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別添参考資料1 「肺癌取扱い規約」の一部改定(案)について

 略

 悪性中皮腫
【定義】中皮細胞の悪性腫瘍で、種々の組織パターンを示す。
【解説】胸膜の中皮腫のほとんど全ては、びまん性の増殖パターンをとり、臓側及び壁側の胸膜表面を厚い外皮のように被う。びまん性中皮腫の初期病変は、多発性で、互いに離れた小結節あるいは斑状病変として認められる。限局性中皮腫はまれであるが、胸膜を基盤とする孤立性腫瘤として報告されている。組織学的な亜型は増殖形態によって分けられる。
(1) 上皮型中皮腫
【定義】異型的な上皮様の中皮細胞の腺管、腺房、乳頭状構造あるいはシートからなる。
(2) 肉腫型中皮腫
【定義】線維肉腫あるいは悪性線維性組織球腫に似た紡錘形肉腫の像のみからなる。
 a) 線維形成型中皮腫
密な線維性間質が優位(50%以上)の肉腫型中皮腫で、軽度な異型を示す核をもつ細胞からなる裂隙様構造を散在性にみる。
(3) 二相型中皮腫
【定義】上皮型中皮腫と肉腫型中皮腫の混在からなり、それぞれが腫瘍の少なくとも10%を占める。
【解説】腫瘍の広い範囲を検索すれば、二相型の像をみる可能性は大きくなる。二相型中皮腫の肉腫部分と反応性の線維性間質を区別することが難しい場合がある。
(4) その他
【解説】頻度は低いが、多くの組織像を示す。例えば、異所性要素(軟骨様、骨芽細胞様、横紋筋芽細胞様、神経性肉腫様)、アデノマトノイド腫瘍様、リンパ組織球様、粘液性間質脱落膜様、多嚢胞性、淡明細胞性、小細胞性、低分化あるいは退形成性などである。破骨細胞様巨細胞をまじえる中皮腫もある。中皮腫の組織亜型分類は、生検材料の量に影響を受け、大きな材料では二相型を示す腫瘍が増える。
【解説】中皮細胞の反応性過形成に比べて上皮型中皮腫は、細胞密度の増加、複雑な組織像、細胞学的異型、間質浸潤を示す。中皮腫はまれに、拡がりがin situ patternを主とし、異型的な中皮細胞が胸膜表面を被う。こうした例では、悪性中皮腫の明確な診断は、浸潤の所見をみることによる。
 上皮型中皮腫は腺癌と鑑別する必要があるが、その鑑別には、組織化学と免疫組織化学が役立つ。腺癌は、細胞質内に粘液(ジアスターゼ抵抗性PAS染色陽性)をもち、サイトケラチンや癌腫のエピト−プすなわちCEA、B72.3、CD-15(Leu-M1)、BER-EP4のうち少なくとも2つが陽性となる傾向がある。上皮型中皮腫は、まれに粘液が陽性で、サイトケラチンに強陽性であるが、通常CEA、B72.3、Leu-M1は陰性である。上皮型中皮腫ではしばしば、EMAとhuman milk fat globulin-2が明瞭に膜に陽性である。上皮型中皮腫の電子顕微鏡像では、細長で密生した微絨毛(幅の10倍以上の長さをもつ)が特徴である。
 肉腫型中皮腫は、真の肉腫や他の紡錘形細胞の増殖と区別しなければならない。後者は通常限局性腫瘤をつくるが、一方、中皮腫はびまん性に胸膜に拡がる。肉腫型中皮腫はしばしばケラチンが陽性であるが、胸壁の軟部組織肉腫がケラチン陽性となることはきわめてまれである。肉腫型中皮腫の線維形成型特殊型は慢性線維性胸膜炎と区別しなければならない。これら両者はともに、低分子量ケラチンが陽性であるので免疫組織化学的染色を鑑別に用いるには限界がある。しかし、浸潤を明らかにするためには低分子量ケラチンの免疫組織化学的染色は大変有用である。線維形成型中皮腫の特徴は、花むしろ(storiform)配列、梗塞様壊死、高細胞密度や高度異型を示す領域、異型核分裂像の数の増加、隣接構造とくに肺や胸壁への浸潤である。
 中皮腫に類似する腫瘍には、偽中皮腫様腺癌、類上皮血管内皮腫、胸腺腫、線維形成性円形細胞腫瘍がある。

【中皮細胞腫瘍】
新学会分類 新WHO分類(1999) 旧学会分類(1999)
1 良性
 (1)アデノマトイド腫瘍
2 悪性中皮腫
 (1)上皮型中皮腫
 (2)肉腫型中皮腫
  a)線維形成型中皮腫
 (3)二相型中皮腫
 (4)その他
3.1 Benign
  3.1.1 Adenomatoid tumour
3.2 Malignant mesothelioma
  3.2.1 Epithelioid mesothelioma
3.2.2 Sarcomatoid mesothelioma
 3.2.2.1 Desmoplastic mesothelioma
3.2.3 Biphasic mesothelioma
3.2.4 Others
 
 
1 通常型悪性中皮腫
 a 上皮型
 b 二相型
 c 肉腫型
2 特殊型悪性中皮腫
 a   腫瘍細胞の性状から
粘液細胞性
  (含印環細胞型)
 b   間質成分の性状から
線維形成性(板状)


組織分類委員会
 委員長  井内 康輝
 委員 今井 督、大林 千穂、岡村 明治、亀谷 徹、佐藤 昌明
居石 克夫、武島 幸男、土屋 永寿、野口 雅之、廣島 健三
本田 孝行

出典: 日本肺癌学会肺癌取扱い規約委員会組織分類学会(2003)「肺癌取扱い規約」の一部改訂(案)について.肺癌 43:203-18



別添参考資料2 ドイツにおける石綿利用/ばく露状況とその職業(仮訳)

 我が国での石綿利用状況とドイツの場合とでの相違については不明であるが、石綿が耐熱性、抗張性、化学的安定性に富む上、不燃性、断熱性、電気絶縁性、耐薬品性、耐久性・耐摩耗性が高く、他の物質との密着性に優れ、広く工業原料として利用されてきたことから、ドイツの報告(BK-Report 1/97)を以下に紹介する。

