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[II.厚生科学基盤研究分野]

(1)先端的基盤開発研究経費(仮称)
事務事業名 ヒトゲノム・再生医療等研究(ヒトゲノム・遺伝子治療分野)経費
担当部局・課主管課 研究開発振興
関係課 厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
 新しい千年紀のプロジェクト、すなわち「ミレニアム・プロジェクト」のうち、高齢化分野のプロジェクトを構成する事業の一つとして、高齢者等の主要な疾患の遺伝子の解明に基づく個人の特徴に応じた革新的な医療の実現、自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療の実現、生命工学を利用した疾患予防・健康維持のための高機能食品の開発などを目指すもの。
 そのうち、厚生労働科学研究では、高齢者の主要な五つの疾患について疾患関連及び薬剤反応性関連遺伝子をヒト一塩基多型解析(SNPs解析)手法を用いて大規模に解明する事業を支える研究を実施することとし、研究課題として、平成15年度は以下の(1)〜(5)を実施。

(1) 遺伝子研究を官民で取り組むことによる民間への技術移転、研究を進めるための遺伝子、細胞等の生物資源の収集、確保、提供等の基盤整備に資する研究
(2) 高齢者等の主要な疾患(痴呆、がん、糖尿病、高血圧及び喘息を除く。)に関連する遺伝子の同定、機能解明等に関する研究
(3) 高齢者等の主要な疾患(痴呆、がん、糖尿病、高血圧及び喘息を除く。)に用いる薬剤の反応性に関連する遺伝子の同定、機能解明等に関する研究
(4) 遺伝子治療法を確立するための研究(遺伝子治療用ベクター等の開発、遺伝子治療用ベクターの安全性評価に関する研究など)
(5) 高齢者等の主要な候補疾患遺伝子の絞り込みに関する発展的解析研究(ミレニアム・ゲノム・プロジェクトにおける1次タイピングの成果を踏まえた2次タイピングに関する研究)

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
2,356 2,356 2,356 2,118 2,118

(3)問題分析
 21世紀に入って、ヒトの遺伝子が解読され、ゲノム科学やタンパク質科学等を応用した新しい創薬手法(「ゲノム創薬」と呼ばれている)による新薬開発競争が激化しており、その成果が本格的に現れる10年後の2010年頃には、「新薬黄金時代」を迎えることが予想されており、急速な高齢化が進展する我が国において活力ある長寿社会の実現のための実用化が期待されている。
 また、我が国は、完全長cDNA、SNPs、たんぱく質、糖鎖などの研究に強みを持っており、治療や予防に関する基礎研究部門でも国際的に競争しうる力を有している。さらに、我が国の製薬の国際競争力強化は近年強化されてきている。
 したがって、がん、高血圧、糖尿病等の疾患に関連する遺伝子、薬剤応答性に関する遺伝子について二次スクリーニングを進め特定するとともに、バイオインフォマティクス技術を活用し、創薬基盤技術として確立する必要がある。

(4)事務事業の目標
 ミレニアム・ゲノム・プロジェクト全体(文科省及び経産省を含む)として、2004年度を目標に、「痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子解明に基づくオーダーメイド医療を実現し、画期的な新薬の開発に着手するとともに、生物の発生等の機能の解明に基づく、拒絶反応のない自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療を実現する。」こととなっている。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 平成11年12月の内閣総理大臣決定において、「21世紀は、世界各国で高齢化社会が到来し、全人類にとっての課題となる。特に我が国は、世界に例をみない速度で高齢化社会を迎えることが予想されている。こうした中、高齢者が健康かつ多様な形で参画できる活気ある社会を築くためには、高齢者が安心して暮らせる生活環境を実現するとともに、生命科学によって老人性疾患の原因解明・克服を行い、高齢者の健康を維持・増進することが重要である。これらの課題を根本的に解決するためには、ヒトの遺伝子機能を解明し、自然界の生体機能を適切に利用することが最も有望であり、不可欠と考えられる。
 医療分野においては、ヒトの遺伝子情報の解析により、病気の発生原因や発病メカニズムを根本から解明し、痴呆、がん、糖尿病、高血圧等、従来の手法では解決することが難しかった疾病も克服することが可能となる。また、ヒトゲノムの多様性を解析することで、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性にあった診断・治療・予防、薬の投与が可能となり、いわゆるオーダーメイド医療が実現できる。(中略)
 しかしながら、我が国のバイオテクノロジーに関する研究開発の現状は、特にヒトゲノム分野において研究の水準、研究者の層や民間投資のいずれにおいても、欧米に、特に米国に大きく水をあけられ、このままでは、我が国はバイオテクノロジーのもつ巨大な可能性を活用しえず、世界の流れに遅れをとるとともに、高齢化社会への準備を十全に整えられない可能性がある。2000年を境に、生命科学はDNAの構造解析主体の時代から生命現象への解明へと進み、世界の各国が本格的な競争へと入っていく。2000年からの数年間こそが、我が国の遅れを取り戻す数少ないチャンスである。
 今次ミレニアム・プロジェクトにおいては、ゲノムに係る研究開発を国家のイニシアティブの下に、研究者を結集して、強力に推し進めることにより、来るべき新世紀を高齢者にとって活気ある社会への道を切り拓き、安全性の確保と国民の理解の増進を図りつつ、バイオテクノロジーの応用によって幅広い分野における新しい産業の創出を図っていくことを目指すとともに、21世紀の人類社会の発展に、大きく貢献していくこととする。」旨記載されているところ。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 平成14年度に開催されたミレニアム・ゲノム・プロジェクト評価・助言会議において評価を実施し、平成15年2月に「ミレニアム・ゲノム・プロジェクト前半の中間評価 評価報告書」が出されたところである。
 当研究事業については、「培養細胞研究資源管理基盤の整備に関する総合的研究については、リソースセンターは大変に必要な研究資源であり、国際競争力の視点からも、国家事業として整備していくことは極めて重要である」との指摘を受け、それをふまえ、平成15年度より、生物遺伝資源の研究については、競争的資金による公募型の研究ではなく、重点的資金による指定型の研究として推進することとしている。

