03/09/29 医療安全対策検討会議ヒヤリ・ハット事例検討作業部会第5回議事録            第5回ヒヤリ・ハット事例検討作業部会                        日時 平成15年9月29日(月)                           10:30〜                        場所 経済産業省別館944号室 ○事務局  会議に先立ちまして、傍聴の皆様にお知らせします。傍聴にあたりましては、すでに お配りしてある注意事項をお守りくださるようお願いいたします。 ○橋本作業部会長  それでは定刻になりましたので、ただいまから、第5回「ヒヤリ・ハット事例検討作 業部会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中をご出席いただ きましてありがとうございます。本日は17名の委員の出席をもちまして部会を開催いた します。土屋委員と吉澤委員が都合によりご欠席です。  それから、厚生労働省の人事異動に伴いまして、事務局に変更がありましたのでご紹 介をお願いいたします。 ○総務課長  この度、7月1日及び8月29日付の人事異動に伴って、当作業部会の事務局の構成が 一部変わりましたので、ここにご紹介させていただきます。  まず、医政局総務課医療安全推進室長の岩崎です。医薬食品局安全対策課長の平山で す。同じく医薬食品局安全対策課安全使用推進室長の俵木です。以上3名です。どうぞ 今後ともよろしくお願いいたします。 ○橋本作業部会長  よろしくお願いいたします。本日の議事に移ります。まず「医療安全対策ネットワー ク整備事業」の7回目になるわけですが、7回目の集計結果についてご説明いただきま す。それぞれの集計結果について、委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。 その後、「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例の収集、分析及び 情報提供)の実施について」の通知について、事務局からお話をいただきたいと思って おります。  それに先立って、事務局から資料の確認をお願いします。 ○事務局  お手元の資料を確認願います。まず、座席表、議事次第がございます。資料のほう は、資料1、「医療安全対策ネットワーク整備事業・第7回集計結果の概要について」、 1枚紙が1枚。資料2が、1と2に分かれておりまして、2部ございます。資料3が、 3−1から3−3まで、資料4が4−1から4−2まで。最後に参考資料が1部付いて おります。ご確認いただいて、欠落等ありましたら、お知らせいただきたいと思いま す。 ○橋本作業部会長  よろしいでしょうか。それでは医療安全対策ネットワーク整備事業の第7回目の集計 結果について進めてまいりたいと思います。前回同様に、全般コード化情報の分析をご 担当の武藤委員、重要事例情報の分析をご担当の嶋森委員、医薬品・医療用具等の情報 の分析については事務局から、それぞれ集計結果についてお伺いし、その後質疑応答を 行うことにしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それではまず武藤委員から、「第7回集計結果の全体概要」と「全般コード化情報の 分析」についてご説明をお願いいたします。 ○武藤委員  ご報告申し上げます。まず資料2−1をご覧ください。今回の「全般コード化情報の 収集状況」ですが、1番に書いてあるように、88施設から1万504件集まっております。 報告件数としては、施設数それから事例数ともに増えております。3カ月で1万件を超 えているということです。  「分析の方針」ですが、これはいつものとおりで、単純集計と、それから特に報告事 例の多い「処方・与薬」「ドレーン・チューブ」「療養上の世話」「医療機器」「輸血 」に関してはクロス集計を行っております。  資料2−2をご覧ください。5頁目、図1−2、これは全事例の単純集計で「発生曜 日」を見ております。ご覧のように、ウィークデーのほうが土・日よりも多いのです が、大体この格差が1.4倍ほどあります。ただ、前回この格差が1.6倍ですから、今回 ちょっとウィークデーと土・日の格差が少し縮まったかなという感じがしております。  次が6頁目、図1−3の「発生時間帯」です。これは全事例を見ていますが、発生時 間帯に関しては8〜11時台にピークがあります。大体こういうピークはあまり変わりま せん。  7頁目を見てください。図1−5−1の「患者の性別」です。これは全事例について 見ていますが、男性と女性で、男性が明らかに多いということがわかります。男性5,000 件に対して女性が3,800件、大体1.3倍くらいの格差です。男性・女性の格差で、男性が 多いということに、ずっといままで気がついていたのです。それで、今回少し詳しく分 析しました。その下の図の1−5−2の「患者の性別と年齢」を見てください。男性が 多いのが50代、60代、70代で、顕著に男女格差が出ております。  次の8頁をご覧ください。図1−5−3、これは参考資料ですが、ヒヤリ・ハット報 告は男性に多いのですが、実際の入院患者さんの数は、「患者調査」で見てみますと、 女性のほうが10%くらい多いのです。入院のパターンは大体女性患者のほうが多いので すが。そうすると、先ほどのヒヤリ・ハット事例が男性優位で、入院患者は女性が多い ということは、明らかに男性にヒヤリ・ハットが多いということになります。  どういった内容が多いかというと、11頁の図1−6−7です。3大ヒヤリ・ハットは 「処方・与薬」「転倒・転落」「ドレーン・チューブ」ですが、それをここでは60代に ついて見てみます。これを見ていただいても、「処方・与薬」は男性が多いですし、 「ドレーン・チューブ」も男性が多いです。「療養上の世話」、これは「転倒・転落」 ですが、これも明らかに男性が多い傾向が見てとれます。  ですから、ヒヤリ・ハットの性差分析というか、性の差による違いが、これはかなり はっきり出てくるのではないかと思いますので、もう少し分析を進めたいと思います。 実際どういう内容で、どうして男性に多いのかということは、ちょっとわからないです ね。  次は、14頁の図1−9で、これは全事例の「発見者」を見ていますが、「当事者本人 」「同職種者」がもちろん多いのですが、「患者本人」「家族付き添い」「他患者」、 この3件を合わせると800件にのぼって、やはり患者さんないしその家族が発見に加わ っているということで、今後もやはり患者参加型医療安全ということを考えるときに、 こうしたデータが重要だと思います。  15頁の図1−11。「職種経験年数」ですが、これは相変わらず0年がもちろんいちば ん多いということです。  次の16頁、図1−12でも、「部署配属年数」もやはり0年が多いということです。で すから、最初の「職種経験年数」「部署配属年数」ともにやはり1年目の教育が極めて 重要だということです。  17頁は、「発生要因」ですが、これも相変わらず、「確認」「観察」「判断」と「心 理的条件」「勤務状況」が上がってきております。  18頁、これは「影響度」を見ていますが、間違いが実施された、あるいは間違いは実 施されていないけれども、患者さんへの影響が大きいということを見ております。「間 違いが実施された」のが60%で多いのですが、「実施前に発見したけれども、患者への 影響は大きい」というのが85件ありました。  それからずっと飛びますが、27頁からは、「処方・与薬」「ドレーン・チューブ」 「転倒・転落」について個別で見ています。  27頁の図2−3は、処方・与薬の「発生時間帯」です。全体で見ると、8〜11時台に 多かったのですが、処方・与薬にばらしてみると、ピークが2つ出てきます。「8〜9 時台」と「18〜19時台」、これは前回から変わっていません。  30頁、図2−8。これは処方・与薬の発見者で見ると、「当事者本人」「同職種者」 で「同職種者」のほうが多いのですが、この2つで80%を占めています。 32頁の図2 −13です。処方・与薬の「発生内容」について見ますと、これも相変わらず、いちばん トップに上がってくるのは「無投薬」です。薬をあげていないということです。次が 「過剰投薬」、あと「与薬時間・日付間違い」「投与速度速すぎ」、あるいは「患者間 違い」「薬剤間違い」というのが上がってきています。  36頁は、「ドレーン・チューブ」に入ります。図3−3です。ドレーン・チューブの 「発生時間帯」は、処方・与薬で見られたピークが見られなくて、わりとずっとフラッ トな感じです。これは、後でもお話しますが、「自己抜去」が多いものですから、自己 抜去に関しては、特に時間を選ばないということです。  41頁で図3−13、ドレーン・チューブの「発生内容」ですが、これはもう先ほど申し 上げたように、「自己抜去」が圧倒的に多いということです。  飛んで49頁で、「医療機械」に移ります。