03/10/17 第1回医業経営の非営利性等に関する検討会議事録           第1回 医業経営の非営利性等に関する検討会 日時    平成15年10月17日(金)10時00分から12時00分 場所    厚生労働省 省議室 出席委員  大道 學、品川芳宣、田中 滋、豊田 堯、西島英利、松原由美、       真野俊樹、山崎 學                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○渡延指導課長  ただいまから第1回「医業経営の非営利性等に関する検討会」を開催いたします。座 長選出までの間、議事進行役を務めますので、何卒よろしくお願いをいたします。委員 の皆様方におかれましては、大変ご多忙中のところ当検討会にご参集賜りまして、誠に ありがとうございます。冒頭、医政局長の岩尾からご挨拶を申し上げます。 ○岩尾医政局長  今年の4月にとりまとめました医療提供体制の改革ビジョン(案)におきまして、医 療法人をはじめとする医業経営については、医療法人について非営利性・公益性を高め るとともに、経営管理機能の強化、資金調達手段の多様化などによって、経営基盤を整 備し、医業経営の近代化、効率化を図るとされておりまして、重要な課題となっている ということです。  この問題につきましては、平成13年の10月から平成15年の3月にかけまして、「これ からの医業経営の在り方に関する検討会」を開催し、非営利性・公益性の徹底による国 民の信頼の確保、変革期における医業の担い手としての活力の増進を2つの柱とし、医 療法人を中心とする医業経営改革の具体的方向についての、ご提言をいただいたという ことでございます。  厚生労働省といたしまして、この在り方検討会報告の提言のうち、特に非営利性にか かわる社団医療法人の持分及び非営利性の徹底の問題については、その提言に沿って公 益性・安定性の確保の観点から、専門的に検討を深める場を設け、議論をいただく必要 があると判断したということでございます。したがいまして、この検討会はテーマを絞 り込んで、関係の専門家の方々と医療提供、医業経営の現場を代表する方々にご参集い ただき、スケジュールが大変難しい中で、理論や行政実務と現場の要請との調和点を見 い出す、ということで開催することにいたしました。  このような本検討会の設立の経緯と、医療法人の非営利性の徹底の必要性について、 委員の皆様におかれましては、何卒忌憚のないご意見をいただきたいということでござ います。よろしくお願いいたします。 ○渡延指導課長  続きまして本件検討会の委員の皆様及び、事務局の職員を紹介させていただきます。 委員のお名前を五十音順にご紹介いたします。日本病院会副会長の大道委員、筑波大学 大学院ビジネス科学研究科教授の品川委員、慶応義塾大学大学院経営研究科教授の田中 委員、日本医療法人協会会長の豊田委員、日本医師会常任理事の西島委員、明治生命 フィナンシュアランス研究所主任研究員の松原委員です。多摩大学大学院客員教授の真 野委員につきましては、少し遅れるというご連絡をいただいています。日本精神科病院 協会常務理事の山崎委員です。よろしくお願い申し上げます。  続きまして事務局の職員を紹介いたします。医政局長の岩尾、医政局総務課長の榮 畑、医政局総務課企画官の土生、医政局指導課課長補佐の田中です。以上でございま す、よろしくお願いいたします。  続きまして、当検討会の座長についてお諮りをいたします。座長につきましては、医 療経済がご専門であり、「これからの医業経営の在り方に関する検討会」においても、 座長をお務めいただきました、慶応義塾大学大学院教授の田中委員にお願いしたいと存 じますが、いかがでございましょうか。                  (異議なし) ○渡延指導課長  委員の皆様方のご賛同を賜りましたので、田中委員に座長をお願いしたいと存じま す。田中委員、座長席にお移りいただきまして以後、議事の進行をお願いいたします。 ○田中座長  ご挨拶いたします。このたび本検討会の座長をさせていただくことになりました。地 味なテーマですが、大切なテーマだと思います。委員の皆様のご協力を得て実りある議 論の場にしていきたいと存じますので、どうぞ皆様のご協力をよろしくお願い申し上げ ます。  議事に入らせていただく前に、この検討会の進め方について確認をいくつかいたしま す。検討会については、現在、世の中の流れですので公開で行いたいと存じます。ま た、議事録については、事務局でまとめたものを各委員にお目通しいただき、厚生労働 省のホームページで公表することになると思います。この点につきましても委員の皆様 方のご了承をお願いいたします。真野委員、自己紹介をお願いいたします。 ○真野委員  大和総研主任研究員で多摩大学客員教授をしております。医師ですがMBAを持って いますので、比較的非営利等のこと、経営のことに関しては多少なりともお役に立てる かと思います。よろしくお願いいたします。 ○田中座長  公開ということでご了承をいただきまして、議事に入らせていただきます。事務局か ら資料の確認をお願いいたします。 ○田中指導課課長補佐  お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第、委員名簿、座席表、それに 「医療経営の非営利性等に関する検討会の設置について」という2枚紙を付けていま す。また、「出資額限度法人の制度化に向けて整理すべき論点」と、「資料」という分 厚い冊子があります。ご確認をお願いします。 ○田中座長  最初の議題「出資額限度法人の制度化に向けた今後の検討方針等」に入らせていただ きます。事務局より提出されている資料について説明をお願いします。 ○田中指導課課長補佐  お手元の資料について説明いたします。まず、本検討会の設置の趣旨等について、 「医業経営の非営利性等に関する検討会の設置について」という2枚の紙に沿って説明 させていただきます。  目的ですが、「これからの医業経営の在り方に関する検討会」最終報告を踏まえて、 出資額限度法人の制度化に向けた社団医療法人の出資持分の在り方をはじめとして、医 業経営における非営利性・公益性の徹底の観点から、医療法人制度の在り方について検 討をするということです。  検討項目の1つ目は、「出資額限度法人の制度化に向けた社団医療法人の出資持分の 在り方について」ということで、出資限度額の概念、出資限度額法人への移行時の税制 措置を念頭においた公益性の確保のための要件の在り方といったことが1つのテーマで す。  もう1つのテーマとしては、「医業経営の非営利性の徹底のための方策について」と いうことで、出資・人的関係を含めた営利法人との関係、営利性排除の観点からの今後 の医業経営の在り方について、ご検討をいただければと考えています。  スケジュールですが、出資額限度法人の関係で平成15年中に中間的なとりまとめをい ただき、平成15年度中を目途に非営利性の徹底のための方策についてを含めた、最終的 なとりまとめをお願いしたいと考えています。  2枚目に検討スケジュール案を記載しています。本日第1回会合を開催して、10月29 日に第2回目を開催させていただければと考えています。第3回目は、出資額限度法人 についての税制等の関係もあるので、税務当局との調整を踏まえて日程を決めさせてい ただきたいと考えています。第3回で出資額限度法人の制度化に向けて中間とりまとめ をお願いしたいと思います。第4回目は1月中旬ぐらいに、非営利性の確保について都 道府県の調査を現在行っていまして、それの結果の報告であるとか、厚生科学特別研究 で行っている研究の結果をご報告いただき、3月中旬を目途に最終的なとりまとめをお 願いしたいと考えています。本検討会の趣旨等については以上です。  分厚い「資料」と書かれた冊子をもとに、本検討会の設置に至る経緯等について簡単 に説明させていただきます。  1頁目、「これからの医業経営の在り方に関する検討会」最終報告書(抄)がありま す。これは局長の岩尾からも話がありましたとおり、平成13年10月に検討会を設置いた しまして、本年3月、最終報告書の形でとりまとめていただいたものの抜粋です。  項目としては「医療法人を中心とする医業経営改革の具体的方向」ということで、1 つは「非営利性・公益性の徹底による国民の信頼の確保」です。1の上から3番目の○ ですが、「特に病院を開設する医療法人を念頭に持分の定めのない法人へ移行し、非営 利性を徹底しつつ、医療の永続性・継続性の確保を図ることを将来的方向とし、以下の ような非営利性・公益性の徹底を図るための改革に着手するべきである」というご指摘 をいただいています。  具体的な方向として、1つは特別医療法人制度、特定医療法人制度の普及、もう1つ は、社団医療法人の持分について、もう1つは非営利性の徹底ということです。まず、 特別医療法人制度、特定医療法人制度の普及の点ですが、本検討会の主たるテーマでは ないので詳細な説明は省略いたします。1つは(1)の2番目の○に書いてあるとお り、「特別医療法人や特定医療法人について、既存の持分の定めのある社団医療法人 が、持分のない医療法人に移行するための機能を併せ有しているという観点を踏まえ、 これらを普及していくことが必要であり、具体的には、次のような措置を講ずるべきで ある」というご指摘をいただいています。  まず、特別医療法人制度については「要件の緩和」ということと、収益業務規制の大 幅な緩和をご指摘いただいています。これについては、現在、事務局としてはパブリッ ク・コメントを行っていまして、近々省令改正をさせていただき、公布施行という予定 で、作業を進めています。  「特定医療法人制度について」は、既に「要件の緩和」というご指摘を踏まえて、こ の3月に告示で措置をして、4月1日から適用になっています。  次に(2)「社団医療法人の持分について」です。