 石綿利用/ばく露状況
 石綿含有製品、利用、粉じん源として、(1)石綿織物、(2)石綿紙や填隙材、(3)石綿セメントや軽量防御平板、(4)石綿含有波板、(5) 石綿含有摺動部被覆、(6)石綿絶縁体、(7)石綿含有合成樹脂/鋳造、(8)石綿濾過材、(9)石綿入りの瀝青含有製品、(10)石綿含有床材、(11)石綿含有滑石、(12)特別な石綿使用場所における石綿ばく露、などをあげている。
(1)  石綿織物
 石綿織物の石綿綿含有量は80〜90%であり、製品としては、糸、撚糸、帯、ひも、絹糸状石綿、管、布地、(特定用途のために加工された)布、耐熱防護服、耐酸性パッキングなどがあり、手袋、被服、前掛け、靴(ガラス工場、溶接工場、鋳物工場、化学工場、消防署)、消火布及び安全カーテン(劇場、航空機、船舶、消防署)、電動機、コンプレッサー、ポンプ、高温材料用ベルトコンベヤー(ガラス工場)、エスカレーター用ベルト、熱風圧搾ローラー円筒の被覆、配管、蒸気ボイラー、タービンの保温又は被覆(発電所、工業設備、ガラス工場、炉構造)、排気管及び電力ケーブルへの巻付け、石油ランプ及び加熱装置の芯、点検口用パッキング材料、熱風導管接続部、加熱室及び乾燥炉内の取外し可能な仕切り壁、鋳物を覆うためのマット、製紙装置用乾燥フェルト及び瀝青含有ルーフィングシート、圧搾機カバー用プレスクッション(木材産業用)、遮音等に利用されてきた。
(2)  石綿紙や填隙材
 石綿含有率は50〜90%である。製品としては、紙、シート、管、ケース、電気絶縁、防火及び断熱、板状パッキング、高圧パッキング板(生ゴム含有It板材)がある。
 内燃機関用シリンダーヘッド及び排気装置のパッキング、電気抵抗器及びケーブル絶縁用の巻付け外皮(自動車及び電気工業)、暖房及び換気装置、炉構造、可動部分(パッキング箱及びピストンリングの密閉)及び固定部分(マンホールリング、容器の蓋の密閉)を密閉するため貯槽、化学設備及び機械装置の内部を生ゴム溶液で吹付け後、石綿ろ過剤、床上張り用生ゴム含有石綿紙、含浸被覆材料などに利用されていた。
(3)  石綿セメントや軽量防御平板
 石綿含有率は5〜20%で、製品としては、板、波板、人造スレート、外壁板、管、成型品がある。地上及び地下建築工事、外壁断熱、雨どい、屋根がわら、飲料水圧力配管、廃水配管、排水管、ケーブル保護管及び遠隔暖房用ジャケット管、気送郵便設備、換気用立坑、プランター、窓際のベンチなどに使用されていた。
(4)  石綿含有波板
 石綿含有率は5〜50%で、製品としては、耐火板材、軽量建築用板材、Sokalit、防火用板材がある。地上及び地下建築工事、火災危険性のある室の内張り、一時防火間仕切り板、扉その他用建築部材、住居及び産業建物における間仕切壁、船舶構造ならびにプレハブ住宅における上張り及び間仕切壁、炉体内の入れ子、天井及び内壁の上張り、支柱及び梁の被覆、さらに防煙カーテン及び防火シャッターなどに使われていた。
(5)  石綿含有摺動部被覆
 石綿含有率は10〜70%で、製品としては、ブレーキ被覆、クラッチ被覆がある。自動車産業、Kfz-作業所、床上運搬車、起重機、圧縮機、パワーショベル、巻上げ機などに使われていた。
(6)  石綿絶縁体
 石綿含有率は50%以上で、吹付け石綿、マット、パッキング、ひも、クッションなどの製品がある。古くは、例えば蒸気機関車における断熱、後にはより広く、発電所内のタービン車室及び配管の保温、鉄骨建築工事における防火、薄板製の、通風及び空気調和ダクトの保温(屋外)、石油化学プラントにおけるケーブルの引き回し、防火、保温及び保冷、CO2 貯槽の防火(消火設備)、断熱、壁構造と汽缶又は煙突の周囲との間隙への充填、トンネルがまの充填、可動式の閉切り面、例えば弁、ピストン桿、の気密保持に使われていた。
(7)  石綿含有合成樹脂/鋳造
 石綿含有率は7〜70%で、製品としては、貯槽、蓄電池ケーシング、成型部品、電気絶縁部品、電動機端子、鍋等の把手がある。いわゆる絶縁薄膜から板材に至るデュロ-又は熱可塑性プラスチック製品、舟艇及び航空機の機体におけるいわゆる石綿強化加熱成型用合成樹脂、航空機におけるフォームラバー詰め物、電子絶縁部品(例えば差込み口、接続部品、スイッチキャップ、電動機端子、メーター類端子、等々)のような電子工学機械における成型部品に使われていた。
(8)  石綿濾過材
 石綿含有率は20〜95%で、製品としては、飲み物・医薬品・化学薬品・硫酸中和用濾過助剤がある。飲料産業(ワイン、ビール、フルーツジュース)、精密-及び消毒(滅菌)濾過、塩素−アルカリ電解用ダイアフラム、ガスマスク用フィルター。1970年頃(DDRでは1980年頃)まで呼吸保護器具に石綿フィルターが使われていた。
(9)  石綿入りの瀝青含有製品
 石綿含有率は1〜30%で、製品としては、瀝青、屋根用及びパッキング用の長尺シート、パッキング洩れ止め塗料、ガラス用パテ、接合剤、隙間塞ぎ及びグラウチング用充填剤、瀝青ラッカー、塗料、接着剤、下張り保護床、路面上張り、がある。腐食防止、建造物保護及び防火用の塗料、ラッカー及び接着剤、下張り床保護及び消音用塗料(自動車産業)、ルーフィングシート、道路建設における上層用の瀝青含有混合物として使用されていた。
(10)  石綿含有床材
 石綿含有率は15〜20%で、製品としては、石綿下敷のついた床敷き材(クッションビニール、レリーフ床敷き材)、下敷のないビニール石綿タイル及び板材(柔軟タイル及び板材)がある。床被覆材に使われていた。
(11)  石綿含有滑石
 充填剤及び滑剤として、ゴム-及びタイヤ工業において(ソリッドタイヤ、タイヤにまぶす)、化学及び製薬工業において(植物保護薬剤、染顔料、パテ、充填剤、織物平滑仕上げ剤、革なめし、パウダー、工業用散布剤)、製紙工業、飼料、アスファルト及び瀝青工業においてルーフィングシートへの散布に使われていた。
 滑石パウダーにはクリソタイルや角閃石の石綿繊維が不純物として混入していることがある。旧東ドイツでは1970年から1980年末までの期間に利用されていた滑石には石綿の不純物の含有率はさらに高かったと思われ、中国からの輸入品では最高10%に達していたと思われる。
(12)  特別な石綿使用場所における石綿ばく露
 造船では機関室内の作業、船舶修理では断熱材の除去作業、鋳物や溶接作業で石綿布や石綿板を使用する場合、金庫・防火シャッター・防火ドアの製作、炉への石綿含有耐火材の埋め込み・取り付け・修理・剥離や石綿をこねて継ぎ目を修理する、古い石綿ひもの除去と新しい石綿ひもの裁断や取り付け、モルタルへの石綿をこねて混ぜる作業や石綿パテを閉ざされた空間で使用する、ガラス製作過程でほぐした石綿ウールが充填された冷却箱を用いる作業、港湾荷役・鉄道貨物荷下ろし作業、石綿セメント材を使用した煙突の掃除・整備作業、機械装置・工場配管・貯蔵設備の据付け・撤去・修理の際の石綿接触などがあげられる。

