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中西委員配布資料


障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会(第6回) 提出資料

委員 中西 正司(DPI日本会議)

○今後の進め方について

I 検討委員会の理念

1. 能力を重視した視点での地域移行ではなく、市民として(どんな重度の身体的、知的な障害を持つ人も市民である)の視点をもつ地域移行という理念を理解した上で、今後の地域生活支援のメニューを考えること。

  能力を重視した視点 市民としての視点
施設支援
地域支援


II 支援費制度の分析と評価

1. 支援費制度の良い点、改善すべき点
2. 居宅介護(ホームヘルプサービス)の改善
 (1) 日常生活支援と移動介助を一元化し社会参加とする(日常生活支援は10時間を最低限とする)
 (2) 知的障害者の日常生活支援の適用について
 (3) 日常生活支援と身体介護・家事援助の併用を認める


III ホームヘルプサービスの国庫補助基準の見直しについて

1. 支援費制度施行後の利用状況の調査と分析(国、都道府県、市町村、民間団体)
各市町村のホームヘルプサービスの予算について
2. 現状の国庫補助基準の問題点
 (1) 人口規模の小さい自治体では長時間ホームヘルプサービスが必要な重度障害者が一人いるだけで基準を超えてしまう。
 (2) 福祉サービスが良い自治体に長時間介助が必要な重度障害者が転入してくるために、自治体の負担が重くなってしまう。
 (3) 国庫補助基準の見直し
過疎地と都市部での国庫補助基準の格差付けについて
単身や障害者のみ世帯等の長時間要介助の障害者の数に配慮した国庫補助基準について


IV 先進事例のサービスで、国の制度に取り入れるべきものの検討


V 今後の地域のサービスメニューについて

1. ホームヘルプサービスとパーソナルアシスタントサービスの違い
 (1) 家族と同居の高齢者を対象として始まったホームヘルプサービスは裁量的経費でまかなわれるべきものであったが、一人暮らし障害者にとっての介助は生命を支える必須のサービスとして義務的経費で賄われるべきという議論

 (2) セルフマネジドケアとダイレクトペイメントの議論

 (3) 職場や学校などで必要な介助サービスについて

2. 施設から地域への移行において必要となる制度・サービス
 (1) グループホームと地域での体験的な自立生活の場
獲得できる生活能力の違いに応じて必要とされるサービス内容のメニューについて
@  支援費の介助サービスを体験の場において使える制度
A  緊急介助派遣と相談体制について

 (2) 知的障害者と身体障害者の単身住宅の確保について
知的障害、精神障害の公営住宅の単身入居の制限の解除
障害者欠格条項をなくす会 金政玉

民間住宅の家賃補助政策や米国のhome of your own政策の検討

 (3) 親プログラム
知的や身体の障害を持つ当事者が、障害児の親に対して行うカウンセリングや教育プログラム

 (4) 当事者プログラム
若者の当事者に対する、中学、高校からの自立支援プログラムの促進

3. 視覚障害者への支援
 (1) 点字プリンターの補助について
 (2) 点字音声ワープロの補助について
 (3) ITの補助について

4. 聴覚障害者への支援
 (1) 手話通訳者の育成プログラムについて
 (2) 聴覚障害者のピアカウンセリングについて

5. 障害者の社会参加と就労問題

6. 権利擁護団体と当事者団体の育成
 (1) 自薦ヘルパーやパーソナルアシスタント制度等当事者による支援活動の位置づけ
 (2) 当事者の立場からの権利擁護
DPI権利擁護センター 三澤 了
 (3) 大阪府におけるまちづくり運動と自立生活センターの展開
自立生活センター・ナビ 尾上 浩二


VI 地域ケアモデルの整備、推進について

1. 地域ケアモデルの地域単位をどうするか、地域特性についてどう考慮すべきか
2. 望ましい地域ケアモデルの整備をどうように進めていくぼきか、また行政の関与はどうあるべきか(国、都道府県、市町村の役割)
3. 地域支援サービスにおけるサービスの質の評価はどのようにおこなわれるべきか、また、良質のサービスを育成するためにはどうすれば良いか、(当事者による評価をどのように取り入れるか、障害種別によるサービス提供者の資格等)


VII 障害者サービスの財源問題について

 ・ 望ましい地域生活支援を実現するに当たり、将来の財源をどうするか



○ワーキングループの設置について

1. ワーキング・グループを以下の問題で結成し本委員会に報告する。

 (1) 知的障害者の地域生活支援について
「国内及び諸外国の先進地事例の分析」
地域ネットワーク、自立生活センター、その他
知的障害者の地域生活支援(知的障害者の自立生活の事例 等)

 (2) 支援費制度の確立に向けて
全身性障害者の介護問題
介護保険と支援費制度との比較検討



○今後のヒアリングについて

1. 新田 勲(全国公的介護保障要求者組合)
足指文字でコミュニケーションをする24時間介護の脳性マヒ者の地域生活支援と介護サービスについて

2. 光岡 芳晶(特定非営利活動法人 すてっぷ)
鳥取県米子市の自立生活センターで、市町村障害者生活支援事業、ホームヘルプサービス、作業所を運営
地方都市での重度身体障害者の自立支援について

3. 佐藤 喜美代(ベンチレーター使用者ネットワーク)
人工呼吸器(ベンチレーター)をつけた障害者の地域での生活

4. 鈴木 絹江(福祉のまちづくりの会)
福島県船引町(人口約24,000人)−過疎地での当事者支援組織

5. カナダのセルフマネジドケア、ダイレクトファウンディングプログラムについて
Vic Will(ビック・ウィル) トロント自立生活センター 所長
※参考資料  「当事者主体の介助サービスシステム〜カナダ・オンタリオ州のセルフマネジドケア」ヒューマンケア協会,1999年


