03/10/03 第12回社会保障審議会児童部会議事録              第12回社会保障審議会児童部会                    議事録              厚生労働省雇用均等・児童家庭局            第12回社会保障審議会児童部会議事次第  日時:平成15年10月3日(金) 10:00〜11:54  場所:厚生労働省 専用第21会議室   1.開会   2.「要保護児童および要支援家庭に対する支援のあり方に関する当面の見直しの     方向について(素案)」について   3.「児童売買及び児童取引の国民国外犯処罰規定の整備について」、「小児慢性     特定疾患治療研究事業の推進について」、「保育料徴収の私人委託について」     (報告)   4.閉会 ○岩男部会長  おはようございます。  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第12回社会保障審議会児童部会を開 催させていただきます。  本日は、大変お忙しい中を御参集いただきまして、ありがとうございます。  まず、本日の出席状況について、事務局から御報告をお願いいたします。 ○中村総務課長  網野委員、柏女委員、松原委員が所用のため欠席ということで御連絡を受けておりま す。 ○岩男部会長  遠藤委員は多分、おっつけ御出席だと思っております。  それでは、議事に移りたいと思います。これまで当部会で議論を重ねてまいりました 都道府県・市町村の役割や児童相談所の在り方等につきましては、本日取りまとめ案と して資料1にございます「要保護児童および要支援家庭に対する支援のあり方に関する 当面の見直しの方向性について(素案)」を御用意いただいておりますが、この議論に 入ります前に、この議論と大変密接に関連いたしております社会的養護の在り方に考え する専門委員会における検討状況と鴻池前国務大臣が取りまとめられた少年非行対策の ための提案につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。この少年非行対策の ための提案につきましては、総理及び官房長官の御指示を受けた鴻池前大臣が、少年非 行対策に関する総合的な検討を行うために、本年7月に設置した少年非行対策のための 検討会における検討を踏まえて、9月18日に鴻池前大臣の私案として取りまとめられた ものでございます。  それでは、事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○山田家庭福祉課長  家庭福祉課長の山田でございます。  それでは、お手元の資料2でございますが、ただいま部会長からございました社会的 養護のあり方に関する専門委員会の検討状況について、簡単に御説明をいたします。  今まで9月29日に第6回ということで検討してまいりましたが、この資料を出しまし て議論をしていただきました。次回10月14日には、これを更に文章化したものを出し て、できれば10月中にはめどとして取りまとめたいと考えております。  趣旨は、先ほどお話のあったとおりでございますが、「はじめに」のところの3パラ 目ぐらいに、児童虐待の防止等に関する専門委員会の報告書の中でも虐待が非常に増え ていると。児童福祉施設も都市部を中心に満杯に近い状態であって、必ずしも十分に対 応し切れていないという状況を受けまして、施設養護、家庭的養護、社会的養護の質の 向上といったことを含めまして、社会的養護の在り方について検討を深めているという 状況でございます。  ページをめくっていただきまして、2ページでございますが、まず、1番目「社会的 養護のあり方について」、基本論のところでございます。全体的な構成といたしまして は、委員の方からの主な指摘事項、それから、そういったものを受けたおおむねの方向 性という構成にしてございます。  「概ねの方向性」のところを見ていただきますと、3ページでございますが、一番上 の「・」のところに「社会的養護の役割は、子どもの安全・安心な生活を確保するにと どまらず、施設入所や里親委託を通じて、その子どもの社会的自立まで支援することに ある」ということでございまして、そういった考え方のもとで、特にその次の「・」、 家族の再統合、家族の養育機能の再生・強化といったことを重視しながら取り組んでい くことが必要であると。それから、虐待児が増えているという状況の中で、これまでの 仕組みの中で何ができるかということだけではなくて、制度や意識を転換していく必要 があるのではないか。例えば、ケアの小規模化でありますとか、施設養護と家庭的養護 等の協働をどう確保していくのか、そういった視点が重要であるということでございま す。  2番目「施設の養護のあり方について」でございますが、ページをおめくりいただい て4ページの下の方に「概ねの方向性」ということが書かれております。施設養護の中 長期的な在り方といたしまして、大規模な施設養護という形ではなくて、できるだけ家 庭的な生活ケアの提供を基本としながら、なかなか難しい子どもさんへの対応というこ とについては、それが可能な専門職員が配置されている本体施設というものを基幹施設 と位置付けながら、全体としてやっていくという仕組みが考えられるのではないか。  それから、里親であるとか、児童相談所などの関係機関との連携というものも密にし ていくということが必要ではないかということが言われております。  それから、次の5ページでございますが、そういった考え方のもとで、3のちょっと 前の「・」で、措置費についても一律な考え方ではなくて、個々の施設における創意工 夫あるいは努力といった取り組みを反映したものに見直していくべきではないかという ようなことも方向性として出しております。  3番目の「家庭的養護のあり方について」。主に里親制度のことについて触れており ますが、次の6ページの「概ねの方向性」のところで、里親制度は非常に有効な手だて であるということではあるんですが、なかなか広がらないというような面がございま す。やはりサポート体制をしっかりしていく必要があるのではないかということで、2 つ目の「・」のところでございますが、里親の心身両面での負担軽減に向けた支援の強 化あるいは研修体制の充実ということをやっていく必要があるのではないかと。  それから、4番目の「家族関係調整及び地域支援について」ということでございます が、やはり家族の再生というものを1つの基軸に置いていくことを考えますと、家族関 係調整をいかにしていくかということが非常に重要であるということで、7ページの 「概ねの方向性」のところでございますが、1つ目の「・」、施設は、入所した子ども の家庭復帰、家族再統合に向け、子どもへの支援のみならず、児童相談所と連携しつ つ、家族への支援や親権者との関係調整を適切に実施していく必要があるということで ございます。  ここの部分につきましては、本部会との関連で、児童相談所との関係についても少し 議論がございました。施設側からの御意見としては、児童相談所は子どもを施設に入所 させると、施設任せになってしまう面があると。そこのところは、もう少しケースワー クといいますか、後のところまで見てもらうというような仕組みが必要なのではないか という指摘がございました。  それから、5番目の「年長の子どもや青年に対する自立支援について」ということで ございます。それについては、次の8ページの「概ねの方向性」のところで、自立援助 ホームの果たす役割は重要である、その設置促進、機能の強化を図るべきであると。更 に、いろいろな施設を退所した後の生活を支えるということができる実効ある制度的対 応について検討すべきであると。  更に、一律18歳、20歳といった年齢で支援を打ち切るのではなくて、そこから外れた 者であっても、必要に応じて支援を継続していくという柔軟な対応が必要ではないかと いうことでございます。  それから、6番目「社会的養護の質の向上」というところでございますけれども、や はり質の評価なり、その向上をどう図っていくかということでございまして、9ページ の「概ねの方向性」のところで、例えば2つ目の「・」、社会的養護の質の向上を図る ため、一人ひとりの子どもの状況に応じた最適な支援を行うためのアセスメント、自立 支援計画の策定等を推進していくべきである。  更に、一番下の「・」でありますが、さまざまな取り組みによるサービスの質の向上 が正当に評価され、改善に向けた動機付けが生じる仕組みとしていくことが必要である ということをおおむねの方向性として整理をしておるところでございます。  それから、続きまして、資料3でございますが、先ほど部会長の方からございました 鴻池私案について、ごく簡単に御紹介をさせていただきます。  御案内のように、7月の長崎事件を契機といたしまして、こういった検討が始まって 9月に公表され、総理にも提出されたというものでございます。  資料3−3の本文を資料としてお出しいただきまして、17ページでございますが「少 年非行対策のための検討会構成員及び協力者」と書いてございます。あくまでもこの報 告書自体は、鴻池私案という形でまとめられたものでございますが、それに至るまでの 間、こういった検討会で検討が行われたということでございまして、この中には関係行 政機関の委員として伍藤局長も入っておりますし、それから、本部会の委員としては有 識者の委員として津崎委員にも、この中に入っていただいているということでございま す。  この基本的な考え方につきましては、資料3−1にポイントとして書いてございま す。基本的な考え方といたしまして3点、少年保護と並んで少年犯罪から公衆を保護す るという考え方が必要である。それから、少年事件についても事実を明らかにするとい うことが重要である。少年及び親に責任を自覚させる必要があるというようなことが基 本的な考え方でございます。  少しこの部会あるいは社会的養護の専門委員会とかかわりのあるところを、本体の資 料3−3で簡単に御紹介をさせていただきます。  11ページでございますが、(1)としまして「施設処遇の強化」ということが書いてご ざいます。