 ドイツにおける石綿ばく露の職業・仕事
(1)  エレベーター組立工
 石綿含有建築用防火塗料の塗布による建物内での待機者も含む。
(2)  パワーショベル運転者
 運転台と機関室の間が閉ざされていないような鋼索パワーショベルの運転者。
(3)  建設作業員(れんが積み職人)
 外壁-、屋根-及び消音用板材、軽量建築用板材;ノンスリップ床コーティング用混合極微細鉱物粉末;パテ及び接着剤のBeschleifen; 吸気及び排気開口部を含む通風用石綿セメント管の切断。
(4)  コンクリート作業者
 コンクリート打設、基礎、壁、柱、床上張り、床下部構造、テラス張出し、石綿含有スペーサーホルダーの短縮、コンクリート化粧、等々を含む様々な種類の地上-及び地下建築工事。
(5)  ボート建造工又は船舶艤装工
 建造においては、修理及び維持補修の際に様々な絶縁材料の使用、塗料及びラッカー被膜(防火塗料)の塗装、塗装薄鋼板及び形鋼の処理、その他待機者に典型的なばく露)
* 造船(航海船)、keine Marineschiff(石綿製品は通常進水の後に作り付けられる)
− 機関室内の加工者及び待機者(吹付け石綿なし)、手仕事(例えば機械工、銅細工師、電気工、絶縁工、塗装工、足場組み職人、溶接工、れんが職人、掃除工)
− 同上(吹付け石綿あり)
− 船内解体(又は改装)(主に狭いキャビン内かつ不十分な換気条件のなかで高速木材加工機を使って石綿含有板材を切断、手仕事(例えば指物師、塗装工、電気工、配管工、タイル工、掃除工、機械工、絶縁工)
* 船舶修理(航海船)、keine Marineschiff
− 機関区画への立入りを含むか又は断熱保護部分に対する作業なし
− 換気装置にスイッチを入れて断熱保護部分の取扱いを行う
− 熱負荷のかかった断熱材の除去を伴う作業(吹付け石綿なし)
− 吹付け石綿の除去を伴う上記の作業
− 石綿含有板の非破壊的解体
− 石綿含有板の撤去
(6)  防火巻込みシャッター-製作者
 巻込みシャッター部品の間に石綿含有帯を挿入及び貼付け(切断)、巻込みシャッターの鋲留め(穴あけ、鋲留め)、原動機用防火ケーシング製作用の石綿軽量建築板材(5%クリソタイル、10% アモサイト)の鋸ひき/穴あけ。
(7)  防火ドア-製作者
 石綿板材(ドア充填材 1% クリソタイル、10% アモサイト)の鋸ひき/穴あけ、ドアパネルへの石綿板材の挿入、ドア・デッキパネルの取付け、ドア・デッキパネルの固定(穴あけ/鋲留め、点溶接、ねじ止め)。
(8)  化学作業者、化学工場運転作業者
 稼働設備及び機器の運転及び監視; 反応装置、大型サイロ、容器、貯槽、ガスホルダー、コンベヤー、配管、濾過装置において、また例えば塗料、ラッカー、肥料、パテの製造において使われる、耐酸-及び耐熱パッキング、充填物、フィルターのような多様な石綿含有製品; その他特に石綿含有混和剤の計量、混合機又は撹拌機付き貯槽への仕込み、ならびにかき混ぜ、練り、混和及び濃縮)。
(9)  屋根ふき工
 平屋根の防水、屋根ふき、維持補修作業、その他。石綿セメント板材(エッジ切断)、bestreute Bitumen-Dachbahnen、パッキング用板材、アスファルト、パテ軟塊; 煙突のはめ込み、天窓の作り付け、外壁の化粧張り、石綿セメント板材(小型及び大型)張り及び撤去、ならびに波板)。
(10)  電気工、電気(設備)取付け職人(電信電話手作業者)
 高圧-及び低圧設備の設置; 配電変電所及び配電盤室(多くの場合吹付け石綿で絶縁されている)における作業、絶縁された配電盤及びスイッチング素子の修理; ボイラー及びケーブルの絶縁; 例えば変電所、エレベーター・サービスにおける古い絶縁の除去、一部は新規に絶縁、木材壁に好んで引かれるケーブルに対する石綿含有接合物質の応用; 電動機巻線用の石綿シート; スイッチング素子の耐熱被覆; 特に企業の電気工の広範な担当分野について配慮する; 待機者-ばく露も含む。
(11)  電気機械の巻付け工
 電気機械、電動機、機器及び変圧器用の巻枠及び巻線の製作及びサービス; 石綿含有絶縁材料についての適合、切断、巻線作業; 変圧器製作においては巻線を溶接による熱及び火花の飛び散りから保護するために石綿ペーストが塗布される; 石綿含有ハードボードの利用)。
(12)  電気機械工
 担当分野(計測-、制御-、調整技術、安全装置、熱-、冷熱-製造)に対応した石綿含有絶縁材の利用及び処理、軽量建築用板材及び配電盤エレメントの処理。
(13)  エナメル塗布工
 例えばボイラー、浴槽、洗面器、のような高温の未完成品(約900℃)にエナメル粉末を手又は機械によって付与する際に保護被覆が付着した(手袋、作業服)。
(14)  たたき-又はテラゾー敷き工
 なかんずく瀝青乳剤たたき、アスファルト舗装材、合成樹脂たたき; ノンスリップ床コーティング用の鉱物性瀝青含有粉末混合物; パテ軟塊及び接着剤のBeschleifen。
(15)  燃焼炉れんが積み工、燃焼炉建設助手
 あらゆる種類の冶金用炉、とりべ、銑鉄ミキサー、ボイラー炉及び熱風炉の新規建造及び修理。石綿含有耐火材料の剥離及び埋め込みならびに新規取付け。
(16)  タイル-、板材-、モザイク-及び床敷き工
 薄手ベッド法及び厚手ベッド法による内壁の上張り、外壁、床敷き(ビニール石綿タイル、クッションビニール)、石綿含有板材の裁断及びひきはがし; パテ軟塊の混和及びかき混ぜ; パテ軟塊及び接着剤のひきはがし; 古い絶縁被膜の除去。
(17)  据付業者(ガス、水、暖房、換気、空気調和)
 配管敷設、特に暖房-及び換気設備における多様な絶縁材料、スリーブ、パッキンリング、石綿結合材、その他; 待機者-ばく露、新設、造船、特に石綿セメント排気管(丸型)又は石綿セメント通風管(角型)の製作及び裁断。
(18)  金庫製作工
 石綿板材の裁断及びドアの錠前周辺への挿入。
(19)  溶接工、鋳型工、製錬所特殊技能工
 修理作業、特にすぐ近くで行われたジーメンス−マルチン炉の断熱工事による待機者-ばく露も含む。