○アメリカ合衆国のメディケイド地域アテンダントサービス支援法案(Medicaid Community-Based Attendant Services and Supports Act)について

(障害者団体ADAPTのHP http://www.adapt.org/ より抜粋)

 ADAPTが作成した条例の原案は、これまでの長時間介護におけるシステムと、今なお存在している施設への予算の偏りを根本から変革することになるだろう。それだけでなく、障害者とその家族は、どこでどのようなサービスを受けるかを自由に選べるようになるであろう。
 MiCASSA(メディケイド地域アテンダントサービス支援法)こそ、その選択肢なのである。MiCASSAでは、新たな資格条件を設けるのではなく、今ある条件をより柔軟なものにする方法を採っている。
 MiCASSAは、障害の種別や年齢を問わない、地域密着型のサービスと支援に関する全国プログラムを制定している。もしこの原案が採用されれば、当事者主体のもとで医療扶助が用いられ、有資格者、もしくはその代理人は、サービスや支援を受ける場所を選べるようになる。もはや養護ホームや福祉施設に入る権利のある人なら誰でも、どこでどのようなサービスを提供してもらうか、その選択が可能になる。現在、養護ホームやそれ以外の施設に居住している二百万人に上る障害者も、ついに選択権を持つことになるであろう。


メディケイド地域アテンダントサービス支援法(2003年)−
メディケイドの対象者に対する地域に根ざしたアテンダントサービス及び支援を州のメディケイド計画に委任ずるため、連邦社会保障法(SSA)の第19条(メディケイド)を修正する。

規定の概略:
(1)地域に基づいた介助サービスと支援の利用を拡充、促進している州(eary coverage states)において進行中の活動に対する連邦医療補助の割合の拡大と
(2)地域に基づいた介助サービスと支援の提供を行っている州によってかかった負担経費に対する連邦の関与の増大

厚生長官{the Secretary of Health and Human Services} に以下の支持を行う
(1)リアル・チョイス・システムによる主導権の変更を推し進めている州を支援するために、消費者対策委員会{Consumer Task Force}を定めた有資格の州に報酬を与える
(2)高齢でない二十の資格を有した個人に対して地域に基づいた介助サービスと支援を提供するのにあたって、サービスの同等化と費用分担の手法を評価する目的で公開実験のプロジェクトを実行する


メディケイド地域アテンダントサービス支援法(Medicaid Community-based Attendant Services And Supports Act ) 2003年起草

MiCASSA(メディケイド地域アテンダントサービス支援法)の要約

 MiCASSAは、社会保障法(SSA)の第19条(Medicaid)を改正し、施設への支出額の不均衡を是正することによって、対象者に、長時間介護サービスにおける本当の選択肢(real choice)を与えるものである。MiCASSAによって、介護入居施設のサービス、もしくは知的障害児を対象にした通所施設(ICF-MR)でのサービスを受ける権利のある個人に、それに代わる「地域に根ざしたアテンダントサービスと支援」という新たな選択肢を選ぶチャンスが生まれるのである。それまで施設に投じられていた資金を、当事者主権のもとで利用出来るようになるのである。
 加えてMiCASSAは、サービスが永続化する2007年10月までの間、リアル・チョイス制へ移行するための助成金を強化することで、長時間介護サービスにおけるシステムを改変し、最も統合された状態でサービスを提供するための資金援助を各州に対して行う。
 では具体的に、この法案はいったい何をするものなのだろうか?

1.以下に示す範囲内において、地域に基づいた介助サービスと支援を提供する。
・日常生活動作[ADL](食事、トイレ、身支度、衣服の着脱、入浴、移動)
・手段的日常生活動作 [IADL](食事の計画と準備、金銭の管理、買い物、家事一般、電話の応対、地域活動への参加)
・健康に関連した機能
2.以上にあげた活動を達成するのに必要な種々の技術を習得、定着、向上させる援助だけでなく、直接的な介助、助言をも行う。
3.当事者のニーズにふさわしい、最も統合された状態でサービスが提供されることを要求する。
4.以下の条件に合致するような、地域に基づいた介助サービスと支援を提供する
・診断や年齢によるのではなく、機能上のニーズに基づいた支援
・家庭や地域における生活環境(学校、職場、レクリエーション施設、宗教施設)のもとで必要になる支援
・サービスの利用者によって選択され、管理され、統括される支援
・交代要員や非常時における介助を補填する支援
・利用者によって合意を得た計画に従って提供される支援、ならびに介助者を選択、管理、解約するために行う任意の訓練を意図した支援。
5.サービス量の支払い方法を利用者が選べるようにする。(バウチャー方式、現金による直接支払い、財務代行人、代理業者などの中から)。これら全てのモデルは利用者の意思によって決定されることが求められる。
6.独力で自己管理を行うことができない利用者について、MiCASSAは、その援助のため、利用者によって委任された代理人(individual's representative)を擁立することを認める。代理人は、友人、家族、保護者、擁護者であることが望ましい。
7.健康に関連した機能や仕事に関しては、州法に従い、無資格の個人介助者(unlicenced personal attendants)によって割り当てられ、派遣され、それらの職務が行われる。
8.養護施設や通所施設(ICF-MR)から一人暮らしの環境へ転居する際の個人負担(「移行費」transitional costs)を負担する。(家賃、敷金、寝具、基本的な台所用品、そのほか転居に当たって生じた必要品など)。
9.州がその上限を撤廃して雇用の可能性を高めることを選んだ場合、現行の施設経費額を越えた収入を個人に給付する。
10.利用者の管理能力と満足度を促進する質的保証プログラム(quality assurance program)を準備する。
11.州が、常時提供されている今までより充実した内容のプログラムを削減出来ないように、必要に応じた維持費を提供する。
12.施設でかかる平均費用の150%を超過する個人に対して、補助金額を最高90%の連邦予算によって引き上げる。
13.サービスが永続化する2003年から2007年までの間、以下にあげる州に対して補助金を強化して提供する。(それぞれ10%増しの国庫予算)
・長時間介護のシステムを変更する活動を計画している州ならびに、(もしくは)
・各州によって定められたメディケイドによって地域に根ざした介助サービスと支援を行う州