 厚生労働省においては、本研究事業について、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、専門家等により、適切に評価(事前評価、中間・事後評価)を実施している。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 ミレニアム・ゲノム・プロジェクト全体(文科省及び経産省を含む)としては、2004年度を目標に、「痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子解明に基づくオーダーメイド医療を実現し、画期的な新薬の開発に着手するとともに、生物の発生等の機能の解明に基づく、拒絶反応のない自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療を実現する。」とあることから、その目標への寄与が達成度となる。

(4)その他
 特になし。

(5) 特記事項
 平成11年12月の内閣総理大臣決定において、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととし、これを新しい千年紀のプロジェクト、すなわち「ミレニアム・プロジェクト」とすることとされた。
 ミレニアム・ゲノム・プロジェクト全体(文科省及び経産省を含む)として、2004年度を目標に、「痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子解明に基づくオーダーメイド医療を実現し、画期的な新薬の開発に着手するとともに、生物の発生等の機能の解明に基づく、拒絶反応のない自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療を実現する。」こととなっている。

3.総合評価
 本研究事業は、先端的な技術を臨床応用に導く極めて新しい研究分野である。疾患関連遺伝子の同定、遺伝子治療製剤の臨床研究や安全性に関する研究、病変の遺伝子診断技術、研究資源の提供を目的とした細胞バンクなどの管理基盤整備に関する総合的研究など、トランスレーショナル研究やその基盤的支援技術に繋がる研究を実施してきた。本研究事業は、病態診断、分子標的治療、予測医療等、健康増進への寄与が期待される新しい医療技術の創生に資する極めて重要な研究成果を輩出しており、今後、一層推進すべき分野である。



事務事業名 ヒトゲノム・再生医療等研究(再生医療分野)経費
担当部局・課主管課 健康局 疾病対策課、
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容( 新規・
一部新規
 目的としては、1)痴呆をもたらす脳梗塞、2)寝たきりに伴う床ずれ、3)骨粗鬆症による骨折、4)糖尿病に伴う動脈硬化症、5)高血圧に伴う虚血性心疾患等の高齢者の主要な疾患について、生物の発生・分化等の機構の解明に基づき、自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指す。
 具体的には、(1)骨・軟骨分野、(2)血管分野、(3)神経分野、(4)皮膚・角膜分野、(5)血液・骨髄分野、(6)移植技術・品質確保分野、(7)機能再生の観点より、研究を推進する。
 本事業においては、このような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による事前評価等により採択された研究課題について補助金を交付する。なお、得られた研究成果については、適切に行政施策に反映させる。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
1,174 1,174 1,021 993 1,167

(3)問題分析
(1)現状分析
 近年の科学技術の急速な進展に伴い、ヒトの体細胞が有する自己修復能力のメカニズムを応用する再生医療、移植医療の発展に関する期待は高い。その中で、再生医療研究に関して、高齢者の主要な疾患について、生物の発生・分化等の機構の解明に基づき、自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指す必要がある。
 特に今後は、現在行われている骨、血管、神経といった分野だけでなく、難治性疾患の治療や恒常的に不足している臓器移植等に用いられる臓器の供給にもつながる可能性を秘める機能再生医学の発展を目指す必要がある。
 また、すでに行われている臓器、及び骨髄・さい帯血移植に関しては、日進月歩の技術革新に対して、エビデンスの構築と集約とそれに基づいた新しいルールづくりをする必要がある。

