戻る

諸外国における介護政策の動向

  ドイツ イギリス フランス スウェーデン アメリカ
基礎指標
高齢化率:16.6%(2000)
平均寿命:男性 74.8歳(1998)
  女性 80.8歳
高齢化率:15.9%(2001)
平均寿命:男性 75.4歳(1999)
  女性 80.2歳
高齢化率:16.7%(1999)
平均寿命:男性 75.2歳(2000)
  女性 82.7歳
高齢化率:17.2%(2001)
平均寿命:男性 77.6歳(2001)
  女性 82.7歳
高齢化率:12.4%(2000)
平均寿命:男性 74.1歳(1999)
  女性 79.7歳
制度の概要
1994年に介護保険制度創設
保険者は介護金庫
医療保険者である疾病金庫が兼ねるが法人としては独立)
被保険者は公的医療保険加入者
介護サービスは地方自治体(日本の「都道府県」に相当)による社会サービスの枠組みの中で提供(財源は地方自治体の公費)
2002年に個人化自律手当制度(APA)を創設別紙3参照

運営主体は県(財源は公費)
介護サービスは基礎的自治体であるコミューン(日本の「市町村」に相当)により、公費財源により提供
医療制度(メディケア、メディケイド)の中で一部の介護サービスを保障
運営主体はメディケアは連邦政府、メディケイドは州政府
給付
給付を受けるに当たっては要介護認定(3段階)を受けることが必要

施設サービス、在宅サービスともに、保険給付額は要介護度に応じて設定。

在宅給付には、現金給付の「介護手当」があり、現物給付と組み合わせての受給も可能
1993年のコミュニティケア法に基づき、地方自治体がケアマネジメントを実施

地方自治体が、個々の利用者のニーズを総合評価し、適切な組み合わせのサービスを提供
個人化自律手当を受けるためには、県の医療・福祉チームによる要介護認定(6段階)を受けることが必要。手当を受けられるのは中度以上(1〜4)

高齢者介護施設における医療サービス、訪問看護サービスは医療保険によりカバー
在宅サービスの実施や施設入所については、本人又は家族等の申請に基づいて市町村の介護ニーズ判定員が必要性の判定を行い決定

介護ニーズ判定員はサービス提供が必要と決定したときは、その結果を地区ヘルパー主任や施設管理者に連絡し、市町村の予算から必要な資金を配分
施設サービス(ナーシングホーム)については、100日まではメディケアでカバー。それ以降、資産を費消した場合にはメディケイドがカバー。

在宅サービスについては訪問看護等のヘルスケアは対象となるが、ホームヘルプ、デイケア等は対象外。ただし、一部の州でメディケイドの対象としているところもある。
財源
保険料財源
 保険料率:1.7%(労使折半)
公費(地方自治体)
公費(県。社会保障金庫や一般社会拠出金からの拠出有り)
公費(コミューン)
メディケア:保険料+公費(連邦)
メディケイド:公費(連邦+州)
利用者負担
食費・居住費、給付限度額を超える部分は、自己負担が原則

低所得者については、州の社会扶助(公費)が支給される
施設入所については、一定以上の所得・資産を有する者は全額自己負担。低所得者については、サービスに要する費用の全部又は一部を地方自治体が負担

在宅については地方自治体により異なる。
個人化自律手当については定率の自己負担あり(率は所得により異なる)

施設における食費・居住費用は自己負担が原則

低所得者については社会扶助から支給
利用者負担はコミューンにより異なるが、2002年に全国一律に適用される利用者負担の限度額保障制度を導入
利用者負担に上限設定
利用者の最低所得保障額設定

施設における食費・居住費用は自己負担が原則。低所得者には家賃補助等を支給
メディケアでは一定期間しか給付されず期間経過後は全額自己負担

自己負担できないと認められる場合はメディケイドで対応
近年の動向等
2002年に、サービスの質の確保や痴呆性高齢者ケアの推進等を図る観点から
 (1)介護の質保障法の施行
 (2)ホーム法の改正
 (3)介護給付補完法の施行
等一連の改革を行った
介護保険導入後、自治体立施設の民間法人化や営利企業の参入が進展

現金給付のみ受給する者の割合は年々減少
 1995:全受給者の83%
 2001:全受給者の50%
1993年のコミュニティケア改革により、
 (1)地方自治体による総合的なケアマネジメントの確立
 (2)財源を自治体に集約し運営責任を明確化
 (3)サービス提供主体について公立から民間への誘導
を推進

2000年にケア基準法制定
 従来地方自治体ごとに異なっていた基準を統一化し、独立した政府機関である「全国ケア基準委員会」により、統一的に事業者を監督
地域におけるサービス情報を収集し、利用調整を行う「コミュニティ情報調整センター(CLICS」)の設置を推進

