03/09/04 第25回社会保障審議会年金部会議事録              第25回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成15年9月4日 第25回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年9月4日(金) 10:00〜12:30 場所  :東海大学校友会館 「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大山委員、岡本委員、      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、矢野委員、山口委員、      山崎委員、若杉委員 ○ 高橋総務課長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第25回社会保障審議会年金部会を 開催いたします。  マスコミの方は、撮影はこれで終りになりますので、ご退場願います。                  (カメラ退場)  8月29日付で厚生労働省及び社会保険庁の人事異動がございましたので、議事に入り ます前に、新任の幹部の御紹介をさせていただきます。まず、局長の右側から紹介申し 上げます。  大臣官房審議官年金担当の渡邉でございます。  社会保険庁運営部長の薄井でございます。  社会保険業務センター所長の霜鳥でございます。 ○ 霜鳥社会保険業務センター所長  年金の支払いについては万全を期したいと思います。 ○ 高橋総務課長  それから、私の右手になりますが、資金管理課長の泉でございます。運用指導課長か らの異動でございます。  運用指導課長の松田でございます。  首席年金数理官の田村でございます。  社会保険庁運営部企画課長の中野でございます。  では、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のと おりであります。  資料1「年金制度改正に関する意見(目次案)」、資料2「年金制度改正に関する意 見(案)」でございます。参考資料として、前回までの資料として提出いたしました 「審議整理メモ」及び「8月20日の部会における議論を踏まえての再整理」をお配りを いたしております。  委員の出欠の状況でございますが、本日は大澤委員、渡辺委員につきましては、御都 合により御欠席とのことであります。御出席いただいた委員の方々は定数を超えており ますので、会議は成立いたしております。  では、以降の進行につきましては、部会長よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  やや、短期のインターバルで開催させていただいておりますが、お忙しいところ、大 変ありがとうございます。  本日は前回に引き続きまして、意見書の取りまとめに向けての議論を行いたいと思い ます。前回いくつか御議論がございまして、また、その後、メモ等で御議論いただいた 方もございまして、なるべくそれらを組み込むように、さらに、書き方についても意見 書のスタイルにするに当たってはわかりやすいように、それから全体の流れがよくわか るようにというような、皆様からいろいろいただきました御注意なり御意見を踏まえ て、私も部会長代理も加わり、たたき台になるものを事務局の方で作成し、今回いわば 原案に当たるものを提出いたしました。  これについて、私も昨日夜遅くに少し見直してみて、まだまだもう少し直す点なり、 書き加える点があるなという印象を持っておりまして、恐らく皆様方もさらに御意見が あると思いますので、本日はこのたたき台をもとにいたしまして議論をしていただきた いと思います。  なお、最後に申し上げるつもりでございますけれども、今回で25回目の会議でござい ますが、いろいろ議論されました論点につきましては、この間、かなりの時間をかけま して繰り返し議論をしてきた点もございます。意見が一致しない点は一致しない点とし て書くというようなことも踏まえて、それなりの時間はかけてきたつもりでございます し、特に新しい論点が出て、議論しなければいけないというようなことがない限りにお きまして、できれば、今日基本的な議論を全体で行いまして、次回最終的に意見書の取 りまとめに入るつもりでございます。そういう点も踏まえまして、皆様方の御協力をい ただければと思っております。  それでは、事務局の方から、資料1及び2に基づきまして、概要を御報告いただきま して、それについて、今日は時間を全部かけまして御議論いただきたいと思っておりま す。それでは、事務局から説明をお願いします。 ○ 高橋総務課長  それでは、私と年金課長から、この意見(案)について御説明申し上げます。朗読は いたしません。これを読みますと大変な時間がかかります。事前にお目通しいただいて いますので、内容について概略をかいつまんで御説明申し上げたいと思います。  まず、1ページからでございますが、冒頭に書いてありますのは、この部会における 審議経過、ここに掲げております意見だけということではありませんけれども、特に代 表的なものを挙げて、こういうものを踏まえて検討をやってきた、あるいは有識者調査 なども参考にしたということを述べております。  それから、次に「はじめに」でございます。  この「はじめに」のところは、今までの整理メモには全く出ていないパートでござい ますが、改正に向けて年金部会としての問題認識というものを書いております。最初 は、年金の高齢期の所得保障における重要性について述べています。  2番目の「○」でございますが、これは前回の改正について簡単に触れております。 その次に、残された課題は3つあるということを言っております。1つは、保険料凍結 解除、2つ目は、基礎年金国庫負担の2分の1への引上げ、3つ目は、女性と年金の問 題、「広くは」として、個人のライフコースの選択の多様化に対応できていない、と書 いてございますが、その3つでございます。  その次の「○」は、前回の宿題のほかに、さらに前回の改正以降に起きた新しい状況 変化を書いてございます。1つが、新人口推計による少子高齢化の一層の進展、もう一 つが、国民年金の未納者の一層の増加ということでございます。こういった前回の改正 の宿題、新しい状況、こういったものを踏まえて、問題を解決して年金改革をやること が急務だということを言っております。  その次は、年金改革を行うに当たって、どういうところから議論を始めたのかという ことでございますけれども、基本的な制度設計の基本、制度体系の基本的な見直し、そ こに立ち返って議論を始めたということを言っております。ただ、御承知のとおり、い ろいろな議論があって、結論の一致を見るには至らなかったということで、今後とも議 論の積み重ねが必要であるけれども、その結論が出るまで何もしないというわけにいか ないだろうということを述べております。  それから、一般的にこういった年金改革を進めるに当たっての政府に対する注文とい うことで、次世代育成支援、経済の回復、活性化、こういったものについて最大の努力 をするべきだということを言っております。  3ページからは、「年金改革の基本的な考え方」でございます。これは今までの整理 メモ、1回目と2回目のものを文章化をいたしたものであります。  まず、「年金改革の基本的な視点」ということで5点挙げております。(1)持続可能 な制度とする、(2)制度に対する信頼の確保、(3)社会の支え手を増やしていく、これは 少子高齢社会に向けての社会の支え手ということでございます。(4)個人のライフコー ス(生き方、働き方)に対しての中立的な制度とする、(5)他の社会保障制度や税制等 の諸制度との整合性を念頭に置くということでございます。  まず維持可能性ということについて述べておりますが、その信頼の確保のためにどう いう条件が必要かということを3ページの真ん中から下あたりに述べております。  まず、給付水準の問題としては、高齢期の生活の主柱としての給付水準の確保は必要 ではないか、併せて企業年金なり私的年金の改善もやっていかなければいけないという こと、それから、水準の話そのものというよりも、水準の変更の仕方は急激なものであ ってはいけないということを述べております。次に給付と負担の信頼性の確保のため に、給付と負担の在り方の見直しが必要だということを言っております。  4ページに入りますが、信頼の確保の4点目ということでございますけれども、今、 現下、足下で進行しております国民年金の未納・未加入問題、これも制度に対する信頼 を損ねていることで、根幹を揺るがしかねない重要問題だということで対応が必要だと いうことを言っております。次は、特に若い世代からの不安感なり不信感は年金制度に 向けられているということは事実であるので、まず、誤解や説明不足から来るものにつ いてはわかりやすく説明し、それから、制度の方としてもわかりやすいような情報を提 供し、把握しやすいようにしていくことが必要だということを述べております。  それから、視点の3つ目で〈支え手を増やす方策〉ということで、これは少子高齢化 の急速な進行の中で、これは一般論でございますけれども、社会の支え手を増やしてい かなければいけないということです。それとともに年金制度においても、社会の支え手 を増やすというようなことができる仕組みをできるだけ制度に組み込むことが必要だと いうことで、厚生年金の適用の在り方、在職老齢年金の在り方を見直すべきということ を言っております。  それから、もう一つの観点は、前回の宿題から残されております〈ライフコース(生 き方、働き方)の多様化への対応〉ということで、そういった視点からのアプローチも 必要だということを言っております。  5ページにまいります。視点の5番目ということで、〈社会保障制度や他の制度との 関連等総合的な視点〉ということを挙げております。この辺は前回の審議整理メモの2 番目のものとほぼそのまま踏襲いたしております。なお、ここで国民負担率について簡 単に触れておりますが、これは6月の社会保障審議会の意見の中でも、国民負担率につ きましては、相当丁寧に説明しておりますので、本部会からの報告書ではもういいだろ うということで省いております。  次に、「公的年金制度の体系について」でございます。これにつきましては、これま での体系、過去にもいろいろな議論があったということで最初に述べております。そし て、本部会における議論の焦点を5ページの下に書いております。現行制度に対して、 被用者か否かを問わず、報酬比例方式で一本化して税財源による補足的給付を組み合わ せる、こういったやり方、それから、基礎年金について社会保険方式にするか税方式に するか、こういったところで議論があったということです。  6ページ以下は、〈報酬比例年金への一本化〉ということで書いております。「○」 が3つの段落に分かれておりますけれども、最初の段落は現行制度の説明です。2つ目 の段落で、現行制度に対してこういう利点があるということで、報酬比例一本化への意 見がありますが、第3段落でそれに対する反論を書いております。  次に〈基礎年金の税方式化〉につきましては、最初の段落で、税方式の利点を挙げて おります。第2段落で、それに対する反論、これは今までの整理メモをそのまま書いて おります。  7ページにまいります。最初の「○」に「以上のように」と書いてございますが、報 酬比例年金プラス補足的給付の方式、基礎年金の税方式化については、それぞれの利点 を主張する意見があったものの、問題点の指摘も多く、またその導入に向けては様々な 制約があり、次の改正で選択肢になる状況に至っていないということでありますけれど も、今後とも議論を進めていくべきだということを書いております。  最初の「はじめに」に書きましたように、今何もしないで済むのか、やはりそういう わけにはいかないだろうということで、16年改正では可能な限りの見直しの努力は必要 だということ、それから特に国庫負担の引上げの問題、それから宿題となっています保 険料引上げ凍結の解除、女性と年金の問題などの解決も図るべきだということを言って おります。それから、「なお」書きで、基礎年金の仕組みについていくつかあった議論 を記載をいたしております。  8ページからは、2枚ほどかけまして、前回御説明し、また御議論ありました「世代 間別の給付と負担の比率の違いについて」述べております。これは前回の説明と議論の 概要をそのまま書いております  総論は、以上でございます。 ○ 木倉年金課長  続きまして、IIIとして個別的論点についてそれぞれ挙げております。  まず最初は「給付と負担の在り方」でございますが、〈給付水準〉につきましての基 本的な考え方をまず挙げております。高齢期の生活の主柱としての年金を終身にわたり 確実に保障していくことが役割だということで、今後ともその役割を果たしていかなけ ればいけないということですが、そのためにも現役世代の保険料負担が過大にならない ように配慮しながら見直しを図っていくことが必要であるわけですが、その場合におき ましても、その役割を果たせる一定の水準を確保することが必要だということを述べて おります。  次のページにまいりまして、その場合に、これについては、将来にわたり現状程度の 水準を維持すべきとの御意見があったこと、それから、物価のスライドを過去3年間凍 結してある分の物価下落分をすべて反映させた後の水準で今後の水準を検討すべきとい う御意見があったことを述べております。  次に〈保険料負担〉でございますけれども、これは6月に閣議決定された「経済財政 運営と構造改革に関する基本方針2003」におきましては、「保険料は引き上げざる を得ないが、将来の最終的な保険料については、国民負担率の上昇抑制と、将来の現役 世代の過重な負担の回避という視点を重視し、決定する。保険料の引上げは早期に行 う。」と述べられております。  その中で、少子高齢化が進む中で、最終的な保険料はできるだけ抑えていかなければ いけないわけですけれども、現在の単年度実質赤字になっているような状況等々を考え ますと、現在の保険料凍結は速やかに解除すべきと考えます。