03/11/18 第1回非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方 検討会議事録   第1回非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会                       日時 平成15年11月18日(火)                          10:00〜                       場所 厚生労働省省議室 ○指導課長(渡延)  定刻になりましたので、ただいまより「第1回非医療従事者による自動体外式除細動 器(AED)の使用のあり方検討会」を開催します。私は厚生労働省医政局指導課長の 渡延です。委員の皆様方には本日、大変お忙しい中をご出席いただき、まことにありが とうございます。開催に当たり、厚生労働省、岩尾医政局長からご挨拶申し上げます。 ○医政局長(岩尾)  おはようございます。本日は委員の皆様、「非医療従事者による自動体外式除細動器 (AED)の使用のあり方の検討会」、委員のご就任を快諾いただきありがとうござい ます。  若干長くなりますが、この検討会の開催経緯などについてお話させていただきたいと 思います。ご存じのように、救命救急患者の救命率のさらなる向上を図るということで は、救急現場、搬送途上、救急医療機関、それぞれの場で救命措置というものが救命に 携わる関係者の緊密な連携で有機的関連を持ち、効果的に行われるということが何より 寛容であると認識しています。  厚生労働省では比較的軽症な外来診療を受け持つ初期救急、入院・手術を要する患者 等を受け持つ二次救急、そして多発外傷等の重篤患者を受け持つ三次救急という、段階 的・体系的な救急医療体制の確保に向けて、地域の実情に応じ、関係の皆様方の協議・ 調整をいただきながら推進しているところです。  救急医療に従事する医師の確保も課題となっています。これに関連して、来年度から 医師の臨床研修の必修化により、すべての研修医が救急部門での研修を受けることにな ります。こういうことを通じて、救急医療のさらなる充実に寄与していきたいと考えて いるところです。  一方、救急搬送現場においては、今年の4月から救命救急士が医師の具体的指示を待 つことなく、包括的指示下において除細動器を使用することが認められたところです。 こうした業務拡大というのは、既に一定の成果をあげていると聞いています。さらに事 後検証を重ねつつ、来年7月から予定されている一定の条件を満たした救命救急士によ る気管挿管の実施に向けても、現在関係省庁とも連携の上、必要な準備に取り組んでい るところです。  このように救急医療機関、搬送途上における充実を図ることに加え、救急のワークの 出発点とも言うべき救急現場において、現在救急車が到着するまで6分程度かかると言 われています。この間、倒れた方の近くに居合わせた人、いわゆる「バイスタンダー」 と呼んでいますが、これによって心肺蘇生等、救命手当が施された場合、その後の生存 率に好影響を及ぼすことが既に明らかになっているところです。  特に救急患者が心肺停止状態に陥った場合、一般市民をはじめとする非医療従事者が 自動体外式除細動器(AED)を使用することについては、昨今の医療機器開発の進展 により、心室細動等に対して有効とされている電気的除細動を安全に行うことが可能に なってまいりました。既に欧米ではその普及が進み、一定の成果をあげていると聞いて います。厚生労働省としては構造改革特区に関し、このご提案があったことを受け、今 年の9月に非医療従事者によるAEDの使用について、一定の条件を満たせば医師法違 反等にならない旨を明らかにする方針を決定したところです。  このような状況を踏まえ、非医療従事者が安全かつ有効にAEDを使用するための条 件などについて検討いただくとともに、国民各層への普及啓発の推進方策等について議 論を進めていただきたいと思い、関係の医学専門家をはじめ、心疾患患者の救命救急の 問題に関わる関係団体、あるいは国民各層を代表する有識者の皆様方に本日ご参集いた だいたところです。委員の皆様においては、いまご説明しました当検討会の趣旨をご理 解いただき、高い見地から、また広汎な角度からご議論を賜りますようよろしくお願い 申し上げ、私のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○指導課長  最初に委員のご紹介をいたします。お名前を50音順にご紹介申し上げます。日本航空 健康管理室主席医師の大越裕文委員です。読売新聞東京本社論説委員、五阿弥宏安委員 です。帝京大学医学部救急医学教授、小林国男委員です。日本救急医学会理事長、島崎 修次委員です。横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター高度救命救急センター教 授、杉山貢委員です。東京消防庁救急部長、鈴木正弘委員です。前九州大学医学部循環 器科教授、竹下彰委員です。国立循環器病センター緊急部長、野々木宏委員です。国立 療養所西甲府病院院長、野見山延委員です。日本医師会常任理事、羽生田俊委員です。 日本看護協会副会長、古橋美智子委員です。兵庫医科大学救急・災害医学教授、丸川征 四郎委員です。神戸大学大学院法学研究科教授、丸山英二委員です。日本赤十字社事業 局救護・福祉部健康安全課長、三井俊介委員です。以上、14名の方々に委員をお願いし ています。本日は全員ご出席です。  行政関係機関からのオブザーバーとして、警察庁長官官房総務課、同人事課、防衛庁 運用局衛生官、総務省消防庁救急救助課、文部科学省スポーツ青少年局学校健康教育 課、国土交通省海事局船員労働環境課、海上保安庁警備救難部救難課より、それぞれ担 当官が出席していますのでご紹介申し上げます。  次に、事務局の職員をご紹介申し上げます。医政局、医事課長の上田です。医政局指 導課、医療計画推進指導官の北島です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。  続いて、当検討会の座長についてお諮りします。座長には救急医療がご専門、日本救 急医学会理事長の島崎委員にお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。                  (異議なし) ○指導課長  ご賛同いただきましたので、島崎委員に座長をお願いしたいと思います。島崎座長、 座長席にお移りいただき、以後の進行をお願いいたします。  なお、報道の方にお願いいたします。カメラの頭撮りは以上とさせていただきます。 今後の写真等の撮影についてはご遠慮願います。 ○島崎座長  おはようございます。このたび、「非医療従事者による自動体外式除細動器の使用の あり方検討会」の座長をおおせつかりました島崎です。委員の皆様のご協力で、検討会 の円滑な運営に努めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。  先ほど、岩尾医政局長からお話がありましたように、AEDは救命の鎖(Chain of Survival)のいちばん最初の部分ということで、非常に重要な点であろうかと思いま す。今後ともよろしくお願いいたします。  予めお断り申し上げておきます。この委員会においては公開で行うことになっていま す。議事録についても、事務局でまとめたものを各委員にお目通しいただき、厚生労働 省のホームページで公表することにしたいと思います。この点についてはご了解をいた だきたいと思います。また、オブザーバーの方については予め申し出があった場合を除 いて、座長からの指名があった場合に限り発言を認めることにしたいと思いますので、 そのつもりでお願いしたいと思います。以上、挨拶に代えさせていただきたいと思いま す。よろしくお願い申し上げます。  早速、本日の議題に入ります。事務局より提出されている資料についてご確認をお願 いしたいと思います。事務局の方、よろしくお願いいたします。 ○指導課長補佐(佐藤)  お手元の「議事次第」のあとに「配付資料一覧」というものがあります。こちらをも とに確認をしていきます。  まず、資料1に関しては1−1、1−2、1−3と3枚あります。資料2ですが、参 考資料として合計6枚です。参考資料の1、2、参考資料3については3−1、3−2 というように分かれています。あとは参考資料4と5です。  それに加え、本日ご発表の先生方の発表資料が1、2、3とあります。合計12の資料 が手元にあろうかと思います。過不足等ありましたらご連絡ください。以上です。 ○島崎座長  ありがとうございました。資料はありますでしょうか、特に問題ないでしょうか。  では、議題1に入りたいと思います。資料の説明、本検討会の開催の趣旨、今後の検 討の進め方等について事務局より説明していただきたいと思います。事務局の方、よろ しくお願いします。 ○指導課長補佐  お手元の資料No.1−1からご覧ください。「『非医療従事者による自動体外式除細 動器の使用のあり方検討会』の設置について」とあります。  まず「目的」ですが、がん、脳血管疾患とならび、我が国の三大死因の1つである心 疾患対策は国民の保健衛生の向上にとって重要な課題であり、これまで「健康日本21」 における予防活動等への取り組みや、心筋梗塞等の急性期心疾患等に対し、「メディカ ルフロンティア戦略」におけるドクターヘリの活用など、救急医療の充実に努めてきた ところです。  心疾患のうち、心室細動等に対し有効とされている電気的除細動については、これま で医師をはじめとする医療従事者が専ら行うこととされ、非医療従事者のAEDの使用 については、航空機内で医師が不在の場合の客室乗務員といった緊急やむを得ない場合 に限り認められてきたところです。  今般、構造改革特区において除細動器の開発の進展等に照らし、欧米諸国の例も参考 に、非医師によるAEDの使用を認めるべきという提案が寄せられたことを受け、政府 として諸条件、4条件あります。(1)、医師等を探す努力をしても見つからない等、医 師等による速やかな対応を得ることが困難である。(2)、使用者が、対象者の意識、呼 吸がないことを確認している。(3)、使用者がAED使用に必要な講習を受けている。 (4)、使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ている。こういった条件 を満たしている場合等において使用することは、一般的に医師法第17条違反とならない と考えることを明らかにするとの方針を決定し、条件付きで非医療従事者によるAED の使用を認めるというように方向性を出したところです。  このような状況を踏まえ、医学専門家を始め、心疾患患者の救急救命の問題に関わる 関係団体の代表を含む有識者からなる検討会を設置し、救急蘇生から見た非医療従事者 によるAED使用の条件のあり方、国民の理解を促進し、普及啓発を図る方策等につい ての検討を行う、といったことが目的になっています。  検討会の位置づけとしては、医政局長が参集を委嘱する懇談会といった形です。検討 スケジュールですが、特区提案のほうが平成16年度中に措置をするということになって います関係から、平成16年度前半を目途に結論を得ると考えているところです。座長か らもありましたように、この会議については原則として公開、会議の事務局等について は医政局で担当するといったことになっています。  資料1−2については委員の名簿ですので、ご参考としていただければと思います。 次に資料1−3、今後の「検討スケジュール(案)」です。平成16年度前半までの検討 といったことに向け、概ね第4回ぐらいの全体での検討を考えています。1回目につい てはヒアリングと全般的なお話、第2回はもう1度ヒアリングとこの検討会で整理すべ き論点について検討を行うというものです。第3回に報告書の骨子案、最終回でそれを 取りまとめる。概ね、こういった検討スケジュールで検討を考えています。  