図4−13で医療機械の「発生内容」に関し ては、「設定忘れ・電源の入れ忘れ」「条件設定間違い」「機器の不適切使用」「機器 の点検管理ミス」というものが上がってきています。  51頁、図4−15、医療機械の「影響度」を見ています。これも、「間違いが実施」が やはり多いのですが、「実施前発見・患者への影響は大きい」が7件あって、全体の 2%強を占めております。  次は「輸血」に移ります。52頁、図5−2です。輸血ヒヤリ・ハットの「発生曜日」 は、理由はわかりませんが、木曜日にちょっとギャップがあるというのが今回ありまし た。  60頁です。図5−15。輸血の「影響度」を見ると、やはり「実施前発見・患者への影 響は大きい」が6件ありました。  次の「転倒・転落」は「療養上の世話等」の内容です。61頁、図6−2です。これも 曜日の特に差がない。ウィークデー、週末の差がないということです。それから、図6 −3「発生時間帯」で見ると、「6〜7時台」、起床時にやや多いということです。あ とは、わりとフラットな感じです。  63頁、図6−7で、「患者の心身状態」を見ています。転倒・転落される方はやはり 「歩行障害」「下肢障害」が多いのですが、全く「障害なし」というのも405件ありま した。  以上ちょっとかいつまんで報告させていただきました。 ○橋本作業部会長  それでは重要事例情報の分析のほうに移りたいと思います。嶋森委員、お願いしま す。 ○嶋森委員  資料3−1をご覧ください。「総収集件数」は1,132件で、「有効件数」が1,105件で す。分析の方法は従来どおりです。公表するのが重要と考える事例について選定して、 タイトルやキーワードを付けています。  「分析対象事例の選定の考え方」も従来どおりで、ヒヤリ・ハット事例の具体的内容 や発生した要因、改善策が書かれている、情報がきちんと書かれている。それから、次 のいずれかに該当する事例ということで、「重大性」「複雑性」「教訓性」がある。そ れから、どこでも使える「汎用性」があるというふうなことでしております。  それから機器、モノについても、これを改善することで、ヒトの認知的負荷の軽減 や、記憶の混乱の誘発防止につながるようなものについては検討しております。  「事例のタイトル及びキーワードの設定」は次の頁の、従来どおりでこの表に従って 付けております。  「結果」のほうにいきたいと思います。重要事例の4頁、「全体の概要」です。先ほ ど申し上げたように、1,105件が有効な報告で、前回に比べて事例の発生の流れ等詳細 に記載している例も多く見られております。  報告が比較的多いのは従来どおりで、「転倒・転落」が19%、「チューブ・カテーテ ル類」については17%、「与薬(点滴・注射)」に関連して15%。「与薬(内服・外用 )」が13%。「調剤に関する事例」が7%ということで、これらを合わせて、やはり7 割弱ということで、依然として非常に多くなっております。  それから手技・処置区分については、この中で「伝達ミス」という、いわゆるコミュ ニケーションエラーというもの、情報の伝達がうまくいっていないためにエラーが起き るということが依然として見られております。  全体の傾向は前回までと大きく変わりませんが、これを考えるに、こういう点につい ての今後の対策ということを広く周知していく必要があるのではないかと思います。  具体的には、「チューブ・カテーテル類に関する事例」としては、やはり三方活栓の ゆるみとか固定ということで、外れてしまうというようなことが依然として見られま す。これはロック式にする等の資材の工夫が必要ではないかと思います。  術後のせん妄、不穏、薬剤の影響など、こういう事例が相変わらず見られておりまし て、不穏、せん妄状態で自己抜去という事例が、特にAライン等の抜去がありますし、 次の頁で、経管栄養中に胃管カテーテルを抜去するという、非常に危険な状況で抜去さ れる事例も見られております。  それから、チューブ類の抜去については、患者さんの病態とか精神状態も含めて、そ の必要性についてのアセスメントが必要ではないか。抜去されたら、そのまま翌日まで 置いてあったという事例もありますので、必要性が低いときには行わないという選択も 必要ではないかというふうに考えられます。  もしどうしても必要な場合、抑制の実施を検討する必要があると思います。前回も転 倒・転落のところで申し上げましたが、急性期において、医療上必要な場合に家族の同 意を得た抑制、もしくは抑制の一つと言われていますが、セデーションの方法なども検 討する必要があるのではないかと思います。セデーションをしているにもかかわらず抜 去された、抑制していたけれども抜去されたというようなことも見られています。  「与薬に関する事例」については、特に最近、インスリンの事例が多いのですが、イ ンスリンの場合は血糖に応じて投与するというふうな、通常と違うようなことが、ある わけですが、そういうときに、十分な引継ぎ等情報の伝達がきちっと行われないための ミスというようなことがあります。ですから、この場合、口頭指示の伝え方や、看護師 がメモで伝える場合に、情報の伝達の方法、コミュニケーションの方法をルール化して おく必要があります。できれば伝達の回数を少なくして、自己完結型といいますが、一 人の人が指示を受けてから実施するまでをやれるようなシステムの改善、ということも 検討する必要があるのではないかと思われます。  前回にもあったのですが、指示をされているにもかかわらず、指示を確認しないため にミスが起きる、思い込んでミスが起きるということが、相変わらず起きています。指 示出し・指示受け・確認のプロセスの徹底ということについて検討すると同時に、確認 しやすい仕組みということを考える必要があると思います。与薬以外についても、情報 伝達、コミュニケーションにかかわるエラーや思い込みとしてあるエラーが起きている 事例もたくさんありますので、今後検討する必要があると思います。  「輸血に関する事例」では、実際は事故の報告もありますが、今回の報告の中でも、 採血時に患者を特定していないために、別の患者さんから採血してしまうという事故が ありました。異型輸血は防止できたのですが、異型輸血が起こりそうな事例があったと いう報告がありました。  これは患者誤認の手術の事例もあるように、患者を特定する方法について十分検討す る必要があると思います。リストバンドをしているにもかかわらず誤認が起きるという 状況ですので、それを確認する方法についても検討しておく必要がありまあす。これは 別の事例でもいえますが、いつ、どこで、誰が、どういうふうに確認するかということ を決めておく必要がありますし、バーコードシステムのように、機械的に確認しないと 次に進まないという仕組みも検討する必要があると思います。  それから、この事例では、患者を確認する際のコミュニケーションエラーが起きてい ます。このような思い込みが起こらないような検討が必要ということ、患者に事前に、 輸血のために「今日採血します」と、きちっと言ってあれば、採血されていないのに輸 血するのはおかしいという話になるわけですから、そういうきちっとした説明も必要だ ろうと思います。  次の「転倒・転落に関する事例」のところですが、前回これをテーマとして、我々の 対策についての提言をとりまとめてみましたが、相変わらず多く報告されています。現 場において根本的な解決が非常に難しい問題であるということがうかがわれます。  これについても、睡眠薬の使用後に、起き上がって転倒したり、術後のせん妄、疾患 による意識レベルの低下などによる転倒・転落事例が報告されています。ですから、イ ンフォームドコンセントをきちっとするということをした上で、抑制もやむを得ないと いう考えも出ておりました。急性期における抑制と、長期や介護型の療養施設などでの 抑制とは、少し別に考えて検討する必要もあるのではないかという意見が委員会の中で は出ておりました。  転倒・転落に有効な対策を立案する場合には、療養環境を含めた詳細な記述と分析を 行うことが必要だと思われまして、これについてはいま研究されているということです ので、その結果を期待したいと考えております。それから転倒・転落そのものを予防す るだけではなく、転倒後の対応策というものも検討する必要があります。  これらの基本的な考えに基づいて、エビデンスを明らかにしていくということと、そ れに基づいた対策をもう少し深めて検討して、現場で使えるようなものを考えていくこ とが必要だろうということで、これは今後の大きな課題だろうと考えられます。  「その他注目すべき事例」としては、最近はクリニカルパスを使って医療が行われる ことが多くなってきていると思います。そういうことをしているにもかかわらず、この パスに載っているのですが、それを抜かしてしまうとか、化学療法も、プロトコルに 載っている約束処方に記載されているにもかかわらず、それを与薬していないというこ とがあります。