03/10/06 第16回医療安全対策検討会議議事録  第16回医療安全対策検討会議                        日時 平成15年10月6日(月)                           15:00〜                        場所 経済産業省別館944号室 ○事務局  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしています注意事 項をお守りくださるようお願いいたします。 ○森座長  定刻になりましたので、ただいまから第16回「医療安全対策検討会議」を始めたいと 存じます。皆様方、大変お忙しい中お出かけいただき、ありがとうございました。  前回お目にかかりましたのが半年以上前、今年の3月だったと思います。その間、い ろいろなことがあったようです。今日検討会は部会や委員会のご報告が中心と承知して おります。  本日は、委員の方々は16名の出席です。岩村委員、川村委員、辻本委員、山崎委員は それぞれ、よんどころない用事で欠席と伺っています。  委員の交代がありましたのでご報告いたします。日本歯科医師会の梅田委員に代わ り、新井専務理事がご就任です。 ○新井委員  新井でございます、よろしくお願いいたします。 ○森座長  どうぞよろしくお願いします。本日は参考人としてお二方をお招きしています。前田 東京都立大学法学部長、武藤国立長野病院副院長です。どうぞ、よろしくお願いいたし ます。  厚生労働省においてもかなり大幅な人事異動がありました由、事務局からご紹介くだ さい。 ○医療安全推進室長  7月1日および8月29日付の人事異動に伴って事務局も入れ替わっていますので、厚 生労働省の出席者と併せ、新しいメンバーをご紹介したいと思います。まず、医政局長 の岩尾です。医薬食品局長の阿曽沼です。医薬食品局審議官の鶴田です。医政局看護課 長の田村です。医薬食品局安全対策課長の平山です。同局の安全対策課安全使用推進室 長の俵木です。  なお、医政局審議官の中島、医政局医事課長の上田、研究開発振興課長の石塚、総務 課長の榮畑が国会等で若干遅れています。最後となりましたが、私が医療安全推進室長 の岩崎です。よろしくお願いいたします。 ○森座長  どうもありがとうございました。それでは、ご出席の両局長からお言葉をいただきた いと思います。まず、岩尾局長からお願いいたします。 ○医政局長  8月29日付で医政局長を拝命しました岩尾でございます。よろしくお願いいたしま す。  医療安全対策検討会議の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。医療安全の推進は 医療政策の最優先課題です。各々の医療現場で、十分な安全対策を講じることが必要と 考えています。  本検討会議は平成13年5月に発足しています。医療安全の推進に関して精力的なご議 論をいただき、平成14年4月には今後の医療安全対策の進むべき方向性と緊急に取り組 むべき課題について、「医療安全推進総合対策」を取りまとめていただきました。厚生 労働省としてはこのご指摘を踏まえ、医療安全の推進に必要な対策に取り組んでいると ころでございます。  本日は各部会、委員会における活動状況、平成16年度概算要求についてのご報告をい ただくこととしています。委員の皆様におかれましては、高い見識に基づく専門的な視 点から、引続きご指導とご協力を賜りますようお願い申し上げ、甚だ簡単ですがご挨拶 に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○森座長  どうもありがとうございました。次に阿曽沼局長、お願いいたします。 ○医薬食品局長  同じく8月29日付で医薬食品局長を拝命した阿曽沼です。よろしくお願いいたしま す。  私どもの局、医薬品や医療用具の安全対策を所管しています医薬食品局としては、製 品からのアプローチということを考えてまいりました。今後とも本検討会でのご議論を 十分踏まえ、医薬品や医療用具のより一層の安全な使用が図られるよう、最善の努力を していきたいと考えています。今後とも是非、専門的な見地から委員の先生方のご指 導、ご協力を賜りたいと思います。簡単ですが、よろしくお願い申し上げます。 ○森座長  どうもありがとうございました。お二方、これからもどうぞよろしくお願いいたしま す。  本日、ここでご議論いただきたい事柄の内容として、各部会、委員会でのご議論の状 況というか、活動状況を先ずご報告いただきます。その上で、それらについて委員の 方々からご意見を頂戴する予定でございます。そのほかに、平成16年度の概算要求につ いて事務局からご説明いただくことになっています。それから、「医療安全支援センタ ー」の設置状況、現在の活動状況についてもご報告いただきます。  それでは活発に論議いただきたいと存じます。議事に入る前に、事務局から資料の確 認をお願いいたします。 ○事務局  まず「議事次第」が1枚、座席表が1枚あります。それ以外に資料として1から8、 最後に「参考資料」が1つ入っています。ご確認ください。資料の確認は以上です。 ○森座長  最初の議事は「各部会、ならびに委員会の活動状況」です。先ほども申し上げました ように、前回、この委員会が開催されてからほぼ半年ほど経過しています。その間に各 部会、委員会では積極的にいろいろ論議して下さったようです。したがって、それぞれ の部会や委員会の委員長からご報告をいただき、次に、ここにおられる方々にそれらに ついて論議していただくという段取りです。  ただ、ヒヤリ・ハットの事例検討作業部会では本日、橋本部会長が欠席ですので、同 部会の委員でいらっしゃる武藤参考人からお願いいたします。  資料1に、各部会、委員会における最近の開催状況がわかりやすく整理されておりま す。これを拠りどころにして、順次ご報告をいただきたいと思います。まず「ヒューマ ンエラー部会」部会長の矢崎委員からご報告いただきます。 ○矢崎委員  ヒューマンエラー部会は4月に開かれ、資料2に当日の議事次第がございます。その 概要を簡単に述べたいと思います。ヒヤリ・ハットのネットワーク整備事業第5回集計 結果については、武藤委員からご報告がありますので省略いたします。その報告を受 け、さらに医薬品および医療用具にかかわる安全対策について、業界団体の方々から意 見を承りました。  まず、日本製薬団体連合会からは、医薬品業界の医療安全対策についての活動状況と いうか、その方策について報告をいただきました。例えば、本体部分にブランド名はあ るけれども含量が記載されていないとか、いろいろ記載方法に問題がありました。改善 の例を示され、誤使用防止のための注意喚起をラベルに印字などのお話がありました。  さらに日本医療機器関係団体協議会からは、医療機器・用具の取扱いについての改良 作業のご報告をいただきました。例えば、輸液ラインと栄養ラインの誤接続防止策、あ るいは人工呼吸器の事故対策などについての取組み、さらに行政側から厚生労働省の取 組みについてもご説明をいただいて、議論しました。  議論におきましては、業界団体の方々のご努力は多といたしますが、医療現場のニー ズから見るとまだまだ問題が多いのではないか。業界にはなお一層の努力を望むととも に、行政側としても具体的な対応をきちんと行うようにしてほしいという、多くの委員 の方の意見があり、それをまとめとして申し上げました。  さらに、現場のニーズの把握が十分ではないのではないか。製薬業界や医療機器・用 具業界、我々医療機関とユーザー、行政の方々が一堂に会して、一緒に議論する場を是 非設けてほしいという意見が多くの方から出され、それについても、よろしくお願いし ますということを申し上げました。  最後に、厚生労働科学研究として行われた人工心肺機器の安全マニュアル作業に関す る研究、医療および療養環境で使われる諸物品の安全性の問題についての研究、2つの 研究結果の概要報告を受けて閉会しました。以上です。 ○森座長  どうもありがとうございました。  それぞれの部会のご報告を順次いただいて、あとでまとめていろいろなご議論を願う ということでよろしいですか。もしご異議がなければ、次の報告に進みたいと思いま す。では「医薬品・医療用具等対策部会」部会長の桜井委員、お願いします。 ○桜井委員  資料3をご覧ください。ご報告すべきことは大きく分けて3つあります。最初が3頁 「医薬品類似性検討ワーキンググループについて」、2番目が13頁「輸液ポンプ等に関 する医療事故防止対策について」、3番目が19頁「特別償却制度の創設について」の3 つです。順次、ご報告させていただきます。  まず、医薬品類似性検討ワーキンググループについてです。5つのワーキンググルー プを設けて議論をしました。  その第1は、まず「規格ワーキンググループ」です。3頁、4頁に記載しています。 これは同じ薬品でもいろいろな規格がある。例えば10ミリの物と20ミリの物、何パーセ ントの物と何パーセントの物といった規格の違うものがあります。こういうものが取り 間違える可能性が強い。それを間違えないように、表示を考えましょうというもので す。いろいろな規格表示を人間工学的、あるいは心理学的な面からも検討して、わかり やすく、間違えにくいような規格の表示を検討しているということです。  