その際の具体的な引上げ の方法は、毎年小刻みにという御意見と、将来の世代のことを考えて早めに前倒しで引 き上げるべきという両方の御意見があったということを記しております。なお、この点 につきまして、企業活力維持、経済活性化のために安易に引き上げるべきでないという 御意見があったことを記しております。  次に保険料負担の上限の問題でございますけれども、これにつきましては、20%程度 が適当という御意見と、それは高過ぎる、あるいは税方式化との組み合わせて15%程度 の保険料率もあり得るというような話、あるいは現行を極力上回らない水準で長期間固 定すべきというような御意見があったことを記しております。  次のページにまいります。具体的な給付と負担の見直し方法についてでございます が、これまでは5年ごとに財政再計算を行い、人口推計等を踏まえて、給付も保険料も 両方見直しということでありましたが、その結果として、両方が不透明になり、不安に つながっている面もあるのではないかということを記しております。その上で、このよ うな世代間の負担の公平、現役世代の負担についての不安を解消するためには、この最 終的な保険料水準を法律上明示をして、負担の限度を明確に示すべきではないかという ことを記しております。その上で、年金を支える力、現役世代の保険料負担能力の動向 に応じて、給付水準が自動的に調整される保険料固定方式という仕組みを導入すること が適当であると述べております。  一方で、この点につきましては、保険料固定方式で負担は明示されるけれども、給付 水準が変わってしまう、わからないということで、若い世代の不安感を払拭できないの ではないかという御意見があったことを記しております。一番下の方で、〈マクロ経済 スライド〉についてでございます。まず、考え方として、保険料固定における給付水準 の自動的な調整の方法は、水準が急激に変わらない、あるいは現役の負担能力とのバラ ンスがとれたものとしていくということから、緩やかに調整をしていく、年金の伸びで ありますところの年金改定率(スライド率)の調整を基本とすることが適当ではないか ということを述べております。その場合に、これまでは年金の伸びは、被保険者一人当 たりの賃金の伸び率で給付水準を改定してきたけれども、この自動調整の具体的な方法 としましては、賃金や労働力人口といった社会全体の支える力(負担能力)の伸びに見 合うように年金改定率を調整するマクロ経済スライドが適当ではないかということを述 べております。なお、この点につきましても、少子化進行が続きますと、給付水準が低 下を続けて、年金の役割が損なわれるおそれがあるため、導入すべきでなく、年金も今 の水準を手取り賃金で見て、現状水準を維持すべきという御意見があったことを記して おります。  次に、スライド調整の場合にも具体的な方法としまして2通りあるということを記し ております。1つには実績準拠法、実際の労働力人口等の減少に応じて調整する手法が あります。ただ、その場合にも将来の世代にしわ寄せがより大きくならないように、実 績を踏まえながらも、平均余命の伸び等を加味したできるだけ早期の調整が望ましいと いうことを書いております。また、もう一方のやり方として、将来の見通しを踏まえ て、あらかじめ平均的に調整をしていく将来見通し平均化法で前倒しをすべきという御 意見があったことを記しております。  次のページでございます。給付の調整をする場合の下限の問題でございますが、ま ず、マクロ経済スライドの調整は、(1)一人当たり賃金や物価が上昇していくときに、 その上昇率の中から調整をしていくということ、(2)従来からの一人当たり賃金や物価 が下落する場合には、通常の賃金再評価、物価スライドでやるものだということを記し ております。その場合に、マクロ経済スライドの手法として、名目年金額下限型、すな わちスライド調整を行いましても、前年の名目年金額を下げることはしない。額は最低 限維持をするというやり方、それから、物価下限型ということで、スライド調整を行っ た場合に、物価上昇分は維持をして改定をするやり方の2通りあるということを記した 上で、現在の受給者の年金、裁定後の年金は物価スライドでございますので、物価下限 型では全く受給者に影響がないということになりますけれども、考え方としては、世代 間の公平ということから、全ての世代が痛みを分かち合うことが望ましいということ で、名目年金額下限型の方が望ましいのではないかということを記しております。な お、世代間の不公平をより解消するためには、下限を設けずに、名目年金額自体を減ら すことも検討すべきとの御意見を記しております。  次でございますが、基礎年金の給付水準でございます。基礎年金の水準につきまして も、1号の方の負担の可能性も含めて同様に調整していくことはやむを得ないというこ とを記しております。なお、これについても、基礎年金の水準は調整すべきでないとい う御意見があったことを記しております。  それから、スライド調整を行った結果としての給付水準の下限でございます。保険料 固定方式の中ですと、幅を持って変動することになるわけですが、年金の役割を果たし ていくためには給付水準調整にも一定の限度、給付水準の下限を設けるべきであろうと いうことを記しております。大きく下げ過ぎるような場合には総合的な見直しも必要と いう御意見があったことを記しております。  次に(3)でございますが、これは通常のスライド制(賃金再評価、物価スライド) の在り方について、特に足下の状況を踏まえた御議論があったことを記しております。 受給者の年金、裁定後の年金、現在は物価スライドでございますが、これにつきまして は、賃金、物価が共に下落している中で、現役の賃金の方がより大きく落ちているよう な状況が見られるわけでございますけれども、この点につきましては、支える側の賃金 が落ちて、年金は物価スライドだけで調整するということになりますと、現役世代の賃 金に対する給付額の割合が相対的に大きくなってしまうので、現役の賃金低下を踏まえ た調整すべきとの御意見、あるいはどちらか変動率の低い方に合わせてスライドをさせ ていくべきではないかという御意見があったということを記載しております。しかし、 その場合であっても、どちらか低い方だけでスライドしていくと、現役との格差がつき 過ぎるのではないかということで、バランスを踏まえるべきという御意見があったこ と、裁定後の年金にも可処分所得スライドを従来のように復活させるべきであるという 御意見があったことを記しております。  次のページでございますが、高額所得者に対する給付制限等の御意見について述べて おります。一定以上の所得がある方について、年金の給付制限をすべきという御意見も あるわけでございますけれども、これは社会保険方式の基本な考え方が損なわれ、拠出 意欲を損なうということで問題があるのではないかということでございます。これにつ きましては年金課税の見直しということで、現在の公的年金等控除の仕組みは、高齢者 は一様に税制上は優遇されており、給与所得がある方には、給与所得控除と併せて適用 されており、この控除の仕組みを見直して縮小していくべきではないか、その際に年金 だけでなくて、収入全体での適切な負担を求めていくべきではないかということでござ いまして、この見直しの水準については、給与所得控除の水準程度というような御意見 もあったことを記しております。なお、その際に、高齢者の場合には所得の格差が大き い、年金だけに頼っている方も多いということに配慮が必要ということも記しておりま す。それから、同様に非課税の問題となっておりますところの遺族年金・障害年金につ きましても、老齢年金と同様の見直しが必要という御意見があったことを記しておりま す。この課税の見直しによります税収につきましては、基礎年金国庫負担割合の2分の 1への引上げ財源とすべきという御意見、併せて次世代育成に充てるべきというものを 記しております。  次に積立金でございます。積立金につきましては、基本的な考え方として、先行世代 の保険料を積み立てておいて、運用益で将来更に高齢化が進行した場合におきましても 保険料水準を抑えていくということであることを基本的な考え方として記しております けれども、これにつきまして、早期に積立金取り崩し、保険料を抑制するという御議論 もあるわけでございますけれども、これは将来のピーク、その後の保険料の水準を抑え ていくことについてよく考える必要があり、一定程度の積立金は必要だということを記 しております。  ただ、その規模につきましては、「基本方針2003」におきましては、「その水準 は将来に向けて、年金の支払に支障のない程度まで抑制する。」とされているわけでご ざいまして、これにつきましては、長期の将来を見通して、将来世代の負担は一定にと どめつつも、必要な給付をしていける積立金の規模について十分な検討が必要であると いうことを記しております。この場合に、給付と負担の均衡を積立金の機能を踏まえて 見直すとしまして、現在のような将来のすべての期間にわたって恒久的に均衡を図って いく方法と、アメリカのやり方のように、一定の期間で均衡を図って、定期的にそれを 見直していくという方法と両方ございます。それを十分踏まえての検討が必要というこ とを記しております。次に財政再計算の経済前提等でございますが、この経済前提・人 口推計につきましては、前回御議論いただきました年金資金運用分科会で述べられてお りますような賃金・運用利回りの動向についてを基本として考えるべきである、あるい は人口については人口推計・中位推計を基本として考えるべきであるとともに、その際 には、厳しい見通しによる推計、改善した場合の推計も併せて参考表示していくことが 適当であるということを記しております。  次に国庫負担2分の1の問題でございますけれども、この2分の1の問題につきまし ては、将来へ向けての適切な給付水準の維持ということで不可欠なものであることを記 しております。今回改正で実現すべきであるということを記しております。また、国会 が約束した事項であって、国民の信頼を確保していくためにも実現すべきものというこ とを記しております。その財源について、消費税の引上げによるべきという御意見、年 金課税等の見直しによる税収を活用すべきという御意見、消費税は逆進性が強く不適当 との御意見、歳出の見直しにより対応すべきとの御意見があったことを記しておりま す。  ここまでが給付と負担の関係、積立金との関係でございますけれども、次に「支え手 を増やす方策等」の部分でございます。これは先ほどありましたような総論部分での考 え方をまず記した上で、年金制度におきましても、将来に向けて女性、高齢者等が活躍 しやすいような仕組み、あるいは支え手自身の年金保障を図れるような仕組みを考えて いかなければいけないと記した上で、さらに、次世代育成につきましても、新しい取組 方針等で、年金制度における支援策の検討も求めてられている状況であるということを 記しております。  各論といたしまして、まず短時間労働者に対する厚生年金の適用の問題を記しており ます。この適用の問題につきましては、多様な働き方に対応していく中立的なものと し、年金保障を充実させるというようなことで適用拡大を図っていくべきであるという ことが閣議決定等におきまして、繰り返し指摘をされているところです。この点につき ましては、就業調整問題の解決、事業主間の保険料負担の不均衡是正、均等処遇等の観 点からも基本的には適用拡大を行うべきであることを記しております。ただし、その際 には、適用拡大による雇用への影響、特定業種への影響、事務負担や保険料負担の増加 等に十分配慮して慎重に検討することが必要であるということを記しております。ま た、その場合にも、労働者、事業主の保険料負担の増大については、経過措置等一定の 配慮を行うべきとの意見があったことを記しております。さらに、5人未満の個人事業 所、任意適用業種への厚生年金の適用の在り方についても検討すべきであるとの意見が あったことを記しております。  次に適用する場合におきましての基準の考え方ですが、これにつきましては、従来の 厚生年金の考え方あるいは雇用保険の考え方から考慮すると、今回の適用拡大に当たっ ては、週の所定労働時間が一定以上の者に対して適用することが適当ではないかという ことを記しております。この一定時間以上という基準につきましては、週20時間以上と いう御意見があったこと、さらには20時間より短い方であっても、相当の賃金を得てい る方、例えば年間賃金65万円以上も併せて適用すべきであるとの意見があったことを記 しております。 具体的に適用する場合の給付と負担の設計でございますけれども、こ の在り方につきましては、短時間労働者の方は比較的低い賃金であることを考慮して、 応能負担の考え方の下では、今の標準報酬の下限は何らかの形で引き下げて適用するこ とが適当であるということを記しております。その場合に、1号被保険者との均衡を考 えるべきという御意見があったこと、一方で、厚生年金は応能負担であって、1号被保 険者と同等には考えられないという両方の御意見があったことを記しております。いず れにしても、給付につきましては、負担を軽減したものとするのであれば、例えば被扶 養配偶者の給付を行わないなど、一定の調整を行うべきであるのではないかということ を記しております。  次に「高齢者の就労促進・支給開始年齢」等でございますが、いわゆる在職老齢年 金、60歳台の在職中の老齢年金の支給の調整の仕組みでございますけれども、これにつ きましては、就労抑制的な面をより中立的にするべきではないかという御指摘があると いうことでございます。今後、60歳台前半の支給開始年齢が引き上げられ、2階の報酬 比例部分のみを受給する方が増えてきます。あるいは短時間労働者に厚生年金を適用し た場合には、比較的低い賃金の方にも調整の仕組みが適用されてしまうということを考 慮しますと、高齢者で働いている方の年金が一律に2割支給停止されている仕組みは廃 止することが適当だということを述べております。さらに、60歳台前半の老齢厚生年金 の受給者を調整なしに、65歳以後への繰下げ受給ができるような仕組みを取り入れるべ きではないかという御意見があったわけですが、これについては、年金なしでも生活で きる高賃金の方を優遇することになるのではないか等の観点から、慎重な検討が必要で はないかということを述べております。  