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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果


(注)枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。


1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成13年1月4日11:55頃、路上で倒れているところを通行人が発見し救急車を要請。救急隊が患者を搬送し、12:18に病院に到着。その後、同月7日11:08に主治医は患者を臨床的に脳死と診断。
 同日12:00頃に主治医が家族に病状を説明したところ、家族から臓器提供意思表示カードの提示があった。家族からネットワークコーディネーターの説明を受けたいとの申出があったため、同日12:58に病院は関東甲信越ブロックセンターに連絡。同日15:00に、ネットワークのコーディネーター1名及び都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行った。
 同日16:57にネットワークのコーディネーター1名及び都道府県コーディネーター1名が家族等(姉、義理の叔父、叔父の長女、叔父の次女、従兄弟、会社の上司)と面談し、主治医、看護師同席の下、脳死判定・臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。同日19:25に、コーディネーターが、家族構成等を十分に確認し、家族の総意であることを確認した上で、家族から承諾書を受理している。

【評価】
 ○ コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。

 ○ 家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定・臓器提供等の内容・手続を記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への脳死判定の説明等は適正に行われたものと評価できる。


2.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 1月7日22:54に、心臓、肺、肝臓、小腸のレシピエント候補者の選定を開始。
 小腸については、適合する移植希望者が存在しないため、移植が見送られることとなった。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同月8日1:53よりレシピエント候補者の選定を開始している。
 法的脳死判定が終了した後、同日6:40より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。
 心臓については、第1候補者の移植実施施設側が移植を受諾し、第2候補者の移植実施施設側は、候補者の「今回は見合わせたい」との意思により、移植を辞退している。
 肺については、ドナーのレントゲン等の検査データを基に、第1候補者の移植実施施設側が移植を辞退し、第2候補者の移植実施施設側が右片肺の移植を受諾。右片肺のレシピエントが決定された後、左片肺についての第1候補者の移植実施施設側がドナーのレントゲン等の検査データを基に移植を辞退している。
 肝臓については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 膵臓・左腎臓同時移植については、第1候補者の移植実施施設側がいったん移植を受諾したが、リンパ球直接交差試験の結果を理由に、移植実施施設側が移植を辞退し、第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。右腎臓については、第1候補者及び第2候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 また、感染症やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○ 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続が行われたものと評価できる。

 ○ また、ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 1月8日5:56に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより、家族に対して、左肺についてはレシピエント候補者の主治医の判断により移植が見送られることとなったこと、また小腸については適合者不在のため移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○ 法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


4.臓器の搬送
 1月8日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○ 臓器の搬送は適正に行われた。


5.臓器摘出後の家族への支援
 1月8日臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、家族の希望により1月10日まで御遺体を病院に安置することとなった旨を確認している。
 1月10日に、ネットワークのコーディネーター1名及び都道府県コーディネーター1名が、病院関係者とともに御遺体をお見送りし、移植を受けられた方々の経過が順調であることを報告している。その際、家族からは「よかった。本当によかった。是非、顔を見て行って下さい。」との発言があった。
 同月13日に、ネットワークのコーディネーターが、移植後の経過報告及び厚生労働大臣からの感謝状を家族に送付している。
 同月17日に、1月8日に膵臓腎臓同時移植を実施した大阪大学より、移植された膵臓に血栓が詰まったため膵臓を摘出した旨の報告を受けたため、直ちにネットワークのコーディネーターが、家族に、膵臓腎臓同時移植を受けられた方の膵臓に血栓ができ、やむなく膵臓を摘出したこと及び移植された腎臓は問題なく機能しており、移植を受けられた方の状態も安定していることを報告している。その際、家族からは「少し残念ですが、患者さんが元気で何よりです。弟が生きているみたいでうれしい。皆様に頑張って下さいとお伝え下さい。」との発言があった。
 5月1日に、ネットワークのコーディネーターがレシピエントの経過報告と併せ一般の方から寄せられたお見舞い金を郵送しており、同月13日に家族よりお礼の手紙をいただいている。
 6月18日に、ネットワークのコーディネーターが、レシピエントからのサンクスレターを家族に郵送しており、同月27日に、家族からレシピエントへの返事をいただいたため、ネットワークのコーディネーターがレシピエントに郵送している。

【評価】
 ○ コーディネーターにより、御遺体のお見送り、家族への報告等適切な対応が採られている。


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