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認定基準の新旧対照表

改正後 現行
 神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準
第1  神経系統の機能又は精神の障害と障害等級
 右に同じ
5 神経系統の機能又は精神
(1) 神経系統の機能又は精神の障害と障害等級
 神経系統の機能又は精神の障害については、障害等級表上、次のごとく神経系統の機能又は精神の障害並びに局部の神経系統の障害について等級を定めている。
(イ) 神経系統又は精神の障害
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第1級の3
経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第2級の2の2
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
第3級の3
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第5級の1の2
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第7級の3
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第9級の7の2
(ロ) 局部の神経系統の障害
局部にがん固な神経症状を残すもの
第12級の12
局部に神経症状を残すもの
第14級の9
 2  中枢神経系に分類される脳又はせき髄の損傷による障害は、複雑な症状を呈するとともに身体各部にも様々な障害を残すことが多いことから、中枢神経系の損傷による障害が複数認められる場合には、末梢神経による障害も含めて総合的に評価し、その認定に当たっては神経系統の機能又は精神の障害の障害等級によること。
 ただし、脳又はせき髄の損傷により生じた障害が単一であって、かつ、当該障害について障害等級表上該当する等級がある場合(準用等級を含む。)には、神経系統の機能又は精神の障害の障害等級によることなく、その等級により認定すること(後記第3参照)。
   ロ  神経系統の機能又は精神の障害については、原則として、脳、せき髄、末梢神経系にわけてそれぞれの等級により併合の方法を用いて準用等級を定めること。
 ただし、脳、せき髄及び末梢神経系にわけることが困難な場合にあっては、総合的に認定すること。
 ハ 削除
   ハ  器質的又は機能的障害を残し、かつ、局部に第12級又は第14級程度の疼痛などの神経症状を伴う場合は、これを個々の障害としてとらえることなく、器質的又は機能的障害と神経症状のうち、上位の等級により認定すること。
第2  障害等級認定の基準
 神経系統の機能又は精神の障害については、その障害により、第1級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの」、第2級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの」、第3級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの」、第5級は「極めて軽易な労務にしか服することができないもの」、第7級は「軽易な労務にしか服することができないもの」、第9級は「通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの」、第12級は「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」及び第14級は第12級よりも軽度のものが該当するものであること。
(2) 障害等級認定の基準
 神経系統の機能又は精神の障害については、その障害により、第1級は「自用を弁ずることができないもの」、第2級は「多少自用を弁ずることができる程度のもの」、第3級は「自用を弁ずることはできるが、終身にわたり労務に服することができないもの」、第5級は「自用を弁ずることができるが、労働能力に著しい支障が生じ、終身極めて軽易な労務にしか服することができないもの」、第7級は「一応労働することはできるが、労働能力に支障が生じ、軽易な労務にしか服することができないもの」、第9級は「通常の労働を行うことはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの」、第12級は「他覚的に神経系統の障害が証明されるもの」及び第14級は第12級よりも軽度のものが該当するものであること。
 1 脳の障害
(1)  器質性の障害
 脳の器質性障害については、「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で、「高次脳機能障害」の程度、「身体性機能障害」の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断すること。たとえば高次脳機能障害が第5級に相当し、軽度の片麻痺が第7級に相当するから、併合の方法を用いて準用等級第3級と定めるのではなく、その場合の全体病像として、第1級の3、第2級の2の2又は第3級の3のいずれかに認定すること。
 高次脳機能障害
 高次脳機能障害については、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力の4つの能力(以下「4能力」という。)の各々の喪失の程度に着目し、評価を行うこと。その際、複数の障害が認められるときには、原則として障害の程度の最も重篤なものに着目して評価を行うこと。たとえば、意思疎通能力について第5級相当の障害、問題解決能力について第7級相当の障害、社会行動能力について第9級相当の障害が認められる場合には、最も重篤な意思疎通能力の障害に着目し、第5級の1の2として認定すること。
 ただし、高次脳機能障害による障害が第3級以上に該当する場合には、介護の要否及び程度を踏まえて認定すること。
 また、以下に掲げた高次脳機能障害に関する障害の程度別の例は例示の一部であり、認定基準に示されたもの以外の4能力の喪失の程度別の例については、別添2「神経系統の機能又は精神の障害に関する医学的事項等」(以下「別添2」という。)の別紙「高次脳機能障害整理表」を参考にすること。
 なお、高次脳機能障害は、脳の器質的病変に基づくものであることから、MRI、CT等によりその存在が認められることが必要であること。
 また、神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断をすることなく、4能力の障害の程度により障害等級を認定すること。

















注1  高次脳機能障害とは認知、行為(の計画と正しい手順での遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態であるとされており、全般的な障害として意識障害や痴ほうも含むとされている。
 4能力を評価する際の要点については、別添2の第1の1を参照のこと。
 認定基準に定める4能力の喪失の程度と「高次脳機能障害整理表」に定める4能力の喪失の程度との関係については、別添2の第1の2を参照のこと。
 神経心理学的な各種テスト等の検査結果は臨床判定の際の有効な手段であるが、知能指数が高いにもかかわらず高次脳機能障害のために生活困難度が高い例がある。

















