・ | 現在の拡散増幅検査の検出限界は、C型肝炎ウイルスでは100 copies/mlであり、チンパンジーを用いた実験ではウイルス絶対量20 copies 以下で感染が成立したため、検出限界未満のウイルス濃度のときに献血が行われた場合、感染は確実に起こる。B型肝炎ウイルスの検出限界は60 copies/ml であり、それを下回るウイルス量で感染が成立することは十分に起こり得る。ウイルス学的なベースに基づいて遡及調査のガイドラインを作るべきである。また、ドナーに対する十分な啓発を行い、理解と協力を求める必要がある。 |
・ | ウイルス感染は現段階では起こり得るものであるが、病原体を不活化できない状況では、最大限の努力を払って、これを抑えなければならない。そのための手立てがあればそれを講じなければならない。 |
・ | 平成元年頃に輸血をすると、多くの患者さんがNANB肝炎にかかったが、それがここ10年間でほとんどなくなった。さらにNATが導入されてかなり安全になったというのが臨床現場の実感。しかし、平成13年に供血者が2回目の献血をして、HBs抗原が陽性になったときに遡及調査が行われていれば、貯留保管されているものを廃棄するのが原則ではないか。 |
・ | 日赤は何のためにクァランティンを実施しているのか。日赤のクァランティンは、医療機関から情報が来た場合に限って行われていると印象付けられる。より安全な血液の提供ということを考えれば、HBs抗原陽性が判明した時点で、無条件で廃棄すべきであった。これは、医学的な常識である。日赤は多額の投資をして年間600万件の検体を10年間保管しているのだから、こういう問題に対してこそ、そういうものを活用すべきではないか。 |
・ | 患者の立場からいうと、リスクが少なくなったとはいえ、感染した本人にとっては大変な負担である。何らかの危険情報が出たら、まずは使用停止し、迅速に回収等の措置を行わないと、患者本位の医療にはならないと思う。日赤は、献血を受け入れる以降の問題についても、安全性の確保にかなりの責任があるし、厚生労働省にもそれを監督する責任がある。また、厚生労働省からの指示に迅速に対応する体制がないと、リスク管理にならない。血液の安全性の管理について、日赤もきちんと検討してほしい。厚生労働省も、どのように現実的な対応を行うかについて日赤と協議して欲しい。 |
・ | 技術的にやむを得ず感染してしまうことがあるという情報は、患者さんに前もって伝えられているのか。また、リスクのある製剤が使われてしまった後については、医療保険で治療することになるが、それだけで良いのか。 |
・ | 遡及調査を行う条件として、輸血後のウイルス検査をある程度義務付けなければならないと思う。また、病院によっては検査キットの感度が悪い場合があるので、余裕のある場合は感度の良いキットを使うことが必要だと思う。 |
・ | 国民の立場からすると、遡及調査によって救えるのであれば、一人でも救っていただかなければならない。日赤参考人の回答がよく理解できないが、6月12日の指導に対して日赤は対応していない、としか読み取れない。厚生労働省については、何か分かった時点ですぐ行動を起こすのは当然のことだが、今後はなるべく指導ではなく、法令に則った形でやっていった方が良い。 |
・ | 医療現場では、患者にどう説明するかが大変な問題である。検査結果の解釈について一定のルールを決める必要があるが、これは厚生労働省だけではなく、輸血学会のメンバーを加えてひな型を作ることが建設的ではないか。 |
・ | 日赤その他輸血を監督する常設の委員会が必要ではないか。 |
・ | 血液事業は、本当は「仕方がある」ことを「仕方がない」と言い換えることによって患者が犠牲になってきた歴史があるということをもう一度想起して欲しい。ある程度安全マージンを多めに取ることによって、例え献血に無駄になる部分があるとしても、患者の安全を第一に考える血液事業を推進することを、献血者が理解しないわけがない。患者の安全と健康が守られることが、何よりの献血者に対するお礼であるというふうに理解している。 |
・ | 輸血による被害をゼロにするには、輸血をしなければよいのだが、そうすると輸血を受けられないために何万人かが亡くなるかもしれない、ということはどうしても考えなければならない。また、輸血は日赤だけではなく、院内採血で行われているケースもあるのだから、病院内においても遡及調査を行えるような体制を作る必要があるのではないか。さらに、医療機関では、陽転後に、患者と共にウイルスとの本当の戦いを行うことになる。せめて、「保険で治療」という文言を、対応手順に入れて欲しい。 |
これらの議論を踏まえ、技術の改善、十分なインフォームド・コンセントの実施、回収その他の措置の実施など、血液製剤の安全性の向上に関連した事項を事務局にて取りまとめることとされた。
また、遡及調査に伴う情報提供の在り方については、患者代表、安全技術の専門家、日本医師会、日赤、輸血学会と事務局が協議し、早急に取りまとめることとされた。