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中西委員配布資料

○障害者ケアマネジメントについて

■東京都版 障害者ケアマネージャー養成テキスト「身体・知的障害者」 抜粋

第I部 障害者ケアマネジメントの基本的枠組み

第1章 ケアマネジメントとは何か

 人生の中途での障害、生まれたときからの障害、知的障害者を問わず重度の障害者はこれまで(知的障害者の場合、時には中軽度の者まで)入所施設で暮らすか、在宅で親等の家族のもとで一生を送るものと考えられてきました。しかし、地域の中に十分なサービスとサポートシステムがあれば、重度の障害者も地域での自立したした生活が可能になります。
 施設であれば、そこに暮らしていく上で必要な資源を集めており、施設の中だけで生活が完結しています。しかし、地域においては、障害者が必要としている社会資源は、様々な場所にあります。そういった社会資源を上手に使いこなしたり調整をしないと、地域での障害者の生活は成り立たないことが多いのです。しかし、自分にとって必要な社会資源は何であり、その社会資源がどこにあるのかを知らなかったり、その調整が苦手であったり、あるいは、そういった社会資源の調整よりも重要な仕事を抱えていることがあります。そのような場合、その障害者を支援し、障害者の希望に応じた様々な社会資源を調整すること−ケアマネジメント−が必要になってきます。そして、ケアマネジャーは、地域において障害者の希望する生活を実現するために、障害者が様々な社会資源を活用することを支援します。ケアマネジメントはその人のもつ生活上の困難やニ−ズを対象として行うものであって、生活のある部分を一定の期間、本人の希望に添って支援するものです。 だからといって、利用者が自分で決められることもケアマネジメントされてしまうと、障害者は常に庇護の対象となってしまい、パワレスな状態に陥ってしまうでしょう。
 一方、知的障害児で親が抱え込んでしまっていたり、中途障害者で以前の生活への執着から抜け出せなかったりして、地域のサ−ビスにつながらない例もあります。このようなときには部分的なケアマネジメントが有効かもしれません。
 とはいえ、すべての障害者が、ケアマネジメントを必要としているとは限りません。例えば、自分で必要な社会資源を調整し使いこなせる人にはケアマネジメントは必要ありません。このような場合をセルフケアマネジメントといいケアマネジメント支援のの対象とはなりません。セルフケアマネジメントとケアマネジメントのどちらを選択するかは本人の意思によります。実際には一部セルフケアマネジメントで一部はケアマネジメント、または支援を受けつつケアマネジメントからセルフケアマネジメントへの移行期にある等、セルフケアマネジメントとケアマネジメントに対象が明確に二分されるわけでもありません。ケアマネジメントとは決して、その障害者の全生活のケア計画をケアマネジャ−が立てマネジメントするものではなく、たとえば重度の知的障害者が、少しでも自分でサービスを選択し、調整して決めていきたいという意志があるなら、その意志を尊重し、その部分をセルフケアマネジメントしてもらうことを基本とすべきものです。