これは、先にも言いましたが、標準化やプロトコルを決めても、それを どのように守っていくかという行動基準を決めていかないと、結局は抜けるということ になっています。ですから、次の頁になりますが、マニュアルやフォーマットを定める だけではなくて、標準化された手順を、どんなふうに実施するかという運用のマニュア ルが必要ではないかと考えられます。  リストバンドを使っても患者誤認が起きるというようなことも含めて、運用マニュア ルをきちっと作っていくことも考える必要があります。  又、以前から問題になっている隔壁開通を要する輸液バッグについてですが、開通を 促すため、バッグに手の跡をつけて、そこを押してくださいということを示した新しい バックが作られているようですが、開通せずに実施するという事例が報告されていま す。これは再三にわたって言っているわけですが、開通しないと点滴できないという仕 組みをどうしても導入しないといけないだろうと考えられます。  それから、療養環境の中での安全性を考える事例ですが、病棟内でたくさんの医療機 器を使ってしまったために、電気容量をオーバーして停電してしまったという事例があ りました。これは、病室の中で人工呼吸器や人工透析の機械を使っていた事例です。こ れらの機器の使用にあたっては、どの程度の容量の電気機器を使えるものかという事前 の確認と、電源が切れた場合のバックアップ体制についてのきちっとした基準を病院内 で決めておく必要があると思います。  他には、幼児が食事中にフォークを振り回してコンセントに刺してしまったという事 例がありました。これは幸いフォークがプラスチックで、感電等はなかったわけです が、非常に危ない事例です。この事例報告をしていただいた病院では、カバーを付ける という対策を立てたようです。しかし、カバーを付けると、それもまた小児の興味の対 象になるのではないかということで、小児科病棟については、例えば床に近い所とか、 手の届かない所にコンセントを作るなど、建物の構造自体、最初に建てるときから検討 する必要があるのではないかということが検討されました。非常に希な事例ですが、重 要な事例だと思われます。  もう一つ患者さんのプライバシーの問題ですが、電話で患者さんの家族と名乗る方か ら、「患者の状態を教えてほしい」ということで問い合わせがあって、つい信じてしま って説明することになってしまうという事例です。実際は特に何も問題はなかったので すが、今後、このような時に相手を特定する方法など、電話で情報を提供することにつ いては、検討する必要があるだろうと思います。  それから、実習中の看護学生がヒヤリ・ハットを起こすという事例が散見されて、こ れについても今後患者の情報の伝達方法と、受入れ体制などの検討が必要だと思いま す。  「まとめ」としては、先ほど申し上げたように、1,000件以上の事例が、重要事例と して報告されています。範囲はやはり同じ、「与薬関連」「転倒・転落」「チューブ抜 去」というので、これについての検討が今後とも必要だということです。  ヒヤリ・ハットの再発を防止するためには、組織のシステムに起因している可能性を 考慮して、要因分析を行う必要があると思います。当事者が自分が不注意で間違ったの ではないかと考えないで、ほかの人も間違う可能性もあるということを考えながら検討 していく必要があります。  それから、手順確認のルールを徹底するという対策がまだまだ報告されていますが、 先ほどから申し上げているように、ルールをつくっても注意するだけでは駄目で、ルー ルが守られない場合、なぜ遵守できないかということや、マニュアル自体が現場に合っ ているのかどうかということの見直しが必要だろうということが検討されました。  コミュニケーションエラーを防ぐ意味では、一人が責任をもってできる範囲をできる だけ多くして、できれば自己完結型にするということと、コミュニケーションや伝達の リスクを考えて、いかに伝達するかということを考える必要があるということです。  それから、患者の状態に影響を受ける、特に転倒・転落等については、患者さんの家 族や患者自身への理解を促すということ、協力を受けてやっていくということが必要だ と思われます。  「今後の課題」については、「分析事例集」の作成及び活用、分析のための教育ツー ルの開発が必要ではないかというふうに思われます。記述の方法について、状況がわか るような記述の仕方について、こんなふうな記述をしたほうがいいのではないかという ことを提示していく必要があります。確認不足や大丈夫だと思ったという、人間特性の 問題については、背景要因の分析を十分する必要があります。  又、改善策についての記述が不足しているものについては、できるだけ具体的に記述 していただけるようにお願いすることも必要です。  組織的な背景や要因を分析していない事例がたくさんありますから、こういうことに ついては、先ほどから言っているように、システムの要因を意識的に分析するようなこ とを推進していく必要があるのではないかと考えられます。 ○橋本作業部会長  いろいろ示唆に富む報告だったと思います。それでは最後に事務局のほうから、「医 薬品・医療用具・諸物品等の情報の分析」についてお願いします。 ○事務局  それでは事務局のほうから「第7回医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析」につい てご説明いたします。資料4−1をご覧ください。  まず事例の概要ですが、今回「医薬品・医療用具・諸物品等情報」として、「総事例 数」197件、「うち医薬品関連情報」として151件、これには後でご説明しますが、医療 用具の情報と思われる情報が2件含まれています。次に「医療用具関連情報」36件の報 告ですが、このうち3件ほどは諸物品情報というふうに考えております。最後に「諸物 品等関連情報」が10件、このうち1例については医療用具の関連情報であると考えてお ります。  続いて2番、「医薬品関連情報の要因別件数」ですが、今回いちばん多く報告されて いるのが「規格違い」が43件、28.5%です。続いて「勘違い」が28件で18.5%。「薬効 類似」が13件で8.6%。4番目が「剤形違い」が12件、7.9%ほど報告をいただいており ます。  前回のものと比較して、「その他」を除くと、「規格違い」「勘違い」「薬効類似」 「剤形違い」、頻度の多いものについては同様の報告をいただいております。  この医薬品関連情報の中で、「その他」ですが、医薬品の「分包機の不良」というも のが1件。情報の「指示違い」が1件。あるいは後でご紹介しますが、「同一剤形の間 違い」も1件報告いただいております。  先ほど申し上げた医薬品情報の中に、用具の情報が2件入っていますが、これについ ては判定不能ということで要因を分類しております。  次の頁で、「医療用具関連情報の要因別件数」ということで分類しております。いち ばん多いのが、「管理が不十分だった」が15件で、続いて「その他」が13件で36.1%。 3番目に「欠陥品・不良品だった」が2件報告いただいております。これら要因につい ても、前回と同様の頻度になっていると考えております。  4番目に「諸物品関連情報の要因別件数」をトータル10件、まとめております。  続いて資料4−2で、具体的に何例かご紹介させていただきます。1頁目は、「医薬 品情報」でいちばん多く報告されている「規格違い」の具体例として、事例番号、いち ばん左側の番号ですが、5番、7番あたりに、錠剤の「100mg錠」と「200mg錠」の違い というようなものが報告されております。このような規格違いというものがいちばん多 く報告されているところです。  次に多かった「勘違い」ですが、4頁目の26番、27番、28番と、このような事例を 「勘違い」という事例に分類しております。同様に7頁の51番の事例についても、外観 が似ているといった問題ではないけれども、間違えてしまったというものを「勘違い」 というような形で分類しております。  同じ7頁で、3番目に多かった「薬効類似」の例として、高脂血症用剤ですが、ここ に2例ほど薬効類似と同じような高脂血症用剤の中で取り違えというものが報告されて います。  4番目に多く報告されている「剤形違い」ですが、12頁、番号で84番〜88番、90番の ようなものですが、同じ外用剤で、「軟膏」と「クリーム」の取り間違え、「軟膏」と 「ローション」の取り間違え、そのような、名称が同じで剤形の違うようなものを取り 間違えたというような事例が報告されております。いちばん下の90番は、シナールの 「錠剤」と「顆粒」というものが剤形違いで報告されております。  その他何例か、検討班のほうでご検討いただいた中でご紹介させていただきたい事例 として、同じ7頁、53番の事例で、これはオーダリングによる間違えということです が、オーダリングで、医薬品の途中の名称で検索できてしまうもので、「アストミン」 のところを「あすと」と入れたところ、次に検索された「フェアストン」を選んでし まったという、オーダリング方法として不適切ではないかというようなご指摘をいただ いております。  