システムの変更(SYSTEMS CHANGE)

14.システムの変更を促すための助成金を提供して、利用者対策委員会(Consumer Task Force)の指導のもと、州が現行の支配的な施設によるサービス提供のシステムから、地域に根ざした介助サービスと支援に対してこれまで以上に力点を置いたシステムへ移行することを援助する
15.メディケイドとメディケアの両方を受ける資格のある高齢者でない人に対して、サービスの平等化を強化するために、五つの州において、五年から十年にわたる全国規模のデモンストレーション・プロジェクトを要請する


メディケイド地域アテンダントサービス支援法(MiCASSA)に関するいくつかの質問(抜粋)

3.MiCASSAのサービスを受けるのに、収入、所得などによる制限はあるのですか?

 ありません。 もし養護施設や通所施設を利用する資格のある人であれば、MiCASSAのサービスを受けることが出来ます。現在、補足的所得保障(SSI: Supplemental Security Income)の300%(一人当たり、一ヶ月でおよそ1500ドル)までの収入であることが、施設利用の資格条件です。さらに、1999年のTWWIIA(the Ticket to Work and Work Incentives Improvement Act)によって、州は、規定の上限を超えた高い収入のある利用者に対して、変動型利用料基準(sliding fee scale)を選択することが出来ます。

6.MiCASSAは、財源基盤のない新たな委託(a new unfund mandate)なのですか?

 いいえ。 MiCASSAは、現在、入居型の養護施設に委託されている権能、ならびに知的障害者の通所施設に事実上委託されている権能を、それらのサービスの利用者のニーズや要望に応えるものにします。MiCASSAによれば、これらのサービスを既に利用する資格のある人は、どこでサービスを受けるかという選択肢を、簡単に持つことになります。
 MiCASSAは、資金を施設や事業者に委託するのではなく、サービスの受領者に焦点を当てて現行のシステムを適応させるのです。

7. どうしてMiCASSAが必要なのですか?

 現行における我が国の長時間介護サービスのシステムは、極めて施設の側に偏った制度になっているからです。今の制度のもとでは、長時間介護サービスに使われるMedicaidのうちの75%が施設関連の費用に投じられるため、残りの25%の予算で地域に基づいたサービスの全てをカバーしなければなりません。また、Medicaidの資金を受けている全ての州において、養護施設サービスの提供が義務付けられているのに大して、地域に基づいたサービスは、完全に州ごとの任意になっています。MiCASSAにはこう記されています。「不均衡を是正せよ。そして、政府や建設業界ではなく、当事者のもとに『本当の選択(the real choice)』を与えよ。」

9.MiCASSAは、財政を破産させることはありませんか? 制度の変更によって、予算の枠をはるかに超える利用が生じうるのではありませんか?

 MiCASSAでは、会計年度の総額において施設を利用する資格のある障害者に現在かかる費用以上に、費用がかからないことを保証しています。施設サービスを受ける資格があり、もし選べるのだとしたら決して施設には行かずMiCASSAの制度を利用したいと考える障害者に関しては多くの議論がありました。確かに最初の間は、サービスや支援を利用する人の数がある程度は増加するかも知れませんが、それによって逆に施設の利用客が減少し、加えて施設でのサービスよりも地域基盤型のサービスの方がコストを安く抑えられるので、結果として予算を超過することはありません。

11.それでもまだサービスが足りない利用者に関してはどうなるのですか?

 費用が、施設でかかる平均費用の150%を上回る利用者に対して、MiCASSAでは、その州に対して追加分の国庫資金が提供されます。その結果、利用者は限度以上のサポートを受けられ、施設に戻らなくてもよいことになります。


(原文)
 ADAPT has drafted a bill which will fundamentally change our long term care system and institutional bias that now exists. Instead people with disabilities and their families will be able to choose where and how they receive services.
 MiCASSA, the Medicaid Community Attendant Services and Supports Act, is that alternative! Instead of making a new entitlement, MiCASSA makes the existing entitlement more flexible.
 MiCASSA establishes a national program of community-based attendant services and supports for people with disabilities, regardless of age or disability. This bill would allow the dollars to follow the person, and allow eligible individuals, or their representatives, to choose where they would receive services and supports. Any individual who is entitled to nursing home or other institutional services will now have the choice where and how these services are provided. The two million Americans currently residing in nursing homes and other institutions would finally have a choice.
 Medicaid Community-Based Attendant Services and Supports Act of 2003 - Amends title XIX (Medicaid) of the Social Security Act (SSA) to mandate State Medicaid plan coverage of community-based attendant services and supports for certain Medicaid-eligible individuals.
 Outlines provisions for: (1) an enhanced Federal medical assistance percentage for ongoing activities of early coverage States that enhance and promote the use of community-based attendant services and supports; and (2) increased Federal financial participation for certain expenditures incurred by the State for the provision of community-based attendant services and supports.
 Directs the Secretary of Health and Human Services to: (1) award grants to eligible States which have established a Consumer Task Force to assist the State in its development of real choice systems change initiatives; and (2) conduct a demonstration project for the purpose of evaluating service coordination and cost-sharing approaches with respect to the provision of community-based services and supports to non-elderly dually eligible individuals.