第1節 障害者のケアマネジメントの強調点
 高齢者のケアマネジメントと障害者のケアマネジメントとの基本的な違いの一つに次のようなことがあります。これまで障害者は施設や在宅で保護と管理のもとにあり、その周囲の人たちが障害者の失敗や事故をおそれるあまり、人生における様々な経験をする機会を失ってきたといえます。そのため、地域生活を始めようとするとき、ともすれば依存的になりがちで主体的な生活を築いていく上で多くの困難に直面します。そんな障害者達に自信を取り戻してもらい、新たな人生に取り組んでいくための支援をしていこうとするのが障害者のケアマネジメントです。このマニュアルで強調しているケアマネジメントは、当事者の主体性と自己決定を尊重し、ケアマネジメントのプロセスの中で障害当事者自身がエンパワメントすることが含まれます。すなわち、自分に自信をもち、新たな情報や社会資源を得ることによって、自らに内在していた力を高めていくことに重点をおいた支援とも言えます。
 したがって、ケアマネジメントの支援を通して、多くの利用者は、最初はケアマネジメントを望んでいたり、必要としていたとしても、いずれは自らのケア計画を自分で立てられる(セルフケアマネジメント)ようになるか、あるいは、自分では繁雑すぎてやりきれないので部分的についてだけケアマネジメントを依頼するようになります。
 知的障害者もホームヘルパー制度の充実によって、地域で暮らせる状況は徐々に整いつつあります。また養護学校の卒業生の中で、身体障害と知的障害との重複障害者が多くなりつつあり、その卒業後の生活の場が問題となってきています。現在でも日本の知的障害者の4分の1の人達が施設に入所しているという現実は、地域で暮らし続けたくても地域生活を可能にする体制がほとんどない状態での止むを得ない選択を表しています。
 しかし、障害者のケアマネジメントは子供の時から成人したあとも地域生活が続けられるように支援するための体制づくりであり、そのためにケアマネジャーの役割があることを再確認して下さい。
 知的障害者の場合セルフケアマネジメントは難しいと思われるかもしれませんが、介助者は自分で選びたいでしょうし、そのうち介助提供団体も自分で選びたくなるかもしれません。それが部分的にセルフケアマネジメントへ移行するということです。そうできるまでにとても時間のかかる人もいるかもしれませんし、ニ−ズが拡大することによって一時的にケアマネジメントが増大することがあるかもしれませんが、一般的には生活の中で自分で決定する部分が徐々に進展していくものです。
 別の言い方をすると、障害者のケアマネジメントは、単なる社会資源の調整にとどまらず、障害を持ちながら、地域での自立した生活が果たせるように、障害者本人のニーズの把握、社会資源の活用への支援、ニーズの個別対応、ニーズの時系列的対応、障害者本人のエンパワメントを通しての自己選択・ 自己決定ができるように側面から支援することなのです。
 したがって、ケアマネジャーは単にケアプランを作成すればよいのではなく、ケアマネジメントのプロセスの中で、最終的に利用者が力をつけ、少しづつ自分のケアプランを自分で管理することができるようサポートすることが望ましいといえましょう。ただし、ケアプランを自分で管理するということは、ケアマネジメントのプロセスの全てを利用者が自分で行うことを必ずしも意味しません。
 例 えば、知的障害を持つ利用者は、自分の希望や意思をはっきりと持っていても、それを他人に伝えることや、様々な社会資源を組み合わせて活用する時に必要となる複雑な手続きや調整が苦手なことがあります。また、利用者がサービスを調整することに労力をとられ、日々の活動に支障が生じたり、社会参加の機会が妨げられてしまっては、本末転倒です。このような例にみられるように、利用者の希望や状況にもよりますが、ケアマネジャーは、利用者の希望や依頼に応じて、ケアマネジメント支援の一部分を継続的に行うことがあります。
 しかし、この場合のケアマネジメントとは、利用者にかかわり始めた初期の頃のケアマネジメントとは性質が異なることに留意しましょう。この場合初期のケアマネジメントでは、利用者自身が自分のニーズを明確に把握していなかったり、目標設定がうまくいかなかったり、社会資源の情報や知識が不足していて十分に活用できなかったりしますので、ケアマネジャーの密度の濃い支援が必要となります。しかし、利用者が自分のニーズを把握し、希望や依頼を明確に伝えることができるようになった時には、ケアマネジャーは主にサービス調整の役割を果たすことになります。この場合、サービスの活用状況によっては、サービス提供機関の職員(コーディネーターなど)が、事実上、ケアマネジャーの役割を引き継ぐことになるかもしれません。

第3節 ケアの4分野
 さて、「ケア」とはどこまでの範囲を含むものでしょうか。ケアサービスは、当事者の生活のかたちを限定するものではありません。障害のない人と同様に様々な社会活動を行なうことを保障するものでなければなりません。従って、「ケア」は以下の4つの分野を含むものとなります。
(1) 介助支援:狭義の「在宅介助サービス」に限られるものではなく、「外出介助の保障」や職場での支援もふくむ。
(2) 住環境の支援:住宅探し、住宅改造、福祉機器の利用の援助等もここでは含みます。
(3) 生活技能を高める支援:福祉制度、年金等、対人関係、親子関係、健康管理、家事、子育て、社会資源の使い方など。
(4) 生産的、創造的生活のための支援:仕事や社会参加の場、教育機関の紹介、障害者団体での活動などが含まれます。