これが本検討会で具体的にご議論 をいただきたいことです。まず社団医療法人の持分について1つ目の○ですが読み上げ させていただきます。  「現実に、医療法人制度の創設以来50余年を経て、その出資持分に含まれる払戻請求 権が、高齢化した社員や、死亡した社員の相続人により行使されるようになったため、 社員の世代交代に際して、医療法人の存続そのものが脅かされる事態を招いていること は事実である。こうした問題に対処し、将来の医療法人のあるべき姿である持分がな く、公益性の高い特定医療法人又は特別医療法人への円滑な移行を促進するための1つ の方策として、出資額限度法人(社員の払戻請求権を出資額にのみ制限した定款を有す る社団医療法人)の制度化が必要であるとする意見があった」というご指摘をいただい ています。  3頁目ですが、「こうした主張については特定医療法人、特別医療法人、一般の医療 法人との相互関係(それぞれの法人類型の公益性の評価)や、出資額にのみ限定された 払戻請求権の意味・その及ぶ範囲、さらには持分の払戻しに係る取扱を改める際、法人 ・社員双方について税制面の措置を講ずることとしたときに、特別・特定医療法人との 対比から、公益性の確保のため、どのような要件を設けるべきかといった論点を踏まえ ながら、財務、税務、会計を含めた関係者の理解を得るよう、その在り方について検討 をする必要がある」というご指摘をいただいています。ここがまさに本日から年末にか けて、皆様方にご議論をいただきたい部分です。  次に(3)「非営利性の徹底」です。2番目の○ですが、「医療法人の非営利性の徹 底については、これまで通知等により考え方が示されるとともに、必要な指導が行われ てきたところであるが、これを一層強化するため、具体的には(1)営利法人による医療 支配の排除に向けての指導状況の点検。(2)こうした点検の結果を踏まえた営利性を排 除するための医療法人に対する指導指針の策定。(3)監事等を活用した医療法人等によ る内部点検。(4)非営利性の観点から見て不適当な医療法人に対し、医療法に基づいて 行う法人検査等の在り方の見直し等の措置を講じるべきである」ということです。  具体的には(2)の営利性を排除するための医療法人に対する指導指針を、我々として は策定していきたいと考えています。これについて、どのようなものにしていくのかに ついて、来年の1月から3月にかけてご議論をいただければと考えています。  分厚い資料については、規制改革委員会の答申や出資額限度法人の検討経緯などいろ いろ添付いたしましたが、時間の都合もあるので、本日詳細な説明は割愛させていただ きます。  次に「出資額限度法人の制度化に向けて整理すべき論点」という2枚紙についてご説 明させていただきます。これについては本日ご議論いただくに当たって、検討の素材と して事務局でまとめたものです。本日これを基にご議論をいただければと思います。全 体を読ませていただきます。  「出資額限度法人の制度化に向けて整理すべき論点、出資額限度法人の概念。社員の 退社時における持分払戻請求権や、解散時における残余財産分配請求権を、払込出資額 を限度とした定款を有する社団医療法人としてはどうか。出資額限度法人の意義。医療 法人の非営利性を徹底しつつ、医療の永続性・継続性の確保を図ることを将来的な方向 とした、医業経営改革の1つの方策と位置付けてはどうか。  出資額の概念。金銭出資・現物出資のいずれかを問わず、出資者が出資した時点の価 格(出資申込書記載の等価)を基準とすることとしてはどうか。  出資持分の及ぶ範囲。上記の出資額を限度として払戻請求権が生じるものとしてはど うか。物価下落時における取扱については、医療の永続性・継続性の確保という観点か ら検討することとしてはどうか。既存の持分のある社団医療法人から出資額限度法人へ の移行を促進する方策(税制など)。持分のある社団医療法人から、出資額限度法人へ の移行が円滑に行われるようにするためには、所得税、法人税及び贈与税について、ど のように取り扱われることが期待されるか。  上記のような課税上の取扱の前提として、特定医療法人及び特別医療法人の例にも照 らし、法令上の位置付けが必要となるが、このほか同族役員の制限を初めとする公的な 運営に係る要件、解散時の残余財産の帰属の要件等(「公益性の要件」と総称する)に ついて、どのようなものとするか。  出資額限度法人の法令上の取扱い。出資額限度法人について、公益性の要件の確保の 要請と、定款自治との関係をどう考えるか。具体的には、新たに出資額限度法人向けの 標準定款を示すことで足りるか。少なくとも出資額限度法人に移行した後、持分ある社 団医療法人に戻る定款変更に法令上の歯止めを設けることが適当か」以上でございま す。  2枚目については今ほど申し上げた、出資額限度法人のイメージを付けているので、 説明させていただきます。まず出資額ですが、ここの例でいきますと、全体で1,000万 円、出資者Aが400万円、出資者Bが400万円、出資者Cが200万円です。出資割合が4 対4対2です。これが年月の経過により剰余金が発生した場合、仮に持分に応じた出資 とすると、出資者Aの方は400万+400万円で800万円、出資者Bの方は400万円+400万 円で800万円、出資者Cの方は200万円+200万円で400万円ということで、持分に及ぶこ とになるということですが、出資額限度法人については、網掛け資料の下の部分「出資 額」と書かれた部分のみに限られるということです。  注で書いていますが、出資者Aの400万円、出資者Bの400万円、出資者Cの200万円 という返還限度額は、いくら剰余金が増えたとしても変わりません。また、このルール について定款を変更することもできないということです。仮に出資額限度法人の出資者 Aのみが持分を放棄した場合については、400万円の利益は法人に帰属することとし、 出資者B及び出資者Cには帰属しないことになります。以上が出資者限度法人のイメー ジです。私からの説明は以上です。 ○田中座長  12月までと3月までという忙しいスケジュールのようです。本格的な議論に入ります 前に、ただいまの事務局の説明について、何かテクニカルな質問等がおありでしたらお 願いします。 ○真野委員  検討項目の2ですが、「出資・人的関係を含めた営利法人との関係」とありますが、 ここで言う営利法人というのは、たぶん株式のことを言われていると思うのですが、現 行いくつかあるものについての話なのか、将来的にこれを想定されるようないろいろな 議論、そちらの話が中心なのか確認をさせてください。 ○田中指導課課長補佐  特に営利法人について、もちろんいま存在する形態も対象になりますし、今後、将来 的なあり方も幅広くご議論いただければと考えています。 ○渡延指導課長  この場においてこの医業経営の経営形態、それ自体を議論するというよりは、冒頭説 明いたしましたとおり、医療法人を中心とした医業経営。更に単純に言ってしまえば、 医療法人というものは現行制度に基づいて、これは非営利性の徹底ということで襟を正 すことはやっていく。そうした襟を正して振る舞うという観点から見たときに、医療法 人と他の株式会社等の関係はどうあるべきなのか。さまざまな形で医療を提供していく 過程で、どうしても外部化したりする関係で、営利法人と全く無関係に活動できるもの ではない。  ただ、世上言われているところの、いわゆるMS法人との関係に光を当てて、どこか ら先は踏み込む領域としては不適当なのかについての見極めをつけていきたい。現在も 法令ではなくて運営管理指導要綱という通知を出して、その中で営利法人との関係のあ り方について言及しているわけですが、実際のところ、記述はやや抽象的であり、具体 的な活動の局面にどうこれを当てはめていくことが現実的なのかについては、ご専門の 先生方のお考えも聞きながら、いま一歩の踏み込みを考えていきたいといった趣旨で す。 ○田中座長  主に1月以降の業になるわけですね。ほかにテクニカルな質問はよろしいですか。 ○品川委員  先ほど来、資料の説明を伺って、「非営利性」という言葉がどういう意味なのかとい うことについて、確認をしておきたいのです。現在、病院経営において、経営効率とい う問題が非常に重要な問題です。何か「非営利性」と言うと、儲けてはいけないみたい なことばかり先に走って、病院経営の経営効率の問題とのバランスをどう考えているの か。経営効率を考えれば当然それなりに事業体として、一定の利潤をきちんと確保して おかなければ健全な経営は成り立たない。また、税務的には別に病院が儲けること自体 は一向にかまわないのですが、それが私的な利益に転換するかどうかが、課税上いろい ろな問題を提起するわけです。ただ「非営利性」という一言にくるめた言葉が何を意味 するのか、その辺のことについてご説明いただければありがたいと思います。 ○渡延指導課長  現時点で事務局としてどのように考えているかを説明いたします。今日の資料の「医 業経営のあり方に関する検討会」報告書にさわりの部分を付けていますが、平成13年の 秋から今年の3月まで検討をいただきました、医業経営のあり方検討会の中でも、医療 法人制度のあり方で出てくる非営利というのは一体何なのかということは、再三議論に なってきました。  その際、1頁の○の3つ目に書いているのは、この検討会報告の言及です。医療法人 制度は非営利性を担保しながら、医療の永続性・継続性を確保することを目的とした制 度である。昭和25年にこの制度ができた趣旨はもちろん永続的、安定的に医業を提供し ていくためには、個人経営では突然死亡したりしたら成り立たないことがあるわけで、 安定的にやれる法人形態が必要である。かといって株式会社、その他のものであっては 非営利性というところに問題が生じる。