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施設居住環境の今後の方向性

 特別養護老人ホームについては、ユニットケアを制度化。

 ○ 本年4月の指定基準省令等の改正により、ユニットケアを行う施設を「小規模生活単位型」として、その運営基準、構造設備基準を設定。
 また、これに合わせて「小規模生活単位型」の介護報酬を設定。

 ユニットケアは、在宅に近い居住環境の下で、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重し、入居者相互が人間関係を築きながら日常生活を営めるよう介護を行うもの。

 ユニットケアには、在宅に近い居住環境が不可欠であることから、居室は個室(サービス提供上必要と認められる場合は、2人部屋も可)とし、居室の近くには共同生活室(少人数の家庭的な雰囲気の中で生活できる部屋)を設けることとしている。

 ○ 新設する特別養護老人ホームは、「小規模生活単位型」が基本。
 特別養護老人ホームは、これまでに約5,000施設(約34万人分)が整備されている。(4人部屋主体の従来型)
 選択の幅という意味で、従来型と「小規模生活単位型」が半分ずつになるまでは、国庫補助を受けて新設する施設は「小規模生活単位型」を基本としているが、それだけでは2015年時点で「小規模生活単位型」の利用者は全体の3割に過ぎない。(従来型の中の個室を含めても約4割。)

  
イメージ図
イメージ図

 (注1) 小規模生活単位型については、平成15年度(2003年度)における新規着工分(約14300人分)が今後2014年度まで継続すると仮定。
 (注2) 従来型については、平成15年度(2003年度)における新規着工分(約800人分)が今後2014年度まで継続すると仮定。



(参考)既存施設のユニットケア化の効果


 6人部屋の特別養護老人ホームを建て替え、個室・ユニットケアを導入した事例において、建て替え前後の入居者及びスタッフの行動の変化を調査した結果、以下のような点に変化がみられたことが分かった。
 *『介護保険施設における個室化とユニットケアに関する研究報告書』(平成13年3月・医療経済研究機構)
『普及期における介護保険施設の個室化とユニットケアに関する研究報告書』(平成14年3月・同)

1 建て替え前後の居室配置の状況

建て替え前(6床室主体) 建て替え後(ユニット部分)
建て替え前(6床室主体)の図建て替え後(ユニット部分)の図

2 入居者の生活の変化
 (1) 居場所の変化
居室内にいる時間が約3/4→約1/2に減少。
リビング・小リビングにいる時間が約2割→約4割に増加。
生活の中心がベッドからリビングへ。
(1) 居場所の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (2) 行為の変化
睡眠が約4割→約2割に減少。
コミュニケーションや食事の時間が増えるなど、姿勢が横たわりから座位へ。
(2) 行為の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (3) 食事場所の変化
 ベッド上での食事が約4割→約1割に減少。また、食堂での食事が約4割を占めていたところ、約9割がリビング・サブリビングで食事をとるようになり、生活にメリハリができた。

建て替え前
建て替え前のグラフ
↓
建て替え後
建て替え後のグラフ

 (4) 残飯の変化
 一人当たり残飯量が92g→43gに減少し、食事摂取量が増加。

 (5) 排せつの変化
 ポータブルトイレの設置数が29台→14台に減少し、排せつが改善。

3 家族の変化
 ○ 建て替え前後の面会者数を比較すると、建て替え後は増加。

3 家族の変化のグラフ


4 スタッフの行動の変化
 (1) 居場所の変化
居室にいる時間が減少し、リビングにいる時間が増加。
(1) 居場所の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (2) 行為内容の変化
身体介助中心のケアから、余暇を過ごしたり交流を図ったりといったケアへと、質的に変化。

(2) 行為内容の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (3) 運動量の変化
介護時の移動スピードを測ったところ、建て替え前と比べて、全体的に移動をしている時間が減少し、「安静状態」にある時間が増加している。
(3) 運動量の変化のグラフ

*各職員の勤務時間帯における状況を調査。



特別養護老人ホーム(従来型・小規模生活単位型)の例

○従来型

従来型の図

 ・ 入所定員70名
 ・ 1人当たり延床面積 54.67m2
 ・ 東京都(都市部)において従来型特別養護老人ホームを建設する場合、社会福祉法人に対する定員1人当たりの補助金額は650万円。

○小規模生活単位型

小規模生活単位型の図

 ・ 入居定員100名
 ・ 1人当たり延床面積 54.95m2
 ・ 東京都(都市部)において小規模生活単位型特別養護老人ホームを建設する場合、社会福祉法人に対する定員1人当たりの補助金額は450万円。



 小規模生活単位型の特別養護老人ホームの入居者はホテルコスト(居住費)を負担。
  ○ 小規模生活単位型の特別養護老人ホームでは、在宅に近い居住環境の下で、在宅での暮らしに近い日常生活を通じたケアが行われる。
→ 在宅との均衡という観点から、入居者は居住費を自己負担。

  ○ 居住費の額は、個室と共同生活室に係る建築費用、光熱水費等に相当する額。
 施設によって異なるが、一定の仮定を置いて試算すれば、1月当たり4〜5万円程度。(低所得者対策あり)

(参考)
 高齢者介護研究会報告書(平成15年6月26日)
  ○ ユニットケアは、在宅に近い居住環境で、入居者一人一人の個性や生活のリズムに沿い、また、他人との人間関係を築きながら日常生活を営めるように介護を行う手法である。その実現のためには、個性や生活のリズムを保つための個室と、他の入居者との人間関係を築くための共同生活室というハードウエアが必要であり、同時に、小グループごとに配置されたスタッフによる一人一人の個性や生活のリズムに沿ったケアの提供(生活単位と介護単位の一致)というソフトウエアが必要となる。
 ユニットケアとは、ソフトウエアとハードウエアが相俟って効果を発揮するものであり、そのどちらが欠けても効果的なケアを行うことは難しい。

  ○ 国は、特別養護老人ホームについてはユニットケア型の施設整備を原則としている。
 現時点では、既存の特別養護老人ホームのほとんどは従来型のハードウエアであるが、これらの施設においても、ハード面での制約がある中で、ソフト面でのさまざまな工夫によってこれを補い、個別ケアを実現しようとする努力が数多く行われている。このような動きについても積極的な支援が行われるべきである。


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