討委員会議事録              第3回事故報告範囲検討委員会                   日時 平成15年12月9日(火)                      10:00〜                   場所 厚生労働省専用第18会議室(17階) ○前田委員長  ただいまから第3回事故報告範囲検討委員会を開催させていただきます。委員の皆様 におかれましてはお忙しい中をご出席いただきまして誠にありがとうございました。  本日は川端委員が欠席ですので、9人の出席をもちまして検討委員会を開催したいと 思います。前回は参考人として大阪大学医学部附属病院助教授の中島先生、国立病院部 医療指導課の柳課長補佐の両名ご出席いただき、事故報告体制について報告をいただき ました。本日はこれまでの議論を踏まえまして、事務局において素案を作成しましたの で、事故報告範囲についての最終的な文言について議論いただきたいと思っておりま す。第三者機関についてもご報告があろうかと思います。まず、資料の確認をお願いい たします。 ○事務局  「議事次第」「座席表」「委員名簿」がそれぞれ1枚ずつ、本日の資料として資料1 「医療事故の発生予防・再発防止のための情報収集・分析・提供の事業の実施について 」、資料2「報告を求める事例の範囲について(案)」の2点でございます。ご確認い ただければと思います。 ○前田委員長  議事の進め方ですが、資料1が第三者機関のことで、資料2はまさに報告を求める事 例の範囲ということになりますので、両者併せて資料説明を事務局からしていただき、 それを踏まえて質疑応答を行い、ご議論を頂戴したいと思います。事務局からの説明を お願いいたします。 ○医療安全推進室長  資料1の医療事故の発生予防・再発防止のための情報収集・分析・提供の事業の実施 について説明いたします。これは前田委員長を座長とする班の親会議に当たる堺先生の ところでご議論していただいたものを、具体的な概算要求としていま要求中のものであ り、もう少しで概算要求が出ますが、これでいま私どもは要求をしているというもので す。目的の部分は割愛させていただき、事業概要について説明させていただきます。  「事故事例情報の収集・分析・提供に係る業務」として6つの業務を挙げておりま す。事故事例、ヒヤリハット事例の情報収集をする、学会等から医療安全に資する情報 の収集をする、情報の確認及び分析をする、情報提供をする、医療機関の相談に応じて 助言・支援をする、医療安全に関する普及・啓発を行うといったことでございます。こ の事業に係る実施体制ですが、基本的には行政や直接の関係者から独立せよとの話でし たので、中立の第三者機関ということで設置しようということになっております。  中身については、まず運営委員会というものを置き、医療、安全対策などの有識者や 一般有識者などで構成をしていただき、第三者機関全体の活動方針の検討及び活動内容 の評価を行っていただく、というものがいちばん上層にあるというものです。その下に は専門家部門として、医療安全に関する幅広い分野の専門家で構成していただき、具体 的に、「総合評価委員会」は各分野からの専門家で構成し、専門家のチームが分析した 医療事例の報告書を検討するという任務を担っております。専門家のチームは個々の事 例に応じて医師、歯科医師、薬剤師、看護師、安全管理の専門家などから選任する専門 家のチームで対応するというものです。この専門化のチームで、分析に必要な情報や追 加的な情報を収集し、事故等について情報や原因の分析等に基づき、報告書を作成する ことになっております。医療機関からの相談の求めに応じては、専門的な助言や支援を 行うというものです。これを支える事務局としては、医師、看護師、薬剤師、事務職員 などを配置して、業務を行うというところです。  さらに4番として、専門家の養成を行って、いわゆる医療事故の収集の状況分析を的 確に行うことを目的とした、専門的な研修を行うということがあります。次頁に概略を 示しておりますが、ここでは第三者機関を置き、いまのような方針で業務を行い、医療 機関から提供された情報に基づいて、分析結果を医療機関はもとより、国民あるいは多 くの方々に情報提供を行うことを主たる業務とするということでございます。これが概 算要求の内容の説明となります。  次の資料は、「報告を求める事例の範囲について(案)」と書いてあります。これは 基本的には堺班の最終回に示された、事例の範囲とはこのようなイメージだというもの を基にして先生方にご議論いただいたものを含めて構成されております。3つにパート を分けていて、1つは「明らかに誤った医療行為や管理上の問題により、患者が死亡若 しくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例」といったも ので、下の例にあるようなものを報告いただくということです。2番目は、「明らかな 過失は認められないが、医療行為や管理上の問題により、患者が死亡若しくは患者に障 害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例」ということでございます。 これも下に例が示してあります。  3つ目は1番、2番と趣が異なり、「その他、医療現場に対する警鐘的意義が大きい と考えられる事例」で、間違った保護者への新生児の引き渡し等、1番、2番とは異な るようなものといった構成で考えております。次頁には概念図を示してあります。「報 告範囲の考え方」というものです。表の左側には、いま申し上げましたような原因別の 1、2、3というグループがありまして、表頭にはその重症度についてA、B、C、 「軽微な処置・治療を要した事例または影響の認められなかった事例」という構成でつ くられております。  ここで「事故」として報告いただくものは、1と2の中のABCの分類が1つです。 3のところは重症度にかかわらず報告いただくものとなっております。1、2のところ で、軽微な処置あるいは治療を要した事例または影響の認められなかった事例というこ とで、現在すでにヒヤリハット事例として報告いただいているもの、プラス「注3」と いうところがありますが、これは軽微な処置や治療を要した事例は、基本的には報告い ただいてないわけですが、事故を報告していただくものと、ヒヤリハット事例として報 告していただくものとの間にやや入ってしまった感がありますので、これも併せてヒヤ リハット事例として報告いただくことを考えております。いちばん下に「過失とは何ら 関係もなく予期せぬ結果となった場合」ということで薬の副作用、あるいは医療機器の 誤作動といったものがありますが、すでに報告制度がありますので、このようなものは 報告の対象外と考えております。  3頁目は「事故報告範囲の具体例」ということで示しております。先ほどの報告範囲 の考え方にのっとり、明らかに医療行為や管理上の問題による事例といったもの、明ら かな過失は認められないが、医療行為や管理上の問題による事例、これは例えば死亡し てしまった、あるいは障害が残存してしまった、濃厚な処置・治療を要した事例といっ たものです。これについては、1番の医療行為にかかる事例のトップには「異物の体内 遺残」というもので死亡等の患者に対して多大なる影響があったというようなものを報 告いただくこととなるもの、あるいは患者や部位の取り違えで同様の症状があったもの です。2番も同様に、例えば医療行為にかかる事例では、予期されなかった合併症で死 亡、障害残遺、濃厚な処置・治療を要した事例といったものでございます。3番目は、 その他、医療現場に対する警鐘的意義が大きいと考えられる事例ということで、例えば 医療行為等にかかる事例では移植にともなう未知の感染症、角膜移植にともなって、い ままで知られていなかった感染症に感染したのだといったようなものは警鐘的意義が大 きい、ということで報告いただくことを考えています。 ○前田委員長  資料1と2を併せて説明していただきましたので、質問もあろうかと思いますが、資 料1で出てくる第三者機関が、集める情報をどのような範囲にするか、第三者機関のや ることはもっと広く規定されているわけですが、情報収集の中の報告を求める事例の範 囲について、ここでいままで議論してきたことについてまとめていただくという構造に なっております。その前提として、第三者機関がどのような機能をするかということも 密接に結び付いてくる面もあるかと思います。ただ第三者機関のあり方については、 我々の委員会の検討の範囲を超えている面もあって、そこはちょっと微妙な面があろう かと思いますが、まずご質問をいただければと思います。 ○稲垣委員  いま委員長が言われたように、この委員会の検討範囲を超えたことかもしれません が、やはり第三者機関というものはできるだけ充実したものにしていただきたいと思う わけです。そういった意味で、いまの時点ではまだわからないかもしれませんが、全体 の構成や規模といったものが、特に情報の確認及び分析では相当な作業を要すると思い ます。充実した形のものにしていただけるような方向で動いているのではないかと思い ますが、その辺の感触をわかり得る範囲で教えていただきたいと思います。 ○医療安全推進室長  現在、概算要求で1億数千万の予算要求をしておりまして、当然、それだけで新たな 財団を立ち上げることは到底無理なので、資料の3枚目で付けましたが、財団法人日本 医療機能評価機構という母体があった上で、独立した事務局をお持ちいただくといった ぐらいでしたら、その金額では相当充実したものができるのではないかと考えておりま す。ただ、予算を要求している時点ですので、そのままそっくりいただけるかどうかは まだ決まっておりません。 ○山浦委員  資料2の1番は了解できるのですが、問題は2番です。2番の中には原因がわからな いで患者が死亡してしまったなどといった症例も含まれます。そうすると、この報告の 目的は、将来それを予防したい、避けたいという最終目的があるわけですが、2番が入 ると、避けようがないのではないか、という問題まで報告しなくてはいけないことにな ります。その点はどのようにお考えなのでしょうか。 ○医療安全推進室長  これについては議論があったかと思うのですが、明らかに理由がわかって、言ってみ れば責任の所在が明らかなものだけを集めるという趣旨のものとは若干異なっていて、 再発予防をしようではないかという議論がこのベースにあるのだと思うのです。特に、 全く医療行為が関係なくて、突然亡くなるといったものではなく、何らかの医療行為や 管理上の問題があって患者が亡くなるという場合は、患者側から見れば何なのだろうと 思うわけですし、当然、医療従事者側から見れば困ったことだ、どうしたのだろうとい ったことがあるのだと思います。そのような事例を集めることによって再発予防ができ るのではないかということで、このような項目を求めて集計しようということで提案さ せていただきました。 ○前田委員長  これは事故範囲に関してかなり根本的なポイントになろうかと思います。ただ、ここ で議論が出ていますのでご意見を伺えればと思うのですが、私は本当に素人でドクター の先生方にお聞きしたいと思います。原因不明というのも幅があると思うのですが、原 因不明で亡くなった方の例をある程度集めることによって、集まった結果、その原因が ある程度解明されて、それによって原因不明の事故の再発予防に繋がるみたいな議論と いうのは、素人考えなのでしょうか。私などは、ここでの趣旨はそのような筋立てでで きているのではないかと思ったのですが、ちょっとドクターの先生方からご教示いただ ければと思います。 ○星委員  例えば医薬品の副作用などの場合もそうだと思うのですが、副作用かどうかわからな い、しかしどうも変だというものがあるのだと思うのです。それを集めてくると、同じ 薬を同じように使っている患者から同様の副反応と言うか、反応が出ているというと、 いままで考えていなかったものがあったのかなということがわかる。これは薬を売り出 してみてわかるような場合もあります。ですから、この書き方が問題だと思うのです。 例のところに「予期されていなかった合併症」とさらりと書いてありますが、それはど の範囲かということは具体的にイメージできない。「何か変だな」という言い方が正し いかどうかわかりませんが、薬の副反応のときにも、どうも変だということでスタート していますから、そのようなものであれば、いま委員長が言われたような積み上げがあ るのだろうと思います。  ただ、それが具体的に医療施設の中で、どうしてなのだろうといった議論になって、 他の原因は考えられないのだなといった議論を経たものでないと、これは下手をすると 結果だけをもって出しなさいと捉えてしまう、つまり、それは医療行為の連続の下に亡 くなった患者で明らかな死因との因果関係が説明つかないものすべてと取られると、か なり山浦委員が言われたようなことが起こるのではないかと思うので、もう少し具体的 にすることと、院内でどこまで議論をしてもらうのか。たまたま今回の報告対象になる 医療機関は、基本的には院内での評価体制ということができているということでしょう から、その辺のどこまでを評価して、どのような状況になったら挙げてよこすのかとい うところを議論すると、この辺は少し明確になるのではないかと思います。 ○前田委員長  他にこの問題に関連してご発言いただけるとありがたいと思います。 ○大井委員  私は2番目がポイントで、最も大切な事項だと思います。前回から同じようなことを 主張しているのですが、事故報告事例というのは、事故のあった病院で分析し、原因が 明らかになった事例だけを拾い出して報告するというのではなく、原因が全く予測でき ていない、しかし重大な結果をもたらした事例についても収集すべきだろうというのが 私のスタンスです。そうすることによって、実は思わぬいろいろな教訓を得ることがで きますし、しかもそれを第三者機関で細かく検討されることによって、非常に警鐘的な 事例になり得る可能性を持っているという意味であり、すべての亡くなった事例を報告 するというわけにはいきませんが、その辺は幅を持たせて「予期せざる結果」といった 枠を定めれば、私はそのままでよろしいのではないかと考えております。 ○山浦委員  こういった明らかでないものを集めれば、分析して将来役に立つのではないかという 議論ですが、ここに原因不明の妊産婦の例がありますが、原因不明の死亡事例を何例集 めたところで、分析するに十分な詳細なデータまで求めなければ意味がないということ なのです。極めて医学的な分析が必要になってくると思います。こういった画一的な情 報収集をするときに、分析に足る十分な、細かな専門的なデータが集まるかどうかとい うことが非常に疑問です。  例の2番目の「腸管が穿孔した」といった症例であっても、手技の非常に微妙なとこ ろまで追跡しないと、意味のある分析結果は出ないと思うのです。おそらく、報告がス タートしてデータが集まってきたときに、集まってくるデータだけで2番の解決に役立 つのに十分だろうか、という疑問があります。極めて医学的、極めて微妙な専門的な分 析が必要かと思います。 ○前田委員長  よくわかりました。ただ、この検討会の土台にあったのが、いろいろな機能は持つだ ろうが、この事故報告によって再発防止、問題をより深めて患者側の利益を図るという ことで、なるべく情報をたくさん、有効な情報として備わったものを集めていこう、そ のために特定の病院からまず始めようということでした。山浦先生ご指摘のように、こ のような形で全部の病院に一斉に投げたときに、全部の症例というか標本、事例につい て、それだけきちっとした情報が付いてくるかどうかというのは、完全に絞り過ぎると また集まりにくいという問題があるので、バランスを取らなければいけないと思いま す。  これは事務局に伺ったほうがいいと思うのですが、形式的に数があったものだけを挙 げさせるということでは今回の場合はないわけです。私の申し上げたいのも、解明に繋 がるような情報を伴った報告を何とか集めたい、そのときにその範囲の中で原因不明だ ったもので解明できたものだけを挙げろと言われるとちょっとあれで、この病院として 検討したのだが、これだけのことしかわからなかったというようなものも挙げていただ いたほうがいいのではないか、というご趣旨を原案としては含んでいらっしゃるのかと 思ったのです。 ○宮崎委員  これがスタートですから、まずはある程度の範囲の症例が集まることが前提で範囲を 決めて、それが特定の病院で始まるわけですから、これは見直しをするという前提の下 の作業の一端ではないかと思うのです。これを動かしてみて、それが本当に有効なやり 方か、これは足りないのではないか、これは余分ではないか、ということはおそらく出 てくるだろうと思うのです。見直しをするということをどこかに置いて考えを進められ たらいいのではないかと思います。 ○星委員  例えば腸管穿孔の話も、ここで全部原因を追求して決めてしまって、対応策まで全部 つくろうと考えるとちょっとため息が出てしまいます。この手の器具を使って、このよ うな場合にどうも様子がおかしいのだといった場合に、その情報提供を専門学会にして いただいて、学会での情報収集を、今度は学会の自主性を持って日本中の会員に対して 問いかけをしてもらう、何年か前の麻酔事故の調査だとか、内視鏡の穿孔がどれくらい 起こるのか、あるいは手技上の問題はないのかといったことについて、すでに行われた 事例があります。したがって、この第三者機関、それも評価機構に何人か人を集めて1 億いくらぐらいの金でやるというのは私は限界があると思うので、そのような意味での 入口に関して言えば、ある程度のことが入ってくる、そして必要ならばそれを適切なと ころにお願いをする、そういうことも考えれば、ある程度このようなことを幅広に集め ておいても困ってしまうということはないだろうと思います。しかし、これを全部この 中でやるのだというのであれば、やはり相当程度絞り込んで、具体的に示さなければい けない。ですから、そこはどのように考えるのかということなので、もしかしたら第三 者機関の機関の有様、運用の仕方に影響を受けるのかもしれないと思います。 ○医療安全推進室長  まさに第三者機関の話ですので、私の説明が十分でなかったと思いますから若干のご 説明をいたします。基本的には医療事故を集める上でのインフラではないかと思ってお りますので、それですべて解決できるという前提には少なくとも私どもは思っておりま せん。