下の方のパラグラフで、少年院について記述をしたところがございます。た またま年齢が14歳未満であったというだけで、教育効果の高い少年院での処遇を否定す べきでないと。少年院に入所できる年齢の引下げあるいは触法少年だけの施設の設置と いうことを考えてもいいのではないかということが書いてございます。  更に、その下に、児童自立支援施設についても言及がございます。12ページにお移り いただきますと、「しかしながら」というパラグラフで少し指摘されておりますが、な かなか職員の確保も困難になっていると。小舎制ということでやってきたけれども、な かなかきめ細かな指導ができにくくなってきていると。その機能が十分に果たされてい ないと言ってよいと、かなり断定的な言われ方をされている部分もございます。  それから、14ページでございますが、(4)「処分後のサポート体制の強化」というこ とで、少年院、児童自立支援施設を出た後に家庭に戻ることが難しい少年をサポートし なければ、以前の不良グループ仲間や暴力団にさえ戻ってしまうことがあって、せっか くの保護措置が意味を失うと。このため、更生保護施設や自立援助ホームなどの充実を 行うべきであるというような指摘がなされているところでございます。  以上、簡単に御紹介をさせていただきました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明につきまして、何か御質問がございましたら、どうぞ御 発言をお願いいたします。いかがでございましょうか。  御質問がないようですので、ちょっと細かいことですが、資料3−1の「鴻池試案と しての位置付け」となっていますが、これは「私案」ではないんですか、「試案」です か。 ○山田家庭福祉課長  すみません、これは間違いで「私案」です。 ○岩男部会長  それでは、特に御質問等はございませんようでしたら、次の議題に移りたいと思いま す。  次の議題は、今日のメーンの部分になるわけですけれども「要保護児童および要支援 家庭に対する支援のあり方に関する当面の見直しの方向性について(素案)」を議題と いたします。先に申し上げましたように、これまでの当部会での議論の内容を踏まえて 取りまとめ案が提出されておりますので、これについて事務局から、まず御説明をお願 いいたします。 ○中村総務課長  それでは、説明をさせていただきます。  この要保護児童及び要支援家庭に対する支援のあり方に関する当面の見直しの方向性 についてということでございますけれども、冒頭2つの留意点といいますか、この素案 の性格について書かせていただいております。1つは、虐待の専門委員会の報告書にお けます指摘事項あるいは当部会における議論、それから更に、当部会でヒアリングをし ていただきましたけれども、そうしたものを踏まえた上で事務局において素案として取 りまとめましたということが1点でございます。  それから、論点の視野といたしまして、要保護児童あるいは要支援家庭に対する問題 という柱の大きなものとして、先ほど社会的養護の専門委員会の検討状況を報告させて いただきましたけれども、そうした分野があるわけですが、これにつきましてはまだ中 途の議論でございますので、この結果については改めてまとまったところで当部会に報 告をいただいて、それも踏まえた形で部会として今後の方向性を最終的にまとめていた だければと思っております。その部分は除いた形で、これまで議論してまいりました都 道府県・市町村の役割、児童相談所の在り方に絞った形での整理になっております。  構成といたしましては「はじめに」ということで、この問題を議論するに至った経緯 を整理した上で、2ページの基本的考え方、それから、特に大きなポイントの1つであ ります児童相談所と市町村の果たすべき役割の基本的考え方の整理をした上で、4のと ころで個別の論点を10個余りに分けまして述べさせていただき、最後に「今後に向けて 」というような構成で書かせていただいております。  1ページにお戻りいただきまして「はじめに」というところでございますが、これは 都道府県・市町村の役割、児童相談所の在り方を議論しなければいけなくなった経緯と いたしまして、これまでの児童の問題につきましては、要保護児童対策と保育対策を中 心に進んでまいったわけですが、最近の状況を踏まえて、次世代育成支援という観点か ら、すべての子育て家庭を対象とした子育て支援の取り組みが必要になっております。 当部会におきましても御報告させていただいておりますように、今回の児童福祉法の改 正の中では、市町村における子育て支援事業が法的に位置付けられるということも行わ れたわけでございます。  他方、要保護児童対策につきまして、その中核を担ってまいりました児童相談所でご ざいますが、いろいろな業務、特に、児童虐待の問題等への対応のために、質的にも量 的にも極めて厳しい状況になっております。そういうことを踏まえた上で、2ページに ございますが、要保護児童あるいは要支援家庭に対する相談支援体制を見直すことが必 要になっているという整理をさせていただいております。  そして、2の基本的考え方でございますが、これは前回お示ししましたものを更に文 章化したものでございます。基本的には、見直しに当たっては現状をよく踏まえた上 で、利用者、住民でございますが、そうした視点に立って検討することが必要であると いうことを言った上で、これまでの福祉分野におけます、あるいは母子保健等も含めて でございますけれども、サービス提供の体制について都道府県から市町村へという流れ があるわけですが、そういう中で、この児童福祉の分野については、保育行政の部分を 除きまして、児童相談所を設置する都道府県が主たる担い手となってきましたが、そう した流れに沿った形で子育てを含めて、児童福祉の分野をもう少し市町村の実施する方 向に向かっていったらどうかということが基本認識としてございます。そういうこと で、下から2段目のパラグラフで、今後の児童相談の在り方としては、できる限り身近 な市町村を主体としつつ、行政権限の発動等の役割や専門性を踏まえた都道府県との適 切な役割分担を考えていくことが必要であるというのが、基本的な役割分担の考え方と いうことでございます。  そして、そうした場合に、完全に区分するということもあるわけですが、連携の強化 あるいは都道府県については、専門性の確保・向上あるいはその機能の強化が求められ る一方、市町村についての取り組みを支援するということが必要になるという整理にさ せていただいております。  それから、更に3では付言をいたしておりまして、2段目のパラグラフでございます が、「具体的には」と述べさせていただいておりますけれども、養護相談や障害相談を 含め、子どもと家庭に関する各種の相談全般を一義的に市町村において受け止め、対応 可能なものについては必要な助言・指導を行い、更なる専門的な指導や判定、一時保護 や施設入所等の権限の発動を要するような要保護性の高い事例など、当該市町村におけ る対応が困難であると思われるケースについては、児童相談所に速やかに連絡し、児童 相談所中心の対応とするなどの役割分担を行い、児童相談所の役割を重点化していくこ とが必要であるという整理をさせていただいております。  そして、市町村に役割を求めていく際の留意点のようなことといたしまして、先ほど も出ておりましたが、都道府県における専門的な支援、一方で、市町村における専門性 を高めていくということが必要であるということがありますし、そうした市町村での体 制の充実という中で、関係機関から成る虐待防止ネットワークの取り組みを更に促進す るようにということと、それから、市町村では既に母子保健活動というような取り組み を行っておりますので、そうした活動との有機的連携あるいはひとり親家庭に対する支 援というようなものも既に行われているわけですが、そうした市町村でやっている子育 てについての事業について、総合的な実施を念頭に置いて進めたらどうだろうかという ことを書かせていただいております。  そして、児童相談所におきましては、介入機能を強化することが求められるわけでご ざいますが、そうした介入機能の強化ということを踏まえて、従来ソーシャルワークに つきましても、どちらかというと受容的なかかわりを基本にしたソーシャルワークを やってこられたわけですが、今後は介入的アプローチということが重要になってまいり ますので、介入的ソーシャルワークの技法を開発していくことが必要であるということ を3ページの下の辺りで書かせていただいております。  それから、児童相談所につきましては、機能の強化という点で見ますと、児童相談所 自体の体制強化ということだけではなくて、保健、医療、福祉、法律、その他の幅広い 専門機関あるいは職種との連携・強化ということも必要であるということと、それか ら、司法の関与といった仕組みを導入することが必要であるということで、司法関与の 例といたしましては、虐待の専門委員会の方で既に指摘されている事項として、当面、 1つは、保護者の意に反する施設入所等の措置についての家庭裁判所の承認を期限付 きのものにするということや、あるいは審判前の保全処分の仕組みを入れる。あるい は、児童相談所の指導に従わない保護者に対する指導の実効性を高めるための措置、こ うしたことを当面、実施していってはどうだろうかということでございます。  それから、個別の問題について10点ほどございますが、1点目は、児童相談所の必置 規制の問題でございます。これにつきましては、地方分権改革会議の方から検討が求め られておるわけでございますが、児童相談所が有します強制権限の発動の役割あるいは 必要とされます専門性を確保するという観点から見ますと、慎重に考えるべきではない か。すなわち、なかなか必置規制を緩和するということはできないのではないかという 整理にしております。  それから、婦人相談所あるいは更生相談所、保健所など、他のいろいろな相談機関が あるわけですが、これらの相談機関の統合という点につきましては、既に実施されてい る例もございますけれども、それぞれの自治体において柔軟な対応がなされることが期 待されるという整理をさせていただいております。  