鋳物工場
*  溶解操作における作業者)
 溶解工
 必要に応じて石綿耐熱防護服を着用; Zustellungの際、また電気炉、誘導炉、SM-炉、キュポラ(みぞ及び前炉)の異状の際に救援、石綿ひもでシールされた金型、石綿含有詰め物及び断熱軟塊(例えばDuesenstoecke、Blasformen)の取扱い、電極取付け部の石綿による絶縁、場合によっては石綿含有材料を使って鋳物みぞの改善
 鋳造工
 必要に応じて石綿耐熱防護服を着用、石綿ひもでシールされた金型
 遠心鋳造工
 石綿パッキング、密閉用の石綿ひも、石綿金型シールの取付け
*  鋳型工
 必要に応じて石綿耐熱防護服を着用; 金型及び中子のシールの際石綿ひも(特に鋳鋼の際); ハンドプレス空気式スタンパーの石綿パッキングの交換; 振動造型機の石綿ひもの交換; 鋳鋼鋳型用の石綿含有昇水管
ホット-ボックス-及びCroning-プロセスによる中子の製作では石綿カバーが使われた。
*  鋳物掃除作業者(前掃除)
 鋳型(鋳鋼)からの中子外し、遠心鋳物の掃除(石綿パッキングの焼付き)
*  鋳物溶接工
 工作物を石綿布及び石綿マットで覆う
*  高温操業中の機械修理工
 動力線及び冷却管の断熱、石綿パッキングの交換
*  炉-及びとりべれんが積み工
 壊して取り去り、持込み及び修理
*  起重機運転手
 精錬-及び鋳造区域において運転台が開放されたいるか半ば開いているばあいの起重機運転手
(20)  ガラス吹き工、ガラス工業
 中空ガラス容器製作
* ガラス工
 口で吹いて製作することによる最終成形段階を実行; その際石綿を巻付けたパイプの柄を手で持ち、石綿を巻付けた収集フォークでガラス細工品を運び、石綿敷き布の上に置く。石綿含有耐熱防護服を着用し、石綿含有断熱材料を取扱う
* 収穫者
 ガラス細工品を石綿の付いたフォーク又はショベルでとり上げ、冷却炉まで運び、冷却炉内又は石綿を被せた冷却バンド上に下ろす
 時には運搬車の修理(石綿ひも又はバンドを使って)あるいは高温区域で作業する(石綿でできた耐熱防護服)
* ISマシーン運転者
 自動式中空ガラス製造機の制御、監視及び整備; その際機械に付いて手近にある石綿断熱材ならびに石綿含有断熱材との接触による基底汚染を受ける
* ガラス吹き工/ガラス装置製作工
 高温ガラス部品を石綿板上で、石綿ひもを巻付けたバーナーを使って工作する; 部品を石綿紙で包む; 部品に石綿紙を巻付ける; 石綿付き支持金具を備えたガラス旋盤を使って作業する。
 高温のガラス部品運搬のために火ばさみ及びつかみに石綿ひもを巻付け; 板、紙及びひもの裁断。
 石綿手袋及び指サックの着用、吊り下げ型石綿布及び板のかたちの耐熱ついたての利用ならびに石綿で保温した配管の身近な存在
 部分的に、高温のガラス対象物を、中間的に、ほぐした石綿ウールを充填した冷却箱内に置く; 冷却箱にほぐした石綿ウールを新規に充填する;内部に石綿ウールを張付け外部を石綿断熱材料で被覆したフード-及び箱形徐冷炉を置き空にしておく。
(21)  軌道敷設工
 膨張詰め物(石綿セメント絡み合った木綿から成る)の利用、特に粉末の混合、撹拌、古いそれが詰込まれた箱にドリルで穴をうがつ際にそれらの穴から粉塵発生
(22)  ゴム作業者、タイヤ製造工
 計量、石綿含有添加剤及び充填材の計量、また混合機及びゴム・ニーダーを満たす際、例えば圧延機において粗生ゴムを添加剤及び充填材と混合するばあいの混合所の作業員; 粉末一般としてのタルクの利用。
(23)  港湾荷役工、沖仲仕、鉄道貨車からの荷おろし工
 − 1976年まで積替え石綿はジュートの袋に入れられていた
 − 1977年から1985年まで積替え石綿はプラスチックの袋に入れられていた
 − 鉄道貨車貨物の積下ろし
 袋洗浄者
(24)  火夫、機関室員
 発電所、ごみ焼却施設、船舶、修理及び加工作業(船内機関室ではより高い石綿濃度が測定された)。
(25)  ブランチ及び投入区域それぞれの見習工、倉庫-、運輸-及び荷おろし作業者
* 電気分解による塩素製造の際の見習工、石綿マットによる覆い、これらは掃除され、周辺部の硬化は減少した; 強い粉塵ばく露
* 倉庫作業者
 粗石綿の積込み及び積下ろし、石綿ブレーキ被覆、石綿クラッチ被覆、石綿耐熱防護服、石綿ひも、石綿パッキング、等々の入庫、出庫。
(26)  絶縁工
 化学工業、発電所、船舶及び建築工事、特に鉱山でのエレベーターの内張りにおける保温(断熱)、保冷、防音のための多様な作業; 絶縁工のすべてが石綿含有絶縁材に触れたわけではない; 石綿加工の規模は個々の例について報告されなくてはならない。保冷の分野では90%、防音の分野では70%、そして保温の分野(使用温度 < 300℃)では90%が石綿フリーになった。
 様々な断熱材、例えば合成鉱物繊維(KMF)、パーライト、バーミキュライト、が用途を開発している。石綿含有物質は高い温度負荷がかかるところの、例えば発電所の蒸気配管又はタービン、に限定して使われるようになった(例外: 吹付け石綿によってコンクリート-又は鋼鉄構造の上に継目のない被覆を、防火-及び水蒸気調整被膜として、つくる)。
 新しい断熱材料、例えばKMF、は作業場において石綿マットに縫い込まれ、輸送され、後に配管がこれによって保温された。石膏-又はパーライト・モルタルあるいは亜鉛めっきしたブリキでできた保温用外套がある。
(27)  煙突掃除夫
 石綿セメント煙道(排気口)の掃除作業の際、石綿繊維が放出される; 屋根裏及び屋根の上; 繊維の放出は同様に石綿セメントでできた煙突のフラップ-板状保温材及び煙突かぶせ板からも放出される; 鏡又は硬質ゴム球のついた下げ振り使って煙突の通りの良さを調節できる。
(28)  容器-及び貯槽建設者、暖房設備製作者
 フランジ結合部及び蓋への石綿ひも及び石綿パッキング; 石綿保温材との接触は修理又は撤去作業の際。
(29)  Kfz-機械工
