戻る

第3回「血漿分画製剤の製造体制の在り方に関する検討会」概要


日時: 平成15年3月7日(金)10:00〜12:00

○ 委員18名中15名が出席

○ 委員、参考人による意見陳述。

○ 主要な議論
 ・ 日本国内の原料血漿の価格を考えれば、自由競争ができるベースにはないことが分かる。また、輸血用血液製剤を使う患者が血漿分画製剤の原料費を負担している矛盾もある。国内自給ができ、民間製造業者が海外メーカーと競争できるようになるまでの間、輸血用血液製剤でコストをまかなおうとしたのだが、それがそのまま現在まで踏襲されている。
 ・ 薬価差は存在しており、医療機関からの値引き要求もある。現在の薬価は、2年ごとに購入価格を調べて、値引きがあれば薬価も下がるようになっている。このため、アルブミン製剤については、平成2年では同じだった薬価が、今は日赤製7412円、その他の国内製6405円、輸入5136円であり、差がついてしまっている。献血由来製剤を自由競争の中に置くべきではない。
 ・ PPTAが、売血を献血という言葉に置き換えた資料を出したことにショックを受けた。日本の献血者に対しても、国会審議に対しても矛盾した話であるように思う。行政当局においては、このことを十分留意されたい。
 ・ 献血と売血という言葉があるが、国内にもHIVやHCVの感染者がおり、献血だから安全ということはない。献血かどうかということではなく、検査やドナーの選択が的確に行われているかどうかが重要なのである。
 ・ 日本赤十字社では、6か月の貯留保管、全検体の10年間保管を実施しており、病原体の検査については血清学的検査、核酸増幅検査を導入している。100%安全でないことは承知しているが、努力はしていることだけは認めていただきたい。また、プリオン対策については、血漿分画製剤については製造工程で除去されることを確認している。これからも、国内の献血が国内に供給されるときには、世界で一番のものだという誇りを持ってできるようにしたい。
 ・ 日本赤十字社は検査を大事にしてきたが、ドナー選択については、もっとやるべきことがあるのではないか。外国メーカーのように、初めて来たドナーに対しては検査だけをするようなことも一つの方法ではないか。
 ・ 日本の献血に高リスクの人が来るというのは、別の解決策が必要。保健所で日本赤十字社以上の検査をしていれば保健所に行くだろうが、日本赤十字社が一番いい検査をしているから献血に来る。早急に対策を考えるべき。
 ・ 売血だから危険、ということはない。売血をやめよう、というのは倫理上の問題である。今の法律では日本人から血を買ってはいけないが、アメリカ人からは買っていいことになっている。これはアメリカ国民に対して大変失礼ではないか。すべて献血でやるために制度を構築し、そのために知恵を出しあうべきではないか。
 ・ 献血か売血かということと安全性の問題とは切り離して考えるべき。これにはコストとモラルの問題がかかってくる。そもそも、何故日本赤十字社は高コスト体質なのか。必要があれば国庫補助をすべきではないか。また、国内メーカーではこの原料血漿価格でペイしているのか。
 ・ 日本赤十字社は、献血者が来やすいところに採血所を設定するので、家賃が高い。移動採血車は、人数が集まらなくて採算が合わないような場所にも出している。離島、僻地にも出張採血をしている。献血は国民運動であるので、このような構造的な問題でコストがかかる。また、検査、検体保管などの安全対策や、全国の医療機関に届ける輸送のコストもかかっている。しかし、血漿分画製剤の製造効率は決して低くはない。むしろ高い水準にある。
 ・ ほとんどの血漿分画製剤製造業者は、血漿分画製剤以外にも医薬品を製造しており、全体の中で採算をとっている。
 ・ 問題とすべきは、国内企業と海外企業のどちらが優れているかではなく、供給される全製品の安全性が担保されているかどうかである。
 ・ 現在の薬価は、国内自給達成のための暫定的な薬価であったから、原料血漿の価格が極端に低くなっている。献血でより安全な血液を集めるためには、コストがかかるのは当然である。輸血用血液製剤の薬価で血漿分画製剤のコストを見るという体制だと、今後、輸血血液製剤の適正使用が進み、使用量が減ったときに経済破綻を来たすのではないか。
 ・ 我が国の献血基盤は少子・高齢化に対応する形になっていないが、赤血球製剤すら集まらない国に比べれば、まだ将来に繋がる献血基盤を作る余地はある。国民的に考えるべき時期にあると思う。
 ・ 献血、非献血の表示は、安全性の問題ではない。医療現場や血液製剤のユーザーが、献血は善意の贈り物であることを肯定することからスタートすることが必要。
 ・ 輸血用血液製剤で血漿分画製剤の赤字を埋めるという構造は、血液凝固因子製剤を国内自給するため、国が国策として日赤に指示した経緯がある。献血による国内自給をやると決めたら、国は献血基盤を作ることを含めて、総合的に施策を考えていただきたい。また、コストや特許の問題で輸入血漿を使わざるを得ない製剤もある。国内自給については、研究開発振興も含めて考えていかなれば実現は困難だと思う。

(了)


トップへ
戻る