次に参考資料(1)、(2)については、医政局医事課からご説明させていただきま す。 ○医事課長補佐(岡部)  参考資料(1)と参考資料(2)についてご説明申し上げます。参考資料(1)につ いては、平成15年9月12日に構造改革特別区域推進本部において決定された「構造改革 特区の第3次提案に対する政府の対応方針」の抜粋です。構造改革特区の提案として、 慶應義塾大学の三田村教授、このあとAEDの効果についてご説明いただく河村先生な どから、非医師によるAEDの使用の容認に関するご提案をいただいたところです。  これに関して、AEDを例えば次の場合等において使用することは、一般的に医師法 第17条違反とならないものと考えるということを明らかにする、という点を政府の方針 としてお示ししたものです。この方針の考え方についてご説明申し上げます。除細動器 は心室細動や無脈性心室頻拍に対し、強い電流を患者の心臓に流して治療する機械で す。その使用の際、心臓の状態の判断や電極を装着する部位等が適切でない場合には、 患者の生命・身体に危害を及ぼす恐れがあります。そのため、基本的には医師、または 医師の指示を受けた看護職員や救急救命士が使用すべきであると考えています。  一方、AEDについては、医学的な判断のほとんどは機械が自動的に行っています。 使用者が一定の知識・技能を身につけてさえいれば、患者の状態を悪化させる恐れは基 本的にないという特徴があると承知しています。「除細動の実施は早ければ早いほど救 命率が高い」というAEDの特徴、それから公衆衛生の維持向上という医師法の保護法 益などから考えると、医師等による速やかな対応を得ることが困難である等の一定の条 件を満たす場合には、緊急やむを得ない措置として、医師等以外の者がAEDを使用す ることは一般的に違法性が阻却され、医師法違反とならないと考えられるのではないか と考えた次第です。  厚生労働省としては、非医療従事者によるAEDの使用について、少なくともこのよ うな条件であれば非医療従事者が安全かつ有効にAEDを使用することができ、緊急や むを得ない措置として医師法違反とならないのではないかという、一定の条件を示すこ ととしたものです。これにより、非医療従事者が医師法違反となる恐れを気にせずにA EDを使用することが可能となり、救急患者の救命率向上に役立つのではないかと考え たところです。  本検討会においては、非医療従事者が安全かつ有効にAEDを使用するための条件に ついてご検討いただきたいと考えています。なお、(1)から(4)の条件については 「例えば」ということで例示したもので、もし必要であれば条件の加除もあり得るのか なと考えています。  次に、参考資料(2)についてご説明申し上げます。参考資料(2)は平成13年12 月、定期航空協会理事長と私どもの医事課長との間で疑義照会とそれに対する回答とい う形で交わされたものです。まず1枚目、「航空機に搭載する除細動器の使用について (回答)」とあります。ここで医事課長から、「貴見のとおり」という回答を示してい ます。  回答の前提となるものが次の頁です。定期航空協会理事長名としての質問ということ になっています。質問の具体的内容については「記」以下をご覧ください。航空機内で 乗客が心停止状態に陥った場合において、除細動器による除細動を行う必要が生じる場 面が想定される。この行為は医師、または医師の指示を受けた看護職員、救急救命士に より行えることが原則であると解されるが、ドクターコールを実施してもなお、医師等 による速やかな対応を得ることが困難な場合等においては、客室乗務員が緊急やむを得 ない措置として当該行為を行っても、医師法違反とならないと考えるがどうか。これに 対して、先ほどの医事課長の回答において、そのとおりと回答したものです。  この考え方なのですが、当時の資料によると以下のとおりです。医師法の第17条は 「医師でなければ医業をなしてはならない」と規定しています。この「医業」とは医行 為、つまり当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断および技術を持ってするのでな ければ、人体に危害を及ぼす、または危害を及ぼす恐れのある行為を反復継続する意思 を持って行うこと、と考えています。  除細動器の使用は医行為に該当すると思われます。このケースでは航空機内という限 定された状況において、医師等による速やかな対応が困難であるという場合において、 緊急やむを得ない措置として行われるものであって、客室乗務員は反複継続する意思が ないと整理しています。その際、過去に航空機内で起きた心停止の件数、客室乗務員の 乗務回数などから、1人の客室乗務員が乗客の心停止に遭遇する可能性を百数十年に1 回と推計し、さらに、そのうちドクターコールにより7割程度医師等の協力が得られる ことから、その可能性はより低くなるだろうと結論づけられます。そのため、客室乗務 員による緊急措置は反復継続の意思を持ち得ないという結論を出したものです。  このように考えて、航空機内においては客室乗務員によって行われる緊急やむを得な い除細動器の使用について、医業に該当しないということで、医師法違反とならないと 解釈し、この回答を発出した次第です。参考資料(2)については以上です。 ○指導課長補佐  参考資料(3−1)、(3−2)をご覧ください。現在、さまざまな団体が救急蘇生 法ということで、一般の方々に対して普及啓発等を行っているところです。その中で、 最も大きな団体のうちの2つ、日本赤十字社と総務省消防庁で行っている講習の内容に ついてのご説明です。  参考資料(3−1)をご覧ください。まず日赤のほう、「日赤における救急法講習会 の現状」です。日赤では満15歳以上の方を条件に、「救急法一般講習」と「救急法救急 員養成講習」、いわゆるインストラクターの方ですが、こういった講習を行っていま す。救急法の一般講習については約5時間、その中で学科が60分、実技が240分、一般 の方々に対してこういった講習を行っています。  一方、救急法救急員養成講習については、こちらの1から8のような講習について、 総計18時間ということです。これも学科と実技、270分と810分といった内容で講習を 行っているところです。  次の頁、受講者数ですが、「一般講習」、一般の方々に対する講習に関しては年間お よそ30万人といった方々を対象に行っているところです。  次の頁は救急員、いわゆるインストラクターの養成です。概ね、年間4万人弱といっ た養成を行っている現状です。  参考資料(3−2)は「消防における応急手当普及等の現状」です。救急隊が到着す るまでの全国平均時間は6.3分であり、この間に救急現場に居合わせた方により、応急 手当が実施されることについては救命効果の向上につながるということです。年間、救 急隊が搬送した心肺停止傷病者数は概ね9万人です。そのうち約3分の1弱、2万5,000 人程度の方が家族等により応急手当が実施されている。一方、3分の2強の方について は応急手当が実施されていないということです。その下段にありますけれども、応急手 当が実施された場合と実施されていない場合で、生存率に約1%程度の差が生じている といった現状です。  2頁、消防機関でも現在、一般の方々を対象に講習を行っており、これが2つのコー スに分かれています。「普通救命講習」という半日、3時間のものと「上級救命講習」 という、8時間のコースです。これらのコースについて、平成14年中に100万人を超え たといった講習を行っています。  3頁目にその詳細がございます。普通救命講習については3時間コース、平成14年度 で97万人ということです。一方、上級救命講習については5万8,000人といったことに なっています。総人口に占める割合として、約123人に1人の方が講習を受けられてい るという現状です。  次に、参考資料(4)をお開きください。こちらは「AHA国際ガイドライン2000」 におけるAEDの使用手順です。「AHA心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイ ドライン 日本語版」から抜粋したものです。先ほどから申し上げているように、まず こちらのAEDを使用するための条件として、対象者の意識、呼吸がないといった点を 確認するといったことがあります。  実際、どういう確認を行うのかということですが、傷病者を見つけた場合、まず反応 なしの確認を行うことから始まり、気道確保、呼吸の確認を行い、自発呼吸があるのか ないのかを確認します。そのあと、2回の人工呼吸を行い、循環の有無を確認すると いった流れになっています。本日、のちほど実演もあります。そういった中で、また詳 しくこの点について触れられるかと思います。  次に参考資料の(5)です。こちらは「除細動器の分類及びAEDとして利用可能と 考えられる機器について」というものです。まず除細動器の分類です。こちらにあるよ うに手動式の除細動器、体内式の除細動器、体外式の除細動器といった3分類に分かれ ていました。我々でも救急救命士の包括的指示下による除細動器の検討の中で、自動体 外式除細動器というものを半自動式のものと、いわゆるAED、PADとして使用され ている機器という2種類に分けています。これらの違いで言うと、半自動式のものにつ いては解析のタイミングを自分で測ることができる。手動操作が可能なものについて 「半自動式」と呼んでいます。  一方、PADとして使用されている機器というのは軽量、コンパクト、モニター画面 なし等、基本的には手動操作ができないものをPADとして使用されている機器という 整理をしています。  今回、一般の方々の使用ということで検討される機器については大枠の四角の中の右 側のもので考えています。AEDの右側のもので、いまどういうものが薬事法上承認さ れているのか。次の頁、「AEDとして利用可能と考えられている機器一覧」をご覧く ださい。これには未整理の部分もあり、100%確定ということではありませんが、大体 こういったものが該当してくるのではないかといったことでの提示です。  現在、6社がAEDとして利用可能と考えられている機器の販売を行っています。す べて輸入製品で、単相性が3つ、二相性が3つといったものです。6社とも輸入製品と いうことですが、上から2番目と3番目については元をたどると同じ製品と聞いていま す。あと、上から4番目、上から5番目の二相性のものについても、元をたどれば一緒 の製品と聞いています。そういう点で、承認されているのは6社ですけれども、実際の 製品としては4つです。  なお、ここに挙げたものについては、現在承認されている体外式除細動器のうち、手 動への切り替え機能がないものといったことで挙げています。現在、薬事法上、AED の区分というものはありませんが、平成17年度から区分を設け、承認を行うと聞いてい るところです。  以上、大変長々とご説明申し上げました。 ○島崎座長  ありがとうございました。ただいま配付資料1−3まで、進め方、スケジュールも含 めてお話いただきました。そのほか、参考資料の(1)から(5)までをご説明いただ きました。質問等はありますか。 ○三井委員  質問ではないのですが、事務局から、日本赤十字社がいまやっている講習会の制度に ついてご説明いただきました。1つだけ訂正をさせていただきたいと思います。  参考資料(3−1)の1枚目、(2)に「救急法救急員養成講習」のことが出ていて、 18時間で行いますとあります。人数で言うと毎年4万人ぐらい参加してもらって養成し ているわけです。これは「インストラクター」というご説明がありましたが、インスト ラクターではなくて、現場で適切なバイスタンダーになり得る知識と技術を手に入れて もらう、一般市民を対象にした講習会です。ですから、ある一定の力を持ったなという ところで「救急員」という日赤の認定をさせていただいているというものです。 ○島崎座長  そのような理解だそうですので、事務局の方よろしくお願いします。