 Reibbelaegeの整備、維持補修、交換、ブレーキドラムへの空気吹付け、車体修理作業(石綿含有下張り床保護、消音用塗料)。
* PKW-分野
 −  ブレーキ修理一般
(ドラム)ドラムを取外し、掃除
 ブレーキシュー取外し、ブレーキ被覆の鋲を取外し、新規に鋲打ち、エッジをやすりでまるくする、手持ちのエメリーで研磨、取付け、クラッチ修理
 −  全般的なブレーキ修理(ディスク)
 被膜を取外し、ブレーキサドルを掃除、新しい被膜を取付け
 −  ブレーキシュー研磨
 固定ブレーキシュー研磨機の上で研磨
 −  電気掃除機なし
 −  電気掃除機あり
 −  クラッチの修理
* LKW-分野
 −  ブレーキ修理一般
 −  手掃除を含むUeberdrehen
 −  電気掃除機なし
 −  電気掃除機あり
 −  信頼できる装置及び電気掃除機による
(30)  防食作業者
 石綿含有、耐熱性防食被覆を引っ掻いて、ピンでつついて、磨いて、strahlenして除去する。
(31)  車両運転手
 石綿含有製品の積み込み及び積み下し運送。道路上を走行中の石綿による汚染は一般的な(汎存)環境汚染の枠内にあった。
(32)  石綿にさらされながら行う発電所、工業配管及び貯蔵庫の建設、組立及び修理の作業
焼きなまし作業員及び溶接工
 予熱された耐熱鋼の保温と溶接継目の放熱を遅くするために石綿布及び石綿を含む軟塊を使用(通常、下げ止るまで)
 蓄熱室の設置
溶接工/取付け工
 パッキング及び保温材料の装着
 新規装着と熱負担を受けた絶縁(保温)材料の取外し
 高速回転工具を使った処理
蒸気ボイラー建設時の燃焼炉れんが積み工
 発電所蒸気ボイラーの新設及び検査
 伸縮目地に使われた石綿ひも
 検査及び取壊しにおける保温用石綿板
 熱負担を受けた材料の除去
見習工(「Rupp」の一団/ボイラー清掃工)
 熱負担を受けた石綿材料の前検査/撤去(一部取り除き、Strahlen、清掃)  新設及び検査の際には − 期限の制約から − 他の作業(例えば吹付け石綿による保温)に平行して投入されることも、別の要員グループがそのためにさらに必要になるばあいには、普通であった。
 電気工
 測定-及び制御技術者
 超音波-/X線検査技師ならびに
 監督者(例えば現場監督、職長、技師)
(33)  合成樹脂加工者
 配電盤、工作機械等々に含まれる電気設備用の例えばデュロ-又は熱可塑性樹脂のような合成樹脂を製造するための、撹拌装置への仕込み、溶解、捏和、混和及び圧延の際、また床被覆材製造の際。一般的な作業としては以下の仕事を考慮する;作業場にあるプラスチック-、紙-、ジュート製袋のような空の包装材料の廃棄処理(体積を減らすために押潰し)ほうき又は圧縮空気吹付けによる作業場の掃除。
(34)  塗装工(Lackierer)
 地上建築工事における、バルコニー、煙突、又は外壁の化粧張り、また住宅、企業オフィス、官公庁建物及び校舎における、ドア又は窓のパネル張り、ならびに化粧室内の間仕切部材及び/又は暖炉の防火板及び石綿セメント排水又は換気用の配管に対する塗装準備のために行われる研磨作業; 屋内又は屋外で行われる個々の仕事及び使われる手段が重要である。
(35)  農業者
 透角閃石を含む肥料用石灰の使用; 瀝青軟塊を用いて自ら行うサイロ設備の保温。
(36)  塗装工(Maler)、塗装工(Anstreicher)
 壁及び道路舗装面の小規模の欠陥に充填し平滑化するための石膏ベースの充填用及びパテ軟塊。
 1960年から1981年までの時期に、材料の特性を改善するために2ないし7%の石綿粉を 添加した限られた数の工場製品が存在した。それ故、使用された製品について具体的な調査を行うことが必要である。
混合工程及びそれに伴う研磨工程の仕事における石綿へのばく露が報告された例がある。
(37)  (洗濯物を)マングル(圧搾ロール)にかける作業をする者、アイロン作業者
 アイロン台、アイロン人台及び熱風圧縮ロールに石綿含有保護布を被せる。
(38)  機械製作技術者
 造船、暖房-、換気-及び空調分野における、監督の仕事、機械監視作業。
(39)  ごみ処理場作業者
 一部が粉塵を発生するおそれのあるごみをダンプカーなどから空ける作業、その際短時間だけ石綿塵埃の濃度が高まる; ごみの押出し、圧縮及び移動/ほこりを巻上げながらの圧縮。これには例えば圧縮機運転者が関係する。またごみ廃棄作業の過程で仕込み調整作業者が石綿へのばく露を受けることも計算に入れる必要がある。80年代の半ばから粉塵状石綿を含むごみの量が確実に増加したため、高い粉塵濃度がもはや発表されなくなった。
(40)  暖房工事人、熱気暖房装置施工者
 保温用及びパテ軟塊のかき混ぜ、修理の際の古いパテ及び接合目地軟塊の掻き出し;石綿糸及びパッキングによる炉のドア及び配管ならびに蓋の密閉; 防火指定範囲での防火板材の取付け。
(41)  配管網工事者
 石綿管の切断、成型絶縁物(保温、保冷)のはめ込み、配管の保温。
(42)  袋洗浄者
 石綿が包まれていた袋の洗浄。
(43)  耐酸材取付け工
 耐酸性樹脂及びパテを陶磁器タイルの受け(下地)又は密閉用として使う。受けの構成要素として、また硬化剤とする意味で軟塊に純粋の石綿粉末(温石綿)を混入した。しかし工場製の軟塊の加工では石綿繊維の放出はまったく見られなかった。
(44)  皮革職人
 石綿防火カバーを使ってある鉄道車両における座席及び寝台のクッションの裁断及びかぶせ作業; 機関車における間近でのボイラー検査による待機者のばく露。
(45)  船舶技術者(Shiffsingenieur)、機関長(Seemaschinist)
 技術的設備の監督及び監視における様々な石綿含有保温材料、待機者のばく露。
(46)  機械工
 とくに運転、工事及び船舶専門機械工、様々な断熱材料、なかんずく例えば反応炉のような高圧区画における断熱; エレベーターの修理; コンベヤーの整備; 鋼鉄製金庫の耐熱ドアの充填材; 空気調節装置の維持補修; 石綿含有塗装された金属の溶接作業。

