第1章 救命治療、法的脳死判定等の状況の検証結果
1.初期診断・治療に関する評価
(1) | 脳神経系の管理
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(2) | 呼吸器系の管理 救急車搬送中より下顎呼吸となり、車内にて気道確保・酸素投与が行われた。来院時血液ガス所見は、PaO2:493mmHg、PaCO2:49mmHg、pH:7.29で、直ちに気管内挿管が行われ、鎮静薬(ミダダゾラム、プロポフォール)使用下に人工呼吸器(FiO2:1.0)による調節呼吸が開始された。その後、PaCO2は29~49mmHg、PaO2は100mmHg 以上と適正に保たれていた。また、肺炎等の呼吸器感染症予防のため、CEZ(セファゾリン)も行われており、呼吸器系の管理は妥当である。 |
(3) | 循環器系の管理 来院時血圧192/140mmHgと高血圧状態であり、これに対しペルジピン持続静注がなされた。集中治療室入室後も循環動態が不安定で、血圧低下に対しドパミンなどのカテコラミンが投与された。しかし、1月5日より中枢性尿崩症と考えられる尿量増加による脱水、血圧低下が著明となったため、脳圧下降剤(マンニトール)を中止し、循環血液量の補正、抗利尿ホルモン(ピトレッシン)投与、及びカテコラミンの増量がはかられ、循環動態は安定した。これらの対応はいずれも妥当と考えらる。 |
(4) | 水電解質の管理 来院時、低K血症2.7mEq/lが認められたが、K補充により血清K値は適正に維持されている。来院時の血清K値の低下は、重症救急患者にみられる特有なものと推測される。 1月5日頃から重症脳障害に合併する中枢性尿崩症と思われる尿量増加(>300ml/h)を認めた。それに伴い、中心静脈圧は低値(0mmHg)を示し、血圧低下、脱水に伴う高Na血症(血清Na値:164 mEq/l)を認めた。それに対しては、抗利尿ホルモン(ピトレッシン0.2~0.5 IU)の投与、輸液量増量、カテコラミン投与が行われ、血圧低下、脱水状態が改善されている。これらは極めて妥当な治療と思われる。 |