いま「非営利性が何か」という議論のご提起が あったわけですが、非営利性を担保しつつ、片方では安定的・永続的に事業を行って、 剰余金の配当こそ禁止しておりますが、少なくとも再生産に必要な内容留保を蓄えて事 業をやっていただくことは、当然医療法なり、医療法人制度は前提にしている。  ただ、それが剰余金配当の禁止という形で、配当という形で剰余金を出すことについ ては抑えられているわけですが、一定の医業を安定的に行って、内部留保を用意して、 それを次の再生産の原資に振り向けていくことについては禁止されるどころか、むしろ やってもらいたい。そういうことをやるためのものとして生まれたということです。そ の認識は3月にまとめられた医業経営のあり方検討会の根底にあるものです。今回、そ の点は何ら変わっているものでもありません。  同時に医療法の中には、一定の業務を外部委託するときに受託者についての基準等が 設けられているように、当然医療法人なり、病院単体は全てのことを完結的にやれない ということも予定されている。そういった中で、非営利というものを配当の禁止という こととイコールなのかというと、たぶんそうではないのだろう。配当の禁止は当然やら なければいけないけれども、それプラス日常の行動の局面でも、非営利であるからには 求められる一定のものがあるはずです。ただ、そこについては54条の配当の禁止のよう に、ズバリ書ききっているものがない。それを巡ってさまざまな議論になってきている わけです。  医業経営の検討会の報告では、3頁で非営利性の設定の所、これは先ほど田中がご紹 介したところですが、ここでは概念を規定するというよりは、一部起きている事象を紹 介するような形で、少なくともこういうものは○の2点目、「さまざまな名目による事 実上の剰余金配当の実施」、例えば病院が借りている不動産の賃料を収益に比例して出 すこと。役員の派遣などの人的関係、資金関係などを通じて、いわゆる利益の付替え的 なことなどを通じた営利法人による医業経営支配、更にはその象徴であるところの営利 法人からの役員の受入れ等、これらについては少なくとも明らかに非営利という切口か ら見たときにはおかしいのであろう。  ただ、この後に「等」が付いているとおり、これでそういったものは外縁が決まって いるかというと、そういうわけではないというところで、平成13年秋以来のこの検討会 の議論は一旦区切りになったわけですが、ここから先の部分については、個別事例の集 積から、一定のルールをどこまで抽出できるかというと、難しいところです。まさにそ の部分をこの場でご検討を賜れないかという問題意識です。甚だ論理的でない説明です が、この前の経緯を含めて申し上げれば以上のとおりです。 ○田中座長  むしろテクニカルということこそ、出資額限度法人を含め、この検討会の主題に近い 点ですので、引き続き問題提起をお願いいたします。ほかによろしければ議論に入りま す。本検討会の運営については、皆様方の意見を踏まえて、年内にまず出資額限度額法 人の制度化に向けて中間とりまとめを行わなければなりませんので、皆様のご協力をよ ろしくお願いいたします。  今日は第1回なので、出資額限度法人の制度化に向けた社団医療法人の持分の在り方 」に関し、フリートーキングをしてまいりたいと存じます。論点メモがありますので、 これに沿って話していきたいと思います。メモによれば概念、意義、出資額の概念、範 囲、税制等、法令上と分かれていますが、下に行くほど技術的になっていきます。出資 額限度法人の概念、意義、出資額の概念、これらについて何かございますか。 ○豊田委員  出資額限度の概念はここに書かれているとおりです。近年医療法人制度ができて50年 余を過ぎますと、出資者の請求権の相続であるとか、いろいろな事情による途中退社と いうことが出てまいります。そうしますと、出資持分のある社団のモデル定款は、その 時点における財産に対する持分の割合で返還する、払い戻しをするとなっています。し かし、定款にしたがってそれをやると、持分のある社団法人の維持ができなくなると いった現実も出てきます。現実にそういうことで裁判で争われてきた例もあります。す ると本来医療法人制度ができた大きな目的である、医療経営の安定と、その永続性の確 保に、真っ正面から矛盾した結果を生じてしまう。  出資額限度法人の概念は、そのような事態を回避するため、あくまでも法人を立ち上 げたときの払込みの出資額を限度として払い戻すものです。そこには医療法人が運営さ れている間に生じた財産の増加部分は含まれないため、払戻により医療法人が崩壊する のを妨げます。永続性・安定性を損うような問題を排除できるということです。 この出資額限度法人の概念は、私どもとしては医療法人制度が設立された時の基本的な 考え方ではなかったか、永続させるとすれば、現在モデル定款で示されている、その時 点における財産に対する持分の割合で払い戻すということは、少し不備ではなかったか と考えています。 ○田中座長  本来の医療法人制度設立時の趣旨に、むしろ見合った概念であるというご指摘でし た。 ○品川委員  先ほど来特定医療法人、特別医療法人、医療法人の3つの概念の説明がありました が、もう1つ出資額限度法人を特別医療法人と医療法人の中間的概念として、位置付け ようと考えておられるのですか。実は私自身は豊田先生と日本医師会でこういう限度法 人を設けるべく要求を、厚生労働省に提案をしている当事者の1人なのです。おそらく この研究会の成果について、いろいろクレームを付ける側の論理もよく承知しているの です。私もかつてそちらに所属していたもので、今日はそちら側の観点からあえて申し 上げます。その辺の定義付けというか、区分付けをどういうふうに描いておられるの か、そこはいかがですか。 ○渡延指導課長  まさにいまお話に出た点は、これからこの検討会でご議論をいただかなければいけな いところなのです。前振りの意味として要件のあり方検討会で、この出資額限度法人の 問題が提起されたときに、どういう議論であったかというところです。先ほどご紹介し ました資料の1頁の1の非営利性・公益性の徹底による国民の信頼の確保の○の3つ目 の3行目で、「特に病院を開設する医療法人を念頭に、持分のない法人へ移行し 云々」。それから(1)の○の2点目で、「医療の非営利性を徹底する趣旨から、特別 医療法人や特定医療法人について、既存の持分の定めのある社団医療法人が持分のない 医療法人に移行するための機能を併せ有しているという観点を踏まえ云々」と。  最終的に目指していくところは病院を開設するものを中心に、社団の場合であれば持 分のないものにいくのが目指すべき大きな目標であろう。既に過去の検討会報告などで も、特定なり特別については、そこへ到達するための1つの踏み台的なものだと。特定 ・特別になった瞬間に社団形態の場合は持分がなくなっているからもう到達したという ことになるのかもしれませんが、そういう流れがある。  そういった大きな流れがある中に、出資額限度法人が出てきたときに、それをどう位 置付けるかの話です。2頁の(2)の○の1点の所で、「将来の医療法人のあるべき姿 である持分がなく、公益性の高い特定・特別への円滑な移行を促進するための1つの方 策として、出資額限度法人の制度化が必要であるとする意見があった」。ですから、こ こでは特定・特別、更には持分のない医療法人への移行をしていくためのステップとし て、出資額限度法人を考えるという議論があったわけです。そうなったときに、では出 資額限度法人は移行のための期限を限ってのものなのか、それとも恒久制度として将来 的に存続して常に選択可能な選択肢なのかについては、在り方検討会の段階では明確な 結論が出たわけではありませんでした。  3頁の冒頭の○で、まさにいま品川委員からご提起がありました、特定医療法人、特 別医療法人、一般の医療法人と、出資額限度法人との相互関係、特に公益性という軸で 並べてみたらどういう関係にあるのかについては、必ずしも今年の3月までの検討でク リアな結論が出たわけではありません。ここについてはご検討を賜らなければならな い、重い宿題として残っているものだろうと考えています。 ○田中座長  大きい位置付けとしてはステップだろうけれども、制度として永続するのか、制度自 体に期限があるのか、あるいは制度は永続するけれど、選んだ法人が例えば極端な話、 何年後には必ず移るとか、あるいは移らなくてずっと出資額限度法人でいるとか、そう いうところはこの検討会で話し合うのだと考えています。ほかによろしいですか。 ○山崎委員  出資額限度法人について検討をしなければいけなくなったというのは、本来医療法人 制度を作ったときの国会の審議は、出資額限度法人ということを想定して医療法の中に 作っているのです。そういう審議を経て、医療法の中に医療法人制度というものを作っ たわけです。厚生省が標準定款を作るときに、資料の28頁の第9条、「社員資格を喪失 した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」という部分と、31頁の 34条、「本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとす る」という標準定款を作ったことが、50年間ずうっとこの問題が混乱した原因になって いるわけです。  したがって、本来これを作ったときは病院の永続性を考えて、きちんとした形で法人 を運営していくということであったのが、こういう標準定款によって、剰余金を分配で きるという解釈がなされて、営利法人と医療法人とどこが違うのか、という論点がスタ ートする基になったわけです。したがって、この辺の問題も、標準定款をどうするかと いう問題も含めて考えていただきたいと思います。 ○田中座長  制度論だけではなくて、標準定款も踏まえてというご意見ですね。 ○山崎委員  当時、医療法人を作るときに厚生省が、こういう標準定款を示したために、各都道府 県が標準定款どおりに定款を作らないと、医療法人の開設は許可をしなかったのです。 