2番目が5頁「名称類似ワーキンググループ」です。薬は非常に多いのですが、その 中で確か頭から2文字が同じものが5万種類、3文字同じものが3,000だったか、同じ ような文字を使った名前が非常に数多くある。したがって間違えやすい。その命名、名 称についてどういう問題があるか、どういう名前が間違えやすいかという法則を考え、 それによって名称の類似したものの間違いやすさを回避する方策を考えようということ です。  3番目は7頁、注射薬の問題など「外観類似ワーキンググループ」です。注射薬はご 存じのとおり、バイアルやアンプルに入っています。そこに薬の名前や何ミリグラムと いったことが表示されているのですが、これが読みにくい、あるいは外観が類似してい るとか、いろいろな問題があります。これを識別しやすいような形にしたほうが当然い いわけです。そのための検討項目について、表記法を検討しているというものです。最 近、アンプル製剤にはガラスに直接字が打ってあるものも多くあります。場合によって は、紙のラベルを付けたほうがいいかもしれないということがいろいろ議論されていま す。  4番目は9頁「輸液ワーキンググループ」です。ご存じのとおり、輸液はプラスチッ クのバッグに入っています。これもやはり、注射薬と同じように類似したような表記が あります。例えば、「何々T3」と「T3G」というものをついうっかり間違えるとい うこともあるわけです。そのようなことのないように、表記をどのようにしたらいい か。あるいは、容器はどのような形がいいかということもあります。  最近はツインバッグと言って、別々の薬が入っているバッグが隔壁などで使うまで分 けられています。使う前に圧迫したり、いろいろな方法によって通過するようにして、 2つの薬を混ぜてから使うという、ツインバッグというものがあります。これをうっか り開通するのを忘れて使うという問題もあります。こういうことのないように、どうし たらいいかを考えようということがあります。  5番目は11頁「眼科用剤ワーキンググループ」です。眼科用の製剤が特に取り上げら れているというのは、目というのは非常に敏感です。例えば、同じような形の容器に 入った水虫の薬などをうっかり目にやってしまったのではいろいろ問題がある。眼科に おいては、特に点眼の薬に特徴を持たせて、ほかのものと間違えにくいような形にす る。あるいは目の不自由な方でも、形で区別ができる方策を考えようということで検討 中です。  このように、5つのテーマを取り上げてワーキンググループを作りました。これは例 のヒヤリ・ハット事例等の報告などを受け、こういったことに関しての問題が比較的多 いことから取り上げたということです。  大きい2番目の課題は輸液ポンプに関する事故対策です。最近は輸液ポンプが非常に 多用されています。例えばチューブが外れた、あるいは注射器のようなピストンが外れ てしまった、フリー・ランニングというか、どんどん薬が入ってしまうようなことに なった。バッテリーが切れて止まってしまった等いろいろな問題があります。  こういうことのないように、例えばバッテリー消耗による警報機能を付ける、あるい は、きちんとピストンが押されていない場合は警報が鳴る等いろいろなことを考えよ う、ということで検討しているわけです。  第3番目の問題は、医療安全について、一種のインセンティブを働かせようという趣 旨もあり、特別償却制度を創設したというものです。対象の機械は人工呼吸器をはじ め、生命に直結した重要な機械となっています。しかも事例の報告が多いものを選ん で、対象機器8種類に特別償却の制度を設けたというものです。具体的なご報告は以上 です。  先ほど矢崎委員もおっしゃったように、物としての安全を一生懸命考えてやっている わけです。単に目の前の物が安全であっても、それが必ずしも医療の安全と直結するか というとなかなかそうはいかない。そうすると開発費、物を作る段階、あるいは使う段 階といった、安全性について通しての実効性を担保していかなければならないだろうと いうことです。行政、メーカー、ユーザーが同じ場で議論するということは大変必要性 が高いと思います。以上です。 ○森座長  どうもありがとうございました。非常に多種多様な対象に、いくつものワーキンググ ループを作って対処しておられる点がよくわかりました。次は「ヒヤリ・ハット事例検 討作業部会」、武藤さんからお願いします。 ○武藤参考人  橋本委員に代わりご報告いたします。資料4をご覧ください。概要しか付けていない のですが、5月22日と9月22日に会議を行っています。  まず、第6回の集計結果の概要についてご報告いたします。特定機能病院、国立病院 療養所からヒヤリ・ハットを集め、それを分析する作業を行っています。ここにもある ように、報告施設は77施設からいただいています。4番目の情報別の報告件数で見る と、全般コード化情報が8,740件、重要事例が1,107件です。医薬品等が235件になって います。  全般コード化について概略をお話いたします。項目別にいちばん多いのは処方与薬で す。2番目がチューブドレーンの問題、3番目が転倒・転落、4番目が医療機器の問 題、5番目が輸血、そのようなヒヤリ・ハットの傾向があります。  いくつか分析の内容をご紹介いたします。処方与薬に関しては、意外に薬をあげてい ないという無投薬例が結構目立ちました。それから点滴の注射のスピードが速い、遅い といった問題があります。2番目のチューブドレーンに関しては、自分で抜いてしまう 自己抜去が非常に多いことがわかります。3番目の転倒・転落に関しては、非常にいろ いろな患者特性や治療内容、療養環境等が複雑にからまっていることが見て取れまし た。  医療機器に関しては、やはりセッティングミスなどいろいろな問題が入っています。 輸血に関しては、もしこのヒヤリ・ハットが実際に行われたら非常に影響度の高い問題 が含まれていました。そのほか、発生時間帯や要因、原因といったことを分析していま す。  重要事例の1,100件に関しては、今回は転倒ケースに重点を絞って分析しています。 先ほどコード化でもお話しましたが、患者の特性などさまざまな要因がからまっていま す。1つは転倒のリスク・アセスメントをきちんとしなくてはいけないということで、 各種の転倒アセスメントリスク評価表を収集し、対策に関して分析しているところで す。  次の頁をご覧ください。9月29日に第7回の集計を行っています。報告施設が83施設 で、全般コード化情報が1万504件とかなり集まっています。重要事例が1,132件、医薬 品等が197件です。  この会議のときに話題になったのが、全般コード化情報の分析の中で、ヒヤリ・ハッ トの報告事例が男と女で性差があることが報告されました。比率で言うと、男のほうが 女性の1.3倍ほどヒヤリ・ハットの報告件数が多いということです。特に60歳代に限る と、男のほうが女よりも1.4倍ぐらいヒヤリ・ハットの報告件数があることがわかりま した。  実際、入院されている患者調査で見ると、入院している方は女性のほうがやや多いの です。ですから、このヒヤリ・ハットで上がってくる男女性差というのは、やはり何か 原因があるのではないかという分析を進めています。中でも、チューブドレーンの性差 が非常に大きかった。チューブドレーンに関しては自己抜去が多いのですが、ヒヤリ・ ハットにおいて男のほうが頻度が高いことがわかります。  第7回の集計において、重要事例に関してもチューブドレーン事故対策が問題になり ました。例えば、気管内チューブの自己抜去などというのも結構多いのですが、それに 関連して患者を抑制する問題、鎮静させる問題、これらについてきちんとした適用を決 めておく。あるいは、さらに、チューブドレーンを挿入するということ自体の適用を考 えていくことが必要だと言われています。  実際、気管内チューブの抜去事例を見ると、大体6割が再挿入というか、再挿管され ていない事例でした。もともと気管支チューブの適用がなかったかもしれない、という ことも問題になりました。そのようなことから、チューブドレーンの事故対策に関して 重要事例の中で扱っています。  全体を通じて言うと、かなりこのヒヤリ・ハット事例も集まってきたし、分析も深ま ってきました。今後は重点的に、テーマ別に、対策をも含めて検討を進めていきたいと 考えています。以上です。 ○森座長  ありがとうございました。次は「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会 」部会長、堺委員、お願いいたします。 ○堺委員  それでは、部会の報告をいたします。資料5をご覧ください。後ろから2枚目、「別 紙1」にこの部会の委員の名簿があります。このような方々にご検討いただき、報告書 を今日も参考人でいらっしゃっている東京都立大学の前田法学部長に起草委員長をお務 めいただきました。  それから、「別紙2」を見ていただくと、昨年度全部で10回協議いたしました。さま ざまな分野の方々から、参考人としてご意見を頂戴しました。医療事故の被害者の方、 そのご家族を支援する団体、あるいは患者側および病院側の弁護士の方々、医療機関あ るいは学会、そして医療以外の分野での安全対策を検討していらっしゃる方々等、広い 分野の方々からご意見をいただきました。