(2)原因分析
 近年の科学技術の急速な進展に伴い再生医療分野において、世界的に遜色のない研究を推進するためには、国として補助が欠かせず、また、臓器、及び骨髄・さい帯血移植に関しても、技術革新に応じたエビデンスの構築と集約とそれに基づいた新しいルールづくりをする必要がある。

(3)問題点
 再生医療分野において、世界的に遜色のない研究を推進するために、補助を行う研究を適切に選別する必要がある。また、臓器、及び骨髄・さい帯血移植に関しては、迅速で適切なエビデンスの構築と集約とそれに基づくルールづくりを行わなければならない。

(4)事務事業の必要性
 専門家及び行政官による事前評価委員会を設置し、適切な評価を行い、最適な研究班を選出する必要がある。

(4)事務事業の目標
 臓器、及び骨髄・さい帯血移植に関しては、迅速で適切なエビデンスの構築と集約とそれに基づくルールづくりを行い、国のガイドライン(ドナー・レシピエント基準等)に反映する。
 専門家及び行政官による事前評価委員会を設置し、評価を行い、約25件の研究課題を採択する。また、中間評価、事前評価においては、事後評価委員会を設置し、専門家及び行政官による事後評価をおこなう。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 近年の科学技術の急速な進展に伴い、ヒトの体細胞が有する自己修復能力のメカニズムを応用する再生医療、移植医療の発展に関する期待は高い。
 その中でも、再生医療に関しては(1)骨・軟骨分野、(2)血管分野、(3)神経分野、(4)皮膚・角膜分野が最も進んでおり今後の医療への応用を推進する必要がある。
 移植医療に関しては、骨髄移植、さい帯血移植、臓器移植においては、技術革新が日進月歩であるため、エビデンスの集約と新たなルールづくりをおこなう必要がある。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 厚生労働科学研究費補助金においては、1研究課題あたりの金額は平均約3800万円であり、適正な規模の研究が効率的に実施されている。
 評価方法についても適切に整備され、評価委員会が最新の知見に照らした評価をおこない、研究費が配分されていることより、効率性、妥当性は高いと考えられる。
 限られた予算の中で、公募した研究課題より約2割の課題を採択し、研究を実施することにより、必要性、緊急性が高く、予算的にも効率的な研究課題が採択され、研究が実施されている評価できる。

 医学の進歩の一助となっていることが、論文発表、特許申請として現れていると同時に、現行医療の改善のためのエビデンスを積み上げ、国内ルール、ガイドラインの変更に生かされている。

●これまで達成された成果・今後見込まれる効果
 (1) 骨・軟骨分野
 自家骨の有効な保存法開発のために新規デバイスを開発。さらには自家骨髄細胞から分化させた骨・軟骨細胞による膝関節症、股関節症、歯槽膿漏、下顎骨損傷に対する治療法の開発を始め、すでに臨床研究を始めている。増殖が現状では困難な間葉系幹細胞の増殖法を確立し、産業化に取り組む。

 (2) 血管分野
 骨髄細胞を用いた血管新生療法の基礎、臨床に関する研究の推進を図るとともに肝細胞増殖因子を用いた難治性血管障害の治療に関する研究が臨床応用され良好な成績を収めている。今後は、ヒト幹細胞を用いた心筋梗塞を中心に有効な治療法を確立するとともに、そのメカニズムについての解明も進める。

 (3) 神経分野
 平成12年度からの研究により確立した神経幹細胞の単離、分化、増殖機構の解明に基づき、動物実験においてパーキンソン病モデル動物にて有効な治療成績を得ている。平成15年度から臨床応用に向けた取組を行う。

 (4) 皮膚・角膜分野
 同種皮膚の無細胞化マトリクスを用いた臨床研究を行い、これまで困難であった難治性皮膚潰瘍、熱傷等の疾患に対し良好な成績を収めている。今後は発汗能や発毛能等を備えた機能的な皮膚を、幹細胞を用いて開発し、より機能的な移植用皮膚および毛髪再生の開発に努める。
 角膜に関しては、難治性前眼病変の治療に必要な再生表層角膜の作成を行い、良好な治療成績を収めている。今後は再生表層結膜について動物実験を行い、臨床応用へとつなげる。

 (5) 血液・骨髄分野
 機能障害に陥った自己造血幹細胞を他家幹細胞を用いた治療成績(さい帯血移植、末梢血幹細胞移植、ミニ移植)のエビデンスを得ることが出来た。今後は、造血系の疾患のみならず、固形腫瘍も念頭においた治療成績向上のための造血幹細胞移植技術の革新を目指す。

 (6) 移植技術・品質確保分野
 自己、同種を含め、各種の組織移植に伴う免疫機能の解析を行い、免疫寛容を起こさせる基礎的なメカニズムを解明した。今後は、臨床応用を目指した取組を行うとともに、自己培養組織移植が確立するまでの同種移植基盤の確立を目指す。
再生医療をより安全に行うための取組としては、品質、安全性評価技術を確立するために、微量ウイルス等の濃縮法を開発した。今後はさらに感度の高い検査法を確立すると共に、がん化予測法及び細胞の分化予測法の確立を目指す。