また、先ほど「その他」の中で、「同一剤形」というものをご紹介いたしましたが、 8頁目の57番の事例で、「ビソルボンシロップ」と「ムコダインシロップ」、同じシロ ップ同士の取り間違えが報告されております。これを同一剤形のものとして、「その他 」に分類いたしました。  10頁の72番については、「勘違い」ということですが、これは医療従事者間の情報伝 達の問題という形で報告いただいております。  それと、73番で、これもオーダリングでの略称の作り方で回避できるのではないかと いうご指摘をいただいております。プレドニゾロンについて、「フレト」と「フレト1 」と、片方にだけ規格を略称に入れているような例です。  13頁、先ほど「重要事例」のほうでもご報告いただいているところですが、高カロリ ー輸液等のツインバックに関しての隔壁の未開通というような事例が3件ほど今回も報 告されております。  続いて22頁の134番の事例で、ピレタゾールという、これはセフメタゾンの後発品に なるわけですが、先発品と後発品の取り間違いというか、薬剤部と看護部との連絡の不 徹底というような事例で、実際セフメタゾンについて、後発品のピレタゾールが採用に なったにもかかわらず、看護部のほうに情報伝達が十分でなかったという事例です。  この事例について、本日ご欠席の土屋委員のほうからコメントをいただいております ので、ご紹介いたします。  このような後発品と先発品が混在したためのエラー報告が見られたということで、今 後医療機関において後発品の採用が増加していくだろうことを考慮すると、このような 事例の発生が今後危惧される。各医療機関において、切替え時には特に注意を払って、 医療機関の状況に合致した工夫をして対応することが必要と思われる。  例えば後発品の切替え時には、ある一定の期間、両者が併存するような場合があるの で、後発品の販売名に対する慣れがないことによる勘違いというようなものについて、 十分注意をする必要がある。できれば、ある時期に片方に切り替えることが望まれるわ けですが、経済的理由等で、ある一時期併存する場合には、使用頻度の高い病棟を限定 するとか、そのような工夫が必要だろう。特に薬剤部あるいは医師・看護師等の情報交 換というものが重要である、また、オーダリングシステムを採用している医療機関にお いては、重複処方の発生等に特に注意する必要がある、というご意見をいただいており ます。  医薬品については、最後の25頁で、このいちばん上の147番が「分包機の不備」とい う事例です。またいちばん下の150番、151番については、報告の内容が少ないわけです が、これについては医療用具の情報ということで、「対象外」と要因の所に記載してあ ります。  続いて26頁からは、「医療用具情報」です。この中に、総事例数36件ありますが、27 頁の7番、次の28頁の16番については、諸物品等の情報であるというふうに考えており ます。17番については医療用具そのものの問題ではないというふうにコメントをいただ いております。  医療用具の中で、26頁から説明させていただきます。最初の1番目の事例で、「欠陥 品・不良品だった」ということでご報告をいただいております。これはトライアルコン タクトレンズというもので、コンタクトレンズを患者さんが装着される前に、患者さん にいちばん適したものを選んでいただくために、何種類かのコンタクトレンズを試験的 に装着していただくようなものがあります。製造業者のほうから、1瓶に何種類かのタ イプのコンタクトレンズを医療機関に供給するわけですが、途中、販売業者のほうで、 これら1瓶に入っているものをもう少しわかりやすくするために、規格ごとにケースに 詰め替えたという事例です。コンタクトレンズを詰め替える際に、通常、洗浄してその 後保存、洗浄液で洗浄して保存液で保存するというような作業をするわけですが、この 途中の過程において、ミスがあったというもので、この事例については、当該品につい ては回収。  他の医療機関に対して、同じような操作をしたものについては、すべて調査をして問 題がなかったことを確認しております。今後このようなことがないように、企業につい て指導したところです。  次の2番については、企業のほうに同様の報告がありませんので、これ以上の情報を 得られない状況で、検討する報告がございません。  3番目の「故障していた」というものですが、これは、手術時のドリルの先端の部分 の破損が疑われたというものですが、これについても企業報告がなく、これ以上の情報 が得られない状況で、企業に対してこのような事例についての報告が一切上がっていな いところです。  5番目の事例ですが、これについてはドライバーでスクリュー等を把持して、それを 手術の補助者から術者に手渡して使うようなものですが、その際にスクリューが落ちて しまったのではないかという事例です。これについては、使用上の注意等の改訂を行っ て、十分に使い方について、医療機関のほうに情報提供をするようにというふうな指導 をしております。  次は27頁の8番から、管理が不十分だった可能性があるということで、何例かご報告 されております。例えば定期点検、あるいは保守点検等によって回避できるような事例 を何例か報告いただいております。特に10番の内視鏡ですが、内視鏡の先端カバーが紛 失していた可能性があるということで、装着方法、あるいは一度外して洗浄するような ものですが、洗浄時の注意あるいは装着方法について添付文書、取扱い説明書をわかり やすく改訂するようにしております。  28頁の15番の事例については、酸素センサーというものが、通常製造後、保管時間・ 環境、それから作動等の状況によって使用できる期間が左右されるものですが、それら について当然企業のほうから納品先に対して十分説明して販売することが重要である、 というご意見をいただいているので、これについては企業に対して、そのような指導を 行ってきたところです。  次に、29頁の22番、「管理が不十分だった」という事例ですが、これについては警報 の適切な設定が行われていない可能性があるということで、これらについても、取扱説 明書等で十分説明していくこととしております。  また同じ頁の26番で、一応「その他」に分類されていますが、臨床検査用の検査機器 で、「試薬ホルダーの不具合」ということで、これは機械が自動的に試薬を分注してい くものですが、これについて一部、試薬のホルダーの所に十分ではないもの、間違って 吸引するものがあるので、それについてはすべて改良して、注意喚起文書等を発送済み でございます。  最後、32頁に「諸物品情報」を10件ほど報告していただいております。そのうち2番 については「医療用具情報」であるというふうに考えております。  以上簡単ですがご報告させていただきました。 ○橋本作業部会長  いま、3つご報告をいただきました。これまでのご説明について、少し質疑応答をし たいと思います。それぞれかなり情報量があったので、あちこちに飛ぶと辛そうなの で、まず武藤委員からご報告いただいたものについて、いかがでしょうか。  今回は従来からいわれてきた、どうも男性が多いというのを少し踏み込んでご発表い ただいたわけですが、いかがでしょうか。 ○福永委員  今回報告の施設とか件数が非常に増えているのは喜ばしいことだと思うのですが、こ の83施設の中で、私は国立に勤めているわけですが、国立病院・療養所の割合がどのく らいか。というのは、4月から専任リスクマネージャーが全施設に配属されたわけで、 どのくらいか、もしわかっていれば教えてほしいのです。83施設の中で国立病院・療養 所の報告施設数というのは、どのくらいでしょうか。 ○橋本作業部会長  それは作業部会のレベルではわからないです。 ○武藤委員  施設コードを外してデコードしているものですから。 ○福永委員  わかりませんか。 ○武藤委員  データをもともとで管理している所だと、報告についてだけの集計はあるかもしれま せんが、いまここでわかるかどうかという問題はあると思いますが、あえてリンクさせ ていませんので、ちょっとわかりませんね。 ○福永委員  というのは、母集団で、例えば筋ジスなどはほとんど男性だけなわけです。ですか ら、国立のパーセントが多いと、例えば筋ジスの場合などは、男の人の件数が当然多く なるわけです。ですから、その母集団がどういうものになっているかということを ちょっとお聞きしたいと思ったのですが。 ○橋本作業部会長  そうですね。その他の事例も、例えばどこかの施設ではとても多いとかという事例は 過去にも言われているので、そういう意味での施設の偏差によるバイアスというのは、 あることは予想されますが、そこを分析するのはいまの段階ではちょっと無理のようで す。  そのほかいかがでしょうか。 ○山本委員  いまの集計のことで、これは前回との比較ですが、回数が多くなったので、前年との 比較をやっていただいたほうが傾向がはっきりわかるのではないかというような印象を もっているのです。  