支給開始年齢についてでございますが、これにつきましては、更なる見直しの御指摘 もあるわけでございますが、前々回、前回の改正によって現在引上げ途上にあるわけで ございまして、雇用情勢も厳しい中、雇用と年金の連携を考慮しつつ検討していくべき ものであり、当面見直しを行うべきではないということを述べております。  「次世代育成支援」でございますけれども、世代間扶養を基本とする年金制度として は、制度を持続可能なものとするために本質的に重要な問題として取り組んでいかなけ ればいけないわけでございますが、その場合にも、まず出産・育児等で不利になってい る面を解決することを基本とすべきではないかということを述べております。それにつ きまして、考えられる具体的な方法としては、現行の育児休業中の保険料免除期間の延 長、あるいは育休はとっていないけれども、勤務時間の短縮等の措置を受けながら就業 を継続されている方の年金保障が不利にならないように考えるというような方策がある のではないかということです。さらには、離職した方が再就職した場合に何らかの配慮 ができないか、あるいは育児期間中の第1号被保険者の方についても配慮ができないの かという御意見もあったことを記しております。一方で、この点につきましては、年金 制度の本来の趣旨と異なる目的に財源を流用すべきではないという慎重な御意見もある ことを記しております。さらに、次世代育成の一環としての教育資金貸付制度でござい ますが、これについては様々な意見があったということで、若い世代のメリット、少子 化の一因となっている教育費負担の軽減という観点から、貸付制度の意義がある、とい う御意見の一方で、他の貸付制度が存在しており、年金資金を年金以外に流用すべきで はないという意見、あるいはリスクの問題、特殊法人の整理合理化の問題等から慎重な 御意見もあったことを記しております。  次に「派遣労働者・失業者」についてですが、基本的には、登録型の派遣労働者の待 機期間や失業期間中の方でありましても、国民年金の適用はあるわけですが、そのとき に厚生年金の適用がないということで所得保障は不十分ではないかという指摘がござい ました。これにつきましては、待機期間や失業中にも厚生年金の任意加入の仕組みを設 けるべきではないかという御指摘がありましたけれども、待機期間中の方が求職中の失 業者、結果的に非労働力化する方との区別がなかなか難しいのではないかということで 慎重に検討すべきであるという御意見があったことを記しております。なお、派遣労働 者の方が待機のたびに第1号被保険者への変更手続をしなければいけないという点につ いて、簡素化を検討すべきであるとの御意見があったことを記しております。  次に「女性と年金」の問題でございます。女性と年金検討会以来の経緯を記させてい ただいた上で、次のページでございますが、女性と年金の問題は、個人単位と世帯単 位、応能負担と応能負担、公平性の確保といった社会保障制度の基本的な在り方に関わ るものでありまして、これらについての将来の展望を持った改革が行われることが必要 であるということを記しております。その上で、「ライフコース(生き方、働き方)」 の選択が多様になっていることへの対応、中立的な制度としていくこと、あるいは世帯 モデルを片働き世帯だけで見るのではなくて、共働き世帯、単身世帯、複数の世帯類型 で見ていくことが妥当であるという御意見があったことを記しております。  「第3号被保険者制度」につきまして、全体の方向性として、60年改正で、1階基礎 年金の部分は個人単位の給付とされたこと、2階部分は夫の名義のままとされていると いうことを記した上で、これについての不公平の指摘が出てきているという点を記して おります。  現行制度は、見ていただいたように、世帯の夫婦の賃金が同じであれば、お二人の保 険料負担も年金給付も同じになって、世帯で見れば公平性が保たれていますが、3号の 方が直接の保険料負担はなく、全体の応能負担になっていることについて、個人単位で 見ると、さらに給付と負担の公平を図る観点から見直すべきあるという御意見がござい ます。あるいは世帯単位で見た給付と負担の公平は維持しつつも、なるべく個人単位に 向けて進んでいくべきであるという意見があることを記しております。  本部会におきましても、こういった見直し案それぞれについて様々な観点から多様な 意見をお出しいただいているわけでございますけれども、全体につきましては、この3 号制度につきまして、今回の改正で何らかの方向性を示すべきであるという意見が多か ったということを記しております。  この場合に、検討していく場合の意見の違いの基本には、男女の雇用機会・賃金の格 差についての現状や将来見通しについての考え方の違いがあるという御意見があったこ とを記しております。また、この考え方の違いが、遺族年金の在り方、離婚時の年金分 割の在り方についても共通の観点の違いとしてあるのではないかということを記してお ります。  その観点の違いとして、3点を指摘しております。(1)として、現実に1,100万人を超 える3号の方が存在する中で、現実の男女の格差を踏まえて、制度変更は慎重に考える べきという考え方がございます。(2)は、制度創設時よりは男女格差は縮小しているの で、可能な見直しは速やかに行うとともに、さらに今後の状況を踏まえて、個人単位化 に向けて段階的に見直しを行っていく考え方でございます。さらに(3)として、この制 度が働き方の選択や就労に抑制的に働いているのであれば、見直しはできるだけ早く行 い、それによって男女格差等も是正していくべきであるという御意見があるということ でございます。次に、(1)の現状をしっかり踏まえて慎重に考えるべきである立場の場 合でも、少なくとも就業形態の多様化という中で、短時間労働者への適用拡大はやって いくべきではないか、それによって、第3号被保険者を縮小していくべきではないかと いう方向性は一致しているのではないかということを記しております。  その上で〈年金分割案〉ですが、これにつきましては、これまで制度創設時よりも格 差は縮小していく観点に立って、現行制度の世帯単位での給付と負担の均衡を踏まえな がら、できるだけ個人単位での設計に向けて整理をしていくという考え方から指摘をさ れております。すなわち夫婦共同して給付算定上負担したものとみなしまして、納付記 録を分割し、それに基づきそれぞれ基礎年金、厚生年金の給付を行うという考え方も現 段階の1つの現実的な案ではないかという御意見があったことを記しております。この 場合に、3号の方が、さらに実際に就労されれば、分割された納付記録に自らの納付記 録が追加され、年金保障は充実していくこと、この年金分割は、将来、男女格差なく働 ける社会が現実のものとなり、分割によらなくても、自らの就労の負担で給付を受けら れることが一般的になれば、それまでの過渡的なものとして位置付けられるものではな いかという意見があったことを記しております。なお、これにつきましては、この年金 権は将来のものであっても、財産権であって、十分な同意の仕組みが必要であるという 慎重な御意見、あるいは分割を認めることとした場合でも、実際には負担をしてなくて 基礎年金が支給されるという仕組みに変更がないのではないかという御意見をあったこ とを記しております。  次に基礎年金の受益に着目した一定の負担を求めるという〈負担調整案〉につきまし ては、現実に保険料を負担して給付を得るということでありまして、不公平感を是正す る上で現実的という御意見がございました。しかし、一方で厚生年金の応能負担の原則 を変更するのは不適当であるという御指摘、あるいは世帯の合計賃金が同じでも、片働 き世帯にだけ特別な負担を求めることになりますと、保険料が公平でなくなるのではな いかという御意見があったことを記しております。  さらに、現実に負担が困難であれば、ある程度基礎年金の給付を減額する〈給付調整 案〉も御指摘があったわけでございますけれども、これにつきましては、1号との均衡 からは適当だという意見の一方で、国民共通の基礎年金の在り方として適当でないとい う御意見があったことを記しております。  また、「なお」としまして、この3号制度の在り方は、基礎年金制度を見直すことと 関係していて、例えば税方式化を検討していく場合には、この問題はなくなる、あるい は報酬比例一本化についての検討をしていく場合には、無年金・低年金を防ぐ年金分割 案に意味があるという御指摘があったことを記しております。  最後に、この制度の見直しは、男女の在り方をどう考えるか、制度の在り方をどう考 えるかによって大きく変わってくるものでありますが、基本的には6月の社会保障審議 会の御意見、あるいは「基本方針2003」にありますように、生き方、働き方に中立的で あることが望ましく、男女が格差なく働ける社会が現実のものとなることを前提に、拠 出に応じた給付を受ける仕組みとなることが望ましいと記しております。このような観 点から、今回の改正において、将来を展望した見直しについて、何らかの方向性を示し て取り組むべきではないかという御意見が多かったことを記しております。  次に「遺族年金」でございます。遺族年金につきましても、多様な働き方へ対応すべ きという御指摘があるということでございますが、まず最初は、高齢期で遺族になられ た方の年金給付の問題でございまして、最初は、遺族厚生年金として、夫の老齢厚生年 金4分の3を選択した、あるいは自分自身の厚生年金と夫の厚生年金の2分の1を選択 した場合に、自分自身の保険料納付が給付に反映しないという御指摘があります。これ については、まず御自分の老齢厚生年金を受給を基本とし、さらに遺族となった場合と の差額を追加的に支給する仕組みとすべきであるということとしております。  次でございますが、片働きの場合で4分の3を選択された場合と、共働きの場合で2 分の1を選択された場合とで、公平でない場合があるということでございますが、これ に対応するものとして、この比率につきまして、例えば中間的な5分の3というような 比率を一律に適用することが望ましいのではないかという御意見があったわけでござい ますが、一方で、4分の3であっても遺族年金の額の低い方の給付額をさらに下げるこ とにならないか、あるいは2分の1であっても額の高い共働き世帯の年金額を上げるこ とにならないかについて、将来に向けてどう考えるのか、適当ではないのではないかと いうような御意見があって、これらについては、将来の男女の格差の問題も展望しなが ら、課題として検討していくべきではないかということを記しております。  一番最後には、年金分割を図られたり、男女格差がなくなれば、遺族年金は基本的に は必要なくなってくることが基本ではないかということを記しております。  若齢期の遺族の方、若齢期の妻についての問題でございますが、18歳未満のお子さん のいらっしゃる若齢期の妻については、就業等の制約も多いので必要ではないかという 御意見があり、お子さんのいらっしゃらない若齢期の方については、就労支援に重点を 置きながらの有期給付という形にするのが望ましいのではないかというような指摘があ り、それから、お子さんはいらっしゃらないけれども、中高齢期の妻については、雇用 条件等を考えると遺族年金の必要性があるのではないかという御指摘を書いておりま す。なお、お子さんのいらっしゃる若齢期、中高齢期の方についても、支給要件の男女 格差が残存する間は有期給付とするべきではないかという御指摘があるということを記 しております。  支給要件における男女差につきましても、現状から見てやむを得ない面があるという 御意見の一方で、直ちになくすべきという指摘もあったことを記しております。  死亡時の生計維持要件につきましては、高過ぎるという観点の中で、しかし、広く受 給権が発生するようなことも考慮して検討していくべきであるということも記しており ます。  一番下で、「離婚時の年金分割」の問題でございますけれども、年金の分割の方法と して、夫の名義であるけれども、受給権が発生した年金の金額そのものを分割するとい うやり方、それから受給権発生前の納付記録も含めて分けておくことによりまして、権 利そのものを分ける方法と2通りあるということの紹介をしております。この分割の有 無あるいは分割割合は夫婦の合意により決定をする原則、さらに合意が成り立たない場 合には、裁判によって決定するということもあり得るということを書いておりますが、 その場合につきましては、納付記録を分けておいて権利を分けるという財産分与の請求 権を構成することにつきまして、単純に納付記録だけを分けても、年金の受給権に直接 には結び付かないような場合もあるということで、事実としての保険料納付記録を分け ることの請求権の法的な整備ということをもう少し詰めていく必要がございます。  また、現在ほとんどが協議離婚という状況の中で、裁判実務上対応していけるかとい うことの体制整備等の問題もございますので、そのような検討が必要であるということ でございまして、まず、合意に基づく「年金受給権」の分割をまず導入し、さらに請求 が裁判でできることについても引き続き検討していくということが適当ではないかとい うことを記しております。  なお、受給権が発生した場合の実際の金額を夫名義のものであっても分けるというこ とにつきましては、今の年金法上の一身専属の受給権法規定につきまして見直しをし、 できる仕組みを併せて導入することも適当ではないかということを記しております。そ れから、分割は改正後の離婚に限るというようなことについての御指摘も記しておりま す。  一番下は、離婚の場合の年金分割あるいは3号期間についての年金分割だけでなく、 婚姻が継続されている場合の婚姻中の分割も認めるべきではないかという御意見があり ましたが、一方で、そのような分割はその必要性、今の夫婦別産制等との仕組みの整理 について問題も多いという御指摘があったことを記しております。  次に「障害年金」でございますが、これにつきましては、障害を持ちながらも働ける 方が増えている中で、障害基礎年金と自分が働いた結果としての老齢厚生年金の組み合 わせも考えるべきではないかという点の御指摘を記しております。  