いま星委員が言われたように、このような情報をできるだけ公開のものとして、 他のさまざまな機関がありますので、そちらでご検討いただく種と言いますか、そのよ うなものとして扱っていただければよろしいのではないかと思います。 ○辻本委員  ただいま事務局のお話の中に「公開」という言葉が出されたかと思いますが、資料1 の2の(4)「情報提供」と(6)「医療安全に関する普及・啓発」は、具体的にはど の程度のことを考えていらっしゃるかの説明を求めたいと思います。 ○医療安全推進室長  単純なアナロジーはいけないのかもしれませんが、基本的にはいまでも「ヒヤリハッ ト」というものは随分大量に集めさせていただいております。それを若干月遅れぐらい でホームページに上げております。このような形で情報提供を少なくとも1つはできる だろうと思っております。その中身は集計データで、例えばヒヤリハットのチャンピオ ンと言いましょうか、誤薬のようなことが非常に多いということはこれで初めてわかっ てきているということがあります。個別のとても特殊な事例というのも公開していま す。例えば、コンセントにフォークを突っ込んで感電するといった普通ではちょっと思 い付かないが、実例としてはあったと聞いております。そのことによって、それは子ど もの病棟でしたが、そこではコンセントに蓋ができるようなものにしましょうといった 動きに繋がっていますので、同様の事故だからと言ってヒヤリハットと対策は随分違い ますが、提供できる情報というのは十分にあるのではないかと思っております。 ○辻本委員  (6)の普及・啓発はもちろん報告は匿名で上がってくるのですが、フィードバック というようなところは繋がらないわけですか。 ○医療安全推進室長  基本的にはこの第三者機関に情報を集めて、その時点ではどこから来たというのはあ る程度わかってしまうわけです。ただ、それをプロセスの段階で匿名化します。表に出 すときは匿名化してお知らせする、そのようなことを考えています。各国同じようなこ とをやっているところは、すべて匿名化にしないと基本的には情報が集まらないという ことがありますので、そのような仕組みにしております。 ○辻本委員  ある程度どこから来ているのかがわかっている現状がある中で、いわゆるフィードバ ック、啓発という観点で個別的な指導は範囲としては全く考えないということですか。 ○医療安全推進室長  基本的に情報をいただいた機関に対する直接的な処罰などといったものは、ここでは 全く想定しておりません。 ○辻本委員  処罰ではなくて、第三者機関がある一定の研究機構としていろいろな情報を持ってい る、そこで気付いたことで「お宅はここを改善するといいですよ」といった個別フィー ドバックのことです。 ○医療安全推進室長  それについては3枚目にありますが、いただいた情報を分析して、個別の医療機関に お返しするということは想定しております。 ○辻本委員  わかりました。 ○国立病院部  先ほど星委員の話にもあったのですが、この第三者機関ではどの程度の深さまでを分 析しようとしているのか、まずそれを教えていただけますか。 ○医療安全推進室長  イメージとしては、いまのヒヤリハット情報の深さはある程度担保できるのではない かと思っております。さらに上乗せと言うか、ここで想定しておりますのは、予算の査 定状況よるのですが、医療機関の求めに応じてサイトビジットして、その事故について 改善策みたいなものがないか、あるいは事実について把握できないかということをして いますので、もしかすると、ヒヤリハットよりは若干深い情報が得られるかもしれない と考えております。 ○国立病院部  1つの事故が起こって、再発防止に役に立つような対策を考えようとする場合、相当 深い事故の議論、調査をしないと、実際の原因というのはなかなかわからない場合が多 いと思います。例えば阪大の事故や九州大学の事故の事故報告書を見ると大変な厚さに なっております。そういったことをやって初めて再発防止ということが出てくるのだと 私は理解しております。それを考えた場合、このような形で数を集めて、それが単に数 の収集に終わってしまえば、本当に事故防止に役立つような事故収集には逆にならなく なってしまうのではないか、ということを私は非常に恐れます。数は少なくても重要な ものをまず集めて、それを深く分析していく体制が、むしろ重要なのではないかと考え ております。 ○前田委員長  ご趣旨は非常によくわかるのですが、この第三者機関の有様はまだ固定はしていない わけで、いままで堺先生の委員会でもずっとご議論いただいてきて、深くやるというこ との重要性も十分指摘されてきました。ただ一方では国民側からの要請として、大きな 事故があって、それが全部集約されていないのではないかという強い指摘もあるので す。その中で、「二兎追う者は一兎をも得ず」というご議論は当然わかるのですが、や はり当面このような形で集めておいて、その中からどう分析していくかというのは、先 ほど星委員が学会との連携などいろいろおっしゃられたわけですが、今後深めていくこ とは、まさにどれだけの大きさかというのは予算などに絡むわけで、1億何千万でどれ だけのものができるかというのもそうなのですが、まだ入口ですので、ご指摘のような 懸念を踏まえて、再発防止にいちばん有効な形でエネルギーを配分していくというご指 摘は、そのとおり受け止めさせていただきたいと思います。 ○大井委員  実際に事例を、報告する各医療機関において、その報告事例の範囲が明確であって困 らないようにすることは最も大切なことの1つだと思います。これは報告したほうがい いか、報告しないほうがいいかということは、明確にしておいてあげなければ各医療機 関で困ってしまうということがあると思います。ある事故が起こったとき原因を明確に することがすべて出来るわけではありませんが、類推することは出来る、そのような事 例は決して少なくないと経験的に思うのです。各医療機関で検討して、原因が明確にな った事例だけを集めるというのでは、私は医療の安全文化を構築する上ではあまり得策 ではないだろうと考えています。  第1に報告する習慣を付けていただく。2番目として、症例を検討することによって 安全文化を構築していただく。3番目にそれをさらに蓄積することによって医療の安全 を確保していこうという流れが出来上がるだろうと思うのです。というのは、私自身も 関係しているヒヤリハット事例の検討で、以前非常に多かった転倒・転落、チューブ・ カテーテルに関する事例が大幅に減少したという報告がつい最近ありました。最初に関 わっていたときは非常に多かったのです。転倒・転落を何とか少なくしようということ が、看護部門を中心に全国的な運動が展開されていき、いまは半減しました。そのよう なものが私は安全文化だろうと思うのです。それはその医療機関で努力したというだけ ではなく、集まった事例を事例検討会で「こうしたらいいじゃないですか。こういうこ ともいいのではないですか」と類推して、さまざまな意見が出ました。それは必ずしも 個々の事例の原因を明らかにしたということとは違うのです。我々は裁判官でも検事で もないので、原因を明らかにしなければならないということはないと思うのです。医療 の安全文化の構築のためには類推でもいい、このような可能性もある、このようなこと も考えられると言って、ヒヤリハットのときはコメントに出していました。それをみて 気が付いて、それぞれの医療機関で改善していったのだと思うのです。そのようなこと が私は医療の「集める安全文化」だろう、1つの医療機関を超えて集めて、それを活か していくための安全文化だろうと思っているのです。原因が明らかな事例だけというの では、私はちょっと不満が残ります。 ○前田委員長  国立病院部にちょっと質問なのですが、確かに原因を究明して集めるのは大事だとい うことは我々も認識しているわけですが、国立大学の病院側でも、報告のある程度の基 準みたいなもの、これに近いようなものをつくっていることをちらっと側聞したので す。 ○山浦委員  それは国立大学病院です。 ○前田委員長  国立大学と国立病院は違うわけですね。国立大学の病院だと、その辺の情況はどうな っているでしょうか。 ○山浦委員  委員長が言われるような、ぴたっとは合いませんが、3つのクライテリアがありまし て、1つ目は資料2の1番とほとんど同じです。3番目も大体同じなのですが、2番目 の「未だ医療関係者あるいは患者、国民の間でほとんど知られていないと思われるイン シデントで、周知が図られることで重大な事故の発生を回避し得ることが期待される」 という項目は、強いて言えば資料2の2と3に関係しているかなと思います。国立大学 病院の3番目ですが、その他それぞれの医療機関が発表したほうがいい、必要と判断し たものという定義があるのですが、事務局何かありましたらお願いいたします。 ○医療安全推進室長  私どもも同じ資料をいただいており、いま先生が言われた3項目。国立病院のほうも クライテリアと言うか、これも前回ご説明いただいて今回の範囲と基本的には同じでは ないかと思っているのですが、当該行為によって患者を死に至らしめ、または死に至ら しめる可能性があるときとか、いわゆるその可能性があるときです。それから医事紛争 関係など、内部で報告いただくことになっていると聞いております。そのような意味で は、いずれも比較的類似しているという感触は持っております。 ○稲垣委員  報告事項をちょっと別の角度から考えてみたいと思います。