Medicaid Community-based Attendant Services And Supports Act of 2003

MiCASSA (S. 971/HR 2032): A Summary

MiCASSA gives people real choice in long term care options by reforming Title XIX of the Social Security Act (Medicaid) by ending the institutional bias. MiCASSA allows individuals eligible for Nursing Facility Services or Intermed iate Care Facility Services for the Mentally Retarded (ICF-MR) the opportunity to choose instead a new alternative, "Community-based Attendant Services and Supports." The money follows the individual!

In addition, by providing an enhanced match and grants for the transition to Real Choice before October 2007 when the benefit becomes permanent, MiCASSA offers states financial assistance to reform their long term service and support sy stem to provide services in the most integrated setting.

Specifically what does this bill do?

1) Provides community-based attendant services and supports ranging from assistance with:

・ activities of daily living (eating, toileting, grooming, dressing, bathing, transferring),

・ instrumental activities of daily living (meal planning and preparation, managing finances, shopping, household chores, phoning, participating in the community),

・ and health-related functions.

2) Includes hands-on assistance, supervision and/or cueing, as well as help to learn, keep and enhance skills to accomplish such activities.

3) Requires services be provided in THE MOST INTEGRATED SETTING appropriate to the needs of the individual.

4) Provides Community-based Attendant Services and Supports that are:

・ based on functional need, rather than diagnosis or age;

・ provided in home or community settings like -- school, work, recreation or religious facility;

・ selected, managed and controlled by the consumer of the services;

・ supplemented with backup and emergency attendant services;

・ furnished according to a service plan agreed to by the consumer; and that include voluntary training on selecting, managing and dismissing attendants.

5) Allows consumers to choose among various service delivery models including vouchers, direct cash payments, fiscal agents and agency providers. All of these models are required to be consumer controlled.

6) For consumers who are not able to direct their own care independently, MiCASSA allows for "individual's representative" to be authorized by the consumer to assist. A representative might be a friend, family member, guardian, or advocate.

7) Allows health-related functions or tasks to be assigned to, delegated to, or performed by unlicensed personal attendants, according to state laws.

8) Covers individuals' transition costs from a nursing facility or ICF-MR to a home setting, for example: rent and utility deposits, bedding, basic kitchen supplies and other necessities required for the transition.

9) Serves individuals with incomes above the current institutional income limitation -- if a state chooses to waive this limitation to enhance the potential for employment.

10) Provides for quality assurance programs which promote consumer control and satisfaction.

11) Provides a maintenance of effort requirement so that states can not diminish more enriched programs already being provided.

12) Allows enhanced match (up to 90% Federal funding) for individuals whose costs exceed 150% of average nursing home costs.

13) Between 2003 and 2007, after which the services become permanent, provides enhanced matches (10% more federal funds each) for states which:

・ begin planning activities for changing their long term care systems, and/or

・ include Community-based Attendant Services and Supports in their Medicaid State Plan.


SYSTEMS CHANGE

14) Provides grants for Systems Change Initiatives to help the states transition from current institutionally dominated service systems to ones more focused on community based services and supports, guided by a Consumer Task Force.

15) Calls for national 5 to 10 year demonstration project in 5 states to enhance coordination of services for non-elderly individuals dually eligible for Medicaid AND Medicare.


Some Questions About the Medicaid Community-Based Attendant Services And Supports Act(MiCASSA)


1. What are the community-based attendant services and supports in MiCASSA?

In MiCASSA, the term community-based attendant services and supports means help with accomplishing activities of daily living (eating, toileting, grooming, dressing, bathing, and transferring) instrumental activities of daily living (meal preparation, managing finances, shopping, household chores, phoning, and participating in the community), and health-related functions (which can be delegated or assigned as allowed by state law). These can be done through hands-on assistance, supervision and/or cueing. They also include help with learning, keeping and enhancing skills to accomplish such activities.
These services and supports, which include back-up, are designed and delivered under a plan that is based on a functional needs assessment and agreed to by the individual. In addition they are furnished by attendants who are selected, managed, and dismissed by the individual, and include voluntary training for the individual on supervising attendants.
MiCASSA specifically states that services should be delivered, "in the most integrated setting appropriate to the needs of the individual" in a home or community setting, which may include a school, workplace, or recreation or religious facility.

2. If someone can't manage their attendant services completely independently are they still eligible for MiCASSA services?

Yes! People who have difficulty managing their services themselves, due to a cognitive disability for example, can have assistance from a representative, like a parent, a family member, a guardian, an advocate, or other authorized person.

3. Do you have to be impoverished to be eligible for MiCASSA?

No. If you are eligible to go into a nursing home or an ICF-MR facility you would be eligible for MiCASSA. Financial eligibility for nursing homes is up to 300% of the SSI level (roughly $1,500 per month for a single person). In addition, with the Ticket to Work and Work Incentives Improvement Act of 1999, TWWIIA, states can choose to have a sliding fee scale for people of higher incomes beyond the current Medicaid eligibility guidelines.

4. Is MiCASSA biased towards an agency delivery model?

No. MiCASSA assumes that one size does not fit all. It allows the maximum amount of control preferred by the individual with the disability. Options include: vouchers, direct cash payments or a fiscal agent, in addition to agency delivered services. In all these delivery models the individual has the ability to select, manage and control his/her attendant services and supports, as well as help develop his/her service plan. Choice and control are key concepts, regardless of who serves as the employer of record.

5. Will MiCASSA replace existing community-based programs?

MiCASSA does not effect existing optional programs or waivers and includes a maintenance of effort clause to ensure these programs are not diminished. Waivers include a more enriched package of services for those individuals who need more services. With MiCASSA, people who are eligible for nursing homes and ICF-MR facilities can choose community attendant services and supports as a unique service that is a cost-effective option. The money follows the individuals not the facility.