また、そうした統合ということでない場合であっても、比較的軽易なケースを福祉事 務所に送致できるような制度が既にあるわけですけれども、こうしたことを活用する、 あるいは保健所にも協力を求めるような仕組みをつくったり、同一の県で設置する関係 機関をうまく連携しながら活用するということも必要だというような指摘をさせていた だいております。  (2)は、中核市におけます児童相談所の設置という点でございますが、これにつきま しては、中核市においても設置が図られるようにしていくことが適当であるということ でございます。その際に、権限を幾つか区分して移譲するということもあるわけです が、一体のものとして移譲していくことがいいのではないかという整理をさせていただ いております。  ただ、すべての中核市に一度に設置するということは難しい状況もございますので、 地域の実情に応じて段階的に進めていくことが適当であるという整理を5ページの冒頭 でさせていただいておりますし、更に、設置するためには十分な準備期間を設定すると ともに、職員の専門性の確保という観点から、当分は都道府県から専門職員の派遣をす るなどの支援をしていくことが必要であろうという指摘をさせていただいております。  それから、中核市が児童相談所を設置することになった場合、県の児童相談所と中核 市の児童相談所が連携をしながらケースに対応していくことが可能かどうか、そういう ことも検討してみてはどうだろうかという提案をさせていただいております。  (3)は、障害相談、障害判定、障害児の施設入所、障害児の問題でございますが、こ れにつきましては、前回まとめさせていただきましたように、専門性の確保や効率性の 観点あるいは支援費制度に移行した居宅生活支援については、既に本年4月から支援費 制度に移行したわけでございますけれども、そうした状況を踏まえて検討していくこと が必要であろうという整理にさせていただいております。  それから、障害判定業務につきまして、知的障害者の更生養護施設へ移譲してはとい う考え方もあるわけですが、これにつきましても、地域の実情あるいは知的障害者の更 生相談所全体をどうしていくかというような検討でありますとか、支援費制度の施行状 況を踏まえて検討することが必要ではないかという指摘にさせていただいております。  それから、非行・不登校児につきましては、児童相談所における対応力の強化という ことと、それから、教育関係機関、スクールカウンセラー、そうしたところとの連携強 化ということが必要でございますし、また、背景の問題として、家庭・親への支援や指 導などの対応を強化していくことが求められるということにしてございます。  それから、(5)でございますが、これは前回、議論がありましたので新たに今回付け 加えさせていただいたものでございますが、これは児童部会の審議状況を社会的養護の 専門委員会に御報告をさせていただいたときに、幾つか出てきた意見の中でも特に強か った意見ということで入れさせていただいたわけですが、児童福祉施設や里親との連携 ・協働ということで、児童相談所が児童福祉施設への入所や里親への委託措置を実施す る場合、当該措置の実施に関する的確な子どもの状況のアセスメントの強化とともに、 施設や里親との連携強化が必要であるということでございます。  それに関連しまして、先ほども家庭福祉課長の方から御紹介をさせていただきました が、児童相談所による施設入所措置や里親委託後の子どもに対するフォローが十分にな されていない現状を踏まえ、例えば、児童相談所と施設、里親との定期的なケースカン ファレンスを実施し、子どもの自立支援計画を定期的に見直すなど、実効性のある協働 の取り組みを進めていくことが必要であるというようなことを書かせていただいており ます。  それから、(6)は児童相談所の職員の配置の充実、専門性の確保・向上ということで ございます。一般的に言いますと、市町村あるいはほかの機関との役割分担ということ になりますと、その分職員数を減らしてもいいのではないかというような議論もあろう かと思いますが、現状も非常に大変な状況でございますので、その点につきましては、 やはり引き続き必要な職員体制の確保に努めることが必要であるということを書かせて いただいております。  それから、そうした数の問題と併せまして、やはり専門性の向上ということが重要で ございますので、これは地方公共団体の人事政策の問題であるわけですが、幾つかの提 案ということで、自治体間の人事交流の話でありますとか、あるいは勤続年数を一定期 間確保する、あるいは実践的な研修であるとか、スーパーバイザーの仕組みを入れてい くという提案をさせていただいております。  (7)は、児童福祉司についての必置規制、任用資格の在り方でございますが、必置規 制の方につきましては、児童相談所が期待されている役割を的確に果たすためには、高 度な専門性を確保することが必要でございますので、一定の任用資格の要件を満たすこ とが必要とされています児童福祉司の必置規制については、緩和することは慎重に考え るべきではないかという整理にさせていただいております。  ただ、児童福祉司の必置規制は維持しつつも、お子さんや家庭にかかわる相談等に関 するさまざまな実務経験あるいはノウハウを持っておられる人材を活用していくこと も、児童相談所の専門性を高めていくという観点からは有用であろうということで、一 定の専門性を確保するということを前提に、任用資格について、例えば、保健師、助産 師、看護師、保育士、児童指導員、教員等幅広い人材が登用できるようなことを検討し たらどうだろうかと。そこで、そうした検討をする場合に、一定期間の実務経験である とか、あるいは一定の研修を受講するというような縛りを掛けていくことが、併せて行 われればいいのではないかという提案にしてございます。  (8)は、心理判定員の業務及び名称の見直しということでございます。児童相談所の 心理判定員の業務につきましては、障害等の判定業務が中心であるわけですけれども、 今後につきましては、心理療法の実施等の機能を強化すると同時に、行政機関で仕事を している心理の専門職として、管内の児童福祉施設、その他の民間機関における心理療 法等の取り組みに対する専門的な助言などの支援をしていくこと。児童相談所で心理療 法を実施していくと同時に、そうした民間機関における心理療法の取り組みを促進して いくような役割を担っていただいたらどうかという整理にさせていただいております。  名称につきましても、児童相談所の運営指針に出てくるわけでございますが、心理判 定員の業務の見直しと併せて、検討をするのが適当であろうということで書かせていた だきました。  (9)は一時保護所の在り方でございますが、これにつきましては、いろいろ御議論が あったわけでございますけれども、最初の段落の後半辺りに書いておりますように、一 時保護所そのものの在り方につきまして、他の児童福祉施設等の機能分担を含め検討す ることが必要であり、児童福祉施設の一時保護機能の強化あるいは里親さんへの一時保 護委託の積極的な活用を進めていくことが必要であるというような整理をさせていただ いております。  そして、当面の措置といたしまして、一時保護所自体の問題として、分離処遇を可能 にする設備の改善や居住環境の向上等を図っていくということ。それから、児童福祉施 設との連携という点につきましては、虐待を受けた児童と非行児との混合処遇の緩和と いう観点で、児童自立支援施設の一部を活用するということでありますとか、あるいは ケアの連続性というような観点から、施設措置が見込まれるケースあるいは施設入所措 置を家庭裁判所に申し立てている児童福祉法第28条ケースというような場合には、児童 福祉施設への一時保護委託を行うというようなこともあるのではないかということで、 柔軟に一時保護制度を運用できる仕組みをつくったらどうだろうかという整理にさせて いただいております。  最後に(10)でございますが、関係機関の役割、在り方ということでございます。福祉 事務所でありますとか、地域子育て支援センター、児童家庭支援センター、市町村保健 センターなど、児童相談にかかわる機関はさまざまでありまして、なかなか一律に考え ることはできないのではないか。ただ、それぞれ市町村で相談機能を強化していく場合 に、どこかが中心になっていくということが考えられるわけですが、それぞれ地域の実 情で対応していくことが必要なのではないかということを指摘しております。  それから、相談という面で言いますと、公の機関もあるわけですが、最近では社会福 祉法人あるいはNPOというスタイルでいろいろ活動もされておりますので、そういう 点にプライバシーの保護ということは留保がつくわけですが、積極的に活用していくこ とも必要であろうというような考え方の整理にさせていただいております。  そういうことを前提とした上で、地域によっては郡部の福祉事務所の機能強化であり ますとか、児童家庭支援センターをつくっていくとか、そういうことを考えていただく ことが必要なのではないかという整理にさせていただいております。  それから、主任児童委員の役割のイメージとして、連絡調整ということが主たる役割 という考え方があるわけですが、個別のケースによっては、直接的に個別ケースにかか わっていくということも法律的にも可能なわけでございますので、その点を含めて積極 的に活用していくことが必要であろうという整理をさせていただいております。  5につきましては「今後に向けて」ということで、今回提言としてまとめております のは、早急に対応すべき課題を中心に方向性を提言したということで、こうした取り組 みを着実に進めると同時に、更に、制度の在り方につきましては継続的に検討が期待さ れるし、その検討につきましても、地域の子育てサービス、保育サービス、社会的養 護、要保護児童の問題を全体として、幅広い観点から今後更に検討していくことが期待 されるというようなことでまとめさせていただいております。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明に基づきまして、議論を進めていきたいと思います。