現在の医療水準から見 て、当然対処すべき治療を行わなかった、そのために結果として重大な事故が生じたと いった不作為によるものは、報告しづらいかもしれませんが、医療の安全上、極めて重 要なことではないかと思います。  もう1つは、前回スウェーデンにおける医療事故範囲の資料をいただきましたが、そ の中に「治療担当者間での不十分または誤った指示、情報の提供」「医療機関内または 医療担当者間での連携が不十分であることによって生じた怠慢な作業」といった事項が ありました。こういったコミュニケーションが良くなかったということは、例えば薬剤 の投与を間違えたとか手術がうまくいかなかったなどは結果として出てくるから、そこ でまた含まれるかもしれませんが、捉え方としてはこういった捉え方もあるのではない かという気がいたしました。 ○前田委員長  いまの不作為の点ですが、明らかに現在確立した医療水準から見て、当然やるべきこ とをやらなかったというのは、我々法律家の感覚からいくとそのようなものは「過失」 と言うのです。この中でも「見落とし」という言葉や不作為的なものも入っています し、もちろん程度の問題ですし、医療水準として確立しているというのをどう捉えるか という問題はあろうかと思いますが、やはり積極的に何かをして事故が生じたという場 合だけが挙がってくるわけではなくて、このような見落とした場合や、やるべきことを やらなかった場合という事例も、当然射程には入れていただいていると思います。 ○岸委員  関連で、現在の医療水準に照らしてという表現がありました。前田委員長のご専門だ と思いますが、これは刑事責任や民事責任を追及するときの概念だと思うのです。私は いまの医療水準に照らして云々より以前に、つまり医療を十分に為したか、為さなかっ たかという判断以前のレベルで「このような事例が起きたのですよ」ということをまず 挙げていただきたいというのが本委員会の趣旨だと思うのです。これまでの議論を一貫 して聞いていますと、どうも医療事故というものに対するもともとのイメージが皆さん の間でかなり食い違っているように思うのです。親委員会の人間工学が専門の黒田先生 に、何度も私たちはお叱りを受けたのですが、「航空機や鉄道事故でこれだけ明確にマ ニュアルをつくっているのに、医療界は何をしているのだ」、「何をぐずぐずつまらん 議論を繰り返しているのだ」と、しょっ中お叱りを受けたのです。黒田先生の頭の中に は、おそらく医療事故というのは薬の取り違えとか指示された量を間違えた、器具の使 い方を間違えたといった非常にシンプルなところにまず目がいっていると思うのです。  ドクターの方々たちの議論というのはそうではなくて、それよりももっと学術的、学 問的なところ、先ほどの山浦委員も非常に専門的な話で、明らかに過失が認められない ケースなどというのは極めてシリアスな問題で、もっと専門的なデータでやらなければ いけないと指摘されました。私たち素人から見ると、明らかにならないというのも、そ れは医療機関内のご判断でしょう。あるいはもうちょっと広い視野から見たら、あるい はいくつか集めてみれば、ここに共通項があるではないかということもあり得るではな いかと思うのです。これは専門的だとか、専門的ではないというのも、ある意味ではそ の医療機関内の判断だと思います。私は基本的にこのシステムが作動するためには、自 分のところの責任とか何とかという話ではないのですから、医療機関自身がまず真摯 に、「何か原因がわからないが」という形で投げかけてもらうという態度が必要だと思 うのです。  そのためには、第三者機関なるものに対して私は不信感があると思うのです。第三者 機関は数だけ上げさせて放置してしまうのではないか、あるいは単に数さえ上げればそ れで何か解決するのかという不信感があると思うのです。第三者機関というのは、事例 が集まってくればいくつかの分類なり仕分けなりをして、すぐ役に立てられるかどうか 能力的に確かに疑問はありますが、第三者機関は上がってきたデータを活かすという、 真摯な努力をするのが前提で、医療機関が真摯に疑問を投げかける、一方は何とか原因 を見つけられないものかと真摯に努力するという相互の信頼関係が確立できなければ、 この議論はいつまで経っても堂々巡りするのだろうと思います。 ○前田委員長  それほど食い違うご趣旨ではないと思います。挙げて、そのような情報をどれだけ集 められるか、集めるときのマンパワー、分析するときのマンパワーがどれぐらいかとい うことにかかってくると思うのです。これは事務局に伺ったほうがいいと思うのです が、ヒヤリハットがそれなりに動いていて、あれだけの事例を解決するのにそれ相当な 人数を使って予算措置をしている。それとのバランスで、今度想定される件数は非常に 不明確ではありますが、1億数千万という額といったものをある程度想定される数に応 じた対応できるものを算定してあるとしてよろしいわけですよね。 ○総務課長  先ほどこちらからも説明いたしましたが、平成16年度概算要求の中で、かなり厳しい 議論をさせていただいておりますが、この新しい医療事故のシステムがスタートできる ことはまず間違いないと思っております。これは大変厳しい議論の中でも、ともかくや らなければいけないということについては、ほぼ合意ができているのだろうと思ってお ります。スタートするからには、それにふさわしい体制を取らなければいけないという ことも大体セットはできているのだろうと思います。具体的な金額はどうかということ については、もうちょっと時間を頂戴できればと思っておりますが、少なくとも現行で ここ数年やっているヒヤリハット事例以上の体制が取れるような形でスタートして、各 医療機関から出していただく情報について適切に原因を分析し、対策等々についての議 論ができると思っております。  確かに、この第三者機関だけで全部終わるかどうかについては、第三者機関だけでは なく関係団体や学会等との協力、連携ということが必要になることは当然あろうかと思 います。新しい第三者機関の流れ、仕組みの中で、医療事故の収集・分析・提供体制が 構築できるだけの予算を確保できると思っています。したがって、今日いただきました ご意見も踏まえて、なお1週間、2週間、時間もありますから、その中でさらに議論、 調整をさせていただきたいと思います。 ○辻本委員  「病院における医療安全と信頼構築に関する研究」で、川村治子主任研究の協力とい うことで、私どもコムルに届いた電話相談500例をピックアップし、どのようなことが 患者さんの不満になるのか、不安を抱えている状況になるのかという分析をしていただ き、分厚い報告書をいただきました。それを読むと、患者の立場としては、逆に、そう か、このようなことを患者のほうから確認したらいいのだなといった非常に学習になる 冊子であるにもかかわらず、冊子の存在そのものを果たしてどれだけの人が目にする機 会があるのか、あるいは学ぶことができるのかと疑問を感じます。その辺りは今度はマ スコミの協力が必要になってくると思うのですが、ヒヤリハットのこれまでの長い蓄積 の中で、やはり国民に研究そのものの存在も見えていない現状があります。1億何千万 という予算を取って、今度はもっと重篤な事例の分析をする機関が生まれても、少なく ともヒヤリハットの前例を見ると、私たち国民にはなかなか届いてこないというところ を踏まえた上で、新しい組織をどうしていくか。つまり私どもへの電話相談を聞いてお りましても、やはり患者さんはまだまだ大き過ぎる期待、誤解といった気持ちに満ち満 ちている部分がございます。医療は完全ではないのだ、学術的な限界や不確実性をはら んだ問題なのだという理解が、ようやく諸に就いたばかり、こうしたものも公開と言う か、啓発というところに繋げる、そこをしっかり踏まえてこの議論を進めていただくこ とが、まさに日本の医療全体に大きく影響していくところだと思います。2番目の「明 らかな過失は認めないが」、これも私ども国民としては是非とも現実として、このよう な問題が医療現場にあるのだという学びとして知りたい情報だと考えております。 ○前田委員長  マスコミにどう宣伝するかは別個の問題かと思いますが、ただ非常に重大で、予算の 問題とはまたちょっと違うかもしれません。ただ、啓発して初めて意味があるという部 分は制度をつくれば動くわけではなく、国民まで伝わって初めて意味を持つということ は、是非、事務局のほうでも汲み取っていただきたいと思います。 ○星委員  もう1つ気を付けてもらいたいのは、この報告を出したらそれでいいのだという風潮 が医療機関の中に出来てしまうことです。私は大変心配をしています。したがって、何 でもかんでも出させろという方式は、必ずしもプラスに働かないということを考えるべ きだと思うのです。つまり、本当に必要なことは、先ほど水準の話もありましたが、各 医療機関がそういったものも含めて、この間、阪大病院の報告もありましたが、あのよ うな取組みをできるだけのキャパシティを病院の中で育てていくということが、病院側 にとっては1つ重要な課題なのだと思うのです。その重要な課題を報告させることで、 ある意味免罪感というものを与えてしまわないような、つまり、せっかく分析体制が 揃ったところからの報告をまずお願いしましょうということで始まっているわけですか ら、その分析能力は高まっていく、それが一般の病院にも広がっていく。