それと別件で、質問です。資料2−2の41頁で、「ドレーン・チューブ」の所で、 「接続外れ」というのが非常に多くて、私たち企業側もいろいろの対策を練っていると ころです。アメリカでは、接続が外れないようにルアロック構造にしているものが、大 体医療機関で9割くらい使われている。一方日本では、2割くらいだというようなこと を聞いているのです。業界の中の話では、現場でルアロックにすると非常に使いにくい からだというような話が出ているのですが、アメリカと日本で何でそんなに違うのかと いうことが、もしわかったら、教えていただければ大変ありがたいのですが。 ○橋本作業部会長  まず現場でそういう意見が出ているということについて、いかがでしょうか。 ○松月委員  ルアロックの接続部分が太くなるので、そこを身体にしっかり固定しようと思うと、 ルアロック部分で患者さんの皮膚を圧迫してしまうということがあるので、患者さんに 接触する部分をフラットにしていただくと、皮膚にめり込まないというのは1つあると 思います。確実なネジ込みをしないとルアロックでも外れるので、観察しなければなら ないということがあり、ルアロックにすれば完璧かと言われれば、患者はかなり動くの でそのようなことでもないという問題があります。歴史的に単純接続タイプの方が安い からということがあるように思いますが、今後は変わるのではないかと思います。 ○山本委員  完璧ではないにしても、かなりリスクは減るのですか。 ○松月委員  減ります。ルアロックが付いていないものだと、その上を絆創膏で止めたりといった ことを実際はやるわけです。それをしておいたために、ちょっと緩んで液が漏れても気 が付かないといったような違ったトラブルも出てくるわけです。やはり、抜けやすいの は当然で、ルアロックによって確実に抜けにくくなると思います。 ○山本委員  業界としても、全国調査といったことをやりたいと考えていますので、その際はご協 力お願いいたします。 ○橋本作業部会長  抜ける、抜けないということだけではなく、患者の皮膚にフラットに当たることは、 療養上の問題としては大切だと思います。その辺の工夫などは、多分アメリカではある のだろうと思いますから、併せてお願いいたします。 ○山路委員  60頁の輸血の影響度の結果について、ダントツに多いのが「間違いが実施された」と あります。まさか輸血ミスがそのまま実施されたということではないと思いますが、ど のようなことなのですか。 ○武藤委員  おそらく、確認時にすり抜け、次の段階で見つかったといったような、いくつかのス テップの中での一部で実施されたということであって、最終的に異型輸血が行われたわ けではないと思います。輸血のステップはかなり多段階にわたっているので、各ステッ プの一部の間違いの実施と考えています。 ○山路委員  部外者の我々がこれを読むと、そのまま輸血ミスが実施されたように思えるので、文 章を長々書くのではなく、もう少し表現に誤解のないような書き方をしていただければ と思います。 ○橋本作業部会長  「間違いが実施」というチェックボックスがあるので、輸血のところだけ変えること はコンピューター処理上、おそらく無理だと思います。もう1つ何か変数をフィルター でかけ、この部分だけ「間違いが実施」という意味合いをわかりやすくすることは可能 性としてあると思いますが、変量としてそのようなものが用意されているかどうかはわ かりません。このままだと、輸血が実施されたというのも含んではいるが、間違って輸 血が実施されたと読めます。確かに、輸血に関するインシデントが97例あって、そのう ちの67が間違いが実施されてしまったのであるならば、かなり大きい話になってしまい ますから、そうではないという説明が正しいのだと思います。それを弁別する方法が必 要ですが、まずインシデントは出てこない可能性があると思います。 ○増子委員  実際、患者に障害はないが、これは何らかの形で実施されてしまったということだっ たと思います。 ○橋本作業部会長  輸血はしたけれども、という意味ですか。 ○増子委員  例えば、刺入直後に見つけたといったことで、全量をやってしまったわけではないと 思いますが、この集計の仕方は、「やった」ということには間違いありません。このよ うなことはいろいろなところであると思います。 ○嶋森委員  その患者の場合も、新鮮凍結血漿だったのに全血輸血をやってしまったということで した。別に異型輸血をしてしまったわけではなく、実施はされたが実害はなかったとい う理解です。 ○武藤委員  括弧してそういったことを付ければ多少わかりやすいかと思います。どのような内容 か実施された詳細を調べてみます。 ○橋本作業部会長  内容別に実施の影響度を見ればいい話だと思います。異型輸血をされてそれほど影響 度がなければ出てくる可能性がありますが、普通はアクシデントに入ると思います。結 果から見た最初の分岐が違うかもしれません。 ○原田委員  処方・与薬に関して、現在のコード化では内服、点滴、注射などは全部一緒になって おります。32頁図2−12等の重要事例では、点滴・注射、内服・外用のように分類され ており、全般コード化では一緒になっているわけです。先般、1年分のデータを見せて いただいた際、いろいろなものがどうも混在している感じがいたしました。特に、処方 ・与薬は非常に数が多いだけに、実際何らかの手を打っていこうとしたときに、内服と 点滴・注射では随分違う要因がある気がします。今後もこのような形でまとめていって もいいかどうかの意見を伺いたいと思います。 ○武藤委員  賛成です。原因も違うので、内服、注射というカテゴリーに分けたほうがいいと思い ます。検討したいと思います。 ○原田委員  医療機器の関係で、48頁の「職種経験年数」「部署配属年数」を見ると、他の領域に 比べ、医療機器関係については2つのピークが出ているように思います。とにかく0年 目が多いのに比べ、4年目も出ており、ちょっと気になります。つまり、医療機器関係 については、知っておかなければならない知識が多いとか、新しい機器がどんどん出て くるといったことに関連しているのではないかと思われるためです。経験年数の分布が ちょっと変わっていることについて、何かご意見をお聞かせください。 ○武藤委員  それについては我々も気が付いており、医療機器の場合、経験年数や部署配属年数の 減衰解剖が変で、いつまで経っても慣れない傾向にあるようなのです。研修のやり方も 初年時研修ばかりではなく、中途の研修も必要ではないかということに気付かされてい ます。 ○橋本作業部会長  医療安全のキーワードの中に、教育と標準化があると思いますが、経験の少ない人た ちに対しては、安全、育成ということも含めた全般的な教育が必要であり、そのような やり方もあると思うのです。ただ、経験年数が多くても間違いが多い医療機器に関して は、業務の標準化がきちっとされていないことが大きな理由になっているという指摘が あります。業務の標準化とその個別の研修が必要になってくるかと思います。 ○松月委員  経験年数はあるが、そのような機械を使うのがとても久しぶりだったということもあ るかと思います。どのくらいの頻度で使っているかということは、かなりあると思いま す。私どものところでも、経験年数で比較しても出てこないことが多く、反対に、経験 年数が長かったり、昔使っていたという人は、自分がわかっていると思うので、聞くの は恥ずかしいこともあり、かえってヒヤリ・ハットの頻度が上がるのではないか、現場 で見ているとそんな気がいたします。 ○石川委員  いまのことに絡むのですが、経験年数ということもあるでしょうが、この調査の中で 私が知りたいと思っているのは「当事者」についてなのです。大体看護師になっている のですが、多分それぞれの施設にはさまざまなスタッフがいて、数によって事前のサポ ートがうまく出来ているところと、出来ていないところの差があるのではないかと思う のです。いまここに出ている80何施設の中で、臨床工学技師や放射線技師が何人いるか ということで変わってくるのではないかと思うのですが、それについては裏データなど で出てくるのでしょうか。 ○武藤委員  施設特性も含めて、この中では収集していないのです。我々としても、本当は施設特 性やMEの配置などに関して、人員配置も含めた形でやりたいとは思うのですが、この データの集め方ではできないのです。 ○橋本作業部会長  これまで7回やっている議論の中で、最初のうちから、隠れた施設要因がわからない という問題があり、その部分が危険要因としてあるならば抽出しなくてはならない、そ れがわかるようにしましょうという議論は合理的だと考えます。それを受け、事例につ いて分析あるいは収集事業そのものについて、施設特性を入れた形態にしようという動 きは議論としてはあったのです。いまどのようになっているかはわからないので、事務 局と話をしなければならないと思っています。