ど うぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。 ○津崎委員  基本的な方向性というか、考え方等については特に異論はないわけですが、実務場面 からしましたときに、これまでの問題とかかわって多少課題がある部分について述べさ せていただいて、その部分についての更なる配慮をいただければと思うところがありま すので、その点を述べさせていただきたいと思います。  1つは、全体の流れの中で「連携」という言葉が1つの強調点になっています。都道 府県、特に児童相談所等と市町村の子育て支援サービス、その部分をどう連携して役割 分担するのか。市町村の部分でも、更にネットワークの連携、いろいろな機関がそこに 関与しながら連携体制を強化していく、そういうことを踏まえましたときに、情報の共 有をどうつくっていくのかということが非常に重要なテーマになるわけですが、一方 で、流れの中に個人情報保護という考え方が、国のレベルでも自治体のレベルでも強調 されてきているわけです。個人情報の扱いがその考え方のもとに、基本的に当事者の了 解なしにやりとりをするということについて、かなり実務的な縛りが強くなってきてい まして、例えば、通報を受けて背景の調査に私たちが活動としてかかわるわけですが、 その調査をするときに、例えば、医療機関あるいは保健所、学校等々に情報を取りに行 くわけですが、個人情報の縛りがあるから保護者の了解をとってくださいとか、保護者 の了解のないままに情報を提供することはできないということが、しばしば生じていま す。これは単に、調査の段階だけではなくて、支援の段階で機関同士がチームを組むと きに、自分たちの情報を保護者の了解なしにどこまで出せるのかということで、やはり 実務上、各メンバーが判断に困るということが出てきているわけです。  例えば、また一方の実務の中で、施設に入所したときに保護者に徴収金が掛かるんで すね。徴収金の算定のための資料を保護者に提供してもらうようにお願いするわけです が、なかなかそういう資料の提供が得られない。したがって、判断根拠にするために税 務情報を参考にして算定したりするわけですが、その税務情報等も今は本人の了解なし にはなかなか出せないということになって、事務がスムーズにいかないということも出 てきているわけです。  先ほど紹介がありました少年非行関係でも、連携の強化ということが強調されている わけですが、そこでもやはり同じような問題が起きてくるのだろうと思うんです。その 辺は、本来は個人情報保護の扱いの中で、そういう問題に対してどのように扱うのか、 どのように整理するのかということを、法律として整備できればそれにこしたことはな いと思うんですが、例えばそこまで行かなくても、場合によっては通知的な中身で、具 体的取扱いについての一定の考え方等を明示するとか、そういう形のものがないと、実 務がかなり今その問題の部分で混乱しているということがありますので、その辺に対す る一定の対応なり配慮が要るということを、できれば理解をいただきたいというのが1 つです。  それから、もう一点は、中核市に対する児童相談所の設置ということですが、これも 大筋的な考え方としては、私も特に異論はないんですが、これに対する具体的な流れが どのようになっていくのかという部分で、多少流れのとり方によっては混乱が出てくる 可能性もあるのではないかと感じているところがあります。権限は一体的なものとして 移譲するということですから、全く独立した児童相談所が中核市の中にできるというこ とになろうかと思うんです。多くの場合は、県の中央の児童相談所のところに中核市が 入っていまして、それが中央から多分分離して、独立してできるということになるんだ ろうと思うんです。そうしますと、中央の機能がむしろ弱くなる可能性があります。  数を増やすことのメリットは、利用者が身近で使いやすいというメリットがあるんで すが、逆に言うと、分割したときのデメリットは、一つ一つの機能が弱体化するという 部分もあるんです。そうしますと、中央の機能によって、場合によっては新たにできた 市の児相を強化、バックアップをするんだというようなことが、果たして現実的に可能 なのかどうかということもありますし、いずれにしましても、この「段階的に」と書い ていただいている部分が最終的には全部義務設置になって、例えば、何年か以内の段階 ということになるのか、最終的にも自治体の意欲なり実情に併せて、設置することと設 置しないことが弾力的に選択ができるのかどうか、その辺のところもちょっとあいまい な部分がありますので、実務から考えると余り一律的に縛りを掛けると、かえってマイ ナス点が出てこないかという心配な面がありますので、その辺の配慮も慎重に考えてい かなければならないというのが第2点目でございます。  それから、3つ目なんですが、一時保護所の在り方、これも虐待防止法の改善のとこ ろでいろいろと論議になって、今の一時保護の機能を更に強化したり、あるいはまた分 散をしたりとか、実態に合った形で再整理する必要があるという意見がたくさん出てい たわけですが、特に一時保護は、今は期限設定が2か月ということになっています。と ころが、その2か月というのは、学校に行っている子どもにとってはかなり長いんで す。その間の教育というのは、原則として教育サイドで保障するということはありませ んで、中の職員が勉強の指導をするということになるわけです。教育との絡みが非常に その部分について弱いわけです。教育サイドといろいろ話してみますと、どこかに学籍 のある子だから、教育サイドで新たにそこに教員を派遣するというようなことは、かな り難しい課題だということをお聞きしたりもするわけです。しかし、2か月教育から離 れて生活することに対して、いわゆる教育サイドが実際的にはかかわらないということ についても課題が多いですので、この辺の扱いについて文部科学省サイドと今よりも改 善に向けた何らかの話ということも是非、厚生労働省サイドで持っていただけるような 形が望ましいのではないかと思っていますので、その点の配慮についてもお願いしてお きたい。  以上、3点です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  ただいまの3点は大変重要な御指摘であったと思うんです。いずれも大事な点ですけ れども、特に、個人情報の扱いの問題というのは、これまでここで全く議論をしてこな かった問題ですが、現場での具体的な対応の際には極めて重要な問題で、何らかの形の ルールが必要だとおっしゃるのもそのとおりだと思います。この点について特に御意見 がおありでございましたら、ほかの方からも御意見をいただいて、また事務局の方で考 えていただくということにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。現場の 個々の方に任せるというのは、現在はそういう形でやむなく対応しているんだと思うん ですけれども、やはり問題が余りにも大き過ぎるように思うんです。ですから、もう少 し明示的なものが必要ではないでしょうか。 ○無藤委員  情報の共有のことは本当にそうだと思うんですが、実務レベルに近いんですけど少し 違うのは、我々大学教員が少しかかわるスーパーバイズというか、ケースカンファレン スというか、現場の方がある特定のケースについてスーパーバイザーに相談する場合が ありますけれども、スーパーバイザーが例えば児童相談所の中のある役を持っていれば 問題ないというか、津崎先生のケースに収まると思いますが、必ずしもそうでない場合 にケースカンファレンスをやっているわけですけれども、そういうときに、今は厳密に 言うと多分問題なのではないかと思うんです。いろいろ立ち入った情報を極秘という形 ではあるけれども話し合うわけです。その場合に、必ずしも保護者の許可を得ていない ことが多いと思うんです。それは内輪でやっていると言えばやっているんですが、やは りあるルールがあった方がいいのではないかというのは、前から気になっていました。 ○岩男部会長  なかなか難しい問題で、今すぐここで何か結論が出るというものではないんですけれ ども、少なくとも問題の指摘だけは、この中に盛り込んでいただくということはできる と思うんです。 ○大日向委員  そのことに関連して、例えば、主任児童員さんからも大変困っているという話をよく 聞きます。不登校の子どもとか非行の子どもを地域で支えるということで、主任児童委 員さんは大変活躍してくださっていますし、また、その意欲はおありなんですが、連携 という点では学校との連携を非常に大事にしたいと思っていらっしゃいます。ところ が、学校の方は非常にハードルが高い。学校サイドから言うと、やはり個人情報という 問題があろうかと思います。まれな例だと思いますが、よかれと思ってこの子を地域で 見守ってくださいと情報提供したところ、それが地域全体に広まって、その家庭がいら れなくなってしまって引っ越したとかそんな事例も聞きますので、結論は難しいと思い ますが、一方で開示し、一方で守るという専門性の向上ということも併せて検討しなく てはいけないだろうと思います。  それに関連して、7ページから8ページのところで、特に今、関連して申し上げた主 任児童委員さんの役割を強めていくときに、研修、専門性の向上ということも併せて御 検討いただければ、今後ありがたいかなと思います。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。  2番目の中核市の段階的なという流れに関しては、事務局の方で何か御説明がござい ましたらお願いします。 ○中村総務課長  中核市に設置する法的なやり方として、既に地方自治法上、権限を都道府県から中核 市に移譲するといいますか、そういう一般的なルールがあるので、そういう中でやって いくというやり方がいいのか、それから、児童福祉法の中に別個段階的にやっていくに しても、ルールをつくっていくか、それから、更には段階的にといった場合も、ある一 定年限を切って最終的には全部の中核市がやる。