2000年にホームヘルプについてのサービス標準を作成。

施設については開設許可が15年ごとに更新される仕組みであり、施設は県等との間で、サービスの質の目標に関する協定を5年ごとに締結することとなっている
1992年のエーデル改革により、高齢者に対する保健医療サービスについてはコミューンへ権限委譲を進め、高齢者介護サービスの実施をコミューンに一元化

1998年には「高齢者政策に係る行動計画」を国会で決定
介護サービスの質の向上や介護職員の資質向上、家族やNGO支援など、コミューンの取組みに対する補助を実施

2001年に社会サービス法を全面改正し、利用者負担額上限制度を導入 別紙4参照
1993年の連邦包括予算調整法により、メディケイドについては資産要件が強化され、州政府は受給者の死後、資産(家屋等)の売却等により、メディケイドに要した費用を回収できるしくみが導入された別紙5参照

介護サービスの質の評価については、第三者評価機関による評価や認定、米国高齢者法に基づき各州に設けられた介護オンブズマン制度など、活発な取組が行われている。



(別紙1)

ドイツの介護保険制度の施行状況


1.被保険者数
 公的介護保険約7,132万人(2001年1月)
 民間介護保険約  836万人(2000年末)

2.受給者数
 ○受給者数196万人(2001年6月30日)
 在宅135万人
(69%)




公的介護保険:127万人
要介護度:I:55% II:35% III:10%
民間介護保険:  7万人





 施設61万人
(31%)




公的介護保険: 57万人
要介護度:I:38% II:42% III:20%
民間介護保険  3万人





3.財政状況
 ○ 制度発足以来、財政的には黒字基調で推移してきていたが、1999年に初めて単年度では若干の赤字となった。2000年においても単年度は赤字であるが、約94億DMの資産残高を有している。
(単位:億DM)
  1995年1996年1997年1998年1999年2000年
収入 164.4 235.5 311.8 313.0 319.2 323.6
支出 97.2 212.4 296.1 310.5 319.8 326.1
収支差 67.2 23.0 15.7 2.5 ▲0.6 ▲2.6
資産 56.2 79.2 95.0 97.5 96.8 94.3

 ○ 在宅給付のうち現金給付の占める割合は71%(金額ベース。1997年)となっている。受給者のうち現金給付のみを受けている者の割合は、1995年には83%であったが、2001年では50%と減少している。

4.社会扶助受給者の減少
 ○ 1996年の介護扶助支出は対前年比で21.5%減少。連邦労働社会省は1997年には年間100〜110億DMの社会扶助費用が軽減されると見込んでおり、要介護者を大幅に社会扶助に依存しないようにするという政策目標を達成したと評価。

5.介護基盤整備
 ○ 介護保険導入により基盤整備が促進
 ・在宅介護サービス機関
 約4400カ所(1991年) → 約12,800カ所(2000年)
 ・デイサービス、ショートステイ
 約 323カ所(1991年) → 約 6,000カ所(2000年)

6.制度の改革
 ○介護の質保障法(2001年9月制定、2002年1月施行)
 (内容)
 ・すべての介護保険の指定を受けたホーム及び在宅介事業者に、包括的な質の管理の導入を義務づけ
 ・介護金庫と施設間で「サービス及び質に関する合意」を結び、人員配置その他のサービスの質を定めるとともに、これを基に介護報酬を算定
 ・独立した専門家による定期的な施設の質の検査
 ・要介護者への相談事業と情報公開の強化
 ・MDKによるホーム監査、監査に関する州との連携

 ○ホーム法の改正(2001年9月改正、2002年1月施行)
  ホーム法は介護保険の指定如何にかかわらず施設を規制するもの。
(内容)
 ・入所者の自己決定権を確保、施設の自己責任を強化
 ・入所者の意見を代表する評議会の権限強化
 ・各ホームに対し、毎年1回の監査、予告なしの監査も可能

 ○介護給付補完法(2001年12月制定、2002年1月施行)
  ドイツの要介護度の判定には、見守りなどの要素が含められていないことから、痴呆が適切に判定されないという問題がある。こうした批判に応えるため、給付において若干の改善を行うこととしたもの。
(内容)
 ・ボランティアによる見守り等への助成
 ・痴呆の要介護者への給付の上乗せ
 ・要介護者・家族への助言・相談の拡充


(参考)

日本とドイツの介護保険制度の比較


  日本 ドイツ
施行 在宅・施設同時施行(2000年4月)