なお、加入していなかったり、保険料を拠出していなかった障害者に年金を支給する ことは社会保険方式の下では困難であり、福祉的措置で対応すべきであって、その検討 を進めるべきであるということを記しております。  「被用者年金の一元化」の問題でございますが、閣議決定を踏まえて検討を急ぐべき であることと、その際にも被用者年金の統合は早期に実施するべきである御意見があっ たことを記しております。  「企業年金」につきましては、審議整理メモにありました方向性あるいは意見につい て、分かれている点も含めてそれぞれ記しています。厚生年金基金制度、確定給付企業 年金制度、確定拠出年金制度それぞれについて審議メモに沿った記述をさせていただい ております。  国民年金の問題、公的年金制度全体の運営の問題として、重大な問題であります国民 年金保険料の納付率低下につきましては、徹底した対策をとっていくべきであるという ことを強く御指摘があったことを記しておりまして、そのときに厚生労働省においても 大臣を本部長とした取組を始めており、要因分析をし、新たな徴収対策を徹底して実施 する、あるいは国民の義務についての意識の徹底を図っていき、着実な収納対策を取り 組むべきだということを具体的な御指摘として挙げさせていただいております。それか ら、特に度重なる納付督励によっても義務を果たさない者に対しては、強制徴収という ことで、世代間連帯の下の納付義務の履行を求めていく仕組みをきちんと構築すべきで あるということを記しております。そのほか、税制の改正の面からも、未納者について は、国民年金保険料の社会保険料控除が当然のように行われないように、納付の証明を する書類の添付を義務付ける、あるいは個人年金等の適用を除外することも必要である ということを記しております。  それから、〈制度の理解を深めるための仕組み〉といたしまして、年金に関する情報 をできだけ幅広くわかりやすく提供していくべきであるということを記しております。 その中ではポイント制のような仕組みについても、実施上の留意点とともに検討すべき であるというようなことを挙げさせていただいています。  最後に、「福祉施設等」ということでございますけれども、厚生年金、国民年金の福 祉施設事業につきましては、新しいニーズを踏まえて速やかな見直しを行う必要がある ということを記しております。また、グリーンピア、住宅融資等につきましても、閣議 決定を踏まえて早期に廃止をすべきであるということを記しています。  長くなりましたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  概ね以上のような内容でございます。それで、これからこの意見のたたき台につきま して、それぞれ御意見いただいて、できるだけ皆さんの御意見は反映させるような努力 はしたいと考えております。  それでは、どこということは特にございませんけれども、これにつきまして改めて御 意見をいただきたいと思いますので、どうぞ、どなたからでも結構でございますから、 小島委員どうぞ。 ○ 小島委員  結構沢山あるのですけれども、細かなところはなるべく省いて、ポイントいくつかに ついて絞って、とりあえず今日は発言したいと思います。  2ページの「しかしながら、いくつかの課題も残された」ということで、1、2、3 点出されておりますけれども、この順番の問題について、ここで保険料引上げ凍結解除 が1番になっていますけれども、7ページでは、最大の課題は国庫負担の2分の1の引 き上げという表現になっておりますので、次の制度改正に向けては、この国庫負担2分 の1に引き上げるということをまず第一に挙げるべきだろうと思っております。そこの 順番は問題だと思っております。そこが1点であります。  それから、10ページの保険料の2つ目の「○」で、「現在の保険料引上げの凍結は速 やかに解除すべきである」という表現になっておりますけれども、これについて私は前 回発言をしましたけれども、保険料凍結の解除は国庫負担2分の1の引上げと同時であ るべきだということと、その際には保険料を一旦引き下げるという方向で前回の改正の ときに検討されたという経過を十分踏まえるべきだということをぜひ意見として入れて いただきたいと思っております。  次に、〈給付と負担の見直し方法〉のところに、「給付水準が自動的に調整される仕 組み(保険料固定方式)を導入することが適当である」と記されておりますけれども、 これについて、私としては反対の意見を持っておりますので、すべてのメンバーが、こ れでいいと言っているわけではありませんので、表現を工夫をしていただければと思い ます。  同じように、マクロ経済スライドの導入についても、「(マクロ経済スライド)とす ることが適当である」という表現になっておりますけれども、これについても、その下 でこれに対する反対の意見、私の意見が含まれておりますので、「適当である」という 表現というところを工夫をして「大勢を占めた」あるいは「意見が多かった」というよ うなところで工夫をしていただければと思っております。  その関係で言いますと、11ページの〈マクロ経済スライド〉の項目の上に、これに対 する反対の意見が出ておりますけれども、ここについては、「年金水準が裁定時まで分 からないという点で、若い世代の不信感は払拭できないとの意見があった」ということ なのですが、「さらに給付水準が大幅に引き下げられることになり、逆に不信感が高ま るおそれがある」という意見も私としては述べておりますので、そういうことも補強し ていただければと思います。  もう一つ、〈マクロ経済スライド〉のところですが、12ページの「なお」以下で私の 反対の意見が出ておりますけれども、「マクロ経済スライドは、少子化の進行で給付水 準が低下を続け、高齢期の生活を支える主柱としての年金の役割が損なわれるおそれが あるため」とありますが、「があり、特に中小企業労働者や女性の低い年金、障害年金 なども一律に低下する問題があり、導入すべきでない」というような補強をお願いでき ればというふうに思います。  それから、年金積立金の役割のところですが、これは前回の部会で発言したことであ りますけれども、積立金の役割については記載をされておりますけれども、積立金の運 用の在り方について記載が落ちていると思います。前回発言して、8月1日付で意見書 を出しておりますので、そこに記載されている積立金の市場運用のリスクの問題、やは り「積立金の安全運用に徹するべき」という趣旨での意見、あるいは項目といいます か、それをぜひ入れていただければと思います。  それと「支え手を増やす方策等」という項目であります。ここで言っていることにつ いて、特段異論があるわけではありませんけれども、どうも、この流れを見てみます と、支え手を増やす方策が必要だということで、「短時間労働者に対する厚生年金の適 用」ということで、パート等への適用拡大ということにすぐなるわけでありますので、 そうすると、どうもパートへの適用拡大というのは、保険料を取りやすいところから取 るというようなことにとられかねないということもあります。ここでは、私がこれまで 言っているのは、就労形態がどういう形態であれ、雇用労働者としては社会保険に原則 加入するというのが基本であり、そういう視点から見て、現在の社会保険あるいは厚生 年金への適用の在り方、これを見直す必要がある、そういう視点からパート等への適用 拡大という表現、そういう流れでぜひ文章を整理していただければと思います。  それと少し細かなところで、短時間労働者に対する厚生年金の適用の問題で、これも 私も、5人未満の事業所についても適用を図るべきだという発言をしました。ここでは 「厚生年金の適用の在り方」となっていますが、「適用を図ることについての検討」と いう意見を言っていたつもりです。そういう関係で、これは意見書の中には出していた のですが、個人事業所の事務の簡素化を図るためにも社会保険事務組合という新しい方 式というか、そういうものが必要ではないかと思いますので、その検討についても付け 加えていただければと思います。  それから、「女性と年金」に関わるところ、特に第3号被保険者の見直しについて は、〈年金分割案〉について、「3号に限定された年金分割案では、個人レベルでの負 担と給付との関係という中では不公平感がさらに高まるおそれがあり、理解を得るのは 難しいのではないか」という意見をぜひ入れておいていただきたいと思います。  あとは「障害年金」のところの無年金障害者の問題です。これも私意見書の中では、 福祉的措置と基礎年金の国庫負担相当分を合わせ技で対応すべきではないかという意見 を述べておりますので、そのこともぜひ記載をお願いできればと思います。  最後に、国民年金の保険料徴収の問題で、33ページの「このほかにも、税制の面で」 というところです。ここについて、自営業者等で申告納税するときに国民年金の保険料 の納付証明を添付するというのは当然必要だと思います。けれども、個人年金の保険料 控除を認めないというのは少し別問題ではないかと思いますので、この問題については 慎重にすべきであるということを意見として付け加えたいと思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。なるべく今の御意見を取り入れる方向でお願いします。順 番の入れ替えですとか、マクロ経済スライドで、後に名目下限ですとか、そういう話が 出てきますから、今の御意見の中で下限がないという発想では必ずしもないことは、こ の中でも触れてあるとは思っております。  それでは、矢野委員どうぞ。 ○ 矢野委員  大小取り混ぜていろいろ申し上げます。ページを追って申し上げたいと思うのです が、まず、1ページに平成12年改正時に年収2割程度にした理由に「ヨーロッパ諸国 並み」ということが書かれているのですが、そういう理由づけはなかったのではないか と思います。そこはチェックしていただきたいと思います。  2ページの「○」の2つ目で、「高齢期の生活の主柱として」という言葉があります が、これまでの年金部会であまり使われてこなかった表現でございまして、年金部会の コンセンサスにはなっていないと思います。ですからむしろ「主柱」という言葉ではな くて、「基本的な部分」という表現にした方がいいのではないかと思います。ほかでも 何カ所か出てきますので、同じような考え方でまとめてはどうかと思います。  また、「経済の回復、活性化が不可欠であり」という表現がありますが、 まさにこ のとおりでありまして、これは賛成であります。この表現を3ページの「年金改革の基 本的な視点」の中にも繰り返しになりますが、入れたらどうかと思います。例えば3ペ ージの一番上の「○」の(1)で、例えば「経済を活性化させる持続可能な制度とする」 とか、(2)で「給付と負担のバランスを見直して、制度に対する信頼を確保する」とい うところで、もう一度繰り返してはどうかと思います。  それから、3ページの一番下の「・」の2つ目で、世代間の給付と負担の不公平につ いて、一方的に問題ではないかのような記述になっておりますが、少し踏み込みが足り ないと思っております。ここでは見直しというのではなくて、「抜本的な改革」という 言葉が適当ではないかと思います。  それから、社会保障審議会の意見書がありますが、その中の表現なども取り入れたら いいと思います。メモしてきましたので読んでみますと、3ページ一番下の「また、人 口、社会経済の・・・」というフレーズの後に続けて、「今後、急激な人口変動に伴う 負担の急激な上昇をできるだけ幅広い世代により支え合うとともに、生涯を通じた負担 の平準化を図るという観点から、保険料や税について、高齢者世代も含めたあらゆる世 代が能力に応じて広く公平に負担を分かち合う方向で努力する必要がある。」という趣 旨を繰り返す必要があると思います。ここの部分は全体について文章の見直しをしたら いいのではないかと思っております。  未納未加入問題について、最初の「・」で、「徹底した対応を図るべきである」とあ りますが、それは大変結構なことですが、具体的な内容が書かれていない。32ページ以 下に運営面のことが書かれておりますが、それ以外に具体的に何を指しているのかはっ きりしないという問題がある。制度に対する誤解や説明不足を説くことと、負担した保 険料や将来の年金給付の情報を提供するだけでは、徹底した対応と言えないと思いま す。やはり抜本的に見直しをすることが必要であって、その上で情報提供などの充実が 必要になってくるという順序ではないかと思います。それから、徴収の強化策として、 私どもの意見として言ったもので、あまり論議を呼んでおりませんが、まず法律どおり の滞納処分の実施を行うことです。これはこの文章の中にもあらわれています。そのほ か、例えば国民健康保険やパスポートや運転免許証の取得更新時の納付実績の提出義務 付けとか、保険料徴収と税との一体徴収の体制といったようなことによって事務の効率 を目指すべきである、こういう主張をしてきたわけでありますので、意見書の中にも取 り上げていただきたい。最終的にどういう方法が一番いいのかということは今後の論議 を待つにしても、意見として申し上げたつもりであります。  それから、〈社会保障制度や他の制度との関連等総合的な視点〉については、前の方 に取り上げた点は大変前進であると思っておりますが、この中で国民負担率について は、私どもは一貫して50%以下に押さえるべきということを述べておりますので、その 意見についてはここに触れてほしいと思います。先ほどの御説明で社会保障審議会で詳 しく論議されているのでここでは書かないというお話がありましたが、大事な点は書い ておくべきだと思います。それから、年金負担の上昇を押さえるべきということであり ますが、強制的負担と個々人の選択に委ねられる負担というのは同列に論ずべきではな いと私どもは思っております。「なお」書きの部分について、文章として「重くなりか ねない」とありますが、そういう意見があったということを書いた上で、「しかし、強 制的負担と個々人の選択に委ねられる負担を同列に論ずべきでない、という意見もあっ た」というように触れていただく必要があると思います。  