幾つか段階的にといっても、法的な仕 組みとして選択肢があるように思います。その辺りにつきましては、既に地方自治法を 所管しております総務省の方とも相談をしつつ、また、中核市あるいは県の方の御意見 も伺いつつやっておりますので、そこは方向性としては段階的にということなんです が、実際に最終的に法的枠組みをどういう形でするかについては、なお少し協議をさせ ていただければと思っています。 ○岩男部会長  ほかに何か御意見がございましたら、どうぞ御発言をお願いいたします。 ○無藤委員  最後の方に、その他関係機関ということでいろいろなものがあって、なかなか一律に 考えにくいということで連携強化ということも指摘されて、これ自体は全くそのとおり だと思います。  それで、この報告自体のことではない気もしますけれども、実際にいろいろなところ を見ていると、本当にさまざまで、かつ、さまざまな行政施策が入るたびに、どちらか というと、例えば相談機関にしても種類が増えているので、津崎先生の言い方で言え ば、部分的にはかえって弱体化する部分があるということもあります。  それから、統計書類上は置かれていても、実態としてどう機能しているかは本当に地 域によってさまざまで、かなりそこで働いている個人の力量とか視野の広さとかいろい ろなことによっているし、連携も具体的人間関係次第というところがあるわけですね。 私は今後ですけれども、やはりそういった地域の実情を調べながら、一律のモデルでは なくて多様なモデルの類型とか、こういうことでうまくいっている場合があるとか、こ れもまたあるよといったことをどこかで出していただけるといいのではないかと思いま す。結局、特に市町村に下りていったときに、本当に担当者がどうしていいかよくわか らないし、見本もないということで、ここ2〜3年非常に混乱が目立つという話も聞い ております。 ○岩男部会長  今の無藤委員のおっしゃったことで思い出したのですが、アメリカの場合に、例えば 虐待なら虐待で、その地域でどういうNPOや、行政の対応があるかについて、責任者 の名前、電話番号などがインターネットで見られるような仕組みがあります。自分がど こにどういう支援を求めたらいいのか、困ったときにどこへ相談するかというようなこ とが大変わかりやすい形で、しかも、この機関は24時間いつでも大丈夫ですなど、実際 に支援を求める側の立場に立ってリストがつくられていて、極めて簡単に手に入る。誰 でもアクセスできるという、そういったものも併せて必要になってくるだろうと思いま す。 ○中村総務課長  その点に関連しましてちょっとお話をさせていただきますと、今回、児童福祉法の改 正で先ほどお話ししましたように、地域における子育て支援を市町村の役割にしたわけ ですが、併せて地域の中にはいろいろな子育て支援があります、行政が実施しているも のもありますし、NPOが実施しているものもあります。行政がかかわっているものと しても、保健サイド、福祉サイド、更には幼稚園もございますし、いろいろな子どもに かかわるサービスがあるわけですが、それを市町村の方でできるだけ一元的に情報を集 めて提供できるという役割を法律上位置付けておりますので、それがきちんと機能をす るように、いろいろないい事例も含めて集めてやっていけたらと思っております。  それから、先ほど無藤先生の言われました、地域ごとのいい事例をというような話に 関連してでございますけれども、虐待の問題につきましても、1つは例えば、横須賀市 のように、横須賀市が中核市であるわけですが、母子保健の長い歴史の中で、母子保健 サイドから虐待の問題に取り組んでおられるような事例もありますし、また、沼津市の ように福祉事務所が中心になって虐待の問題を一生懸命にやっておられる事例もござい ますので、こうしたものを昨年は市町村セミナーということで虐待をテーマに実施をし たりもいたしましたけれども、できるだけいろいろないい事例を集めて提供していくと いうのは非常に重要なことだと思っておりますし、今後もそういうことをやっていけた らと思っています。  それから、連携について先ほど来個人情報の問題が出ておりますが、実は虐待防止の ネットワークを進めていく上で、これが非常に大きな障害になっておりますし、関係者 の守秘義務を掛けていくという議論もございます。児童福祉法の話ではなくて、虐待防 止法の事項になるかもわかりませんが、そうしたネットワークをきちんと法律に位置付 けたらという議論がありますので、そういう際に、もし位置付けるとすれば、そうした 個人情報とお子さんの保護という2つの法益のぶつかりをどういう形で調整したらいい のか、いろいろな先例も見ながら検討していったらいいのではないかと思っています。 ○岩男部会長  いかがでございますか。ほかに御意見がございましたら、どうぞ。  それでは、次の御意見が出るまで、ちょっと細かいところなんですけれども、6ペー ジから(8)「心理判定員の業務および名称の見直し」というところがございまして、7 ページに行政機関における心理専門職として、他の民間機関の取り組みに対して専門的 な助言や何かを行うという役割が書かれているんですが、これは助言を提供するという 一方向の役割だけではなくて、逆に、民間機関、例えば大学などから専門的な助言をも らうということも当然考えないと、この人たちの専門性を高めるというところにつな がっていかないのではないかという気がしますので、ここは双方向と考えた方がよろし いのではないかと思います。民間機関というのは、いろいろなものがあるということは 承知していますが。 ○中村総務課長  児童相談所の機能強化については、実は4ページのところに書かせていただいており ますけれども、既にいろいろ虐待防止についての民間機関の協力も得ながら、例えば、 弁護士さんの助言が得られるような体制をつくっておられるような児童相談所もありま すが、そういう一環で、今、岩男先生がおっしゃられたような心理的な問題について も、そういう助言が得られるような仕組みをつくると同時に、やはりここでイメージし ておりますのは、例えば、全然別の例なんですけれども、栄養の問題などについて言え ば、管内の栄養状況の問題について保健所にいる栄養士さんがいろいろ気配りしながら 全体としてレベルアップしていくような仕事をされていたりいたしますが、それと同じ ように、児童相談所で働いておられる心理にかかわっておられる方々が、管内の施設で すとかそういうところで、この問題についての専門性のレベルアップに、自分がそうい う知識を持つということでなくて、そういう機会を皆さんに提供できるような枠組みを つくっていくとか、そういう活動を期待したいというような趣旨でございます。 ○津崎委員  今の点に関して、実務でどういう状況が今生じてきているかということだけ、少し説 明しておきたいと思います。厚生労働省の方でいろいろ取り組んでいただいて、今は割 と施設に心理職が配置されてきています。したがって、児童相談所の心理職と施設の心 理職が、個々のケースで措置後にいろいろと連携をとる、そういう体制というのは以前 に比べると非常に多くなってきている。  ただ、非常に難しいのは、施設でなさっている心理職の立場、児童相談所で業務を やっております心理職の立場の考え方が微妙に違っていまして、そこでなかなか意見が まとまらないといいますか、かなり対立状況が出てくるというケースが、どうも全国的 に聞いておりますと割と生じている。心理の分野というのは、純粋に1つのケースを突 き詰めていくという部分がありますから、基板となる立場が違ったときに、意見がどう もかみ合わないということがいろいろあるようです。したがって、今、御指摘がありま したように、一方だけを柱とするという形を余り強化すると、かえってギクシャクする のかなと。そういう意味では、双方が相補的な状況の中で高め合うということが重要な んだろうなという気がしています。  それと、御指摘の中にもありましたように、今、大学の心理学教室を持っているとこ ろが、実際の現場と連携したいという動きが割と出てきています。そして、大学が施設 と提携をして、大学の院生辺りが施設に入り込んで個別の子どもの対応をする。そし て、大学の教員がそのSVを担当する。施設側は、大学と連携を図りながら、個々の ケースについての対応強化を図るという取り組みが、かなりあちこちで出てきています ので、それは産学共同の中で1つの望ましい方向かなと思います。場合によれば、そう いうことをうまく促進するような、何らかの支援体制ということも必要かなと考えてい るところです。 ○岩男部会長  いかがでございましょうか。ほかに御意見がございましたら、どうぞ。 ○阿藤部会長代理  この分野については素人なものですから、素朴な疑問を、これで本当にいいのかどう かということをただ確認したいだけなんですが、3ページの一番下のパラグラフに、従 来型の受容的な関わりを基本としたソーシャルワークのみならず、介入的ソーシャルワ ークという言葉が使われているんですが、それはかなりこの分野では定着した概念なの か。仮に、定着した概念だとすると、その「介入的ソーシャルワークの技法を開発、確 立していく」というのは今更何だという感じがちょっとするんですが、この辺の言葉遣 いについて、かなり普遍的なものかどうかということを確認したいと思います。 ○津崎委員  この部分は、私などが実務の分野から相当強調していろいろお話をしている部分で す。従来、対人援助というのは、基本が受容的な対処あるいは共感、傾聴という対人援 助の基本事項をかなり重視して、いわゆる対象者と援助者がいい関係を持つ中で援助を 展開していくというのが大前提だったんですね。私たちも福祉の教育を受けてきたり、 あるいは新人教育を受けてきた者も、それを嫌というほどたたき込まれているわけで す。ところが、今の児童相談所のソーシャルワークの中では、そういう受容的・受身的 な関係から出発しないわけです。発見・通告という形のもとに非常に速やかに安全確 認、必要性があれば保護の実施をする。それも状態に応じては職権で行う、そういう流 れが新たに出てきているわけです。