6. Is MiCASSA a new unfunded mandate?

No. MiCASSA is a way to make an existing mandate for nursing homes and virtual mandate for institutions for mentally retarded persons responsive to the needs and desires of the consumers of these services. MiCASSA says the people who are already eligible for these services will simply have a choice of where they receive services. MiCASSA would adjust the current system to focus on the recipients of service, instead of mandating funding for certain industries and facilities.

7. Why is MiCASSA needed?

Our current long term services system has a strong institutional bias. Seventy five percent of Medicaid long term care dollars go to institutional services, leaving 25% to cover all the community based services. Every state that takes Medicaid funds must provide nursing home services while community based services are completely optional for the states. MiCASSA says, let's level the playing field, give the person, instead of government or industry, the real choice.

8. How does MiCASSA help states?

MiCASSA provides a five year transformation period for the states by providing both an enhanced match and grants for the transition to Real Choice before the benefit becomes permanent. MiCASSA offers states financial assistance to reform their long term service and support system to provide services in the most integrated setting, and thereby helps with compliance with the Supreme Court's Olmstead decision as well.

9. Will MiCASSA bust the bank? What about the "woodwork" effect?

MiCASSA assures that a state need spend no more money in total for a fiscal year than would have been spent for people with disabilities who are eligible for institutional services and supports.

There is a lot of discussion about the people who are eligible for institutional services, would never go into the institution, but would jump at the chance to use MiCASSA. (This is called the woodwork effect.) The states of Oregon and Kansas have data to show that fear of the woodwork effect is blown way out of proportion. There may be some increase in the number of people who use the services and supports at first, but savings will be made on the less costly community based services and supports, as well as the decrease in the number of people going into institutions.
Belief in the woodwork effect assumes a lot of "free care" is now being delivered by caregivers. There is a real question whether this care is truly "free". Research on the loss to the economy of the "free" caregivers is beginning.

10. What are the transitional services?

Currently Medicaid does not cover some essential costs for people coming out of nursing homes and ICF-MR facilities. These include deposits for rent and utilities, bedding, kitchen supplies and other things necessary to make the transition into the community. Covering these costs would be one of the services and supports covered by MiCASSA.

11. What about people who need more supports?

For people whose costs are higher than 150% of the average nursing home cost, MiCASSA will provide additional federal support to the states, so that people are not stuck in institutions because they need more services and supports.

12. What about people who are dually eligible for both Medicaid and Medicare?

MiCASSA includes a national 5 to 10 year demonstration project in 5 states to enhance coordination of services for non-elderly individuals dually eligible for Medicaid AND Medicare. These individuals often fall through the cracks now.

13. How is Quality Assurance addressed in MiCASSA?

States are required to develop quality assurance programs that set down guidelines for operating Community-based Attendant Services and Supports, and provide grievance and appeals procedures for consumers, as well as procedures for reporting abuse and neglect. These programs must maximize consumer independence and direction of services, measure consumer satisfaction through surveys and consumer monitoring. States must make results of the quality assurance program public as well as providing an on-going process of review. Last but not least sanctions must be developed and the Secretary of Health and Human Services must conduct quality reviews.

14. What is the purpose of the Real Choice Systems Change Initiatives section of the bill?

MiCASSA brings together on a consumer task force, the major stakeholders in the fight for community-based attendant services and supports. Representatives from DD Councils, IL Councils and Councils on Aging along with consumers and service providers would develop a plan to transition the current institutionally biased system into one that focuses on community-based attendant services. Closing institutions, or at least closing bed spaces must be thought through by the people that have an investment in the final outcome, the consumers. The plan envisions ending the fragmentation that currently exists in our long term service system.
In addition, the bill sets up a framework and funding to help the states transition from their current institutionally dominated service model to more community-based services and supports. States will be able to apply for systems change grants for things like: assessing needs and gathering data, identifying ways to modify the institutional bias and over medicalization of services and supports, coordinating between agencies, training and technical assistance, increasing public awareness of options, downsizing of large institutions, paying for transitional costs, covering consumer task force costs, demonstrating new approaches, and other activities which address related long term care issues.


○スウェーデンのパーソナルアシスタンス法及び協同組合方式について

(「セルフマネジドケア・ハンドブック」ヒューマンケア協会,2000年より抜粋)

第1章 直接給付及び個人介助サービスの協同組合モデル

1.伝統的ホームヘルプ・サービスとその組織
 他の福祉国家同様、スウェーデンも、地方自治体の責任による、高齢者や障害者のための公的ホームヘルプのサービスの比較的進んだ制度を持っている。この制度はできてから半世紀以上になるが、元々は幼児を持つ母親が病気になった場合の緊急支援措置だった。
 このサービスは後には、家族のいない高齢者が施設に入らずできるだけ長く一人暮らしができるように援助することになった。これらのサービスを運営・管理したのはソーシャルワーカーである。これまで障害者はクライエントではあっても、消費者ではなかった。どんな援助を、どのように、いつ、誰の援助を必要とするのかの決定に、障害者はほとんど関われなかったのである。