イ 中枢神経系(脳)の障害
 (ア) 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3とする。
 以下のa又はbが該当する。
a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
b  高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
(イ) 「重度の神経系統の機能又は精神の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3に該当する。
 脳損傷にもとづく高度の片麻痺と失語症との合併、脳幹損傷にもとづく用廃に準ずる程度の四肢麻痺と構音障害との合併など日常全く自用を弁ずることができないもの、又は高度の痴ほうや情意の荒廃のような精神症状のため常時監視を必要とするものが、これに該当する。
 (イ) 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2とする。
 以下のa、b又はcが該当する。
a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
b  高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
c  重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
(ロ) 「高度の神経系統の機能又は精神の障害のため、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2に該当する。
 脳損傷にもとづく運動障害、失認、失行、失語のため自宅内の日常行動は一応できるが、自宅外の行動が困難で、随時他人の介護を必要とするもの及び痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、発作性意識障害の多発、などのため随時他人による監視を必要とするものがこれに該当する。
 (ウ)  「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」は、第3級の3とする。
以下のa又はbが該当する。
a  4能力のいずれか1つ以上の能力の全部が失われているもの


















例1  意思疎通能力が全部失われた
 「職場で他の人と意思疎通を図ることができない」場合
 問題解決能力が全部失われた例
 「課題を与えられても手順とおりに仕事を全く進めることができず、働くことができない」場合
 作業負荷に対する持続力・持久力が全部失われた例
 「作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない」場合
 社会行動能力が全部失われた例
 「大した理由もなく突然感情を爆発させ、職場で働くことができない」場合


















b  4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
(ハ) 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の神経系統の機能又は精神の障害のために終身にわたりおよそ労務につくことができないもの」は、第3級の3に該当する。
 四肢の麻痺、感覚異常、錐体外路症状及び失語等いわゆる大脳巣症状、人格変化(感情鈍麻及び意欲減退等)又は記憶障害などの高度なものが、これに該当する。







 麻痺の症状が軽度で、身体的には、能力が維持されていても精神の障害のため他人が常時付き添って指示を与えなければ、全く労務の遂行ができないような人格変化が認められる場合は、第3級の3とする。






 (エ)  「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2とする。
以下のa又はbが該当する。
a  4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの






問題解決能力の大部分が失われている例
「1人で手順とおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない」場合






b  4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
(ニ) 「神経系統の機能又は精神の著しい障害のため、終身にわたりきわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2に該当する。
 神経系統の機能の障害による身体的能力の低下又は精神機能の低下などのため、独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていない場合が、これに該当する。





例 他人のひんぱんな指示がなくては労務の遂行ができない場合、又は、労務遂行の巧緻性や持続力において平均人より著しく劣る場合等はこれに含まれる



 (オ)  「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」は、第7級の3とする。
 以下のa又はbが該当する。
a  4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの






問題解決能力の半分程度が失われているものの例
「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、時々助言を必要とする」場合






b  4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
(ホ)  「中等度の神経系統の機能又は精神の障害のために、精神身体的な労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」は、第7級の3に該当する。
 なお、「労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」とは、独力では一般平均人の1/2程度に労働能力が低下していると認められる場合をいい、労働能力の判定にあたっては、医学的他覚所見を基礎とし、さらに労務遂行の持続力についても十分に配慮して総合的に判断すること。
 (カ)  「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。
 高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当する。






問題解決能力の相当程度が失われているものの例
「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする」場合





(ヘ) 「一般的労働能力は残存しているが、神経系統の機能又は精神の障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
 身体的能力は正常であっても、脳損傷にもとづく精神的欠損症状が推定される場合、てんかん発作やめまい発作発現の可能性が、医学的他覚所見により証明できる場合あるいは軽度の四肢の単麻痺が認められる場合など(たとえば、高所作業や自動車運転が危険であると認められる場合)が、これに該当する。
 (キ)  「通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。
 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する。
(ト) 「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は精神の障害を残すもの」は、第12級の12に該当する。
 中枢神経系の障害であって、たとえば、感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等を残しているものが、これに該当する。
 なお、自覚症状が軽い場合であっても、これらの異常所見が認められるものは、これに該当する。
 (ク)  「通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第14級の9とする。
 MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当する。
(チ) 「労働には通常差し支えないが、医学的に可能な神経系統又は精神の障害に係る所見があると認められるもの」は、第14級の9に該当する。
 医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかではないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものが、これに該当する。
 イ 身体性機能障害
 (ア)  脳の損傷による身体性機能障害については、麻痺の範囲(四肢麻痺、片麻痺及び単麻痺)及びその程度(高度、中等度及び軽度)並びに介護の有無及び程度により障害等級を認定すること。
 麻痺の程度については、運動障害の程度をもって判断すること。
 ただし、麻痺のある四肢の運動障害(運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障)がほとんど認められない程度の麻痺については、軽度の麻痺に含めず、第12級の12として認定すること。
 なお、麻痺の範囲及びその程度については、身体的所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできることを要するものである。















注1  四肢麻痺とは両側の四肢の麻痺、片麻痺とは一側上下肢の麻痺、対麻痺とは両下肢又は両上肢の麻痺、単麻痺とは上肢又は下肢の一肢のみの麻痺をいう。
 脳の損傷による麻痺については、四肢麻痺、片麻痺又は単麻痺が生じ、通常対麻痺が生じることはない。
 麻痺には運動障害及び感覚障害があるが、脳損傷により運動障害が生じた場合には通常運動障害の範囲に一致した感覚障害(感覚脱失又は感覚鈍麻等)が随伴する。