それらのご意見を踏まえて、委員の方々にご 議論いただき、起草委員会にまとめていただいたものを部会で検討して報告書にいたし ました。  資料5の報告書、表紙の次に報告書の概要を記してあります。まず、1の「事故の発 生予防・再発防止のためのシステム作り」という提言をさせていただきました。発生予 防・再発防止策を講じるためには、医療の現場から「幅広く」「質の高い情報」を収集 して、これを専門家によって分析した上で、改善方策を医療現場等に提供する必要があ るということをまずまとめました。  すべての医療機関を対象として、収集範囲を厳密に区別せずに事故事例を幅広く収集 することが有用であろう。特に事故防止ということについては、事故の範囲を具体的に 例示した上で、それに該当する情報についてはすべての医療機関から報告を強く促す方 策を検討するという提言をしました。  すべての医療機関ですが、現時点では実際問題、直ちにすべての医療機関ということ にはやや制約があるのではないか。まず、事故の分析体制が確立されている国立高度専 門医療センター、国立病院、国立療養所、および大学病院、特定機能病院については、 特に重大な事例についてはこの報告を義務づけること。この際、どういうものを重大な 事例として報告を求めるかということについては、早急に検討すべきである。これはの ちほど、そのための委員会ということを提言しています。  一方、情報の取扱いに際しては、いやしくも防衛医療や萎縮医療に陥ることのないよ う、適切な対策を併せて講じていくべきであるということも提言させていただきまし た。  実際の事故事例の収集・分析・提供等は行政機関ではなく、中立的な第3者機関が行 うことが適当であろうと提言しています。  続いて2、「患者・家族からの相談体制の機能充実」です。今年度から都道府県、あ るいは二次医療圏等の「医療安全支援センター」を整備して、中立的な立場から支援す ることが必要であろう。それから、今後、事故事例情報の収集にかかわる第三者機関へ の事故予防に有用な情報を医療安全支援センターからも提供してもらうということを提 言いたしました。  3、「その他の国の取組み等」ということで提言させていただいたのは、まず医療安 全に関する情報の提供や普及啓発について、広く国民に現在の状況を情報として提供し ていくことを求めています。それから、医療従事者に対する教育研修、教育がいちばん 大事という考えから、このような教育研修について特に医師、あるいは歯科医師につい ては、来年度から必須化される臨床研修においても、これに関する研修を充実するよう にということを求めています。また医師、歯科医師ばかりでなく、医療機関の安全管理 者等に対しても研修を充実する必要があると提言いたしました。  それから、事故事例情報の活用に関する調査研究のようなものが必要ではないか。ま ず全国的な事故発生状況、これがまだ我が国では判明しておりません。これを把握する ために、事故の発生率等を算出する調査研究を実施する。これは今年度、厚生労働科学 研究として発足しています。  国民の適切な医療機関の選択に資する指標の開発に取り組むことも検討が始まってい ます。それから、調停やあっせんなど裁判外での紛争解決、いわゆるADRの仕組みの あり方についても調査研究が必要であると提言いたしました。  4、「他の対策との関係」ですが、別途検討されている「診療に関する情報提供のあ り方」、「医師等に対する行政処分のあり方」等との調整を図りながら必要な施策を総 合的に実施する。医療関係団体における会員の資質向上のための自浄作用を期待する。 このように報告書をまとめました。以上です。 ○森座長  どうもありがとうございました。かなり幅広い内容の事柄をご説明いただきました。 最後のご報告は「事故報告範囲検討委員会」委員長の前田さん、お願いします。 ○前田参考人  いま、堺委員からご報告があった内容に密接にかかわるわけですが、「医療に係る事 故事例情報の取扱いに関する検討部会」の報告書を受け、「事故報告範囲検討委員会」 というものが設けられました。資料6の3頁に委員の名前が載っています。オブザーバ ーとして堺委員にも入っていただいています。この委員会は医学的に専門的な内容とい うか、どういう種類のものをどう出すかということなので、医療の先生に多く入ってい ただいています。もちろん、被害に遭われた方の代表のような方、マスコミの方にも 入っていただき、そこに示されているような内容で構成されています。  この委員会の第1回が7月29日に開かれました。まだ第1回しか開かれておりません ので、第1回が動き出したところでのご議論だけご報告いたします。  先ほどご紹介があった、「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会」のい ちばん最初の柱、発生予防・再発防止のために事故事例の情報を集めて分析する。その 際、特に分析体制が確立されている国立高度専門医療センター、国立病院等で、特に重 大な事例について報告を義務づけるとなっています。それに適した内容をどう限ってい くか。外国の例などを素材としながら、まさに議論を始めたところです。  もう1つ重要なのは、おそらく多くの方が危惧されている、情報をどこまで、いつ広 げていくかという問題にもつながっていくと思います。まずは義務づけてというか、協 力をいただいて出していただける情報をどの範囲のものとするか、その基準を明確に定 める、ということを鋭意努力してまいりたいと思っています。まだ進展が少なくて申し 訳ありません。以上です。 ○森座長  ありがとうございました。以上、合計5つの部会・委員会からのご報告がありまし た。おそらく、この席には各部会、委員会に委員として加わっておられる方々がたくさ んおられるはずです。報告に関して何か追加的な事柄があれば、各委員の方からお伺い いたします。よろしいですか。特になければ、いまご報告いただいた方々、ありがとう ございました。  ただいまのご報告に関係あるご質問、あるいはいろいろなご意見、場合によっては直 接関係はなくても、間接的に関係があるもの、何なりとご自由におっしゃっていただい て結構です。どうぞ、お願いいたします。  まず最初に、私から桜井委員に伺いたいと思います。「特別償却」という言葉が出て きました。その後に「取得価格の20%」という文言があったのですが、特別償却という のは取得価格の20%をどのようにすることなのかを教えていただければと思います。 ○桜井委員  私はあまり、税金のことはよくわかりません。事務局からお答えいただけますでしょ うか。 ○事務局  事務局から若干補足いたします。資料3の23頁に図柄したものがございます。こちら に通常の減価償却の方法、今回適用する減価償却の方法をご説明させていただいていま す。最初、通常、6年間で15%ずつやっていくようなものを6年目のものを前倒しし て、1年目に20%付けるという形で行うものです。 ○森座長  わかりました。前もってこの図を拝見しておけばよかったのですね。では何方か。ど のようなことでも結構です。 ○飯塚委員  医薬品・医療用具委員会の報告に関して質問します。現存する医薬品や医療器具に名 称や表示、あるいは操作に関する設計上いろいろなリスクがあることが明らかになって きているわけです。とりあえず、これらの調査結果というか、研究結果を生産している 側にフィードバックして、注意するようにということがあるのかと思います。  私はもっと強いというか、きちんとした対応が必要なのだと思っています。これは安 全にかかわる問題です。安全というのは、経済合理性だけが働くようにして、良い物が 残るというようにしていたのでは過渡的状況において非常に危険なことが起こるわけ で、それを防がなければいけないわけです。  これまで行われてきた他の分野での方法というのは、それを何とかするということは 規制なのです。要するに経済合理性だけではいかないとき、もしくは無知や悪意があっ て、経済合理性を追求するために危険な状態を放置して、社会を不安に陥れてはいけな いということで規制という手段を用いるわけです。  この場合、規制というのは認知エラーなどが多いわけです。例えば名前だと商標登録 権がある、あるいはデザイン上の自由、さまざまな権利に抵触する可能性があるわけで す。そこを多少犯すことがあっても、国民にとって安全が重要であるという認識である ならば、その方向の規制を考えていかないと結局は「よろしく使ってくださいね」で終 わってしまうことを恐れるのです。  これは相反する知的所有権、権利と、全体としての社会の安全をどうするのかという 天秤の問題であります。いまこの状況では、自由を多少規制したとしても、国民の安全 を取るほうを重視することを、行政がリーダーシップを取ってやるべきではないかと 思っています。  ちなみに、私の専門は品質です。私のやっている品質というのはむしろこれとは全く 逆で、良くて安い物を出していったところが栄えることを良しとすることをやってきま した。それでもなおかつ、それではいかない分野があることを最近つくづく感じまし た。医療分野はその典型ではないかと思います。医療の安全、質保証、質の改善という のは社会技術なのです。