第1号保険料徴収は2000年10月から
在宅サービス先行施行
 在宅:1995年4月
 施設:1996年7月
保険料徴収は1995年1月から
保険者 市町村・特別区 介護金庫(事務は公的医療保険を運営している疾病金庫が行うが、財政的には明確に分離。介護金庫間で財政調整が行われ保険料は全国一律)
対象者 40歳以上の国民
 ・65歳以上の者
 ・40歳以上65歳未満の医療保険加入者
原則として全国民
民間医療保険加入者は原則として民間介護保険加入)
保険事故
要介護状態のほか、要支援状態も対象とする。
給付を受けられるのは40歳以上だが40〜64歳の者については 特定疾病が原因である場合のみ
疾病又は障害によって6ヶ月以上食事、衣服の着脱等の活動のためにかなりの援助を必要とする状態(中度以上の要介護状態
保険給付は年齢を問わず行われる
保険料負担
65歳以上:所得段階別定額
40〜64歳:加入する医療保険 の方式で算定。事業主負担(被 用者保険)、国庫負担(国保)あり
医療保険料率への介護保険料率の上乗せ
保険料率:1.7%(1996年7月〜)
労使折半(年金受給者の場合は年金保険者が事業主分を負担)
財源 公費・保険料が半々 保険料
現物給付 福祉サービスのほか、保健医療サービスを含め広く給付対象としている 原則として福祉サービスを給付の対象とする。
在宅サービス
 訪問介護
 訪問入浴
 通所介護
 居宅療養管理指導
 訪問看護
 通所リハビリテーション
 訪問リハビリテーション
 短期入所介護
 福祉用具の貸与・購入
 住宅改修費の支給
 痴呆対応型共同生活介護
 有料老人ホーム等におけるサービス
在宅サービス
 訪問介護
 通所介護
 夜間通所介護
 短期入所介護
 代替介護
 福祉用具の貸与、購入
 住宅改修費の支給
 老人居住ホーム
施設サービス
 特別養護老人ホーム
 老人保健施設
 療養病床等
施設サービス
 老人介護ホーム
 老人ホーム
 老人複合施設
現金給付 なし 介護手当
  要介護度に応じ支給
代替介護費用の給付
  家族介護を前提とし、介護者が休暇、病気等のため介護できない場合に費用を支給
要介護認定
市町村の要介護認定審査会が実施
MDKが実施(MDKは疾病金庫が地域に共同で設置する独立の審査組織)
6段階
3段階(「特に過酷な場合」を含めば4段階)
利用者負担
保険給付の範囲内で、介護費用の1割を負担
施設サービス利用時には食事の標準負担
在宅サービス
 保険給付の範囲内であれば自己負担なし
施設サービス
 介護費用については保険給付額の範囲内であれば自己負担なし
宿泊、食事の費用については全額自己負担
(※ドイツの介護保険は部分保険と言われており、一部負担はないが、保険給付の対象外を負担)



(別紙2)

イギリスの全国ケア基準委員会の概要

 全国ケア基準委員会(NationalCareStandardsCommision)は、高齢者介護施設をはじめとするケア施設の監査及び指導を行うことを目的として、2000年ケア基準法に基づき設立された独立の委員会。

1 組織
(1)委員会の構成
 委員会は、保健大臣により任命された議長及び14人の理事で構成。
 理事は、直接の利害関係を持たないビジネスマン、学者などから選任。
(2)地方組織
イングランド全域を8地域・71エリアに分けて業務を実施
(3)監査官
 監査官は1つのエリアに20〜30人ずつ配置。
 監査官はソーシャルワーカー、看護師、経営者等様々な職種の経験者
(4)監督
委員会は、人事、予算等について保健省の監督を受ける。

2 権限
(1)権限
 委員会の権限は以下のとおり。
事業所の登録の受付及び未登録事業所の告発
事業所の監査及び指導
利用者への情報提供、苦情処理発
保健省への情報提供及び勧告
 事業所の監査及び指導は、2000年ケア基準法及び規則、並びにナショナル・ミニマム・スタンダードに基づき行う。
(2)登録及び監査の対象
 登録及び監査の対象となる事業所は、高齢者介護施設のほか、病院、児童施設など(約40,000事業所)
 2003年4月から在宅サービスの事業所を対象に追加。

3 財源
 委員会の活動の財源は、事業者からの登録料などの収入及び国からの補助金



(別紙3)

フランスにおける個人化自律手当(APA)の概要

1 施行
 2001年1月から施行。
従来、県ごとに行われていた所得制限付の社会扶助である「特定介護給付」に代えて創設。〕

2 制度の運営主体
 

3 給付
(1)内容
在宅及び施設サービスの現物給付
 (在宅)ホームヘルプサービス、配食サービス、住宅改修、移送等
 (施設)老人ホーム、集合住宅
(2)要介護度の評価
 APAの給付を受けようとする高齢者は、県の医療・福祉チームが行う要介護度の評価を受ける。要介護度1〜4に評価されると支援計画が作成され、APAの給付を受けることができる。
(3)利用者負担
 所得に応じてサービス経費の0〜80%の利用者負担を行う。
施設サービスのうち、宿泊・食事の経費は全額自己負担(低所得者については社会扶助から支給)