7ページですが、「今後とも議論を進めていくべきである」という非常にあいまいな 表現になっている。もっと将来の方向性と検討スケジュールについての言及をすべきだ と思います。  8ページですが、ここは非常に重要な点で、「数値自体に大きな意味があるわけでは ない」と片づけているが、制度に対する国民の不信が非常に強く言われている中で、こ のような説明で国民の理解を得られるのか、国民の理解と大きくかけ離れた表現になっ ているのではないかと思います。淡々としてこのように言うやり方もあるかもしれませ んが、やはり年金部会の国民に対するメッセージとしては不十分だと思います。不信を 取り除くために部会としても反省すべきことを共通認識すべきだと思います。例えば 「厚生労働省が行ったいずれの比較を見ても、後世代ほど負担に対する給付の比率が小 さくなるということに変わりはなく、抜本的な見直しが必要であると考えられる」とい ったようなまとめ方にすべきではないかと思います。  10ページにまいりますが、〈保険料負担〉のところで、「現在の保険料引上げの凍結 は速やかに解除すべきである」と書いてある。これは前回も申し上げましたが、前回の 改正時に「凍結解除と基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げの時期は同じとす ることが基本である」という大臣の国会答弁もあるわけでありまして、その趣旨を盛り 込んでここに書き込むべきだと思います。例えば「保険料引上げの凍結解除は平成11年 改正の際の国会答弁等も踏まえて、国庫負担割合の引上げと時期は同じにすべきである 」という意見を盛り込んでいただきたい。  それから、このページの最後で、ここでもヨーロッパ諸国との比較が出ているのです が、各国における賃金水準の相違があることから、保険料率の高低だけで論議すること は適切ではないと思っております。ちなみに国際競争力の観点から言いますと、ヨーロ ッパの企業では労働コストのより低い地域への移転で全体的に競争力をつける動きがあ って、高い失業率に悩む結果となって、保険料率の引下げに努力をしていると聞きます が、一方、我が国がどんどんと保険料が上がるというようなことではコスト競争力を悪 化させて、経済の活力をそぐことになって、それは妥当ではないという意見も反映させ てほしいと思います。このページの最後の行に、「長期間固定」とありますが、国民に 対する丁寧な説明をする観点からいたしますと、20%とか15%というだけではなくて、 「現行の保険料率13.58%を極力上回らない水準で固定すべきである」という意見も書 き込むべきであります。また、国民にわかりやすく説明する観点から、現行を極力上回 らないというだけでなく、現行、すなわち「13.58%」という保険料率をここに書き込 む必要があると思います。  11ページで、2つ目の「○」で、「最終的な保険料水準を法律上も明示し」とありま すが、国庫負担率をはっきりさせないままに最終的な保険料率だけを法定させるという ことになりますと、これは国民の安心感にはつながらないと思います。私どもとして は、「給付の抑制、基礎年金の税方式化等の抜本改革の道筋とともに、負担の限度を明 確に示すべきである」と書き込むべきではないかと思っております。その下に「保険料 固定方式は、努力すれば」云々とありますが、努力すればという意味がよくわかりませ ん。誰が何の努力をするのかわからない。はっきりしないのであれば、書かない方が良 いと思います。  最後の〈マクロ経済スライド〉ですが、私どもはマクロスライド方式のような方法を 導入する方法論を論じる前に、既裁定者も含めて給付水準を抑制することが先決である と思っております。その上でマクロスライド調整の仕組みを組み込んでいったらいいの ではないかと思います。  それから12ページで「(実績準拠法)が、将来予測の変動に左右されない点でより望 ましい」とありますが、その部分はこの部会での一致した意見にはなってないのではな いか、異論が出ていると思います。少し表現について検討していただきたいと思いま す。  次の13ページですが、「年金改定率の下限について、名目年金額下限型と物価下限型 の二つの方法が考えられる」とありますが、この表現を「名目年金額下限型と物価下限 型、さらには下限を設けない方法と三つの方法がある」と書いて後につなげるべきでは ないかと思います。したがって、そういう点から言いますと、「名目年金額下限の方が 望ましい」といった表現についても、もう少し工夫が必要だと思います。  14ページですが、「給付水準の調整には一定の限度を設けるべきである」と書かれて ありますけれども、負担と給付のバランスをとって、持続可能な制度としていくために は、「給付水準には下限を設けるべきではない」という意見もあったということも盛り 込んでいただきたいと思います。  15ページですが、「社会保障制度として問題がある」というように断定するのは少し 言い過ぎなのではないかと思います。「という意見があった」という表現が適切ではな いでしょうか。  〈年金課税〉の文章に盛り込んでいただきたい1つのフレーズがあるのですが、それ は「拠出時、運用時非課税、給付時課税の原則を徹底していくべきである」という表現 を思想として織り込んでいただきたい。年金課税というと幅広く、公的年金、私的年金 もありますので、こういうような表現がよろしいのではないかと思います。  それから、18ページの「短時間労働者に対する厚生年金の適用」問題ですが、「5人 未満の個人事業所」についての記述があります。これは私どもが主張した点なのです が、順序として「厚生年金の適用の在り方をまず検討すべきだ」ということです。ま た、短時間労働者についての検討を行う場合には慎重な検討が必要でありまして、「厚 生年金の適用拡大を行うべきである」と言い切っておりますが、そう言い切ることはで きないのではないでしょうか。長い目で見た本来の在り方と当面の在り方と少し混同し た表現になっているのではないかと思います。結局、私どもが申し上げてきた意見です が、「取りやすいところから取るためにやるべきではなくて、その前提として、給付抑 制と負担増の抑制、基礎年金の間接税方式化をまず行うべきである」という意見も盛り 込んでいただきたいと思います。  それから、30ページ〈確定給付企業年金制度〉の中途脱退者の通算制度の拡大の部分 に、「厚生年金基金連合会による」という表現がありますが、これはまだ十分な議論が なされていないので削除した方がいいのではないかと思います。  31ページの支払保証制度について、「導入すべきではないとの意見があった」と書か れておりますが、私どもは支払保証制度については導入すべきではないと思っておりま す。したがいまして、例えば「ポータビリティの拡充に関連して支払保証制度を設ける べきではない」といった意見があったことも追加で盛り込んでもらいたいと思います。  口頭で発言しているだけでは少しわかりにくい点があったかと思います。また、あま り時間をとってもどうかと思い、省略したところもありますので、もし必要があれば、 これ全体をメモしまして、この意見書(案)の対比で後ほど部会長にお届けしてもよろ しいでしょうか。 ○ 宮島部会長  わかりました。 ○ 矢野委員  ありがとうございました。お時間をいただきまして。 ○ 宮島部会長  その際、もし例えば、今、矢野委員がおっしゃったような意見を組み込んだときに、 逆にそれに対して反論して、また併記をするというようなことが起こり得ると思います けれども、それはそれでよろしゅうございますか。 ○ 矢野委員  結構でございます。 ○ 宮島部会長  それでは、井手委員どうぞ。 ○ 井手委員  「女性と年金」のところでいくつか意見を申し上げたいと思います。23ページに(1)、 (2)、(3)ということで、男女の雇用機会、賃金格差に関する認識の違い、前回審議整理 メモに関する意見で述べた意見を採用していただいておりまして、大変ありがたいと思 っておりますけれども、「この考え方の違いは、遺族年金の在り方や離婚時の年金分割 を検討する場合についても観点の違いとして共通するものである」と記されてはおりま すが、こうした記述でも、第3号被保険者問題の項目の中に入っている形になっており ます。  私としては、女性と年金の問題、第3号被保険者、遺族年金、離婚時の年金分割、こ れを通して整合性のとれた案の併記という形の方が本当は望ましいのではないかと思っ ているのですが、この部会での論議を忠実に意見書に反映させるならば、個別の項目ご との複数論併記にならざるを得ない状態だと思うのですが、どこかで、「こうした観点 に基づいたときに、それぞれの案を見ると」というような、いわばパッケージの併記と いうような形もした方が皆様の理解が得やすいのではないかと思っております。  特に男女の雇用機会や賃金の格差が最も影響を与えるのは、男女差が明文化されてい る遺族年金だと思うのですけれども、遺族年金につきましては、特に(1)、(2)、(3)と の考え方の引用がございませんので、そのあたりに少し触れていただければと思いま す。26ページで、いわゆる2分の1、4分の3、例えば5分の3のくだりですけれど も、ここの一番下に、「この点は、これからの男女の雇用の在り方も展望しつつ、将来 に向けた課題として検討していくことが適当である」ということで、いろいろ考えたけ れども、今のままというふうにも見えます。これは先ほどの現状をどう認識するかとい うことと非常に関連をしていると思いますので、すべての意見が忠実に書かれておりま すので、こういう形にならざるを得ないかと思うのですが、そういう観点に基づいてこ のことを考えていくということと、表現上連動させていただきたいと思います。  それから、27ページ〈若齢期の妻等に対する年金給付〉あるいは〈支給要件における 男女差〉を見ますと、意見の一致を見たといいますか、具体的に変わる部分は、「子の いない若齢期の妻については、遺族厚生年金は有期給付とするなどの見直しを行い」と いうことで、この部分については全体の意見の一致を見たという形になっておりまし て、その他については、現状を認識すれば、やっぱりなかなか難しいということになっ ているわけですけれども、ここだけはやるけれども、あとは様子を見ながら考えようと いう表現ではなくて、現状認識をどうとるかによって、こういう意見もある、こういう 意見もあるといった形にしていただけたらと思います。  いわば現状認識と将来展望、あるいは今の制度がこうした格差をさらに生み出すもの だという意見もあったわけですけれども、どの立場に立っても共通的に賛同を得たのが 離婚時の年金分割ということだったと思うのですが、そういう意味で全体を通した慎重 案と将来を展望した、例えば個人単位化といったものに向けた案、さらにはなかなか現 状がそこまでいっていないので、その暫定案というような形を、例えば意見の一致を見 た離婚時における年金分割を突破口に、遺族年金の離別と死別との均衡性とか、あるい は第3号の夫婦の年金分割というものが横軸で見られるようなまとめ方を最後にできな いものかと思っております。そこにさらに3号においては、多層的な組み合わせ案とし ての基礎年金の税方式化ですとか、報酬比例の一本化というものがついてくるのではと 思っておりますけれども、やはり項目ごとの複数論併記で皆様に考えていただくという のがなかなか難しいのではないかというのが私の意見でございます。  あと、文章上の表現で細かいところでございますけれども、22ページの「第3号被保 険者制度」のところですけれども、「第3号被保険者制度は、女性の年金権の確立とい う観点から」という表現がございますけれども、第3号の大半は女性ですけれども、男 性の方もいらっしゃるということを想定しますと、正確に言うと、「第2号被保険者に 扶養される配偶者 (主に女性)」という形になるのではないかということと、それか ら、一番下の「夫名義」というものも「第2号被保険者名義(主に夫)」というよう な、これまでの意見書も話を複雑にしないために、夫、妻という言葉を使われていたと 思うのですが、どこかでは必ず明記されていたと思いますので、その表現が必要ではな いかと思います。それから、「生き方、働き方の選択に中立的な個人単位とされた」と いう表現があるのですが、「中立的」という言い方は大変難しいと思いますが、第3号 被保険者制度自体は、基礎年金について、いわば自分自身での負担がなく給付を受ける という意味合いで、就労を抑制するという意味で中立ではないという意見も多数あると 思いますので、この「中立的な」という表現がここで適しているかどうかについては再 考をいただければと思います。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  私も読んでいて、25ページの3番目の「○」などは、第3号被保険者制度だけに関わ らない、もう少し全体的なメッセージだと思いましたので、こういうことも含めて入れ る場所を「第3号被保険者」という限定された場所に持ってこないで、「ライフコース 」のところに持っていくというような形で、将来の方向性というような形での示し方も あるのではないかと思います。やや理念的な発想ですけれども、年金分割、第3号、遺 族年金に、共通する将来の方向性は入れるのではないかと思っています。  それから、この「女性と年金」のところは、以前、検討会がございましたので、そち らを尊重して名称は使っておりますけれども、今の御指摘などもありましたように、少 し厳密に、対象はどの人かというようなことは中で少し触れておく必要が出てくるだろ うと思っております。  あと、少し理念的に、将来こういう在り方を目指して考えていくということと、当面 の状況の中でどういう案が考えられるかということを少しはっきりとわかるような形は 整理しておくことも改めて少し考えたいと思います。  若杉委員どうぞ、その後、山口委員お願いいたします。 ○ 若杉委員  全体的なことに関しての意見なのですけれども、全体として公的年金の内容が多いわ けですが、年金制度というのは、当然のことながら企業年金も個人年金も含めて、そう いう全体で年金制度というわけですから、もう少し「はじめに」のところとか「基本的 な考え方」のところでも、個人年金についても少し言及する必要があるのではないかと 思うわけです。