社会として持っていなければいけないものであって、その社会 のレベルを表していると思います。自然に放っておくのではなくて、何らかの誘導が必 要だということを十分認識していただきたい。この部会でやられたことを十分活かせる ようなことを考えていただきたいと強く思います。 ○森座長  ありがとうございました。ある意味では「全体と個」という問題かもしれません。 ○安全使用推進室長  医薬食品局です。医薬品についての対策を検討しています。これまでにもいくつか、 販売名の付け方や表示のルールを検討してまいりました。現在、先ほど桜井委員からご 報告いただいたように、医薬品・医療用具等対策部会において5つのワーキンググルー プを設定し、具体的な対策づくり、名称についてもグループを作って対策づくりを進め ていただいています。「変更することで新たな事故を呼ぶのではないか」というご指摘 もある中で、一定のルールを作りながら対策を進めていきたいと考えています。 ○飯塚委員  そのような個々のことではなくて、技術的にどこが危ないということがわかってきた 時点で、その方向に関係者全員を誘導するような仕掛けを作ってほしいということで す。心ある人々がいろいろな研究を行って、これは危ない、あれは危ない、「それでは 何とかしましょう」では遅いのです。リーダーシップを取って、「これが危ないのだか らこのようにしましょう」ということ、タガをはめていくようなことをきちんと考えて いかないと、いつまでたっても放置される状況にあるわけです。いまでも名前が出てい る危ない薬がいっぱいあるわけです。それを新しい看護師が間違えたりするわけです。 「あなたが悪い」と言うけれども、間違えやすいところに置いておいて、落とし穴に落 ちてしまう状況を放置するわけにいかないのです。これに対して、何か手を打たなけれ ばいけないということを真面目に考える時期に来ていると思います。よろしくお願いい たします。すぐに出来ませんが、本当に真面目に考えないといけないと思います。 ○森座長  ありがとうございました。これはご意見として承ればよろしいですね。ほかにどなた か、ご発言はありませんでしょうか。 ○全田委員  同じような意見なのですが、名称の問題、例えば下剤と点眼薬が似ていたという外見 の問題、あれについては色を付けるなどしてはっきり分かれるようにしました。いま先 生がおっしゃったように、具体的に対策が立てられるかどうか。何回か前の会議でも、 既に名称は登録してしまっている。名称を登録してしまっているから、既に認可を受け るときにそれを変えることはできないという議論でした。  いま先生がおっしゃったように、そのようなところにどれだけ踏み込めるか。具体的 にどれだけ改善されてきたか。先ほど桜井委員もおっしゃいましたが、同じような名前 で内服薬でいま出ているもので、頭2文字では10%しか識別できないのです。頭3文字 では63%です。頭4文字でようやく93%です。そのような、非常に似たものが出てきて いることを具体的にどれだけ減らすことができてきたか。この会議をやってもう2年以 上たっているわけです。ですから、そこに踏み切らなくてはいけないと思います。  外見については、ラキソベロンと点眼薬は確かに変えてくれました。いま先生がおっ しゃったように、そういうことをもっと積極的に踏み込まなくてはいけないだろうと思 います。同じような意見ですが以上です。 ○井上委員  飯塚委員が言われたことが全体を示しているという気がします。製造メーカーが薬を 作って、それを国の制度にかけて認可をしていただいて、保険の適用を受けていく。一 連の薬事に関する申請の手続きがあります。  その中で大きな枠組みを作って、少し長い時間をかけても、皆さんがそういった類似 名称や規格の違いがはっきりわかる、使用方法を間違えないような制度を作っていくと いう、新たな制度づくりをやっていけと言われているのだと思います。  2つ問題点があって、直近で出ている類似名称の薬、現在医療の現場で使われている ものをその時どうするか。それから、長期的に見て、薬事に関する申請時に、枠組みを みんなが向かう方向、安全管理を考えながら薬事審査を受けていく制度作りをする。そ の過程の中で、医療安全に対して向かう方向を付けていく制度づくりが必要なのではな いか。この2つの点に分かれると思います。  とりあえず、現行流通しているものについては、先ほど飯塚委員がおっしゃられたよ うに知的所有権や商標登録の問題もありますので、補助的な手段で対応していくしかな いのではないか。変えないと言っているのではなくて、現状、すぐというのはそういう 方法だろうと思います。少なくとも、制度的なものについてはこれから、すぐにでも着 手していく必要があるのではないかという気がします。  諸外国では薬事申請の段階で、類似名称を比較するという制度があるようです。そう いう制度を調査して、これからそのような方向付けをを日本の中でも実施していく必要 があるのではないかという気がします。 ○森座長  ありがとうございました。いま、いろいろな薬の申請や許可の場合に名前や包装はに ついてはノータッチですか、問題にされるのは中身だけですか。 ○医薬食品局審議官  名称について、1つは特許や知的所有権の関係で抵触しているかという点を求めてい ます。また、名称の関係でもいろいろな問題が起こっていることから、企業にこの名称 について、他との関係で類似性はどうかという意見も出させています。ただ、非常に数 が多く、なかなか根本的な解決策まで見い出していない。こういった検討会での意見を 踏まえながら、承認に当たってもう少し入り込んだ対策をやっていきたいと考えていま す。  もう1つ、名称については医療用だけで1万数千品目あります。一般用も考えると もっと広いわけです。そうすると、外国等で行っていますバーコードの導入も考えてい きたいと考えています。 ○岡谷委員  2点質問したいと思います。1点は、ヒヤリ・ハット事例の検討部会ですが、今まで かなりの件数のヒヤリ・ハット事例の分析を済まされて、今後は予防対策等について検 討をするということでした。第4回等で転倒・転落の具体的防止方策案についてが、資 料として出されたようですが、今までの事例の分析の中で、転倒・転落の要因のような ものがはっきり分かってきたのかどうかについて伺いたいと思います。  事故報告範囲検討委員会について、まだ1回しか開かれていないということですが、 議論の論点等で具体的に明確になっていることがありましたら教えていただきたいと思 います。 ○武藤参考人  転倒・転落の具体的予防策は議論になりましたが、要因が非常に複雑です。患者の身 体的要因、治療ポイントの要因、療養環境などがあります。大ざっぱに言うと、医療者 が関連した転倒が全体の4分の1ぐらい、医療者がかかわっていない転倒が4分の3、 医療者のかかわっていない転倒のまた4分の3が看護師や医療者の目の届かない所で起 こっています。その残りが視野の中、医療者の目の届く所で起こっており、ほとんどが 目の届かない所で転倒・転落が起こっています。  これの対策・防止の1つで前回の部会でも問題になったのは、転倒リスクを事前にア セスメントする方法、その資料収集を行いました。これはいろいろな所で使われていま すので、それに対する具体的な予防策、例えば、ベッド脇のクッションや落ちたときの 床材の見直しなどが個別には挙がっています。ですから、これはかなり総合的にやって いかなければいけない問題だと考えています。 ○堺委員  ヒヤリ・ハットのことがありましたので関連してのお願いです。現在3カ月ごとにヒ ヤリ・ハット事例の収集、重要事例の収集が行われております。当初、多数の事例を、 できるだけ早く収集するということで、このような運びになっているかと思います。一 応多くの事例が収集され、現在は対策に力点が移っているという説明もいただきまし た。多くの施設で大体1年ごとに集計を行っていますが、3カ月ごとという指示があっ て、一部の施設では頑張って3カ月ごとに集計して届けています。  3カ月ごとと言いますと、報告を出し終わるとすぐ次を出すように、という指示がく るということが繰り返されており、現場にいささか疲労感が生じています。今後さらに どのぐらいの事例を収集しなければいけないかということもあろうかと思いますが、参 加登録施設数に対する報告施設数を見ますと、当初は3分の2ほど、現在は3分の1弱 の施設しか3カ月ごとに返事をしていないようです。日本全体の状況を把握するために は、なるべく幅広い多数の施設からの報告を集積していただきたいと思いますので、3 カ月ごとの情報収集が今後可能ならばご検討いただきたいと思います。 ○前田参考人  事故事例の件での質問で、堺先生にお答えいただきましたが、私から簡単に申し上げ ますと、第1回目ですので、論点がまだ鮮明になっていない部分があろうかと思いま す。個人の感想めいたものも入ってしまう面がありますが、大きく3つの点で対立とい うか軸が出てくると思います。  1つは、重大事故情報を集めるのに重大性の判断が、医療の再発可能性にとってどれ だけ重要かという問題と患者側から見て、重大であるかどうかにどうしても齟齬が生じ て、それをどう調整していくかという問題があります。  事故情報を集めるときに、その原因や背景を含めて、できる限り多くの情報が得られ るようなものを集めると幅が狭くなる。