床上運搬車
* 機械工
 − 制動機修理一般
 − 小型フォークリフト
 − 大型フォークリフト、建設機械
起重機
* 機械工
 − 起重機機械作業一般
(修理工場)
鋲取外し、鋲打ち、掃除、穴あけ、床材の貼付け
(47)  装身具製作者(金細工師)
 過去にははんだ付け下敷として石綿板材が使われた。これらの下敷は用事の済んだあと機械的に掃除され平らにされた。さらに石綿を含有する軟塊が固定用に使われた。
(48)  溶接工
 一部は石綿で被覆されたあるいは断熱された原材料の処理に; 被覆された溶接棒による溶接作業、溶接継目の冷却を遅らせるための石綿製カバー布及び石綿を含有する軟塊の使用
(49)  採石工
 ドイツ連邦共和国における採掘の際に遭遇する鉱脈では、特定の岩石種において、温石綿、透角閃石、造岩角閃石などの石綿鉱物が産出し、また直閃石もわずかに併産される。なかでも基本的なMagmatiteに関係するものが多い。潜在的に石綿を含むものとしては特につぎの岩石種があげられる:
 過塩基鉱/橄欖石(例えばHarzburgit)
 基本的ないし中間的な噴出岩(例えば玄武岩、響岩)又は貫入火成岩(例えば斑レイ岩、輝緑岩、閃緑岩)
 変性岩及び交代作用による変性でできた岩石(例えば蛇紋岩、凍石、粘板岩(スレート)−角閃石)
商品名又は地方独特の名前が必ずしも正しい岩石タイプを反映するものではないことに注意すべきである; 大切なのは岩石学的な特質表現である。塵埃全体のなかの遊離していて肺に達するような石綿繊維の含有量は、採石場の配電所区域で測定したところ、いくつかの例外をのぞいて1重量%以下であった。処理された岩石に対する平均的な石綿含有量の結果を出すことは実際問題として不可能である。従って、粗鉱物原料中の遊離石綿の割合を求めるためには簡便法によるほかはない。処理された岩石中の石綿を決定するという、採石場で従来行われてきた測定法によれば、石綿繊維濃度として0.4 F/cm3 が得られた(90%-値、Schicht平均値)。その上記の限界値はこれまで岩石精錬(破砕機による強い破砕又は粉砕)区域内の作業場のみで行われた測定値の枠内で得られたもので、採石場の諸作業(採掘、移送、輸送、積込み)で得られたものではない。
(50)  道路建設作業者、アスファルト混合設備運転者
 1979年から1985年まで、アスファルトコンクリート(アスファルト舗装(黒色被覆))を硬化させるために混合物に対しおよそ5ないし8重量%相当の石綿が添加された(材料全体に対しては1ないし2重量%)。この種の混合は主として、高い制動力が発揮されなければならないような、道路、交差点及び飛行場滑走路の上で行われなくてはならない。
 石綿ばく露はまず第一に被覆層を常温回転切削の繰り返しによって撤去する際に起り得るし、また起ってきた。混合設備においては、手作業によって石綿が袋又は漏斗形紙袋から混合設備に仕込まれる際に、石綿ばく露が起った。ばく露測定値は存在しない。
 道路建設における石綿ばく露のもうひとつの可能性は石綿含有岩石の組込みによって生ずる。これまでにこの作業場において行われてきた測定から0.1 F/cm3(90%-値、仕事値)までの石綿繊維濃度値が報告された。
(51)  化粧しっくい専門職人(左官Gipser、壁大工Putzer、左官Verputzer)
 壁塗りに使う、石綿含有軟塊、石膏、パテ軟塊のかき混ぜ、使用、取壊し、乾燥設備の防火板材
(52)  繊維作業者
 石綿含有繊維の製品及び以後の処理、特に石綿繊維の紡績、糸の巻取り及び撚糸、機織、縫製、裁断
(53)  乾燥装置-、音響装置-及び防火装置の組立工
 非支持型のスタンド式隔壁、支持構造として木材-又は金属板プロフィールでできた吊り天井、形作り又は空間形成部材として石膏ボード、木板又は金属パネルなどの組立。
 粗建築は、防火の理由から、石綿ひもを多用して行われた − 騒音防止壁の設置及び火災-又は熱に敏感な移動式構造物の軽量石綿板材による上張り。石綿含有板材撤去の際にかなりの石綿繊維が放出される。作業はほとんど例外なく閉めきった空間内で行われた。
(54)  車両製作者
 旅客用大型自動車及び市街電車では、過去においては防火上の理由から、石綿吹付け断熱及び石綿板材が組込まれた。吹付け断熱作業者及び待機者に対するばく露値;別の要員が断熱工事を行っているあいだの待機者(例えば機械工、指物師、電気工)
(55)  歯科技工士
 石綿紙を裁断しその小片を鋳込みマッフルに入れ、鋳造が終ったら鋳込んだ中身を叩き出し、必要のばあいは石綿の残りをこそげ取る。
(56)  大工(一部、家具職人及び指物師も)
 小屋組みで、階段室内で、コンクリート型枠、騒音防止壁、新築-ドアのパネルはめ込み(防火)、切断、フライス加工、鋸ひき、石綿含有取付け板の研磨、特に造船、車両の製作及び修理; 工事場における待機者のばく露、石綿セメント波板及び大型石綿セメント外壁板の設置