つまり自分た ちに起こったものを分析し、改善の努力に繋げようという努力があるところに、外部か らのインプットがあって初めて活かせると思うのです。  例えばここで分析した結果が自分のところに入って、それは自分のところの例ではな いが、自分のところの例と同じように分析し、理解し、そして改善に繋げるといったも のにならないと、「報告をさせました、このようなことです、皆さん気を付けましょう 」と言ったときに、医療機関にそれを咀嚼して、血や肉にする能力が出来ていない。そ のような本末転倒という状況にならないということは非常に重要だと思います。報告の 範囲を決めるときには、病院の中でのこの問題に対する意識というのはすごく重要だと 思うので、そのような意識を付けさせるようなものでなければ、私は意味がないと思い ます。つまり、こんなことを出せと言われているから出しておくよ、という具合で出て きたものをどんなに集めても、私は価値がないだろうと思うのです。ですから、その辺 りをどこまで病院自体の分析なり範囲を経た上でこのようなものを集めていくのかとい うことは、実は重要なことだと思うので、客観性も必要でしょうが、私は先ほど山浦委 員が言われた国立病院のものがいいかどうかはわかりませんが、これは必要だと自分た ちが分析をした上で、これはそのようなカテゴリーではないが、必要だと判断したもの を挙げてくださいというのは、1つのやり方だろうと思います。 ○前田委員長  おっしゃるとおりだと思います。 ○大井委員  この議論での争点は2つあると思います。1つは原因が明らかでない事例、過失が明 らかでない事例を報告してもらうかどうかです。もう1つ、その影に隠れてしまった議 論で、いままで話し合ってきた中で取り上げられていたのは、報告していただく事例の 範囲というのがあったと思います。それは例えば死亡例や恒久的な障害が残ったという 大きさを示していた重大事例の「重い」という意味があったと思うのですが、それがい つの間にかすっと抜けてしまうと、私は非常にわかりにくくなっているのではないかと 思うのです。星委員の言われたことは非常に大切だと思います。各医療機関が自分のと ころで相当まで分析できていくことがいちばん望ましいので、できればそのような文化 を育てるためには、報告していただく事例というのは、ある障害の大きさを規定してし まい、それ以外のものはまとめて年間の事故報告書のようにして出していただくことを 前に主張したのはそのような意味だったのです。 ○前田委員長  こちらの説明の仕方が不十分だったのですが、資料2の報告範囲の考え方の図で、患 者の重症度を横軸に取り、死亡、障害残存、恒久的なもの、濃厚な処置・治療を要した 事例、ここまでを報告するのだと思います。 ○大井委員  そうすると、ヒヤリハット事例以外のものは全部入ってきてしまうわけです。このA Bはよくわかるのですが、Cはすべて報告してもらうのかどうかということになると、 おそらく難しさがあると思います。 ○前田委員長  その範囲は注1で「濃厚な処置・治療を要する場合というのはバイタルサインの変化 が大きいために、本来予定されなかった処置や治療が新たに必要となった場合や、新た な入院の必要が出たり、入院期間を延長した場合」と具体的な基準、クライテリアとし て事務局は考えているようですが、この辺も委員の方々のご意見で、これでは広過ぎ る、1つの基準としてこの程度のところで今回の案としては切ってスタートしたらどう かという判断だろうと思います。 ○大井委員  そうしますと、ある経過中にベッドから転落して、それが打撲程度であればいいので すが、骨折したというような症例は当然ここに入ってくるのだろうと思うのです。その ような事例はヒヤリハットでも検討していますので、すべて取り上げて報告していただ くのか、事故報告範囲の重要事例として報告していただくのか、そのようなものはまと めてもいいのか、といったところを明確にしておいてほしいと思います。 ○前田委員長  それについて事務局から何か説明がありますか。 ○総務課長  まさにそれは検討会で議論していただければということだろうと思います。 ○医療安全推進室長  いずれにしても報告はいただかないといけないという話と、大井委員が言われるの は、おそらく非常に稀な例と、数がある例というのがあるのだろうから、それを同じよ うに報告することはあまり意味がなくて、同じマンパワーを適正に配分するのだという ことがポイントだと思っているのですが、それはある程度動かしてみないと、正直申し まして事故事例はまだちゃんと集めているという状況ではないのです。ある程度進んで からだと私どもは考えております。その中で、当然非常に稀で調査が必要であり、非常 に複雑な例だというのは、おそらく医療機関自身で分析する方法もあるでしょうし、第 三者機関で調査を手伝ってくれという場合はお手伝いするという仕組みは考えておりま す。 ○岸委員  資料2の言葉遣いの問題なのですが、もともとどこから持ってきたのか、おそらく何 かベースがあるのだろうと思います。議論になっている部分でもあるので、2番の「明 らかな過失は認められないが、医療行為や管理上の問題により」、「問題により」と限 定がかかると、明らかな過失は認められないものの、医療行為か管理上に問題があった のだ、という分析までは出来ているケースではないかという読み方を私なんかはしてし まうのです。おそらく、これは厳格にいえば、医療行為や管理のプロセスの中で生じた という趣旨なのだろうと思うのですが、「問題」という日本語を使ってしまうと、一定 程度の分析、解析が出来ていて、「ここの部分で」というふうに私なんか読んでしま う。もっと広い意味で私たちは議論しているような気がするのですが、違うでしょう か。 ○前田委員長  これはどこから来ているんですかね。問題によって難しいのだと思います。 ○医療安全推進室長  ご趣旨は先生がおっしゃったような、もっと広い「問題が明らかになっていないもの も」というような趣旨です。 ○前田委員長  ただ、医療行為に際して生じたもの全部ではないわけですね。やはり何らかの問題を 含んでいると推定されるような類型的事情がないといけないので、それを表現するのは なかなか難しくて。 ○医療安全推進室長  それで、あえて注というのを付けて、「原因として疑われる場合を含めるものとする 」というふうにしているのですが。 ○岸委員  私どもは、プロセスという意味で「管理の過程で患者が死亡若しくは」というよう な、もう少しそういう表現でいいのかなというふうな。 ○前田委員長  「過程で生じたもの」となると、全部入ってしまうという。 ○大井委員  私は、最後にこれを申し上げようと思っていしたが、「明らかな過失が認められない が」というこの一文は、非常に誤解を招きやすいし、なかなかわかりにくいので、「過 失は明らかでないが、患者が予期せざる経過で、死亡若しくは患者に障害が残った事 例、あるいは濃厚な処置や治癒を要した事例」というふうにしたらどうかと考えていま した。  ついでにもう1つ。3番目の所も、この文章も少しわかりにくく「医療現場に対する 警鐘的意味が大きいと考えられる事例」というのは誰が考えてるのか明確になっていま せんので、ここは警鐘的意義が大きいと医療機関が考える事例、というふうに主語を明 確にしていただいたほうが出しやすいのではないかと思います。 ○前田委員長  あとの点は先ほど、星委員がご指摘になった、それから国立大学病院との、ある意味 では接合になってくるのですが、病院側が出したほうがいいと。警鐘したほうがいいと いう意味では自発性が出てくるということでもありますし、委員がおっしゃるように 「考える」というときには主体を示さないと、非常に曖昧な文章になりますので、ここ は厚労省としても「病院が警鐘的意義が大きいと考えられる」とせざるを得ないわけで すね。厚労省側で意義が大きいと考えるというのだったら、それを具体的にもっと示せ ということになってきますね。  そうすると、あとは第2番目の所で、明らかな過失は認められないが、患者の予期し ない形で、具体的に重大なものが起こったという書き方はいかがでしょうか。趣旨は変 わらないということだと思うのですが、内容的にはですね。ただ、我々は、ここではも う強く申し上げるつもりはないのですが、「予期せぬ」「予期する」というのは過失の 有無と諸に重なってしまうので、予期しないということは過失がなかったということな のですが、日常用語としては十分耐えうる、明らかな過失とは言えないけれども、患者 が予期せぬことによって、重篤な結果が生じた、という趣旨のものに直していただくの は、私は問題ないと思いますが。  そうすると、国立大学病院ですと、先ほどの直しも含めて、近づくとは思うのです。 私は本当はなるべく国立大学病院のものと近いもので統一的なもので動かせれば、その ほうが日本全体の問題ですし、望ましいと思っているのですが。  そこの所は、中身は変わらないということで、修文をさせていただくということで す。ご議論いただいてきて、私がいちばん気になるのは、素人ですから、ここに挙げら れた1から3の中の、もう一歩突っ込んだ具体例なのです。  具体例でここに挙げたものというのは実はかなり拘束性を持ってくれていますが、こ ちらに目が行く面もあると思うのです。