そうすると、そういう強権的な介入と従来の対人援 助の基本的なスタンスとが相矛盾して、そのことに対して児童相談所のソーシャルワー カーあるいは心理職が戸惑いを感じるわけです。最初から強権的に入っていくと、援助 の基本のところが崩れていますから、援助関係が成り立たないということで、そういう 強権的介入はすべきではないという意見を述べる人も多々あるんです。  しかし、状況によっては、子どもの保護ということを優先した形で考えないと、親と の関係性の維持ということだけに焦点を据えたときには、やはり援助がうまくいかなく て、子どもが犠牲になってしまうということが出てくる中で、やはり従来の受容的・受 身的、これは相手から相談に来るときは基本的なスタンスとして、そういう姿勢という のは非常に重要なんですが、相手が相談に来ない、そして、むしろかかわりを拒否する というケースに対して、こっちが積極的にアプローチを企てていかないと、子どもの救 済ができないわけですから、そういうスタンスが児童相談所の公的責任ということを踏 まえたときに、非常に重要になる。そういう意味で、介入型のソーシャルワークという ことが新たに、虐待防止法が成立以降ぐらいから、強調されてきた。  ただ、従来型の対人援助と介入型のソーシャルワークの中にまだ矛盾がありますか ら、その部分をどういうふうに考え方として統合するのかということが非常にポイント にもなっていまして、私なども従来の母性原理を前提にした受容的なものより、場合に よれば相手に壁を一度経験させる中で、こちらの方の考え方あるいはその中で相手が妥 協という行動が出てきたときに、相手に対するいたわりを与えるような、そういう父性 原理の、ソーシャルワークということもあり得るのではないかということを今いろいろ 言っているところで、いずれにしましても、介入と対人援助の従来の技法とがうまく融 合できるような、そういうアプローチということを今後もっと開発していかないといけ ないだろうというのが、実務の分野の現状の中から出てきた問題点だということだと思 います。 ○渡辺委員  阿藤先生の御指摘の3ページというのは、私もずっと気になっていたんですけれど も、よりよい子どもを守る施設というものをつくろうとするときに、非常に素朴な原点 に戻ることになると思いますが、それぞれの私ども大人のアプローチ自体が、その子あ るいはその家族にとって必ずしもプラスになるという保証はどこにもないわけですね。 それが生身の人への援助の1つの危険であり、難しさだと思うんです。私どもは医者で すから、医者としてソクラテスのおきてに縛られておりまして、非常に素朴ですが、誰 もが納得できる掟は、まず害をすることなかれですよね。すべての医療、それから、 ソーシャルワークもそうですし、心理療法もかかわるという瞬間から必ず二次的なトラ ウマを与える可能性を内在しているわけなので、私どもが専門家としてトレーニングを 受けたり、自分たちの専門性を高めるときに、常にいつも単純に肝に銘じているのは、 自分の動き自体が、このケースあるいは子どもあるいはその家族への運命に対する二次 障害にならないかどうかということですね。その二次障害を例えば、私どもの小児科で あれば小児科の精神保健班で絶えず絶えず見ていって、1人の後輩の動きを私どもが全 部見て、その人が準備をしないで患者に会ったり、口からよく考えないで思ったことを 言ってしまったときには、指導医はそれはそれは本当に虐待と言ってもいいぐらいの物 すごく厳しく反省を促すわけです。そういう、まず害をしてはいけないという、まず害 をすることなかれといったものが基本にあって、初めて子どもさんや家族は安心して私 どもに援助を求めてくださると思うんですけれども、少なくとも私自身が今やっている ことや、今までやってきたチームづくりの中では、より重いケースに取り組むときほ ど、より専門性の高い人間がお互いに複数で1人の現場の人を支えると。そうでないと 支えられないという現実があるから、それをやっていただけの話なんですが、私自身が 10年前にイギリスに行ったとき、虐待に携わるソーシャルワーカーたちは、お給料をも らって児童相談所に就職しながら、平均して3〜5年ぐらい毎日あるいは週2,3回、 自分でお金を払って精神科医あるいは心理療法家に、自分の動きのまずさや自分の中に 沸き起こる不満とかいら立ちとか生理を全部毎日、最低週3回聞いてもらい心を整理す ることが1つの常識として定着しているんですね。  それから、そう方法のない日本では、自分の持っているケースを少なくとも3年ぐら いの間は全部書き上げて、必ず毎週毎週書き上げたものを私どもが厳重にチェックし て、よし、次の回に面接を設けてもいい。このように自分の面接を記録しふりかえられ ない人は、まず、治療者から降りてもらうわけです。そうでないと、いいかげんな面接 を1回やっただけで信頼関係が崩れてしまって、結局は相手に害を与えてしまったケー スに終わってしまうと、それは前回、服部先生がおっしゃっていたことと共通すると思 うんですが、今日のお話の中で津崎先生、無藤先生皆さんが出してくださっている中で も響く問題です。やはりこの問題にかかわる大学関係もそうですし、現場の児童相談所 の福祉の関係もそうですけれども、ともかく私どもが私どもの専門性を出して現場の人 たちを責任を持って導く、責任を持って私どもの知恵を提供して育てていくシステムを 緻密につくっていかなければいけない。  第一歩として、例えば虹センターで年1回の研修をしております。けれども、やはり 年1回の研修から月1回の研修に増やしてほしい、月1回の研修から毎週毎週継続ケー スを見ていけるようなシステムに広げていただきたい。ただし、トレーニングを受ける 人は、かなり動機がしっかりしていないとだめだと思います。私もいろいろなところで 講義をさせていただいていますが、心理学のカリキュラムの中でそういう機会を提供し ましても、あまりみのらない。1クラスに50人いれば、1人2人本当にこれはトレーニ ングしてもいいという手応えのある人がいます。そういう人を抽出して、専門性のある リーダーに養成していく。プライバシーを守ることの大切さを身に染みてわかっている 人が現場でリーダーシップをとる形をつくっていく。残念ながらまだ、日本では高名な 精神科医も、高名な心理療法家も臨床家も、小児精神保健医も、お互いに自分たちが本 当にむずかしくて困っているケースを相談するときなどに、一体どの先生がプライバシ ーをきちんと守り、最後の最後まで何年もケースに取り組んでくれる人でしょうかとい う悩みになってしまうわけですね。  ですから、このシステム自体の中に相手に害を与えないで済むような、システマティ ックな研修が必要です。そうなると、今、津崎先生がおっしゃったように、やはり報告 義務は、より有効な子どもを救う方法には絶対に必要です。個人の思いだけで動くと、 結局は子どもを救ったつもりで家族をつぶしてしまう。家族が二度とこの子どもを引き 取りたくなくなり、長期的に数年後この子は路頭に迷うことになります。若いモチベー ションのある人たちのトレーニングを改めて検討していただきたいと思います。それ は、できるだけ公費で公募していただいて、厳重な審査の中からトレーニーとして受け 入れ、受け入れた以上は1年コースでも2年コースでも構いませんからやると。私ども 例えば慶應の小児科で、そういうトレーニングをする人を1年に1人よこしてくだされ ば、きちんとモチベーションのある方であれば、幾らでもお引き受けいたします。た だ、絶えず全国から心理職の方たちの見学や研修を依頼されておりますけれども、現状 ではすべてお断りしています。なぜかというと、1回切りの見学とか一時の研修という のは、生身の患者さんたちに失礼ですし、私ども臨床の現場は、いいかげんにないため に、みんなお互いに厳しく縛り合って気をつけ合っているわけです。ですから、やはり 中身のある研修システムの検討の第一歩を始めていただきたいと思いました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  ほかに、どなたか御発言はございますか。よろしゅうございますか。 ○堀委員  このペーパーの題に「要支援家庭に対する支援」という言葉が入りましたが、私は賛 成です。  ただ、中身を読んでみると、私の読み方が悪いのか、要支援家庭に対する施策として は独自の施策というものが余りないような気がします。勿論、要保護児童に対する施策 は、同時に要支援家庭に対する支援にもなることは承知しています。このペーパーは当 面の見直しの方向性ということですが、将来的あるいは中長期的には、DVも含めて家 庭福祉の在り方について、法制度とか専門家・専門機関の問題をも含めて、もう少し掘 り下げる必要があるのではないかという印象を持ちました。 ○岩男部会長  先ほどの渡辺先生の御意見も入れて、専門性の問題というのはまた新たに恐らく別の 報告書の中に入れられるか、あるいは今回どの低度含まれるかですけれども、ただいま の堀委員の御指摘もそのとおりだと思います。それについて、事務局の方から何か御発 言があれば。 ○中村総務課長  今日御欠席の柏女委員からコメントがございまして、今、堀委員から言われたのと同 じような話なんですけれども、5の「今後に向けて」に見られるように、今回は当面早 急に対応すべき課題を中心に、その方向性を提言したものでありまして、今後、子ども と家庭福祉サービス全体について、サービスの内容、利用の在り方、供給主体の分権化 ・多元化、サービスの財源等を一体として幅広い観点からの議論が児童部会等で行われ ることを強く期待しますというようなコメントがございましたので、御紹介させていた だきます。 ○岩男部会長  ほかに特に御発言はございませんでしょうか。 ○津崎委員  1点だけちょっと思いを追加させていただきたいんですが、8ページの「今後に向け て」の上の部分ですが、いわゆる主任児童委員さんの役割・活動の部分です。この部分 について、厚生労働省の方でも力を入れていただいて、主任児童委員さんの数が今かな り増えているんですね。この人たちが本当に実効ある活動を地域の中でどうなさるのか というのは、かなり大きな問題だろうと考えているんです。