この部会自体がほとんど個人年金については議論が行われないで終わっ てしまうということなので、ある意味では仕方ないのですけれども、やはり少し書いて おかなければいけないのではないかと思います。  それから、いろいろなところで「負担を過重なものとしないよう」という表現が出て くるわけですけれども、私にとっては非常にわかりにくい言葉です。直感的にはわかり ますけれども、「過重」というのは何か標準とか基準があって、それよりも大きいとか 重いとかということを言うわけですけれども、今の場合、例えば一定の給付を確保しよ うと思ったらそれなりの負担はしなければいけないわけですから、それが過重かどうか 判断できないわけです。むしろ給付を多く期待しすぎているので負担が大きく見えると いうことはあると思います。そういう意味で、今ここで一貫して流れているのは、給付 水準が高いから、それを引き下げようということがあるわけですけれども、給付を引き 下げるということを直接言わない代わりに、負担が過重だという言い方で論理を逃げて いるのではないかと思います。そういう意味で、国民の観点に立った見方よりも、厚生 労働省とか政府の観点から議論をマイルドにするための表現のように思えます。  ちなみに社会保障審議会の意見書では「過重」というような言葉はまず使っていなか ったと思います。ですから別に「過重」と言わなくても、「現在の所得から見て高い」 とか、あるいは「公的年金の給付、これだけのものを確保しようとすれば保険料が高く なる」とか、別の言い方があると思いますので、「過重」とか「過大」というようなこ とはできるだけ使わない方がいいのではないかというのが私の意見です。  それから、3番目としまして、前にも部会で発言したのですが、「支え手」というの は、私にはどうしても理解のできない言葉です。今日の説明でも、「社会の支え手」と いうような表現を強調されていたわけですけれども、普通「社会の支え手」という言葉 はないと思います。意味が非常にあいまいだと思います。例えば、家計の支え手とか一 家の支え手という言葉はあるわけですけれども、そういうときにはお金を出す人を意味 します。実際「支え手を増やす方策等」のところに、「年金制度についても、女性や高 齢者等の支え手を増やすことによって、支え手自身の年金保障の充実を図り」とあるわ けで、これは明らかに「支え手」というのは「負担」を意味しており「年金保障」は給 付のことを言っているわけですから、ここでは、やはり「支え手」と言っているのは、 基本的には保険料出す人という意味で言っていると思うのですね。  そういう意味で、ここでの国民にとっては、自分が支え手がなるかどうかというの は、はっきり言えばどうでもいいことでして、当然保険料は出すのですけれども、それ に見合った給付をもらうことが大事なわけでして、ここで支え手を増やすというのはや はりお金を出す人を増やしてほしいという、そういう発想が基本的にはあると思いま す。それでは国民の理解を得られないと思います。ですから、この間、ずっと支え手を 増やすということで、政府の中でも、またこの部会の中でも、そういう言葉が使われて きたことは承知しておりますけれども、ここでわざわざ使わなくてもいいのではないで しょうか。別の表現の仕方があるのではないかと思うわけです。これも多分に厚生労働 省というか、政府の方の見方だと思うのですね。政府からすれば、支え手に見えるかも しれませんけれども、個人個人の加入者にしてみれば、別に自分が支え手だと認識して いるわけではないと思います。そういうことで、表現として「過重」とか「過大」とい うことと「支え手」について、ぜひ別の表現を探していただきたい。内容自体は別に問 題ないと思うのですけれども、言葉があまり国民に受け入れられるような言葉ではない のではないかというのが私の意見です。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。少し基本的な問題にも関わる点であると思いますけれど も、1つは、個人年金の話というのは、確かにこれはここでの審議の直接の対象になら なかったという面もございますけれども、公的年金の役割と同時に、企業年金ですとか 個人年金、恐らく一般の貯蓄や就業も含めてどういう形で高齢期の所得保障を備えるか という話はそういう点で入れ込むことになるのだろうと思います。  それから、負担の重過ぎるとか重過ぎないという話は、これは1つ、世代間の扶助型 の基本的な社会保障制度を考えておりますので、給付と負担がいわば拠出と給付のよう な形で完全にリンクしてないという世代間のずれが一緒に出てくるということがあるも のですから、そういう意味で、こういう世代の負担限界ですとか、そういう話が出てく るわけです。その辺は誤解がないように少しきちんと書いておく必要が恐らくあるのだ ろうと思います。  支え手の話につきましても、議論の中で、ここの議論の中でもそうでしたけれども、 私も少し注意していたのは、当面の財源確保というような発想で書くと非常にまずいの で、皆さんから御意見いただいておりますように、いろんな働き方があって、男女の賃 金格差が将来縮小していくという中で、長期的に受給者になったにしてもきちんと社会 保障されていく、いわば就業というイメージで考えておりますので、そこのところも言 葉の上では少しはっきりわかるような形で書きたいとは思っております。それでは、山 口委員、その後、杉山委員お願いいたします。 ○ 山口委員  先ほど井手委員からも御意見がございましたけれど、「女性と年金」のところで、特 に第3号被保険者のところが、井手委員の御意見を反映して3つの観点で整理されたと いうことについては、大変御努力いただいて見やすくなったのですが、これは井手委員 もおっしゃっていたように、第3号被保険者の部分だけではなくて、過去から女性と年 金に関わる部分として議論してきた中にこの3つの視点を反映させるべきであるという 視点での意見を申し上げたいと思います。  また、ややもすると、女性と年金の問題ですと、今回の意見の中では「ライフコース 」というような新たな言葉で表現されているのですが、第3号被保険者という在り方 が、固定的で、第3号被保険者という大きな固まりと、第2号や第1号である女性と対 立構造的に見ているような視点がいろいろなところであるわけですね。保険料を払って ないのに給付を受けてとか、そういう対立構造的な見方が女性と年金の議論を大変難し くしているのではないかというようなことを感じるわけです。  今までこの部会の中でも御意見がありましたけれど、第3号被保険者というのは固定 的なものではなくて、ある女性のライフコースである一時期であったりとか、何度も1 号であったり、2号であったり、また3号になって、また2号になってというような転 換がライフコースの中で起こるのではないでしょうか。そういう一過点として第3号被 保険者という存在を見ていくと、もっといろいろな見方ができるのではないかと思いま す。これは何も女性だけではなくて、男性においても、社会情勢、経済情勢考えます と、必ずしも従来のようにずっと第2号で、それも同じ事業所でというようなことでは なく、失業して1号になる等、いろいろな転換があるということで考えますと、この「 ライフコース」という新たな言葉を入れて、男女とも働き方が変化していくのだという 認識で整理をしていけば、もう少し、今まで大変難しいと言われていた女性と年金の問 題がわかりやすくなるのではないか。  先ほども井手委員がおっしゃっていたように、遺族年金であるとか、離婚時の分割等 全ての論点を整理して、25ページの一番下にあるように、「将来を展望した見直しに向 けて」というような観点に立てば、ここで表現されているような、「何らかの方向性」 というような漠然とした表現ではなくて、男女も含めてのライフコースが多様化してい るということを考えると、被保険者区分の転換がスムーズにいくとか、不利益がないと いうことを目指し、働きたい人はその希望の通りに働くことで自らの将来設計をするの だというような、もう少し具体的な表現にしていただくと、全体のまとまりができるの ではないかと思います。この部分は、「第3号被保険者制度については」ということで はなくて、もっと広い視点での将来展望を書き込むべきではないかという意見でござい ます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。杉山委員。 ○ 杉山委員  最初のところから、順にページを追ってお話ししたいと思います。まず4ページです が、「特に若い世代から年金制度への不安感、不信感が向けられているのも事実であ る。誤解や説明の不足から来るものについては」と書いてあるのですが、若者の不安 感、不信感は誤解や説明の不足だけでは恐らくないのではないかと思いますので、その 文章に入る前に、「彼らはなぜ不安感、不信感を持つのか、その背景について丁寧に分 析、対応する必要もあろう。そして、誤解や説明の不足から来るものについては」とい うふうに一文加えていただければと思います。  それと関連するのですけれども、8ページ、「世代別の給付と負担の比率の違いにつ いて」ということで詳しく御説明いただいているわけですけれども、老齢厚生年金の額 について、「男子の平均で約20万円程度である」と書かれているわけですが、従来議論 にもあったように、高齢者の世代内でも格差が相当に広がっている部分があって、特に ひとり暮らしの女性の世帯であれば、平均を下回るような方もおいでになるであろう し、年金は要らないぐらいお金持ちの方も御高齢の方においでになるのではないかと思 うのですが、そのあたりもちょっと少し踏み込んで書いていただければと思っておりま す。  次に9ページの「世代間の公平を論じるのであれば、扶養負担のみならず、教育や相 続や」云々とずっとありますが、先行世代から、世界的に見ても高い経済水準をはじめ とする多くのものを引き継いでいることは重々承知をしております。私、何回読んで も、少し唸ってしまう部分です。確かに豊かさは引き継ぎましたが、負の部分も引き継 いでいるというところも一方ではあるし、引き継ぐと同時に維持もしなければいけない し、減ってきた子どもたちを私たちもやはり扶養し、教育し、相続していくという部分 も若い世代はやるわけですので、一方的に受けているわけではないという気持ちがあり ます。また、高度経済成長はもう来ないとか、年功序列賃金はもうなくなるとか、どん どん若い人が減っていくということは、それだけ若い人の声が届きにくくなるという側 面もあると思います。若い世代には、負担は担いましょうと思っている人は多いと思い ます。と言うより、お給料からそのまま引き出されてしまうのです。若い人が心配して いるのは、果たして自分たちが高齢者になったときに、今の御高齢の方のような、本当 に生活の主柱に成り得る年金が受け取れるのかという部分の不安であるのだろうと思う わけです。そのあたりを、もうちょっと御配慮いただいた書きぶりにしていただけると うれしいです。  また、少子高齢化と言われていて、それがどういうことを意味するのかという部分の 記述が何となく少ないような気がします。例えば2ページには、「少子高齢化は一層進 行することが予想され、現在の制度のままでは将来の世代の負担が過重なものとなるお それがある」という表現になっていますが、具体的な数字を入れてみるとか、先ほど御 指摘あったように「過重」というのはどういうことなのという部分などをもう少し入れ ていただいて、今が本当にまずい状態なのか、負担はわずかで済む程度なのかがわかる ように書いていただけたらと思っております。  それから、「女性と年金」のところですけれども、「女性の貢献が実る年金制度」と いうようなことを女性の委員の方々や私も思っていて、加えていただいて本当にありが たいと思っているのですが、例えば24ページの〈年金分割案〉のところなのですが、現 状では何も変わらないではないかと言いながら、なぜ、年金分割案かといったときに は、貢献が見えるという部分が焦点になると思います。そこで、年金分割案の「現段階 における一つの現実的な案であるという意見があった」というところの前に、「女性の 貢献が目に見える形になり、現段階における一つの現実的な案であるという意見があっ た」というようにちょっと書き加えていただけたらと思います。  あと、2号・2号についてもいくつか話が出ていたかと思うので、どこかに「2号・ 2号においても年金分割を取り入れていくことの検討は後述の遺族年金、離婚時の年金 分割との整合性を見る上で意味があるとの意見があった」というような書きぶりを加え ていただけたらと思っております。  それから、27ページですが、先ほど来現状認識をどのようにするかということで、少 し書きぶりを変えてみましょうという案に私も賛成なのですけれども、特に遺族年金の 若齢期の妻に対しての給付に関しては、ここに「男女で雇用条件等に格差がある現状」 と書かれているのですが、特に若い世代ほどその格差はなくなっているし、流動化して いるし、男女というような区切りでは判断できなくなってきている部分は多いと思いま す。私も周囲を見ますと、妻の方が給料が高いという例も多々ありますし、夫が専業主 夫をしているとか、家事は夫がやるとか、本当に従来の男女の役割分担はもうほとんど 見られません。そういうこともありますので、ここの〈支給要件における男女差〉のと ころで「男女差はやむを得ないものと考えられるが」と言ってしまわないで、「男女差 はやむを得ないものとの意見もあったが、雇用の動向は若齢期で早くあらわれる傾向が あるので、それを踏まえつつ将来の雇用、早急に在り方を検討していくべきである」と いうような、もう少し若い人の現状に沿った見直しを御検討いただければと思います。  あと、33ページ、「制度の理解を深めるための仕組み」のところですけれども、今ま では、自治体の役所の窓口の手続であったものが社会保険事務所に移行したという経緯 があったかと思うのですけれども、そういう意味では、社会保険事務所というところが より国民の皆さんにとって身近なものになってきていると私などは思っております。