03/08/28 第24回社会保障審議会年金部会議事録              第24回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成15年8月28日 第24回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年8月28日(木) 10:00〜12:23 場所  :霞が関ビル33階 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、岡本委員、翁委員、      小島委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、矢野委員、山崎委員、若杉委員、      渡辺委員 ○ 高橋総務課長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第24回社会保障審議会年金部会を 開会いたします。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりです。  資料1−1「運用利回りの範囲について(検討結果の報告)」、資料1−2「実質賃 金上昇率及び実質金利の見通しについて」、資料1−3「経済前提の設定の参考に用い るマクロ経済の関係式」、資料1−4「実質賃金上昇率及び実質金利の見通しについて (参考資料)」、資料2「これまでに委員から要求のあった資料」、資料3「審議整理 の構成(案)」、資料4「8月20日の部会における議論を踏まえての再整理」、資料5 「委員からの意見書」でございます。  また、参考資料として、前回資料として提出いたしました「年金制度改正に係るこれ までの意見の整理」及び「審議整理メモ」並びに第21回及び第22回の年金部会議事録を お配りをいたしております。  委員の出欠の状況ですが、本日は大澤委員、大山委員、山口委員につきましては、御 都合により御欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の皆様が3分の1 を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。  それでは、以後の進行につきましては、宮島部会長にお願いいたします。 ○ 宮島部会長  本日はご多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。  早速本日の部会の審議に入りたいと思いますけれども、本日は一番重要なテーマは、 前回一部議論に入りましたけれども、意見書の作成に向けて総括的な審議をすることで ございますが、先ほど総務課長から資料の説明ございましたように、いくつか本日は、 その前に議論をしておく、あるいは説明しておくものがございますので、順次それをま ず行ってから総括的な審議に入りたいと思っております。  本日はこの後、運用利回りの範囲につきまして、分科会長に御出席していただいてい ますので御報告いただいた後、少し議論をいたしまして、その後、前回まで委員から要 求のありました資料が大きく3点、細かく言うと何点かございますが、それについて事 務局から説明を受けた後、議論をするということで、できれば、その部分までで概ね1 時間程度でできないかと思っております。若干延びることはやむを得ないと思っており ますが、できましたら短時間休憩をとりました後、前回、審議整理メモにつきましてい ただきました御意見を踏まえて、私あるいは部会長代理の神代委員とも少し相談いたし まして、いくつか事務局に手直し、修正をお願いした件がございます。それについて御 説明いただいた後、総括的な審議に入りたい、概ねそのような議事の進め方をしたいと 考えております。  それでは、まず昨日年金資金運用分科会におきまして、運用利回りの範囲について報 告があったそうでございますので、その内容を報告していただきたいと思っておりま す。まず、年金資金運用利回りにつきまして、社会保障審議会の年金資金運用分科会長 でいらっしゃいます若杉委員から御説明いただければと思いますが、よろしくお願いい たします。 ○ 若杉委員  年金資金運用分科会の会長の若杉でございます。昨日、資金運用分科会が開かれまし て、運用利回りの範囲について検討結果がまとまりましたので御報告いたします。  私の報告に関する資料は、お手元の資料1−1から1−4まででございます。1−2 から1−4までは参考資料ということになります。  我々の分科会の報告の趣旨でございますが、資料1−1の「1 報告の趣旨」とあり ますように、「次期財政再計算は平成16年に予定されているが、財政再計算の際には予 定利率の見直しが行われることとされている。予定利率は、年金積立金の運用におい て、実際に確保できると見込まれる運用利回りに基づいて設定することが必要である。 このため、年金積立金の運用の基本方針の制定等に関し意見を述べる立場にある当分科 会では、年金積立金の側から確保できると見込まれる運用利回りの範囲について検討を 行うため、本年6月末に作業班を設け、8月末まで集中的に検討を重ねてきた。本日、 分科会として、検討結果をとりまとめたので、報告するものである。」、そういう趣旨 でございます。  この後は、大体検討結果の報告というものに基づいていますが、少しそれとは別に私 のメモから御説明をさせていただきます。  既に皆さん御承知のように、我が国の公的年金制度は賦課方式をとっているわけです が、急速な少子高齢化のため、将来世代の保険料率が急騰することが予想されておりま したので、運用益で将来世代の保険料を軽減することを目的としまして積立金を持って おります。その際、運用利回りについて予定利率ということで目標を掲げ、それを効率 的に達成する、そういうような運用を行ってきたわけです。この予定利率は、積立金の 性格上長期的な観点から設定するべきものでありますが、今、紹介しましたように、5 年毎の財政再計算の際に見直しが行われることになっております。  ところで積立金の運用は保険料率を軽減することを目的とするものでありますけれど も、我が国の公的年金の給付総額は名目賃金上昇率に合わせて増減いたします。したが って、名目の運用利回りのうち名目賃金上昇率分は給付の引上げのために使われること になりますので、保険料率の軽減のために使えるのは名目の運用利回りのうち、名目賃 金上昇率を上回る部分だけでございます。そういうことで分科会では名目の運用利回り から名目賃金上昇率を上回る部分を実質的な運用利回りと呼んでおります。この部分が 保険料率の軽減に貢献するというわけです。ここで「実質的な」と呼んだのは、普通実 質というときにはいろんな経済の数値からインフレ率を引いたものを言うわけですが、 ここでは名目の賃金上昇率を引いておりますので、「実質的な運用利回り」と呼んでお ります。この実質的な運用利回りというのは、結局は実質運用利回りから実質賃金上昇 率を引いたものに等しくなります。したがって、名目ではなくて実質の運用利回りと実 質の賃金上昇率を推定できれば、実質的な運用利回りが推定できるということになりま す。インフレにつきましては推計が難しいわけですが、特に長期的な観点から、長期的 なインフレ率を予想することが非常に困難ですので、このような実質的な運用利回りが 大事だという状況においては、インフレ率のことを直接考えることがないので、非常に そういう点では作業が助けられるということになります。  そういうことで、この運用分科会は、これからの長期的な実質運用利回りを見積もる ということと、実質的な賃金上昇率を見積もるということが大きな仕事だったわけで す。一般的に言いますと、景気がよければインフレ率が高くて名目の運用利回りも高く なり、一方で、名目の賃金上昇率も高くなるわけです。したがって、名目同士で考えた ときには名目運用利回りも名目賃金上昇率もインフレ率が高ければ高くなりますから、 差額である実質的な運用利回り、名目運用利回りから名目賃金上昇率を引いた実質的な 運用利回りというのは比較的安定していると考えられるわけです。そういうことで、長 期的にはインフレ率を直接考慮に入れないで、実質的な運用利回りと実質的な賃金上昇 率だけで考えることはそれなりの妥当性を持っていると言うこともできます。  そういうことで、今、将来の賃金上昇率と利回りを推計するわけですけれども、少し 経済全体について考えますと、各企業が労働にもたらした賃金と資本のためにもたらす 利子とか利益、その合計を付加価値というわけです。そして全ての企業の付加価値の合 計がGDPということになるわけです。別の言い方をすれば、GDP(国民総生産)が 労働と資本に対して分配されるということになるわけです。したがって、これから実質 賃金がどういう動向を示すか、あるいは運用利回りの基本になる利子率がどういう動向 を示すかということはGDPを分析することによって予想ができるということになるわ けです。  そこで分科会としては、労働力と資本とでGDPを生み出すという経済学の基本的な モデルである「コブ・ダグラス型生産関数」を用いて賃金や利子率の動向を推計いたし ました。このときに労働力人口の推移、資本蓄積の速度、あるいは投資率と呼んでいま すけれども、日本経済全体としての生産性、これをTFP:トータル・ファクター・プ ロダクティビティー(生産性の上昇率)、こういうものが基礎になるわけですけれど も、これらについては過去の統計データを見るとともに、内閣府や厚生労働省などの予 測を活用しました。  政府としましては、これから効率的な活気のある経済を回復しようということで、構 造改革を進めているわけですが、そういう構造改革の実現の下で、これからどういう実 質経済成長率になるか、長期金利の見通しなどを内閣府から「改革と展望」という形で 公表しております。公的年金も政府の一員という立場から、内閣府の見通しにコミット しまして、2003年度から2007年度までの改革と展望はカバーしているわけですが、この 5年間については政府の見通しと整合的な見通しをつくりました。この2003年から2007 年までを我々は「足下」と呼んでいるのですが、足下については、政府の見通しと整合 的になるような予想をしております。  しかし、その後の2008年度以降は政府の公式の予測がありません。そこで我々独自の 推計を行ったわけです。そういうことで、大体人口構成が落ちつく2030年ごろまで、約 30年間の予測をいたしました。このときに、将来の長期的なGDPの動向というのは、 1つは、先ほど申し上げました生産性:TFP(トータル・ファクター・プロダクティ ビティー)の上昇率に大きく依存しております。このTFPの上昇率というのは、我が 国の技術進歩、企業経営の効率性、世界的なグローバル競争の在り方、様々な要因によ って決まるもので予測が大変難しいものです。そこで、平成13年度の年次経済報告の推 計などを参考に一定の幅の中でTFPの上昇率を考えまして3つのケースに分けて賃金 上昇率とか長期金利を推計いたしました。  そういう形で、これからの賃金上昇率と金利を推計したわけですが、今度金利から運 用利回りを推計するわけですけれども、金利というのはリスクがない資産の利回りとい うことになるわけですが、現在の金融自由化の流れの下では金利は時々刻々変化してい るわけで、こういう市場原理の下ではいかなる運用をしようともリスクが伴います。し たがって運用にはリスクに応じたリスク・プレミアムが上乗せされるということになる わけです。今回の推計においては、長期の利子率を予想した後、年金の運用は非常に慎 重な運用を行うということを前提に0.5%のリスク・プレミアムを上乗せしまして、金 利+0.5%を実質的な運用利回りと考えました。結論は、皆様のお手元の資料1−1の 5ページにあります。「足下」と「長期」とありますけれども、足下が、今、お話しま したように内閣府の予測がある2003年から2007年度までの5年間、そして、それ以降 2030年までを長期としまして、この間についてそれぞれ実質賃金上昇率、実質運用利回 りを推計いたしました。その差額がこれから公的年金の積立金が目指す実質的な運用利 回りということになるわけです。  