2.直接給付の概念
 従来のサービスに代わる選択肢の一つが直接給付であり、直接給付では、ユーザーは目的限定の補助金または支払い証明を受け取り、それを既存のサービスに使うことができる。従来のサービスの受け手は地方自治体による社会的サービス管理の前で無力なのに対し、直接給付の受け手は様々なサービス・プロバイダーと交渉してサービスを契約し、もっといいサービスが他で受けられると思えばプロバイダーを変えたりする購買力を持っている。要するに、直接給付は自分自身の責任による選択の自由によって消費者に力を与えるのに対し、従来のサービスはユーザーを受動的な対象に貶めてしまうのである。
 弱者の立場から自分自身の運命の主人公への変身は、障害者自身の日々の自己管理生活多大な影響を与える。
 直接給付は自立生活の哲学に見事に合致している。つまり、ヨーロッパの自立生活運動は従来のサービスを段階的になくし、直接給付の制度に代える立法を求めるようになったのである。個人介助者を雇うために直接給付を受ける人々、その家族、そして研究者は口々に、直接給付が可能にするサービスの質が極めてすぐれていると言う。但し、私の知る限り、従来のサービスと直接給付とのコストを比較する公式な調査はほとんど行われていない。しかし、スウェーデンの歴史経験からすると、直接給付を資金源とする1時間のサービスは、地方自治体のホームヘルプ・サービスが提供するサービスの70%のコストで済むという結果が出ている。直接給付が比較的低いコストでより良いサービスを産み出すのであれば、どうして世界中で従来のサービスをはるかに超える直接給付が行われないのだろうか。スウェーデンの直接給付の歴史をこれから簡単に紹介するが、それが多少は答えになるだろう。
※ 本論文はヒューマンケア協会運営委員の阿部 司氏により翻訳されたものである。
第1章は、スウェーデンのアドルフ・ラツカ(Adolf D. Ratuka、Ph.D)博士の1999年来日講演会内容の概要をまとめたものである。


3.ストックホルム自立生活協同組合(STIL)の歴史変遷
 私は1961年に障害者となった。66年から73年まで米国のカリフォルニアで勉強し、仕事もした。そして、私的に介助者を雇う資金も含んだ奨学金を受けていた。つまり、介助者を募集し、訓練し、必要なら解雇もできる現金を手にしたわけである。
 1973年にスウェーデンに移住したが、スウェーデンのホームヘルプ制度で支えられている生活の質が自分で介助者を雇うお金があった頃と比べて低いことに気づいた。
 1983年私は自立生活の概念をスウェーデンに紹介する国際会議を開催し、自分が主導権をとってSTILをスタートさせることになった。我々の目標はストックホルム市と近隣の自治体に、サービスではなくお金を与えてくれるよう説得することだった。
 介助者の雇用や資金の管理などサービスを自分で管理・運営することで、かなり質の高いサービスを獲得できると確信していた。  従来のホームヘルプ・サービスと我々が望むものとの違いを人々に確実に理解してもらおうと、私は1982年に「パーソナル・アシスタンス」という言葉を考え出した。この言葉は以後、他の国にも浸透していく。しかし、我々のプロジェクトには周りの強い反対があった。たとえば、次のような事柄である。
 (1)労働組合は、組合員が搾取されるのではと恐れていた。数年後の調査で、我々の方の介助者の労働条件は肉体的・精神的に見ても地方自治体派遣のホームヘルプ・サービスのヘルパーよりも100%近く良好なことが明らかになった。
 (2)大規模な障害者団体が我々にストップをかけようとした。いわゆるクラスター・ハウスである。つまり、共通の介助スタッフが生活する部屋を取り巻くようにアパートが並び、スタッフは24時間待機するというシステムに、多くのエネルギーと威信をつぎ込んできた人々である。
 クラスター・ハウスでは、介助は自分の家でなければ得られず、町中や仕事場、あるいは旅行中は受けられない。また、障害者住人は介助者を共有しなければならず、どの介助者に介助してもらうかを決めることができない。したがって、女性の場合、トイレなど一番人に見られたくない部分についても男性の介助者に介助してもらわなければならなかった。さらに、介助者は障害者全員が共有するわけだから、介助者の方で誰のニーズを優先するか決めなければならない。たとえば、お客が自宅に来ていて、コーヒーを出すのに介助者の手助けが必要でも、他の住人がトイレに行く時は、待っていなければならない。  わかりのように、クラスター・ハウスの生活は施設の生活と似た部分が大きいのである。
 (3)我々の利用者主体方式に対する抵抗は、障害者、特に高齢障害者からもあった。高齢障害者は、自分で介助者を募集し、訓練し、スケジュールを組み、管理もしなければならないという考え方に反発した。誰か他の人が責任を持ってほしいと考え、他の人に代わって決定をしてもらったが、結局生活そのものも自分で管理できなくなるということを理解しなかった。
 (4)ソーシャルワーカーや自治体の職員の多くも我々を止めさせようとした。障害者に自分の生活に責任が持てることはできないと考えたからである。また、障害者が自分で介助者を雇うようになったら、自分の仕事がなくなると恐れたのかもしれない。
 (5)左翼政党(スウェーデンの福祉国家を打ち立てた政党)も我々に大いに疑惑を抱いた。我々が、公的ホームヘルプ・サービスを批判し、私的ヘルパー制度を打ち出したことは、福祉国家に対する挑戦と受け取ったのである。保健や児童保護、障害者サービスなどを国家が独占していることに反対し、個々人がイニシアティブをとることを望んでいる保守党に、我々が影響されていると思い込んだからである。我々は、福祉国家の理念を支持していること、私的に介助者を雇う費用を国に負担してもらう必要があることを説明した。しかし、我々が疑問に思うのは個人の利害を最大限に尊重する決断を下す能力が国にあるかどうか、なのである。それは個々のニーズや関心事、資源によってそれぞれ違うので本人だけがができる決断なのである。もっとも進んだ社会工学的システムでも、個々の市民について、こうした内面にまで踏み込むような知識を持つことはできないし、持ってはならないのである。
 我々がこうした議論を立ち上げた1980年代後半は、東ヨーロッパや中部ヨーロッパ諸国が、中央の計画によって国民の個別のニーズを満足させる仕事の重圧に耐え切れず、徐々に崩壊しつつあった頃だった。
 私の政治的信念は、すべての国民に一定のニーズの満足度、すなわちただ生きるだけではなく、固有の資源を発達させることが可能なレベルに到達できる経済手段を保障することは、国家の責任であるということであり、国家の役割は枠組みや規則を作ることであって、商品やサービスの生産まで独占してはならない。そうした仕事には、無数の独立した行為者を抱える市場こそが、はるかにすぐれた道具なのだ。直接給付はこの哲学に合致する。