ほかにいかがで しょうか、よろしいですか。検討の事項、ならびに進め方等については以上といたしま す。  先ほど言ったように本日は第1回ですので、AEDの認識を共有していただくという ことで、実演を含めて有識者の先生方をお招きしています。順次発表をお願いし、その 上でフリー・ディスカッションを行いたいと思います。最初に、「AEDによる救命率 の効果とその市民普及啓発について」ということで、兵庫県立健康センターの河村先生 から発表をいただく予定にしています。よろしくお願いいたします。 ○河村先生  今日は発表の機会を与えていただき、ありがとうございます。心肺蘇生法とAEDと いうのは極めて日本的ではない。それが、私が過去16年間活動して感じることです。ま してや、AEDになるとまさに日本が問われているような、そういう見方をしないとい けないということを申し上げたいと思います。  16年前、心臓病に対する心肺蘇生を始めました。その当時はもちろん救命士はおりま せんし、救急車を呼べば助かるという時代でした。その時代に、心肺蘇生を入れるどう いうやり方をやったかというと、私の大義名分は救命率を上げることでは全くなくて、 お互いの生命を守る社会づくりを大義名分にして、心肺蘇生法を使って生命の教育を行 う。その動機づけは「あなたは愛する人を救えますか」、これをもって心肺蘇生を始め たわけです。結果的に救命率が上がればいいと思っていました。  ちなみに、私は東京女子医大で心臓外科医を16年やっていました。その当時、不整脈 外科を専攻していましたが、病院にいて患者の方が来ないということに全然気がつかな かったのです。特に不整脈は、患者の方が助かってから私が病院で治療していました。 日本というのは心臓病は非常に少ない、だから外国に行こうというぐらいに病院内に凝 り固まって、外の世界を全く知らない人間だったと思います。  ちなみに心筋梗塞というのは、入院してCCU治療すれば、いまの成績では大体8% 前後の死亡率ということです。発症して、救急車で運ばれる前に大体40%の人が亡くな っている。心筋梗塞そのものを見ると、大体半分の人が発症したら亡くなるということ でした。  日本に帰って三次救命救急センター長として、運ばれる前のことをもっとしなければ いけないということで救急をやり始めました。でも、よくよく考えて救急をやっている と、救急車で来る人以前に、もっと危険な、生活の危険因子というものがあって、それ を治せば疾患そのものが防げるのではないか。そこで、救急からいまの健康センター、 予防医学に入ったという次第です。健康というものを川の流れに例えれば、病気をごみ と言ったら失礼ですが、ごみを下流で拾うより、上流に行って「ごみを捨てるな」と 言ったほうがいい。そういうことに自分の生きがいを見い出したというわけです。  私にそのことを気づかせてくれたのが、1986年、アメリカに行っていたときにあった のですが、フロー・ハイマンという選手が試合中に倒れたニュースでした。このニュー スの異常性というか、日本人としてこれを見たのが、私の心肺蘇生の原点なのです。 (パワーポイント開始) ☆パワーポイント  これは1988年、日立とダイエーのバレーボールの試合です。日立の88連勝を阻止した という。7番がハイマン選手です。  ここからABCニュースで流れました。手術を待っているとき、コーヒーを飲みなが らこれを見ていたら、このニュースが飛び込んできたわけです。私は日本のニュースと いうことで非常に喜んでいたのですが、これを見た外国人が「なぜ日本人は心肺蘇生し ないのか」、初めて外国人から聞きました。なぜ試合中に、この人が死んでいるか生き ているかわかるのかといったとき、「話にならない」といって出ていったのが非常に悔 やしかった。  よくよく見てみると非常に長いラリーが続いている。「なぜタイムにしないのか」、 ほかのナースが言います。「日本の監督やコーチはなぜ心肺蘇生を知らないのか」、そ ういうことを次々に言うので、なぜ外国の人たちはこのニュースを見て、そのようなこ とが次々と口の中から出てくるのかが非常に不可解であり、そのとき初めて自分が日本 人であることを知ったわけです。  これが緊急性でないのは、この担架を運んできた彼など試合を見ているのです。だか ら、いくらこれが重症でなど言い訳しようが、それはもう理由にならないというわけで す。  日本に帰って3年後、ハイマン選手のそばにいた人に電話で聞きました。そうした ら、彼女が言ったのは、いままでエースアタッカーであるハイマン選手が控えのベンチ に座って急に倒れた。「顔面蒼白」、その次に彼女が言ったのは「意識がなかった」 「意識がなかったので、貧血と思って、私は控えの部屋につれて行った。まさか、死ん でいるとは思いませんでした」と言っていました。ここであとからのキーワード、「意 識がなかった」という言葉が入ってきます。  実はなぜ心臓外科を辞めて、救急のほうに入ったかということです。なぜアメリカの 人たち100人が100人とも、このニュースが異常であることがわかったかというと、中学 1年生、ミドルスクールの1年生で、保健体育の授業で心肺蘇生が教えられている。何 のことはない。目の前で人が倒れた、意識の確認をする。意識がなければすぐさま、 「救急車を呼べ」ということを、誰に相談することもなく「呼びなさい」ということを 教えられている。これなら日本でもできる「生命の教育」ということで、これを日本に 帰って教育の世界で教えることが本当の医療だと感じました。救急車で待つことでも何 でもない。そのことを決意して、1987年から「あなたは愛する人を救えますか」という ことで、姫路循環器病センターのセンター長として、外に見える顔として外へ出始めた わけです。  平成2年からは県民運動を立ち上げてくれました。540万県民の2割の人を目標に、 100万人を5年間で救うことを目標にしました。いろいろなやり方があって、倒れた人 に「あなたは何流でやりますか」という時代でした。あなたは未生流、小笠原流と聞い てからやらないと、それぞれ「自分はこのようなやり方」ということでやってしまう。 そうではない、心肺蘇生は世界で統一のボディー・ランゲージなのだ。100人が100人と も同じことをやることが、もし誰かが目の前で倒れたとき、「これはおかしい」という ことを言えるのだということで県民運動にしたわけです。そのころ、人に触ってはいけ ないと言っていたのですが、県民運動として「人に触ろう」と提案したわけです。100 万人ということで大ボラを吹いたように言われたのですが、結局、平成2年から5年計 画で100万人ということで、108万人を達成しました。  特に私が言いたいのは学校関係の受講者数です。いちばん力を入れているのは教育で す。47都道府県ありますけれども、この救急の分野で教育委員会が関与しているところ は兵庫県だけなのです。消防局、医師会といった病院関係はみんな、救命率を上げるこ とばかりをオリンピックみたいに争っていて、いろいろな不祥事件も起こります。すべ てがオリンピック・ゲームなのですが、違うのです。その前に、教育委員会が生徒の前 で「生命とは何ぞや」、心肺蘇生の行為で生命を教えるという教育の現場を非常に大事 にしたのがこの緑色の部分です。  平成5年から全県立の高等学校の生徒に、心肺蘇生を教えるような体制を作ったのが 兵庫県の県民運動だと言っていい。特に、高等学校の養護教諭、体育教諭の全員を全部 私が教えました。「兵庫県で河村を知らない人はもぐり」と言われたのはそういう意味 です。  心肺蘇生を続けている16年の経過を見て、未だに変わらないのは、日本人の要因とい うのがあります。他人とのかかわりを避けようとする、生命は自ら救うものではない、 救急車を呼べばいい、それから誰もが心肺蘇生を知らないという安心感。でも、これは どうにかできます。いちばんどうにもできないのは、他人の生命の危険を感じない。つ まり、意識がない、貧血だと思ったから控えの部屋に連れて行った。このようなことで AEDなどあり得ない。生命の危険を感じない日本人ということを未だに思います。  それから、大声で助けを呼べる勇気がない。私はいま1,500回ぐらい講演しています が、400校ほど訪れている学校というのは生命の危険というのは危機を知らせる。声が 要るということで、「大丈夫ですか。意識がない。誰かーっ」。  どの生徒よりも大きな声で叫べと。そして、身の回りに自分の友だちがいたら、「こ の人の生命を救ってくれ」と大声で叫べる人こそ、21世紀を背負う人間だということを 言っているわけです。  心肺蘇生のやり方もあります、ちょっと見ていただいたらわかります。  教育の世界でもやはりきちんと教えるべきだと思います。それを省略していいという ことは言ってもいいけれども、きちんと教えてあげて、いざというときは省略していい けれども、最初から省略したことを教えるべきではないというのは未だに変わっていな い信条です。 ☆パワーポイント  大丈夫ですか、大丈夫ですか。もし……そうだったら、……。名前を呼ぶというのは それでしょう。……、声は……。……場合は……。「大変だ、誰か来てください」と言 うわけです。「救急車をお願いします」とそこで叫んでください。これがその人が倒れ たという、生命が危ないという危機を知らせる最初の言葉なのです。そのときに声を出 して、「この人の生命を救ってください」という、声を出す勇気が皆さん方に求められ ています。 ☆パワーポイント  大丈夫ですか、大丈夫ですか、誰か。助けてください、救急車をお願いします。  これは木佐彩子さんです、石井投手の奥さんです。心肺蘇生は何も厳粛にやらなくて もいい。面白くやって、その代わり真剣にやればいい。 ☆パワーポイント  ……、……。そうそう、行った、行った。はい、よっしゃ。うまい、うまい。よっ しゃ、そのまま身体を起こして。脈だから、これか。 ☆パワーポイント  ああ、脈がない。……ました。  これだけややこしいことを一般の市民の皆さんに教えなくても済む、という意見もあ ります。だけど、インストラクターとしてやる場合はちゃんと覚えて、そして省略すれ ばいい。教育の現場まで省略する必要はない、というのは先ほどから申し上げたことで す。 ☆パワーポイント  1、2、3、4。 ☆パワーポイント  5、6、7、8。 ☆パワーポイント  9、10、11、12、13、14、15。 ☆パワーポイント  はい、人工呼吸。 ☆パワーポイント  ああ、もうないんだ。 ☆パワーポイント  本人が嫌がるから。そうそう、うまい。  やはり、講習というのは動機づけをしっかりやるための手段であって、その意味では こうして生命を行為で教えることが必要だと思います。 ☆パワーポイント  1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15。 ☆パワーポイント  はい、人工呼吸。気道を確保して。はい、……。  これは双葉中学、1人の心臓病の子がいました。心停止になって、学校がみんなで討 論をしました。この子を救うにはどうするか。心臓突然死の原因の1つであるQT延長 症群の子なのですが、全員が心肺蘇生をした学校でした。それがいつしか伝統になり、 3年生が1年生のオリエンテーションのとき、上級生が下級生を教える。ここになぜ 「インストラクター」という称号が要るか、資格が要るか。そのようなものは全然必要 ないではないかということで実践しています。誰かが「なぜ1人のために心肺蘇生を全 員がやらなければいけないか」と言われたときには、必ず先生はこう答えてください。 「君が倒れたときもみんなが救ってくれるよ」、これがお互いの生命を守る社会づくり であるということです。  健康センターで「500人講習会」といって、親子連れで来てくださいと言っています。 なぜかといったら、3歳の子が親が一生懸命になると真似をする。これこそ、本当の生 命の教育ではないだろうかと感じているわけです。  高円宮様がご逝去され、それから心室細動ということが新聞にも非常に出ました。 