図1・障害者ケアマネジメントモデル概念図

チームアプローチ方式
チームアプローチ方式の図
全面的ケアマネジメント方式
全面的ケアマネジメント方式の図
部分的マネジメント方式
部分的マネジメント方式の図
セルフケアマネジメント方式
セルフケアマネジメント方式の図


○セルフマネジドケアについて

■セルフマネジドケアハンドブック(ヒューマンケア協会;2000.3) 第I編目次

第I編 セルフマネジドケア・ハンドブック

第I部 介助サービスにおけるセルフマネジドケアの理論と実際

第1章 自分のニーズに必要なケアプランをどうつくるか
 第1節  自分の障害について知ることが大切
 第2節  自立生活のために知っておいた方が良いこと
 第3節  自己アセスメント
 第4節  自分の介助ニーズを客観的に把握し、介助計画を立てる準備をする
 第5節  自分にあった介助ロ−ルモデルの発見
 第6節  自分で作るケア計画

第2章 障害者介助サービス制度の理解
 第1節  障害者のホームヘルパー制度の略史
 第2節  ホームヘルプサービス事業の概要
 第3節  自薦登録ヘルパー制度の理解
 第4節  障害者介助制度の現状
 第5節  障害者介助サービス提供システムの最近の動向について
 第6節  障害者介助制度活用の実際
 第7節  自薦登録ヘルパー方式のメリットの考察

第3章 介助者募集の方法と選定
 第1節 個別募集の場合
 第2節 介助者派遣団体を通しての介助者募集
 第3節 面接のテクニック
 第4節 介助者面接の実際
 第5節 介助者選定のための事前リスト

第4章 介助者採用と契約
 第1節 介助者採用面接の実際
 第2節 面接時の質問事項とチェック項目について
 第3節 面接のテクニックとまとめ
 第4節 採用・不採用の連絡
 第5節 契約書の締結方法と実際

第5章 介助者のトレーニング方法と指示の仕方
 第1節 初対面の介助者との接し方
 第3節 介助者への指示の出し方
 第2節 介助機器の使い方及び説明と実習指導方法
 第4節 介助者に自分の介助の仕方について説明をする
 第5節 介助者の評価とトレーニングの自己評価
 第6節 聴覚障害者の介助依頼の方法について
 第7節 視覚障害者の介助者トレ−ニング方法についての理解

第6章 対人関係づくり
 第1節  人間は「関係」の中で生きていく
 第2節  良きコミュニケーションとは
 第3節  ピア・カウンセリングを学ぶ
 第4節  多様な場面での対応(嬉しい時、怒った時、悲しい時、寂しい時)
 第5節  上手な言葉の使い方はあなたの品格を向上させてくれる

第7章 介助者や介助者派遣団体のアセスメント
 第1節  介助者のアセスメントの方法
 第2節  介助者派遣団体の選定過程
 第3節  派遣団体のコーディネーション
 第4節  緊急時の対応策についてアセスメントする

第8章 介助サービスにおけるトラブル処理の事例
 事例1) 介助者から介助料について聞かれた時
 事例2) 介助者の病歴を知らずに介助者として採用した場合
 事例3) 金銭トラブルに関する事例(振込)
 事例4) ホームヘルパーの仕事範囲を巡ってのトラブル
 事例5) 専従介助者の外出時の食事代支払いに関するトラブル
 事例6) お風呂介助におけるトラブル
 事例7) 洗髪中のトラブル
 事例8) 複数ヘルパー派遣によるトラブル(家事援助を中心に)
 事例9) 買物
 事例10) 介助者にプライバシーを侵害された事例

第9章 自立生活実践レポート(I) 森 綾子(仮名、30代、女)

第10章 自立生活実践レポート(II) 河田俊治(仮名、30代、男)


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