 (イ)  麻痺の程度については以下のとおりである。
a  麻痺が高度とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができないものをいう。
 具体的には、以下のものをいう。
(a)  完全強直又はこれに近い状態にあるもの
(b)  上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
(c)  下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの
(d)  上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの
(e)  下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの
b  麻痺が中等度とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいう。
 たとえば、次のようなものがある。
(a)  上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね 500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの
(b)  下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの
c  麻痺が軽度とは、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているものをいう。
 たとえば、次のようなものがある。
(a)  上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの
(b)  下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの

 (ウ)  身体性機能障害については、以下の基準により第1級〜第12級の7段階で認定すること。
  
a  「身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3とする。
 以下のものが該当する。
(a)  高度の四肢麻痺が認められるもの
(b)  中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(c)  高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(イ) 「重度の神経系統の機能又は精神の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3に該当する。
 脳損傷にもとづく高度の片麻痺と失語症との合併、脳幹損傷にもとづく用廃に準ずる程度の四肢麻痺と構音障害との合併など日常全く自用を弁ずることができないもの、又は高度の痴ほうや情意の荒廃のような精神症状のため常時監視を必要とするものが、これに該当する。
  b  「身体性機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2とする。
 以下のものが該当する。
(a)  高度の片麻痺が認められるもの
(b)  中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
(ロ) 「高度の神経系統の機能又は精神の障害のため、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2に該当する。
 脳損傷にもとづく運動障害、失認、失行、失語のため自宅内の日常行動は一応できるが、自宅外の行動が困難で、随時他人の介護を必要とするもの及び痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、発作性意識障害の多発、などのため随時他人による監視を必要とするものがこれに該当する。
  c  「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、身体性機能障害のため、労務に服することができないもの」は、第3級の3とする。
 中等度の四肢麻痺(上記の(ウ)のa又はbに該当するものを除く。)が認められるものが該当する。
(ハ) 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の神経系統の機能又は精神の障害のために終身にわたりおよそ労務につくことができないもの」は、第3級の3に該当する。
 四肢の麻痺、感覚異常、錐体外路症状及び失語等いわゆる大脳巣症状、人格変化(感情鈍麻及び意欲減退等)又は記憶障害などの高度なものが、これに該当する。





例 他人のひんぱんな指示がなくては労務の遂行ができない場合、又は、労務遂行の巧緻性や持続力において平均人より著しく劣る場合等はこれに含まれる。



  d  「身体性機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2とする。
 以下のものが該当する。
(a)  軽度の四肢麻痺が認められるもの
(b)  中等度の片麻痺が認められるもの
(c)  高度の単麻痺が認められるもの
(ニ) 「神経系統の機能又は精神の著しい障害のため、終身にわたりきわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2に該当する。
  神経系統の機能の障害による身体的能力の低下又は精神機能の低下などのため、独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていない場合が、これに該当する。
  e  「身体性機能障害のため、軽易な労務以外には服することができないもの」は、第7級の3とする。
 以下のものが該当する。
(a)  軽度の片麻痺が認められるもの
(b)  中等度の単麻痺が認められるもの
(ホ) 「中等度の神経系統の機能又は精神の障害のために、精神身体的な労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」は、第7級の3に該当する。
 なお、「労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」とは、独力では一般平均人の1/2程度に労働能力が低下していると認められる場合をいい、労働能力の判定にあたっては、医学的他覚所見を基礎とし、さらに労務遂行の持続力についても十分に配慮して総合的に判断すること。
  f  「通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。
 軽度の単麻痺が認められるものが該当する。
(ヘ) 「一般的労働能力は残存しているが、神経系統の機能又は精神の障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
 身体的能力は正常であっても、脳損傷にもとづく精神的欠損症状が推定される場合、てんかん発作やめまい発作発現の可能性が、医学的他覚所見により証明できる場合あるいは軽度の四肢の単麻痺が認められる場合など(たとえば、高所作業や自動車運転が危険であると認められる場合)が、これに該当する。
  g  「通常の労務に服することはできるが、身体性機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。
 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すものが該当する。
 また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるものも該当する。







例1  軽微な随意運動の障害又は軽微な筋緊張の亢進が認められるもの
 運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一上肢又は一下肢の全域にわたって認められるもの






(ト) 「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は精神の障害を残すもの」は、第12級の12に該当する。
 中枢神経系の障害であって、たとえば、感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等を残しているものが、これに該当する。
 なお、自覚症状が軽い場合であっても、これらの異常所見が認められるものは、これに該当する。
  右の注は削除



























注1  中枢神経系(脳)の負傷又は疾病による障害については、その多岐にわたる臨床症状のうえから、精神障害と神経系統の障害を区別して考えることは医学上からも不自然であり、実際にも細目を定めることが困難であるので、原則として、それらの諸症状を総合し、全体病像から判断して障害等級を認定すべきである。したがって、たとえば精神障害が第5級に相当し、片麻痺が第7級に相当するから、併合の方法を用いて準用等級第3級と定めるのではなく、その場合の全体病像として、第1級に該当するか第3級に該当するかを認定しなければならない。
 なお、その認定にあたっては、精神神経科、脳神経外科、神経内科、眼科、耳鼻咽喉科等の専門医の診断が必要であり、これらの総合知見を要する場合が多い。
 第1級にいう「常に他人の介護を要するもの」とは、家族を含め、いわゆる第三者の介護、監視を要する場合をいい、医師又は看護婦の介護、監視の意味ではない。医師や看護婦の医療介護を中止すれば、生命の維持が危ぶまれるごとき重症者に対しては、「治ゆ」の状態に至ったとは判断すべきではない。(以下、第1級について同様である。



