 (7) 機能再生
 本事業においては、今年度よりの新規提案の分野であるが、難治性疾患の治療や恒常的に不足している臓器移植等に用いられる臓器の供給にもつながる可能性を秘める機能再生医学の発展を目指し、人工肝臓、腎臓、膵臓に対してのアプローチをおこなう。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 いずれの事業においても、研究課題の目標の達成度は高く、国際的な水準に照らし合わせても有効な研究が推進されている。
再生分野に関しては、国際的にみても学術的な新規性の高い研究が多く実施され、世界にひけをとらない研究を実施している。
 また、臓器、造血幹細胞移植に関しても、現行医療の改善のためのエビデンスを積み上げ、国内ルール、ガイドラインの変更に生かされている。
 これらの研究とその成果は、我が国の研究レベルを世界にひけをとらないものにするためにも、先進医療である臓器、造血幹細胞移植のより高いレベルを保つためにも大きな貢献をおこなっているものと考える。

(4)その他
 本事業では、これまでに、世界にひけをとらない再生医療研究の実施、臓器、造血幹細胞移植のより高いレベルの保持に寄与してきたが、今後は、研究水準の向上や、患者を取り巻く医療環境の変化にあわせて、行政ニーズと学術的な問題点とを十分に把握した上で、効率的に研究を進める必要があると思われる。

(5) 特記事項
(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
(5)会計検査院による指摘

3.総合評価
 自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指す再生医療分野においては、世界のレベルを常に意識し、高いレベルの研究を実施し、臨床応用に結びつけるよう努力する必要があり、また、現在行われている臓器移植・骨髄移植の改良に寄与できる調査・研究も継続して行われていく必要がある。
 本事業では、行政ニーズと学術的な問題点とを十分に把握した上で、効率的に研究を進めており、今後も、再生医療の推進や、臓器移植・骨髄移植の改良に寄与できるものと考えられる。
 なお、本事業がさらなる貢献をできるよう、評価体制の強化についても常に検討をおこなうべきである。



事務事業名 疾患関連たんぱく質解析研究経費
担当部局・課主管課 医政局 研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
 医薬品開発のシーズとなる疾患関連タンパク質を発見し、その知的財産権を確保することは、激しい国際競争が繰り広げられている医薬品産業の今後の発展に必要不可欠であることから、高血圧、糖尿病、がん、痴呆等を対象に、産学官が連携して、大規模かつ集中的に疾患関連タンパク質を同定し、データベース化を行う基盤的研究、医療機関からの提供サンプルの採取・保存方法や効率的なハイスループット分析方法などの基盤技術を確立するための研究、疾患関連タンパク質のデータベース構築に必要なバイオインフォマティクスに係る研究などを進め、国際的に競争力のある医薬品開発のシーズの探索を図る。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
0 0 4,300
(補正)
500 3,500

(3)問題分析
 (現状分析)
 2003年4月、国際ヒトゲノム計画によりヒト全ゲノムの解読がなされたことを受け、ゲノムの機能解析、遺伝子調節ネットワーク、遺伝子多型等の研究が推進されているところであるが、同時に、ポストゲノム研究として、タンパク質−タンパク質、タンパク質とその他の生体分子間の相互作用の解析が重要な課題の一つとして考えられている。
 このタンパク質を対象とした研究のうち、疾患に関連した調査研究について、欧米では、すでに国家プロジェクトとして着手されており、ライフサイエンスに係る激しい国際競争が繰り広げられている中、我が国においても早期に産学官連携による推進体制を構築し、研究に着手する必要があることから、本プロジェクトを実施するものである。
 (問題点)
 疾患関連タンパク質の解析にあたっては、臨床サンプルの確保が極めて重要であることから、各関係医療機関との連携体制を強化するとともに、本研究事業にかかる適切な倫理審査等のシステムを整備していくことが必要である。
 (事業の必要性)
 ライフサイエンスに係る激しい国際競争が繰り広げられる中、本研究を推進することにより、新たな疾患関連タンパク質が明確になり、新規創薬ターゲットが見いだされるとともに、網羅的解析への研究としても活用できる。
 さらに、国民の健康の増進、福祉の向上等に大きく寄与することが出来、特許等の知的財産権の獲得につながり、我が国における生命科学をベースにした21世紀の新規産業創出において、確固とした基盤を構築することが可能となる。

(4)事務事業の目標
○将来の医薬品産業の躍進の原動力となる新薬のシーズの発見
 ・疾患関連たんぱく質の解析手法の確立
 ・疾患関連たんぱく質データベースの構築
 ・新規タンパク質、データベースに関する知的財産権の確保と画期的な医薬品創設