何分推計のことですから幅を持って推計することになるわけでして、ここにあります ように、例えば足下で言えば、足下の実質賃金上昇率は0.9〜1.0%、実質運用利回りが 1.6〜2.1%ということで、結局この差額の部分が保険料率の軽減に使える部分ですか ら、実質的な運用利回りの差額をとりますと、0.7〜1.1%程度、こういうような形にな っているわけです。  2008年度以降につきましては、先ほどもお話しましたように、これからの日本経済全 体としての生産性の上昇がどのようになるかによって大きく見通しも変わりますので、 ケース1、ケース2、ケース3ということでTFPの上昇率を1.0%、0.7%、0.4%と 置きまして、それぞれについて実質賃金上昇率、実質運用利回りを幅をもって予想して おります。そして最終的に実質的な運用利回りが一番右側の欄に出ています。  なお、前回の財政再計算におきましては、実質賃金上昇率を1.0%、実質運用利回り を2.5%と置きまして、実質的な運用利回りの目標は1.5%でした。名目で言いますと、 名目賃金上昇率2.5%、予定利率4%ということだったわけで、いずれにしろ実質が1.5 %だということになるわけですが、今回幅で出ておりますので、簡単な数字で言うこと はできませんけれども、全体を見てみますと、実質賃金上昇率が概ね1.0%前後という ところでしょうか。実質運用利回りが幅がありますが、2.0%ぐらいです。したがって、 その差額が1.0%ぐらいということになるわけですが、それが実質的な運用利回りと推 定できるということでございます。  この5ページが、分科会としての運用利回りの範囲についての検討結果ということに なります。私からの説明は以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。大変丁寧な説明だったのですが、なかなか難しいところも あるとは思いますが、何かこれにつきまして、御議論があれば伺っておきたいと思いま すが、いかがでしょうか。  これはTFPについてのケース2というのは、特にこれを何か標準的なケースとして 考えるという意味合いは。 ○ 若杉委員  そういう意味ではありませんで、2ページの一番下に、平成13年度年次経済財政報告 における中長期的な成長率の中で、TFPが0.5〜1.0%ぐらい、そういうものが含意さ れておりますので、これを基準にしてやりました。 ○ 宮島部会長  いかがでございましょうか。 ○ 若杉委員  今回の見通しの特徴は、コブ・ダグラス型の生産関数を使いまして、一応単純なもの でありますけれども、経済学の分野で広く使われている基本的な生産関数を前提としま して、そういうものを中心にして過去のいろいろな経済データ、将来の政府の見通し、 そういうものに基づいて賃金上昇率と利回りについて推計したというのが特徴だと思い ます。 ○ 宮島部会長  前回に比べますと、実質的な運用利回りが1.5%から3分の2、それぐらい下がると いう慎重な読み方をしたということでございますね。 ○ 若杉委員  はい。これももちろん生産性の上昇次第でして、みんなが頑張って、これからもっと 活力のある経済をつくっていけば、そこはまた変わるわけですが、今のところは慎重 に、今の程度の予測をしましたということでございます。 ○ 宮島部会長  それでは、特に委員の方から議論がないようでございますので、どうもありがとうご ざいました。それでは、次に進ませていただきますが、これまで委員の方からいろいろ 要望がございました資料がございまして、そろそろ時間的にも今日ぐらいまでにそれを こなしておく必要がございましたので、本日何点か事務局の方に資料の準備をしてもら いましたので、これはかなり重要な追加的な資料でもございますので、これから事務局 から、一括して説明していただくことになります。1つ1つではなくて、一応ざっと全 体を説明していただいて、それについて少し御議論をいただきたいと思います。それで は、事務局から説明をお願いいたします。 ○ 坂本数理課長  それでは、御説明させていただきます。4つの宿題をいただいておりましたが、1つ は給付と負担の関係、2つ目が保険料水準を一定にとどめた場合に給付水準をどの程度 調整しなければいけないか、3つ目が厚生年金における基礎年金拠出金の財政規模、4 つ目が短時間労働者に厚生年金を適用した場合の財政影響というものでございます。  恐れ入りますが、座らせていただきまして御説明させていただきます。  まず年金制度における世代間の負担と給付の関係についてまとめてございます。世代 間の負担と給付の関係を論じますときに留意すべき点をまとめてございます。  第1に、年金制度の中で、一定の前提を置き、各世代がどの程度保険料を負担し、ど の程度給付を受け取ることになるかについて比較をしてみると、世代によってその負担 と給付の関係に差が生じているということでございます。こういった差が生じるわけで ございますが、現在の受給者の世代で倍率が高くなっているのは、主に2つの要因がご ざいます。まず第1に、戦後の経済の混乱の中で、負担能力に見合った低い保険料から スタートし、段階的に引き上げることで長期的な給付と負担の均衡を図ってきたこと。 2つ目が、その後の経済発展の中で、物価や賃金の上昇に応じた給付改善を後代の負担 で行ってきたこと。昭和40年や昭和44年の改正におきまして、給付水準の引上げがござ いましたけれども、さらに昭和48年におきまして、いわゆる年金額の自動改定措置がと られたわけでございます。これらの要因によって世代間でこの倍率が違ってきていると いう結果が生じておるわけでございます。  年金制度における世代間の負担と給付の関係をみるに当たっては、その背景にある都 市化、核家族化による、私的な扶養から年金制度を通じた社会的な扶養への移行という ものがあるということがございます。2つ目に、少子化と長寿化の進行による現役世代 にかかる扶養負担の高まり、これはどのような形態であれ少子化と長寿化が進めば、現 役世代にかかる扶養負担は高まるというものでございます。それから、3つ目に、生活 水準の向上と実質的な保険料負担能力の上昇というものがございます。この要素を合わ せて考慮することが必要であって、年金制度における負担と給付の関係のみで世代間の 公平、不公平を論じることはできないのではないかという点によく留意する必要がある のではないかということでございます。いつも数字だけが先行するということがござい ますけれども、これらの点によく留意した点でこれらを考えていくということが必要で はないかということでございます。  下の図をご覧下さい。まず、左の図でございますけれども、第1番目に、「年金制度 における世代間の負担と給付の関係をみる際に考慮すべき背景」ということで、今挙げ ました事項を簡単に図にまとめてございます。  1つは、都市化、核家族化による私的な扶養から年金制度を通じた社会的な扶養への 移行ということでございまして、この図を見ていただきますと、昭和30年代から40年代 あたりは私的な扶養の占めるウエイトが高かったと考えられるわけでございます。これ らのときの現役の人の御両親は、年金を受給されていない人が多かったということでご ざいます。両親や祖父母を扶養しながら年金保険料を負担していたという世代でござい ます。  それが現在に至りますと、年金制度が成熟いたしまして、私的な扶養から年金制度を 通じた社会的な扶養に置きかわっているという現象がございます。そして、また将来的 には少子化と長寿化の進行によりまして、現役世代にかかる扶養負担はどういう形であ れ高まっていくということが推測されるわけでございます。  ちなみにこの扶養負担の形態が変わっていることを裏づける数字といたしましては、 65歳以上の者のいる世帯のうち三世代世帯の占める割合が1970年(昭和45年)では44.4 %だったものが、2000年(平成12年)には20.6%になっています。また、65歳以上の者 のいる世帯のうち、夫婦のみ、あるいは単独世帯の占める割合は、1970年には16.8%だ ったものが、2000年には46.2%に増えているという現象がございます。したがいまし て、昭和30年代から40年代現役だった人につきましては、保険料負担は相対的に小さく なっています。また、年金制度が未成熟でございましたので、加入できた年数も相対的 に短いということでございまして、これらの人に言えますことは、同程度の年金給付で も負担に対する比率は大きくなるということでございます。時どきこれらの古い世代は 非常に大きな額の年金を受給されているというふうな誤解があるわけでございますが、 年金額そのものはここの表に示してございますようにそれほど大きなものではございま せん。大体65歳、70歳、75歳、80歳を通じまして20万円ぐらいの水準の給付が行われて いるということです。  それに対しまして、保険料の負担が相対的に小さかったために、給付と拠出の倍率が 大きくなっている、そういう現象があるわけでございます。  また一方で、生活水準の向上と実質的な保険料負担能力の上昇というものがあったわ けでございまして、昭和30年代から40年代の世代でございますけれども、この図にござ いますように、勤労者世帯の可処分所得が1971年(昭和46年)では11万4,309円という 水準でございました。当時の収入では3%から4%の保険料水準であったわけでござい ますけれども、この保険料の負担もかなりの負担であっただろうと考えられるところで ございます。現在の勤労者世帯の可処分所得は、2001年は46万4,000円の水準になって います。1971年と比べまして、この間、物価が3倍ぐらい伸びておりますので、実質約 1.4倍の可処分所得の向上ということになっておるわけでございまして、保険料率その ものは高くなっておりますけれども、負担感といたしましてはまた違うものがあるので はないかと考えられるところでございます。ちなみに1971年と2001年のエンゲル係数、 住宅1人当たりの畳数、大学等進学率等をここで参考数字として挙げさせていただいて おります。  今後もこれまでと比べ、緩やかだけれども、持続的な経済発展というものがあれば、 それとともに保険料負担の水準を引き上げてまいりまして給付水準を維持していくとい うことが可能ではないかと考えられるところでございます。  この一番下に書いてございますように、「後世代は先世代の社会資本蓄積の成果を享 受できること、先世代から後世代への教育費、住宅取得費、相続等の経済的移転がある ことなども考慮すべき要素」であろうと考えられるところでございまして、年金制度の 内側だけで世代間の給付と負担の関係を論じるというのはやはり偏った議論になるので はないかということをここで記してございます。  年金制度における負担と給付の関係だけで世代間の公平を論ずることはできないけれ ども、年金制度の給付と負担の見直しの議論の参考として、この世代ごとの保険料負担 額と年金給付額の関係というものを試算した結果をここで掲げてございます。  この試算結果を見る際の留意事項でございますけれども、若い世代ほど給付額が増大 していくということ、それから、賃金上昇率により65歳時点の価格に換算して比較して いるということ、また、支給開始年齢の引上げの影響を除去して比較もしているという こと、厚生年金における事業主負担分を含めずに比較しているということ、ここを留意 点としてまとめてございます。  その結果でございますが、この下の表でございます。ここでは、2005年におきまし て、70歳の人、40歳の人、10歳の人、それから20年後に生まれてくる−20歳の人、これ らの世代につきまして、その保険料負担の総額と年金の給付額をまとめてございます。 例えば、70歳の人でございますけれども、保険料の負担額は700万円であったわけです が、この方が65歳になる時点、つまり2000年の時点で換算いたしております。その保険 料負担総額は700万円で、これは賃金上昇率により65歳時点の価格に換算して比較して いるということでございまして、いわゆる再評価をしているのと同じでございます。そ れから年金給付額は5,800万円ですが、下の方に書いております4,500万円というのは、 65歳以降だけで考えますと4,500万円という数字になるということでございます。こう いう結果になりますので、負担、給付の比率というものは8.4倍。65歳以降だけで比べ ますと6.6倍というものでございます。  