(2) 非器質性の障害
 脳の器質的損傷を伴わない精神障害(以下「非器質性精神障害」という。)については、以下の基準によること。
 非器質性精神障害の後遺障害
 非器質性精神障害の後遺障害が存しているというためには、以下の(ア)の精神症状のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、(イ)の能力に関する判断項目のうち1つ以上の能力について障害が認められることを要すること。
(ア)  精神症状
(1)  抑うつ状態
(2)  不安の状態
(3)  意欲低下の状態
(4)  慢性化した幻覚・妄想性の状態
(5)  記憶又は知的能力の障害
(6)  その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)



 各精神症状の内容については、別添2の第2の1を参照のこと。



(イ)  能力に関する判断項目
(1)  身辺日常生活
(2)  仕事・生活に積極性・関心を持つこと
(3)  通勤・勤務時間の遵守
(4)  普通に作業を持続すること
(5)  他人との意思伝達
(6)  対人関係・協調性
(7)  身辺の安全保持、危機の回避
(8)  困難・失敗への対応

 就労意欲の低下等による区分
(ア)  就労している者又は就労の意欲のある者
 現に就労している者又は就労の意欲はあるものの就労はしていない者については、アの(ア)の精神症状のいずれか1以上が認められる場合に、アの(イ)の 能力に関する8つの判断項目(以下「判断項目」という。)の各々について、その有無及び助言・援助の程度(「時に」又は「しばしば」必要)により障害等級を認定すること。
(イ)  就労意欲の低下又は欠落により就労していない者
 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者については、身辺日常生活が可能である場合に、アの(イ)の(1)の身辺日常生活の支障の程度により認定すること。
 なお、就労意欲の低下又は欠落により就労していない者とは、職種に関係なく就労意欲の低下又は欠落が認められる者をいい、特定の職種について就労の意欲のある者については上記イの(ア)に該当するものであること。




 各能力の低下を判断する際の要点については、別添2の第2の2を参照のこと




 障害の程度に応じた認定
 非器質性精神障害は、次の3段階に区分して認定すること。
(ア)  「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。
以下のa又はbが該当する。
a  イの(ア)に該当する場合には、判断項目のうち(2)〜(8)のいずれか1つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの




 非器質性精神障害のため、「対人業務につけない」ことによる職種制限が認められる場合




b  イの(イ)に該当する場合には、身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの

(イ)  「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。
 以下のa又はbが該当する。
a  イの(ア)に該当する場合には、判断項目の4つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているもの




 非器質性精神障害のため、「職種制限は認められないが、就労に当たりかなりの配慮が必要である」場合




b  イの(イ)に該当する場合には、身辺日常生活を適切又は概ねできるもの

(ウ)  「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第14級の9とする。
 判断項目の1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものが該当する。





 非器質性精神障害のため、「職種制限は認められないが、就労に当たり多少の配慮が必要である」場合





 重い症状を残している者の治ゆの判断等
 重い症状を有している者(判断項目のうち(1)の能力が失われている者又は判断項目のうち(2)〜(8)のいずれか2つ以上の能力が失われている者)については、非器質性精神障害の特質上症状の改善が見込まれることから、症状に大きな改善が認められない状態に一時的に達した場合であっても、原則として療養を継続すること。
 ただし、療養を継続して十分な治療を行ってもなお症状に改善の見込みがないと判断され、症状が固定しているときには、治ゆの状態にあるものとし、障害等級を認定すること。
 なお、その場合の障害等級の認定は本認定基準によらずに、本省に協議の上認定すること。
















注1  非器質性精神障害については、症状が重篤であっても将来において大幅に症状の改善する可能性が十分にあるという特質がある。
2  業務による心理的負荷を原因とする非器質性精神障害は、業務による心理的負荷を取り除き、適切な治療を行えば、多くの場合概ね半年〜1年、長くても2〜3年の治療により完治するのが一般的であって、業務に支障の出るような後遺症状を残すケースは少なく、障害を残した場合においても各種の日常生活動作がかなりの程度でき、一定の就労が可能となる程度以上に症状がよくなるのが通常である。
















(ホ) 外傷性神経症(災害神経症)
 外傷又は精神的外傷ともいうべき災害に起因するいわゆる心因反応であって、精神医学的治療をもってしても治ゆしなかったものについては、第14級の9に認定すること。
  右の注は削除






































 外傷性神経症(外傷を契機として発生した器質的変化を証明することができない心因反応をいう。)は、頭部外傷に限らずあらゆる外傷に伴って起こることがある。しかし、外傷のうちでも、頭部外傷とせき椎外傷は、古くから神経症としばしば結びつけられてきた。それは頭部外傷やせき椎外傷が、とくに神経症と密接な関係にあるのではなく、頭痛、腰痛等を主体とした難治の後遺症状が残りやすく、それが客観的所見に乏しく、しかも治療効果をあげにくいことから、外傷性神経症として取り扱われていたものである。
 しかし、近年、頭部外傷による脳の器質性症状が厳密に検査され、頭部外傷症などの病因や病像がかなり明確に理解されるようになってきた。いわゆる外傷性神経症における種々の症状は、外傷に起因して条件的に発展した症状であるから、脳その他の器質性障害の有無には直接の関連性はない。また、当然素因の役割も考えられる。したがって、その症状を神経症として診断するためには、それが脳損傷その他の障害による症状としては、医学的に解釈できないということと、一方では、積極的に心因反応の症状とみなすことができるという両者の根拠がなければならない。いずれもその判別は困難であり、精神神経科などの専門の医師の診断を必要とする場合が多い。
 外傷性神経症の一般的な鑑別点としては、かなり典型的な頭部外傷後遺症などの自覚症状群と異なり、ある一つの症状が極端に強く誇張して訴えられ、他の症状がこれに伴っていないこと、感覚、運動障害などが、神経学的検査で説明不可能なこと、また、症状の変化や消失の状態も合理性をもたないことなどが挙げられる。






































