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はじめに

  近年、核家族化等に伴う家庭における養育機能の低下や少子化、離婚の増加、地域における地縁関係の希薄化など子どもと家庭を取り巻く環境は大きく変化してきており、また児童虐待や配偶者からの暴力など家族をめぐる多様で深刻な問題が生じている。
 本専門委員会に先立ち、児童虐待への対応全般にわたる検討を行った「児童虐待の防止等に関する専門委員会」の報告書でも指摘されているように、全国の児童相談所に寄せられる虐待の相談処理件数は、ここ数年急増し、児童福祉施設も都市部を中心に極めて高い入所率を示しており、今日では児童養護施設に新規に入所する子どものほぼ半数が虐待を受けた経験を有する実態にある。また、こうした虐待を受けた子どもの多くは、心に傷を負い、情緒面・行動面の問題を抱えており、適切なケアや治療を必要としている。
 養育者がいない、養育者に監護を委ねることが適切でないなどの理由により、家庭での養育が十分に期待できない子どもについては、養育者に代わって里親家庭や児童福祉施設を中心に社会全体でその心身の健やかな育成を図ることが必要である。こうした保護を要する子どもに対する社会的養護の取組みとしては、平成9年の児童福祉法の改正による児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)や児童家庭支援センターの法定化、その後の地域小規模児童養護施設や専門里親の創設など、一定の施策の充実が図られてきた。しかしながら、現在の社会的養護の仕組みは、こうした虐待による心身の傷を抱えた子どもの急増をはじめとする昨今の深刻な状況に対応しきれておらず、子どもに日々接する社会的養護の実践現場は大変厳しい状況にある。
 本専門委員会は、こうした状況の中で、本年6月にとりまとめられた「児童虐待の防止等に関する専門委員会」の報告書における社会的養護に関する指摘を踏まえ、家庭的養護や施設養護、社会的養護の質の向上など、社会的養護のあり方について検討を深めるために設置され、別添に示したような幅広い検討課題について8回にわたり議論・検討を重ねてきた。
 本報告書は、この検討を踏まえ、社会的養護のあり方について、当面早急に取り組むべき課題を中心に、取組みの方向性を整理したものである。本報告書の公表を契機に、社会的養護を必要とする子ども達が置かれた厳しい現状が幅広い人々に認識・共有され、その改善に向けた取組みが早急に図られることを期待するものである。
 なお、以下の整理においては、取組みの各項目ごとの基本的な考え方となるべき「取組みの方向性」を示すとともに、この考え方に沿った具体的な取組みを進めるに当たり参考となる主な意見のうち、当面早急に対応すべき具体的な取組み等に関する指摘については「当面の具体的な取組みに関する意見」として、また中長期的な対応も視野に、今後更に検討すべき課題に関する指摘については「今後の課題」として整理している。
 さらに、本専門委員会において示された様々な意見については、別添「社会的養護のあり方に関する専門委員会 検討課題に係る意見等」において、できる限り網羅的に整理した。


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