う ちのような小さな会社ですと、社会保険労務士さんに行ってもらうというよりも、本当 に社長自ら社会保険事務所に出向くことも多くて、そういうときに疑問に思うことがよ くございます。それはちょっとした窓口対応であったりとか、スピードであったりとい う部分なのですけれども、本当にポイント制とかインターネットでの対応というのはも ちろん大事なのですけれども、その前により国民に身近な存在になる社会保険事務所と いうのを目指していただきたいと思います。それは体質の見直しであったり、業務運営 の見直しと御検討いただければと思っております。  以上です。 ○ 宮島部会長  出生率の低下とか現状が、これからどういう社会的なインパクトを及ぼすのかという ことは割と知られているだろうと思うのですが、必要であれば、年金制度だけではあり ませんけれども、制度でどういう問題が起こってくるかということについて、今のお話 のように必要があれば、少しきちんと書く必要があるかなという気がいたしました。い かがでしょうか、堀委員どうぞ。 ○ 堀委員  何点かあるのですが、1点目は、9ページの、世代間の損得論を言うのは問題がある というパラグラフです。一点抜けていると思うのは、賦課方式の下で高齢化が進めば必 ず世代間で不公平が生ずることについての記述です。そういった趣旨、すなわち世代間 扶養の仕組みの年金制度において高齢化が進めば世代間の給付、負担の比率は必ず異な ってくることに注意する必要があるというような趣旨、を入れてほしい。  2点目は、10ページに、厚生年金の保険料の上限について、20%という意見、15%と いう意見、現行制度を上回らないといった意見があるという記述ですが、これだけでは 国民に間違ったメッセージを与えるのではないでしょうか。例えば基礎年金を税方式化 すれば15%でいいのだというメッセージを与えるおそれがあります。税方式化しても国 民負担の総額は変わらないとの意見、保険料率を現行水準に固定した場合は給付水準を 大幅に引き下げる必要があるとの意見があった、という記述を付け加えていただきた い。  3点目ですが、24ページの「女性と年金」の問題、特に〈年金分割案〉のところで、 年金分割案が個人単位化に向けての制度だという意見があります。確かに年金の受給権 は年金分割案では個人単位になると思います。ただ、これは賃金を夫婦共同で得たもの とみなすという世帯単位を前提にした考え方ではないかという感じがします。ただ、こ れは別に修文してほしいという意見ではなくて、そういう点に気につける必要があると いうことです。それから、年金分割案についての問題点に1点付け加えてほしいのは、 離婚しない多数の夫婦にとって年金を分割する必要はあまりないのではないか、という ことです。要するに大多数の夫婦にとって年金分割というような大なたを振るう必要が 本当にあるのかどうか、そういう点を書いていただきたい。  先ほどから述べられている意見に対し、異論とか反論とか批判がたくさんあるのです が、一点だけ気になった点を言います。保険料未納者とか未加入者に対して、運転免許 証とかパスポートを交付しないという意見がありました。法令違反者には、刑罰を科す とか、強制徴収するとか、あるいは会社名を公表するとか、いろんなペナルティーがあ ります。しかし、違反の内容と程度に応じたペナルティー、要するにペナルティーと違 反の態様との間にはバランスが必要です。例えば保険料を未納したからといって懲役に するということはバランスを失しているわけです。年金制度の保険料未納、未加入に対 し、国民生活にとって非常に重要な運転免許証を交付しないという、全く関係ないこと を、この意見書に書くことは、年金部会の見識が問われると思います。したがって、そ ういう意見は採用しないでいただきたい。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 神代部会長代理  1つだけですが、10ページで、小島委員の御意見を取り入れた部分の記述なのです が、「将来にわたり現在の給付水準を維持すべきとの意見があった」という意見の中身 は、いわゆる平均的な所得代替率でおっしゃっていると思います。ただ、世の中の報道 は、いつも「給付水準の切下げ」という表現を注釈なしで使うものですから、普通の市 民は金額が下がることだと思ってしまいます。ですからこの御意見が、今のように平均 的な所得代替率で見た給付水準のことを言っているのだということがはっきりわかるよ うに文章を直していただいた方がいいと思うのです。 ○ 宮島部会長  要するに、その場合、数字が何を意味しているかということですね。 ○ 神代部会長代理  はい。 ○ 宮島部会長  わかりました。どうぞ、ほかに、山崎委員。 ○ 山崎委員  部会長ができるだけ意見を反映させたいとおっしゃっているのですが、小島委員が最 初おっしゃった、2ページの冒頭の「いくつかの課題が残された」ということで、第1 の保険料凍結解除、第2の基礎年金の国庫負担割合の引上げ、これを順序を入れ替えて ほしいという御意見だったのですが、私は、今回の改正では制度体系をめぐっていろい ろな意見はあるけれども、基本的に社会保険という方式で、しかも2階建てを前提に可 能な限りの見直しを行うという方向だと思います。そうすると社会保険という仕組みを 前提にしますと、やはり財源は保険料が主財源でありますから、やはり保険料の凍結解 除というのが1番だろうと思います。国庫負担は補足的な財源という位置付けですから 2番目になるのだろうと思います。  それから、矢野委員がお話になりました「老後の所得保障の主柱としての年金」とい う、その「主柱」ということについて、基礎的な部分を保障するというふうな表現に切 り換えたらどうかという御意見だったのですが、基礎的な部分といいますと、どうも基 礎年金の水準にということになりまして、2階は廃止するか、大幅に縮小するというこ とにならざるを得ないのではないかと思います。それは保険料水準を現行水準からあま り上げないという御提案とも一致するわけでございまして、かえって基礎的な部分とい う表現をとることによって、今の2階建ての体系を崩すということになってしまうの で、やはり私は現行の基本的な体系を維持することを前提に改革するというのであれ ば、「主柱」だというふうに思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。矢野さんは「基本」とおっしゃったのですか。私も聞いて いて、「基礎」だったか「基本」だか。 ○ 矢野委員  「基本」です。 ○ 宮島部会長  あまり言語の解釈でどうこうということはありませんけれども、確かに今のように、 企業年金なり、私的年金なりを基本とすると言い換えたときにどういうことになるのか を考えますと、その辺の表現は気をつける必要があると思います。どのようにその意味 を考えるかという点で言えば、強制加入の公的な年金制度が主なものになるのだろうと いうのが私の認識でありますけれども、ただ、そこの中でレベルの問題ですとか負担の 問題をどう考えるか。そして、それに応じて、今回上限を固定するという話の中で、所 得代替率で見る給付水準が下がることになれば、それに対して当然対応としての企業年 金ですとか個人年金、あるいはもっと私的な貯蓄なども含めたいわゆる自助努力という ものが必要になっていくだろうというようなことは言外には恐らく出てくることだろう と思いますから、言葉の点は、あまりこだわられますと、そこで行き詰まってしまう可 能性がありますので、少しその辺はもちろん検討させていただきますけれども、表現に こだわる必要はないだろうと思います。 ○ 矢野委員  先ほど若杉委員がおっしゃった最初のところに、企業年金や個人年金の自助・共助と 言われている部分を入れたらどうかという御意見にもつながるわけで、私も賛成です。 公的年金だけをとらえて老後の人生設計をするのではなくて、やはり自助・共助の部分 も考えていくことによって、初めて持続性のある年金制度もできるのではないかという 考え方になるわけです。ですから割合、言葉だけの問題ではなくて、大事な課題を含ん だ表現のつもりで申し上げております。基礎的な部分というと基礎年金と混同されます ので、それで「基本的な部分」と申し上げた次第です。御検討いただきたいと思いま す。 ○ 大山委員  〈積立金〉のところですが、特に16ページのところで、文章的にその後の後段との考 え方で素直に読めないところがあります。一番簡単な修正をするということになれば、 16ページの、「早期に年金積立金を取り崩して、当面の保険料の抑制に充てるべきであ るという意見がある」という文章については、その後の文章に続けて「高齢化のピーク やその後における……一定程度の積立金が必要であるが、様々な面から現在の巨額の積 立金について活用されることが指摘されていた」という文章に修正すると良いのではな いかと思います。  保険料固定方式には私は反対ですけれども、年金部会の意見として、将来にわたって 保険料が最終的にどの程度になるかということを、私はきちんと国民に約束すべきだと 思っています。  また、給付の水準についても、どういう状況になっても、これだけの水準は確保しま すということをきちんと約束するべきだと思います。そのために、積立金をどのように 活用すべきか。当然今全部使って、当面の保険料が大幅に引き上がるのを防ぐという意 見もあったでしょうけれども、基本的には給付と負担の関係につきまして、バランスと っていくために、積立金の保有額について1年程度の給付費に相当する額で何とかなる のではないかと、そういう試算も可能なのではないかということで発言をしてきたつも りでありますので、そこの部分についてはもう少し、その後の後段の部分とつじつまが 合うように文章を整理していただきたいというふうに思います。 ○ 宮島部会長  わかりました。恒久的に均衡を図る方法とするか、アメリカのように長期的な均衡を 図り、定期的に見直す方法とするか、という議論がある中で、〈積立金〉の部分が具体 的に何を意味しているのか、ややわかりにくいこともあると思いますけれども、その意 味で補足をする必要があるかもしれません。翁委員どうぞ。 ○翁委員  いくつかあるのですけれども、まず5ページですが、先程矢野委員や若杉委員がおっ しゃったこととも関わるのですが、私は確定拠出型年金とかそういったことの位置付け を本来はもう少し負担と給付の水準を考える際に議論してしかるべきだったのではない かという印象を持っていて、それをここで書くべきかどうかはまたお任せしたいと思う のですけれども、例えば5ページの「医療、福祉、税制」というところの「税制」に関 しては、確定拠出型年金のことが1つ大きなポイントになり、これをどう考えるかによ って給付と負担の水準に関する議論に影響を与えるはずですので、この部分に書いてお いていただきたいというような気がしています。  それから7ページに関しましては、先程矢野委員がおっしゃったことと関連します が、「以上のように」以下のところで、これからの制度体系の選択については、例えば 納税者番号制等税制も関わってくる話でございますし、しっかりとどういう形でこれか ら議論していくのかが道筋として書かれるような書きぶりにしていただきたいと思って おります。  それから、8ページの「世代別の給付と負担の比率の違い」について、背景と留意事 項という形で書いていただいてはと思います。私の理解では、その比率を見るとき、部 会としての考え方というよりは、むしろこの数字を見るときの背景と留意事項について きちんと述べておきたいという書き方であるかなというように思います。その上で、9 ページにおいて、本部会としては、こういった歴史の結果とか背景を十分踏まえた上 で、これをどのように活用していくのかということではないかと思います。先程御指摘 があったように、この数字自体はあくまでもいろいろな留意をした上で参考指標として 積極的に活用していくことを考えていいと思います。例えば、後ほど申し上げますけれ ども、将来見通し平均化法や実績準拠法を議論するときには活用できるものでもあると 思います。そういった書き方を工夫できたらなと思っております。  それから、12ページのところで、これもさっきどなたかがおっしゃったのですけれど も、将来見通し平均化法と実績準拠法というのは必ずしもまだ厳密にどちらがいいとい う結論は出ていなくて、例えば高齢化などの伸び率を加味した早期の調整方法とした場 合に、この実績準拠法と将来見通し平均化法というのはどういう違いが出てくるのかと いうことについてはまだ結論が出ていないわけですから、あまり早めにこの部会として 結論を出してしまうというのはどうなのかという印象を持ちました。  それから、16ページの、積立金のところで、別の側面からの意見として申し述べたい のですが、積立金の規模については年金だけの世界でなくて金融市場の世界から見る と、やはり金融市場に与えるインパクト等も考えて、十分かつ多角的な検討が必要であ る、そういった側面も見ておく必要があるということを付記しておいた方がいいのでは ないかと思います。  それから、「女性と年金」というところについては、先程御意見が出ていましたけ ど、やはり遺族年金とか離婚時の問題ということとうまく整合性を持たせて、3号問題 の上に全体をどう整合的に議論していくのかということがあった方がいいと私も思いま すので、意見として述べさせていただきます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。近藤委員どうぞ。 ○ 近藤委員  「少子高齢化」という言葉があちこちに出てくるのですけれども、1カ所だけちょっ と表現を直してもらいたいと思います。9ページの「○」2番目で、「しかしながら、 これまでの歴史の結果として世代間の違いとは別に、将来に向けて少子高齢化が更に進 んでいく中」というところで、高齢者も痛みを分かち合うということがありますので、 少子化と高齢化という言葉を分けた方がいいのではないでしょうか。「少子化が進行 し、更に加えて平均余命の延びが予想される中にあって」というように、お年寄りの平 均余命はどんどん延びていくし、これも少しお互いに分かち合った方がいいのではない かということにつなげた方が、いいのではないかと感じました。  