 2 せき髄の障害
 (1)  せき髄の損傷(第2腰椎以下のせき柱内の馬尾神経が損傷された場合も含む。以下同じ。)による障害については、以下によること。
 外傷などによりせき髄が損傷され、対麻痺や四肢麻痺が生じた場合には、広範囲にわたる感覚障害や尿路障害(神経因性膀胱障害)などの腹部臓器の障害が通常認められる。さらには、せき柱の変形や運動障害(以下「せき柱の変形等」という。)が認められることも多い。このようにせき髄が損傷された場合には複雑な諸症状を呈する場合が多いが、せき髄損傷が生じた場合の障害等級の認定は、原則として、脳の身体性機能障害と同様に身体的所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を認定すること。
 ただし、せき髄損傷に伴う胸腹部臓器の障害やせき柱の障害による障害の等級が麻痺により判断される障害の等級よりも重い場合には、それらの障害の総合評価により等級を認定すること。
 なお、せき髄損傷による障害が第3級以上に該当する場合には、介護の要否及び程度を踏まえて認定すること。
























注1  せき柱に外力が加わることにより、せき柱の変形等が生じることがあるとともに、せき髄の損傷が生じた場合には、麻痺や感覚障害、神経因性膀胱障害等の障害が生じる。
 このため、せき髄の損傷による障害に関する認定基準は麻痺の範囲と程度に着目して等級を認定するものとなっているが、各等級は通常伴うそれらの障害も含めて格付したものである。
2  せき髄は、解剖学的には第1腰椎より高位に存在し、第2腰椎以下には存在しないが、第2腰椎以下のせき柱内の馬尾神経が損傷された場合においても、せき髄の損傷による障害である下肢の運動麻痺(運動障害)、感覚麻痺(感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)等が生じることから、せき髄損傷に含めて運用する。また、広義のせき髄損傷には馬尾神経損傷が含まれる。
























 (2)  せき髄の損傷による障害は、次の7段階に区分して等級を認定すること。
 せき髄の障害
 外傷、減圧症又はその他の疾病などによるせき髄の障害は、複雑な諸症状を呈する場合が多いので、原則として、中枢神経系(脳)の場合と同様に、これらの諸症状を総合評価して、その労働能力に及ぼす影響の程度により、次の7段階に区分して等級を認定すること。
  ア  「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3とする。
 以下のものが該当する。
(ア) 高度の四肢麻痺が認められるもの
(イ) 高度の対麻痺が認められるもの
(ウ) 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(エ) 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの






 第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害及び脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形等が認められるもの





 (イ) 「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3に該当する。
  イ  「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2とする。
 以下のものが該当する。
(ア) 中等度の四肢麻痺が認められるもの
(イ) 軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
(ウ) 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの









 第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中等度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害及び脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形が認められるもの








 (ロ) 「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2に該当する
  ウ  「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの」は、第3級の3とする。
 以下のものが該当する。
(ア)  軽度の四肢麻痺が認められるもの(上記イの(イ)に該当するものを除く。)
(イ)  中等度の対麻痺が認められるもの(上記アの(エ)又はイの(ウ)に該当するものを除く。)
 (ハ) 「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作は可能であるが、終身にわたりおよそ労働に服することはできないもの」は、第3級の3に該当する。
  エ  「せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」は、第5級の1の2とする。
 以下のものが該当する。
(ア)  軽度の対麻痺が認められるもの
(イ)  一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
 (ニ) 「麻痺その他の著しいせき髄症状のため、独力では一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。
  オ  「せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」は、第7級の3とする。
一下肢の中等度の単麻痺が認められるものが該当する。







例 第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の中等度の
単麻痺が生じたために、杖又は硬性装具なしには階段をのぼることができないととともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの






 (ホ) 「明らかなせき髄症状のため、独力では一般平均人の1/2程度の労働能力しか残されていないもの」は、第7級の3に該当する。
  カ  「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。
一下肢の軽度の単麻痺が認められるものが該当する。







 第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの






 (ヘ) 「一般的労働能力はあるが、明らかなせき髄症状が残存し、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
  キ  「通常労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。
 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すものが該当する。
 また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるものも該当する。






例1  軽微な筋緊張の亢進が認められるもの
2  運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの





 (ト) 「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうるせき髄症状を残すもの」は、第12級の12に該当する。
  右の注は削除






































