なお、右側に括弧書きで書いてございますのは、これは国庫負担が1/3の場合を計 算したものでございます。同様に40歳、10歳と計算いたしておりまして、40歳、10歳は それぞれ2.7倍、2.2倍となるわけでございます。また、2005年の−20歳につきまして は、2.1倍になるということでございます。  先ほど留意事項のところで触れさせていただきましたように、年金給付額は世代が下 になるに従って上がっておりますが、これはその世代の65歳時点での価格、賃金上昇率 により換算した価格で表記しておるからでございます。以上がこの大きな表のまとめで ございます。  資料の2ページから6ページまでは、今申し上げましたことが書かれておるところで ございます。資料の7ページに、より詳しい計算結果を載せてございます。ここでは、 まず厚生年金でございますが、厚生年金の国庫負担割合が1/2の場合につきまして、 給付水準維持方式の場合、保険料固定方式の場合、この保険料固定方式の場合につきま しては、実績準拠法と将来見通し平均化法の両方のケースについてこの倍率を記してご ざいます。2005年における年齢が70歳の世代について見ますと、65歳以上の給付につい て、給付水準維持方式の場合で6.6倍、保険料固定方式の実績準拠法の場合でも同じ6.6 倍。これは先ほど表で見ていただいたところでございます。それから、将来見通し平均 化法では6.5倍となっておるところでございます。これは保険料固定方式になりますと、 給付水準が物価スライドよりもさらに調整されることになりますので若干給付、拠出の 比率が小さくなっています。実績準拠法の場合は6.6倍と変わらないところでございま すけれども、端数では若干下がっているということが言えるわけでございます。  これが2025年生まれ、20年後に生まれる人につきましては、この倍率が給付水準維持 方式で2.1倍、実績準拠法で同じく2.1倍、将来見通し平均化法では2.2倍となるわけで ございます。将来見通し平均化法の方が調整速度が速いために最終的な給付水準は高く なるところでございますので、給付・拠出倍率が若干実績準拠法よりもよくなるという 結果もここに出ておるところでございます。  ここで国庫負担割合が1/2の場合、次のページが1/3の場合でございまして、 1/3になりますと、最終的な給付、拠出倍率は1.9倍ぐらいになるというところでご ざいます。  国民年金について同じような計算を行いますと、国庫負担割合が1/2の場合で1.6 倍、将来見通し平均化法であれば1.7倍というふうな水準になっております。それから、 国庫負担割合が1/3の場合は1.1倍程度ということでございます。  11ページは計算方法でございますので、ここは省略させていただきます。  それから、12ページでございますけれども、今、見てまいりました給付総額と拠出総 額を比べる方法でございますけれども、賃金上昇率によって異時点間の2つの価値を換 算していたという方式でございます。ここでA:賃金上昇率による換算方式というもの ですが、そのほかに異時点間の価値を換算する方法としては、B:運用利回りを使う方 法、C:物価上昇率による換算方法、D:単純に累計していく方法、このようないくつ かの考え方があろうかと思われますので、それぞれのケースについてもここでは結果を 記してございます。  厚生年金の場合、A方式が、先ほど見ていただいた結果であったわけでございますけ れども、B方式、これは運用利回りによる換算方式で、賃金上昇率による換算方式の場 合、賃金上昇率を2%と見ておりますが、運用利回りによる換算による換算方式の場合 には、その換算率が3.25%ということにここではなるわけでございまして、その換算率 が高くなりますと、この倍率は低くなり、1.4倍というものになっております。  また、物価上昇率による換算方式は1%と見ておりますけれども、これはAのケース よりは換算率が小さくなりますので、その分、倍率は高くなり3倍になります。  また、単純累計方式は、これはある意味で換算率を0と見ているのと同じでございま して、4.2倍ということになるということで、換算率が小さいほど倍率は大きくなる、 換算率が大きければ倍率は小さくなるというものでございます。以上が給付と負担の関 係でございます。  それから、次に15ページは、厚生年金の保険料率の上限を現行水準13.58%の率に固 定した場合、あるいは年収の15%を上限とした場合の給付水準の調整割合を計算したも のでございます。上の箱ですが、国庫負担割合が1/2の場合で、およそ32%程度一挙 に名目年金額を削減しなければならないという調整割合が出てまいります。また、国庫 負担が1/3の場合には、一挙におよそ37%程度名目年金額を削減するという結果にな ります。  また、保険料率の上限を年収の15%とした場合には、国庫負担割合を1/2とした場 合におよそ26%程度、1/3の場合で32%程度一挙に名目年金額を削減しなければなら ないという結果になってございます。  それから、16ページからは、厚生年金における基礎年金拠出金の財政規模でございま す。ここでは給付水準維持方式と保険料固定方式の実績準拠法、将来見通し平均化法の 3つのケースにつきましてその結果を記してございます。給付水準維持方式の場合でご ざいますが、この左の太い四角で囲まれている部分でございますが、基礎年金拠出金の 保険料率換算は対総報酬で平成17年度には3.8%でありますものが、平成72年度(2060 年度)には7.1%に上昇するという結果になってございます。  それから、実績準拠法のケースでは、基礎年金拠出金の保険料率換算は3.8%から72 年度の6.3%に上昇します。給付が調整されますので、その分だけ対総報酬に対しては、 先ほどの給付水準維持方式よりは低くなっているということでございます。  将来見通し平均化法の場合には、最終的に給付水準は実績準拠法よりも若干高くなり ますので、その分だけ基礎年金拠出金の保険料率換算が72年度で6.4%と高い水準にな っているということでございます。  次は、「短時間労働者に厚生年金の適用を拡大する場合の対象者数の推計」というこ とで、これは以前、第17回の年金部会で一度御報告させていただいたところでございま すが、そのときにはまだ平成13年の公的年金加入状況等調査がまとまっていなかったと ころでございまして、今回は平成13年公的年金加入状況等調査を取り入れまして推計い たしております。  結論でございますが、週の労働時間が20時間以上の者に厚生年金を適用拡大するとい たしますと、312万人程度の拡大が見込まれます。そのうち1号被保険者から2号被保 険者になる者が122万人、3号被保険者から2号になる者が131万人、非加入からなる者 が59万人と、このような内訳になっております。この非加入でございますけれども、20 歳未満又は60歳以上の者のみをここで非加入といたしております。20歳から59歳の者は 1号に含めているということでございます。  また、週の労働時間が20時間未満で、かつ年収65万円以上の人を含めるという場合に は、この20時間未満かつ65万円以上に相当する人は93万人おりまして、1号から来る人 が36万人、3号から来る人が39万人、非加入から来る人が18万人いるということでござ います。  それから、これらの者の厚生年金の財政に与える影響を非常に粗い試算でございます が、給付維持方式のケースですが、まず個人ごとに見てみますと、これらの新しく適用 になる者の総報酬月額をどのようにみなすかということにつきまして、そのみなし方で 若干財政影響が異なってまいります。総報酬月額を5万円とみなした場合には保険料収 入の増は13.9万円になります。これに対しまして厚生年金の支出増分は17.2万円になる ということで、支出増の方が大きいということになるわけでございます。それから、現 在のこれらの対象者の平均収入を8万円とみなしますと、保険料収入が22.2万円、厚生 年金の支出増分が21.6万円ということで、ほぼ収支が同程度という状況でございます。 それから、平均収入を10万円とみなしますと、保険料収入が27.7万円、厚生年金の支出 増分が24.6万円ということになりまして、若干の収入増ということになるわけでござい ます。  これをマクロで見ますと、週所定労働時間20時間以上の者を適用基準とする場合に は、つまり312万人への適用拡大を仮定したという場合には、5万円の場合で1,000億円 の支出増、8万円の場合で収入と支出が同程度、10万円の場合で1,000億円の収入増と いう結果になってございます。  年収65万円以上の人も適用するというケースでも、ほぼ同じ結果になってございま す。また、保険料固定方式の場合につきましても同じような結果になっております。以 上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。やや、盛りだくさんな内容でございましたけれども、早速 でございますが、今の説明につきまして、どの点でも結構でございますので、質問ある いは意見ございましたらどうぞ。高橋課長、何かございますか。 ○ 高橋総務課長  少し補足をさせていただきます。資料の最初の世代間の負担の関係でございますが、 これは要求があった資料に対するお答えでありますけれども、もう10年以上議論が続い た話でありますから、私どもは事務局というより行政庁として手短にお話し申し上げた いのですけれども、私どもはこの資料にいくつかメッセージを込めております。  1つは、世代間の負担給付比率についてですが、これは先ほど説明申し上げましたよ うに、割引率に使う数字によってどんどん数値が変わりますので、絶対値の数字、何倍 であるかという数字の議論をすることはあまり意味がないのですけれども、いずれにし ても高齢者の方ほど負担に対する給付の倍率は高くなるということで、これは否めない 事実であります。ただ、高齢者ほど高い年金を受けているのではないかという非常に大 きな誤解があるということでございまして、これは全く誤りであるということを申し上 げておきます。1枚目の大きい資料をご覧いただきますと、左側の真ん中、三角形がつ いておりますそのすぐ下に、「厚生年金の平均年金月額」、小さい字で書いてあります けれども、年齢別に5歳ずつ65歳から80歳まで切っておりますが、平均年金額はほぼ同 じです。ですからこの集団の中でも年齢が高いほど倍率は高いわけですけれども、年金 額はほぼ同じだと、そういう制度の歩みをしてきているのだということについて十分御 理解を賜りたいと思います。  それから、2番目のメッセージとして、この倍率は年金制度の中の給付と負担の倍率 です。年金制度というのは社会全体の子どもによる親の扶養の中の一部で、今はほとん ど占めていますけれども、その中の装置の1つということです。昔は年金制度は存在し ていないわけですから、全体の扶養の形態の中で公的な扶養(年金による扶養)という のは非常に大きいウエイトになってきたということでありまして、年金制度の中だけで 議論していると、年金制度の外にあった大きな扶養の形態の変化をすっかり忘れている ということになるわけでありまして、そこをよく見ないといけません。つまり、もし倍 率だけで議論すれば、少し言葉が激しいですけれども、歴史観のない、全く歴史を踏ま えない議論に陥ってしまうということでありまして、そこは過去50年間の年金制度の歴 史をもう一回よく考えていただきたいし、あるいは社会全体の扶養の歴史を考えていた だきたいということがメッセージの2つ目でございます。  3つ目は数字によりますけれども、払ったものは戻ってくるということは数字でご覧 いただいたとおりであります。  4番目のメッセージとしては、やや技術的な議論に入っていきますけれども、私ども が申し上げたいのは、給付水準維持方式と保険料固定方式の下における実績準拠と将来 見通し平均化法を並べておりますが、年齢別で見ますと、高い年齢の方は倍率を変えよ うがありません。といいますのは、既に保険料負担の期間が終わっているからです。で すからこの倍率を変えていくということは給付にどう踏み込むかという話しか残ってお りません。保険料を今さら取り直すことはできるはずはありません。  それから、若い方、例えば−10歳、−20歳ということになれば、この辺の数字はほと んど動きません。