「国際ガイドライン2000」では、「心臓突然死は心室細動」と非常にシンプルになりま した。それには除細動が必要である。ガイドラインは「地域社会は究極のCCU」と書 いてあります。これでは一般の人にわからない。私がいま訳したのは、「心室細動は住 民が救える唯一の心臓病である」です。いちばん重症である心臓病が、AEDさえあれ ばいちばん救える病気になるということなのです。  ご存じのように、これがガイドラインです。5分以内ではもう何もすることは必要な い、AEDだけでいい。ただ、もし8分であれば、心臓マッサージだけをやっていれば 50%程度まで救命率が上がるということ(AEDファースト)がこれからの勝負になる ということです。救命には4分以内あるいは8分以内の除細動、いまは救命士が指示な しで除細動ボタンを押せるようになったので日本でも4分、8分ということでこのChain of Survivalの構図ができるようになりました。  これは大阪の201例の除細動をした例ですが、5分以内に到着し、7分で心肺蘇生を し、15分による除細動を行ったのです。これが指示なし除細動になりますから、7分以 内に除細動ボタンを押すことができます。  しかし、よく考えていただきたいのですが、意識の消失から通報までにどのぐらいの 時間がかかっているかが全く不明なのです。来てから5分というのは、5分以内が50% ということですから、5分以内ということは通報までの時間が何分かかっているかによ るプラスアルファが救命率を左右するということです。  メディカルコントロールとよく言われますが、倒れた瞬間にそこに医者がいるわけで はありません。倒れた瞬間にそこに救命士がいるわけではありません。そこに一般市民 が介在するとなれば、一般市民をいかに使うかなのです。そのキーワードは「命の教育 」です。意識がなければ、「救急車。AEDを持ってきてくれ」と言うことだろうと思 います。  AEDの心室細動の鑑別です。極端に言えば、目の前に意識のない人が倒れたらすぐ さま電極パットを貼ってショックボタンを押す、もし除細動の必要がないと言われたら 違う病気だということでゆっくり救急車の到着を待てばいいのです。しかし、心室細動 だけは5分間で猶予がないので、このために使えばいいのではないかというのが私の考 え方です。  兵庫県医師会は、まず医者しか押せないという時点でこのAEDがあったので医者し か押せないのなら医者が押せるようになるべきだということで、3年ほど前からAED の講習会を行っています。医師こそ除細動器を持って診療に当たれということでやりま した。  兵庫県は、たまたま高円宮様のことがあったときにそういうことをやっていたので国 内のAEDの半分以上が兵庫県にあったということで、AEDの指導者講習会をやって います。これは、来るべき一般市民は医師が教えるべきだ、一般市民だけは医師が地域 の中で先頭に立って教えるべきだということを夢見て皆さんに言って、AED講習会を やっているということです。指導者講習会です。現在、392名で、AEDの講習会の台 数が232台、開業医の方が持って診療に当たられています。これが兵庫県の医師会がい まやっているAED普及キャンペーンということで、まずAEDをということです。 ☆パワーポイント  非医療従事者によるAEDの講習のあり方は、新たな規制を設けない、規制緩和の方 向です。これも1つの規制緩和の方向だと思いますが、いま日本でいちばん不足してい るのはグッドサマリアンと言われている、目の前に立ってAEDの講習会を受けなくて もボタンを押す人たちをつくらなければ本当に助けることはできないのです。  私が16年前に一般市民に心肺蘇生を教えたとき、日赤などは文句を言いました。「心 臓マッサージは2日間の講習を経た人にのみ許可されている。なぜ先生は、そんなに勝 手に一般市民に教えるのか」などと言われたことがあります。「あなた、そんなこと言 うんだったら自分の母親が倒れたとき、許可されてないから心肺蘇生しないと言うのと 同じことだ」と言ったことがあります。許可されなければやらない、講習会を受けなけ ればボタンを押せないのであれば規制緩和にならない、新たな規制を設けることになり ます。  私は、画一的な講習会でなく、多様な講習会を開催してほしいと思っています。一般 市民は、今度だけは医師会にやってほしいと望んでいます。いま、医師が地域参加をす るラストチャンスなのです。医療がこれだけ問題になっているときに医師に自らの尊厳 を回復させるために何があるかと言えば、医師こそは一般市民のAED、これはラスト チャンスなのです。  警備員、施設管理者などは救命士が教えればいいのです。それはそれでいいと思いま す。学校での「命の教育」は、養護教諭や体育教諭で教えてほしいのです。講習会は、 従来の一時救命処置に加え、AEDの取扱い講習会をやればいいと思います。この機械 は非常に安全なのでそれほど難しいことをやる必要はないと思います。  以上、私の考えるAEDのあり方についてお話しました。どうもありがとうございま した。 ○島崎座長  いまのお話について、何かご質問等はありますか。 ○杉山委員  AEDを使ったときにそのあとの検証というか、本当にこれでよかったのかといった ようなプログラムはありますか。 ○河村先生  2006年開催予定ののじぎく国体の会場内に300台を設置する予定にしています。 これは医師が携帯して細動を取ったら必ずAEDを携帯してやろうということをやろう としているのです。毎年232台をどのように使ったかということでスポーツ委員会では、 必ずアンケートを出すようにしています。現時点で2例あります。実は、その2つとも スカなのです。スカというのはニアミスなのです。  1例は、尼崎市のシティーマラソンでのことです。65歳の男性がゴールで倒れて、A EDということで皆がすぐに駆けつけたときに、1人がドーンと胸を打ったら「うーん 」と言って戻ったという1例です。それは、AEDパッドを貼ろうとしているときでし た。その当時、尼崎医師会は、14人のドクターが必ずAEDを持って歩道に立つという ことをやっていました。  もう1つは、高砂の開業医の先生が診療中に待合室で患者さんが倒れたという看護師 の通報があって、「すぐさまAEDを持ってこい」と言ってそのまま素手で、待合室へ 行って。看護師が院長室から持ってきたAEDを手を取るなりすぐさま電極パットを 貼って解析ボタンを押したら、除細動の必要はありませんという音声指示が出たので す。そうしたら本人が「ううっ」と動きだしたので、「ああ、よかった、よかった」と なったのです。それ以降、患者さんが増えたということです。  結局ここに意識がなければ貼りつけて、それで絶対に間違いがないというのが現実に 行われていることなのです。観察することがいちばんいけないのです。私はスポーツの ほうでも言うのですが、AEDを持って現場に駆けつけるのであって、聴診器などを 持っても何の役に立たない、倒れたらすぐ付けることだと。私はいま、兵庫県の医師会 でそういったことをやっています。 ○島崎座長  ほかに何かありますか。 ○古橋委員  いま、兵庫県下で先生のそうしたご指導が大変意欲的になされているということを拝 見したのですが、この教育の効果と言いますか、日常的に「命の教育」というものが何 か子供たちから人々の間にぐっと上がってきている、これが行動につながっているとい うような事態を感じられていますか。その辺りをお伺いしたいのです。 ○河村先生  私がいちばん実感しているのは、暴力校であっても、3年間心肺蘇生の啓発に行けば 暴力はなくなります。私は、人の命を助けることが1つの教育だと思います。  ある学校で、「どうして先生、人を殺してはいけないか」という質問を受けました。 私は、その答はわかりません。しかし、人の命を救う行為をした人間は人を殺さないと いうのが私の教育です。  もし教育委員会か文部科学省の人がいらっしゃったら言いたいのです。いまいちばん いけないのは、学校の先生が生徒と同じときに同じ場所で心肺蘇生を学ぶことです。つ まり、なぜ先生と生徒が同じ土俵で心肺蘇生を学ばなければいけないのでしょうか。先 生は、あらかじめ心肺蘇生を習ってから生徒の前で自分の命の経験を言って生徒に堂々 と「命の教育」としてそれを教えるのがいいのですが、ほとんどの所は、教育委員会も 先生も生徒もみな同じ場所で心肺蘇生を習っているのです。生徒と仲良しになり、じゃ れ合って心肺蘇生を教えるようなことをしてしまうと、これこそ日本の「命の教育」が 廃れるいちばんの原因だと思っています。心肺蘇生はいい方向へ行けばいいのですが、 AEDでも、倒れたときに「ここにあるAEDの使い方を知らないから押さなかった」 などと言ったら、日本はもっと悪い国になります。そういう意味で、慎重なる討議がな されることを私は望んでいるということです。 ○島崎座長  ほかによろしいですか。 ○五阿弥委員  最初の厚労省の説明のときに、今回AEDを認める条件を4つ挙げました。医師法第 17条に抵触しないという条件は、要は緊急やむを得ないという理由なのです。しかし、 これは何か悪いことでもやっているような感じがするわけです。手動式や半手動式なら わからないこともないのです。要するにAEDは非常に簡単な操作で、子供にもできそ うなものです。本来であればやって当然だということだと思うのです。先生は、厚労省 の4つの条件についてはどういうお考えですか。 ○河村先生  私は厚労省の医師に、医師というのはおかしいですが、私たち医師の立場から言う と、医師がいないときに使えるということは、医師がいるときに使わなければいけな い、不作意の行為が問題になりますよということです。  本来、これは医療行為ではありません。メディカルコントロールは、救急隊がそこに 来てからの法は、医師法と関係があります。救命士は医師法に関係があるかもしれませ んが、一般住民に関しては、何が医師法かということです。ですから、救急車を呼ぶ通 報をしてから、あるいは到着からは、もちろん医師法の該当するものになりますが、そ れまでは、全く医師法とは関係のない世界だろうという意見を持っております。 ○島崎座長  ご質問の内容は微妙なところです。ほかにありますか。  兵庫県の中でこういう形で非常に積極的に取り組んでこられた河村先生のお話はそれ なりに非常に訴えるものがありますし、また先生がおっしゃったように、教育的立場か らも非常にいいといったお話です。どうもありがとうございました。  続きまして、AEDの実演について、帝京大学医学部の救命救急センターの坂本教授 から発表をお願いします。 ○坂本先生  今日は、お招きいただきましてありがとうございます。今日私は、まずAEDを使っ た心肺蘇生、先ほどのビデオにも心肺蘇生の部分がありましたが、あれにAEDを組み 合わせると実際にどのようにやるのかというのをトレーナーを使ってデモを1回、皆様 から実際に目の前で実演をして見せてくれと言われましたので、それについて半分お話 します。  もう1つ、後半に関してです。私は、本年、日本救急医学会からの派遣でBLSイン ストラクターのトレーニングのために米国のAHAへ行き、ある程度米国におけるAE Dの教育の事情等を見聞してまいりました。その欧米におけるAED教育の状況につい て、簡単にご報告いたします。  私のバックグラウンドですが、日本救急医学会の中でずっとACLSインストラクタ ーをやっており、救急救命士の除細動等の教育をやっておりました。今年AHAへ派遣 されてBLSのインストラクター、ACLSのインストラクターということで、日本に 帰国後開催しています。私の所属大学においては、昨年からAEDを使ったCPRの教 育を4年生全員に少人数で行っております。  概念が混乱しそうな言葉として非医師、非医療従事者、一般市民などといくつかあり ます。