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3.施設養護のあり方(施設サ−ビス体系のあり方等)について

 【取組みの方向性】

 
 児童福祉施設における養護の中長期的なあり方としては、まず「1.社会的養護のあり方」を踏まえ、子どもの視点に立って、大規模な集団生活ではなく、より家庭的な生活の中での個別的なケアの提供を基本とした上で、各施設の本体施設を治療機能等を有する基幹施設と位置付け、高度な支援が必要な子どもへの対応が可能な専門職員を配置する方向を目指すべきである。
 児童福祉施設については、こうした将来的な方向を見据え、子どもの自立を視野に入れて生活面、治療面で個々の子どもの要請に応えられるよう、各施設が有する特性を活かした相互支援や、里親や児童相談所などの関係者との幅広い連携を図りつつ、ケア形態の小規模化を進めていくことが必要である。同時に、入所している子どもの処遇に支障を来すことのないよう配慮しながら、専門的支援機能や在宅支援機能、一時保護機能など地域の拠点としての諸機能を充実・強化していくべきである。
 また、子どもを中心に据えるという視点に立って、乳児院及び児童養護施設で受け入れる子どもの年齢要件の見直しなど、可能な限り子どもに対するケアの連続性や親子関係を保持することに配慮する必要がある。
 さらに、虐待を受けた子どもをはじめとする様々な支援を必要とする子どもの状況や意向を踏まえて、適切なケアが提供されるよう的確な支援計画の作成に配意すべきである。
 なお、これら一連の取組みに必要な職員の確保についても十分検討すべきである。
 施設に対する措置費の支弁についても、一人ひとりの子どもが必要とするケアの内容は異なっていることからすれば、こうしたケアの内容に関わらず全ての施設に一律に支払う方法から、個々の施設における子どもの状況、子どものケアに関する施設の創意工夫や努力といった取組みを反映したものに見直すべきである。

 【当面の具体的な取組みに関する委員会としての意見】
  ・画一的でなく、細やかなケアの下で穏やかな生活が可能な完結型の家庭的ユニットを実現していくとの考え方に基づき、生活の単位を小さくしていくことが適当であるが、その際、単に規模を小さくすればよいというものではない。このため、過去の実践の検証も十分に行いつつ、児童福祉施設におけるケア形態の小規模化を進めていくことが必要である。
 ・その際には、直接処遇職員の適切な配置やスーパーバイザー(専門的助言者)の配置など、職員の配置と合わせた検討が必要であるとともに、施設相互(里親を含む)の連携の強化を含め、小規模化を支える仕組みの構築が重要である。また、施設全てを小規模化するのではなく、いわば基幹施設として一定の規模や専門的な機能を有する拠点を確保することが必要である。
 ・児童自立支援施設についても、ケア形態の小規模化について検討が必要である。
 ・児童福祉施設に対する社会的な偏見を取り除くことが必要である。
 ・一人ひとりの子どもが必要とするケアの内容は異なっており、措置費については、全ての施設に一律に支払う方法から、個々の施設で生活する子どもの状況、子どものケアに関する施設の創意工夫や努力を反映した方法に見直すべきである。
 ・児童福祉施設は、里親に対する支援の役割を担うことも必要である。
 ・児童福祉施設には、子どもを取り巻く家庭や地域との調整など、自らがケースワークを進めるために家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)を配置すべきである。
 ・医療サービスと福祉サービスの双方を兼ね備えた施設若しくは機関の整備が必要である。
 ・子どもが治療的な施設で一定期間ケアを受けた後に、元の施設に戻って生活を継続できるような仕組みを考えることが必要である。
 ・性的虐待を受けた子どもに対するケアや治療のあり方について検討が必要である。
 ・子どもの年齢等の要件により一律に措置が変更される制度は養育上問題が多く、措置変更の時期は、特に乳幼児については柔軟に対応すべきである。
 ・可能な限り親子の分離を行わない支援方法を検討すべきである。親子の分離を行わない生活施設は親子関係の修復・再生に有効であり、母子生活支援施設の活用を考えるべきである。
 ・子どもの処遇方針に関する児童相談所の十分な実態把握・評価(アセスメント)の実施を確保しつつ、それぞれの児童福祉施設の特性を活かし、一時保護の機能を強化・充実していくことが必要である。
 ・児童福祉施設に多様な機能を付加していくに際しては、入所している子どもの処遇に支障を来すことのないよう、施設が提供する機能に優先順位を付けることが必要である。
 ・情緒障害児短期治療施設は、その役割を明確にするとともに、6歳未満児も積極的に受け入れられるような体制の整備を検討すべきである。

 【今後の課題】】
  ・現行制度における施設種別にこだわらず、子どもの養育を中心に考え、住居型施設の再編を打ち出すことが必要である。
 ・行動上の問題等を抱えた子どもを理解し、その健全な育成が可能なケア体制の整備が必要であり、児童福祉施設における人員配置や施設等に関する最低基準の見直しについても検討が必要である。
 ・児童福祉施設が全国的に適正に配置されているか、利用者の視点で考えるべきである。
 ・高度な支援を必要としている乳幼児の治療や手厚いケアを行う制度や機関について検討していくことが必要である。
 ・特別なケア(身体障害・精神障害・在宅医療・慢性疾患など)を必要とする子どもに対する社会的養護のあり方について、検討が必要である。
 ・家族との関係を濃く有したまま利用できる施設、例えば通所型児童養護施設などについても検討すべきである。


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