これは長期均衡の計算上は、制度が成熟しきった状態ですので、この 辺の数字はあまり変わりないということで、もしいろいろなやり方でその倍率を見てい くということになれば、影響度は、かなり高齢な方と将来の受給者の真ん中、まさに今 ここにいる我々の年代の倍率がどのように変わるのかという議論になるということはひ とつ御理解を賜りたいと思います。これを御覧になりますとおわかりになるとおり、先 ほど御説明申し上げましたように、調整のスピードの速い平均化法は一番倍率の変化が 変わるということでございまして、これはもちろん保険料の上げ方と給付水準のマクロ スライドをどのようにかけていくかという話になるのですけれども、年齢的には、60、 50、40のところに影響が大きく出てくるというのはその数字を見ておわかりになると思 い ます。私ども特に言いたいのはその4点でございます。 ○ 宮島部会長  わかりました。それでは、どうぞ、矢野委員。 ○ 矢野委員  最初の世代間の負担と給付の関係について、この中に説明されているとおり、保険料 負担額には事業主負担分が含まれていないという前提での比較になっているわけです。 御承知のとおり、事業主負担分は、人件費の一部であり、それがいわゆる月々払われる 賃金、あるいは賞与と同じものであるかどうかについては、いろいろ議論があるのです けれども、給付のもとになる投入は労使が拠出しているわけで、それが厚生年金保険料 というものであります。したがって、比較をする場合には事業主負担分も含めた倍率の 比較を検討をすべきだと思います。  最近、私どもが伺う前に新聞紙上に、2.2倍とか2.1倍というような数字が踊っており まして、これは甚だしく誤解を招きやすいものではないかと思っております。どういう 事情であのような情報が漏れたのかわかりませんけれども、やはり投入に対する産出と いいますか、事業主負担分も含めた比較をすべきだと思います。現に平成11年版の年金 白書、これは厚生労働省がつくったものでありますけれども、それでは事業主負担分も 含めた比較が行われているわけでありまして、そうした連続性という観点からも急にこ こで比較方法を変えて、あたかも見た目の数字がよくなるようなことは誤解を招くので はないかということを指摘しておきたいと思います。  歴史的背景というもので、要するに社会保障制度というものが、介護保険もそうです けれども、家族でやってきたことを社会化していくという方向に動いてきているわけ で、これは労使ともにそういうことを是として今日までやってきたわけであります。そ のこと自体は非常に重要なことだと思っておりますが、単純に比較することの妥当性と いうものについてはいろんな議論が出てきてもいいと思いますけれども、やはり最もわ かりやすい数字上の比較によって事実を伝えていくということは国民に対するメッセー ジだと思いますので、ここのところはきちんとしていただきたいと思います。  それから、保険料率を現行水準、あるいは15%とした場合の給付水準の調整割合とい うことで、極めて単純化されたカット率が出されているのですが、これも甚だ誤解を呼 びやすいと思います。将来見通し平均化法で試算しますと、72年度(2060年度)で保険 料率が20%で、基礎年金拠出金の保険料率が6.4%ということは、もしこの部分が税方 式化すれば、保険料は20.0%マイナス6.4%の13.6%でいいと理解できるのではないか と思います。ですからシミュレーションする以上は、前提条件を少なくとも何種類か設 けて、国庫負担割合が3分の1から2分の1になった場合はどうなるか、2〜3通りの 数字が出てきてしかるべきではないかと思います。基礎年金を税方式化すれば、その 分、社会保険料は引き下げてもいいわけですから、それはある意味では大事なメッセー ジだと思います。保険料は上がる、税も上がるというのでは納得を得られないと思いま す。  それから、短時間労働者の問題ですが、数字については、今までよりもより精緻な数 字が提出されたと思っております。405万人ということでございますが、いろいろな背 景事情があり、必ずしも経済団体の会員であるかないかということとは関係なしに、会 員でない団体もたくさんあるわけですが、いろいろ私どもなりに調査をいたしますと、 例えば日本百貨店協会とか日本チェーンストア協会などいくつかの団体があるのです が、そこで大体220〜230万人の対象者がいるということです。大分前にお話した外食産 業、日本フードサービス協会の傘下では、150万人でありまして、両方合わせて370〜 380万人の対象者がいるわけで、これが現実に適用対象になった場合に経営上の問題に 直面するだけでなくて、雇用の問題に本当に響いてきはしないだろうかという大変強い 危惧を持っているわけでございます。議論する場合には、ぜひそういう現場の実態、 300〜400万人が対象となる現場の実態をよく知った上で、事実を認めた上で議論を進め ていく必要があると思います。  そういう観点からしますと、例えば未納・未加入者の問題の抜本的解決を図るとか、 任意適用事業所のフルタイム労働者への適用の在り方なども検討しまして、先にやるべ きことをやった上で慎重に検討すべきであると思います。少し意見も交えましたが、資 料についての指摘は以上にしたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。 ○ 杉山委員  いくつかコメントをさせていただきたいと思います。ちょうど私は1965年生まれにな りますが、単純に資料のとおりにはならないと思います。これだけの負担で、これぐら いの給付なのだなというようにこの数字など見て、これぐらいならいいかと感じるわけ なのですけれども、では本当にこれが給付を受けられるのかということになってきます と、また変わるのではないかと思います。例えば、65歳から本当にもらえるのだろう か、67歳から支給するという話も出てきたりしているのを考えますと、若者世代はどう もこれで納得ができるかというと、難しいのではないかと思うわけです。若い人たち は、これまで培ってきた日本の経済発展のところで生きているんだよと言えば、そのこ とは十分承知もしているし、働こうということで頑張るとは思いますけれども、であれ ば、こちらも納得してもらうための努力はいろいろ必要であろうと思います。例えば、 国は基礎年金を3分の1から2分の1にしますと約束をしているわけですから、それは 国もやっぱり守るべきではないかと思います。  そのようにすることを見せて、それで納得してもらうということが必要だろうと思う のと同時に、例えば高度経済成長のときというのは、すごくポジティブで、今日より明 日、明日より明後日はすごくすばらしい日本が待っているのだという中で頑張ってこら れたと思うのですけれども、今はどうかといいますと、家のローンだ、教育費だという ように経済的負担に追われながら、それでリストラの恐怖に喘ぎながら残業して働くと いう状況の中で保険料を負担をしているという現実もやはり見逃せないと思います。こ れを年金でどう対応するかということは難しいかと思うのですが、「現役世代の負担が 過重なものにならないように配慮するとともに、次世代育成支援策の拡充などを図り」 と書いてあるように、次世代育成支援対策法もできましたし、男性を含めた働き方の見 直しというものがそうした過重な負担感を変えていく1つの手だてになるのではないか と思っております。  もう一つあるのですけれども、常々現場にいて感じることなのですけれども、例えば 同じ条件で、同じように保険料を納めている20代、30代でも、親の経済状況によって暮 らし方が全く変わってしまうわけです。例えば、我が子にすごくいい教育を与えたいと いうときに、自分の両親からの経済的援助を得られる人もいれば、そうでなくて本当に 保険料で家計が圧迫されているような家庭もあるという格差がこれからどんどん広がっ ていくのではないかという危惧が少しあります。  その辺の若い世代の高齢者への仕送り分をどう是正していくのかということもこれか らは考えていった方がいいのではないかと思っています。それは何よりも同じチャンス が与えられて、自分の力を活かして、いくらでもサクセスストーリーが描けるような、 様々なチャンスが与えられるような制度の緩やかさみたいなことが必要なのかというふ うに思います。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 近藤委員  先ほど数理課長と総務課長から資料の説明いただいたのですけれども、7ページをあ けていただきたいのですけれども、(2)から(1)を引いた数字は、1935年生まれで5、100 万円、1945年生まれで4,500万円、1955年生まれで4,500万円、1965年生まれで4,800万 円、1975年生まれで5,400万円、1985年生まれで6,400万円、1995年生まれで7,700万円 となります。世代間の損得論が出ているのですけれども、年金制度というのは相互扶助 の中でやっているわけで、各世代において、この試算によればほとんど変わらない額が 制度の中で補助されているわけです。ですから倍率だけの議論、数字というのは意図的 に変えればいくらでも変えられるということは先生方から教わったことですけれども、 実際的に補助される額というのはこの試算でいけばほとんど変わらない。  ただ、問題なのは、基礎年金の国庫負担割合が1/3の場合、ここでの数字を見てみ ますと、1945年生まれの方を引き算すると1,100万なんですけれども、1975年生まれの 方は500万になっています。ところが国庫負担が1/2ですと、それが1,100万、1,100 万、ほとんどバランスがとれているんですね。ですから国庫負担は1/2に早く持って いかないとこのバランスというのはとれないのではないでしょうか。この数字を見て感 じました。ですから数字というのは割り算だけではなしに引き算もやってみる必要があ るのではないか。余計かもしれませんけれども。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは小島委員。 ○ 小島委員  私も簡単に2点ほど意見だけを述べます。初めの資料、世代間による負担と給付の関 係について、私も従来から言っていますように、年金制度だけでの保険料負担と給付の 関係で不公平論を議論すべき、あるいは損得論を議論すべきではないという立場です。 最後に高橋課長が指摘されましたように、社会保障というのは大きな歴史的な文脈の中 で考えていくということからいって、単に年金制度内での損得論で議論すべきではない という立場であります。そういう意味からすると、今回出されているこの各世代毎によ る給付と負担の比率の問題というのは、その数字だけを使って何か議論するというのは 適切ではないのではないかと思っております。その中で矢野委員から指摘されました、 その際の厚生年金の場合の事業主負担をどう考えるかという点もありますけれども、そ れも意見としてはわかりますけれども、結局はそれを使って事業主負担を入れたとして も半分、比率が下がるという話でありますので、その議論は数字として出す、出さない 程度のものではないかと思います。全体の給付と負担という関係で言えば、社会保障全 体あるいはそのほかの社会制度全体の中で考えていくということが重要ではないかと思 っております。それが1点目です。  2点目に、厚生年金の保険料の水準の問題、基礎年金拠出金の財政規模の問題で、こ こで矢野委員も指摘されましたけれども、厚生年金から基礎年金への拠出金の保険料換 算ということで出されております。例えば給付水準維持方式を見てみますと、2025年、 保険料換算すると5.1%ということでありますので、将来の保険料見通しから、この換 算率を引けば、それが厚生年金の保険料ということになりますので、私たちが主張して おります税方式にした場合の保険料水準になります。私の方からの推計として、2015年 時点で基礎年金を税方式にした場合に厚生年金の保険料が15%程度ということで同じよ うな数字になります。我々の試算がそれ程間違ったものではないということで、改めて 確認できる数字ではないかと思っております。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、翁委員どうぞ。 ○ 翁委員  今回、この負担と給付の関係についてきちんと説明をされながらこの数字を出された ことは、私自身は特に若い世代に理解を求めていく上では一歩進んだと思いますし、今 後、今まで出てきました所得代替率とか保険料水準と並びまして、世代間格差について 数字の持つ性格に十分注意しながら1つの参考として改革を評価していくという形で使 っていくことができるのではないかと思います。ただ、いずれにせよ、格差の問題、格 差を拡大するのではなくて、格差を是正していくというような方向で改革をすることを この指標で検証していくことが必要だと思っています。  いくつか感想があるのですが、これは御指摘があった点ですけれども、この倍率は何 を保険料負担額の計算の際に用いるかということで大きく変わってきて、従来は運用利 回りでしたけれども、今回賃金上昇率を使っていて、これによって、保険料の総量は大 きく異なってきます。何を前提にするかによって試算は大きく異なってくるということ については、きちんと今回お話があったように説明していくということが非常に重要だ と思っています。  また、例えば急激に少子化が進んだ場合とか、または高位推計になった場合にどのよ うになっていくのかということについても、こういった指標で見ていくことができれば と思っています。  この比較で見る限り、世代間格差の是正という観点からは、給付水準維持方式よりも 保険料固定方式、保険料固定方式の中では実績準拠法よりも将来見通し平均化法という ような回答が出てくるかと思うのですが、一方で、今まで議論に出てきていますよう に、今回の保険料固定方式は少子化の分を織り込んでいますけれども、例えば高齢化と か経済成長が、先ほど若杉先生からもお話がありましたけれども、幅のある見通しをと っているわけですけれども、これがぶれるといったときにどういう形でリスクを、どの 世代が負担していくのかということに関しては必ずしも決まっていないわけで、それを どのように世代間で分かち合っていくのかということについても議論をしていくことが 必要なのではないかと思っております。  それから、今日お示しいただいたものでもよくわかるように、保険料固定方式に移行 するだけでは大きな格差の問題は是正されないわけで、これは今の経済社会の少子化、 経済成長が大きなテーマになってくるわけで、こういったことをいいシナリオに持って いく方向で改革を考えていくことが必要ですし、同時に、この保険料固定方式だけで改 革できない部分については、いろいろな角度から検討して安心できるような、そしてか つ若い世代が理解できるような改革にしていく必要があるということを感じました。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。岡本委員。 ○ 岡本委員  世代間の格差の問題で、今の現役の皆さん方が感じておられる意識なりについての背 景を、私は2つの側面から理解しています。1つは今日詳しく御説明いただきましたよ うに、今の保険制度を通じていくら負担していくら給付があるか、こういう数字上の問 題で、これは歴史的な背景等々踏まえて、今日の御説明があって、それはそれで私は理 解しておりますが、少子高齢化が進む中で、現役の方々は今後どのように保険料の負担 が増えていくのだろうかということについての不安は現実問題としてたくさんあるわけ であります。そういう不安の中で自分たちの周囲を見ると、高齢者の中には相当数の余 裕のある方が多くいらっしゃるのではないかと。したがって、保険の中で自分たちの給 付と負担の問題だけでなくして、何らかの形でそういう高齢者の方々なり既受給者の方 々が、支え手として年金の財政に貢献してもらえないのだろうかという期待はあるわけ でありまして、そういう意味で、その議論というのは国庫負担の在り方の議論にもなる でしょうし、既受給者の税制の問題等々にもなるでしょうし、そういう部分について も、今回全体の制度改革の中できちんとメッセージというか、考え方もそれなりに整備 するということが現役の方々のそういう背景にある気持ちに対して応えられるものにな るのではないかというように感じておりますので、その辺について意見を申し上げてお きたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございます。あまり時間ないのですが、どうぞ、堀委員。 ○ 堀委員  それでは、簡単に2点だけ述べます。1つは、世代間の公平についてです。1ページ の資料のようなことを私は十数年前から述べていまして、こういうことを数字で出して いただくということは大変ありがたい。しばしば世代間の公平について、2つの問題を 混同しているのではないかと思います。1つは、いわゆるバース・コーホート・プロブ レム(出生コーホート問題)です。これは1940年代に生まれた人と1960年に生まれた人 の損得の関係です。もう一つ、エイジ・グループ・プロブレム、これは年齢グループ問 題ということで、現在の高齢者と現在の若者について不公平があるかどうかという問題 ですが、これらは分けて考えた方がいいと思います。前者の出生コーホート問題という のは、それを取り巻く社会経済の情勢が違ってくるので、こういうことを議論するのは 私は意味がないと思っています。特に年金制度の中だけで議論するのは意味がないと思 います。例えば、私はよく言うのですが、私は戦時中生まれなのですが、戦後はひもじ くて何も食べるものがなかったが、今は飽食の時代であるというように、社会経済が違 っているのに年金だけで世代間の公平を議論してもあまり意味がありません。それか ら、年齢グループ問題というのは、今の若者の賃金と比べて年金水準は高いか、低いか という問題ですが、この問題は議論する必要があります。  2点目ですが、先ほどから基礎年金を税方式にした場合、保険料が下がるという議論 が出ているのですが、保険料を下げてもその分税金が上がるので、マクロ的に見れば同 じです。だから保険料が下がるということだけで税方式にするというのは私はあまり理 由がないと思っています。以上です。 ○ 宮島部会長  それでは、もう既に、後半お願いしております総括的な意見にも関わる議論がござい まして、一部そこに入っていると思います。ですから、またそのときに、今、御発言の 機会なかった方にはまた改めて御意見をいただくことにいたしまして、それでは、20分 まで、ごく短時間でございますが、休憩をとりたいと思います。20分に再開したいと思 いますので、少し息を抜いていただきたいと思います。                   (休憩) ○ 宮島部会長  再開いたします。前回、審議整理メモにつきまして、委員の方から御意見をいただき まして、その中で、構成をもう一度考え直したいというのが私たちの意見でございまし た。それから、もう一つ、特に改正の視点と体系について多くの意見が集中いたしまし たので、私と神代委員から、事務局に対しまして、1つは構成について、少しこういう 形で変えてはどうかという点を指示しました。  もう一つは、特に視点と体系につきましては、こういう形の書き方ですと、なかなか ニュアンスが伝わりにくいので、そこのところはある程度意見書を少し意識して文章化 してみたらどうかということで作業を行いました。細かい字句までは私たちも見ており ませんが、まだ骨格が出来ていないなどたくさんあると思いますけれども、その点をま ず今日は事務局から、簡潔に説明をしていただきます。その後、意見書が本日出ており ますが、それについて説明を伺って、そこから本格的な総括審議に入りたいと思ってお ります。それでは事務局から簡潔によろしくお願いします。 ○ 高橋総務課長  まず、資料3「審議整理の構成」でございます。これは前回の部会で提出した「審議 整理の構成」の修正でございます。基本的には大きく3つに分けておりまして、「基本 的な視点」、「個別論点についての考え方」、「公的年金制度の運営」ということで、 制度の実態的な中身というよりも運営の仕方をどのようにするかということで少し分け ております。  あと、ご覧いただければおわかりになりますが、3の「給付と負担の在り方」で、保 険料固定方式、マクロ自動調整などは、何本か項目を立ててありますが、給付と負担の 見直し方向に入れております。そのほか、障害年金の立て方、積立金の役割と経済前 提、そういうものについて変更を加えております。  それから、資料4でございますが、今、部会長からお話ございましたように、まさに 基本的な視点と公的年金制度の基本的な考え方と背景というものについて多少文章化を しております。これ自体、まだ審議の整理メモということで、全体の文章にしようとす る場合、若干御意見いただいてない部分などがありますが、今まで出た御意見等を文章 化したものが大体こんな感じかなということでございます。読み上げはいたしません が、「基本的な視点」のポイントとして、括弧の中をたどっていただければわかります が、(国民皆年金の堅持・持続可能な制度の構築)、(制度に対する信頼性の確保)、 (公的年金制度の体系の在り方)、在り方そのものの議論は後の方に持っていっており ます。それから(給付水準の在り方)、(給付と負担の透明性・わかりやすさ)、(ラ イフコースの多様化への対応)、この辺が次の改正に望む姿勢、あるいは基本的な視点 ということでございます。  それから、(社会保障制度全体としての視点)と書いていますが、ここは、今、私ど もでもう一回見てみますと、総合的な検討ということで、国民負担率の議論をするのは ちょっと違うのかなという気がしておりますけれども、それは次に向けての作業の中で 紹介をしていきたいと考えます。  それから、「公的年金制度の体系」ということで、これは構成の2番目でございます が、これにつきましては、さらに今後とも検討を続けていくのが最良ではないでしょう か。もちろん現行の方式を維持するという話もありますが、もう一つは、基礎年金は税 方式で2階は社会保険の方式、全体の体系について報酬比例方式の体系にするべきでは ないかといった議論は出ています。それぞれについての特徴を書いてございますが、た だ、いずれにしても、それぞれの場合の前提条件の成熟度合がまだまだではないかとい うことで、「基礎年金を税方式にすることや、報酬比例年金への一本化及びその場合の 税財源による補足的給付を組み合わせることには様々な制約条件が存在しており、現行 制度に替わるものとして次期改正で実現を目指すべき選択肢となる状況には至っていな い。」ということで、そのままずっと議論を続けていくのか、このままにするのか、そ れとも現在の制度の下で、もう一回きちんと給付と負担の関係を中心にして措置を講じ るかということについては、そこは放置はできないということで、最後に書いてありま すように、「現行制度の下にあっても将来世代の負担が過重なものとならず、必要な給 付を確保していく措置を講じるべきである。」ということで結論づけているということ でございます。以上でございます。 ○ 宮島部会長  これについても、後ほど議論の対象にしていただくというのは当然でございますの で、それでは、今日は前回に引き続きまして、前回の審議整理メモについて御意見いた だいた中で、前回出されました御意見をいくつかはこういう形でとけ込ませるというこ とをしておりましたけれども、まだ、必ずしも今後の意見書の取りまとめの中でなかな か難しい問題も残っておりますので、特に第3号被保険者制度や、先ほど矢野委員から も意見がございました短時間労働者の適用拡大の問題も含めて、いくつか前回の議論で 必ずしも私たちとしても方向性なり、書き方ということについてまだ難しい点ございま したので、それらの点にやや重点を置きながら、これから御意見いただきたいと思いま す。併せてただいまの構成、基本的な視点、体系につきましても、御覧いただいて御意 見いただきたいと思っております。  まず初めに、前回の部会の後、井手委員、今井委員、大澤委員から意見の提出がござ いました。大澤委員は今日御欠席でございますので、大澤委員の概要を御説明の後、井 手委員、今井委員に御説明いただいて、それから全体についての総括的な議論に入りた いと思っております。それでは、事務局から大澤委員の御意見を簡単に御説明いただけ ますか。 ○ 高橋総務課長  大澤委員の意見書の要点は、パート適用の拡大を行うべきであるというのが御趣旨と いうふうに理解いたしております。今の雇用状況の中では、男女格差が縮小している方 向であるけれども、女性の間での雇用形態(フルタイムかパートか)による格差は拡大 しているということでございます。あとは、失業率なり賃金水準、それについての現状 の数字の御説明ありますが、ここは時間の関係で省かせていただきます。  最後に「所見」と書いてありますが、これはパートの処遇が相対的に低下している原 因、これはフルタイム雇用労働者に対するパートタイマーの処遇が相対的に低下してい る原因ということですが、これは労働力の供給圧力とともに、いわば能力発揮を自粛さ せる課税最低限の103万円の話と、年金制度、健康保険制度における扶養の認定の基準 の130万円の壁は否定できないとおっしゃっています。パートタイム労働者に社会保険 の適用を拡大することによって、フルタイム・パート間の賃金格差を是正すれば、正社 員の雇用の収縮を止める効果も期待できる。パートへの適用を実施すれば、フルタイム ・パートタイム間の賃金格差も是正できるだろう。そうすれば正規雇用へのいい影響も 出るのではないかというのが意見の御趣旨と理解いたします。  それから、私どもメモをいただきまして、大澤委員からは、途中に書いてある事実の 問題については、井手委員からのお話についてバックデータになるはずですというお話 をいただいております。 ○ 宮島部会長  それでは、井手委員お願いします。 ○ 井手委員  前回の審議整理メモが非常に「女性と年金」のことに関して意見としては大変拡散し ていて、実際に論議された以上に抽象的な印象を与える構成となっていたのではないか と思っておりましたが、前回にはそうした対案を持っておりませんでしたので、今回出 させていただいております。  私は前回の審議整理メモはあくまでも審議整理メモと思っておりましたけれども、 「意見書骨子」というような形で新聞記事も出ておりまして、その中で第3号被保険者 制度の見直しや離婚時の年金分割については各論併記で先送りの可能性もありというよ うな読まれ方もしているということも大きな危機感として持ったということから、今 回、審議整理メモをこのように分類したらどうかということで参考資料をお付けをした わけです。先ほど部会長のお話ですと、審議整理メモをバージョンアップしていくとい うプロセスはこの中ではとらずに、ここに今日ありますような文章での再整理というこ とですので、少し方向性として違うことをしてしまって恐縮という感じもあるのですけ れども、その上での参考にしていただければというふうに思っております。  特に「女性と年金」について、この構成をとった場合、第3号と遺族年金と離婚時の 年金分割については、委員の方の意見は確かに非常に幅があると思いますけれども、そ の現状認識、特に雇用機会ですとか賃金の男女格差が現在どうなっていて、それが将来 こうなるだろうということに関しての認識の違いによって大まかに分けられるのではな いでしょうか。そういう意味では、今後、多くの方々がこの問題をどうとらえるかにつ いて、どういう認識に立つかによってそれぞれの解決策、選ぶべき案が生まれてくると いうことからまとめるべきではないかという意見でございます。  特に、私自身が各論を審議する中で、第3号から順番に行ってきましたので、第3号 被保険者制度における夫婦の年金分割ということだけを考えたときには、基礎年金をそ のままにして報酬比例部分だけを分割するということでは公平性の問題が解決されない とか、あるいは3号にとどまる人が多くなるということで反対意見を持っていたわけで すけれども、この遺族年金まで通して考えてみたときには必ずしも今はそういう意見を 持っておりませんで、やはり一番男女格差の大きい遺族年金に関しての意見のとらえ方 から整理して、なおかつそれが特に1/2、3/4、3/5というような数字にも非常 にあらわれているのではないかと思います。  そういうものから離婚時をどうするか、あるいは離婚時を考えれば、婚姻期間中の夫 婦の年金分割をどう見るかということで軸が通ってくるのではないかという意味でも、 どのスタンスに立った意見かという分類ができれば、3号、遺族年金、夫婦の年金分割 を通して論議をまとめられるのではないかと思っております。  その上で、特に基礎年金制度をどうするかによって、例えばこの「8月20日の部会に おける議論を踏まえての再整理」の中にも出てくるわけですけれども、ここでは社会保 険方式をとるということで、その他の意見として税方式と報酬比例との意見があったと いうような位置付けで書かれておりますけれども、非常にこのものが目指している公的 年金制度体系の在り方の中での世代間、世代内、職業間、男女間のバランスの問題、ラ イフコースの多様化への対応をしていくために、税方式や報酬比例の一本化というもの が大いに貢献する面もある中で、ここである1つの案に軸足を置いてしまうと、その後 に出てくる税方式、あるいは報酬比例を前提とした意見がおのずと軽く扱われることに なるのではないかということを懸念しております。最初の部分でどこかに軸足を置いて しまうと、その後の議論が非常に方向性が定まってしまうということがないようなニュ ートラルな扱われ方が必要ではないかと思っております。以上です。 ○ 宮島部会長  あとは、何か御意見がありましたら、その中で細かい点についてはまた御説明いただ くことになると思います。それでは、今井委員どうぞ。 ○ 今井委員  私の方は、前回の20日の部会で提出された「審議整理の構成」のときに、今まで議論 されていた「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方」という論点が消 えていきそうな不安感を持ちまして、あえて今回こういうことをもう一度頭の中に置い て考えていただきたいということで意見書を出させていただきました。  21回目にありました社会保障審議会の意見書の中にも書いてありましたように、ここ を主体に考えたこれからの見直しをあえてしていただきたいということで、再度意見書 という形で出させていただきましたので、その点、よろしくお願いいたします。以上で す。 ○ 宮島部会長  わかりました。それでは、今、3人の委員からそれぞれ意見書の説明がございました ので、それを踏まえて、前回の続きでございますけれども、審議整理メモ、本日の構成 案、視点、体系等につきまして、文章化したものがございますが、それらを含めて一括 御議論をいただきたいと思います。なるべく今日皆さんの御意見を伺って、次回には少 し全体を文章化したものとして御議論をいただかなければならないだろうと思っており ますので、今日若干時間を延長するかもわかりませんが、渡辺委員どうぞ。 ○ 渡辺委員  特に3号の問題についての意見を申し上げたいと思います。私は前回欠席したのです が、前回の各委員から出された意見というものは拝読いたました。その中で、特に3号 問題については、この年金部会で結論を出すべきであるいろいろな意見が提起されてい るけれども、結論を出すべきであるという意見が見られました。あるいはそれが年金部 会の役割であるといったような趣旨の御発言もあったように、私は拝読いたしましたけ れども、私は反対であります。3号につきましては、今も御指摘があったように、いろ いろな意見が出ておりまして、まとまるものだったら年金部会として一本化するといっ た意見書を出すのは賛成ですけれども、どうもこれはいろいろな意見が出ているので、 これを素直に反映した年金部会としての意見を出すのが筋であって、決定するのは行政 府であり、あるいは立法府の仕事であって、私たち年金部会がそこまで強引に決定し、 それを行政府や立法府に対してこれを実現しろという権限まではないと私は認識してお ります。つまり審議会整理といったものは廃止すべきであって、あくまでも意見を出す べきであるというのが私の考えであります。ましてや、この問題につきましては、これ からの共働きの問題等々、今後考えていきますと、将来にわたって3号の問題を今この 時点で、私たちが意見が分かれている段階で決定するということはなかなか難しいとい うのもありますので、素直に各意見を併記すべきであると考えます。以上であります。 ○ 宮島部会長  ありがとうございます。いかがでしょうか。小島委員どうぞ。 ○ 小島委員  前回出されました整理メモついて2点ほど、それから今日示されました総論部分に当 たるところについて、こちらも2点ほど意見を述べさせていただきます。  初めに整理メモの方ですけれども、保険料引上げの問題であります。これは現在国民 年金、厚生年金の保険料が凍結をされておりますけれども、その解除を前提として、前 回の改正のときには国庫負担2分の1が引上げの前提であるということでありますの で、そこは国庫負担2分の1への引上げが前提であるべきだと私も思っております。そ れと国庫負担2分の1に引き上げた場合に、国庫負担の引上げ分に相当分の保険料は一 旦引き下げるということも前回の改正のときにそういう方向が示されておりますので、 そのことも確実に実現すべきだと思っております。そういう意味では、国民年金で言え ば、1万3,300円を3,000円ほど引き下げ、厚生年金であれば、そのときは恐らく保険料 の引上げの幅を1%ぐらい圧縮するということだと思いますけれども、私の意見として は、厚生年金についても保険料率の一旦1%引き下げるべきだと思っております。私が これまで主張しております税方式を展望すれば、国庫負担の引上げに伴う保険料の引下 げを実感するという意味でも一旦引き下げるということが必要ではないかと思っており ます。それが国庫負担引上げの意味、あるいはその理解を国民にさらに実感していただ く意味からも必要ではないかと思っております。それが1点であります。  細かな話なのですけれども、被用者年金の一元化のところであります。前回この一元 化問題について私は意見書を提出し、簡単に説明しましたけれども、私の意見書の方を 採用していただいた内容だと思います。その際、さらに被用者年金の一元化、統合とい いますか、厚生年金と被用者年金の統合については、早急に結論を得るということであ りますけれども、その際に関係者の合意を図りつつということを意見書で触れておりま すが、その辺も十分反映させていただければと思っております。以上が、整理メモにつ いての意見であります。  あと、今日示されました基本的な視点に関わるところですが、一番初めにあります 「国民皆年金の堅持」という項目で出されておりますので、そのことは、前回私も主張 した項目がまず触れられているということで、こういう整理が必要ではないかと思って おります。また、「国民皆年金を堅持し」という表現になっておりますけれども、この 国民皆年金の意味合いをどう理解するかということが、それ以降の、特に基礎年金の制 度の在り方についてどう目指すかというところに関わる問題であると思っております。 それは「制度に対する信頼性の確保」の「さらに」というところで「国民年金の未納・ 未加入問題については厳正に対処し」という表現が含まれておりますので、これはまさ に今の国民年金の未加入・未納問題をどう解決するかというところに関わります。それ と「国民皆年金の堅持」というところと深い関係があるのだろうと思っております。そ ういう意味では、現在の国民年金の未納・未加入あるいは免除者も含めると900万人ぐ らいの数にのぼるということでありますので、第1号被保険者2,200万人のうちの4割 ぐらいの人が実質的に国民年金の保険料を納めてないということです。残りの1,300万 人の方が国民年金の第1号被保険者で保険料を払っている。その1,300万人のうちの保 険料を納める人の6割しか保険料納付がないと。その1,300万人のうちの保険料未納分 が4割あるということでありますので、果たしてこれが現在の国民皆年金ということを 実質的になっているかどうかというところで議論が分かれそうで、この状態を放置して いること自体が国民皆年金を実質的な維持につながってないということになります。国 民皆年金を堅持するといった場合に、現在の国民年金第1号被保険者の保険料納付の問 題が重要な課題になると認識をしているというのが、1点目の意見であります。  