手上げ方式によって、施設特性もある程 度入れた集団を分析することはできるといった議論はあったと思います。 ○目黒委員  臨床工学の当事者として、医療機器に関して述べると、特に人工呼吸器は取り扱うボ リュームなどいろいろなパラメーターが多いので、1年、2年といった年数によって慣 れてくるというものではなく、病棟が変わったため、呼吸器を目の前にしてわからなく なってしまうといったことではないかと思うのです。臨床工学部門のスタッフが足りて いて、常時医療機械のレクチャーや取扱いの講習をしている所としていない所とでは、 取扱いに関するミスに差が出てくるのではないかという感じはしています。 ○橋本作業部会長  人員の配置を待って解決するのが本来だと思いますが、それが待てない部分であるな らば、何らかの形で教育という体制をつくらなければいけないと思います。それには メーカーも協力した教育体制が考えられると思います。  61頁の6−3について、「療養上の世話」で朝6〜7時というのはどのようなことな のでしょうか。早朝の病院ではうろうろ動き回っている、特に男性患者が多いと思いま すが、そんなこととは関係ありますか。散歩している患者は結構多いと思います。 ○福永委員  多分、これは早朝トイレに行くなどといったケースだと思います。逆に伺いたいの は、男女性差の問題ですが、なぜ男はこんなにリスクが高いのでしょうか。「処方・与 薬」「チューブ・ドレーン」「転倒・転落」のすべてが男です。 ○松月委員  生来の性格構造が、女性は環境に馴染みやすいところがありますが、男性は我慢する ことが苦手なのかなと思います。 ○嶋森委員  私の経験では、男性は逆に社会性があって、医師や看護師の言ったことは一応聞くわ けです。女性の場合はちょっと変だなと思うと、例えば昨日聞いたことと違うと、おか しいときちっと言いますが、男性は言われたことに従うというか、逆に聞いては失礼だ と思っているところがありそうで、十分に聞かないのです。最近はわかりませんが、私 の現場の経験では、割と従ってくれたように思います。また、動けなくても助けを求め ないで自分で動いてしまうことが多く、本当は動いてもらっては困るのに動いてしまう といったところがありました。女性の場合は環境に馴染みやすいことと、比較的助けを きちっと求めてくれること、いつもと違うとちゃんと言うといったところがあると思い ます。男性の場合は、逆に社会性があるために医療者を尊重し、聞かないという印象が あります。 ○目黒委員  輸液ポンプなどを持って移動することがあるかどうかが1つあると思うのです。当施 設では点滴台のキャスターもかなりきれいに掃除しているので少なかったのですが、他 の施設ではキャスターが動かないための輸液ポンプの破損事故が多いというのです。 キャスターが変な動き方をすると患者様がよろけたりするので、原因を調べたら、やは りキャスターに髪の毛などが付いており、つまり床掃除まで絡んでくる部分があること に気付いたわけです。また、キャスターが4個付いているものと5個付いているものと では、安定性に差が出たりすることもあるかと思います。そのような部分管理がスムー ズに出来ている所と出来ていない所とでは、それほど大きなパーセンテージではないに しても、少しはあるのではないかと思います。 ○橋本作業部会長  そのようなベースラインはいろいろなところに影響すると思います。 ○嶋森委員  前回、やはりキャスターがちゃんと動かなくて倒れたという事例がありました。 ○橋本作業部会長  重要事例に移りたいと思いますのでご意見をお願いいたします。 ○松月委員  収集の仕方といったことではないのですが、いままで7回の検討をしてきましたが、 傾向としては同じようなものが繰り返されているように思います。次のステップに進ん だ方が良いと思います。薬に関する事故報告が多いことから、対策としては薬剤業務を チームで分割していますので、薬剤師に入ってもらうのがいちばんいいと思いますが、 なかなかそうはいきません。例えば、リスク・マネジャーの教育を始めたと同じように 点滴専門ナースの養成を始めるなどといったことなど、今後少し考えていただけると解 決に繋がるのではないかと思っております。 ○嶋森委員  私どもの班でもそのような議論がかなりあり、1つには薬剤師の人数を増やすことで 入ってもらい、直前まで薬剤師が準備したものを施行するといったことが考えられると 思います。抗がん剤などのがん化学療法などをやる一部のところや、ICU、ハイケア ユニットなどでは、その部署に特定して薬剤師がいるところが増えてきていると思いま す。多分、そのようなところは薬剤の誤薬は少ないと思うので、リスクの高いところに ついては、少なくとも薬剤師を配置することができると思います。また、かつて看護界 では機能別と言ってあまり好かれてはいなかったのですが、特定の仕事をする人に特化 し、技術を身に付けてもらい、内服、点滴も含めてやってもらう仕組みも病院ごとに考 えられていたので、そのようなシステムも検討する必要があるのではないかと思いま す。 ○松月委員  米国には点滴用専門ナースがいます。もちろん、国や背景が違うので何とも言えない のですが、これは認定領域の中で必要なのではないかということを感じました。 ○増子委員  いま認定看護師の話がありましたが、静脈注射も解禁になったこともあり、たまたま そのようなキャリアを積んだ人たちの研修の場にいることから、実際に注射を専門にす る看護師を認定するシステムができたらどうするかと言ったら、やはりやりたがらない です。アメリカでの話は、聞くところによると看護師ではなくテクニシャンであり、資 格のない人が特別の訓練を受けてやっているという状況で、現在の看護師が、しかもあ る程度キャリアを積んだ人の中でそれを専門にやってくれる人がいるかというと、いま の調査の中ではかなり否定的な意見が出ています。 ○佐野委員  資料3−1の最後の頁、「今後の課題」で、要因として、確認不足とか、あるいはと 思ったとか、思い込みだとか、といったヒューマン・エラー的な部分がいみじくも指摘 されています。実はそれに対する背景が十分に分析されていないという実情があるよう に思います。依然として不注意な人に、不注意で起こった事象に対し、さらにちゃんと 注意するようにと言うのは非常にナンセンスな話だと思うのです。システムとしての弱 点をきちっと抽出し、対応しなければならないと考えます。このようなことに対し、マ ニュアル通りにやらないなどといっていては、いつまで経っても直らないのではないか という気がしますので、このような点はむしろ重点的に対応すべきではないかと思いま す。 ○橋本作業部会長  そのためにどうしたらいいかということがあると思うのです。それぞれの施設で経験 されているとは思いますが、ヒヤリ・ハットの事例報告の書き方は3年で、洗練という か、わかりやすくなっているのでしょうか。その点がちょっと気になるのです。起こっ たことを時系列できちんと書くことが本当にできるトレーニングがされているかどう か、ときどき研修会でありますが、個々の医療者レベルまであるかどうかについては疑 問であり、まだ不十分なのではないかと思います。 ○嶋森委員  その点については前回も申し上げたと思います。いつ、どこで、誰が、何を、どうし たかも書けていない事例が多いのです。今回はきちっと書けている事例もいくつかあり ました。非常に疲れていた、イライラしていたといったような心理的な背景も書かれて いた事例が重要事例の中に2つほどありました。システムや要因の関係、他の患者のト ラブルなどが影響していると思われますが、なぜ疲れていたのか、なぜイライラしてい たのかについてきちっと書かれている事例はほとんどなかったのです。問題解決をする ために、現場看護の記録も含めてどのような書き方をすればいいのかという教育も必要 ではないかと考えます 。 ○橋本作業部会長  その点に関し、本を書かれている川村委員にご意見を伺いたいと思います。 ○川村委員  業務に流れのある仕事、つまり医師の指示に始まって連続する仕事では問題が起きる 前の状態も関連していますが、チューブ類の管理の事故はそうではないのです。看護業 務は多様で業務形態もさまざまであり、情報をあげてもらうときの書き方も焦点の当て 方も違うのです。そのようなことはなかなか当事者にはわからないので、領域別に、ど こに目を付けて書かなければならないかといった理想的な書き方のフォームを示すこと が必要かと思います。例えば注射などの与薬業務、機械操作類、世話業務でも、自力で 行動して転倒するのと看護師介助下とでは違うわけです。私はいま看護師は4種類ぐら いの形態の業務を行っているのではないかと思っています。そういった業務形態に応じ た情報の書き方の理想像、一種のモデル像のようなものを示していくことが1つあると 思います。  思い込みや大丈夫だと思ったといった確認不足でルールを守らないことが繰り返し起 こるわけですが、思い込んだら頭の中が入れ替わるように、ルールのほうに注意がいか なくなってしまうわけです。