ご専門の視点から見て、3頁の「事故報告範囲 具体例」という所で確認していただきたいのですが、「異物の体内遺残」というのです か、「手術・検査・処置・リハビリ・麻酔等における、患者や部位の取り違え」、「明 らかに誤った手順での手術等」、「重要な徴候、症状や検査結果の見落とし又は誤認に よる誤診」、これが医療にかかる事例として、リストアッブされています。  これで過不足ないかということをちょっとご確認いただきたいと思います。ここはあ まり問題ないというご意見だったと思うのですが、特に不足ですね。国民の目から見て も、この程度のものを出しておいていただければ、当面は納得できるということもご判 断いただきたいと思います。あと、医薬品、医療用具に関しては投薬にかかる事項、こ れはかなり包括的になるわけですが、あと機器の間違い、誤用ですね。ここのカッコ内 もかなり重要な意味を持ってくるわけです。投薬事故というと、異型輸血、誤薬、過剰 投与、調剤ミス等。  あと、管理に関しては入院中の転倒・転落、感電。ただし明らかな管理不備によるも のと。それから入院中に発生した重度な褥瘡。  これについては特にはご指摘いただくことがなければ、問題は2番ということで、医 療行為にかかる事例として、「手術・検査・処置・リハビリ・麻酔等にともなう予期さ れていなかった合併症」、これが広過ぎるということですが、手術・検査・処置・リハ ビリ・麻酔等という縛りはあまり限定にはならないのですね。これはもう非常に一般化 してしまうという感じでしょうか。それに関連して、予期しなかった合併症というと、 予期しなかった合併症全部入れろというふうになってしまうのかどうか、その辺も含め て、ご確認ください。  先ほど議論していただいたのをむし返すというか、繰り返すつもりはないわけです が、ご議論は対立あるように見えて、こういうものがあって、再発防止につながるだけ の情報、クエスチョンマークがついてきて、それに対応するだけの処理能力があるのな らば、集めたほうがいいというのは、私も一致しているのだと思います。ただ、出す側 から見て、この書き方で曖昧過ぎるのか、どこまで入れていいかがわからなくなるのか というところが、ちょっと私も判断がつきかねますので、ご指摘いただければと思いま す。これで医療の側として何を出せばいいのかというのは、ある程度は目処が立つとい うのであれば、私はこれで是非やっていただきたいと考えていますが、いかがでしょう か。 ○宮崎委員  この中で、具体例を除くと、施設判断がかなり入ってくるのではないかと思います。 それぞれの施設で、これをどちらに入れるのか、やはり真剣に考えていくだろうと思い ます。それは私ども病院のほうは、みんなそういう取組みをやっているわけです。それ で、この「事故報告範囲具体例」の中で、すべて「具体例」の後ろのほうには冠が生き ているだろうと私は理解しているのですが、それでいいのかどうか確認したいのです。 要するに1番、2番ですが、「患者が死亡若しくは患者に障害が残った事例、あるいは 濃厚な処置や治療を要した事例」というのは後ろに2が付くのだろうと理解しているの ですが、それでよろしいですか。 ○医療安全推進室長  そうです。 ○宮崎委員  それであれば、出せるのではないかと思います。 ○前田委員長  事務局に確認します。そこは全く間違いないですね。 ○医療安全推進室長  はい。 ○前田委員長  だから、(注)で書くようなことではなく、表に出す重要なことだと思いますけど ね。 ○宮崎委員  具体的に言いますと、手術・検査・処置・リハビリ・麻酔等における患者や部位の取 違えが結果として死亡したり、障害が起こったり、そういうことにみな係るというふう に理解していいですね。 ○前田委員長  そういうことです。それはもう間違いないです。 ○大井委員  具体例を出してくると、報告される事例はすべて何らかの原因が類推できるというふ うに取られやすいので、2がいちばん問題だろうと思います。2の中には先ほどお話し たように、過失が明らかでないけれども、予期せざる経過で、重大な結果を招来したと いうことになると、この医療行為にかかるとか、医薬品に、あるいは医療用具の取扱い にかかるとか、管理上の問題にかかるという前提条件がわからない事例もあると思いま す。あるいは、そういうのが非常に複雑にからみ合っている症例もあろうかと思うので す。そういうものも含まれるのだということをどこかにうまく表現しないと、まずいの ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。 ○前田委員長  つまり、2の中には3つ、「医療行為にかかる事例」、「医薬品、医療用具の取扱い 」、「管理上の問題」とありますが、その外に「その他」を、明らかな過失ではないけ れども、重大な結果が起こった場合というのを入れるかどうか、また、それを入れると なると、現場のご判断が難しいのがまた増えるとは思うのですが、それで出せるという ことであれば、私は入れておくほうがいいとは思います。3番の「その他」の中にそれ が入り得る余地はもちろん残っているとは思いますが。この点について、何かございま すか。 ○堺委員  現在、「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」に取り掛かっていまして、パイロ ット・スタディを終えて、いま予備調査を行っています。来年度本格調査に入るわけで すが、その際に1次調査として、入院中のすべての死亡例、入院時の診療計画の入院期 間を著しく延長された例、または入院中に重要な治療行為が当初計画になかったのに行 われた例、これらをすべて1次調査ではピックアップしています。これを医師のチー ム、もちろん看護師さんのチーム等によって、2次調査を行って、絞り込みをやってい ます。  ですから、いま大井委員のおっしゃったことをもし拾うとしますと、1次調査で拾っ たものをすべて2次調査でも拾うとしますと、第1に数が莫大になります。第2に2次 調査を一体どこがやるんだということが発生すると思います。もし第三者機関がこの2 次調査をなさるとしますと、かなり莫大な業務量が発生するということは、是非念頭に 入れておいていただきたいと思います。 ○大井委員  それはよくわかりました。しかし、いま委員会でおやりになっている事例はすべての 死亡例とか、そういうものを拾い出していらっしゃるので、ここではその上にある枠が かかり、「予期せざる」というのが入りますので、私はそんなには多くならないのでは ないかという気がするのです。 ○前田委員長  そうですね、先ほどの議論の流れからいえば、複合的な形で原因が不明なものも拾え れば拾ったほうがいい。どれが原因か、この3つの分類すらできないような不明確なも のも拾えたら拾ったほうがいい、というのは流れとしても間違いはないのですが、テク ニカルにそれを入れることの可能性ということですね。ほかの基準ではこれを、我々の 言葉では一般条項というのですが、一般化した「その他過失は明らかではないが、患者 が予期しない形で、重篤な結果が起こった場合」という類型を入れているスタンダード というのはあるわけですか。 ○医療安全推進室長  どちらかというと、そういうものが入っているのは少のうございまして、むしろ個別 に具体例を示して、ご報告をするというスタイルが多いのですが、例えば我が国では、 国立大学と国立病院がありますが、そこは比較的広めに取っているという傾向がありま す。 ○前田委員長  例えば、国立病院や国立大学では、こういう具体的な原因となる医療行為とか、医療 上の事故とは切り離して。 ○医療安全推進室長  いや、全く切り離してはいないのですが、先ほどもちょっと申しましたように、例え ば国立病院ですと、「不可逆的な障害等を与える可能性があるとき」というふうに、非 常にざっくりとした形での記載になっていますので、それは先ほど宮崎委員が言われた ように医療機関の判断が多分に入るような仕組みにはなっています。 ○辻本委員  この具体例に即してということで、それぞれの医療機関がどう考えるかということに なっていくわけですね。ヒヤリハットの例よりも、かなり患者さん自身に深く関わる問 題がここに浮かび上がってくると思います。患者さん自身に、あるいはご遺族に、この 第三者機関に報告をしますということの情報を共有していただくインフォームド・コン セント、ちょっと議論と外れるかもしれませんが、そこのところはどういうふうにお考 えになっているのでしょうか。 ○医療安全推進室長  そこも少し検討はしていまして、具体例として東京都で同様の例をいま始めようとい うようなことをやっていて、そこは医療機関の中で、こういうような事例があったら、 報告することにうちの医療機関はしていますと、それがいやな人はお知らせくださいと いうようなスタイルを取っているようで、それも1つの案かなというふうには考えてい ます。 ○辻本委員  十分に練られていないということですか。 ○医療安全推進室長  そうですね、もしかしたら、ほかの例もあるかもしれないので、そこは少し仕組み を、反対の例もあるわけですね。ですから、いくつか、例は調べてみようとは思ってい ます。 ○辻本委員  わかりました。 ○総務課長  いずれにしましても、この第三者機関が具体的に事業を実施していただく中で、十分 第三者機関も役所も当然議論をしていただかねばならないでしょうし、その報告の仕組 みを作っていく中で、やはり報告を求めるべき第三者機関と個々の医療機関、さらに患 者さんとの関係を十分ご議論していただいて、その辺も詰めた上でスタートをお願いで きればと思います。 ○前田委員長  やや、煮えきらないところが残っていたので、整理しますと、1番の「明らかに誤っ た医療行為や管理上の問題による事例」は一応これで原案に大体ご賛成いただけたとい うことで、2番については文言の修正は、本文の頭のほうの「過失が明らかではないが 」ということを前提にしますけれども、医療行為にかかる事例で、「手術・検査・処置 ・リハビリ・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症」これは一応残させていた だくということです。  最後に「管理上の問題にかかる事例、その他」が付いて、その中に、「入院中の身体 抑制にともなう事故」の下に「その他過失が明らかでないが、重篤な結果が生じた場合 」というのは入れるかどうかのご判断をいただきたいと思うのです。そこを中途半端に しておくと、ちょっとまずいと思います。両先生のご意見もありましたし、これもやれ ればやったほうがいいけれども、非常に難しいですよというご指摘なのですね。それに 対して、読みもありますが、そんなに無条件で原因不明なものを全部拾うということで はないから、そうならないのではないかというご意見もあります。  ここでの判断はまさにすべて腰だめの議論でして、動き出して、見込みでやるしかな いわけですね。その中で、この委員会として、どこまでを案として出しておくのが合理 的かという、一種の決断だと思います。特にドクターの先生から、その点を含めて、何 かそういうのが入ったら、やりにくくなるかどうかというところで、実感としておあり でしょうか。いや、ほかの委員の方でもよろしいのですが、どうでしょうか。 ○岸委員  いわゆる医療現場で、原因が全く想像もつかない、何でこんな結果になったんだろう という事例はそんなに頻発するものですか。 ○山浦委員  少ないと思います。資料2を見ていただきますと、1、2について、全く別個の項目 で論議したけれども、病院としては予期せざる死亡が起きた場合、同じ過程を踏むと思 うのですね。原因を探るために一所懸命やる。原因がわかった場合には、1になって、 その結果原因がどうしてもわからないというのは2になるので、1であろうと、2であ ろうと、病院側がやる過程というのは、同じではないか。その結果が病院側としては原 因を見つけることができなかったというのが2番であると、そういう過程があると思う のです。  このようにいきなり「明らかな過失が認められないが」ということで始まりますと、 報告するほうもちょっと抵抗感があったり、安全文化の認識が十分に深まってないと、 書きにくくなるのではないかと思います。「予期せざる死亡」とか「重大な事故」とい うことでスタートして、原因がはっきりしないもの、不明であったものというふうにす れば、何ということはないと思うのです。 ○前田委員長  これはおっしゃるとおりで、報告する側からボトムアップで作ってあるものではなく て、どういうものをまず報告してもらわねば困るか、明らかに過失があるものはやって もらわねばいけないだろう。その次に過失がなくても、重大なものはやってもらったほ うがいいだろうという形で出来ています。そういう整理ですので、ですから現実にこの 範囲を示した後、病院の側にこういう記事で何を出していただきたいという具体的なガ イドラインの出し方を工夫しなければいけないと考えています。  ただ、その中で先ほどの議論に戻って恐縮ですが、そうしますと、2の最後の所に 「その他明らかに過失があったとは言えないが、原因不明で重大な結果が生じた場合」 というのを1つ入れさせていただくということで、いかがでしょうか。 ○星委員  いや、ずっと考えていて、わからなくなったのですが、過失の有無という話と原因の 話と、違う字句のものを同じ紙の上で3つに分類されている中で読み替えているんだな という気がするのですね。よく私どもの態度で非難を浴びるのは、過失はあったけれど も、因果関係がわからないと。つまり原因ではないかもしれないということをよく言う わけで、これの議論を私はここでするつもりはありませんが、明らかに過失があって、 それが明らかに原因で何か起こったというのが、この1番であるとするなら、2番目の 話はかなりぼやけているのですね。  過失がなかったのだけれど、何か起きたと。その原因が明らかなものと、そうでない ものが含まれています。この2つを分けろという話ですが、ただ、過失があっても、そ れが直接の原因でないという場合がもしかしたら、本当に存在するならば、それはどう するのですかというような話も出てきてしまうと思います。ですから、過失の云々とい う話はあまり最初の前程として取り上げると、先ほど山浦委員がおっしゃったように、 非常にわかりにくくなって、出す側からすると、一体何だと。結局は過失を問われてい るのかみたいなことになりかねない。  したがって、それが過失であるかどうかという議論はもしかしたらしないほうが、出 す側は出しやすいのかもしれないと思います。  ただ、自分たちの分析の中で、これは自分たちが過失と考えるのか、あるいはそうで ないと考えて対応するのか、というのは実は重要な事項で、それは落とすわけにはいか ない。ですから、何か二律背反というか、同時に説明できないものをいま一所懸命議論 している気がして、先ほどから私も悩んでいるのですが。 ○前田委員長  おっしゃるとおりで、ただ、同じ座標軸にないというか、本当は次元が違うものをあ たかも1つの平面にあるようにして並べるというのは、法律家のよくやることでして、 これはおっしゃるとおりなのですが、やはり先ほど申しましたように切り口として、明 らかに過失があるようなものはある観点から見ると非常に重要で、医療の側から見ると 重要でない側面もあるのだと思います。ただ、この制度はドクターの側からの出しやす さというのはひとつありますが、国民の側から見ての納得とか、いろいろな社会内の存 在として、複合的な要請の下に出来ているものですので、妥協的な言い方に聞こえると 思いますが、やはりほかの所の基準との整合性、その他を考えますと、やはり「明らか に過失のあるもの」をまず考えましょう。その後、明らかな過失ではないけれども、原 因不明で非常に重篤な事態が起こっているのを何とかしましょうと。それを集めましょ うという大きな枠組をご承認いただいた上でですね。ただ、いま星委員がおっしゃった のは、非常に重要な問題で、過失が有る無しというのは、非常に難しいですし、またそ れが再発防止の中でも考慮の仕方はいろいろあると思うのですが、それは具体的な情報 収集のときのガイドラインというか、マニュアルというか、その中に吸収して、要は病 院の側で出したらいいか、出さなくていいのか、ということが明確になる。また、出す か出さないかで審議するときの手順が容易であるということが重要だと思います。  その点については、今日はちょっと時間の関係もありますので、置かせていただい て、その範囲の問題も全く無関係でないのはわかるのですが、ここで示されたもので何 とか動き出せないかと。時間の関係というのは、あまり申し上げるのはよくないのかも しれませんが、先ほどの予算の関係がいろいろあって、年内にある程度決着をつけると いうことですので、先ほどの「その他」の原因不明なもの入れるというような形で何と か原案でご承認いただけないかということなのです、いかがでしょうか。 ○岸委員  1と2ですね。1には「過失」という言葉は使ってありませんね。 ○前田委員長  ええ、そうですね。 ○岸委員  1の類型の中には過失という言葉ではなくて、「明らかに誤った医療行為や管理上の 問題」という表現になっています。2のほうには「明らかな過失」という過失という表 現を使っています。これは何か意図があるのでしょうか。つまり、星委員がおっしゃる 意味も私よくわかるのです。過失という言葉は民法でも刑法でも損害賠償なり刑罰を伴 う用語として使われて、因果関係が明白であるという意味です。確かに明らかな過失と いう2番で因果関係は遮断してという趣旨でお使いになっているのかもしれませんが、 この使い分けが何か意味があるのか、そういうのがなければ、私は逆にいうと、2番で はもう少し丁寧な物言いで、過失という言葉は使わなくてもいいような気がしますが。 ○前田委員長  明らかに誤った行為は認められないが、ぐらいにしたほうがいいかもしれないです ね。過失の中に因果関係論が入るのか入らないのかという議論で、それだけで相当な時 間に法律の世界ではなってしまいますので、これはやはりあくまでも、法律の世界の形 式的なものではなくて、実質論として、使えるものを、病院が出しやすいもので国民が 納得するものをということですので、岸委員がおっしゃったような形に直させていただ ければ、星委員のご指摘もある程度は緩和できるかと思います。ほかにいかがでしょう か。もし、ご意見がなければ、いまご指摘いただいた所は間違いなく修正させていただ いて、この案を踏まえて、必要な作業を進めさせていただいて、この後の段取りは事務 局としてはどうなのでしょうか。もし、これでご承認いただけたとすると。 ○総務課長  まず、予算をセットさせていただかねばならないと思っていますから、先ほどもちょ っと申しましたが、まだ折衝途上ですから、おそらく今年も年内予算編成でしょうか ら、年内に予算が編成されて、そこの中で、この第三者機関にかかる必要経費は計上す るように折衝を進めなければいけないだろうと思っていますが、その後、年明けになり ましたら、第三者機関、私どもの案では医療機能評価機構というのを考えていますが、 機構に具体的にお話を説明させていただいて、そこで、先ほど医療機関と患者さんとの 関係についても、お尋ねがありましたが、その他の所要の体制をご準備いただき、その 中で事業の運営の方針を最後まで詰めていただくことになると、その際には今日のご議 論は当然そこに反映するようにしていただかねばならず、それは役所も当然評価機構と 一緒になって、作業していくというような段取りにななるかと思います。 ○前田委員長  ですから、報告の範囲、我々が与えられた最大の課題の範囲は、こういうことでほぼ まとめさせていただいたとして、実質論としては、お話を伺っていますと、第三者機 関、第三者機構がどうなるか、どれだけのものとしてやっていただけるかのほうがある 意味では重要なのですね。総務課長、お忙しいのでご退席になってしまいましたが、皆 さん厚労省の方がいらっしゃるので、その点に関して、まだご指摘いただく時間が ちょっと足りなかったような気がするのですね。ですから、資料2の件は一応これでま とめさせていただいたということで、修文その他は申しわけないのですが、委員長の私 にお任せいただくということで、先に進めさせていただきます。  第三者機構に関して、先ほどの話ですと、時間が迫っていますので是非この点だけは 指摘しておきたいとか、この点は何とかならないだろうかというご発言がありました ら、ちょっといただいた整理とはずれるので事務局には申しわけないのですが、実質論 としては重要だと思いますので短い時間でよろしいのですが、ご意見をいただけたらと 思います。 ○堺委員  2点、お願いしたいことがございます。1つはつ解析・立案の機能を最初から組み込 んでいただきたいと思います。それをほかの医療機関はもちろんですが、社会全般に見 えるようにしていただきたいということです。これを申します理由は、現在のヒヤリハ ット事例の収集がかなりの事例を収集して、それの分類も出していただいていますが、 ヒヤリハットの事業が現在は収集・分類から解析・立案のほうに機能が移ってきている と思います。この第三者機関に求められるものはおそらくこの解析・立案のところが相 当早い時期に求められようになろうかと思いまして、是非最初からある程度組み込んだ 形をお考えいただきたいと思います。これが1つです。  第2点は今年からスタートしました自治体における患者さんの相談窓口とこの第三者 機関の役割の違いを国民の皆様によくわかるように繰り返し説明・広報をお願いしたい と思います。かなり、国民の方々が期待していらっしゃると思いますので、そのときに 混乱がなるべく起こらないようにお願いしたいと思います。以上2点です。 ○前田委員長  どうもありがとうございました。ほかの委員の方、どうでしょうか。 ○岸委員  先ほども申しましたが、私、従前から言っていますが、このシステムのキーポイント というのは、第三者機関のありようだと思います。医療機関の方に、とにかく情報を出 していただいたその結果が、ほとんど活用されないというのを私はいちば懸念するとこ ろです。その恐れは多分にあると思います。財団法人の医療評価機構の職員と兼務とす るんですか。一応9,000万というスケールですと、おそらく人件費等で、もし専従職員だ とすると、ほとんど消えてしまうような金額ですね。身分上どうされるのか、独立とお っしゃっているのですから、そうするとスタートの数だって、専門職の方をこれだけ、 しかも一定程度以上のレベルがないと、それぞれの医療機関からの問い合わせ等にも対 応できないと思います。そうすると、実は私は9,000万というレベルでは懸念を持って いるのですが、どの程度の予算を考えていらっしゃるのか。 ○医療安全推進室長  予算は1億5,000万円で要求しています。独立と申しますのは、ほかの例えば医療機 能評価の業務とは全く切り離して、情報遮断するというような趣旨もあって、それはエ ッセンシャルな状況だろうとは思います。先ほどのスターティングの話ですが、基本的 にはやはり人件費として大きいのは、おそらく事務局のような常勤の職員の経費が大き いのですが、それ以外に非常勤の方々に相当活躍していただくというようなことは考え ていいます。そこはいまでも医療評価機構が原因評価する場合に、全部が常勤ではない というやり方がありますので、そこは十分に回るのではないかと思います。 ○辻本委員  ここで第三者機関の批判をするつもりはないのですが、日本の社会で第三者機関とい うものが一体何なのかという議論を十分踏まえた基盤がないと思います。私たち国民・ 患者側から見ると、医療機能評価機構も所栓、お医者さんの側のグループじゃないのと いうふうにしか見えていないことが現実だと思います。少しずつ機能も変わってきてい るとは伺っていますが、やはりこの問題に関しては本当に第三者というものが何なのか というところを十分に国民にわかるような形で示していただくことが重要だということ も申し上げておきたいと思います。 ○星委員  第三者機関というのを簡単に使い過ぎるので、こういう誤解をたぶん皆さん受けるの だろうと思います。これは行政ではない、これら医療に直接タッチしている人でもなな い、その3番目の人という意味だと私は理解しています。ここで問題になるのは、民間 の人ということになりますから、国家公務員や地方公務員のように告発義務がない代わ りに守秘義務もないわけでして、これは出す側にとっての安心感、契約上、どことの守 秘義務の契約を結ぶのか、あるいはどういうようにするのか、技術上難しい問題だろう と思うのです。ただ、それをきちんと担保してもらわないと、第三者機関ですよという だけで、すべてがクリアされているということではないし、先ほど言ったように第三者 機関という定義が曖昧になっている中で、そういう理解を得るのは非常に難しいと思い ます。その辺りを明確にしていただかないと、医療機関側からは、なかなか胸元を開け ないというところがあると思いますので、そこはご配慮いただきたいと思います。 ○大井委員  1つはいま星委員の言われた守秘義務に関することで、それはぜひ明確にしておいて ほしいということと、それから、もし機構にお願いしていくということになりますと、 そういう事例を集めて分析し、その上に資料1に書いてあるような6項目の中の支援と か、あるいは医療安全に関する普及・啓発というところまで踏み込むのかという、この 辺がどうなるのかということがはっきりしていません。  個々の医療機関に対する支援まで窓口を広げてしまうということには、私は若干の抵 抗がありますので、その辺は同時並行でその問題をどいうふうにするかということも検 討していただきたいと思います。 ○稲垣委員  この委員会では医療機関からの重大な事故の報告について議論したわけですが、第三 者機関の機能の中にこの表にもありますが、患者ならびに患者の家族からの情報の収集 ということも挙げられています。これは医療機関の見方と患者側の見方と異なる場合も ありますし、それは患者のほうの理解不足もあるでしょうし、あるいは説明が十分にで きていないというようなこともあるかもわかりません。  しかし、やはり専門家と違った見方もあると思いますし、あるいは専門家が気がつか ないことが患者なり、患者の家族が気がつくこともあると思います。そういう意味にお いては、そういった患者側からの情報もスムーズに取るようなことを、この第三者機関 で十分考えていただきたいと思います。 ○前田委員長  ほかに先生方、ご発言、よろしいでしょうか。事務局のほうからは、特にはよろしい ですか。先程、今後の計画は室長から説明があったのでよろしいですか。 ○事務局  はい。 ○前田委員長  それでは、これでこの委員会が委嘱されました事故情報の報告すべき範囲について、 一応のご議論をまとめさせていただきました。先ほどいただきました修正は必ずきちっ と加えるということを条件に報告をさせていただきたいと思います。この忙しい時期に 先生方も大変な要職におられる方ばかりお集まりいただいて、短期間にこのような形で まとめることができたということは、本当に先生方のご協力の賜物だと思っています。 先ほど、何人かの委員の先生方からも出ましたように、国民の期待、医療の方からのあ る意味の期待もかなり大きいものがあると思いますので、これを踏まえて、特に厚生労 働省のほうでは積極的に第三者機関も最後のご指摘も含めて、運用をきちっとやってい ただきたいと思います。今日ある程度まとまりました基準を基に前に進めていただきた いと思います。本当に長時間ありがとうございました。これで一応、会を閉じさせてい ただきます。                       (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                        電話 03-5253-1111(内線2579)