医師に対してその他コメディカルを含めたものを非医師と言い、それに対するも のを言っているのか、あるいは、米国のヘルスケア・プロバイダー(医療従事者)とい う言葉の中にはパラメディックやnurseを初めとしてMEや薬剤師などが入ると思いま すが、SEに対する非医療従事者ということなのか、あるいは非医療従事者の中でも消 防士や警察官あるいはライフガード等のある程度第一出場者として責任を持つファース トレスポンダーをも含んだ非医療従事者なのか、あるいはそういったものとは全く関係 のない偶然の一般市民なのか、この辺を考えていただく上でどこを対象にした講習を考 えるかということを考えていくべきだと思います。  なぜAEDが必要かに関しては、先ほどのお話にあったように心室細動が最も多い、 それには電気的除細動が唯一絶対である、時間の経過とともに成功率が減少する、これ は国際ガイドライン2000にあるとおりのことです。国際ガイドラインの勧告は、病院外 では5分以内、病院内で発生したものに関しては3分以内に除細動を行うべきであると いうことで、これは強い勧告です。これに対してそれを実際現実にできる範囲で行われ ているのがChain of Survivalでありまして、ガイドライン2000の中で特に新しく取り 組まれたのが迅速な除細動です。最大の特徴は、いままで二次救命処置として行われて いた除細動がBLSの中に盛り込まれ、BLSの中にa、b、c、dということで、 ディフィブリレーションのdが入ったということです。  したがって、AHA(American Heart Association)のBLSのプログラムの中にも AEDのトレーニングがしっかり取り込まれ、その中にはかなり特化した形のコースも 考案されています。  これから実演をいたします。一般市民向けという考えで私が、医療従事者ですからも ちろんバックバルブマスクなどいろいろできますが、そういうことの全くない一般市民 に教えるときに、一般市民のできる範囲内でのAEDの使い方を想定してみたいと思い ます。AEDのない場所を想定しても具体的な感覚はあまりわかりませんので、例え ば、たまたまAEDが置いてあるスポーツクラブという設定で考えてみたいと思いま す。  「あっ、倒れている。もしもし、もしもし、大丈夫ですか」。反応がありません。 「そこのあなた、すぐに119番をしてください。その隣のあなた、ここにAEDがある はずだからすぐに持ってきてください」とまず声をかけます。次にやることは呼吸の確 認です。頭部、こう、顎先、表情で見て、聞いて、感じてください。自発呼吸がありま せん。人工呼吸をします。フェースシールドやポケットマスクといったものを持ち歩く ことを推奨しております。人工呼吸をします、1回、2回。人工呼吸の次は循環のサイ ンの確認です。ここで医療従事者であれば頸動脈の脈拍の触知を行いますが、ガイドラ イン2000では、一般市民に対しては循環のサインということでこの状態で、自発呼吸が ありません、咳をしません、全身を見回して体動がありません。この人は、循環のサイ ンがないので心停止しています。すぐに心臓マッサージを始めます。心臓マッサージの 位置を確認します。「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15。 AEDが来ましたか」。AEDが来たら、すべてを一旦中止します。AEDファースト ですから、AEDが来たらCPRはすぐに中断して、AEDの操作に入ります。  AEDが来たら、機種によって違いがいくつかありますが、まずいちばん大事なこと は最初に電源をオンすることです。電源をオンすることにより、機械から何をしたらい いかという指示がすべて入るようになっています。最近のホームAEDの機械では、 「服を脱がせてください、服を着てください」などと脱衣の指示を出すものもありま す。  「パッドを装着してください。コネクターを接続してください」。パッドの装着位置 はここに書いてあります。コネクターは、点滅している所に接続します。「心電図を解 析中です」。皆さん、離れてください。体に触らないでください。必ず周りの人を遠ざ けます。誰かが触っているとアーチマクトが入りますので、遠ざけます。「ショックが 必要です。充電中です。患者から離れてください」。皆さん、離れてください。ここ で、周りに触っている人がいないかどうかの確認を必ず行います。これはボタンを押す 人の責任です。これを必ずやります。皆さん、離れてください。離れています。私も離 れています。押します。「……が完了しました。心電図を解析中です。患者に触れない でください」。もう1回解析します。必ず離れてください。触らないでください。 「ショックが必要です。充電中です。患者から離れてください」。もう1回ショックを かけます。危ないから離れてください「ショックを……。オレンジボタンを押してくだ さい」。私は離れています。誰も触っていません。押します。  「ショックが完了しました。心電図を解析中です。患者に触れないでください。心電 図を解析中です。ショックは不要です。患者に触れても大丈夫です」。リズムが変わっ たようです。「気道を確保し、呼吸と脈拍を確認してください。必要ならば、CPRを 開始してください」。  自発呼吸が出て、手足が動きはじめました。心拍が戻ったようです。まだ意識がない ようなので、気道の確保をして救急車の到着を待ちます。という感じです。一旦終わり ます。  いまのシナリオは、2回の除細動で心拍が再開したということです。いまのようなこ とをより確実に、安全にできることを目標に教育をしていきます。心停止の確認がきち んとできることが非常に重要になってきます。  なぜこのような教育が必要かですが、もちろん教育によってAEDが有効に使用でき るようになります。例えば、服の上からやっても効果がありません。パッドの当たる位 置等も含めて、AEDが有効に使用できるようになります。  もう1つ大事なことは、教育によってAEDを安全に使用できるようにすることで す。AEDは、危険度が非常に低いとは言っても除細動ですから、誰かが体に触った状 態でかけるのは非常に危険です。そういうことがないようにするということです。心停 止を確認するのは心拍のある人への誤通電を避けるためで、教育としては非常に重要だ と思います。もちろん、AEDにCPRを組み合わせて教育することにより最大限の効 果が期待できます。これがAHAの考え方だと思います。  このようなAEDの使い方の教育プログラムです。これから日本でどのようにしてい くかといったことを考える前提としての欧米でのプログラムの現況ですが、私は、すべ てのコースをマスターしているわけではありませんので、知っている範囲で情報を伝達 したいと思います。  この中でいちばん代表的なものの1つは、American Heart Association(AHA) のHeartsaver AED Courseです。これは現在、改訂中で、今年の12月中旬にガイドライ ン2000に完全対応をした新しいバージョンが出る予定です。このようにCPRとAED にフォーカスを当てたBLSのコースがあります。詳細は次です。 ☆スライド  それ以外には、アメリカのパラメディックが中心となって作っているMedic First Aid という団体が行っているコースがあります。これは、この日本法人であるEMPJapan が全日空の客室乗務員約5,000人に既に実施済みであると聞いています。  それ以外には、アメリカではもちろんアメリカ赤十字がかなり強力にAEDのプログ ラムを進めています。AHAでは、レッドクロス(赤十字)で取得したライセンスも同 じものと認めるということでの乗入れをしていると聞いております。国立安全委員会、 National Safety Council(NSC)等でもやっています。  ヨーロッパでは、European ……dention Councilの下にALSとBLSのプログラ ムが展開されていますが、BLSのプログラムに加えて、AEDのコースが最近非常に 積極的に展開されてこのようなテキストブックができてきています。  私自身が直接いちばん経験しているAHAを例にとって簡単に紹介いたします。AH AのBLSのコースには多くの種類のコースがありまして、その中に大きく3つのコア のコースがあります。  CPR for Family and Friendsは、あまり細かいことは言いません。学校で教えるあ るいはコミュニティーで教える、特にライセンスも出さないが皆がCPRをできるよう にしようというものです。  Heartsaver AED Courseは、成人のCPRとAEDの使い方にかなり特化したコース で、特にAEDを使う可能性の高い客室乗務員や警察といったファーストレスポンダー になる人を最もメインのターゲットとして、もちろん一般市民も受け入れるコースとし て存在しています。  さらにその上にBLS for Healthcare Providersがあります。日本では「なぜいまさ ら医師がBLSなのか」と言われますが、米国では、医師を初めとしたパラメディック に対してより高度なBLS。つまり、我々は、医師と言えども現場に行って最初に患者 と接触したときは、BLSから始めなければいけないわけです。そこで医療従事者とし て必要とされる高度なBLSと言いますか、もちろんその中にはAEDやバックバルブ マスクも含まれていますが、8時間の丸一日のコースです。米国では、このようなもの が3本立てで用意されています。  その中で、AEDにフォーカスを絞ったHeartsaver AED コースの内容をより具体的 にご紹介します。これは改訂中で古い版で、全体の時間が約3時間半です。これは、 「CPR」と「成人に対するCPRとAED」を大きな2つの柱としています。AED だけを教えるのではありません。それは、心停止の確認、あるいはAEDを持ってくる までのCPRも必須であると考えているからです。20分の導入とCPRです。このCP Rは、このように大人数で座学でやるのではなく、6人〜8人にインストラクターが1 人付いて少人数で、すべて実技中心に教えていきます。AEDの使い方が30分です。実 際にシナリオを与えて、シナリオによる練習を45分行います。最後に、実技試験と筆記 試験があります。AHAは、このHeartsaver AEDに関しては最後は筆記試験を通して 修了書を出すということを義務づけています。  その他の例です。AED単独のコースはどんなものがあるかと言うと、これはあくま でもCPRを修了したサーティフィケーションを持つことが前提になります。例えばア メリカの国立安全委員会のコースでは、30分のイントロダクションに1時間40分、構造 が20分、操作が60分、その他が20分、トラブルシュートを含めて20分ということで、1 時間40分、まとめを20分で、合計が2時間半になります。大体この辺がスタンダードな コースの構成だと思います。  現在、米国やヨーロッパで行われているプログラムの特徴です。基本的には、CPR コースを完全に修了した者以外は、CPRとAEDを組み合わせて1つのコースにして います。  特徴です。成人教育理論に基づいて行われています。少人数によるグループ教育が行 われています。大体6人〜8人に1人が標準です。なるべく座学はやめて、ビデオやデ モンストレーション等を見てやってもらいます。watch then practiceという形で、見 たらそれをすぐにトレーニングするという形にしています。シナリオに基づいた練習を 必ず行います。実際の現場に即したときに判断ができるような練習を行います。  実技試験と筆記試験を行うことも特徴になっていますが、特に客室乗務員や警察官な どのようにAEDを使うことが業務の一部と考えられるような場合は、こういうものは 必須と考えられています。  欧米のもう1つの特徴です。インストラクターは、コースを終わってインストラク ション、成人教育理論等に対して十分に教育を積んでAEDに対して十分な理解を持っ ていれば、必ずしも医師や救急救命士、パラメディック等の資格には拘らずに実行され ています。これが欧米の教育プログラムの特徴だと考えていいと思います。  