現場では、こうした茫洋として、しかしよく起こる解決の つきにくい問題が結構あるわけです。それに対し、どうして思い込んだのかという背景 による分析もしなければならないと思います。7回の情報を見ると、大体傾向も一緒で すし、問題も似ていますし、定量的・定性的にも要因は出尽くしていますで、いままで トライできなかった茫洋とした部分にテーマを当ててはどうかと思います。最近、新人 の事例を分析していると、新人の思い込みと中堅どころの思い込みには違いがあり、い ろいろな特徴がわかってきたのです。思い込んだからルールは守れない、思い込みの理 由を書きなさいというよりも、「思い込む」という事例を一般の重要事例と併せて集中 的に分析するため、今回のテーマという形にしてあげさせてはどうかと思うのです。解 決が難しかった部分を切り込むための情報を取っていくためには、思い込んだ事例に対 して、このようなことについて書いてくださいといった一歩進んだ情報をとり、次の分 析にかかっていかなければならないのではないかと考えています。 ○橋本作業部会長  後半の部分は難しいが重要なご指摘だと思います。 ○嶋森委員  コミュニケーション・エラーの研究で、それが起きた事例を集め、分析したとき、思 い込みをしたという要因を書いている事例と書いていない事例を比べてみると、思い込 みが起きている事例は、同時に看護師の勤務体制に問題があったり、要員管理の問題が あったりしています。また、ルールが明確でないこと、暗黙のルールのうちにやってい るので、Aの思い込みとBの思い込みとが違ってしまい、コミュニケーション・エラー が生じるという分析ができています。思い込みという人間特性が起こりやすい環境条件 というか、仕事の仕方に特徴があると考えられました。川村委員指摘のとおり、思い込 みだから仕方がないで終わらせることなく、そのような事例を集めて検討することも必 要だと思います。 ○三宅委員  思い込みの問題も含めて、確認の問題なども教育ということに全部括られそうな気が します。教育の大事な側面もたくさんあると思いますが、私はどのような環境にあって も、確認を間違えないようにする仕組みは「IT」だと思うのです。ITをいかに利用 し、確認作業や思い込みといったことを確実に防ぐか、薬剤の流れ、与薬の中でどこま できちんと応用できるか、持ち込めるのかといったことがあるのではないかと思いま す。国立医療センターの秋山先生がやられているようなことは、かなりそういったこと に対しての可能性を含んでいるような気がするので、むしろ具体的な研究をやることの ほうが大事なのではないかと考えます。川村委員指摘のように、ある程度のデータは集 まっているので、それを具体的にどう防ぐのかという対策を考えることのほうが大事な のではないかという気がいたします。 ○福永委員  確認不足についてですが、いま仕事をしている筋ジスの病棟では約1,000人以上の人 が呼吸器を付けているのです。呼吸器の使い方は昔と全然変わり、夜間だけ付ける、あ るいは風呂に行くとき外すといったように、いろいろな形で普通の生活の中で使ってお り、1つの病棟で大体半分の人は呼吸器を付けているわけです。しかし、看護師の数は あまり変わらず、非常にリスクが高いということになります。実は今年の夏、呼吸器だ けに絞ってワークショップを開いたのですが、その際大きな議論になったのが、よく重 大な事故に繋がる呼吸器のメインスイッチの入れ忘れなのです。例えば、メインスイッ チを切り、風呂に行ったり外出したりした後、メインスイッチをオンにするのを忘れて しまうというのです。  実際に事故が起こっているのでいろいろな議論がありましたが、結論としては、メイ ンスイッチは365日24時間切らないということでした。しかし、反対の意見からすると、 機種の保守、誰もいないのにバックがプカプカしている。これは、余程人間を信頼して いない病院ではないかという印象を来訪者は受けると思うわけです。私自身は切っても いいと思っていたのです。しかし、ワークショップが終わって数日して、うちでも風呂 に行った後、メインスイッチをオンにするのを忘れ、実際にモニターで脈が速くなって から忘れたことに気付いたということがあったのです。どんなにおかしくても現実には とんでもないことが起こるわけですから、筋ジス病棟ではメインスイッチは絶対切らな いことで合意しています。ただ、例えば1日2日外泊したときに、メインスイッチをそ のままオンにしておくのはいかにも阿呆な話だから、そのようなときはチェックなどを 置くが、原則的にはメインスイッチは切らないことで合意しています。  実際に事故は思いもよらない確認不足で起こるわけで、命に関わるようなときは阿呆 らしいことでもやっておかなければならないということでした。確認不足というのは、 いつまで経っても難しいことを実感している次第です。 ○橋本作業部会長  確かに、ITの利用などといった人間の特性に依存しない方法は、なるべく取り入れ ていかなければならないと思います。  報告が早く終わったので議論の時間をたっぷり取っていますが、医薬品や用具につい てもご意見を伺いたいと思います。 ○山路委員  資料3−1の医療器具に関連する重要事例の中で、「以前から隔壁開通を要する輸液 バックを開通せずに使用してしまうエラーの危険性」の話があります。これは構造的な 原因ではなく、注意してきちんと器具を操作していれば防げた事故ということで書かれ てあると思います。ただ、気になるのは、「今回はメーカーが改良した新しい製品での エラーが報告された」とあり、改良されてエラーが報告されていることになるわけで す。つまり、依然としてエラーが起きやすいような器具になっているのだとしたら、ど の製品でこのようなエラーが起きたのかを具体的に周知徹底したほうがいいのではない かと思うのです。  後半の部分に「引き続き、根本的なエラー防止策を各メーカーに検討していただく」 とありますが、これでは悠長ではないかと思います。現実にこうした事故が起きている のだから、これではメーカーが根本的なエラー防止策を出すまで防げないことになるよ うな気がします。そもそも、構造的な要因ではなく不注意で起きた事故だとすれば、 メーカーによって根本的なエラー防止策を検討するというのはどういうことなのかもよ くわからないので、説明をお願いしたいと思います。 ○嶋森委員  防止策について、以前松月委員が紹介されたように、2層のバックを縦割りにし、針 を刺したら自動的に開通することにでもならなければ、未開通による投与は根本的には 防げないと思います。そのような根本的な解決策をせずに、例えばバックの外に手の マークをつけて、ここを押しなさいといった注意喚起の改善しかできていないのです。 つまり、構造的に改善は行われていないという意味です。そこを改善しない限りはずっ と起こると思います。今までのシステムのように注意点を全部書き、最終的に開通した かどうかをチェックしてからやるといった、指差呼称の項目を付け、確実にやってから 実施すれば、事故は起こりにくくなるとは思います。しかし、それで完全に防止できる とは思わないという意味で書いたのです。 ○山路委員  まだ改善の余地があるということですか。 ○嶋森委員  大いにあります。基本的には全然変わっておりません。 ○橋本作業部会長  フールプールフになっていないということですか。 ○嶋森委員  注意を喚起するために、袋に注意書きをすることしか記していなくて、構造的には、 全く改善されていないと言っていいと思います。 ○山路委員  そうであるならば、メーカーの自主的な改善を待つのではなく、厚生労働省の役割で しょうが、現実にこのような危険があったことを周知徹底させるべきだと考えます。 ○嶋森委員  それは各製薬メーカーにそれぞれいっているはずですが、改善するまでには時間がか かるとか、構造承認が必要だとかがあるように聞いております。 ○三宅委員  開通しないと点滴が始まらないといった構造のことを嶋森委員が最後に言われました が、手の平を当てるような絵を描いても何にもならないわけです。押すわけですから バーンと内圧をかけ、内部に圧力がかかったら点滴のゴム栓がパンと開いて、そちらに 水が流れるようになるといったような工夫が必要だと思いました。 ○嶋森委員  それは私がこの班の班長になる前から、すでに重要事例の検討班で提案されているこ とです。 ○松月委員  前の議事録を見ればわかると思いますが、かなり前に、こんな方法でどうですかとい うのが出ていましたが、何ら改善はされていないようです。 ○橋本作業部会長  メーカーも努力しているとは思うのですが、技術的な問題があるのではないかという 気がしています。その点について伺ってみたいと思います。 ○大澤委員  私のほうで直接担当はしていないのですが、輸液の問題に関するワーキンググループ ができており、そちらでこの辺も含めて検討されていると聞いています。詳しいことは 事務局のほうがわかるかと思います。 ○石川委員  用具について、今回細かく見ました。