逆に幅広く、どんな細かいものでも情報が不十 分でも集める方向という要請と、1件1件の情報がきちんと備わったものに絞るかどう かという対立軸。それから情報をたくさん集めること自体は望ましいわけですが、コス トがかかります。そのバランスをどうするか。そういう中で世界の医療水準のいろいろ なものを含めて、我が国ではとりあえずこの程度の医療情報は、きちんと出していただ きたいという線を、なるべく早く作らせていただくように議論を進めていくつもりで す。 ○黒田委員  全般について堺先生の部会に関連して、厚生労働省にもお聞きしたいと思います。こ の検討会議は、もう2年ぐらいやっているわけですが、今度起きた青戸病院の事故を聞 いて、我々がやっているこの会議が、大変空しくなる感じがします。  なぜそういう感じがするかと言いますと、1番目には、医療の過誤が起こり、いろい ろな問題になっているのは、1999年の横浜市立大学病院以来、大学病院というもののあ り方はどうであるのかという事例がたくさん出ているわけです。そういう事例がほとん ど浸透していないという事実があそこで出てくるのです。しかもあのケースは、今まで の医療過誤とは全く異質な問題だと考えられます。  もう1つは、医療の教育をする組織だとすると、堺先生の部会でいろいろディスカッ ションをしながら、一体事故事例をどう活かしていくのか、特に医師や歯科医師に対す る教育は大変大事だということが書いてあるわけです。それがあのケースに関しては、 全く無効なのです。これは厚生労働省が指導する私立大学の病院です。それに対して今 後どういうことを厚生労働省としてはおやりになるのか。今までいろいろな報告書が いっぱい出てきているわけです。その基本的な問題が崩れていくことに対して、どうい うご指導をされるのか。  もう1つは、一般社会の安全に対するのものの考え方から、10年以上遅れていると思 います。例えば、東京電力の役員が全部退任されなければいけない理由は、事故が起こ ったわけではなく、安全に関する考え方が違うではないかということで、全原子力発電 所を止めながら、しかも組織としては大きな変化をする。最近は火災などで、企業の安 全の分化が盛んに問われています。そういう点においては、医療の安全に関するものの 考え方が、いま社会で考えられている安全とギャップがあり過ぎるのではないかという 感じがします。少なくとも医療の安全なり倫理を教える大学機関です。委員の方々は40 歳ぐらいの分別盛りの方々だと思いますが、そういう所にどうして浸透していかないの か。そういう事故調査はおやりにならないのでしょうか、ということをお聞きしたいと 思います。 ○森座長  これは、実は、非常に大きな問題です。私個人のことを申し上げると、日本医学会に とっても、非常に悩ましい事柄です。日本医学会として何か一言いえと外部からも言わ れ、実はいま短い文章を書いて糸氏先生に見ていただいているところです。反省するこ としきりです。ただ、いまのご発言に関する限り、当面は厚生労働省に対する質問であ ろうかと思いますが…。 ○医療安全推進室長  東京慈恵会医科大学附属青戸病院の医療事故については、私どもも9月25日の医師の 逮捕をもって、非常に重大な事例だと認識しております。警察の事例ですので、私ども も実際には新聞情報程度しか内容を承知していないわけですし、東京都から、ほぼ新聞 情報と同様のことをいただいております。その中で私どもとしていくつか問題点を把握 している部分があります。  例えば、臨床経験がない医療行為をするに当たって、指導医がいるにもかかわらず、 指導を仰いでいない。輸血を主として事前の準備がされていないとか、手続上の話で は、例えばインフォームドコンセントについて、患者に対して十分な説明をしていなか った。学内で倫理委員会等の手続がありますが、そのような手続を踏んでいないといっ た、いくつかのルールがあるにもかかわらず、そのルールを守っていない医師がいて、 不幸にして患者が亡くなった事例だと新聞情報では認識しています。  一応いまの段階で私どもが把握している内容等々は検討していますが、実際の事故の 情報については、今後いろいろな調べが進む中でより明らかになっていくと考えており ますし、いま私どもがこの医療機関に直接問合せをしても、多くの資料が警察の手にあ ると認識していますので、あまり効果のないものだろうと考えておりますので、ある程 度状況が分かった時点で、より一層の検討を加えたいと思っています。黒田先生がご指 摘のとおり、基本的には相当重大な事例だと認識しています。 ○飯塚委員  ルール、その他いろいろなことがあって、刑事上のことはさて置き、少なくとも背後 要因として、この歳のうちから経験を積みたいということがあったらしいことは明らか です。  ほかの分野、例えば原子力や航空などを見ますと、本物ではない所で本物と見間違う ぐらいの腕を磨く機会があるわけです。非常に高額の投資をしてシミュレーターを開発 します。この場合、生体を使わず、本当に近い所でさまざまな経験ができる場を、医療 分野はもっと作るべきだと思います。少なくてもそういうことは警察の捜査が終わる前 にいろいろ考えられるわけです。こういう事件がなくても研修医の侵襲的処置以下、い ろいろな問題が起きていて、非常に危険があるわけです。そのことを踏まえるならば、 一般的技術的課題として、医療分野における広い意味でのシミュレーターの開発を先導 することがあってもいいのかと思っています。 ○森座長  ただいまの黒田先生のご質問に対する答であっても、ただ、実は、この事柄は、この 検討会で論じている諸問題とははるかにレベルが違うような気もいたしておりますが、 その他どんなことでもご意見があれば、この機会におっしゃっていただきたいと思いま す。 ○岸委員  私は先般、ある学会で話をしろと言われ、別のことを言おうと思った矢先に青戸病院 のケースがあったものですからその件に触れざるをえませんでした。この事件を起こし た医師たちの個性の問題と、医師教育の問題といくつかの要因はあろうかと思います が、いま言われているところによると、明らかな実験的医療だと思います。患者の人格 を無視した、自らの功名心にかられた実験医療というものを、大学病院の分院であろう となかろうと、医療の現場で複数の医師が通謀してやるということは、人間的に問題が あろうかと思います。それは医師としての資質の問題だろうと思います。  私はこれまでも繰り返し申し上げてきたのですが、人には向き不向きが必ずあるもの で、確かにいまの医師教育は不十分な面が多々あるとは思いますが、ここまでやれるの は、医師として人間性の欠落だろうと思います。そういう人たちは医療の現場から退場 していただきたい。少なくとも生身の人間を預かる医師として、基本的に備わっていな ければならない資質というのはあると思います。  黒田先生は一貫して、原発や航空を引き合いに出して医療の世界を鋭く批判されてき ましたが、私は医療というのは、非常に曖昧模糊とした部分があることは認めざるを得 ないと思います。こうすれば必ずこういう結果が出る、というものではないと思いま す。患者とのコミュニケーションの中で治していく。つまり、治療行為そのものがすべ てではなく、いろいろなファクターが結び合った中で治療行為が行われていくもので、 こうやれば医療安全を間違いなく確保できるというのは難しい問題があることは、これ までの議論の中でよく分かります。その中の最低限の基本は人間愛というか、ヒューマ ニズムだろうと思います。それを持たない人たちに、私は医療の現場にいてほしくない と思います。技術や知識以前の問題だろうと思います。  私はかねがね、基本的には医師免許、看護師免許、薬剤師免許、弁護士免許など国家 資格が生涯資格であるのはおかしいと言っていますが、5年ないし10年経ったときに、 知識や技術と同時に、医療安全に対するものの考え方も更新要件にし、実績も勘案し て、できたら、ふさわしくない方には別の職業に就いていただくことを、もう一度、ど こかの機会で是非ご検討願いたいと思います。 ○森座長  おそらく、そういうお考えの方は少なくないと思います。こと医学教育となれば、大 学医学部の関係者も少なからずここにおられますが、何かご発言がございますか。 ○岡谷委員  このことに関連してですが、先ほどの事故報告範囲検討会のところで、質問したいと 思います。先ほど厚生労働省の岩崎さんもおっしゃっていましたが、青戸病院の事例な ども警察が介入しているので、事故の内容について、新聞報道以上のことをきちんと把 握することがなかなか難しいという問題があります。  看護の場合でも、最近、KCLを静脈内に直接注入されたために、患者が命を落とさ れたという事故事例が3例ぐらい続きました。それは明らかに投与方法の間違いです が、そういう類似の事故が短期間にいくつか起こっています。看護協会として、そうい う事故事例が何が原因で、一体何が起こったのかをきちんと調べようと思っても、新聞 報道以上のものを知り得ていくのは非常に難しいのが現状です。それはいろいろな問題 がありますし、このことは検討会議の中でも、事故事例の報告の義務化というところで は議論されたことです。大学病院などでは義務化をするということが謳われています が、その辺りの検討も行われるのかどうかを是非お聞きしたいと思います。 ○全田委員  青戸病院は特定機能病院に入っていないのですか。 ○医療安全推進室長  入っていません。 ○全田委員  実は、横浜市立病院の問題を、私は医療審議会の特定機能病院の審査で7回現場に行 き、実際に調べました。あれも患者を確認しないという大変なプライマリーのミスで す。特定機能病院に入っていないと調査の対象にならないわけです。 ○医療安全推進室長  特に調査の対象にならないのではなく、調査する主体が国ではなく、自治体が行うと いうことです。 ○全田委員  しかし、横浜市立病院もちゃんと大学に調査委員会を作り、他人を入れて全部報告が 上がったのです。我々は現場に7回通いました。実際にその委員会を大学の中に作り、 第三者も入れてやったのです。ですから、特定機能病院でなければ、それだけの権限が ないわけですか。医療審議会というのは保険医の適用だから、特定機能病院ですよね。 そうすると難しいのでしょうか。 ○医療安全推進室長  それは単なるルールの問題だけです。基本的には普通の医療機関を医療機関として許 認可する場合には自治体が行っておりますので、自治体が何らかの指導をして事故なら 事故、医療機関内の制度なら制度ということで、立入調査と言って、調査をすることは あり得ます。特定機能病院だけが特別で、国が認めていますので、国が直接調査をする ことになっています。調査する主体が違うだけでやることは同じです。 ○飯塚委員  似ていることですが、事故事例の情報の取り扱いに関して、刑事との関係は、そのプ レッシャーがあるだけで情報が来ない。実際にいくつかの病院では、半ば強制的に集め ています。ヒヤリ・ハットなら平気で出しますが、そうではないものに関して、本当の ことを書かなかったりということは日常茶飯事に行われています。そういうプレッシャ ーがあるために本当のことが分からなくなってしまうことがあります。  いま議論になっているように、刑法に触れるような違反事故がどこにあるかを調べる ことは、全く別の視点で我々は調べたいわけですが、そういう調査がなかなかやりにく いという問題があり、この辺りを部会なり何なりでどのように議論され、どうされるつ もりなのかをお聞きしたいと思います。  もし民事だけなら免責やさまざまなことで、この知識を再利用するためにやるのだか らということでいくのですが、少なくとも刑事が絡んできてしまい、警察が入ってしま うだけで、本当に原因を突き詰めて再発防止したいという観点から言うと、ちょっと厄 介が生じてくるわけで、ここを上手にしなければいけないと思います。それもある種の 態度というか、基本的な考え方を持っている必要があるかと思います。 ○森座長  この問題は非常に重要な問題ですが、本日のこの会合の趣旨からすれば、やや外れて いるかと思います。 ○前田参考人  いまのご指摘は事故事例部会にとって根本的な問題というか、ご指摘いただいた点が まさに大きな対立点です。今度の青戸病院などは、まさに患者側から見て、非常に重大 ですが、医療事故の再発防止の観点から見たら、先ほど森先生が言われたレベルが違う という言葉のニュアンスにも入っていると思います。こういう事件がたくさん起こるで あろうから、こういうものをたくさん集めて対策を立てるという種類のものなのかどう かという問題はあろうかと思います。  それから刑事が絡むと集めにくいというのは、それもそのとおりだと思います。起こ りやすいものをたくさん集めて対策を立てて、再発防止をしていく。そのバランスの中 で、どこの病院まで広げていくか。それは全部繋がったところで座標軸をどう切ってい くかということで苦労してやらせていただいており、青戸病院の事件が起こったという ことは、1つの方向に力が働くことにはなろうかと思います。  こういう情報をということは、当然マスコミも含めて、厚生労働省が検討しながら、 なぜそういう情報を集めないのかという力が働いてくる。そうすると、今度は医師側か ら出しにくいという力が働く。その辺りをどうしていくかを、是非検討させていただき たいと思いますが、今日はこれ以上深く議論するのは難しいかと思います。 ○森座長  今日は5つの委員会報告、部会報告をしていただきましたが、これらについてまだご 発言のない方が3分の1ぐらいおられます。長谷川委員、いかがでしょうか。 ○長谷川委員  いろいろな委員会が走っていて、目的も作業項目も少し違うかと存じますが、これか らの展望というか計画ですが、例えば、ヒューマンエラーや医薬品事故はずっと続け て、あるいは永劫、会議をやられるのか。ヒヤリ・ハットの事例も、このままの形では 少しやりにくいという提案が堺先生からありましたが、どうしていかれるのか。ある程 度溜った段階で、事故事例の第三者機関ができて、そこへ移管していくことになるの か。  それから事故報告委員会は、大体どのぐらいのスパンで、どういう結論を出され、次 にどうされるのか、展望のようなことをお聞かせいただければと思います。 ○医療安全推進室長  いま5つの検討班、部会が走っておりますが、簡単に申し上げます。まずいちばん高 頻度に開かれることになっている「ヒヤリハット事例検討作業部会」は、資料1をご覧 にいただきながら、イメージをお持ちいただきたいと思います。基本的には、この部会 でも意見が出ていますが、症例が随分集まってきたという認識を、この部会の先生方は お持ちいただき、その分析の手法なり何なりを、もう一回考えてやりましょうというこ とで、前回終わっておりますので、引き続きテーマをある程度絞るような形でやるので はないかと考えています。頻度としては、先ほど堺先生のお話にもあり、情報をより広 く集めようということですので、課題として検討したいと思っております。  この上に属する「ヒューマンエラー部会」については、これを受けての議論ですの で、これプラスいろいろな研究班会議が随分走っていますので、それの報告を受けなが ら、特に年度末等から、いくつか研究をした報告書が出ますので、それを受けての部会 の開催になろうかと思っています。  「医薬品・医療用具等対策部会」については、先ほどの5つのワーキンググループが 走っておりますので、それの検討ということになろうかと思います。  堺先生に部会長をお願いしている「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部 会」は、一定の方向として先ほど説明の報告書をいただきましたので、しばらくはお休 みすることになろうかと思います。  その報告書を受けて前田先生にお願いしている「事故報告範囲検討委員会」について は、開催回数がいちばん多いかと思いますが、少なくとも年内、あるいは1月程度まで に、この範囲についてはある程度まとめていただくというスケジュール感を持っていま す。 ○中村委員  この検討会議で、私がちょっと物足りないと思うのは、第一線の医療機関がどのよう な取組みをして、どのような効果を上げているのかが、なかなか俎上にあがってこな い。しかし実際には、相当の努力を第一線ではしています。例えば、類似薬品等は、も う使わないようにしようというのも1つの運動です。それぞれの医療機関は一生懸命 やっているのですが、その取組みが、みんなになかなか見えてこないことが従来から欠 点でしたが、財団法人日本医療基金の評価機構では、医療安全部会等を設けて、認定病 院の中でレポートをしてくれる所を中心に報告書を返そうという方向も1つ出ているよ うです。  ただ、これはあくまでも認定病院だけということになりますと、国内に広くその効果 が現れないわけですから、どこかの機関、あるいはこの検討会議などにあると非常にい いと思います。本当に地味な事例ですが、確実に医療事故、あるいはヒヤリ・ハットの 件数を減らしているわけですから、それも取り上げていただければいいという思いがあ ります。 ○三宅委員  1つは、青戸病院の件について、黒田委員、岸委員からお話がありましたように、確 かにここでやっている検討とは非常に次元が違う出来事が起きました。以前この検討会 議でも何回か話題になったのですが、医師の評価と言いましょうか、何らかのそういう 歯止めをかけるようなものが必要なのではないか。例えば、資格の再試験も1つです し、医師会とも関係すると思いますが、職業人として許せない行為に対して、どのよう な処置をするかも、どこかで必要なのではないかという感じがします。  青戸病院のことで話題が広がりましたが、刑事事件になれば警察が詳細な調書をと り、細かい事実関係が明らかになるわけです。刑事事件にはならないが、重大な事故が あった場合、医療機関によって大きい隔たりがあると思いますが、それぞれの医療機関 で調査委員会や何らかの調査はすると思います。今日、前田先生が来られての検討部会 で、どういう基準を設け、それを第三者機関で検討しましょうと言ったときに、第三者 機関が一種の調査権のようなものを持って聴き取りの情報を収集し、それを改善に繋げ ていくのか。そういう権限を与えるのかどうかです。私は法的なことは分からないので すが、何らかのそういうものを持たないと実効は上がらないのではないかという気がし ます。 ○森座長  これも随分深い意味を含んだご発言だと思いますが、ここでの回答は難しいかもしれ ません。