したがって、日本全国の医療法人がこの厚生省の標準定款に沿った形で、そっくり9条 と34条で作らされてしまったわけなのです。この9条と34条を基にして医療法人の相続 について、持株について相続税を課税するという基を作ってしまったわけです。本来、 医療法人制度を作った時点で、この標準定款をきちんと、出資額限度の精神に沿った形 で作れば、こういう混乱は全く起きなかったというのが、50年間の歴史的な事実です。 ○田中座長  一般にいろいろなオプションがあるけれども、国がある1つのモデルを示すと、ほか にも本当はオプションがあってもいいのに、下にいくとそのモデルだけが正しくなって しまう展開は、この分野に限らずしばしば見聞きする話です。今回はそういうおそれを 踏まえて、定款についても考えましょうというご意見でした。 ○品川委員  お伺いしたいのですが、いまのお話ですと、先ほどの定款モデル、それ自体を全部直 してしまおうと、そこまで考えておられるのですか。  ○山崎委員  定款モデル全部ではなくて、少なくとも9条と34条の剰余金が配当できるという解釈 ができる文言は、外さなくてはおかしいと思うのです。したがって、医療法人それ自体 について、9条、34条を見直して、出資額限度法人の精神を持った文言に移行しようと いう検討をすべきだということなのですか。 ○品川委員  そうではなくて、そういう選択肢を作ったらどうかという話です。経営者によって は、自分がつくった病院なのだから定款変更などはしないという経営者もいると思うの です。したがって、標準定款はそういう標準定款で変更していただいて、病院の法人の 定款はその病院が考える話ですから選択肢として作るという話です。 ○渡延指導課長  若干補足させていただきます。いま山崎委員からご指摘がありましたとおり、現時点 で厚生労働省として示している社団医療法人の定款例が27頁以下に載っているわけです が、実はいまの範になる前に、昭和30年代前半ぐらいには、これの1つ前だかの範の標 準定款を出しています。そこでは9条と34条の右側の備考欄に、こうした定めによらな いこともできる、あるいはよらないことも任意という注書きがありました。それが座長 がご指摘になられたような時の経過の中で、斉一的な指導に重点が置かれたのか、もち ろん県の事務の中での扱いではあるのですが、備考欄のそういった記述が取れて、あた かもこのスタイルが一本決め打ちというところに指導が流れた、というご指摘は受けた ところです。  山崎委員が言われた点は、整理すべき論点ペーパーの所で言えば、最後の○の出資額 限度法人の法令上の取り扱いの○の2点目でも、新たに出資額限度法人向けの標準定款 を示すことで足りるかと、あえて事務局では書きましたが、通常の医療法人向けのもの と出資額限度スタイルをとる場合の標準定款を示したら、このようになるというやり方 もあるでしょうし、30年代に戻って1本のモデル定款で備考の所で注記するというやり 方、これはいろいろなやり方があると思います。ただ、その根底で整理しなければいけ ないのは、出資額限度法人というのが選択肢追加なのか、全員移行なのか。選択肢追加 としてもそれは恒久なものなのか時限のものなのか、そこが整理されたならば、自ずと 標準定款上の扱いも決まってくるのではないかと思っています。 ○田中座長  大変いい整理をいただきましてありがとうございます。全体について、いつでも討議 をしていただいていいのですが、それ以外の出資持分の及ぶ範囲とか、移行を促進する 方策などについても、ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。 ○真野委員  細かな話かもしれませんし不勉強なせいもあると思うのですが、出資持分の及ぶ範囲 の所で、「物価下落時における取扱いについては、医療の永続性・継続性の確保とあり ますが、この物価下落時における取扱いと医療の永続性・継続性の確保の関係を、もう 少しご説明いただけないでしょうか。 ○田中座長  50年間の話だと、持分が増加している可能性のほうが強いですね。評価額の増加と か、長い間の利益剰余金の蓄積が。例えばいまから12〜13年前、バブル期に新たに設立 した法人の場合、むしろ土地評価額が下がっていて、出資額だけを返却しろと言われて も、もしかしたら病院の存続が成り立たなくなるおそれもあります。その点をどうしよ うかという意味だと、私は理解をしていますがいかがですか。 ○田中指導課課長補佐  整理すべき論点の2枚目に付けた「具体的な出資額限度法人のイメージ」図をご覧く ださい。この図では出資額全体1,000万に対して、剰余金1,000万が発生して、全体が 2,000万になっています。今までご議論をいただいたときには、剰余金は発生したらど うすべきかということでした。すなわち、出資額というのは出資の額を限度としましょ うという議論だったのですが、逆にこの図において出資額1,000万に対して、例えば500 万、半分になってしまった場合を想定しますと、医療法人のほうは現在、要は500万の 価値しか有しないものに対して、出資者に対して1,000万返さなければいけないという ことになり、残る不足分の500万円をどこかから調達してきた上で、1,000万返却するこ とになると思います。  そうしますと、出資額限度法人がそもそも非営利性を徹底しながら、医療の永続性・ 継続性の確保を図るために、いままさにご議論をいただこうとしているわけです。出資 額が減ったことによって、その不足前を集めてきて出資者に返すというのは、果たして 医療の永続性・継続性の確保の観点に適合するのかどうかということが、ここに整理す べき論点として記載したことの意味です。 ○田中座長  第1回ですので、この問題について皆様一人ひとりのご意見を伺いたいと存じます。 ○豊田委員  先ほど提起された問題で、まず出資額限度を全体に及ぼすのか、あるいは選択性なの かということですが、50年余りの歴史ということも考えると、その間にいろいろな経済 活動が行われているわけで、いまここで一気に全部、出資額限度法人に変えるのだとい う議論は混乱を生ずるだけで、あまり意味のない話になります。したがって、あくまで もそれぞれの法人が法人の中で検討をして、うちは出資額限度になるのだと、法人の選 択によって移行させるべきだと考えます。  また、恒久的か時限措置かの問題もある。公益性の高い医療法人としては、特別医療 法人、特定医療法人がありますが、それにはなかなかなれないわけです。特定医療法人 が昭和39年に制度化されて時間が経つわけですが、現在まだ356。特別医療法人は平成 10年からですが、これもまだ29ということで、なかなか定着しない。制度としてうまく 動いていないということがあるのです。その理由には、かなり厳しいハードルをクリア しなければならないという問題が1つありました。それについてはなるべく緩和しよう ということで、昨年末見直しが進められています。  もう1つ見逃してはいけない大事なことは、持分のある社団が長期間経営してきて、 全部持分を放棄するか否か判断しょうとするとき、これをクリアするにはいくつかの大 きなハードルを越えなければいけないわけです。まず時間が経つほどに、その医療法人 が長ければ長いほど、特に出資者が世代交代していることが多くなるわけですが、そう いう中で出資者全員の意見がなかなかまとまらないという現実は、どこでも生ずると思 うのです。  医療は公益性を高めてという理念では同意するけれども、いざそれを実行する段階で 全部放棄することに対して、それまで一生懸命にやってきたといういろいろな思いが、 それに対してブレーキをかけている部分もあります。数が少ないので特定・特別の意味 を十分に理解できないということもあります。なりたいのだけれども、なかなかなりき れないという漠然とした、科学的でない言い方をしますが、ある意味では心情的な問題 も大きくあります。しかしながら医療法人を経営している人自体、最初から持分のある 人も、自分たちは公益の立場で仕事をしているのだ、したがってそれに見合うような税 制をということを、ずっと医療法人制度ができてから言ってきています。  大蔵省が持分のある社団は営利法人並みという意味のことを、公式に述べたのはつい 何年か前ですが、実際に医療をやっている人たちと行政側の感覚は、営利、非営利とい う面から見ると、かなりずれがあったのです。ずれてはいますが医療人たちはなるべく 公益の立場でという気持があるわけですから、特別・特定になりたいという人も多い。 しかし、先ほど言ったとおり、まず出資した人たちの意見をまとめきれないということ が1つです。また、心情的になかなか全部を放棄できない部分もあったりして、この辺 が進まない原因だろうと思います。  では、そういう人たちは全部従来でのままでいいか、ということですが、今度は途中 退社ということが出てきて、法人自体の存続が危うくなってきたという状態です。しか も、持分のある社団は全体の98%もあるのです。医療法人のほとんどがそうなのです。 したがって、ある意味では妥協的な制度ということになるかも分かりませんが、現在の そういったいろいろ問題のある持分ある社団から、ひとつ公益性のほうへ踏み出すのが 出資額限度法人です。要するに特定医療法人・特別医療法人との間に、もう1つ類型を 作って、形としては高度な公益性を持つ特別医療法人・特定医療法人と、持分のある社 団との中間に位置する形になるわけです。それを時限にするのか、恒久的な制度にする のかということですが現在、持分のある社団法人が、特定・特別のほうに理解を示しな がら、なかなか踏み切れないという状況を踏まえますと、時限にするとここでまた混乱 が生ずると思います。例えば5年で持分放棄するつもりだったが、最終的には意見集約 ができませんでしたなどいうことがあると、時限措置はいろいろな混乱を生じます。