ここには「直接的な活動を 行うことも可能であり」と書いていただいているわけですが、実際に私たちがいろいろ な地域に行きまして、主任児童委員さんの話をお聞きしたり、あるいはそこの組織とし ての民生委員活動の中における主任児童委員さんの位置付けを見ましても、余りこうい うふうに理解されていないんですね。私たちは個別のケースを持つことはできないんで すと言われる方がかなり多くて、そのために、活動をかなり縛っているという現状があ るんです。現行法でも個別のケースが持てるということであれは、それをかなり強調す るような周知徹底が要るのではないか。どうも実態面では、民生委員活動の中でもそう いう位置付けをされていて、余り個別活動を奨励しておられないといいますか、そうい う状況があるということが1つです。  それと、先ほど意見の中にも出ましたけれども、熱心な方は学校と連携をとろうとか 保育所と連携をとろうと、いろいろ訪問活動をされている方もおられるんです。そこで 困難なケースがあると、自分は地域の立場で支えたいと。けれども、情報を出してもら えないとみんなおっしゃっています。特に地域の方であれば、より情報が出しにくいと 学校サイドなどは言うんですね。仮に相談して、そのことが地域の中で広がったとき に、学校の立場がなくなるとか、そういう声もよく聞きますので、やはりこの部分につ いても何らかの情報の整理が要るのかなと思うのが1つです。  それから、具体的な活動の指針、例えば、民生員さんというのはもともと生活保護と 関係が非常に強いんですよね。そうなってくると、生活保護のワーカーと連携というの は、一般論としてはとりやすいんだろうと思うんです。私たちの実務で見てみまして も、実は深刻なケースの中に生活保護を受けているという家庭が結構あるんですね。生 活保護のワーカーの動きを見てみますと、そういう子どものところには目が行っていな いんです。保護費をどうするのかということだけで、親との保護費に絡んだ話だけで終 わってしまっていて、子どものことはそっちのけになってしまっているという実情があ ります。場合によっては、そういう生活保護との連携が強いのであれば、主任児童委員 さんがもっと個々のケースに生活保護のワーカーと連携をして、そういう家庭を一緒に 訪問して、子どもの問題については主任児童委員さんが親と十分話をしたり、調整をし たり、そういう具体的な活動をむしろしなさいという、そういう指針も要るのではない かと。どうも漠然として、何をしたらいいかよくわからない。行っても情報を出しても らえないし、結局、研修ばかりをしている。そんな実情があって、有効にせっかくの人 材が生きていないという状況が見受けられますので、その辺の促進の手だてということ も、いろいろ御検討願えればと思います。  以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいま大変貴重な御指摘を委員の方々からいただきましたけれども、そ れを踏まえて、事務局の方で素案をまた修正していただくというようなことで、この議 論はここでおしまいにさせていただきたいと思います。  それでは、残りの時間で事務局の方から御用意いただいている報告事項がございます ので、一括報告をお願いいたします。 ○中村総務課長  それでは、資料4について御報告をさせていただきますが、資料4、資料5、資料6 の3つはこの前からお話ししておりますように、来年の通常国会に児童福祉法の改正 を、虐待の問題を中心とした改正として提出するような準備をさせていただいておりま すが、それと併せまして、今日お話をさせていただきます3点についても、来年の児童 福祉法の改正の中で対応したいと思っておりますので、順次御紹介をさせていただきま す。  資料4でございますが、これは児童売買及び児童取引について国民が国外で犯罪を 行った場合の処罰の規定を整備するというものでございます。これにつきましては、昨 年我が国は2つの条約について署名をしております。1つは、(1)にございますように 「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書 」ということで、昨年5月に署名しておりますが、この中では1つといたしまして、性 的搾取、2つ目として営利目的の臓器の引渡し、3点目として強制労働を目的とする児 童売買につきまして、国民の国外犯を含めて処罰することが求められております。  それから、(2)につきましては「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補 足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑制し及び処罰するための議定書」とい うことで、これは昨年12月に署名をしております。この中では、児童の取引につきまし て、(1)よりもより広く搾取の目的等での移送、手段のいかんを問わないわけでござい ますが、これについても、国民の国外犯を含めて処罰することが求められております。 これらの議定書について批准をするためには、児童の売買及び児童取引につきまして、 国外犯を含めまして国内法を整備することが必要でございまして、この方法につきまし て、実は1枚めくっていただきますと児童福祉法の34条ということで、児童に対する禁 止行為が列挙されておりまして、これに違反をいたしますと罰則ということで60条が出 ておりますが、この部分につきまして、国外犯の処罰を含めて条約の批准ができますよ うに、現在、法務省、外務省等々関係機関と相談しておりますので、成案を得て来年の 国会の児童福祉法の改正の中に、今申し上げた34条なりあるいはその罰則規定の整備を 進める予定でございます。  以上でございます。  資料5は、母子保健課長の方から御説明いたします。 ○谷口母子保健課長  母子保健課長でございます。引き続きまして、資料5を御参照いただきたいと存じま す。  資料5に書いています小児慢性特定疾患治療研究事業というものが今現在、私どもの 方で所管しておる事業の1つでございますけれども、これは子どもさんの慢性的な病気 という困難を抱えておられる御家庭の支援、それから、そういう子どもさんを持ってい る親への子育て支援という視点から、従来の事業を今後、更に拡充・展開しようという ことを考えておりまして、それについての御説明でございます。  1ページ目は、現在の事業の概要を述べてございます。一番下に昭和49年と書いてご ざいますが、もう四半世紀を過ぎておりまして、かなり実績は積んでおるのでございま すけれども、「事業内容」の一番上でございます。小児慢性特定疾患の治療研究事業を 行い、もってその研究を推進し、その医療の確立と普及を図って、併せて患者家庭の医 療費の負担軽減にも資することを目的とし、医療費の自己負担分を補助するという制度 でございます。非常に欲張ったねらいを持った制度でございますけれども、昭和49年当 初は、実は医療の方もさほど進んでいなかったという事情もございまして、かなり難病 というイメージが強うございました。一旦かかってしまうと治らないような、そんなイ メージがございましたけれども、さすがに四半世紀を過ぎまして医療の進歩に伴いまし て、かなり治療のめどが立つようなものも含まれてまいっております。そういう意味で は、難病という概念からは今は大分外れてきている。慢性的に経過している、そのこと による困難という意味でのサポート、そのための事業であると御理解いただいた方がい いかと存じます。  対象としておりますのは、その表に書いておりますように、悪性新生物以下10の疾患 グループ、それぞれのグループに細かい疾病が入っておりますので、疾病で申しますと 500になんなんとするようなものを対象としております。スタート時点では原則入院の ものだけ、それから、年齢で申しますと18歳までがスタート時点での話でございました けれども、その後いろいろな事情もございまして、通院まで認めているものでございま すとか、18歳を超えて20歳まで超えてOKとしているものですとか、そういう意味で申 しますと、この表のとおり大分ばらばらにもなってきておりまして、対象疾患によりま して、ある意味で不公平みたいなところも実は出てきております。  給付人員は、表のところにございます平成13年度では合わせて10万人ぐらいの方々が 対象になっております。こういった方々につきまして、医療費を一応、保険が優先でご ざいますので、基本的には健康保険で見てもらった後の自己負担分を公費で全部面倒を 見ているという事業でございます。その予算額が平成15年度でございますが、大体96.5 億円ぐらい。下に書いてございますように、都道府県と指定都市・中核市と一緒になっ てやっておりまして、事業費ベースで申しますと大体200億円ぐらい。国と地方自治体 で半分ずつにしているというのが、この制度の概要でございます。  これにつきまして、先ほどから申しておりますように、さまざまな事情でぼちぼちも う少し制度を見直した方がいいのではないかという事情もございまして、昨年辺りから いろいろ議論もしてまいりました。1枚飛ばしていただきまして3枚目をごらんいただ ければと思いますが、今後のこういった病気の子どもさん、親御さんに対しましてのサ ポートをどうすべきかという専門家の検討会というものが実は一昨年に開かれまして、 1年掛けて御検討いただいて、昨年6月に報告書を出していただきました。それを基 に、事務局の方でいろいろ考えておりましたが、3枚目にございますように、今年7月 25日の段階で、このようにさせていただきたいというようなお話も私どもの方からいろ いろし、患者さんからのヒアリングみたいなものも実は与党の方でしていただきまし て、与党の方で、こうしたらどうかというような基本方針というものをおまとめいただ いたものが、今ごらんいただいているペーパーでございます。  読んでいただければおわかりかと存じますが、基本的に子育てという観点から、もう ちょっと本事業の見直しについての役割というのは、これまでの成果も踏まえながら厚 生労働省はしっかりやっていくべきであるということがこの3枚目に書いてございます が、最後のペーパーでございますけれども、では、具体的にどうするんだということで ございます。