傾向は確かに同じなのですが、医療用具業界と してはいままで何をしているかと言うと、回収の最終結果でことを変えること、「不具 合報告書」という制度によって各会社が対策を取り、いまのような話があると思うので す。今度はそれを少し横展開しなければならない、つまりA企業とB企業とが同じもの をつくっているならば、横展開に情報開示をしながら流していかなければならないだろ うということ、それをいま行っていること。3つ目はヒヤリ・ハットの事例を各業界に 流し、読んでもらい、もう1回分析のし直しをさせています。前回も述べたように、 ちょっと情報が足りないところがあり、困るところもあるのですが、それなりに何かで きないかを見ている、これが予防の1つだと思います。  今回、その中で非常に特色的に気が付いたことは、添付文書にこう書いてあるのでと か、説明書にはこのように書いてあるが・・・というのがあって、先生方や委員の方々 はご存じかと思いますが、添付文書制度がだいぶ浸透してきたのではないかということ です。企業が添付文書に書く内容についてはまだ問題があり、言葉や内容に関してはこ れからどんどん改善しなければいけないと考えています。これについても、業界はそれ ぞれの担当の学会の先生方と一緒に検討しようという動きをしています。そのような中 で、今回出てきたような形でいろいろな情報を検討することが横展開できることではな いか、いままでメーカーがそれぞれで自分だけでやろうとしていたのですが、それでは 駄目だろうという動きをしています。  そのような中で1つ気になったのは、添付文書を改訂すれば済むのかということで す。大体、専門性のある方が使うことを基本にものはつくっていたつもりなのですが、 専門性があるようでないということになってきてしまい、どこまで書かなければいけな いのかで、どんどん深みにはまってしまい、本来の意味での添付文書制度からずれてい くのではないかということがあります。もう1つ、今回の医療用具の事例ではMRとパ ラマウントのベッドの例がありました。磁性体とMRの基本的なことで、MRの添付文 書には磁性体を使っているから気を付けるようにとは書いてあるが、ベッドのほうには 書いていないというのがあるでしょうし、ベッドが医療用具かどうかという問題もあっ たりして、制度的には医療用具でないものまで添付文書の中に書き込めないこともある ので、どこまでをどうしたらいいかとなると、添付文書にも限度があるということにな るわけです。やはり、現場での作業、ルールづくりというのがないと、添付文書や取扱 説明書だけではとても防ぎ切れないものがあるのではないかということを、今回読んで いて感じました。 ○橋本作業部会長  確かに、添付文書だけではいろいろ限界があると思います。最後に言われたように、 使う側の医療機関でどのようにその情報を集約し、もう1つの安全ネットを張るかとい う問題があると思います。我々の放射線部分では、MRを使う際、放射線のほうでまと めて、危ないもの、大丈夫なものをしっかりつくって回しているようですが、そのよう なことが医療機関の中で努力されることが必要ではないかと思います。 ○原田委員  1点は前回もお願いしたのですが、医薬品・医療用具関係は大変件数が少ないことか ら、前期3カ月だけを比較すると何が出ているのかわからないので、最低1年のものも 是非付けていただきたいということです。もう1点は、医薬品情報発生要因が1要因に なっていますが、1要因でない場合もたくさんありますので、1つの要因にカテゴライ ズするのではなく、複数選択で入れていただきたいということをお願いしたいと思いま す。  医薬品、7頁53件目に「アストミンがフェアストン錠になっていた」とありますが、 オーダリングが問題であったということで、具体的には中綴りで検索をかけることが 「デフォルトになっていたのかどうか」が私としては興味があるところです。つまり、 誰がやっても自然に出てくるようになっていたのか、特殊な状況だったのか等々、オー ダリングシステムの状況がわからないとちょっと判断が難しいという点があります。具 体的な事例もさることながら、今後、特に医薬品関係はオーダリングシステムが原因で 何らかの事故が起こる可能性が大きいだけに、オーダリングシステムに関する情報も併 せて取得することを、是非ご検討いただきたいと思います。 ○橋本作業部会長  検討部会にも上げていただきご検討ください。インスリンの切替えがあったかと思い ますが、そのときの間違いがどうあったのかという、多分これでないと全国的なモニタ ーができないと思いますので、それぞれどうやったのか、もしくは間違いが結構起こっ たのかどうかについても調べたいところです。後発品が重複して病院にあるときの対策 については、具体的にどのような対策を取るかという問題の解決に関連すると思います が、そのこともうまくいったのかどうかも調べたいと思います。  医師からの報告が義務化されましたが、報告のルートも実際にどのような効果がある かという点もちょっと気になっているのです。政策が変わったときに、どのような効果 があるのか、あるいはないのかを注目して情報が集められればと思います。  残念ながら時間がないので質疑等はこれぐらいにして、次に「ネットワーク整備事業 の実施について」の通知について、事務局より説明をお願いいたします。 ○事務局  参考資料1は「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例の収集、分 析及び情報提供)の実施について」です。先般、8月28日に本日示しております参考資 料1の通知を各関係機関、関係省庁に出させていただいております。本文は1頁から6 頁に別紙として記載しています。今回の通知の変更点のみを説明いたします。  「記」にあるように、最大の変更点は「様式の変更」です。従来、「「医薬品・医療 用具・諸物品等情報」報告様式」「「重要事例情報」報告様式」「「全般コード化情報 」コード様式」の3つの報告様式で情報を集めておりました。今般、「医薬品・医療用 具・諸物品等情報」、「重要事例情報」を「「記述情報」報告様式」として統合してお ります。また、「全般コード化情報」のコード表の中身ですが、項目を増やす等、所要 の見直しを行い様式の変更をしております。こちらの新様式に則った情報の収集は平成 15年10月1日からの開始となります。実際のコード化、変わった情報等では、非常に分 厚くなるので、本文は厚生労働省のホームページに載せております。本通知の本文以外 に、別添1から別添7−2までの情報も、トップページのトピックス「医療安全対策に ついて」をクリックしていただくと、情報が入っているページに飛ぶようになってい ますのでご確認ください。 ○橋本作業部会長  情報分析していく際、カテゴリーの中で「その他」がいちばん多くなるということ は、これで解決されるのでしょうか。その他の分類がいちばん多くなるということは、 分類があまりよくない証拠だと思います。それが無理だということは、ある変量の中で 見ることができるものを見ていくといった工夫が必要なのかもしれません。この文書に ついては、皆さんのところへ郵送されていると思いますのでよろしくお願いいたしま す。  次回は数カ月後になりますが、多分そのころには形が見えているかもしれない第三者 機関について、いまの段階でできる範囲の説明をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  第三者機関については、現在、概算要求時点ではありますが若干説明いたします。医 療事故に関する情報の分析、提供の事業の実施の1項目として、第三者機関についての 補助金、1億5,500万余の要求をしております。医療事故の情報収集、分析、提供をし ようとしたときの事務局、あるいは実際に運営するための経費と、そのような調査をす るための専門家を養成するためといった2つの項目からなっております。具体的なもの については、今後の予算折衝の過程で細かく、ある程度は形になっていくだろうと思っ ております。 ○橋本作業部会長  取りあえず、お伝えするだけにしたいと思います。今日の議事に関して、ご意見があ れば伺います。いくつか問題が残されたと思っていますし、インシデントや起こってい ることの中身は、ある程度見えてきたというのが皆さんの印象だと思うので、次回はど うしたらいいのかについてもう少し明確な形でやっていくことが必要だと思います。1 つひとつの対策についてもかなり重要だと思いますが、今後はもう少し根本的な教育の 問題などについても議論していきたいと思います。事務局より次回の日程について連絡 をお願いいたします。 ○事務局  次回の日程については、委員の皆様方のご都合を調整した上、後日連絡させていただ きます。 ○橋本作業部会長  以上で閉会いたします。お忙しいところ、ありがとうございました。 照会先:医政局総務課医療安全推進室 担当者:永田充生 連絡先:(代表)03-5253-1111 内線2580