医 療法人の混乱は医療体制にも影響するわけで、結果としてその地域の患者に対して非常 に迷惑をかけることにもなるわけです。  そういった混乱をなくすために制度化する場合には、恒久的な制度としていただきた い。そして、出資額限度で運営しているうちに、さらにもう一段公益性を高めたいとい うことで、特定医療法人・特別医療法人に上がっていくということは、これから十分に 考えられるわけです。出資額限度そのものを予備群として位置付けるという考え方は、 詰まるところ、いま特別医療法人・特定医療法人がいいと思いながらなれない人は、決 断なり、中の調整ができないわけですから、5年なりの時限で作っても、ほとんど意味 をなさないと思うのです。  一旦出資額限度に移行したら、都合によって持分のある社団に戻りますという形で は、これを作る意味はないのです。したがって、出資額限度を作るときには、必ず後戻 り禁止規制を入れなければならないので、そういったことから考えると、時限であると いうことは、非常に安定性を欠く状態を作り出すことになるので、時限は避けたい、恒 久的な制度として法制化していただきたいと考えます。 ○田中座長  ありがとうございました。出資額限度法人については選択性であり、後戻り禁止条項 は必要である。一方、時限性は好ましくないというご意見でした。当然恒久的な制度と なると、妥協の産物でした、作りましょうではいけないので、何らかの理念が必要に なってくると思います。そのほか、移行時の税制や解散時の残与財産の帰属についても ご意見を頂戴したいと思いますが、どなたか、いかがでしょうか。 ○品川委員  いま豊田先生のご意見に付言しますと、時限的な制度であることと、後戻りができる という要件が仮にあると、税制上の軽減措置はまず100%得られないです。おそらくそ ういう形で制度を変えても、私が国税庁で財産評価の責任者をしていたときにも、医療 法人側からいろいろな要求を頂戴して、結局はいまの2点の最低条件がクリアできない ということで、お断りしたこともありますので、現在の執行部においても同じではない かと考えています。 ○大道委員  いま医療法人協会の会長がおっしゃったように、先ほどから出ている特定・特別にな りやすいような形として作るという、この意見には私も反対です。と言いますのは、や はり特別・特定は非常に少ないです。どうして少ないかという理由も考えていかなけれ ばならないということで、移行するための一時的なものとなると、またそれがはっきり しないとなる人も少ないと思うのです。ですから、持分の中にきちんとした位置付けを 法的にしていただいたほうがいいのではないか。つまりは恒久的なものであるべきだと 思うわけです。確かに我々現場にいる者としては、従来の医療法人の形では、おっしゃ るように継続性も永続性も先が見えないという状態ですから、その点だけでもこの制度 をきちんとしたものに、多少痛みを伴ってもやむを得ないから、この会で作っていくべ きだと思います。 ○田中座長  ありがとうございました。ステップというよりは、持分の無いと有るとの境い目にな るのかもしれませんが、そこにきちんとした別な箱を作るべきだということになりま す。もし、そういう主張だとすると、皆さんで一体その箱に与えられた社会的使命、理 念は何かを明確にしないと、単に行きやすいから作りましたでは世の中は通らなくなる ので、それも議論しなければならないと思います。ご自由な意見で結構ですからどう ぞ。 ○山崎委員  文言の質問です。医療の「永続性」と「継続性」と書いてありますが、「永続性」と 「継続性」とどう違うのですか。 ○田中座長  これは文学的表現なのか、あるいは法律的に分けているのか、いかがでしょうか。 ○渡延指導課長  非常に論理的に詰められると、なかなか辛いところがありますが、医業経営の在り方 検討会の報告、資料1頁の1の○の3つ目のところで、「前述のとおり、非営利性を担 保しながら、医療の永続性・継続性を確保することを目的とした制度である」とありま す。これは事務局としてまとめの際に、この辺の表現について考えろと言われて、たし か医療法人制度を作ったときの説明資料の表現を抜いてきたような記憶がありますが、 あえて分解して考えれば、継続性というのはその瞬間の代替わりで、そのような代替わ りを繰り返して続いていくことを永続性ということなのだろうと思います。ですから、 突き詰めていけば、その瞬間瞬間がうまくいけば、永続するわけですから、論理的に詰 められると、継続性ということになるのかもしれません。ここに書いた経緯は、在り方 検討会のこの言葉を、今回も延長上で使ったとご理解いただきたいと思います。 ○豊田委員  いま座長から言われた件ですが、理念がなければいけないということですが、出資額 限度方式を推進するときに、いちばん大事なことは、いま言われている医療の公益性を より高める立場といった組織を作りたいということです。例えば特別医療法人、あるい は特定医療法人が最初のころはともかく、今回規制緩和の中で、訪問看護ステーション を持っていればいいとか、療養病床を幾つ持っていればいいとか、というところまでき ていますし、私はより公益の立場で医療を行うということが、すでに1つの理念だと思 います。そこで、公益性の要件が問題となりますが、特別・特定医療法人、あるいは社 会福祉法人などを極めて公益性の高い組織として、それとこの出資額を比べてみると、 当然のことながら同族規制も必要であろう。解散時の残与財産は社員で分けるのではな くて、全部それは国や地方公共団体、同種の医療法人に移管するといったことも考えて おり、いまの持分のある社団の法人よりは、そういう意味では特別・特定にかなり近い 形の法人形態であると考えています。したがって理念は何かと言われれば、より公益性 を高めていくのだということで、こういう形で実際上いま言ったようなことで整理して きたと考えます。 ○渡延指導課長  若干、過去の経緯等で参考になる点でご紹介すれば、資料の5頁に、過去の医療法人 制度にかかわって検討会などを開催した成果物と、そこに言及しているところを引用し ています。5頁の上の医療法人制度検討委員会の報告書の六の2に出資額限度方式と書 いてありますが、この時点における出資額限度方式の理念というか、哲学というか、正 直なところは裏から書いた感じで、積極的に書いたという感じではないのですが、2パ ラグラフの「今後」以下のところですが、「こうした医療法人類型を、税制上も認知し ていくための条件整備が必要であり、その場合の投下資本の回収を最低限確保しつつ、 剰余金の配当禁止規定との整合性を図る」ということが出資額限度の意味だと。あまり 積極的な定義ではないのですが、医療法で謳われているところの配当禁止、非営利の要 請と、経済的な活動に注目しての投下資本の回収の最低限確保を調和させる均衡点とし て、これはあり得るというのを6年の時点でいったものはありました。  医業経営の在り方検討会の集約に至る経緯では、豊田先生にもプレゼンテーションを していただいたりして、設立時の出資申込書記載額に限定された持分の意味とは何なの かというところについては、いろいろご議論があったわけです。ある意味では、ここで 言っていることと相通じることはあろうかと思いますが、公益性を確保しつつ、設立か ら運営に至る間の設立者のオーナーシップの象徴というか、医業に込めた思いの象徴的 な意味が、そこにあるのだというようなご説明を承ったように記憶しています。 ○品川委員  この検討会の均等と並行しながら、国税当局といろいろと交渉されると伺っています ので、参考までに申しますと、物価下落時における取扱いに関しては、非常に複雑な要 素が絡んできます。1つは相続時のときに出資をどう評価するのか。いま類似業種比準 方式と純資産価格方式で、いずれか有利な方法を選択してやっているわけでしょうか ら、その2つの評価方式というのはものすごく乖離してくるわけです。だから、この類 似業種比準方式で評価すると、出資限度額を下回る場合もある。しかし、純資産でやる と出資限度額を上回る場合もある。では、この出資限度額法人については、この出資限 度を下回ったというのをどのように考えるのか、という問題が1点あるわけです。  あと、相続税だけの問題ではなく、仮に物価が下がっても、出資限度を保証するとい うような問題、あるいは出資をしておいて、出資資産が下がったから、もう下がった分 でいいというようなことをやった場合に、贈与税とか、別な所得税とか、あるいは医療 法人自体に対する債務免除益、原資益みたいな問題が生じてきますので、どこかに所得 税、法人税、相続税すべてにかかる問題だという指摘もありましたので、その辺も考慮 して、当局はどのように考えているかということを探っておいたほうがよろしいのでは ないかと思います。 ○真野委員  先ほど質問が中途半端で、いまの品川先生のご意見でわりとクリアになってきたので すが、出資額の概念のところは基準ですね。ところが、出資持分のところは出資額を限 度としてと書いてあるわけです。それなのに先ほどのご説明だと、先生がまさに言われ ましたように、その出資額の部分を保証するという議論が出てきているわけです。そこ のところがよく分からない感じがするのです。 ○田中座長  基準なのか上限なのか、それとも全体額か。 ○真野委員  限度ということになると、下回った場合というのも当然あり得るという話で限度とい う言葉があるわけで、あくまでも基準ということですね。そうすると、物価下落時に物 価以外のこともあるかもしれませんが、何らかの形でその出資額を下回った場合という のは、案に含まれているのが出資額限度法人という意味合いであって、そこであえて物 価下落時における取り扱いを別個に書かれているというのは、いま品川先生が言われた ような、かなり細かなシチュエーションを想定してということなのですね。かつ、出資 額を基準としてお返しするというのが、あるいは元に戻すというのが前提にかなりなっ ているという理解でいいですか。 ○渡延指導課長  確かに論理的に考えていきますと、あくまでも出資額を限度として払う場合と基準と して払う場合とあります。基準として払うというのであれば、これは選択の余地なくズ バリその額で、限度ということになると、それを上限にして最終的には定款の中で決め る余地を残しておくという形にすれば、確かにこの2枚目の絵で、剰余が全然なくて、 設立した直後に破綻してしまったようなケースで、かつ、時期がバブル時に現物を出し て設立したなどというケースでは、2階部分が1円もなくて、出資額の簿価では1,000 万円あるけれども、実際の資産価値はそれを割り込んでいるという世界が起こり得る。 それをやるときに、基準だったらば、確かにもう選択の余地なく、ほかから金を借りて きてでも1,000万円耳を揃えて返せという話になります。限度ということであるならば、 その中で話し合って、そういうことが起きたときには、それをアッパーリミットとし て、ある範囲で返せばいいということに決められるかもしれません。また、それをやっ たときに、それに伴う税制上の問題まで私どもは深く詰め切っていませんが、いずれに してもここにあえて論点を書いたのは、もともとこの話が四半世紀前から始まって、基 本的にインフレ基調の時代でずっと議論してきたものですから、インフレ基調の際の論 点は出尽くしているのですが、昨今の物価の状況に応じたものが必ずしも出ておりませ ん。論理的には先生がご指摘のとおり、限度と書いている以上は、下落のときも一律に はならないはずなのですが、なにせ四半世紀の経緯があるものですから、あえて念のた めにそれを書いたということです。 ○西島委員  私どももこういう形で日本医師会としても、この制度を実現してほしいというのを出 しています。先ほどの医業の永続性・継続性ということですが、永続性というのは地域 医療の観点から考えていくと、住民にとって医療があったのがなくなるのは、生命の問 題もあるし大変なことなのです。そういう意味で考えると、永続性というのはやはり住 民の立場で考えた文言として考えればいいのではないか。もう1つの継続性というの は、まさしく代替わりの話で、ところが代替わりのときの相続税というのは非常に大き いわけで、その辺りがこの制度では全然考えが入っていなかったというのは、1つには 永続性というところがあって、この前の検討会で言いましたが、基本的には解散という 考え方はなかったのではないかと思います。ですから、その辺りで、今回の出資額限度 法人を制度化するにあたっては、まさしく相続税をどうするのかというところをはっき りしておかないと、メリットはないのだろうと思います。継続性という観点からいく と、やはり相続税の問題は非常に大きいだろうと思います。そこでいくと、豊田委員が おっしゃったように、後戻りするということは、絶対に相続税の軽減にはつながらない わけなので、それは基本的なところだろうと思います。 ○田中座長  後戻りはあり得ないということですね。 ○松原委員  医療の永続性・継続性を確保するために出資額限度法人を制度化することが必要なの でしょうけれども、ここで明確にしておかなければいけないと思う点は、あくまでも病 院が非営利性を保った上で、継続性を保つためにこういうものを作る制度なのですが、 逆の見方をすると、営利参入論者の人たちにとって、格好の材料を与えることになりは しないかという点です。非常に大きい問題は相続税の点です。普通はどんな小さな会社 であっても、相続するときには時価評価で相続されます。たとえ上場していなくてもそ の場の相場で考えて時価評価して相続される。だけれども、出資額限度法人だったら、 時価評価しないで、持分は維持したまま時価評価はしませんというところが、逆に相続 税逃れとかに叩かれないか懸念しています。営利参入論者から、ガバナンスもオープン されてない状況でそういうものを認めるぐらいだったら、営利参入論者が営利を入れ て、経営もオープンにしてやったらなどと言われないように、営利参入の材料にならな い方策、どういった点をクリアにしていったら、そういった変な材料に、隙を見せない ようにできるのか、会計士の先生や弁護士の方にも論点整理をしていただくなどして、 是非詰めていったほうがいいのではないかと思います。 ○田中座長  出資額限度が金銭的な意味の退社時に払う払わないだけならテクニカルな話だけれど も、実際には法人のガバナンスについて、意思決定について相続税を払わずに持ち続け るのはどうか、もう少し広い観点も考えるということですね。 ○松原委員  はい。かつ、そういうことを理由に、営利参入を言いたい人たちが、そこを突いてく るようなことにならないようにしたほうがいいのではないかということです。 ○田中座長  貴重なご指摘だと思います。こちらにとって都合のいいことが、ほかから見るとどう 見えるかを意識せよとのご指摘ですね。 ○山崎委員  いまのご意見についてですが、医療法人の場合は社員の発言権が株式会社のように過 半数を持っているとオーナー権を持っているとはならないのです。だから、99%の持分 を持っていても、社員総会の投票権は1票ですし、株というか、持分を全く持っていな い社員でも1票なのです。したがって、オーナー権というか、その部分の担保というの は、一般の営利企業というか、株式会社とは同じようには考えられないと思うのです。 したがって、それはやはりこれからこの検討委員会で詰めていく話になるのでしょうけ れども、営利法人の参入の検討会の中で、法人を解散したときに剰余金を全部分配でき るというのが、医療法人は営利法人ではないかという根拠になった論点だと思うので す。その辺の論点というのは、医療法人のそういう社員総会の仕組みを全く分かってい ない状態で論じているような話だと思うのです。その部分というのは病院の経営性、透 明性をきちんと情報公開し、担保していくことによって、医療法人と営利法人は違うの だということを実証していけると思っています。 ○渡延指導課長  いま松原委員、山崎委員からご指摘があった点ですが、資料4頁に14年12月の規制改 革に関して、総合規制改革会議から出た第二次計画の触りの部分を挙げています。アン ダーラインを該当の部分に引いていますが、現行の持分を有する医療法人でも内部留保 を蓄積し、解散時にはそれを出資者に配分することは可能であることなどを考え合わせ ると云々ということで、すでにこの問題は取り挙げられているところです。ここでは解 散時のことだけを言っていますが、脱退時についても同じようなことが起こって、これ は事実上の配当ではないかということで、すでに提起は受けています。  医業経営の在り方検討会ではこの点について、本来医療法人は永続的・安定的に事業 を展開していくためのものであるから、一時的、異例変則的というか、例外的に起こる 解散をとらえて、そういう議論をするのは、ただちに当たらないのではないかというこ とを2頁の(2)の○の1点目のところでいったわけですが、医療サイドはそういう考 え方に立つにしても、外からこういう批判を寄せている方がいることは、これまた事実 です。  先ほどご紹介した規制改革の中で言われている仕組み、その根底にあるのはいま山崎 先生が言われましたように、株式会社であれば累積投票的なところで99%が出資してい る人間が社員総会を支配して、自分の便宜なように解散を決めることができるわけなの ですが、医療法人の場合はただいま、まさにご指摘があったように社員は全員平等で1 票ですし、中には出資のない人間もいますから、そもそも恣意的に運営して出資の多い 方が勝手に解散をやるというシステムは起こり得ないはずなのですが、必ずしもそこの ところが理解されていないところはあるように思います。  ただ、いずれにしても松原先生が提起された点について申し上げるならば、出資があ るところで解散時の配分が事実上の配当だという提起を受けている中で、そういったこ とが起こらないようにするということは、どうしても我が方としては1つ答えを出さな ければならない問題だろうと思い、ここはあえてそういう問題があることを在り方検討 会でも認めて、かつまたこの検討会でもそうした批判を正面から認めた上で、1つのお 答えを皆さんでお知恵を出していただけないかという思いです。  税の関係で若干補足させます。 ○田中指導課課長補佐  松原先生のほうから相続税について営利法人に参入要請に対して、留意すべきではな いかといったご意見があったのですが、論点は2つあり、1つは、先生からご指摘が あった相続税の問題も、税務当局とよく調整していかなければならないと考えていま す。もう1つ、いま整理すべき論点に書いてあるところに基づき、所得税、法人税、贈 与税についての取扱いということで、持分のある社団医療法人から、出資額限度法人、 持分を限定されたものへの移行をするときに、まさにイメージ図で書いてあるところの 剰与金にあたる部分が、例えば所得税とか、法人税とか、贈与税が課税されるのではな いかという恐れがあることが指摘されており、また、各団体の方から取扱いを明確にし て、非課税にすべきではないかということをいただいているものです。資料の10頁です が、これは租税特別措置法第67条の2の適用を受けるための社団たる医療法人の組織変 更についてということで、これは特定医療法人についての旧大蔵省と国税庁、旧厚生省 の課長の覚書きということですが、例えば持分のある社団法人から特定医療法人、持分 のない医療法人に移行したときに、課税関係をどうしていくかということで、それを両 省庁により確認したというものです。ここの2のところで、「1により昭和41年3月末 日までに定款を変更し、租税特別措置法第67条の2により大蔵大臣の承認を受けた場合 には、その変更につき法人税、所得税及び贈与税の課税はしない」ということで、移行 時に所得税、法人税、贈与税が発生しかねないところについて、そこは課税はしません というお約束をさせていただいているというものです。  