 強い外力がせき柱に作用した場合(胸・腰椎移行部の損傷が一番多く、頸部がこれに次ぎ、上部胸椎部、下部腰椎部の損傷が少ない)、せき柱管内に包蔵されたせき髄が損傷を受けることがあり、これを外傷性せき髄損傷という。この場合には、せき椎の圧迫骨折や脱臼骨折を伴うことが多いが、骨に明らかな損傷がない場合にもせき髄の損傷はおこりうる。また、まれにはせき椎の骨折や脱臼があってもせき髄が全く損傷をうけないこともある。
 せき髄損傷の程度により、四肢等の運動障害、感覚障害、腸管機能障害、尿路機能障害又は生殖器機能障害等が発現するが、それらは必ずしもすべてが非可逆的ではなく、せき髄に作用した外力の程度によっては、自然経過として、又は治療によって程度の差はあるが、ある程度の回復は期待できることがある。しかし、重篤な場合は、せき髄が解剖学的に完全に切断される場合もある。
 せき髄が損傷されると、その臨床症状は、損傷の生じた部位によって異なり、四肢麻痺あるいは対麻痺(下半身麻痺)となるが、たとえば、胸椎下部から下の損傷には、しばしば下肢が完全に麻痺したり、あるいは多少の運動ができても感覚が鈍麻することは、一般によく知られている。前者を完全麻痺又は横断麻痺、後者を不完全麻痺という。また、四肢の麻痺の型には、弛緩性麻痺と痙性麻痺とがある。前者は俗にいう麻痺肢のブラブラになった状態のものをさし、せき髄前角細胞以下の末梢神経(第2ニューロン以下)の損傷によって生じ、後者は四肢筋肉の緊張が異常に亢進し、かつ錐体路障害を示す病的反射を証明するものである。せき髄は、どの高さの部分で損傷を受けたかによって、発現する運動、感覚麻痺の範囲が定まるので、逆にその症状によって損傷の部位を診断することができる。
 さらに、せき髄損傷は、せき髄の全断面にわたって生じた場合と、いずれか半側又は一部に生じた場合とによって、その症状が異なる。前者の場合は、障害部位から下方の感覚脱失又は感覚鈍麻が、運動麻痺とほぼ同じ範囲に生ずる。せき髄損傷による感覚過敏は、いわゆる完全横断損傷の場合にも生じ、時には後根刺激状態としての感覚過敏帯を証明することもある。馬尾神経がある部位の損傷(腰仙椎)では、筋の反射消失を伴う弛緩性麻痺が生じ、筋肉の萎縮、腰髄・仙髄に当る後根の感覚脱失をみる。
 また、せき髄が完全又はこれに近い程度に損傷された場合には、上述の障害のほかに、腸管機能障害(腸の蠕動が障害されるために内容物が停滞し、便秘を呈し、その甚だしいものは腸閉塞様となる。)、尿路機能障害(尿失禁の状態となり、これは重い化膿性炎症の原因を作り、上行性に尿路炎、腎盂炎をひきおこす場合もある。)を生じ、さらに、生殖器機能障害をも伴う。
 減圧症にあっては、その神経系統の障害は脳とせき髄にわたり多発性病巣を生ずるものであるので、症状は甚だ多彩であり、障害等級認定にあたっては、その症状の分析を基礎とした総合的判断が特に必要とされる。






































































 3  末梢神経障害
 末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定すること。
 根性及び末梢神経障害
 根性及び末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級を準用すること。
 4 その他特徴的障害
(1) 外傷性てんかん
右のaは削除
その他特徴的障害
(イ) 外傷性てんかん
 てんかんの治ゆの時期は、療養効果が期待できないと認められるとき又は療養により症状が安定したときとすること。
  ア  外傷性てんかんに係る等級の認定は発作の型、発作回数等に着目し、以下の基準によること。
 なお、1ヵ月に2回以上の発作がある場合には、通常高度の高次脳機能障害を伴っているので、脳の高次脳機能障害に係る第3級以上の認定基準により障害等級を認定すること。










 上記4の(1)のアのなお書きの趣旨は、第5級を超える頻度、すなわち、「1ヵ月に2回以上の発作がある場合」には、医学経験則上そのような症状で「てんかん」発作のみが単独で残存することは想定しがたく、通常は脳挫傷があり、高度な高次脳機能障害を残す状態でてんかん発作を伴っているケースが考えられることによる。









    b  外傷性てんかんに係る等級の認定は発作型のいかんにかかわらず、発作回数、発作の労働能力に及ぼす影響の程度、非発作時の精神症状等を総合的に判断し、中枢神経系(脳)の障害の認定の基準に従い、次によること。
   右の(a)及び(b)は、削除
    (a) 「十分な治療にかかわらず、意識障害を伴う発作の多発(平均して1週間1回以上程度のもの)するもの」は第2級の2の2に該当する。
(b) 「十分な治療にかかわらず、発作に伴う精神の障害のため、終身労務に服することができないもの」は第3級の3に該当する。
  (ア) 「1ヵ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」(以下「転倒する発作等」という。)であるもの」は、第5級の1の2とする。

















例1  転倒する発作には、「意識消失が起こり、その後ただちに四肢等が強くつっぱる強直性のけいれんが続き、次第に短時間の収縮と弛緩をくりかえす間代性のけいれんに移行する」強直間代発作や脱力発作のうち「意識は通常あるものの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの」が該当する。
2  「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」には、意識混濁を呈するとともにうろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないものが該当する。
















    (c) 「十分な治療にかかわらず、発作の頻度又は発作型の特徴などのため一般平均人の1/4程度の労働能力しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。
 なお、てんかんの特殊性からみて就労可能な職種が極度に制限されるものは、これに該当する。
  (イ) 「転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヵ月に1回以上あるもの」は、第7級の3とする。
    (d) 「十分な治療にかかわらず、1ヵ月に1回以上の意識障害を伴う発作があるか、又は発作型の特徴などのため一般平均人の1/2程度の労働能力しか残されていないもの」は、第7級の3に該当する。
 なお、てんかんの特殊性からみて就労可能な職種が著しく制限されるものは、これに該当する。
  (ウ) 「数ヵ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」は、第9級の7の2とする。
  (エ) 「発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの」は、第12級の12とする。
    (e) 「服薬を継続する限りにおいては、数ヵ月に1回程度又は完全に発作を抑制しうる場合、もしくは発作の発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの」は、第9級の7の2に該当する。
   右の注は削除


















































