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
○医薬品開発のシーズとなる疾患関連タンパク質の発見、知的財産権の確保は、今後の医薬品産業の発展に不可欠であり、現在実施しているタンパク質の基本構造や機能を解析する「タンパク質からのアプローチ」(タンパク3000プロジェクト等)のような取組みに加え、患者と健常者の間のタンパク質の種類・量の違いを同定する「疾患からのアプローチ」により、医薬品開発のシーズとなる疾患関連タンパク質の発見等を加速化することが極めて重要となってきている。
○その背景としては、10万種にのぼるタンパク質、特に解析の困難であった大きなタンパク質の同定が、質量分析計等の自動化や、タンパク質を分解して解析しコンピューター上で結びつける「ショットガン法」の開発等により、疾患からのアプローチが可能になりつつあることがあげられる。
○スイス、ドイツでは疾患からのアプローチに既に国家プロジェクトとしてその取組みに着手しているが、わが国においては、欧米のような大規模かつ集中的な疾患関連タンパク質に関する研究はなく、また、企業単独で取り組むことも困難である。
○このような状況を踏まえ、我が国においても、産学官の強力な連携のもと、患者と健常人におけるタンパク質の量と種類の違いを同定するための大規模な基盤整備を国家戦略として進めていく必要がある。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
○本研究事業の推進にあたっては、本研究に関する知見と経験を有するプロジェクトリーダーを置き、国立試験研究機関、製薬企業、医療機関等の共同研究体制を構築する。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
○創薬研究の活性化につながり、国民の健康増進・疾病予防のみならず、医薬品産業がスパイラル発展するための好循環が期待される。

(4)その他
 特になし

(5)特記事項
 特になし

3.総合評価
○ゲノム研究及びポストゲノム研究の進展により、ゲノム配列が分かり、さらに疾病との因果関係が解明されると、疾患に関連するタンパク質などの創薬ターゲットが新たに発見されることから、現在数百程度である創薬ターゲットは10倍以上にもなると予想されている。
○このため、今後の創薬における国際競争では、疾患関連タンパク質の解析研究を進め、いかに多くの創薬ターゲットを発見していくかが極めて重要である。
○こうした中で、タンパク質解析研究は、研究の進展とともに新たな局面を迎えており、
既知の代表的なタンパク質の機能解析に加え、医薬品のシーズとなるタンパク質の発見を加速化するための大規模かつ集中的な疾患関連タンパク質に関する研究が不可欠な状況となっている。
○我が国では、既知の代表的な疾患関連タンパク質の機能解析を行う研究は、すでに実施されているところであるが、欧米のような大規模かつ集中的な疾患に関連するタンパク質に関する研究はなされていない。そのため、本研究事業を通じて、個々の製薬企業が、日本国内はもとより世界の患者に質の高い医薬品を提供できるよう努め、我が国における医薬品産業の国際競争力を強化し、産業発展の原動力であるイノベーションが次々と生み出されるよう、国家戦略として進めていく必要がある。



事務事業名 萌芽的先端医療技術推進研究費(ナノメディシン分野)
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(継続)
 超微細技術(ナノテクノロジー)の医学への応用による非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を推進し、患者にとって、より安全・安心な医療技術の提供の実現を図る。これにより、健康寿命の延伸を実現するとともに、萌芽的先端医療技術の研究開発を推進することで我が国の医療機器分野の技術革新を促すことを目的とする。具体的にはナノテクノロジーを用いた、より精密な画像診断技術の開発、生体適合性の高い新材質の開発、より有効性・安全性の高い医療機器・医薬品の研究開発等。
 (1)超微細画像技術(ナノレベル・イメージング)の医療への応用
 原子間力顕微鏡等の新技術を医療に応用することにより、これまで電子顕微鏡では観察できなかった、たんぱく質単分子レベルの構造を直接的に描写する技術を開発。(従来のNMR(核磁気共鳴装置)ではたんぱく質の平均的な大きさ・構造等がわかるが、一つ一つのたんぱく質を直接描出することはできない。また、大きなたんぱく質についてもその全体像を描出できない)これにより、より精度の高い診断が可能になると共に、創薬等につながる研究成果が期待される。
 (2)微小医療機器操作技術の開発
 複雑な構造を有する血管、気管支(肺胞)への微小なカテーテル・内視鏡等の誘導を可能にする技術・医療機器の開発。これにより、より正確で侵襲の少ない、カテーテル・内視鏡等による検査・治療が可能になる。
 (3)薬物伝達システム(ドラッグ・デリバリー・システム)への応用
 種々の薬剤を内包させることのできる高分子球状粒子を開発し、これに標的組織に特異的に集積するような官能基を任意に配置する技術を開発する。これにより、標的となる組織・細胞での薬剤の放出が可能となり、有効性が高まる。
 (4)その他 (1)〜(3)の他に、医療技術開発に応用できる分野。
 上記のうち、(1)〜(3)については、既に医療への応用が期待されるとして多くの研究者が指摘している研究であり、国として基盤的技術開発を着実に推進する観点から、厚生労働省所管のナショナルセンターを中心に民間企業・大学等の研究者と連携した指定型(プロジェクト型)の研究推進体制を採用している。これによって、研究成果の社会・産業への迅速な還元を目指す。
 (4)については、ナノテクノロジーは基盤的技術であるが故に、その応用範囲は非常に広いことから、競争的資金として自由な発想に基づく医療技術への応用分野について、広く公募する体制を採用する。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
1,384 1,203 2,140