出典: Bauer HD, Blome H, Blome O, Gelsdorf H, Heidermanns G, Jordan R, Karsten H,Kempf E, Kisser D, Mattenkloft M, Pfeiffer W, Schmidt I, Schneider J, Schùrmann J, Schwalb J, Sohnle F, Sonnenschein G, St?chkrath M (1996)
BK-Report 1/97 ?Faserjaher”. Hauptverband der gewerblichen Berufsgenossenschaften. Sankt Augustin



別添参考資料3  肺試料等を用いた石綿小体(石綿繊維)の測定法(『職業性石綿ばく露と石綿関連疾患』(三信図書)より一部引用)

1  肺組織中の石綿小体の計数方法
 <試 料>
対象試料:  石綿ばく露評価に用いられる対象試料は、肺組織を中心とした生体組織である。肺実質が最も好都合な対象試料である。その他、胸膜肥厚部、腫瘍部、あるいは肝臓、脾臓等も用いられる。これらの生体組織試料は、中性ホルマリン固定した状態が適当である。ただし、パラフィン包埋したものでも使用可能である。剖検例であれば肺組織は、左右の各葉の壁側に近い部分を各1点、計5点採取するのが良い。しかし、都合で1点しか採取できない場合は、上葉から下葉に行くにしたがって肺内石綿量が増加するというデータが多いので、なるべく下葉部の試料を採取するのがよい。
 <方 法>
肺組織処理方法:  位相差顕微鏡で石綿小体を計数するのに必要な肺組織処理方法はいくつかあるが、比較的普及しているSmithの方法を、筆者らは次の様に改良した。
(1)  ホルマリン固定された肺組織、腫瘍部、プラーク部、横隔膜等の組織試料約1〜2gを取り、数mm角に細切する。パラフィンブロックも使用可能である。パラフィンブロックの場合は、キシレンで脱パラフィン処理し、エタノールでよく洗浄してから、細切する。
(2)  細切した試料の湿重量を秤量した後、110℃の乾燥機に数時間入れ乾燥させ、乾燥重量を精秤して、これらのデータを記録しておく。
(3)  乾燥試料を50mlポリ製遠沈管に入れ、組織消化液 (クリーン99 K-200R:20%次亜塩素酸ソーダ+5%KOH+表面活性剤、クリーンケミカル(株))を30ml加え、60℃の乾燥機中に数時間放置して組織を消化する。
(4)  消化処理後、消化液の入った遠沈管を遠心分離機に架け、3000rpmで30分間遠沈する。残留物が多い場合は、(3)の処理をもう一度行う。
(5)  遠沈後、上澄を棄却し、蒸留水を30ml加え良く攪拌し(撹拌には超音波洗浄機を用いる)、再び遠沈(3000rpm30分間)する。この操作を3回繰返す。
(6)  3回目の洗浄後、50mlガラス試料瓶に試料懸濁液を入れ、蒸留水で50mlに定容化する。
(7)  50ml試料懸濁液から精密ピペットで1〜5ml程度を50mlコニカルビーカーに分取する。
(8)  蒸留水で20〜50mlに希釈して、セルロースエステル・メンブランフィルターを用いて吸引ろ過して、フィルター上に残留物を捕集する。
(9)  残留物を吸引捕集したメンブランフィルターを半切し、その半分のフィルターを試料面をガラス面に向けてスライドグラスに載せ、アセトン蒸気を当てて固定する。その上にトリアセチンを2〜3滴滴下し、カバーグラスを載せ観察標本とする。

石綿小体 ・繊維計数方法:ろ過フィルターを載せた観察標本に存在している石綿小体と繊維(繊維は主に石綿とグラスウールやロックウール)は、位相差顕微鏡を用いて計数する。
(1)  位相差顕微鏡(400X)を用いて観察標本中の石綿小体を200本に達するまでフィルター内を連続的系統的に計数し、その時の視野数を計数する。計数した石綿小体が少ない場合は、フィルター試料面全面を計数し、その時計数した総石綿小体数を記録する。
(2)  石綿小体の計数と同時に、位相差顕微鏡で観察される繊維も計数する。位相差顕微鏡で見える繊維は、比較的大きな繊維であるが、ばく露判定の補助的データとなる。位相差顕微鏡では、繊維の種類は判定できないが、石綿らしき繊維は慣れてくると分かる。また、明らかにそういった石綿繊維らしき繊維とは異なる繊維を発見した場合、それらを石綿らしき繊維と区別して記録する。このような繊維の多くは、グラスウールやロックウールあるいはセラミック繊維のことが多い。なお、「繊維」として計数対象とするのは、長さ5μm以上、長さと幅の比が3以上で繊維の側面が平行なものである。
(3)  乾燥試料量、分取率、観察視野数といったデータを用いて、1g乾燥試料重量当たりの石綿小体濃度を計算する。また、繊維、グラス繊維なども同様にして濃度を計算する。計算式は、下記のとおりである。
CAB = NAB/F×WL
 ここで、 CAB
NAB
F
WL
:石綿小体(AB)濃度(AB/g乾燥肺)
:計数した石綿小体(AB)数
:分取率(定容化した試料液からフィルターにどれだけ分取したかの率)
:肺試料量(乾燥重量;g)
(4)  最後に、各計数における検出下限値(DL)を計算しておく。DL値は、その計数において仮に1本の石綿小体あるいは繊維が検出された場合の濃度を示す。

<計測結果の例>
 位相差顕微鏡で計数した種々の石綿小体濃度の例を次に示す。
(1)  職歴から明らかに高濃度ばく露を受けたことが分かっている集団として、北米(主に米国とカナダ)断熱保温作業者の肺内石綿小体濃度を計測した。ほとんどの作業者が1gの乾燥肺当り10万本以上の石綿小体濃度[105 AB/g(dry lung)]レベルを示していた。
(2)  石綿取扱い職歴があって肺がんで亡くなったため、石綿肺がんとして労災補償を受けた労働者の肺内石綿小体濃度を測定した。ほとんどの症例において1000AB/g(dry lung)以上の値を示していた。
(3)  一般人の場合(入院時に特に職歴を聞いていない)で、肺がんで亡くなった症例について同様に石綿小体濃度を調べた。109例の測定例中、肺内石綿小体が1000 AB/g(dry lung)以上は28%、3000 AB/g(dry lung)以上は14%、5000 AB/g(dry lung)以上は4.6%であった。5000本以上のケースは、職歴は不明だが職業ばく露であったと推定される。
(4)  中皮腫例についても調べた。大阪中皮腫研究会のパネルで検討し中皮腫と判定された13症例では、検出下限値の20AB/g(dry lung)以下から3×105AB/g(dry lung)にわたる広い濃度範囲にあった。このうち1000AB/g(dry lung)以下の例は、5例で38%であった。癌研究所(東京)の10例では、約100 AB/g(dry lung)の定量下限値以下から5000 AB/g(dry lung)の範囲にあり、1000AB/g(dry lung)以下は6例(60%)であった。
(5)  この他の肺内石綿小体濃度の測定例として、熊本県下の旧石綿鉱山付近の住民とそこから遠く離れた農村地域の住民の肺がん例を比較して調べたものがある。その結果は、農村地域の住民の多くは1000AB/g(dry lung)以下であったが、旧石綿鉱山付近の住民の肺内石綿小体濃度はその住居が旧鉱山に近づくに従って高くなって行き、石綿環境ばく露があったことが判明した。