私はACLSのインストラクターもしておりますが、ACLSの中でもAEDの部分 は非常に強調されています。AHAは、ACLSを基本スキルと高度スキルに分けてい ます。ACLSの基本スキルはCPRとAEDの使い方で、まさにいまのHeartsaver AEDの内容がそのままACLSの中でも基本スキルとして、コアの部分として生かされ ているのです。  それに加えて気管挿管ができる、心電図を実際に見てリズムの鑑別ができる、さまざ まな電気的な治療ができる、あるいは薬物の選択ができるなど、ACLSはここまでを 含めて高度スキルと言っていますが、その根幹になる基本スキルにAEDが入っていま す。ACLSの中でも、AEDが使えるということは絶対条件になります。  AEDは非常に安全ですが、何か問題があるとすれば、通電するときに人がきちんと 離れているかどうかの確認が非常に重要になってきます。接触が悪い状態で通電をする 場合が考えられます。例えば、胸毛が非常に多く抵抗が大きい状態で通電をすると火傷 をするといったこともあるようです。  もう1つの問題として、AEDを非心停止傷病者に誤って使用したときにどういうこ とが起こるかを知っておく必要があるでしょう。AEDは、心室細動だけでなく、心室 頻拍にもすべてショックを与えるようなプログラムになっています。もちろん心室細動 と無脈性心室性頻拍はどちらもAEDの電気ショックの第1の適用ですが、心室頻拍が 無脈性か循環のある心室頻拍であるかは、AED自体では区別ができないのです。これ はあくまでも施行する人間が判断することであり、機械では区別ができないのです。こ れが重要なポイントです。  したがって、AEDを使う人は、一般市民であればその循環のサインを見る、あるい は医療従事者であればもちろん脈拍を見るといったことでその循環がないことを確認す ることが必要になるでしょう。循環のある患者に使用してある一定の心電図が条件、つ まりその心室頻拍のアルゴリズムに引っかかるような条件を見せればAEDは通電をす るわけですが、それは機械のエラーではなく、それは使用した人のエラーであるとAH Aは言っています。  具体的に日本の先ほどの大きな3社ではそれぞれ、心拍数180以上は心室頻拍と見な す、あるいは短期形成であれば250以上、あるいはそのQRS幅が一定で広くP波がな く120以上等、メーカーごとのアルゴリズムがあります。このようなアルゴリズムに引 っかかる心室頻拍は除細動がかかるので、この人は脈のない心室頻拍である、その脈の ないところを確認させるような教育は必要だろうと思います。  AEDを設置すべき場所です。先ほどの医療機関AHAは、医療機関以外でファース トレスポンダーが持っていくことも非常に重視していますし、公共施設ということで本 当の意味でのパブリックなアクセスを考えています。 ○島崎座長  坂本先生、どうもありがとうございました。実演と海外での教育状況等を含めてお話 いただきました。何か質問はありますか。 ○五阿弥委員  離れるというのは、どのくらいの距離で離れるのですか。 ○坂本先生  下が濡れていなければ、接触していなければ結構です。つまり、パッと手を出せば届 く距離では咄嗟のときに触ってしまう可能性がありますので、誤って触る危険のない距 離であれば大丈夫でしょう。正確に何センチというものはありませんが、常識的に誤っ て患者さんに触れる心配のない距離は、大体50センチ〜1メートルではないかと思いま す。 ○五阿弥委員  もう1つ。AEDの使用をめぐる事故としては、これまでにどのようなものが報告さ れているのでしょうか。実際に起きたケースはあるのでしょうか。 ○坂本先生  ガイドライン2000に書いてあるのは、心拍のある方への通電の例は文献報告例として 書いてあります。ペーパーが2つ参照されています。  実際、各メーカーの方は、それはきわめてレアーであると言っています。どちらかと 言うと、本来はVFあるいはVTであるのにトリガーがかからずにスイッチが入らなか った、やるべきものにできなかったといった報告が多いのですが、そうではないものに やってしまったという報告はきわめてレアーではあるとは言われています。 ○竹下委員  AHAに関連して2点ほど申し上げます。  1点目です。私は先週オーランドで行われたAHAの会議に出席したのですが、そこ でPAD研究が発表されて、いままで特別なコンプリケーションは報告がないというこ とでした。筋肉痛が何例かあるという程度でいままでAEDに関して問題が起こるよう なケースはなかったので、安全性はかなり高いと報告していました。  2点目は教育に関してです。確かに先生がおっしゃるようにハートセイバーやヘルス プロバイダーの方々に対しては、しっかりとしたCPRとAEDの教育が必要だと思い ます。しかし、AHAでも一般市民に対して果たしてどこまで教育するのかは、ディス カッションになっているところだと思います。  私は、ベッカーやワイスフェルド、リチャード・カウバーなどと懇談する機会があり ました。彼らも、いまどのようにすればもっと効率よく一般社会にAEDを普及させて いくことができるかについては、腐心をしていると言っていました。  結局、機械はエンザイムであって、そこにどういうプログラムをくっつけるかとい う、プログラムがサブストレイトであって、その両者がうまくいかなければ実際には効 率が上がらないのです。したがって、3時間半や4時間といった教育が本当にいいのか どうか。  ベッカーさんは、シカゴであるトライアルを行った際に、ある機械では7分間ビデオ を見せただけだと言います。7分間のビデオを見せるのと見せないのとで、見せない人 が50%、見せる人は88%まで除細動ができるようになったそうです。もう1つのディバ イスでは、見せない人も82%ほどで、ほとんど変わらなかったそうです。  ですから、先ほど河村先生がおっしゃったように、講習を受けなければそれをしては ならないとなると、非常に問題があると思うのです。AHAも、いまのやり方について は自ら将来に対してどのようにしたらいいかということを検討しているというのが実情 ではないかと思います。その点を申し上げます。 ○坂本先生  私もオーランドで同じものを見ていましたので、先生のおっしゃるとおりだと思いま す。AEDの最近のタイプのものでは、服を脱がせだとか、あるいはパッドの位置など も全部知らせてくれます。もう少し音声ガイドがしっかりすると、従来のよくあるもの で60%のものが80%程度は最初からほとんど何もしなくてもできるようになるという発 表もありました。ですから、それは先生のおっしゃるとおりだと思います。  米国でのHeartsaver AEDなどは、善きサマリア人の法律の中で各州でいわゆるリクワ イヤー・リコメンドといった形でどちらかと言うと一般の人、善意の第三者は緊急避難 あるいは日本で言う緊急事務管理といったもので救われますが、それ以外の人はそうい った緊急避難ということだけでは救われないのです。それは、そういう人たちをある程 度保護するためにきちんとしたコースを受けてそういったものにより担保されるという 概念だと思います。私は、一般市民には4時間の講習が必要であり、これがなければや ってはいけないなどというようなことを言うつもりは全くありません。ただ、AEDを 安全・確実にきちんと教えるための標準的なコースとしてはこういうものがあるという ことです。また、一般市民が善意でその使用を考えたときにどういうときに免責される かという話とは少し別な問題だろうと認識しております。 ○島崎座長  その点も含めて、今後の会議で検討させていただきたいと思っております。ほかに何 かありますか。 ○古橋委員  非心停止者への誤通電が理論的にも身体へ及ぼす負の状況というか、障害というか、 その辺ですが、要は心停止していない人に通電した場合の身体への影響としてはどのよ うなことが考えられますか。 ○坂本先生  ACLSをやっている者の立場とすれば、それは非常に不安定な頻脈性不整脈に対し て本来はドウキをして除細動をかけるといった状態であるのに非ドウキでかけてしまっ た、QRSとドウキかせないでかけてしまったのと同じ状況だと思います。ですから、 時にはそれによって非常に不安定な不整脈が治って結果オーライ、非常にいいこともた くさんあると思います。  ただ、ごく一部には、それがたまたまアールオンティーになってしまって、次には本 当のVFを引き起こしてしまうといったことも理論的にはあると思います。ただ、実際 にあったという報告は、私も聞いておりません。 ○島崎座長  先生、雨の日や施行者あるいは被施行者が濡れている場合は、実際にはどのように… …。 ○坂本先生  濡れている場合の教え方です。まず乾いた所まで連れていって、必ず乾いたタオルで 胸を拭いて、少なくとも前胸部からパッドを貼る周囲はドライにしてパッドを貼りなさ い、という教育になっています。 ○島崎座長  坂本先生、どうもありがとうございました。  続きまして、「旅客機における客室乗務員のAED使用の現状と教育について」、日 本航空の健康管理室主席医師の大越先生からお話を伺います。よろしくお願いします。 ○大越委員  まず、このような機会を与えていただきました関係者の皆様に御礼申し上げます。私 ども日本航空グループは、2001年10月より国際線の機材に自動体外式除細動器(AED )の搭載を開始いたしました。本日は、AEDを搭載するに至った経緯、また使用状 況、客室乗務員に対する教育についてご紹介させていただきます。  なぜ航空機内にAEDを搭載したかという質問を大変よく受けました。最大の理由 は、航空機内でAEDが存在しなければ救命し得ない心停止例が発生していることで す。私どものデータでは、航空機内で8年間に37例の心停止が発生しています。年間に 換算すると4.6例になります。このうち、ウツタイン様式で分類すると、21例が心原性 と推定されました。同様にアメリカ航空のデータでは、世界中で年間に452例の心停止 例が航空機内で発生していると報告されています。航空会社にとっては大変大きな問題 です。  しかしながら、航空会社は、この心停止例に対して非常に早い時期からAEDの搭載 と客室乗務員に対するAEDの使用の教育を行ってまいりました。  資料に一部間違いがあります。「1998年アメリカン航空」と書いてありますが、2000 年ですので、訂正をお願いします。  世界でいちばん最初にAEDを機内に搭載したのはバージンアトランティック航空 で、いまから13年前の1990年のことです。翌1991年にはカンタス航空がAEDの搭載を 開始しました。その後追随する会社はなかったのですが、欧米の航空会社にAEDを搭 載しなければならない状況が2つ発生しました。  まず1点です。1996年にシカゴにある新聞社のシカゴ・トリビューン紙がアメリカの 航空機内の機内医薬品、医療機器が大変不十分であることを糾弾する内容の特集記事を 組みました。翌年にはカンタス航空がいままでの実績、AEDの航空機内の搭載の有用 性について発表しました。航空機内で6例の心室細動例が発生して5例に除細動を行っ たところ、初回にコンバージョンが成功した、2例は2年以上の長期生存をしたと一大 センセーショナルになったわけです。それ以降、欧米の航空会社はAEDを次々に搭載 したわけです。  すぐに日本でも、AEDを搭載すべきかどうかといったことが検討されました。1997 年に航空機に搭載する救急用医薬品に関する検討委員会が発足し、翌1998年にその答申 案が出ました。そのときに国土交通省航空局より、運行に支障のないかぎりAEDの搭 載は可能であるという見解が出ました。しかしながら、AEDの使用者の制限の存在が あったことから日本の航空会社は、この時点ではAEDの搭載を見送っています。  欧米の航空会社は、その成果を次々に続いて発表しました。2000年度には、アメリカ ン航空がAEDの有用性についてカンタス航空に続いて発表しました。これによると、 心室細動で除細動を行った40%の方が生存退院をしたと報告しました。