4.STIL(ストックホルム自立生活協同組合)の勝利
 4年間に及ぶロビー活動、論文の執筆、講演会の開催を経て、我の組織は1987年にパイロット・プロジェクト(試行事業)をスタートさせることができた。これまでホームヘルプ・サービスを使っていた22人が、介助者を雇い、訓練し、スケジュールを組み、介助サーヒスを管理した。STILの事務局は、障害者が雇用主になる際に必要な書類作成などを担当した。(このシステムについては後で説明する)
 STILモデルが広く政治的関心を呼んだ結果、1993年、国会は私的介助の必要性の高い人々に対する直接給付を保証する法律を成立させた。法案の提出に際して社会問題担当相はSTILとアドルフ・ラツカの名を出し、法案には「自立生活とSTILモデルの精神が充満している」と述べた。直接給付を受けた人々の生活の質が大幅に向上したために、法案は「世紀の障害者改革」と呼ばれている。現在では、かつて熱心に法案に反対した人々も理解が深まり、中には障害者問題を完全に解決したとまで言う人もいる。

5. スウェーデンのパーソナル・アシスタンス法
(LASS:The Swedish Personal Assistance Act)
 個人介助法は、資格のある人々に、国税を資金源とする国立の社会保険基金から現金の支払いを受ける権利を与えている。社会保険基金は、スウェーデン国民なら基金の財政状態に関わりなく権利として受け取る。老齢年金や健康保険の給付金、勤労女性への保障、入院保障などの割当原資を含む。この法律が、過去10年間スウェーデンの行政機能や財政責任を中央政府から地方政府へと移す傾向とは明らかに逆であることを示している。同法の給付条件は次の通りである。
 (1)給付対象者の年齢は0歳〜65歳までである。65歳になると私的介助のための直接給付を受けられなくなる。(法律の改正を求めるロビー活動が成功しなければの話であるが)また、65歳を過ぎて障害者になった人も資格はない。政府はこの制限について、私的介助の必要は年齢と共に増加するが、財政上私的介助の必要な人全員に給付ができるほどの余裕はないという理由をあげている。したがって、65歳以上で個人介助の必要な人は、地方自治体のホームヘルプ・サービスの責任となる。
 (2)週に最低20時間、トイレや食事、コミュニケーションなど「生活に不可欠」なニーズの介助。こうした活動に最低20時間の介助が必要な人は、家事、子供やお年寄りの世話、仕事、レジャーなどについての介助を追加申請することができる。
 (3)ニーズの評価は社会保険基金の事務所でソーシャルワーカーが行う。その決定に対しては行政裁判所に不服申し立てが可能である。
 一つの例をあげると、私は個人介助の必要時間は1日15時間と評価されている。評価を担当するソーシャルワーカーが、「生活に不可欠」なニーズに週20時間以上、一日約3時間以上が必要と判断すれば、私はさらに1日12時間を、一部は私の分担の家事に、一部は5歳の子供を相手にするために、また自立生活研究所の所長としての仕事の際の介助に、それぞれ請求できる。この交渉では、ソーシャルワーカーが私の活動とニーズの説明を受け入れてくれた。いつもそううまくはいかない。自分のニーズを社会保険基金に納得してもらえない人が多い。私の知り合いにも数人、私や本人の基準からすれば、十分な時間がもらえないでいる。だが一方で明らかにもらい過ぎている人もいる。
 24時間以上の給付を受けることもできる。介助者が一人では済まない人もいるからだ。たとえば、小さい子供がいる母親で、夫が仕事で旅行中のような場合、シャワーを浴びるのに一人介助者が必要で、その間に子供の面倒を見てくれる介助者がもう一人必要になるかもしれない。一般的に言うと、評価を担当するソーシャルワーカーを説得するには、事前に自分の言い分を整理しておき、ソーシャルワーカーの反論を予想しておくと役に立つ。STILでは、会員にソーシャルワーカーとの面談の準備をさせるコースを提供している。
 評価の基準に標準的なものはない。申請者とソーシャルワーカーとで意見が食い違う場合、医者の意見が大きな力を持つ。しかし自立生活運動では、決定するのは医学的状況ではなく、障害者個人の全体的事情だという見解を広めている。たとえば、脊椎損傷で家族を持ち、仕事もあって活発な社会生活を営む障害者は、全く同じ障害でも自宅でほとんどのことをしていて、義務や利害関係がない人より、多くの介助時間を必要とする。活動的になればなるほど、必要な介助時間は多くなるのである。たとえば私は自分が実際にやっている以上に、多くのことが自分でできる。セーターを自分で着ることはできる。でも最低30分はかかり、着た後でさらに30分、休息が必要になる。介助者に手伝って着せてもらえば1分で済むから、その方が私には意味のあることだ。こうすれば私は59分を節約して、もっと重要な活動に使える。肉体的に自分でできることはすべてするよう義務づけられたら、子供と遊ぶ時間も、論文を書いたり、会合に出席する時間もなくなるだろう。
 年齢制限と、週に20時間が最低限のため、スウェーデンの人口850万のうち直接給付を受けている人は比較的少ない。定義にもよるが、個人介助を必要とする人は10万人程度要るはずだが、現在、資格を得ている人は7500人に過ぎない。他の人は地方自治体のサービスに依存している。
 直接給付を受ける権利を得た人は、それぞれ、毎月給付を受けるが、金額は月の必要介助時間数に1時間当たりの経費を掛けたものになる。1時間当たりの経費はスウェーデン政府が毎年1回、定めるが、介助者への報酬、社会保険料、管理費などすべての経費を含む金額である。管理費は2つに分かれる。
・サービス・プロバイダーの事務所維持費、職員の給料、会計費用などの経費
・個々の介助利用者の経費。たとえば介助者が在宅でない場合の交通費、利用者が旅行し たり、外食したりする場合に介助者が見る映画代や食事代等を支払う。こうした費用を払うお金がないと、我々は自宅にほとんど縛り付けられてしまう。スウェーデンの個人介助法は、私の知る限り、この種の管理費を給付対象に含めた唯一のシステムである。その理由は、他の国の直接給付の法律とは違い、スウェーデンの方式が介助利用者の影響を強く受けたことにあるのではないか。すでに指摘した通り、STILのパイロット・プロジェクトでその基準を定め、我々がパイロット・プロジェクトの中で決めた財政規定や管理基準を社会保険基金が受け継いだのである。
 1999年については、政府は1時間当たりの経費を173スウェーデン・クローネ、約20ドルに設定した。賃金と社会保険料、事故賠償責任保険の保険料の合計は、賃金の額にもよるが、150クローネ程度になる。サービス・プロバイダーはプログラムの運営経費として1時間20クローネを請求する。そうすると、直接給付の受給者のほとんどが、個別の管理費に当てるお金が残らなくなる。STILは組織が大きく、経験も一番長いため、STILが徴収する事務経費を現在の1時間10クローネに抑えている。おかげでSTILの会員は介助者に高い賃金を払うか、今述べた個別の管理費に当てるお金を残すかの選択ができる。
 直接給付の受給者は、給金を使ってサービス・プロバイダーから介助サービスを買うこともできるし、自分で私的に介助者を雇うこともできる。受給者の約70%が地方自治体のサービスを使っており、10%は民間企業からサービスを購入している。さらに15%
は協同組合に加わることで介助を自分たちで組織化しており、また5%は自分たちで会社を作って、会社が介助者を雇う形をとっている。
 受給者の中で協同組合に入る人の割合は直実に増え続けている一方、地方自治体からサービスを買う人は減り続けている。その理由は、地方自治体は社会保険基金の定めたレート通りに代金を請求するので、受給者には付き添いの介助者に関する経費を払うだけのお金が残らないという事実にあると私は確信している。もう一つの理由は、地方自治体からサービスを買った利用者が、ホームヘルプ・サービスと個人介助サービスとの違いをほとんど感じられないらではないかー名前が違うだけで!
 自治体のサービスを買っても、数名のワーカーから選べるだけで、スケジュールについては利用者は何も言えないことが多いのである。
 直接給付の受給者は毎月、先月に受けた介助の時間数の説明をしなければならない。 サービス・プロバイダーからサービスを買った人は払った金額の証拠としてプロバイダーの請求書を提出する。自分で介助者を雇う人は支払った額の詳細な説明書を社会保険基金に提出しなければならない。
 社会保険基金からの給付金を使い切っていない利用者でも、ただちに未使用額の返還を求められるわけではない。6ヶ月たっても未消化の時間は基金に返還される。我々の介助の消費パターンは、どういう活動をするかで年間を通じて変わってくると、政府を説得したのである。毎月の給付金を節約して残すくらいでないと、たとえば旅行の可能性が制限されてしまう。私の場合、旅行をする時は介助者に1日18時間分の介助料を支払うが、社会保険基金からは1日15時間分の介助料しか受け取っていない。つまり旅行前か後に介助時間数の節約をしないと、旅行はできないのだ。
 直接給付は多くの介助利用者の生活を革命的に変えた。大学で研究をしたり、就職したり、結婚して自分の家庭をスタートさせた人もいるーすべては、直接給付によって毎日の生活を自分でコントロールできるからなのだ。改革が成功するカギは、個々の介助予算の管理である。私の介助予算を管理するのは、誰でもない、私である。私は介助時間をどのように割り振り、どれくらい介助料を支払えるかを決断する。使い過ぎたら、次の月は十分な介助が得られないから、活動を制限しなければならなくなる。間違いを犯せば、困るのは私自身だ。その一方、直接給付のシステムは自分が受ける介助や自分の生活を全く新しいやり方で組織化することを可能にする。直接給付は自由を与えてくれるが、リスクもはらんでいる。この責任は介助の利用者の側にある種の能力を要求する。すべての介助利用者がこの責任を負うことができるのだろうか、そしてどんな支援システムがあるのだろうか。