あと、高齢化と少子化についてもいろいろな対策はするのですけど、高齢者に働いて もらうということが非常に少ないです。これは、今まで議論をしてなかったわけではな いので、何か記述があった方がいいかというような気がします。 ○ 宮島部会長  今井委員と岡本委員、もしよろしければ、あえて求めるわけではありませんけれど も、どうぞ。 ○ 岡本委員  随分御努力しておまとめいただきましてありがとうございました。1点だけ、それで は、せっかく時間いただきましたので申し上げますが、前回申し上げましたように、意 見なのかコンセンサスなのかという視点で1点ございます。私はコンセンサスという方 向でまとめてもらう方がいいのではないかと思うところがありますので申し上げます と、10ページですが、「なお、保険料負担については、企業活力の維持や経済活性化の ため安易に引き上げるべきでないとの意見があった」という記述があります。確かに、 全員が申し上げたわけでありませんが、2ページにも総論として、「年金制度は経済活 動によって支えられている」「経済の回復、活性化が不可欠であり……その努力を続け ていくべきである」と明確に書いていただいていますし、かつ、保険料というのは、年 金の保険であれ、健康保険の保険料であれ、介護保険であれ、社会の構造的な保険制度 の中での硬直的決められた構造的なコストでありますので、事業なり経済の環境の変化 に対応できない非常に硬直的な社会的コストであるということでありますので、、保険 料負担については、あるいは保険料の引上げについては、企業活力の維持や経済活性化 の視点から十分検討をされなければならないとか、慎重に検討されなければならないと いうようなことでは、おそらく全員が認識しておられるのではないかと思います。意見 かコンセンサスかという視点から申し上げると、意見があったというよりも、全般的な コンセンサスというような方向で修文ができれば、御検討いただきたいと思いますが、 最終的にはお任せいたします。 ○ 宮島部会長  テークノートしておきますので、多分こういう話は、この給付との関わり合いから無 関係にできる話ではないということもありますので、その辺の書きぶりは、先ほど御注 意がありましたように、少し考えさせていただきたいと思います。今井委員。 ○ 今井委員  感想になるのですけれども、最初に2ページのところに、「さらに、平成14年度の新 人口推計によると、少子高齢化は一層進行する」という記述があります。確かにそうい うことなのですけど、では、12年改正のとき、何故これがわからなかったのかというの があります。12年改正でこういうことを把握されていたかと思うので、もう少し具体的 な取組をしてほしかったというのが感想です。  あと、課題が3つ残されているところの3番の「女性と年金」ですけれども、結局例 えば遺族年金にしても、女性の貢献が実るという意味では、本人の老齢厚生年金の全額 受給を基本としたということでは、確かにそういう表現では貢献が実っているのですけ れども、結局あまり変わらないのではないかということですごく不満でありまして、先 ほど山口委員がおっしゃったように、「何らかの方向性」という、曖昧な表現でまたが っかりしました。ですからできれば、井手委員のおっしゃったようなわかりやすい表現 で、もう少し「女性と年金」に関しては表現してほしいということをお願いしたいと思 います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。まだ、若干時間がございますが、若杉委員どうぞ。 ○ 若杉委員  33ページのポイント制のところなのですけれども、年金に関する情報を個人に伝える ということは非常に大事なことで、それはぜひさらに充実していただきたいわけです が、ポイント制もそういう意味で、ここに書いてあるように、簡単な数字でもって自分 の状態がわかるようになれば、非常にそれはそれでいいと思うのですけれども、現在の 日本の複雑な公的年金制度を考えるとポイントだけではとても表し切れないと思いま す。むしろこのポイントがあることによって誤解を招くという面もあると思いますの で、ここにも「実施上の留意点とともに」とありますけれども、導入するような方向で 書かれていますけれども、私は特に慎重であってほしいと思いますので、あえて言わせ ていただきたいと思います。  趣旨は賛成なのですけど、現実の問題として、日本の公的年金制度の下では、ポイン トぐらいではとても表せないとなると、かえってみんなの不信を招くのではないかとい うことです。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。実施上の問題については、いくつかそういう留意すべき事 項について指摘があったと思いますので、今の点について、事務局としては何かありま すか。ポイント制度はとても難しいというお話がありましたけれども。 ○ 木倉年金課長  この前も若杉先生から指摘のメモもいただいております。実施上で本当に経過措置や 大きな変動があったときの対応も含めて基本的なポイントだけで確かに表現しきれるの か、それも基本的な部分を押さえながらも付随的な情報をどうきちんと出していくか、 正確さとの兼ね合いということはより実務上の問題を詰めながら検討させていただきた いと思います。 ○ 宮島部会長  ほかに少し補足される方いらっしゃいましたら、どうぞ。  それでは、本日、全体につきまして、委員の方からいろいろ濃淡ございましたけれど も、全体にわたりまして語句の問題から考え方の問題からいくつか議論が出てまいりま した。初めから申しましたように、この部会は従来のような一本化して答申をするとい うようなタイプでは必ずしもございませんで、ここで行われた議論の中の、集約できる ものを集約しつつ、意見が分かれたものについては意見が分かれたと、率直にそれを述 べざるを得ないということあって、「はじめに」にありますように、これの実現を直接 求めるというよりは、これを踏まえて政府が政策立案に当たってほしいという希望にな りますので、その意味では多くの方の御意見はいろいろな形で触れておく必要があるだ ろうと思っております。もともと年金制度は考え方にいくつかの違いがありますから、 そういう点は、当初から覚悟していたことであります。  それで、今日いただいた御意見の中で、そういう意見を仮にこの中に取り入れた場合 には、それに付随して、さらに書き込むような必要性が出てくるということがいくつか 出て来ることが予想されまして、そうしますと少し長くなってしまうことは避けられな いと私は思っております。そのかわり、初めの基本的な考え方とか、体系のあたりに、 これからの意見書の中で検討されてきた、特に平成12年の年金制度改正とは異なるいく つかの新しい論点を明確に出しておくつもりです。つまり、いくつかの基本的な体系の 考え方の意見、ただし、その意見が一致はできなかったという記述を盛り込むというこ とです。したがって、16年の年金改正においては、現行の制度は基本的に維持するけれ ども、しかし、その中で従来とは違う新しい様々な考え方をとることによって、冒頭述 べたような持続性であるとか信頼性であるとか、女性の年金の問題等に、とにかく何ら かの道を開く努力をこの年金部会として行うために議論を行ってきたという、今回の意 見書の特徴のようなものは少し冒頭にきちんと書いておかないと、二十回以上も議論し てきたけれども、結局意見が分かれたということでは、単に研究してきたということに なってしまいます。そういうことではないのだということはきちんと触れておきたいと 私は思っております。  あと、もちろん各委員の意見を伺っておりまして、特に「女性と年金」のあたりは、 第3号、遺族年金に併せて共通の見方を記述するべきということは、私もそうだと思っ ておます。  ただ、今日御意見がなかったですが、マクロ経済スライドのところで、この適用に対 する特例期間の話が全く出てこないので、それはちょっと誤解を招くから入れるように ということはあらかじめ言ってあります。  それから、語句の上でも、私も気がついた点ありますけれども、直接事務局の方に伝 えるつもりでおります。  そういう形で、今日委員からいただきました意見を踏まえて、この後、また私と部会 長代理とで、少しそういう点を見ながら事務局に再度の修正をお願いすることになると 思います。 ○ 神代部会長代理  その最終的なまとめに多少協力をしなければいけないということなので、先ほど矢野 委員や若杉委員から出されたパートタイマーの問題で、これは私はあまりこの審議会の 場で議論していないのだろうと思うのですが、私が責任者としてまとめた雇用と年金に 関する研究会の報告書は、実際は2年ぐらい前に取りまとめましたが、ご承知のよう に、その後の2年間程でものすごく非正規雇用の比重が増えているわけです。単純にタ イムトレンドで伸ばす方法がいいかどうかは非常に問題がもちろんあるのですが、この 数年間の趨勢がものすごく強くて、特に女性の場合、既に過半数が非正規雇用になって いるわけですが、このままいくと、2025年ぐらいで7割近くになってしまう勢いがあり ます。短時間労働者とか所得の低いパートタイマー等への年金権の拡大ということを考 えるときには、先ほどいろいろ若杉委員や矢野委員から御指摘のあった見方も必要だと 思いますが、同時に、このままいくと終身雇用がどんどん崩れていって、その枠の外の 非正規雇用の部分が増えてくる趨勢は国際経済的な環境からいっても否定できないとい う観点も入れておかなければいけないと思います。 ○ 若杉委員  所得のある人はみんな年金制度に入るべきだと思います。そういう意味で加入者の範 囲を広げるということは賛成なのですけれども、それを「支え手を増やす」と表現する ことは適切ではないのではないかということを申し上げております。 ○ 宮島部会長  何かありますか。どうぞ,小島委員。 ○ 小島委員   先ほど部会長がおっしゃられましたけれども、マクロ経済スライドという新しい考 え方、については、私の立場としては反対ですけれども、一応これまでの議論の中で は、これはあくまでも特例期間だということで年金財政の安定化の見通しが立てば、そ こでやめるという議論がありました。ぜひそこも含めて、このマクロ経済スライドとい うのは、そういう考えだということを入れる方がいいだろうと思います。 ○ 宮島部会長  ほかに何かございますか。今、神代部会長代理からお話がありましたように、今回の いろいろな議論を行う上では、足下の日本の経済なり、雇用情勢なり、賃金なり、家族 状況なりというもの2050年というわけには一足飛びにはいきませんけれどもこれから20 年、30年、一体どういうふうに日本経済は変わっていくのか、家族、日本の労働生産性 はどのように変化するのか労働分配率がどうなるのかなど、今のところ我々が確実に見 えるのは足下です。5年、10年、場合によっては20年、30年先を見るということになり ますと、それは客観的にそうなるということよりは、こういう社会が望ましいという書 き方にしかなり得ないという面があります。将来こういう方向で日本の経済社会が動い ていく中で、こういう年金制度がそういった経済社会に対して一番適しているのだとい う議論はできますが、それをそこまでは一足飛びには行けないとすれば、足下から、そ れに対して、少なくとも逆行しない、あるいは矛盾しないような方向性をどのように出 すのかということが一番難しいところではあるとは思っております。確かに経済、家族 の問題もそうですし、従来は晩婚とか非婚とかというのが原因だったのが、結婚しても 出生率が減少したという新しい問題が出てきている状況の中で、我々がこれから日本の 経済社会の在り方としてどういうものが望ましいと考えるかという考え方を出しなが ら、現在の日本の経済社会が置かれている状況で、そこに向かってどういう踏み出し方 を年金制度としてしていくのか、そこのあたりをわかっていただくような形の意見書に しなければいけないだろうと思っております。  それから、どうしてもこういう意見書は、皆さんもそう感じていると思いますけれど も、かなり専門的な用語が説明抜きで使われることもあります。それはそれで政府部内 の資料としてはいいかもしれませんけれども、やはり公にされるということを考える と、当然社会から厳しい見方が出てくることがありますので、そういう言葉使いなどに ついては、私はどちらかというと苦手ですけれども、少しいろいろな人に協力いただい て、わかりやすいような形に修正していくことも考えております。もちろんお一人お一 人の意見をそれこそ過不足なく全部書き込んだら、要するに意見書を単に束ねればいい というだけの話になってしまいますから、そういうことではなくて、やはり意見書とし て取りまとめるということについては、これから特にいろんな外の世界の動きなども考 えますと、私は次回で取りまとめを終えたいと思っています。その間、私と部会長代理 の方で今日の意見を整理しながら、事務局にもう一度再度相談すると同時に、それにつ いて、皆さんにもなるべく速やかに早い段階にまた見ていただくということを通じまし て、少しぎりぎりの忙しいタイミングにはなりましたけれども、今後の方針にぜひ御協 力いただきたいと思っております。  それでは、次回もう一度、これについて全体で御議論いただきます。できれば、今申 しましたようなスケジュールで進めていきたいと思いますので、それに当たりまして、 本日いろいろ御意見いただきましたが、なお、御意見があれば、あるいは先ほど矢野委 員からメモとして出されるということがございますけれども、今申しましたように急い で我々が見て、そして修正を加えまた皆さんにフィードバックする必要がございますの で、大変忙しいと思いますけれども、明日中に御意見をいただければと考えておりま す。  あと、何か事務局から説明することはございますでしょうか。 ○ 高橋総務課長  次回の日程でございますけれども、次回は9月12日(金曜日)10時から、この場所で 開催いたします。  本日、お食事を用意してありますので、なお、しばらくお席の方でお待ちください。 ○ 宮島部会長  それでは、どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)