趣旨として、次世代育成支援という視点に立って、子育てしやすい環境の 整備を図るために従来のこの事業を見直して、慢性疾患を持つ子どもさんに対する安定 的な制度として、従来ですと、法律に基づかない単なる予算事業として継続してまいり ましたけれども、今後、法整備を含めた安定的な制度としての改善・重点化を行うべき であるという御提言をいただきました。具体的には、2以下に書いてございますが、対 象疾患について、基本的にもう既に大分治りやすくなってきた病気もありますので、そ ういった問題につきましては、お気の毒ですけれども外れていただくということもあ り、その後、これまで対象にしていなかったものも問題になってきたものもございます ので、そういう難しい病気が出てきたものについては、新たに入れるべきであるという 御提言が、この対象疾患の考え方でございます。  それから、対象者につきましても、対象疾患にかかってさえいればすべて制度の対象 かというと、必ずしもそうではなかろうと。病気になっても軽い人も当然いらっしゃい ますので、軽い方は新しい制度からは外れていただくという考えもあるのではないかと いうことでございます。ただ、今は軽くても将来悪化すれば当然、対象疾患に引っ掛か ってくるので、その時点においてまた制度に加わっていただくというということもよろ しいのではないかということでございます。  それから、入通院にかかわらず対象にした方がいいのではないかということ。それか ら、入院期間というのは、実は原則1か月以上の入院というのがこれまで制度の中でご ざいましたけれども、そういったことに限定すべきではない、あえてそういうような縛 りを加えると入院の長期化にもつながりますので、それは外した方がいいのではないか という御指摘でございました。  対象年齢につきましても、18歳到達後も重症の場合であれば20歳ぐらいまで延長し て、今のでこぼこを直した方がいいのではないかということでございました。  それから、これは実は、法制化に向けての考え方の中でどうしても避けられない話で ございますけれども、他の公費負担医療制度というものがございまして、そういったも のについては、すべて御家庭の一部の負担というものをいただいております。そうなり ますと、この小児慢性疾患につきましても、法制化をしていくということになります と、どうしても若干の御負担はしていただかざるを得ないのではないかという議論がご ざいまして、勿論、過剰な負担になってはいけませんが、適正な負担については求めて いくべきではないかということでございました。その際、低所得者対策、激変緩和とい うことも考慮すべきではないかということでありました。  (4)の福祉サービスでございますが、従来ですと余りこの辺のところまでは行き届い ていなかったわけでございますけれども、地域における家庭の支援ということを考えま すと、更にその児童福祉法の位置付けを考えますと、福祉事業というものについても検 討すべきではないかということで、例えば、患者さんの親御さん同士のいろいろな相談 ごとの情報交換みたいなものは非常にいいという話を聞いておりますので、親の会によ る相談事業みたいなものもあってもいいではないかとか、そんなことを一例として考え ているところでございます。  それぞれ含めまして、来年の通常国会における児童福祉法へのこういった事業の見直 しの成果を盛り込んでいきたいと考えておるところでございます。それをざっと概念的 にまとめたのが、2枚目のポンチ絵ということでございます。これは、大体申しました ので、あえて説明を重複しませんけれども、基本的にはこういう考え方でもって法律に 位置付けまして、慢性の病気をお持ちの御家庭への子育て支援に資すればという考え方 で進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○唐澤保育課長  それでは、最後に保育料の徴収事務の私人委託について、簡潔に御説明をさせていた だきます。  現在、保育所の保育料につきましては、これは公金でございますので、地方自治法に 基づきまして、私人に取り扱わせることはできないということになっているわけでござ いますけれども、近年、金融機関の開いている時間に振り込みができない、もっと治め やすくしてほしいという要望が非常に強くなっておりますし、また、徴収率を上げてい くという観点からも、新たな対応が求められているわけでございます。そういうことの 中で、構造改革特区提案の中に、保育料の徴収事務をコンビニで委託したいという提案 がありまして、これを検討したところ、全国的にこれを認めていくということにいたし たいと考えているわけでございます。  具体的には、児童福祉法を改正いたしまして、今度、児童福祉法の中に私人に保育料 の徴収を委託できる旨の特別規定を置きまして、自治法の特例として実施したいと考え ております。既に国民健康保険料の徴収事務につきまして、同様の対応がとられている ところであります。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  ただいまの御説明につきまして、何か御質問がございますでしょうか。 ○堀委員  小児慢性特定疾患治療研究事業についてですが、児童福祉法には育成医療というのが ありますが、それとの区別はどうなっているのでしょうか。多分これは研究事業だから 育成医療には入っていないのだろうと思いますが、今後それとの関係はどうするのかと いうのが質問の1点目です。  2点目は、18歳又は20歳になった場合には、小児慢性特定疾患治療研究事業は、身体 障害者福祉法の更正医療になるのか、それとも難病対策でやるのか、子どもと大人の間 の整合性は現在でもとれているのかという質問です。 ○谷口母子保健課長  大変大事な御指摘だと存じますけれども、まず、1つ目でございます育成医療との関 係、後の方と絡みますが、基本的に私どもが今までやっております小児慢性特定疾患治 療研究事業というのは、あくまで疾病ということを原則といたしております。片や育成 医療というのは、いわゆる障害ということの1つの対応ということで、そこで明確に実 は切り分けられております。疾病と申しますと、ちょっと概念的になりますけれども、 病状といいますか状態が一定していない、固定しないというものが前提になりまして、 将来物すごく動くと。どうなるかわからない部分があって、それに対して医療措置を行 うということで、障害という固定したようなものに対する行政的措置とは切り分けて考 えるという形にいたしておりまして、そういう意味での整理というのは今後も続けるべ きではないかということで、育成医療との切り分けを考えております。  それから、20歳以降の話でございますけれども、これは実は先ほど難病とは違うとい う説明を申し上げました。難病に対する措置というのは、健康局というところで一括し てやっておりまして、難病というものにつきましては、年齢が何歳であろうと、子ども さんであろうと、お年寄りであろうと、一生涯ずっとその対象でさえあれば公費負担が 出るという仕組みになっております。そういう意味では、ちょっとオーバーラップする ところもあるんですが、これは難病という考え方からは違ってまいりまして、若干、難 病的な要素も入りますけれども、少なくとも長期にわたって疾病を抱え、治療、それか ら、さまざまなケアといったものを含めて御家族が何らかのサポートを必要としてい る、そういうところへの支援が必要ではないかという視点で新たに構築しようと考えて おります。  その際、ある意味で割り切ればそうなのかもしれませんが、子どもさんを抱える家庭 の支援ということになりますと、やはりどこかで20歳なのか18歳なのか、そこはちょっ と議論があるかもしれませんけれども、どこかで線を引かざるを得ないのではないかと いうことで、20歳以降になった場合に、それがあくまで難病という範疇にあるのであれ ば、健康局の方で所管いたしております難病対策事業の方に引き継いでやっていただく という形にすればどうかと、私どもは考えておるところでございます。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。  保育料の納入率というのは、今どのくらいなんですか。 ○唐澤保育課長  おおよそ90%台の後半ですが、整理して御報告させていただきます。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。  それでは、本日の会議を閉会したいと思いますけれども、その前に、今後の進め方に ついて事務局から御説明をお願いしたいと思います。 ○中村総務課長  今後の進め方でございますが、先ほど部会長の方から御指示がありましたように、本 日提出をいたしました素案につきまして、いろいろ御意見をいただきましたものですか ら、それについての整理を部会長とも相談しながら進めて、次回の児童部会を開催させ ていただきたいと思っております。  それで、本日も途中経過を御報告させていただきました社会的養護のあり方の専門委 員会が、実は次回が今月14日、27日と日程がセットされておりますので、27日にできる だけまとめていただきたいということでお願いしておりますけれども、そこがまとまっ たところで御報告をして、全体としての取りまとめをしていただくというような手順で 考えておりますので、次回の日程につきましては、今日のところはそうした状況を踏ま えて御連絡をさせていただくということでお願いしたいと思います。 ○岩男部会長  それでは、今後の進め方につきましては、ただいま御説明ございましたような方向で 進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、本日は大変お忙しい中をありがとうございました。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局総務課         担当:湯本 03−5253−1111(内線7823)