望月委員、いろいろと薬に関する話題も出てきましたが、何かございません か。 ○望月委員  2点ほどあります。まず1点目ですが、私はこの検討会議の下の部会としては「医薬 品・医療用具等対策部会」に出席しております。そちらの部会に出席する際に、必ず1 回は委員の言葉の中に、ヒューマンエラー対策部会との連携ということが出てきます。 部会がそれぞれの検討を、それぞれに進めていく形になっていますが、どうしても医薬 品・医療用具に係る事故、あるいはエラーに関することが、ヒューマンエラーに関わる 部分と物そのものに関わる部分があって、関連が非常に強いのです。対策を検討してい く際に、どうしてもお互いに交流が必要なのではないかということが、よく部会の中で 話されます。  私が失念しているのかもしれませんが、本日、資料2で第6回の「ヒューマンエラー 部会」の議事次第を説明されました。この中でヒューマンエラー部会としての検討事項 ではないのですが、3の「厚生労働科学研究の研究成果について」の中に、医療および 療養環境で使われる諸物品の安全性の問題についての研究を、三宅委員が報告していま す。さらにそこに提出された資料として、間違いやすい医薬品の改善に関する要望書が 提出されています。こういうものはヒューマンエラー部会で検討するのと同時に、医薬 品・医療用具等の部会でも議論の場に上げていただいて、対策の中に取り入れられる部 分は取り入れていくべきだろうと思います。  もう1つ、これは質問も含んでいますが、資料5の「医療に係る事故事例情報の取扱 いに関する検討部会」の研究報告書に関してです。こういった事故事例の報告を分析し た成果を再利用して事故を防止していくということで、非常に立派な報告書をまとめて いただいていると拝読しました。その中で全体を通じたトーンが、医療機関等での再利 用が、いまの段階では中心になっています。事故の最終的な防止のいちばんいい対策者 は患者ではないかと私は思っていますが、患者に対する情報の開示が、「その他の国の 取組み等」の1に、広く国民に情報を提供していくという程度しか書かれておりませ ん。もう少し踏み込んだ形の検討がなされる予定があるのかどうか伺いたいと思いま す。例えば、患者自らが事故を防止するための防止策のようなものを検討していくこと が考えられないかという点についてはいかがでしょうか。 ○森座長  前半に対して、もしご発言があるとすれば矢崎委員、三宅委員でしょうか。後半は堺 委員に対する質問ですが、いかがでしょう。 ○矢崎委員  最初の説明で言葉が足りず、大変申し訳ありませんでした。ヒューマンエラー部会 は、ヒューマンエラーの大きな部分は三宅先生の報告書にある間違いやすい医薬品、医 療機器ではないかということで、この会では医薬品・医療用具等対策部会から桜井委員 にも出席していただきましたし、業界の方々から、どう対応していただけるかという話 を伺いました。  その資料を基に桜井委員のほうで、5つの部会で指摘された外用薬が眼科のものと、 そうでないものが非常によく似ているので変えましょうとか、それを踏まえて医薬品・ 医療用具等対策部会で検討されています。これが別々に議論されているのではなく、 ヒューマンエラー部会のいろいろな問題点を、医薬品にどうするか、類似薬品名をどう するかなどをこちらで実際に議論していただいています。私は個人的には、4月に開か れたあとの医薬品・医療用具等の対策部会の2回の会議で、すごく具体化され、結論に 至っているのではないかと理解しました。説明が不十分で誤解を招いたと思います。 ○堺委員  まず患者、あるいは家族への個別の開示ですが、これは至極当然というか、今の日本 の現状で重大な医療事故を、直ちに患者、あるいは家族に開示することは社会的な合意 になっているかと思います。  資料5の5頁に「医療安全対策の観点からの事故事例情報の活用方針」を掲げていま すが、この報告書全体の基調として、事故の発生予防、再発防止のためにこれらの情報 を活用するという観点から、これを書いております。  個別の情報開示は当然ですが、集積した事例の活用については、今回のこの資料には ありませんが、現在、厚生労働省を中心に、医療安全相談センター、あるいはまだ正式 な名称はありませんが、第三者機関、その他いろいろなネットワークが構築されようと しており、そこのネットワークに上がってくるものを総合して、この対策を立てていく という体制が、いま我が国に生まれつつあるように思っています。ですから、重大な医 療事故情報は、いろいろな所、その中にはもちろん患者や家族からの情報提供も含まれ ますが、そういうものも含めて、全体で対策を立てていく体制が、いま作られつつある と私は認識しております。 ○糸氏委員  それでは、医師会の立場から一言お話します。最近、日常的にこういう問題が湧き上 がってきて、厚生労働省も平成13年から医療安全に乗り出しました。  日本医師会も平成9年から、医師会の中の検討委員会はもちろんですが、全国から安 全管理者の教育ということで、数千名を教育しています。それにもかかわらず、依然と して次から次へと出てくるのは非常に空しいことです。国民の皆さんは医療というもの に全幅の信頼を置いているというか、我々からすれば過剰な期待があるのではないかと いうぐらいに、絶対大丈夫なものだということです。このような委員会の終局的な結論 は、医療事故は全くなくなるかということを問い詰めた場合、相手は人間だし、やる人 も医師であろうが看護師であろうが、やはり人間ですから、何が起こるか分からない。 教育をきっちりやっていても起こる可能性はあります。医療の社会においては、全くな くするようにもちろん努力はしなければいけませんが、ゼロということはあり得ない。 何万分の一、何十万分の一の危険性は当然あるし、ましてや高度医療等になれば、ます ますその危険性も高くなることを十分国民、あるいは患者にも説明し、納得してやって いかなければいけないのではないかと思っています。  もちろん、各部会で本当によく議論され、よく検討され、今日のそれなりの結論を出 していると思いますし、今後の問題として事故事例をどのような範囲で、重大というの はどういう意味なのかは分かりませんが、それは報告させる。従来にないものはいいの かということになりますと、おそらく全国の医療機関は、みんなそれなりに院内にシス テムを作っていると思います。  私の所は、従業員が10人ちょっとの小さい診療所ですが、それでも2週間に1回は ミーティングをやり、反省会は必ず土曜日にやっています。例えば、薬を渡すミスが あった、あるいは注射で間違いを起こしそうになったなどということが、完全無欠にな くなったかというと、うちの従業員の資質が悪いのかもしれませんが、これだけ一生懸 命やっていても、残念ながらたまに出てくることがあります。そういうことも含めなが ら、今後の気の長い対策を考えていかなければいけないと思っています。  大きな観点から言えば、我が国のいまの医療現場は、皆保険制度の中であまりにもゆ とりがなさ過ぎると思います。本当にみんな必死になって働いていますが、ゆとりがあ りません。ゆとりがないところで、いくらシステムのファクターをきっちりし、ヒュー マンファクターもそれなりに教育や研修をやっても、ふと人間的な緩みが出ることもあ るだろうし、より新しい施設に変えていくという財源的な措置も必要だろうと思いま す。診療所の場合は、医療安全をきっちりとやっていない所は、診療費をカットすると いう指摘を受けました。質を高めるにはそれなりの投資が要るわけです。ミーティング をやるにしても、それだけの人件費もかかります。行政も医療の質ということを言うな らば、医療機関支援という形で、もう少し診療報酬等も考えていただいたほうがいいの ではないか。間違ってもカットするようなことはいかがかという感じがしております。  青戸病院の件は、私はあれは医の倫理以前の問題だと思います。3人も立派な医師が いながら、人の生命の重さをどう考えていたのかと私は非常に暗澹たる気持です。もち ろん病院内の倫理委員会やシステムの問題、医学教育の問題などいろいろ関係がないと は言えませんが、医師という人間性以前の一般の社会人としての倫理性がいかがだった のか、そういう人たちは我々の中に入ってほしくありません。残念ながら日本医師会 は、それを処分する権限は全然ありません。現在行政のほうの医道審議会で、刑事だけ ではなく、民事にも広げて厳しくやることが、今年提案されておりますので、そこで きっちりやっていただきたいと思っております。 ○新井委員  日本歯科医師会の立場で本日初めて出席させていただきました。各委員の貴重なご意 見、ご発言を頂戴し、持ち帰り、日本歯科医師会としては、医療安全対策に万全を期し てまいりたいと思います。  日本歯科医師会としては、こういった医療安全対策については、執行部が一丸となっ て都道府県歯科医師会に、また全国の会員に指導しているところです。平成18年からの 卒直後の研修の義務化、また全国の会員向けの生涯研修等の内容の見直しを行ってお り、資質の向上を全面的に図る観点から改善策を検討しております。  また厚生労働省の医政局にあっては、歯科医師の国家試験の資質向上の検討会が今年 立ち上がり、国家試験の観点から資質の向上を図るということで、いま検討会で意見の とりまとめを進めております。