支援費制度移行後の障害者(児)福祉施策の 問題点と今後の方向性について |
平成15年11月14日 全国知事会 |
・ | グループホームについては、地域生活への移行推進の柱として、事業者からの要望が大幅に増加しているものの、今年度の国庫補助の見通しが不透明なことから、新規の指定を控える動きがある。 |
・ | デイサービスやホームヘルプサービスについては、事業者新規参入の少ない地域や、一定程度の事業者が確保されていても障害者への対応困難等を理由に実質的に利用を受け入れない事業者が散見されるなど、サービスを実質的に「選択」できない状況がある。 |
・ | 国の責任において財源を確保し、2分の1相当額を確実に市町村に助成するとともに、障害者プランの方向性に沿って、施設サービス重視から在宅サービス重視に施策をシフトさせ、施設支援から居宅支援への財源配分の変更を図るべきである。 |
・ | 介護保険の指定事業者の参入を促すための報酬単価設定の見直しや、事業者指定要件緩和、従事者の資質の向上を図るための研修課程の設置などが必要である。 |
・ | 制度に狭間が生じている中高生へのデイサービスの対象者の拡大など、障害別、法別の壁を取り払い、相互にサービスを利用できる仕組みとしていくことが望ましい。 |
・ | 障害者のサービス利用にあたっては、ケアマネジメントの手法が重要な役割を担うが、制度上位置づけられておらず、適切な支援が得られない場合が生じている。障害者への相談支援を円滑に行うことができるよう、障害者ケアマネジメント従事者を支援費制度に明確に位置づけ、その運営にかかる費用保障の仕組みを設けるとともに、十分な専門性を確保することが必要不可欠である。 |
・ | 市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業については、事業が十分に浸透する前に一般財源化されたこともあり、未設置圏域が多く、事業の拡充が困難な状況となっている。相談支援体制について、3障害を統合した総合的な相談支援体制の充実強化が望まれる |
・ | ホームヘルプサービス事業については、支給決定のガイドラインが示されていないことにより、支給にあたっての解釈が分かれ(特に移動介護における余暇活動の支援)、市町村間での格差や混乱が生じている。したがって、国においては、より具体的な判断基準を作成することが必要である。 |
・ | ホームヘルプサービスは、障害者の地域生活を支援する上で根幹となる事業であり、どの市町村においてもその事業量が伸びているため、サービス提供量に見合った財源をどう確保するか各自治体は苦慮している。 |
・ | 国庫補助基準額案が示されたことを受け、一部の自治体では、これに合わせてサービス量の上限を設定したことから、利用者から不服申立てが多数出されているという状況も生じている。今年度の予算内示の状況によっては、さらに支給決定に消極的になる市町村が出てくるものと予測される。 |
・ | 今後ともホームヘルプサービスに対するニーズは増加することが想定されているが、ニーズの増加に見合う国庫補助金の確保が十分でない場合、支援費制度への信頼性が揺らぐこととなる。 |
・ | 国庫補助基準について、国は「国庫補助基準は市町村に対する補助金の交付基準であって、個々人のサービスの上限を定めるものではない」としているが、支給量決定の仕組みと補助基準の間には整合性を持たせるべきである。 |
・ | 市町村が支援費の支給決定を行うための具体的な基準と、それに対応した補助基準を定めるべきである。その際、障害の特性に応じた配慮を十分行うことが必要である。 |
・ | 今年度の国庫補助額の配分に関する考え方が示されたが、ホームヘルプサービス事業費等について、事業実施主体である地方自治体に一方的に負担を押しつけるものとなっており、とうてい納得できるものではない。サービス拡大に積極的に取り組んだ自治体の努力を削ぐ結果にならないよう、必要があれば補正予算を計上するなど、国において財源を確保するよう強く求めるものである。 |
・ | 地域生活の継続を支え、施設から地域生活への移行を促進するためには、サービス基盤の拡充が不可欠であるが、居宅サービスの維持・拡充を図るうえで、安定した財源の確保が重要な課題となっている。制度発足初年度において、多額の財源不足を生じている事態に関しては、制度の円滑な施行について重大な懸念を抱かざるを得ない。国は充分な財源を確保し、制度設計にかかる責務を果たすべきである。 |
・ | また、高齢者と障害者の垣根を超えて、それぞれの福祉サービスの充実及びその財源確保を図り、真のノーマライゼーションの理念を実現するため、支援費制度と介護保険制度の整合性を図るとともに、現在の介護保険制度見直しの議論の中で、十分な議論が行われるよう求めたい。 |