特別医療法人についても、税務当局との間でも同様の取扱いをすることが確認されて います。出資額限度法人については、こういったことの確認を我々はしていないので、 いま税務当局と調整をしているところですが、そういう確認ができれば、そういった取 扱いにできるのかと考えています。相続税という論点も1つあろうかと思いますが、出 資額限度法人の移行にあたって、いちばん問題とされているのは所得税と法人税と贈与 税ということです。 ○田中座長  10頁のこの紙はいまでも活きているということですね。 ○品川委員  厚い資料の7頁に関連して質問します。医療法人という定義が、8頁には医療法人、 特定医療法人、特別医療法人ということで、ここはそれぞれ区分されていると思うので すが、7頁についての総数の3万7,306というのは、特定・特別が含まれているのかど うか、ということと、含まれていないということであれば、一般の医療法人を指すとい う意味であれば、社団の中で持分がない322という数字はどういう場合を意味している のか。それから一人医療法人が非常に多いという問題は、論点の中で解散した場合に残 った財産が、仮に出資額限度法人に移行して、一人医療法人で、廃業してしまった場合 に、残っている財産を具体的にどう処分するのかということ等について、いまのところ 事務的にはどういうようにお考えなのですか。 ○田中座長  これは数の話と一人法人に関する質問ですね。 ○渡延指導課長  まず、7頁の医療法人の数の問題です。この表の(3)の医療法人数のところで、再 掲と明記したもの以外は、そういう関係にないので、総数の3万7,000の中には、特定 ・特別は当然含まれているということです。総数と財団、持分有社団、持分無社団を足 し上げた数が総数の3万7,000に一致しています。一人医師医療法人、特定・特別は再 掲という形で提示しているわけですが、そうなると、品川先生がお尋ねの社団で持分な しとは一体何なのかということですが、これは悉皆で調査したわけではありませんが、 いろいろな類型があろうかと思います。設立時にある意味で税を払って、最初から持分 なしで作った、社員総会という議決機関を持つ形の法人運営がいいということでそうい うものを選ばれたケースもあるでしょうし、中には社団型の特定だったものが、通常の 持分ありから特定に移行して、特定の承認を取り消されて、だけど持分のない形でその まま残っているというものも、当然含まれているだろうと思います。  したがって、寄って来たるところはさまざまであろうと思いますが、直接のお尋ねに ついて申し上げれば、この社団持分なしと。 ○品川委員  そうすると、一般の医療法人の数がここから直接出てきていないですね。 ○渡延指導課長  一般の医療法人と申しますと。 ○品川委員  特定・特別を除いた医療法人は、この数字からはどう読めばいいのですか。3万7,306 から、356と29を控除したのが、一般の医療法人になるのですか。どうもこの表自体が 医療法人の定義からすると、ちょっと分かりにくい表なのです。それで、いま我々が議 論しなければならないのは一般の医療法人ですね。一般の医療法人が一体どれくらい あって、特に残与財産の分配の問題に絡めて、どういう数値が母集団になっているの か、その辺が把握し切れないものですから、例えば先ほど持分のない社団を申し上げま したが、財団の403という数は、特定・特別を加えても、403にはならないし、403の中 には、一般の医療法人が含まれているのかどうか、あるいは法人という概念からとらえ れば、医療会社、株式会社もたしか何十社かあるはずですね。そういうことがこの表か らはちょっと読み切れないので、その辺をもう少し分かるようにしていただければあり がたいです。 ○渡延指導課長  資料をできれば次の機会にでも用意したいと思います。いま直接のお尋ねについて申 し上げるならば、特定と特別の中で、特定かつ特別が仮にないとするならば、総数の3 万7,306から356と29を引いたものが、いわゆる普通の医療法人の数となってきます。両 者の関係について言うならば、特定・特別の場合であれば、財団か持分なしの社団です から、その上の403と322を足した数が、356と29を下回っていれば明らかにおかしいわ けですが、これは当然外に出ていますので、その限りでこの表の作りには矛盾はないと 考えています。もう少し分かりやすい表記方法があれば、これは考えていきたいと思い ます。 ○品川委員  逆に先ほどの財団403と持分のない322、725から356と29を控除してもまだ300くらい あります。その300ぐらいは一体どういう実態をもっている医療法人なのか、その辺も お調べいただければと思います。 ○渡延指導課長  確認所管のものと経営所管のものがありますので、法人のほうとプライバシーとの関 係を調整して、幾つかご紹介できるものがあればご紹介させていただきたいと思いま す。 ○田中座長  一人医師医療法人についてはこの話題ではどうかという話ですが。 ○渡延指導課長  仮に今回議論している出資額限度法人になったケースで、かつそれが解散という事態 を迎えたケースはどうなるかということですが、これについてはまさに出資額限度法人 自体、構造なり要件なりをご議論いただくわけです。1つ私どもが参考に考えておりま すのが、今回資料にも収載させていただきましたが、日本医師会と四病院協議会のお名 前で、税制改正についての要望をいただいています。その中で、例えば四病院協議会か らは新しい出資額限度方式を採った場合の標準定款例の素案的なものも合わせてお示し いただいています。資料18頁に、34条の改正案のところで、「解散したときの払込済出 資額を超える残余財産は、社員総会の議決により、知事の認可を得て、国若しくは地方 公共団体又は同種の医療法人に帰属せしめるものとする」というプランになっていま す。  これは当事者がおられる前で勝手に内容を忖度するのもあれですが、現在の特別医療 法人がこれと似たような構造になっており、国・地方公共団体またはほかの特別医療法 人という形に、解散時の残与財産は帰属させるという形になっています。この場合の同 種の医療法人というのが何を指しているのか、やはり出資額限度法人なのか、それとも 特定・特別はさらに公益性が高いから、公益性において出資額限度法人と同等以上とい う意味でそういうものも含まれるのか、これはおそらく技術的に並行して検討されてい るところではないかと思います。 ○田中座長  個別の論点でも結構ですし、論点メモの構成自体、こういう大きい項目が抜けている などのご指摘でも結構ですが、いかがでしょうか。 ○豊田委員  先ほどの松原委員のご発言ですが、この出資額限度法人を法制化することがむしろ営 利法人の医療経営の参入に口実を与えるのではないかということですが。 ○松原委員  制度化するにあたっては、セットで非営利性の徹底とか、そういったことをここでど うしたらいいのか、という方策を検討すべきだと思っているということを申し上げまし た。 ○豊田委員  先ほど課長からも説明がありました先に終わった医業経営の在り方検討会でも、そう いった資料も出ています。要するに現在の持分のある社団は、配当はしないけれども、 解散時に持分に応じて残与財産を配分すれば、短期的な配当ではない長期的にそれは配 当である。したがって、営利法人の範疇に入るという意見もありました。まさに、いま の持分のある社団の医療法人が、そういった曖昧さというか、いろいろ批判されるよう な状況にあるのです。ですから、今回は出資額限度法人はその辺は徹底的に問題点を排 除したつもりで、もちろん剰余金の配当をしないのは一緒です。  それから同族規制であるとか、解散時の残与財産は先ほど紹介がありましたように 国、地方公共団体、それから同種の法人ということになりますと、出資額限度法人がで きれば、同種は出資額限度法人だと考えています。そういったところに残与財産は整理 する。そういったことで、公益性を担保することによって、営利法人のいろいろな批判 はすべてクリアできるのではないかと考えていますので、この論点メモの既存の持分あ る社団医療法人から出資額限度法人へ移行を促進する方策と、2番目の○、いわゆる公 益の要件で、いま先生がおっしゃる点がきちんと整理されればよろしいのではないかと 考えています。 ○品川委員  先ほどの18頁の34条の案は、日本医師会の議論を一応経た上で、こういう限度額法人 を作る必要があるということで要求させていただいたのですが、これは税務的な観点か らチェックすると、同種の医療法人というのが非常に邪魔になります。邪魔になるとい うのは善意に解すれば、病院の継続性で地域医療のために同じ種類の病院に提供すると いうのは、極めて公益性にかなうのではないかということになるのでしょうけれども、 うがった言い方をすると、ではそれを国・地方公共団体に紐付きなしで譲渡するという ことであれば問題はないのですが、同種の病院に施設や何かを全部移管する。しかし前 理事長の息子を次の病院の理事に迎え入れろとか、そういう条件が必ず付くのではない か。そういう条件が付く以上は限度額とはいえ、限度額以上に当然経済的利益を付加し ているではないかという問題が、必ず税務当局からクレームが付くと思うのです。です から、その辺をどうクリアするかという、今後国税当局と折衝しながら、またここで議 論する必要があるのかも分かりません。そこが問題で、医師会で議論したのは、とにか くこういう制度を作って、円滑な医療経営ができるようにしたい。少なくとも相続が起 こったことによって、経営が頓挫するようなことはおかしい。これは私も中小企業長、 あるいは全国法人会等のいろいろな税制検討会に参画して、そういう中小企業の事業の 継続性から、どういう観点が必要であるか。あるいはいま我が国の国民経済全体におい て、中小企業の経営維持ということがどれだけ重要であるか、というような観点からい ろいろ議論をしています。