卒業してくる者、また既存の歯科医師等の質の向上を十 分図っていく対策を構築中ですので、事故のないように万全を期したいと思います。  また直近の例ですが、札幌の救命救急の裁判事例等もあって、それらを含め、厚生労 働省の医事課長、歯科保健課長の両課長名で、日本医師会の指導もいただき、9月末に 歯科医師の救命救急研修のガイドラインを、都道府県に発出したところです。医療安全 対策には万全を期してまいりたいと思っています。  先ほど安全対策室長から青戸病院の事件について、自治体の調査に委ねるという向き の発言がありましたが、それはこの検討会議の趣旨と少し違うのではないか、もっと積 極的に踏み込んで、事故の再発防止、あるいは安全対策を推進する上では、特定機能病 院であろうがなかろうが関係なしにもう少し踏み込んで内容を確認し、出せる資料は出 して万全を期して、この検討会議でご審議をいただくのが筋ではないかと思いますの で、よろしくご配慮をお願いしたいと思います。 ○森座長  この問題、今日その前にご報告をいただいた内容、さらには青戸病院の問題などにつ いて、まだまだいろいろご意見を伺いたいところですが、当初の予定から大分遅れてい ますので、大変恐縮ですが、一応ここで打ち切りにいたします。  実はまだ2件ほどご報告をいただくことがありますので、手短にお願いしたいと思い ます。そのうちの1つは、平成16年度の概算要求についてです。 ○医政局総務課長  平成16年度の医療安全関係の概算要求について、資料7の「医療安全対策の総合的推 進」について簡潔に説明いたします。平成16年度要求は、対前年度に比べて大幅アップ で要求しています。中身としては、1で、いわゆる第三者機関ということで、医療事故 の情報の収集・分析・提供事業を、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会 で頂戴したものに沿って、平成16年度からスターとしたいと思っています。その関係を まずトップに計上しております。医療事故の発生予防・再発防止のため、いわゆる第三 者機関において、医療機関等から幅広く事故に関する情報を収集し、これらを総合的に 原因分析した上で、その結果を医療機関等に広く情報提供していくということをスター トさせたいと思っています。  2として、平成15年度からスタートしている各県等における患者相談窓口への総合支 援も当然続けるということで、「医療安全支援センター」に対する総合支援費等を中心 に組んでいます。  3の「その他」で、医療安全対策に関する各特定機能病院等の方に集まっていただい たワークショップ的なものを引き続き開催するとともに、調査研究としては、医療事故 防止と患者の安全確保に関する研究、医療の質と信頼の確保に関する研究等を新たに始 めようと思っています。  医薬食品局で、医薬品表示コード化による医療事故防止対策の推進という新たな事業 を挙げていますし、そのほか、医薬品機構のほうの医療安全情報業務、国立病院部、国 立保健科学院における調査研究等々を、各班の対策を、いま概算要求中です。特にこの 中でも、医療事故に関する第三者機関の運営事業を平成16年度からスタートしたいと考 えています。 ○森座長  おそらくこの検討会での議論なども含めて、いろいろお考えいただいた結果と思いま す。  次に、いま各都道府県などで設置を進めている「医療安全支援センター」が、だいぶ 実績もできてきたようです。これについて報告をお願いします。 ○医療安全推進室長  それでは、「医療安全支援センター」設置状況について説明いたします。趣旨等につ いては、以前の会議で説明しましたので、現在の実績について、資料8の9頁で説明い たします。  この資料に示しますとおり、都道府県において設置することになっている「医療安全 支援センター」ですが、ほぼ44の自治体において、すでに今年度中に設置されることに なっており、例外的な自治体がいくつかあるという程度です。今後、二次医療圏別の医 療安全支援センター等々が設置されるものと思いますので、また情報が集まり次第、こ こで報告させていただきたいと思っています。 ○森座長  ただいまの概算要求と医療安全支援センターの報告について、ご質問はございません か。 ○岸委員  第三者機関については、極めていろいろな議論がありました。その中で第三者機関の 性格付けや最終的に結論めいたものは、我々はあまり聞いていません。これもすでに予 算が付くということになると、第三者機関というのは、ある程度の輪郭なり、それに当 たる人たちの人選等も目鼻が立った上でのことでしょうか。 ○医政局総務課長  第三者機関としては概算要求上、日本医療機能評価機構にお願いするつもりでおりま す。まだ具体的な細目等については、1億5,600万円の概算要求を取ろうということで 財政当局と折衝している最中ですから、年末に平成16年度予算編成が済み、これが形と してその中に計上されたあとに、いま想定している医療機能評価機構と相談してスター トさせていただければと思っています。  その中でも当然のことながら、この検討部会の報告書でいただいた基本骨格に沿って 具体的に詰めていくつもりで、基本骨格を変えることは現段階では想定しておりませ ん。 ○望月委員  医療安全支援センターについて、こちらのほうで集まったいろいろな質問等を分析し たものは、いずれこの会議自体に提出されるのかどうか。それから、この支援センター 自体の設置について、国民一般に知らせる手段としては、どういう方策をお取りになら れたかをお聞きしたいと思います。 ○医療安全推進室長  まず私ども医療安全支援センターの立上げについて、相当エネルギーを使っており、 相談員の方々に対する教育を中心にしてやっております。そのような過程でいくつかの 情報がこちらにもお知らせいただけるのだろうとは考えております。それがいつの時点 で集まるかは、まだ立ち上げたばかりなのでよく分かりませんが、今後それが報告でき るような形にしたいと考えております。  支援センターの設置の普及については、自治体の業務になりますが、これはさまざま な媒体を用いてされているようです。先般、相談員の研修があって、その中で私どもが 伺った範囲では、例えば、県の広報誌、インターネット、県の地方誌等を通じて、この ようなものは県民に知らされているということでした。 ○長谷川委員  支援センターに関連してですが、支援センターそのものと推進協議会と相談窓口の関 係に分かりにくいところがあります。特に推進協議会というのは、ケースについて捜査 権が云々という議論がありましたが、調査をする権限があったり、どのような役割を果 たすのでしょうか。 ○医療安全推進室長  資料の8頁に若干の実施体制がありますので、それを見ますと、概要の輪郭的なもの がある程度ご理解いただけるかと思います。まず、医療安全支援センターを設置し、そ の中に医療安全推進協議会と相談窓口が設置されることになっています。基本的に相談 窓口というのが非常にイメージしやすいと思いますが、患者、家族からの苦情相談等を 受け付ける所です。それを受け付けて、事例がある程度集まってきたときに、今後この ようなセンターをどのように運営していこうかということを議論していただくのが医療 安全推進協議会だと認識しております。  医療安全支援センター自体が都道府県の県庁に1つあるということだけを想定してお らず、二次医療圏ごとに複数あることが前提で、それをどのように運営していこうかを ご議論いただくということです。 ○森座長  必ずしもいまの事務局の報告に対するご質問ではなくても、是非ここで一言おっしゃ りたい、あるいは聞きたいことがありましたらどうぞ。長谷川委員、お願いいたしま す。 ○長谷川委員  報告ですが、この検討会議では、国際的な協力や情報交換の話はあまり出ていません が、いまWHOで医療事故のことは随分関心が高まっているようです。10月24日にジュ ネーブで、医療事故に関する定義の会議が開かれると聞いています。日本も参加してほ しいと思いますが、結果を日本にもフィールドバックするという話になっています。  もう1つは、11月8日、9日に、WHOがスポンサーですが、イギリスの国営医療 (NHS)が熱心で、病院局長が音頭をとって、各国の安全政策について、どんなもの が進行しているかを、世界十数カ国からロンドンに集まって、お互いの国々がどのよう に協力し合えるかを話し合うことになっています。たまたま私どもに招待がきておりま すが、是非厚生労働省からも出席して、情報交換をしたり、お互いに協力していくこと が、全世界レベルでも非常にいいのではないかと思いますので、報告と提案をいたしま す。 ○森座長  次回の予定などについて、事務局からお願いいたします。 ○事務局  次回の日程については調整をし、後日ご連絡いたします。 ○森座長  折角こういう検討会議があるのですから、あまり間遠にならぬよう、時には開催して いただき、報告を聞くなり、委員の方々からいろいろなご意見を承りたいと思います。  それでは、今日の会議はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございまし た。  照会先:医政局総務課医療安全推進室  担当者:永田充生  連絡先:(代表)03-5253-1111