そして2つ目が、基礎年金の税方式か、保険方式かという論点になりますけれども、 基礎年金の税方式という意見があったということで、この際も所得制限を伴わない税方 式という意見は私どもが主張している意見であります。  やはり社会保険方式が必要だという観点での意見は税方式についての問題点、批判と して出されているところがあります。「こうした保険方式の考え方は」という表現のと ころでありまして、所得・資産調査に基づく給付制限や水準の抑制につながりかねない という表現になっていまして、最後に「社会保険方式を堅持すべきである」となってい るが、これは確かにそういう御意見の方も何人かおられますけれども、この部会として 全ての人がそう思っているわけでもありませんので、ここを「社会保険方式を堅持すべ きである」という表現にすることについては、私たちは納得できるということではあり ません。その辺の表現の仕方について十分検討をお願いしたいということであります。 以上でございます。 ○ 宮島部会長  わかりました。ありがとうございました。杉山委員どうぞ。 ○ 杉山委員  女性と年金に関してなんですけれども、「女性の就業の増加、ライフコースの多様化 などを踏まえ」と書いてありますが、何回か読んでもよくわからないなと思うのは、ラ イフコースの多様化というのは、それは女性だけに限っているのだろうか、次の「個人 の多様な選択」というときの個人というのは女性を意識して言っているのかどうなのか ということです。本日提出されました大澤委員の意見書を参考にお話ししたいと思って いるのですが、大澤委員の意見書の「完全失業率」の記述では、「性別では男性の失業 率が高い傾向があり、03年6月は男性5.7%、女性4.8%で、5月にくらべて男性では 0.1ポイント悪化、女性では0.3ポイント改善。」とありますが、これは、男性が失業す るので女性が働き始めたという見方もできるわけです。  次の「年齢階層別失業率」のところですが、「男性の失業率が女性より特に高いの は、15−19歳(男性15.2%、女性10.2%)」というふうな指摘もあります。次の「賃金 水準」では、「98年以降、男性の賃金水準が低下している。」、その次の「男女賃金格 差」のところにも、「98年以降格差が3ポイント縮小している(主として男性の賃金低 下による)。」という記載があります。こういう状況ですと、ライフコースの多様化、 個人の多様な選択は女性に限らず、男性も女性も様々なライフコースを選び多様な生き 方をしているのだというような認識を持っていく必要があるのではないかと思います。  そこで、(ライフコースの多様化への対応)の「女性の労働力率の上昇や就労形態の 変化等により、ライフコースは多様化しており」というところに、「女性のみならず男 性のライフコースは多様化しており」というふうに文章を入れたり、「家庭を持つか持 たないか、持つ場合は結婚、出産、就労、離婚等の人生の様々な選択に対して中立的な 制度となるよう見直していくべきである」というような形で少し見直しをしていただけ ればと思います。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。矢野委員どうぞ。 ○ 矢野委員  全体の考え方、基本スタンスについてですが、自助努力を少し強調する必要があるの ではないかと思います。公的年金の持つ限界というのは、今、我々が直面している問題 からいっても皆さんは等しく認識しているところであり、やはり老後の人生設計につい て公的年金が基礎になるということはあるわけでありますが、それによく言われる共助 ・自助ということ、特に自助についてはっきり正面から取り上げて訴えることが大事だ と思います。  2点目は、表現上の問題でしょうけれども、「政治的困難性についての留意」という 記述があります。この年金部会のメッセージというのは、国民を対象にして考えるべき ではないかと思います。政治的に困難であるからそれは問題だというのであれば、保険 料も同じでありまして、保険料を上げることも税金を上げることも、それは大問題であ ります。それから、いろいろなほかの諸テーマについても政治問題になることは山ほど あるわけでありますから、こういう表現はよくないのではないかと思っております。  それから、基礎年金の国庫負担の2分の1への引上げですが、これは単に税方式とす べき意見の中で出された問題ではなくて、各論の方ではっきりするとは思いますけれど も、こうした総論に書くのであれば、附則であっても約束したことをどのように実現す るか、実現する方法についてもっと積極的に検討すべきだという意見を出すべきだと思 います。一旦国会その他で約束したことがいつの間にか消えていくというのはまずいと 思います。そういう継続性を重んじて、この報告書も書かれるべきだと思います。これ は前回も指摘したのですけれども、2分の1への引上げと保険料のアップというのはセ ットなのだという議論があったわけでありまして、そんなものは忘れてしまったという ことにはならないと私は思います。  もう一つ、国民皆年金との関係で、未納・未加入の問題をどうするか、これは実は非 常に重要な問題だと思っておりまして、この文章の中にも書かれているのですけれど も、少しそれが散漫になっているように思います。もっとそこを強調すべきだと私は思 います。言うなれば、今の基礎年金社会保険方式というのは、通常俗語で言われる「基 礎年金の空洞化」、未納・未加入問題を解決しなければ維持できないのだという強い危 機意識をこの年金部会で訴えるべきだと思います。それが強制徴収等につながるし、文 字どおりの「国民皆年金」につながっていくと思うわけでありまして、この点も改めて 強調すべき点ではないかと思います。  それから、保険方式か税方式かという問題ですが、この文章をあちこち見ますと、保 険方式が一番いいのだというような表現が見受けられますが、例えば基礎年金の税方式 問題の実現性ということについてはいろいろあるかもしれないけれども、少なくとも労 使の意見はそこに一致しているわけで、基礎年金を税方式化することはむしろ多数意見 なのではないかと思います。この年金部会のメンバーの中で表決をとるかわかりません けれども、その背後にある人数を考えたら、かなり多数になるだろうと思います。それ をあたかも、これを見ると、税方式を批判するような議論になっているわけでありまし て、これは少しおかしいのではないでしょうか。公平性を欠くような報告書はまずいと 思います。  ですから先ほどの御意見にもありましたが、やはり意見が一致しなかった部分につい てはきちんと公平に両論併記するということが大事なのではないでしょうか。あと気が ついたことがありましたら後ほど申し上げます。 ○ 宮島部会長  わかりました。岡本委員どうぞ。 ○ 岡本委員  細かな表現上の問題にもわたりますので恐縮でございますが、資料4の1ページのと ころで、真ん中に「地域経済においても公的年金制度は欠くことのできない存在となっ ている。」との記載がありますが、これは事実関係は恐らくこのとおりだとは思うので すが、年金制度の議論をするときには、やはり老後の生活は私どもの意見としては、個 人の自助努力による貯蓄をベースにして、それから公的年金制度を活用する、あるいは 私的年金を活用する、こういうトータルな準備を現役の世代にすることによって老後を 迎えると、そういう中での公的年金だと私は理解をしているわけであります。そういた しますと、年金制度は国民一人一人にとってセーフティネットとしてどうあるべきか、 あるいはこのペーパーの中にありますように、実質的な価値のある年金というのはどれ ぐらいの水準かということを議論すべきであって、「地域経済においても公的年金制度 は欠くことのできない」というようなことになれば、年金制度で内容がよければいいほ ど地域経済が活性化するということになるわけでありますから、ここまで言うのは、私 は言い過ぎではなかろうかと思います。これは表現上の問題でありますが、感じたとこ ろであります。  それからもう一つ、私がいつも申し上げるように、財政の問題は国民共通の課題であ り、保険制度という制度を堅持する、しないは別にしましても、できるだけ国民全体で 持続可能な制度にしていくというようなことを私は考えていく時期に来ていると思いま す。「国民皆年金を堅持し、持続可能な制度としていくことが極めて重要である。」と いう記載はそのとおりであります。その後の「将来の世代に健全な年金制度を残してい くことが現在の世代の責務である。」とありますが、この現在の世代というのは一体何 を指しておられるのか。一体、現在の世代の責務というのは、既受給者を含めた全国民 1億2,000万人の責務なのか、あるいは保険制度を通じた現役の負担する企業と現役の 人の責務なのか、あるいはもっと違った意味なのか、いい言葉なのであるけれども、内 容がよくわからない印象を受けました。  それから、もう一つは、もう一度申し上げますが、矢野委員も少し触れられたのです が、「税方式の考えは自助・自律の精神を基本とする我が国の経済社会の在り方とも大 きな隔たりがある」とありますが、私は、国と国民とがセーフティネットを考えるとき に、税金という形で国民がお金を支払い、それを国が生活であるとか国防等々の安全等 を踏まえた統治をしていくというのは、まさに自助・自律の精神そのものであって、税 方式が自助・自律の精神と隔たりがあるというようには私は理解しておりません。た だ、保険方式ということで、現役の時代に保険料を納め、それを老後に受給するという 形のシステムを前提に考えますと、税方式よりも、なるほど保険方式のこの公的年金は 自助・自律の精神であるということはより具体的な制度としてでき上がっていると思い ます。  そういたしますと、いつも申し上げますように、皆年金であり、かつ保険方式という ことでありますと、国民年金の未納・未加入の問題は放置できない問題であるというこ とは矢野委員もおっしゃったとおりであります。したがいまして、「国民年金の未納・ 未加入の問題に厳正に対処すること」というのは2カ所ありますが、1ページの「国民 年金の未納・未加入問題については厳正に対処し」はこれでいいと思うのですが、4ペ ージは、もっと積極的に「国民年金の未納・未加入問題を解決することを前提とする」 とか、あるいは前回に、納付率を80%まで改善するという目標が説明されまして、それ 自体も大変御努力が要るとは思うのですが、「対処する」ということでなくて、何か80 %というような具体的な数値目標を示して、もっと前向きに解決の方向の意思表示をす る方が終始一貫するのではないかと思っております。御検討お願いしたいと思います。 以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。翁委員どうぞ。 ○ 翁委員  私も同じような意見があるのですけれども、今、岡本委員がおっしゃった「税方式の 考え方は、自助・自律の精神を基本とする我が国の経済社会の在り方とも大きな隔たり がある」というところに関しましては、既に国庫負担が3分の1で、それから2分の1 になっていまして、その意味では社会保険方式でも1対1の対応関係はなくなっていま すし、この論者の方々というのは、1階は税、2階は報酬比例という形で、これがむし ろ自己責任社会に立脚した制度だという考え方でおっしゃっている論者の方も多いの で、その意味からは、この書き方だと必ずしもそういう意見を反映していないのではな いかと思いますし、私もこれに関しいろいろな意見がありますので、両論併記という か、そのような書きぶりの方がここでの議論の実態を表しているのではないかという感 じがいたします。  それから、スウェーデン方式のことが書かれていますけれども、ここについてはむし ろ報酬比例年金にすることによって、今の定額の年金制度が変わって未納者・未加入者 へのインセンティブ面にも関連してくる話ですし、あと先ほど井手委員の御指摘の中に もあったのですけれども、例えば年金の分割とか、そういった女性の年金の解決策で出 ている案とスウェーデン方式というのは密接に関連している話で、未納・未加入問題と 女性と年金の問題とスウェーデン方式というのはやはり関連性のある話だと思います。 そういった意味についても今後議論していく必要があると思いますので、そういった点 についても触れていただければと思います。  