医療法人についても、この辺の問題が、当局は結局、私的利 益が常に付きまとっているではないかというようなことを、どう整理するかということ です。ただ、当然医療法人側でも、おそらく自分が作った病院だから、自分の子孫にそ れを継続させるというのは当たり前ではないかという人たちも多いわけで、それはそれ で尊重しなければならない制度なのです。そういう一見公益とか非営利という言葉につ いては、言葉は美しいかも分からないけれども、人間の属性からいって、要するに儲け とか、自分のためになるということがなかったら、一生懸命に神様のようにすべて能力 を尽くして働くなどということはあまり考えられないので、何らかのインセンティブを 与える制度がどこかに残っていなかったら、それはおかしいのです。すべて公のために 尽くすというだけの制度だったら、おそらく病院経営などは成り立たないのではない か。それをどのようにうまくミックスして、対応するかというのがいちばん厄介な話だ と思うのです。 ○田中指導課課長補佐  いま品川先生のほうから残与財産の帰属について他の医療法人に帰属させると紐付き になるのではないか、その辺は税務当局と調整が必要ではないかというお話ですが、現 に特別医療法人制度があり、その特別医療法人の解散時の残与財産については、国・地 方公共団体または厚生労働省令で定める者に帰属するということになっており、厚生労 働省令では、他の特別医療法人ということになっていますので、現行制度でも特別医療 法人制度同士で残与財産の帰属をしているということがあるので、出資額限度法人につ いても、いま特別医療法人と同じような公益性が担保されれば、そこは仮にいまの特別 医療法人制度同士で問題があれば、それはまた別の問題として整理をしなければいけな いと思います。 ○品川委員  医療法人の場合は出資持分がないから、持分評価がされないから、よってそれよりも 逆にうがった見方をされる可能性があるのです。したがって、これは私の心配が杞憂に 終われば、それはそれで結構なのですが、その辺も含んで、当局と折衝されたらいかが でしょうか。 ○田中座長  反対という意味ではなく、それを踏まえて交渉せよとのご指摘ですね、ありがとうご ざいました。 ○松原委員  私の発言が舌足らずで誤解を与えてしまったかもしれないと思いますので、念のため もう一度補足させていただきます。先ほど発言させていただいた趣旨は、1つの制度を 作るときに、いろいろな見方をする方がいらっしゃるので、うがった見方をする方に、 揚げ足をとられないような、非営利性を担保するどころか、強調するような条件も一緒 にセットするとか、そういったことをここで皆さんと意見を交わされればありがたいと 思っております。 ○田中座長  ありがとうございます。品川委員の言われた持分評価の問題は、物価が下落したとき 等には利いてくるのです。世の中がインフレ基調のときには出資額限度の一言で済んで しまうのですが、下がってきたときに、特別・特定と違って持分評価は難しいですね。 非常にいいご指摘をいただいたと思いますが、ほかにいかがでしょうか。 ○品川委員  座長がいまおっしゃったように、おそらくこの検討会の大きな問題がそこにもあると 思うのです。持分評価について私のいままでの経験からでは、医療法人化からは、一貫 して類似業種比準方式を緩めろという要望をずっと受けてきたこともありますし、いま もそうだと思うのです。純資産価格で評価するか、類似業種比準方式で評価するかとい うのはいろいろ厄介な問題があるわけで、類似業種比準方式についてはほかの同族会社 に関しては、いわゆる利益配当、純資産1株当たりの利益、配当、純資産の3基準が設 けられていて、医療法人は配当が禁止されているから利益と資産の2要素でやる。ただ し、斟酌割合が0.5から0.7までになっているわけで、商法上は0.5になっているのです が、そういう場合に医療法人としてもう一度出資体系、特に仮にこの限度額が認められ た場合に、限度以下になった場合にどういう評価方法がいいかということについては、 もう一度練り直す必要があると思われます。特に類似業種比準方式というのはものすご く評価がブレてしまうものですから、極めて極端なケースなわけです。相続税のために 良かれと思っても、今度はそれ以下しか払い戻ししないのかということになると、今度 は出資者間でものすごく不平等が生じると思うのです。だから、安ければいいという問 題ではないので、その辺も踏まえて、むしろ医療法人側がどこまで腹を括るかという問 題にもかかわってくると思います。 ○田中座長  先ほど課長が言われたように、インフレ基調の中で考えられてきた案なので、現在の 経済情勢で持分評価というテクニカルな点が引っかかってくるため、検討を続ける必要 があります。ほかにいかがでしょうか。なお検討会の進め方についても何かご意見があ ればいかがでしょうか。 ○山崎委員  出資額限度法人の検討の中で、出資額ということに限定した場合に、公的資金の医療 法人への投入の方法というのも、この委員会で検討していただくわけにはいかないので すか。というのは、医療法人が多額な運営資金を必要とするのは病院の建て替えなので す。従来、医療法人というのは個人病院という色彩を持っていたので、公的資金という 形で補助金の投入ができないという話だったのです。それが、個人の財布から離れて、 出資額限度法人を作って、出資額しか返還しないで、法人の財産に帰属して、しかも法 人を解散した場合、国に帰属するのだという形になれば、そういう病院の増改築だの施 設整備費など、そういうものも出資額限度法人のほうにも社会資本としての補助を考え るべきだと思うのです。これは施設の整備費というのは国公立病院には出ているわけで す。厚労省に聞くと病院の増改築の費用は診療報酬に入っているという説明をするわけ です。診療報酬に入っているという増改築の資金を、国公立の病院は一方で施設整備費 として全額補助をしているという、補助の二重取りの構造になるわけです。したがっ て、そこの部分も含めて、病院の出資額限度法人の経営の透明性はきちんとする代わり に、長期の多額な返済で病院がきゅうきゅうになるわけですから、病院の永続性を考え た場合、従来の方法と違った形での補助金のあり方も検討していただきたいと思いま す。 ○渡延指導課長  事務局の立場で申し上げますと、まず、今回の検討会については冒頭局長から申し上 げましたとおり、非常に役所側の勝手な事情で恐縮ですが、期間限定、テーマ限定で関 連の先生方に集中的にご議論いただきたいということでご参集をお願いいたしました。 事実再三お話に出ておりますとおり、関係省庁との折衝と並行して進めることもあり、 間口を限定して深掘りをしていきたいという気持がありますので、できることならばそ れに集中特化でお願いしたいというのが1点です。  なお、ただいま山崎先生からご提起がありました点ですが、これまでも偶然ですが私 ども指導課医療提供体制確保の一貫として、施設整備の補助金なり運営費の補助金等を 出しており、運営については公的に限らず、民間個人立、医療法人立であっても、いわ ゆる政策医療を実施いただいている所についてはこれをお払いしているのと、建て替え については例えば25年経過のものについては近代化の補助金というのをお払いしてきて います。  加えて3月までにやった医業経営の在り方検討会の中で、今後の医療法人医業経営の 効率化を図って活力を高めるという方策の中で、まさにいまご提起があった建て替え 時、節目節目でのまとまった資金需要に対応する方策という切り口から、まだ研究検討 の過程に残っているものもありますが、病院債の発行をはじめとして、そういう切り口 から手当てをしていこうという方向が打ち出されているところです。これについて若干 プログラムに沿って、時間をいただきながら進めていきたいと考えていますので、その 問題については、できることならば、この場の議論としては一旦整理させていただきた いというのが事務局としてのお願いです。 ○田中座長  12月までという非常に厳しいスケジュールですので。 ○品川委員  厚い資料の11頁に、医療法人の持分払戻請求事件が2件ほど紹介されていますが、こ の論点の中で持分の評価ということが非常に重要な問題になってくるわけです。いろい ろな税金の関係者は国税庁だけではなくて、特に専門雑誌等に平成15年の最高裁判決に ついて注目しているわけです。これが法律論としてどの程度引用できるのかどうかとい うことが非常に注目されているので、次回までにこの種の事件のもう少し詳しいデータ を配付していただいて、法律論としてどこまでそれが活用できるのかということも、検 討すべきではないかと思います。これだけではちょっとよく分からないので、それをお 願いしたいと思います。 ○田中座長  間に合えばお願いいたします。では、まだあるかと思いますが、時間ですので、本日 はこれにて終了いたします。次回は本日大変いろいろな観点からご意見をいただきまし たので、ご議論いただいた論点整理に沿って、さらに議論を深めていきたいと思いま す。日程について事務局から説明します。 ○渡延指導課長  次回の日程については先生方のご予定も伺っていますが、10月29日(水)16時から開 催したいと考えています。議題については本日論点整理のフレームをペーパーで示しま したが、この中の特に出資額限度法人の制度化に向けた具体的検討にかかわって、移行 時における税制措置を念頭に置いた公益性確保のための要件のあり方を中心に、議論を 深めていただければと考えています。加えて、本日ご要望、ご指摘のありました資料等 を用意して、議論を深めていきたいと思っていますので、なにとぞよろしくお願いいた します。 ○田中座長  では本日はこれにて閉会といたします。お忙しいところをご出席いただきまして、ど うもありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194