(3)問題分析
(現状)
 現在、我が国において近年ナノテクノロジー・材料分野の基礎的な研究開発への投資を拡充している。ナノテクノロジーは基盤的技術であり、各分野への応用が考えられ、医療もその主要な分野の一つであり、厚生労働省では平成14年度から5カ年計画で「ナノメディシン」としてナノテクノロジーを用いた医療技術の開発を進めてきたところ。
 また、総合科学技術会議では、研究開発の事業化・産業化を一層効率的に進めるために、関係省庁が連携して行う「連携プロジェクト」を設定しようとしているが、その対象とする領域としてナノメディシン関連では「ナノ医療デバイス」「ナノ医療DDS」を挙げているところ。

(4)事務事業の目標
 平成14年度に専門家・行政官による事前評価委員会を設置し、評価を行い、研究課題を採択した。また、中間・事後評価については中間・事後評価委員会を設置し専門家・行政官による中間・事後評価を行っている。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
(行政的意義)
 総合科学技術会議においても強調されているように、この5年〜10年の間に集中的にナノ・テクノロジーの研究開発を進めることで我が国が世界的にも優位な立場に立つことが可能となる。ナノ・テクノロジーは基盤的技術であることから、その将来的な意義は非常に大きいと言える。このような時期に、行政が積極的にその推進を支援することには大きな意義がある。
(専門的・学術的意義)
 医療の分野においては、より効果的でかつ侵襲性の低い治療機器の開発が求められており、ナノ・テクノロジーはそのための画期的な革新的技術に成りうる。
(目的の妥当性)
 当該事業では、ナノ・テクノロジーを医療機器に活かす分野として
(1)超微細画像技術(ナノレベル・イメージング)
(2)微小医療機器操作技術の開発
(3)薬物伝達システム(ドラッグ・デリバリー・システム)への応用
を3つの柱と位置づけており、それぞれ、今後の医療機器・医薬品開発において基盤的な技術を確立するものである。
 その証左として、これらの分野は、総合科学技術会議の「連携プロジェクト」対象領域として挙げられている。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 これら基盤的技術は、国として研究開発を着実に推進する観点から、具体的なテーマを予め指定し、各研究開発分野のテーマ毎にプロジェクトリーダーを置き着実な推進を図っているところである。また、それぞれの分野毎に民間企業と十分に連携を図ることとしており、このような体制を採ることによって、研究成果の社会・産業への迅速な還元が図られると考えられる。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 現在、5年計画のうちの2年目であり、各プロジェクトにおいて着実な成果を上げているところ。

(4)その他
 特になし。

(5)特記事項
 特になし。

3.総合評価
 ナノ・テクノロジーという我が国が国際的に優位性を持っている技術をライフサイエンス分野の医療に応用するという取り組みであり、異分野との融合研究という観点からも、その意義は高い。また、研究テーマの選定も将来に向けた応用の基礎となる分野であり適切である。研究実施体制についても、民間企業との連携が図られており、より安全・安心な医療技術の提供の実現、医薬品及び医療機器産業における国際的競争力の強化等の成果が期待される。



事務事業名 萌芽的先端医療技術推進研究経費(トキシコゲノミクス分野)
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
 医薬品の研究開発の初期段階で、将来の副作用発症の可能性をある程度予測できれば、製薬企業は広範な非臨床試験や臨床試験を行う前に、新規化合物の安全性を評価することができ、より安全性が高い医薬品を上市することが可能となる。
 そのため、国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)と製薬企業が共同で、ラット、ラット初代肝細胞及びヒト培養肝細胞を用いて、化合物を対象として、暴露実験を行い、主に肝臓・腎臓における遺伝子発現変化を網羅的に解析する。解析により蓄積された遺伝子情報を基にデータベースを構築し、バイオインフォマティクス技術を活用して、個人間の遺伝子の差異に由来する副作用の発生を解明し、医薬品候補化合物の安全性を従来の毒性試験よりも早期に評価・予測するシステムを開発し、初期の創薬過程における医薬品候補化合物の選定のための研究に資することとする。さらに、最終的には、安全性評価(リスクアセスメント)に用いることができるデータベースを構築し、創薬のさらなる効率化、迅速化を目指すこととする。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
0 0 1,456 1,271 1,271