そしてついにア メリカ連邦国FAAは、客室乗務員が乗務するほぼ全機のアメリカ国籍機にAEDを搭 載することを義務化しました。  このような状況で、日本の航空会社はAEDを搭載せざるを得ない状況になったわけ です。そこで使用者の制限がある状況でAEDを搭載したならば果たしてアメリカ心臓 協会が推奨している5分以内の早期除細動が可能かどうか、過去の例をもう一度検証す ることによって究明してみました。先ほど申しましたが、過去8年に航空機内で37例の 心停止例が発生していました。うち21例が心原性で、そのうち15例がその発症を目撃さ れていました。心停止から2分以内に11例が客室乗務員によりCPRが開始されてい て、6例が4分以内に医師の援助が得られていました。したがって、医師が1分前後で 除細動器を使用すれば5分以内の除細動が可能であろうという状況になりました。  そこで、果たして医師がAEDを簡単に使用することができるかということが次の課 題になります。そこで、いろいろな情報を集めたところ、小学生でも訓練なしにAED を安全かつ早く使用することができるといった論文、あるいはシカゴオヘア空港、AE Dが配備されている空港ですが、そこの使用者の55%がたまたま通りかかった医師、看 護師、消防士であると、こういった事実より航空機内にAEDを搭載することにより機 内で発生する心停止例のうち何例かは救命できるのではないかと判断して、2001年10月 より航空機内にAEDを搭載いたしました。  AEDの搭載が決定した時点で厚生労働省の方々と一緒に、どこまで客室乗務員がA EDの使用に関して関与できるのかといった協議を行ってまいりました。その結果、12 月18日、搭載開始した日から2カ月半の時点で医師の速やかな対応を得ることが困難な 状況においては客室乗務員がAEDを使用しても医師法に抵触しないという見解が得ら れました。条件つきではありますが、日本で初めて一般人にもAEDが使用できる状況 となったわけです。  次に、教育が問題になってきました。この時点で厚生労働省からは、緊急やむを得な い状況ということでしたので、教育までの指示は特にありませんでした。しかしなが ら、機内という大変特殊な環境で安全にかつ早期に除細動を行うためには教育は必須で あろうということになり、教育を行うことにいたしました。  まず、誰が教えるのか。インストラクターを養成しなければならない。しかしなが ら、日本にはインストラクターを養成するコースはありません。そこで、医務スタッフ がアメリカ心臓協会のBLSインストラクターコースを受講して取得してこようという ことになりました。そこで、比較的英語が達者な13名の医務スタッフがアメリカへ行っ てこのコースを取得してきたわけです。これについては坂本先生からご紹介がありまし たので、省略いたします。  こちらが一般人にAEDを使用するときに行っているHeartsaver AED コースの内容 です。私どもが受講して特に感じたことで、実習の素晴らしい点が2つあります。1つ はwatch then practiceです。ビデオを見てすぐに人形を使って実習をします。例えば、 心臓マッサージのビデオを見たらすぐに人形を使って心臓マッサージをします。記憶が 鮮明なうちに実習に移るという、大変素晴らしい実習方法であると思います。そして、 シナリオを使った実習です。シナリオを使うと、皆さんが非常に生き生きと非常に楽し く実習に参加し、意欲的にできるのです。このwatch then practiceとシナリオを使っ た訓練は、大変素晴らしいものであると感じました。  このままアメリカ心臓協会の教育を乗務員に行うことにより、果たして早期の除細動 は可能なのだろうか、少し疑問が残りました。AEDを搭載して間もない時期に、この 問題を私どもに痛感させるような出来事が起こりました。この時点では除細動器は既に 乗っていますが、客室乗務員の訓練はまだ始まっていない時期です。  58歳の英国人の男性ですが、既往歴に狭心症、心筋梗塞があります。成田からロンド ンのヒースロー空港に向かう途中、コペンハーゲンの上空で心停止を起こしています。 すぐにいままでのプロトコルどおり、ここで倒れたのですが、機内調理室まで運んでお ります。すぐに応援を呼んで、機内の責任者であるスーパーバイザーに連絡が行きま す。スーパーバイザーは、連絡を受けてこちらに階段を登ってやってきます。応援を受 けたほかの乗務員が酸素ボトル蘇生キット、AEDの存在がまだ十分に行きわたってい ないせいでしょうか、そういうキットを先に持ってきてしまったのです。ドクターコー ルは発症してから5分後に行われ、3分後に医師と看護師の応援が得られたのです。A EDが現場に到着したのは、10分後でした。  こういう状況では早期除細動はなかなか難しい、このプロシージャーを考え直さなけ ればいけないだろうと考えました。この狭くて広い機内という意味は、CPRを行うに は意外と狭い、できる場所が少ないので移動しなければならない、しかし、物を取った り乗務員が駆けつけるためには意外と広いという意味です。  そこで私ども医務スタッフは、AHAのインストラクターを交えていろいろなディス カッションをいたしました。アメリカ心臓協会が推奨する5分以内の早期除細動はどう したら可能になるのかということで皆さんで知恵を出し合ったところ、機内のアナウン スシステムを使うことになりました。  機内にはあちこちに電話があります。その電話を取ってあるボタンを押すと、ランプ が全部つきます。緊急事態であることを知らせます。近くにいる乗務員が意識障害が発 生した、すぐにスーパーバイザーはドクターコールをして、AEDの近くにいる乗務員 はAED、蘇生のキッドを持ってくるということをここで指示します。このことによっ てドクターコール、AEDの準備、患者の移動が同時に進行します。時間が非常に節約 できるだろうということです。私どもはこれをAll Call Systemと呼んでいますが、こ のシステムを採用することにいたしました。  航空機内は、人工呼吸をする場所が非常に限られています。もし通路でやったら、お 客様をどかせて、椅子を倒してといった作業をしなければなりません。そうすると、除 細動がまた遅れてしまいます。そこで本来であればa、b、c、dのbの所で呼吸がな ければ人工呼吸をすべきですが、これを準備していると早期除細動ができないというこ とで、除細動を最初にやるということで、Dファースト。河村先生はAEDファースト と紹介されていましたが、私どもも、除細動を最初にやろうとプロシージャ−を見直し ました。このようなプロシージャーの見直しを含んだオリジナル教育を作成しました。  最初に断わっておきます。全客室乗務員は、訓練生時代に16時間のCPRを含んだ医 学教育を受けております。そして、必ず年1回のCPRの復習をやっております。この 状況で、AEDの搭載後にAEDの初期教育を行ったわけです。最初に20分ほどビデオ を使ってAEDの紹介をしますが、これはすべてオリジナルのビデオです。そのあとに 簡単な理解度チェック、CPRのガイドライン2000の変わった所を説明して、AEDと CPRを組み合わせたビデオを見た上で実習を行います。これはシナリオを使った実習 です。計2.5時間の教育を初期教育で行いました。  これは、電極を貼っているところです。ここは除細動の効果がなくて、器械がCPR をするようにという指示があったことから、また乗務員がCPRを開始しているところ です。  実際にAEDを使用したケースは、いままでに5件発生しています。国籍で見ます と、日本人が2名、外国人が3名です。性別は女性が2名、男性が3名です。年齢は70 歳以上の方が4名です。既往歴は脳血管障害、心臓系、こういった多彩な既往歴があり ます。  AEDの使用者、上の最初の2つの症例は、まだ乗務員が訓練を受けていませんでし たので、医師がAEDを使用しています。その上に時間と書いてありますが、これは心 停止から除細動の適否を、除細動器が判定するまでの時間です。これが5分以内であれ ばいいわけです。この乗務員というのは、訓練を受けていない乗務員が担当者だったの で、他の乗務員と代わっているうちに、少し時間がたってしまっています。  こちらのほうは、訓練を受けた乗務員が担当だったことから、非常に早く除細動が判 断でき、するまでに至っています。  5例目は非常に特殊な症例でして、気管支喘息の方が呼吸困難で、さらに呼吸停止を して、そこで心肺蘇生を行おうとして、AEDも既に準備はしてあったのですが、家族 の方が「横にすると死んでしまう」と言って抵抗されたために、非常に除細動までに時 間を要したケースです。心電図所見は、VFであったケースに対して、除細動の指示が されていました。  心電図の検証は、私どもに8人のパートタイマーの循環器の医師がおりますので、そ の先生方にAEDを使用した後の心電図を見ていただいて、対応はよかったのか、ある いは除細動の指示が的確だったのかどうかということの判定を、合わせて行っていま す。  2番目のケース、医師がAEDを使用した、先ほど示した症例なのですが、それと4 例目のケース、訓練を受けた乗務員が使用した場合の心電図所見をご覧にいれます。1 マスが1秒です。実はもう1枚ここにあります。蓋を開けてから1分12秒、電極を貼れ るまでに要しています。おそらくどっちが右なのか左なのかというふうに、慌てていら っしゃるのだろうと思います。  ここで急に心電図がフラットになっていますが、心停止になったわけではなくて、蓋 が閉じてしまったのです。また慌てて開けた。それで、ここから解析が始まっていま す。1分57秒後にVFであることから、除細動を行っております。残念ながら正常リズ ムに戻っていません。ここで何故か不思議な波形があるのですが、おそらくここは器械 の指示に従わずに、心マッサージをやった波ではないかと思います。  こういったことから、いくら医師であっても、慣れない状況でAEDを使うことは非 常に難しいのかなという印象を受けました。  こちらの症例は、残念ながらVFではなかったのですが、非常に早期に対応できた症 例です。蓋を開けてから22秒で電極は貼られています。そして、37秒で除細動の適用が 必要かどうかという判断がなされています。このように客室乗務員を訓練することに よって、AHAが推奨している5分以内の除細動は可能な状況になったわけです。  これは有名なChain of Survivalですが、航空機内ではアーリーアクセス、これはド クターコールに相当しますが、ドクターコール、CPR、除細動は、乗務員が行わなけ ればいけません。  また、機内の非常に特殊な環境により、除細動器を用意することも、訓練として行わ なければいけません。そこで初めて、早期の除細動は可能となるわけです。しかしなが ら、一般人に果たしてこれだけ必要かと申しますと、目の前にある除細動器を使うか否 かという問題ですので、やはり状況はかなり違うと思いますので、それは分けて考えら れたほうがよろしいかと思います。以上です。 ○島崎座長  大越先生のいまのお話に対して、何かご質問はございますか。いまの5例を見ます と、医師がいちばん具合が悪い。 ○大越委員  そういうことではなくて、乗務員の対応もやはり、まずかったのだろうと思います。 除細動器は本来であれば、すぐに持ってこなければいけなかったところ訓練を受けてい ないために、持ってくることも遅れたことも問題だったのだろうと思います。 ○島崎座長  先ほどお話いただいた坂本先生が、ACLSの医師向けの1日コースを、日本救急医 学会と、今回お越しの竹下先生の日本循環器病学会も一緒になってやっているのです が、同時進行で医師のほうも、教育していく必要はかなりあるという気がしました。他 に何かご意見ありますか。  以上の発表を踏まえて、議題全般について、いまからフリーディスカッションを行い たいと思います。いくつか発表者のほうからも、問題提起等含めてありましたが、いろ いろご質問等あろうかと思いますので、何なりとご質問をどうぞ。 ○鈴木委員  坂本先生のほうからお話がありましたように、この検討会が、非医療従事者を対象 に、AEDの使用をどうするかという検討会になっているわけですが、この非医療従事 者という定義が、まずなされる必要があるのではないかという話がありました。全く内 容を聞いていてそういう気がするわけですが、この辺をどの範疇でとらえるかは、いか がですか。 ○島崎座長  そもそもこれが、非医療従事者に対するAEDなので、確かにその定義をきっちりし ておかないと、話が非常に混乱すると思います。事務局のほうでは、どういう具合にお 考えですか。 ○指導課長補佐  いま現行法律上のお話から申しますと、除細動器を使用できる方ということでして、 医師と、救急救命士法に定めてあります救急救命士、あと法律の関係上救急救命士にで きる事柄につきましては、診療補助行為といったようなことでして、看護師の方もでき ることになっています。そういう意味で、医師、看護師、救急救命士の方々が除細動器 の使用が可能だといった法律上の整理になっています。  ここの検討会の検討事項で申しますと、非医療従事者ということですので、この名称 だけから申しますと、医療関係職種以外の方々を中心に、先ほどの坂本先生のスライド の中で申しますと、一般の方、あるいは消防隊員、警察、そういった方を含めて、医療 関係職種以外の方といった方々が、中心になろうかと思います。また医療従事者の方に つきましても、先ほど申しました3職種以外の方々についてどう取り扱うかという点に ついても、この場での議論になってこようかと思っています。 ○島崎座長  はい、よろしいですか、他に。 ○古橋委員  ただいまのご説明ですと、いわゆる業として、職業として何らかのそういう場面に隣 人としている場合と、業としない一般の人という場合には、非常に考え方の整理もいる のではないかと思うのですが、その辺りのとらえ方の段階的区分は、どんなふうに考え ておられるのですか。職業としてやる場合の、職業上の責任、責務等々も発生してくる 場合もあります。そんなことの区分は、どんなふうに考えていくかと思っていますが、 いかがでしょうか。 ○島崎座長  事務局のほういかがですか。渡延さんどうぞ。 ○指導課長  ただいまご提議がありました点は、まさに今後ご検討をいただくことが必要と考えて いるわけですが、今日のお話の中でも、いわゆる一般の市民の方と、ファーストレスポ ンダーという言葉を使われた先生がおられましたが、ファーストレスポンダーとしてと らえる方についても、こうした事態に出会う頻度が濃い方から薄い方まで、相当の幅が あろうかと思っています。したがいまして、いろいろな形で、一般の方とファーストレ スポンダーと分けられる整理もありましょうし、連続的に変化しているもので、二つに 最善と分けられないケースもあろうかと思っています。ただいずれにしても、どちらの ケースであっても、AEDを安全且つ有効に使用するために、どういうものが必要なの かという点で、共通の部分は当然あるだろう、あるいは共通の部分は当然あると思うわ けですが、何か異質な部分が果たしてあるのかどうか。そうした共通なものがあった上 で、そうした事態に立ち合う頻度の濃淡に応じて、さらに付加価値を付ける必要はある のかどうかという点で、確かに差が生じてくる可能性はあるかと思います。  今日は1回目ということで、共通認識を私ども事務局を含めて共有させていただくこ とと、今日ご提起になった、あるいはご発表いただいたものの中に、いろいろな類型の 方の、いろいろな関与の仕方のご提起がありましたので、次回もまたヒヤリングを予定 している部分もありますが、次第に論点を絞り込む課程の中で、いま古橋委員からご提 起がありました全部を一色でとらえるのか、それともこういう事態への関わりという局 面で、一定のグルーピングして考えるのか、ここは次回以降、さらに議論を深めて、そ れに応じて論点を整理させていただければと考えているところです。 ○島崎座長  本日はAEDそのもののいろいろな問題点等を、オリエンテーションと、それから浮 き彫りにさせていただくということで、いまお話いただいたこと、あるいはご質問をい ただいたことを含めて、これから検討していくことだと思います。 ○杉山委員  AEDの安全な使用ということで、例えば線引きをすると言うか、例えばドゥ・ノッ ト、これはしてはいけない、本当にそういうことがあるのか、子どもの場合はどうする のか、大人の末期の場合と言うか、ターミナルの場合。先ほど家族の了承がなかったか らできなかった、こういうようないくつかの限定される場面が、シチュエーションとし てあると思うのです。ですからこれをある程度、何回かの会の中で、是非まとめていた だくことも大事なことではないか。 ○島崎座長  従事者側のどこまでの人ができるのか、あるいは全員できるのか。それからされる側 に対して、どういう適用を求めるのか、そういうものも含めて、次回以降に。結構いろ いろ意見があるかと思います。それぞれの考えがかなり違う場合もあるし、一致してい る場合もあるかと思いますが、それも含めて次回から検討していきたいと思っていま す。 ○河村委員  今回で僕の発言の機会はありませんので、最後に言っておきたいのですが、先ほどの BLS、AEDの使い分けは、救急車が到着してからは、メディカルコントロールと はっきり分けたらいいと思うのです。それまでは医者であろうが、看護師であろうが、 誰であろうが、もう一般の人と全く関係がない。医者が目の前にいたからといっても、 AEDがなければ絶対助かることはありませんし、早く判断ができるメリットはありま すが、明らかにメディカルコントロールというのは、救急隊が到着したらそのときに 「俺は医者だ」と言って、救急隊員に指示をしながらいろいろな用具を使って、さらに 高度なドクターカーにも変身できますが、それが到着するまでは、ドクターといえども ただの人という見方をしていただいたほうが、何かAEDまで医療従事者はどうだとな りますと、医者も毎日歩いていけなくなりますので、だからそういう意味では、メディ カルコントロールといういまの日本医師会のほうの考え方もあって、救急隊が到着した ところからはそうであるけれども、それまでは医者であろうが、専門職であろうが全く 関係なし、そういう明確な分け方をしていただいたほうが、非医療従事者とか何とか、 あなたは何に相当すると、また法令を見ている間に患者さんが亡くなりますので、そう いうことがないようにお願いしたいということを言いたいと思います。 ○野見山委員  いまの意見に反対の方は、どなたもないと思うのですね。メディカルコントロールと いう問題で、枠をかけるという意味での問題ではなくて、むしろ逆にこういう場合には 必ずAEDが存在して、そこに使える人は、それは医者だとか何とかではなくて、使え る人がいないという場合の設定も必要ではないかという意見のほうが強いのではないか と思いますが。 ○島崎座長  はい、どうぞ。 ○鈴木委員  基本的にはいまのお話のとおりだと思うのですが、例外的な要素で見ますと、いま救 急隊が到着した後はMC(メディカルコントロール)の指示下になる、これは体系的に は全くそれで結構だと思うのですが、救急隊にもいろいろなケースがありまして、救命 士が乗っている救急隊もありますし、救命士の乗っていない救急隊もあるわけです。こ うしたときに、一般の方がAEDを使える中で、救急隊員がAEDを使えないというこ とは、果たしていいのかどうか。ですからいまの線引きがそれでいこうということでは なくて、いま言ったようなことも含めて、今後も検討会で詰めていくことにしていただ きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○島崎座長  その問題も検討する予定にしています。 ○野々木委員  いまの議論もそうなのですが、AEDをどこに配置するかということも大きな議論に なると思うのです。  先ほど米国のいろいろな事情がありましたが、例えばシアトルという街が、いちばん 救命率が高いわけなのですが、あそこはなぜ救命率が高いかといいますと、一般の消防 士たちが、AEDを搭載して使えるような状況になっています。そうすると、3分でA EDが使えるという状況で、かなりの救命率が期待できる。あるいは米国の先行する事 例で見ますと、現場に到着するのは警察官がまずいちばんですので、必ずパトカーには AEDを搭載しているとか、その辺の議論も今後必要かと思います。 ○島崎座長  設置場所の問題も結構重要だと思います。それも含めて、オーバーオールでここで議 論させていただいていいのですね。 ○指導課長  事務局の立場で申し上げますと、もともと今回の特区のご提案、さらには検討会を立 ち上げた趣旨といいますのが、非医療職がAEDを使ったときの医師法との適合性の問 題、それを特に救命医療なりに関わる立場からその条件を整備していこうという問題で 考えているところです。その意味で、ただいまご提起がありましたAEDの設置、物的 にどういうところで整備が進んでいくかという問題、これはこうしたものの医師法等と の関係での前提の整備と進んで、平行して進んでいく話であろう。  先ほど航空機への搭載に関しまして、国土交通省サイドで、航空機における必要なイ クイップメントとしてのAEDの配置について検討会は進められてた。それと、時間的 にはこちらのほうは遅れましたが、医師法の適用解釈についての対応がなされた。こう した車の両輪みたいな関係で使用の前提となる医師法の適用解釈。それから、それぞれ の人の集まるもの、人が利用する機関がどういうものを備えるべきかというと、おそら く平行して進んでいくものなのだろうと。  今回お集まりのメンバーの構成等も、前者の医師法との関係で、特に救急医療なり、 救命措置を安全かつ有効に行うという観点から、今回の検討会にご参集いただいており ます。本日ご提起になった問題だけでも大変、広汎多岐な切り口がありますので、まず そちらのほうに集中的にご議論を賜れればと思っている次第です。 ○島崎座長  やることは問題がないけれども、いま言った法律との兼ね合い等があるので、そこの ところをきっちりと抑えてやっていただきたいというのが、事務局の本音かという気は するのですが、とはいえ、いまいろいろお話いただいた中では、できるだけ枠を設けず にやっていったほうが、本来のAEDの効果が上がるのではないかという意見も当然あ ります。それも含めて今後検討させていただくということになろうかと思います。他に 何かありますか。  議論は、各論的に言いますと、これからいまご意見をいただいた内容を、一つひとつ つぶしていくと言いますか、埋めていくことになると思います。本日はもう時間もきて おりますので、ただいまのご議論でこの話を終わらせていただきたいと思います。一応 議題の中にその他というのがありますが、いまのディスカッション以外のことで、何か ありますか。  ないようでしたら本会議はこれで終わりたいと思いますが、事務局のほうから、何か 連絡事項等ありますか。 ○指導課長補佐  お手元に次回の日程等につきましての出欠確認の表があるかと思います。できれば今 週中に、事務局のほうにファックスのほうを願えればと思っております。よろしくお願 い申し上げます。 ○島崎座長  これをもちまして第1回の会議を終了します。どうもありがとうございました。                         ┌─────────────┐                         │ 照会先         │                         │ 厚生労働省医政局指導課 │                         │ TEL 03-5253-1111   │                         │ 佐藤(内線2554)    │                         │ 中田(内線2559)    │                         └─────────────┘