4 財政
 原則として、県が2/3、国が1/3を負担。
国は基金を設け、各県の財政力や受給者数に応じて調整した上で交付。



(別紙4)

スウェーデンの利用者負担限度額保障制度の概要

 2001年社会サービス法改正の結果、2002年7月1日より高齢者・障害者福祉サービスに係る利用者負担の限度額保障制度が導入された。福祉サービスの利用者負担額がコミューンによって様々であるが、この制度は全国一律に適用される。
 具体的には、利用者負担に上限額を設定するとともに、利用者負担額を支払った後利用者の手元に残る額の下限額を設定している。


1 利用者負担上限保障
 ○ホームヘルプサービス、デイサービス、コミューンの保健医療サービス
 上限額(月額):価格基礎額×0.48÷12
  2002年:1,516クローナ
 ○特別住宅
 上限額(月額):価格基礎額×0.50÷12
  2002年:1,579クローナ
 ※この制度の適用は家賃法の適用を受けない寝室2部屋以上の特別住宅に限られる。
 ※価格基礎額は毎年改定(物価スライド)される。


2 最低所得保障
 ○最低所得保障の額は、食費、衣服費、電気代、基礎的日用品代などをカバーするものとして設定され、福祉サービス利用者負担や家賃はカバーしていない。
 具体的金額は、例えば、単身者の場合2002年 月額4,087クローナ



(別紙5)

メディケイドにおける資産回収制度(EstateRecoveryProgam)

1 背景
 ○1993年の連邦包括予算調整法(OBRA’93)により創設。
 ○背景は増加するメディケイド予算の抑制。
 ・メディケイド予算は、88年〜93年の5年間で、260億ドルから1,398億ドル(約5倍)に増大。

2 概要
 ○州政府がメディケイド受給者の死後、当該受給者の資産から、当該受給者に要した介護費用を回収することができるしくみ。

(対象者及び対象費用)
 (1)55歳以上のメディケイド受給者に係る
 ・ナーシングホーム費用
 ・在宅及び地域ケア費用(関連する病院費用及び処方箋薬費用を含む)
 (2)年齢にかかわらず終身施設入所(※)しているメディケイド受給者に係る施設入所費用
 終身施設入所の判断は州政府が行う(不服申し立ての手続き有)

このほか、州政府の判断により、資産回収の対象となるメディケイドサービスの範囲を拡大することができる。

(資産回収のしくみ)
 州によって細部は異なるが、連邦法(OBRA’93)で定められたガイドラインは以下のとおり。
 (1)資産回収の方法
 受給者本人の死後、州政府が債権者となり遺言裁判所(ProbateCourt)に申し立てする。
 ※受給者が在宅に戻る見込みのない場合においては、一定の条件及び手続きの下、受給者の存命中であってもその資産に先取特権を設定することができる。(96年時点で23州が実施)

 (2)資産回収できない場合
 ○受給者の配偶者が存命中の場合
 ○受給者が21歳未満の子どもを有している場合
 ○受給者が障害を有する子どもを有している場合
 ○受給者がナーシングホームに入所する1年以上前から当該受給者の家に住んでいる兄弟姉妹がいる場合
 ○受給者がナーシングホームに入所する2年以上前から当該受給者の家に同居し、在宅介護を行っていた子どもがいる場合
 連邦法では、この他、資産回収を行うと困窮欠乏につながる場合には州政府は資産回収を免除することができるとされており、数州は、この免除条項を一定以下の財産価値のないものについて機械的に適用している。

(資産回収の現状)
 (1) 全国(1999年現在)
 回収額約2億ドル
(96年→99年で約16%増)
 メディケイド総支出額約1,900億ドル(連邦及び州)
 ※メディケイド総支出額の中には、資産回収の対象以外のメディケイドサービス(医療扶助等)も含まれる。
 (2) 各州
 回収額は年々増加(96年→99年)
  マサチューセッツ州:1,380万ドル→2,300万ドル(66%増)
  フロリダ州:400万ドル→810万ドル(105%増)
 州により、取り組みにはかなりの違いがある。
 (例)ウィスコンシン州
 96年度財政年度では、メディケイド支出のうち約9億ドルの削減に寄与(メディケイドの1件当たり平均コストの3分の1が回収されたことに相当する)
  ウエスト・バージニア州
 1件当たり回収額は14,000ドル(99年)。これに対するメディケイドの1件当たり債務は50,000ドル
  バーモント州、ネバダ州等9州
 回収額は100万ドル未満
  ジョージア州、ミシガン州、テキサス州
 資産回収制度を制定していない。


トップへ
戻る