それから、(社会保障制度全体としての視点)というところに関わる話なのですけれ ども、やはりより安心で持続可能な制度にするために示していかなければならないもの はいくつかあると思うのですが、それは保険料水準20%ということが大きな目途として 出されているのですけれども、例えば構造改革を続けることによって経済成長率が上が るとか、いろいろ基礎年金の改革を行って国庫負担を引き上げていくとか、出生率がよ り回復していくというシナリオが出ていけば、もしかしたらより保険料を引き下げられ るというシナリオが示される可能性もあるのではないかと思いますし、同時に給付水準 についても、何も公的年金だけを考えるのではなく、ここで税の話が出ていますけれど も、やはり401kのような確定拠出型年金をより拡大していくということをより積極 的に考えて、これは厚生労働省だけでなくて税の問題ですので、全体の話かもしれませ んが、そこをより拡大して、年金制度トータルとして先行き不安を抑えるということも より積極的に考えていく必要があるのではないかと思います。後で 401kの話というか、確定拠出の話が触れられていますけれども、アメリカなどで本 当に公的年金制度に匹敵するほどの規模になっていて、こういった点について広げてい くことによって、より国民全体にある先行き不安を抑える方向で、この全体像を示して いくというようなことができればと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかに御発言いただいてない方でいかがでございましょう か。 ○ 堀委員  この再整理については、基本的なところはこのとおりかなという感じがします。字句 について少し意見がありますが、この場で話すような内容でないので、この部会が終わ ったら後、事務局の方に指摘をしたいと思います。  それとは別に、今議論があった自助努力との関係なのですが、社会保険方式というの は財源の問題だけでなくて社会保障の保障方法についてのものです。税方式を私は「社 会扶助方式」と言っています。税方式に対する言葉は保険料方式です。社会保険方式と いうのは、財源の問題だけではなくて、社会保障の保障方法をどうするかということに つながる問題です。保険というは、病気とか失業とか老後に備えて保険料を拠出する仕 組みで、そういう意味で保険は自助の仕組みです。現に年金制度で保険料を払わなかっ たり、制度に加入しなかったりした場合には、その期間分の分は年金額に反映しませ ん。あるいは25年加入しなければ年金はもらえない、そういう意味で自助の制度である と私は思っています。  財界は、お隣に矢野委員がおられるのですが、いつも自助努力を説かれるのですが、 老後になると一律に老齢年金を支給する社会扶助方式(税方式)を支持されるのは齟齬 があるのではないかと常に感じています。 ○ 宮島部会長  どうぞ、ほかに御意見ございますでしょうか。この構成は、実は少し私の方で、既に 御意見がありましたように、基本的な考え方、体系論、それからこれまで議論してきた 議論、これは制度に関わる議論ですが、実際の運営はきちんと分けて、その重要性とい うものを逆に埋もれないように少し強調した方がいいだろうという形でこういうような 構成を神代委員とも相談しながらお願いした経緯がございます。概ねこういう形で、要 するに上から順番に重要性がだんだん落ちていくという見方ではなくて、項目をきちん と立てて、そこでどういう論点を扱うかということを少し明確にしたいということで、 あえて公的年金制度の運営という1項を独立させて、そこで先ほどお話がありましたよ うな国民年金の徴収問題ですとか、それから制度の理解を深める仕組みも、そういう実 際的な制度の運営の仕方としてここに扱うという考え方をとったということでございま す。これについてももし御意見があれば少し伺いたいと思います。  それから、もう一つの再整理につきましては、これについて、今伺っていまして、ど ういう整理の仕方をしていくかということを私は伺いながら考えていたのですが、ここ の中でのいろいろな基本的な考え方なり、年金の仕組みの在り方についての意見につい ては、メリットあるいはデメリットがお互いに指摘されるというような形で恐らく触れ ることは可能ではないかと思います。その中で16年年金改正としてどういう対応をとる べきかというところの絞り方という形で恐らく処理をすることになるのではないかと思 います。先ほど矢野委員からやや揶揄された点ございますけれども、年金部会の委員 は、全国まんべんなく代表者を選んでいるわけではありません。それぞれの受益者の代 表として御参加いただくという点でございまして、その意味では、単純な多数決といっ たような話ではございませんし、もちろんこの中にいろいろな意見がそれぞれ出てきた ときに、渡辺委員からお話がありましたように、部会としては無理やり答申型の一本化 をするということは、1つの年金改正に当たって難しい場合には、無理にするつもりは 私もございません。ただ、基本的な考え方としては、ベースとしては何らかの方向を前 提にしないと、実際の年金制度改正というのは難しいわけでありますから、それに至る いろいろな議論につきましては、それなりに皆さんの議論を過不足なくできるだけ紹介 をしながら、16年の年金改正に向けてこういう考え方でやっていく、こういう点につい ては、今後もなお検討課題としては残る、あるいは検討を続けていくというような点が いくつか出てくると思います。これは先ほどの女性と年金のところもそうでございまし て、確かに現在いくつか具体的な対応策が挙がっております。しかし、長い目で見たと きに日本の社会がどういう変化を遂げるか、あるいは望ましいのはどういう方向かとい う中で、将来的な方向性としてはこういうことが1つは考えられる、あるいは制度とい うよりも実態として世の中が動くことによって年金制度の実質的な内容も変わっていく こともございます。ただ、16年の改正でどういう点を我々としては、ある程度具体性を 持った形で方向性を示すことができるかというところについては、何らかのベースの考 え方はやはり考えなければいけませんから、その方向性を出すことはやむを得ないと思 います。その前の議論の紹介なり、いろいろな考え方は意見としてきちんとしておきた いというのが1つございます。  それと女性と年金のところ、あるいは第3号問題につきましても、今後の経済社会、 人口変動がどのようになるかなかなか読みにくい中で、現状から要請されることと、今 後社会がこのように変わることが望ましいという、ある程度基本的な判断との両方が常 に錯綜しているわけでありまして、それについては、今後の社会としてこういう方向性 が望ましいと考え、その場合には年金制度としてはこういう方向になろう、ただし、16 年改正において、我々が具体的に提案できるというのはこういう点である、というよう な形に恐らくなるのではないかと私は考えております。  これから意見書をまとめていく際に、特に文章化していくときには、そのように丁寧 に説明する必要もありまして、誤解を招かないようにしたいと考えています。先ほどい ろいろ御指摘もございまして、考えさせられるところがありまして、その点は私と神代 委員で改めて受けとめて、今後の文章化に活かしていきたいと思っております。  どうぞ、岡本委員。 ○ 岡本委員  構成につきましては、私は基本的にはこういう形で今後まとめるということでいいの ではないでしょうか。もちろん中身についての意見交換は、これからまた時間があるの でやればいいと思っております。  まとめ方の内容ですが、前回、高橋課長が、委員の多数が同じ方向の意見であれば、 「〜すべきである」という表現にして、全く意見が分かれた論点は、「〜の意見があっ た」という表現にしたとの御説明がありましたが、方向性として意見が一致している点 は非常にまとめやすい、表現上問題がないと私は思います。  それから、渡辺委員おっしゃったように、各論のところでいろいろな意見があれば、 これは無理にまとめると問題が残りますから、「〜という意見があった」という形にし たらいいと思いますが、要は今回の改正ではここまでが限度だけれども、しかし、将来 こういう議論をすべきではないかとか、あるいは将来この議論は避けて通れないのでは ないかというような、その部分をどうまとめるかが一番私は意見が分かれて難しいとこ ろだと思いますので、そこについては、委員の皆さん方の意見を十分忖度していただき ながら、なるべくその部分が将来の議論につながるように、消えないように御配慮をち ょうだいしながら、文章化をどうしてもお願いしたいと思っておりますが、いかがでご ざいますか。 ○ 宮島部会長  わかりました。そのことを十分に念頭に置いて頑張りたいと思うのですが、ほかにい かがでございましょうか。スケジュールは、後ほど総務課長の方から話があると思いま すが、今日はこれで終わりにした後、できれば9月4日に予定されております次の部会 には意見書のたたき台という形でお示しをして御議論いただいて、その後、大変皆様お 忙しいと思いますけれども、議論が十分には終わらないと思いますので、その後、個別 にそれぞれ御意見をいただく中で、できればその次ぐらいの年金部会で意見書を取りま とめたいというように考えております。  ですから、先ほど申しましたように、この年金部会の従来の審議会の答申ではなくて 意見書という書き方のスタイルはまだいろいろタイプがございますけれども、その中で どういうタイプをとるかということはまだ若干考慮しなければいけない点がありますの で、それについてはいろいろ御意見をこれからもいただいていきたいと思っておりま す。  今日、もう少しまだ時間がありますが、何かそういう点でいろいろ御注意、御意見が ございましたら、矢野委員どうぞ。 ○ 矢野委員  年金改正の背景事情とか課題、これについてはあまり委員の間で見解には差がないの ではないか思います。これまでしばらくやってきまして、そういう問題意識をちゃんと 冒頭にもう一遍整理して書いておくということが必要なのではないだろうかと思いま す。これが1点目です。  もう一つは、ほかの場でも年金問題が論議されております。社会保障審議会が提言書 をまとめましたし、あるいは経済財政諮問会議でも閣議決定の方向付けがなされている というようなことがありますので、そういう点との整合性といいますか、少なくとも物 の見方についての方向性というか、そういったものは確認した上で総論のところに書い たらいいのではないだろうかと思います。 ○ 宮島部会長  今の点を申しますと、少なくとも経済財政諮問会議の閣議決定がございますから、そ の方向性というものは当然我々も意識しているわけです。  ほかはいかがでございましょうか。もちろん議論したら切りがないということもある と思いますので、今日の議論そのものは、私の方で少し整理をいたしまして、事務局と 再度調整をしたいと考えております。それで、むしろこれからの部会の間も皆さん方の お知恵を借りなければいけないということでございますので、その辺のことはよろしく お願いしたいと思います。部会のテンポもそうですが、その間にこれから字句というよ うなことまで入ってまいりますので、その点については御協力をぜひお願いしたいと思 っております。  それでは、今日の議論そのものはこれで一応終わりにさせていただきますけれども、 先ほど申しましたように、次回9月4日に予定されております部会におきまして、これ まではメモあるいは再整理というような形で御審議をお願いしたわけでございますけれ ども、次回は意見書のたたき台というものをつくって、そしてその議論に入りたいと思 います。私としては今のところそこまでで、なかなかその先のことについてはどうも出 てこないところありますが、事務局の方から、今後のスケジュールなどについて少しご ざいますでしょうか。 ○ 高橋総務課長  次回は9月4日(木曜日)10時からこの場所で、この部屋で開催をいたします。  本日はお食事を用意しておりますので、終了後もしばらくお席でお待ちください。 ○ 宮島部会長  それではどうも大変ありがとうございました。今後ともまだしばらくよろしくお願い いたします。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)