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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果


(注)枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。


1.初動体制
 頭痛を主訴として他院を受診し、CT検査にてくも膜下出血が疑われたために、平成12年10月23日に来院。11月3日、深昏睡、呼吸停止等の状態となったため、主治医が家族に病状を説明したところ、家族から臓器提供意思表示カードの提示があった。
 病院は、同日19:25に臨床的に脳死と診断。家族からネットワークのコーディネーターによる臓器提供に関する説明を受けたいとの申出があったため、同日19:44に病院は北海道ブロックセンターに連絡。同月4日2:45に、ネットワークのコーディネーター2名が病院に到着し病院と協議したが、鎮静剤の使用による法的脳死判定への影響を勘案し、同鎮静剤の影響の消失を待って再度臨床的な脳死の診断をやり直すこととなった。このため、コーディネーターは病院を退去。
 同日9:30に主治医は患者を臨床的に脳死と診断。病院は、家族の申出を踏まえ、ネットワークのコーディネーターに家族への臓器提供に関する説明を依頼。これを受けて、ネットワークのコーディネーター2名は、9:45に病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行った。

【評価】
 ○ ネットワークは、病院からブロックセンターに連絡があった後、迅速に対応を開始しコーディネーターを同施設に派遣している。

 ○ また、コーディネーターは、病院に到着後、院内体制等の確認や一次評価等を適切に行っている。


2.家族への脳死判定等の説明及び承諾
 11月4日10:08にネットワークのコーディネーター2名が家族(夫、次男、長女、従姉妹)と面談し、担当医同席の下、脳死判定・臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明。コーディネーターは、家族構成等を十分に確認し、同日11:15に、夫が脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書に署名捺印し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○ コーディネーターは、脳死判定・臓器提供等の内容・手続を記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理しているなど、コーディネーターの家族への脳死判定の説明等は適正に行われたものと評価できる。


3.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 11月4日13:48に心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。肝臓については、レシピエント選定開始後に、選定の対象としていなかった新規の肝臓移植希望者の登録が確認されたため、再度同日20:28にレシピエント候補者の選定を行い、また、腎臓については、HLAの検査後、23:59にレシピエント候補者の選定を開始している。
 同日23:23に、心臓、肝臓、肺の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。心臓については、第1候補者から第6候補者まで意思確認が行われたが、心機能の低下等により移植実施施設側は移植を辞退し、ネットワークはあっせんを中止。
 また、肺については、第1候補者から第5候補者まで意思確認が行われたが、感染症等により移植実施施設側は移植を辞退し、ネットワークはあっせんを中止。肝臓については、第1候補者から第5候補者までの移植実施施設側は昇圧剤の多量投与等を理由に移植を辞退し、第6候補者の移植実施施設側が移植を受諾。
 同月5日0:20に、腎臓のレシピエント候補者の意思確認を開始し、第1候補者の移植実施施設側が移植を受諾している。
 また、感染症やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、問題はないことが確認されている。特に肝臓については、開腹時に生検を行い、また、搬送後、移植実施施設においても生検が行われている。

【評価】
 ○ 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続が行われたものと評価できる。

 ○ また、ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


4.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 11月4日22:08に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。
 その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。同月5日には、ネットワークのコーディネーターは家族に心臓及び肺の提供を断念せざるを得ないことを報告している。
 なお、肝臓については、移植実施施設である京都大学医学部附属病院の摘出を待った場合、患者の循環動態の維持が困難であること等により、北海道大学医学部附属病院に摘出を依頼している。

【評価】
 ○ 法的脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等に特に問題はなかった。


5.臓器の搬送
 11月4日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○ 臓器の搬送は適正に行われた。


6.臓器摘出後の家族への支援
 11月7日にネットワークのコーディネーター2名で御霊前にお参りし、移植後の経過を報告するとともに、謝辞を述べている。その際、家族からは「経過が順調なのは何よりです。私たちは妻の思いを叶えただけですから。」との発言があった。また、その他に、「本人の意思と家族の意思があれば摘出はすばやくするべきだ。2回目の脳死判定の後、すぐに摘出できれば心臓も提供できた可能性があるのではないか。制度の改善を検討してもらいたい。」等の発言があった。何か問題となっていることがないかどうかを確認したところ、特に問題はないとのことであった。
 同月20日には、ネットワークのコーディネーターが電話をし、肝臓の移植を受けた患者が亡くなった旨を家族に伝えている。
 同月21日、ネットワークのコーディネーター3名が家族に厚生大臣感謝状を手渡し、再度肝臓の移植を受けた患者が亡くなった旨を報告している。その際、家族からは、ドナーの生前の様子や趣味等の話があった。
 12月18日、ネットワークのコーディネーター3名が家族を訪問。北海道ブロックセンターのコーディネーターが同ブロックセンターの金銭を横領していたことが発覚し、信頼を裏切ることとなったことを陳謝している。

【評価】
 ○ コーディネーターにより、移植後のレシピエントの経過報告など適切な対応が採られている。


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