 てんかんは、反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害であり、そのてんかん発作とは、大脳のある部分の神経細胞が発作性に異常に過剰な活動を起こし、これがある程度広範な領域の神経細胞をまきこんで、一斉に興奮状態に入った場合に生ずる運動感覚、自律神経系又は精神などの機能の一過性の異常状態のことである。したがって、てんかんの原因は、神経細胞の生来の性質のほか、脳の器質性疾病や外傷など多岐にわたり、また発作発現の誘因としては、さらに多くの身体的条件が関与するものである。
 ここに「外傷性てんかん」の項を設けたが、これは、業務に起因するてんかんのうちの代表例として挙げたものであって、脳を侵かす各種中毒症によってもてんかんが発症することがある。
 頭部外傷とてんかんの因果関係の認定については、困難な場合が多いが、明らかな頭部外傷後2ないし3ヵ月以後にてんかん発作が初発し、遺伝的素因や乳幼児期の痙攣発作の既往が否定される場合には、たとえ純粋の外傷性てんかんでなくとも、頭部外傷が、てんかん症状の発現に相当の因果関係をもったものと認めざるを得ないことがある。
 てんかんの分類は、現在なお国際的にも定まっていないが、ここで通常みられる発作型を挙げると、大発作、焦点発作(焦点性運動発作、ジャクソン型発作及び焦点性感覚発作が含まれる。)及び精神運動発作などがある。
 同一人が、2つ以上の発作をもつことは、しばしばあり、また、経過中に変化していくものもある。これらの発作の反復によって、脳がさらに2次的に障害を生ずることもある。
 発作型、適正な治療方法又は2次的な脳損傷の程度などについての正しい判定には、てんかん発作、脳波、神経学的及び精神医学的所見などの総合による専門の医師の診断が必要である。
 前記のようなてんかん発作は、あくまでも一過性の精神神経系統の異常状態であるから、非発作時には正常な精神神経系統の機能を維持している場合が少なくない。したがって、てんかんの労働に対する直接の影響は、てんかん発作によってそれがどのような形で中断されるかという点にあり、その際の危険度に応じ、また、発作の頻度に応じて全般的な労働への制限が考えられ、障害等級の認定にあたってはその点に留意して非発作時のみならず、発作に対応する職種の制限をみて行わねばならない。
 さらに、発作とともに重視すべきものとしては、てんかん発作の反復によって、性格の変化その他の精神障害が進行する場合があることで、その高度のものは痴ほうあるいは人格崩壊にいたり、てんかん性精神病というべき状態となることである。
 てんかんの治療は、薬物療法が基本となるものであって、手術的療法(発作焦点となっている脳の部分切除等)を行った場合でも薬物療法は引き続き長期間にわたり行わなくてはならないことが多い。そして、薬物の継続服用によって、てんかん発作を完全に抑制することが治療の目的である。発作が完全に抑制された場合はもちろんであるが、ある程度の発作があっても症状が安定してきた場合には、なるべく早く社会復帰を指導することが望ましい。
 なお、この項に、第1級の障害を入れていないのは、てんかんのため常時介護を要する程度の症状であれば、当然療養の対象となるものであることによる。また、十分な治療にもかかわらず、頻回の発作のため、終身労務に服することができないと認められるもののうちには療養を必要とするものも少なくないので留意する必要がある。


















































































  (2)  頭痛
 頭痛については、頭痛の型の如何にかかわらず、疼痛による労働又は日常生活上の支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定すること。
  (ロ) 頭痛
  ア  「通常の労務に服することはできるが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
  イ  「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの」は、第12級の12に該当する。
  ウ  「通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの」は、第14級の9に該当する。
  a 「一般的に労働能力は残存しているが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
  b 「労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの」は、第12級の12に該当する。
  c 「労働には差し支えないが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの」は、第14級の9に該当する。
注 頭痛あるいは頭重感の発現機序は多様であり、それら頭痛型の診断については困難な場合も少なくないが、頭部外傷後又は各種中毒症等の後に障害として残存する主な型としては、次のようなものがある。
   右の注は削除













  1  頭部の挫傷、創傷の加わった部位より生ずる疼痛
 血管性頭痛(動脈の発作性拡張によって生ずるもので片頭痛というのはこの型の1つである。)
  3  筋攣縮性頭痛(頸部、頭部の筋より疼痛が発生するもの)
  4  頸性頭痛(後頸部交感神経症候群)
  5  大後頭部神経痛など上位頸神経の神経痛または三叉神経痛(後頭部から顔面や眼にかけての疼痛)
  6  心因性頭重













(3)  失調、めまい及び平衡機能障害
失調、めまい及び平衡機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定すること。
(ハ) 失調、めまい及び平衡機能障害
 ア  「生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することができないもの」は第3級の3に該当する。
 a 「生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身にわたりおよそ労務に就くことができないもの」は第3級の3に該当する。
 イ  右に同じ
 b 「著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの」は、第5級の1の2に該当する。
 ウ  右に同じ
 c 「中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの」は第7級の3に該当する。
 エ  「通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
 d 「一般的な労働能力は残存しているが、めまいの自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められるもの」は、第9級の7の2に該当する。
 オ  「通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの」は、第12級の12に該当する。
 e 「労働には通常差し支えないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの」は、第12級の12に該当する。
 カ  「めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの」は、第14級の9に該当する。
 f 「めまいの自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」は、第14級の9に該当する。
     右の注は削除