(3)問題分析
 (現状分析、問題点)
 医薬品開発において候補物質の安全性の確認を行うことは最も重要であるが、動物実験からヒトへの臨床試験に移行する際、動物実験でのデータに基づいて安全性の予測を行うことには科学的な限界があり、確実な安全性があるとはいえない。そのため、ヒトへの臨床試験により最終的な安全性を確認する必要があるが、多大な時間を要するだけでなく、臨床試験段階まで開発を進めた多数の候補物質が臨床試験の結果、安全性等の問題により製品化されず、時間と開発費の損失を生じさせている現状がある。
 (原因)
 動物試験で得られた結果をヒトに適用する際、実験動物間及び動物とヒトとの間の種差に起因して血中動態、薬物反応性、副作用の発生率等様々な差異が存在している。
 (事業の必要性)
 これらの問題を包括的に解決するため、薬剤候補物質を投与する際に遺伝子発現を網羅的に解析してインフォマティクスを構築することが重要である。生体内(in vivo)及び生体外(in vitro)の実験系において、薬剤を投与することにより誘発される遺伝子発現を網羅的に解析した結果に基づくデータベースを構築し、化学物質としての薬剤候補物質の安全性を従来の動物試験等に基づく毒性試験よりも正確かつ詳細に予測するシステムを開発し、創薬におけるさらなる迅速化、効率化を実現させ、我が国における医薬品産業の国際競争力を強化する必要がある。

(4)事務事業の目標
 国立研究所の専門家及び本プロジェクトに参加している製薬企業の専門家からなる、病理・毒性、遺伝子発現解析、データベース・インフォマティクス等のワーキンググループを定期的に開催し、プロジェクトの円滑的な進行に努めている。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 ゲノム科学を初めとするライフサイエンス分野は、米、英、独等の先進国において経済発展の牽引分野としての国家戦略として位置づけ、重点領域化して取り組みを強化しているところである。我が国においても、国家戦略としてミレニアムプロジェクトによる疾患遺伝子の解明、メディカルフロンティアによる疾患タンパク質の解明を押し進めることにより、画期的な医薬品開発等が期待されているところである。
 この中で、「ゲノム創薬」の激しい国際競争に伍していくためには、ミレニアムプロジェクトの枠組みの中で、化学物質たる薬剤候補物質の基本構造から安全性や有効性に優れた医薬品を選択するための技術、すなわち安全性予測技術の開発を行い、我が国のゲノム創薬技術の向上を図ることが重要であり、厚生労働省として国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)を核として、国内製薬企業との連携の下に、医薬品の研究開発に横断的に必要となる安全性予測技術の基盤整備を行うプロジェクトとして、本トキシコゲノムプロジェクトを積極的に押し進め、他国に先んじて日本発の画期的な新薬の開発を強力に推進していく必要がある。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 本研究の遂行によって期待される成果は、ヒトにおける副作用の早期予測、臨床における医薬品の予期しない副作用発現率の低下、より安全性の高い医薬品の創設等であり、さらに創薬のさらなる効率化も期待することができる。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 ライフサイエンス分野における研究が進展し、画期的な医薬品開発等が期待されている中で、本プロジェクトを行うことにより、医薬品開発の促進、安全性確保の基盤整備の両面に寄与するトキシコゲノミクス分野の研究を推進することにより、我が国における医薬品産業の国際競争力を強化することを可能とする

(4)その他
 特になし

(5)特記事項
 特になし

3.総合評価
 現在、医薬品の開発において、研究開発の初期段階における動物実験、それに引き続き行われる臨床試験において最終的な安全性を確認することとなるが、この過程で、多大な時間を要するとともに、多数の候補物質が安全性等の問題により製品化が断念される等、時間及び開発費の損失が生じているのが現状である。
 一方、近年のヒト遺伝子の解読等ゲノム科学をはじめとしたライフサイエンス分野における研究の進展はめざましく、これらの先端科学を応用した新しい創薬手法である「ゲノム創薬」や、遺伝子検査で投薬適性を判断し無駄な投薬を避ける「テーラーメイド医療」が10年後に本格的に実現すると言われる中で、米、英、独等の先進諸国は、このライフサイエンス分野を経済発展のための国家戦略として位置づけ、重点的な取り組みをすることにより、製薬産業が国際的な競争力を保ち続けるべく国家戦略として支援を行い、これらの国における各製薬企業も研究開発費を大幅に増加させている。
 我が国においても、2000年度から開始されたミレニアムプロジェクト、2001年度から開始されたメディカルフロンティア戦略において、疾患に係る遺伝子及びタンパク質の解明を押し進めているところであるが、このような世界的な情勢を踏まえ、激しい国際競争に伍すべく、本プロジェクトにより、国内の各製薬企業と共同で薬剤候補物質の基本構造から安全性や有効性に優れた医薬品を選択するための技術である安全性予測技術の開発を行い、我が国におけるゲノム創薬技術の向上を図る必要がある。
 さらに、このプロジェクトを通じて、個々の製薬企業が、日本国内はもとより世界の患者に質の高い医薬品を提供できるよう、研究開発を中心とする戦略的な事業展開に努めるとともに、国としても国内市場を世界に誇れる創薬環境の場を実現し、我が国における医薬品産業の国際競争力を強化し、産業発展の原動力であるイノベーションが次々と生み出されるような政策を講ずることが重要である。