2  ヒト組織試料中の石綿繊維測定法
 石綿小体は重要な石綿ばく露指標である。しかし、石綿小体だけでは石綿のばく露を正確に評価できない場合もあることが分かってきた。光学顕微鏡では石綿繊維がほとんど見えないので、石綿小体を作りにくいクリソタイルのばく露は石綿小体の観察だけでは確認できない場合が多い。そこで、分析透過電子顕微鏡(ATEM)を用いて石綿小体と石綿繊維の両方を検出・定量して石綿ばく露と疾病との因果関係(量―反応関係)を調べる検索が必要になる。
 現在、ATEMで観察可能な剖検肺、切除肺、経気管支肺生検(TBLB)、喀痰、肺洗浄液(BALF)などについて分析法をまとめて示した(表1)。
表1 分析電子顕微鏡による石綿ばく露評価のための試料処理方法と特徴
被検試料のタイプ 試料状態 処理方法 特徴
剖検・ フォルマリン固定 NaOCl,NaOH,  
切除肺試料 組織ブロック(0.2 - 2cm3) KOH,H2O2
酵素、灰化
検出率・定量性よい、組織との反応や組織中の石綿小体・繊維等の存在位置の精度は劣る
  切片
(1 - 2cm2 x 5 - 20 μm)
灰化
検出率・定量性中ぐらい、組織との反応や組織中の石綿小体・繊維等の存在位置は一部正確にわかる
  超薄切片
(1 - 2 cm2 x 0.1μm)
ミクロトーム
検出率・定量性劣る、組織との反応や組織中の石綿小体・繊維等の観察に好適
生検肺試料
(TBLB, etc)
切片
(0.5 - 2 cm2 x 3 - 5μm)
灰化
ミクロトーム

検出率・定量性やや劣る、生存者のばく露評価が可能
肺胞洗浄液
(BALF)
かく痰
胸水
液体
(0.1 - 100 ml)
NaOCl
灰化

検出率・定量性ややよい、生存者のばく露評価が可能
<生体試料処理方法>
塊状(バルク)の場合:
   剖検や手術で採取しホルマリン固定あるいはパラフィン包埋された剖検肺や切除肺は、肺組織を消去して石綿などの粉じんをフィルターにろ過捕集するために、まず組織消化処理をする。消化液には、様々な溶液が提案されているが、筆者の考案した次亜塩素酸ナトリウム(20%)と水酸化カリウム(5%)及び表面活性剤の混合溶液(K-200)に数時間以上浸積して組織を消化し、遠沈・ろ過して残渣を抽出する方法が効率的である。この他、水酸化カリウムのみで組織を消化する方法や組織を直接低温灰化する方法なども行われている。遠沈・ろ過した残渣を溶液に分散させ一定量に定容化した後、適量を分取してフィルターに吸引ろ過捕集する。フィルター試料はスライドグラスにアセトン蒸気で接着し低温灰化処理後にカーボン抽出法で分析透過電子顕微鏡(ATEM)標本に変換する。
バルク組織試料から作製した超薄切片の場合:
   ウルトラミクロトームを用いて定法により電子染色した電子顕微鏡用病理標本試料である。
バルク組織試料の厚切切片の場合:
   スライドグラス上に載せた10〜20μmの厚さの組織切片をプラズマ灰化装置で低温灰化して、残渣粒子をポリビニールアルコール(PVA)を用いたカーボン抽出法でATEM標本を作製したもの。これらは、組織中に存在していた石綿の分布状態を直接観察することが可能である。
経気管支肺生検(TBLB)の場合:
   入院中の患者に対してより確実な診断を行うために経気管支肺生検(TBLB)がよく行われる。その時採取された小さな組織を用いて石綿ばく露の確定を行う方法も開発されている。数mm3程度の小さな組織試料をパラフィン包埋して病理診断用切片標本を作る際、無染色の連続切片を準備し、上記の厚切切片と同様の処理方法でATEM標本を作製する。この方法で得た情報を基に主治医が患者に詳しく問診を行うことで、患者も忘れていたかあるいは知らなかった石綿ばく露の様子が確認できる。
喀痰、肺洗浄液(BALF)などの液状試料の場合:
   患者の確定診断に使われるこれらの液状試料中の石綿小体と石綿繊維は、上記K-200溶液を用いて液状試料中の生体物質を消化して、残渣をフィルターにろ過捕集して、そのフィルターをアセトン蒸気でスライドグラスに接着し、低温灰化処理してカーボン抽出法でATEM標本を作製する。この方法もTBLBの場合と同様患者への詳細な再問診ができるので、より精度の高いばく露の様子を知ることが可能である。


 一定量のバルク組織を処理する方法は、仮に石綿が肺内で不均一に分布していたとしても、処理中に均一になり、かつその分散液を濃縮したり希釈したりできるので、定量精度に優れており計数もしやすい。現在では世界的にこの方法でデータの相互比較がされるようになってきた。一方、切片試料(超薄切片、厚切切片、TBLB)を用いた場合に観察される石綿は、組織内に分布していた状態そのものであり(その場観察)、局在しているところを観察する確率も高いので一般に検出感度に優れている。喀痰や肺洗浄液を用いる患者に対しての診断方法は、TBLBよりも患者への負担が少ないので近年盛んになっている。いずれの方法も一長一短があり、目的に応じた方法の選択が大切である。



別添参考資料4  石綿ばく露歴チェック表(『職業性石綿ばく露と石綿関連疾患』
 ((三信図書)より転載)

石綿ばく露歴チェック表
石綿ばく露歴チェック表
                   

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