 頭部外傷後又は中枢神経系(脳及びせき髄)の疾病に起因する失調、めまい及び平衡機能障害は、内耳機能によるのみならず、小脳、脳幹部、前頭葉又はせき髄など中枢神経系の障害によって発現する場合が多いものである。また、頸性頭痛症候群のなかに含めてよい頸部自律神経障害によるめまいも少なくない。
 これらの症状は、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定すべきである。













(4) 疼痛等感覚障害
 ア  受傷部位の疼痛及び疼痛以外の感覚障害については、次により認定すること。
(ア)  疼痛
a  「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」は、第12級の12とする。
b  「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」は、第14級の9とする。
(イ)  疼痛以外の感覚障害
 疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第14級の9に認定すること。
 (ニ) 疼痛等感覚異常
  c  受傷部位の疼痛については、次により認定すること。
(a)  「労働には通常差し支えないが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」は、第12級の12に該当する。
(b)  「労働には差し支えないが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」は、第14級の9に該当する
 なお、神経損傷により、疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第14級の9に認定することとなる。
   右のaは削除
  a  脳神経及びせき髄神経の外傷その他の原因による神経痛については、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して次のごとく等級の認定を行うこと。
(a)  「軽易な労働以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの」は、第7級の3に該当する。
(b)  「一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2に該当する。
(c)  「労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの」は、第12級の12に該当する。
 イ  特殊な性状の疼痛
(ア)  カウザルギーについては、疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して次のごとく等級の認定を行うこと。
a  「軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの」は、第7級の3とする。
b  「通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。
c  「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの」は、第12級の12とする。
(イ)  反射性交換神経性ジストロフィー(RSD)については、(1)関節拘縮、(2)骨の萎縮、(3)皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り、カウザルギーと同様の基準により、それぞれ第7級の3、第9級の7の2、第12級の12に認定すること。
  b  カウザルギーについては、aと同様の基準により、それぞれ第7級の3、第9級の7の2、第12級の12に該当する。



















 外傷後疼痛が治ゆ後も消退せず、疼痛の性質、強さなどについて病的な状態を呈することがある。この外傷後疼痛のうち特殊な型としては、末梢神経の不完全損傷によって生ずる灼熱痛(カウザルギー)があり、これは、血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化(ズデック萎縮)などを伴う強度の疼痛である。
 また、これに類似して、例えば尺骨神経等の主要な末梢神経の損傷がなくても、微細な末梢神経の損傷が生じ、外傷部位に、同様の疼痛がおこることがある(反射性交換神経性ジストロフィー(RSD)という。)が、その場合、エックス線写真等の資料により、上記の要件を確認することができる。
 なお、障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然的経過によって消退すると認められるものは、障害補償の対象とはならない。








































 外傷が治ゆするまでの経過中に、疼痛の性質、強さなどについて病的な状態を呈することがある。この外傷後疼痛のうち特殊な型としては、四肢又はその他の神経の不完全損傷によって生ずる灼熱痛(カウザルギー)があり、これは、血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化(ズデック萎縮)などを伴う強度の疼痛である。
 また、これに類似して、神経幹の損傷がなくても、外傷部位に、同様の、しかし軽度の疼痛がおこることがある(小さなカウザルギーともいわれる。)。
 このような疼痛は、医学的に異常な疼痛の原因が説明されうるものであるから、消退することなく残存した場合は障害補償の対象となる。
 なお、障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然的経過によって消退すると認められるものは、障害補償の対象とはならない。





















第3  その他
  準用及び併合に係る部分は、削除
(3) 併合、準用
 併合
 せき柱の骨折のため、せき柱の変形又は運動障害を残すとともにせき髄損傷により、たとえば、1下肢の完全麻痺のように他の部位に機能的障害を残した場合は、これらを併合して等級を認定すること。
 準用
(ハ) 神経麻痺が、他覚的に証明される場合であって、障害等級表上、当該部位の機能的障害に係る等級がない場合は、第12級を準用すること。
 1  脳損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により認定すること。
(イ) 中枢神経系の脱落症状として、四肢、感覚器等に機能障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級がある場合には、その等級を中枢神経系の障害の準用等級として定めること。




  1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生ずるが、この場合は、視野障害の等級として定められている第9級の3により認定する。






  ただし書き以下は削除









 1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生ずるが、この場合は、視野障害の等級として定められている第9級の3を準用する。
 ただし、言語中枢の損傷にもとづく失語症については、通常は他の神経系統の機能又は精神の障害を伴うので、単なる言語機能の障害のみでなく、それらを総合的に判断して等級を認定すること。









 2  せき髄損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により認定すること。





 第4仙髄の損傷のため軽度の尿路障害(第11級の9)が生じた場合は、胸腹部臓器の障害として定められている第11級の9により認定する。




(ロ) せき髄損傷により、身体各部に機能的障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級がある場合は、その等級をせき髄の障害の準用等級として定めること。





  せき髄損傷のため1下肢の完全麻痺(第5級の5)と軽度の尿路障害(第11級の9)が生じた場合は、併合の方法を用いて第4級とする。






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