事務事業名 身体機能解析・補助・代替機器開発研究経費
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規)
 近年におけるバイオテクノロジーやインフォマティクスの進展に伴い、生体機能を立体的、総合的に捉え、個々の要素技術を効率的に組み合わせ、ニーズから見たシーズの選択、組み合わせを行いシステム化するという新しい発想による機器開発が求められており、その研究開発は、国際的な競争下に晒されている。
 このような状況下で、医療機器産業の国際競争力強化、国民の健康増進の向上、安全・安心な医療機器の開発等の推進を図るため、身体機能の解析や補助、代替機能に焦点を置いた医療機器開発を推進するものである。
 本事業においては、国として研究開発を着実に推進する観点から、具体的なテーマを予め指定し、各研究開発分野のテーマ毎にプロジェクトリーダー(公的研究機関・大学・民間企業等から選定)を置き、医学・工学・薬学等の公的研究機関・大学・企業からなるグループによって目標の設定、着実な推進を図る。また、プロジェクトに参画する民間企業は公募による。このような体制を採ることによって、研究成果の社会・産業への迅速な還元を目指す。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
700 700

(3)問題分析
(現状分析及び問題点)
 医療機器産業においては頻繁に技術革新が起こっており、その結果として、絶え間ない既存製品の改良や新製品の開発を行うことが重要となっている。今後は先端医療機器分野の競争に勝ち抜くために、ますます研究開発の重要性が増すものと考えられる。
 また、医療機器の高度化に伴い、新規性の高い医療機器の開発を進めるためには、医療のみならず、機械、電気、物理、化学等化学工学分野各々の高度な統合が必要となっている。米国においては、最先端の最先端の工学的なシーズを応用し、現場のニーズにあった医療機器を開発するため、医師と工学系の知識を持った研究者が医療機関に常駐し、共同して医療機器を開発できるような環境整備(いわゆる医工連携)が進められている。加えて、これらの技術を集積し、製品化・商業化していくためには、先端的研究機関だけでなく、民間企業との連携、いわゆる産学連携が必要となってくる。

(4)事務事業の目標
 採択課題については厚生労働省が専門家等の意見を踏まえ指定する。また、専門家、行政官による中間・事後評価委員会を設置し中間・事後評価を行う。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 国民の保健医療水準の向上に貢献していくためには、最先端分野の医療機器の研究開発を進め、臨床現場へ迅速に導入することが重要であり、厚生労働省としては「より優れた」「より安全性の高い」我が国発の革新的医療機器の開発を通じて、保健医療水準の向上に貢献し、医療機器産業の国際競争力の強化を図るべく、有識者の意見を踏まえ、平成15年3月31日に「医療機器産業ビジョン」を策定したところ。本事業は、この「医療機器産業ビジョン」における研究開発の考え方にそったものであり、行政的、専門的・学術的な意義は大きいものである。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 生体機能を立体的・総合的に解析し、補助・代替する観点から、これらの技術の組み合わせを行い次のような機器開発を目指している。(1)身体機能の補助機器開発(2)身体内部機能の代替機器開発(3)身体機能の解析機器開発。これらについては、国として研究開発を着実に推進する観点から、具体的なテーマを予め指定し、各研究開発分野のテーマ毎にプロジェクトリーダー(公的研究機関・大学・民間企業等から選定)を置き、医学・工学・薬学等の公的研究機関・大学・企業からなるグループによって目標の設定、着実な推進を図る。また、プロジェクトに参画する民間企業は公募によることとしている。このような体制を採ることによって、研究成果の社会・産業への迅速な還元が図られると考えられる。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 未だ研究が開始されてないことから、達成度について評価することは困難。しかし、画期的な医療機器が開発された暁には、社会・経済への貢献は大であると考えられる。

(4)その他
 特になし。

(5)特記事項
 特になし。

3.総合評価
 本事業の構想段階において、医療機器産業の特性を踏まえ、研究対象の重点化、医工の連携、産学の連携等を適切に行っており、医療機器産業における国際的競争力の強化等の成果が期待される。


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