第1 | 神経系統の機能又は精神の障害と障害等級 | ||||||||||||||||||||||
1 | 神経系統の機能又は精神の障害については、障害等級表上、次のごとく神経系統の機能又は精神の障害並びに局部の神経系統の障害について等級を定めている。
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2 | 中枢神経系に分類される脳又はせき髄の損傷による障害は、複雑な症状を呈するとともに身体各部にも様々な障害を残すことが多いことから、中枢神経系の損傷による障害が複数認められる場合には、末梢神経による障害も含めて総合的に評価し、その認定に当たっては神経系統の機能又は精神の障害の障害等級によること。 ただし、脳又はせき髄の損傷により生じた障害が単一であって、かつ、当該障害について障害等級表上該当する等級がある場合(準用等級を含む。)には、神経系統の機能又は精神の障害の障害等級によることなく、その等級により認定すること(後記第3参照)。 |
第2 | 障害等級認定の基準 神経系統の機能又は精神の障害については、その障害により、第1級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの」、第2級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの」、第3級は「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの」、第5級は「極めて軽易な労務にしか服することができないもの」、第7級は「軽易な労務にしか服することができないもの」、第9級は「通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの」、第12級は「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」及び第14級は第12級よりも軽度のものが該当するものであること。 |
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1 | 脳の障害
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2 | せき髄の障害 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3 | 末梢神経障害 末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定すること。 |
4 | その他特徴的障害
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第3 | その他 | |||||
1 | 脳損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により認定すること。
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2 | せき髄損傷により障害を生じた場合であって、当該障害について、障害等級表上、該当する等級(準用等級を含む。)があり、かつ、生じた障害が単一であるときは、その等級により認定すること。
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第1 | 高次脳機能障害 | ||||||||||||
1 | 評価の着眼点 高次脳機能障害は、4能力に係る喪失の程度により評価を行う。評価を行う際の要点は以下のとおりである。
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2 | 高次脳機能障害整理表 高次脳機能障害の障害認定は、上記の4能力に係る喪失の程度に応じた認定基準に従って行うものであるが、別紙の高次脳機能障害整理表は、障害の程度別に能力喪失の例を参考として示したものである。 なお、別紙の高次脳機能障害整理表の「喪失の程度」の欄と認定基準における労働能力の喪失の程度の関係は、以下のとおりである。
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第2 | 非器質性精神障害 | ||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 精神症状 精神症状については、抑うつ状態、不安の状態、意欲低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の状態、記憶又は知的能力の障害及びその他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)の6つの症状の有無等に着目することとしているが、その内容は以下のとおりである。
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2 | 能力に関する判断項目 非器質性精神障害については、8つの能力について、能力の有無及び必要となる助言・援助の程度に着目し、評価を行う。評価を行う際の要点は以下のとおりである。
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3 | 重い障害を残している者の例 業務による心理的負荷を原因とする非器質性精神障害は、業務による心理的負荷を取り除き、適切な治療を行えば、多くの場合概ね半年〜1年、長くても2〜3年の治療により完治するのが一般的であるが、非常にまれに「持続的な人格変化」を認めるという重篤な症状が残存することがあり、その場合には本省にりん伺の上、障害等級を認定する必要がある。 「人格変化」を認める場合とは、
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4 | 障害の程度の判断 非器質性精神障害の後遺障害の場合、症状が固定する時期にあっても、症状や能力低下に変動がみられることがあるが、その場合には良好な場合のみ、あるいは悪化した場合のみをとらえて判断することなく、療養中の状態から判断して障害の幅を踏まえて判断するのが適当である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
第3 | せき髄損傷 | ||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 麻痺の分類 せき髄が損傷された場合には、四肢麻痺あるいは対麻痺(下半身麻痺)となることが多い。その場合には上肢又は下肢が完全強直または完全に弛緩することがあり、その状態を完全麻痺という。また、上肢又は下肢を運動させることができても可動範囲等に問題があることがあり、その状態を不完全麻痺という。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 高位診断 せき髄損傷の場合、麻痺の範囲は、せき髄損傷の生じた高位(部位)によって異なる。たとえば、けい髄が損傷されると四肢麻痺が生じ、第2腰髄から上が損傷されると下肢全体が完全に麻痺したり、不完全麻痺になる。また、せき髄の最下部(第3仙髄以下)が損傷した場合には下肢の麻痺は生じないものの、肛門周囲の感覚障害や尿路障害が生じる。 このようにせき髄は、どの高さの部分で損傷を受けたかによって、発現する運動、感覚障害の範囲が定まるので、MRI、CT等による画像診断及び臨床所見によって損傷の高位を診断することができる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 横断位診断 せき髄損傷は、せき髄の全断面にわたって生じた場合と、いずれか半側又は一部に生じた場合とによって、その症状が異なるので、この点における診断(横断位診断)も重要である。前者の場合は、障害部位から下方の感覚脱失又は感覚鈍麻が、運動麻痺とほぼ同じ範囲に生ずる。後者のうち、せき髄のいずれか半側を損傷した場合には、半側の下肢の運動障害及び感覚障害のほか、他の側の感覚障害が生じる。また、後者のうち、けい髄を中心性に損傷した場合には、下肢よりも上肢に重い麻痺が生じる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
第4 | その他の特徴的な障害 | ||||||||||||||||||||||||||||||
1 | てんかん及びてんかん発作等 てんかんは、反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害であり、そのてんかん発作とは、大脳のある部分の神経細胞が発作性に異常に過剰な活動を起こし、これがある程度広範な領域の神経細胞をまきこんで、一斉に興奮状態に入った場合に生ずる運動感覚、自律神経系又は精神などの機能の一過性の異常状態のことである。 なお、てんかんの診断については、発作の型の特定や脳波検査が重要であり、MRI、CT等の画像診断は、発作の原因等を判断するのに有用である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 頭痛の型 頭痛の型としては、次のようなものがある。
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3 | 失調、めまい及び平衡機能障害の原因 頭部外傷後又は中枢神経系(脳及びせき髄)の疾病に起因する失調、めまい及び平衡機能障害は、内耳機能によるのみならず、小脳、脳幹部、前頭葉又はせき髄など中枢神経系の障害によって発現する場合が多いものである。また、けい部自律神経障害によるめまいも少なくない。 |
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高次脳機能障害 | |||||||||||
意思疎通能力 (記銘・記憶力、 認知力、言語力等) |
問題解決能力 (理解力、判断力等) |
作業負荷に対する 持続力・持久力 |
社会行動能力 (協調性等) |
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A 多少の困難はあるが概ね自力でできる |
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概ね8時間支障なく働ける。 | 障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない。 | ||||||||
B 困難はあるが 概ね自力でできる |
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AとCの中間 | AとCの中間 | AとCの中間 | ||||||||
C 困難はあるが 多少の援助があればできる |
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障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり、それなしには概ね8時間働けない。 | 障害に起因する不適切な行動がたまには認められる。 | ||||||||
D 困難はあるがかなりの援助があればできる |
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CとEの中間 | CとEの中間 | CとEの中間 | ||||||||
E 困難が著しく大きい |
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障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない。 | 障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる。 | ||||||||
F できない |
職場で他の人と意思疎通を図ることができない。 | 課題を与えられてもできない。 | 持続力に欠け働くことができない。 | 社会性に欠け働くことができない。 |