6.STIL(協同組合方式)による解決
 誰か他の人に介助者の募集や訓練、スケジュールの作成、介助者の監督などの責任を代わってほしければ、介助利用者は地方自治体や民間企業からサービスを買うことができる。しかし、直接給付の可能性を十分に活かして、自分特有のライフスタイルや関心、希望に合わせた介助にしたい人は、自分で介助者を雇うか、組合に加入することを望むだろう。どちらの場合でも、介助利用者は介助者を探し、訓練し、監督する責任は負うが、違いは
前者では利用者自身が介助者の雇用主であり監督者でもあるのに対し、協同組合に加入した者は雇用主としての機能を組合に委譲し、監督だけはすることだ。雇用主がスウェーデンでは多くの法的責任を負い、金銭面のリスクに直面しかねないことを考えると、自立生活介助利用者共同組合というの解決策は、ペーパーワークや法的・金銭的リスクを背負わずに力を手に入れられるやり方だと言える。
 80年代の半ば、現在のSTILに発展するパイロット・プロジェクトを設計した当時、私は他にもあるいくつかの解決法の、どれを選んでもよかった。すなわち、個人が雇用主になるが中央からのサポートやカウンセリングが提供される形態、あるいは小人数がオーナーの株式会社を作るとか、数人で運営する非営利の基金を作るなど。私が組合方式を選んだのは、以下の理由による。
a)スウェーデンには、食料品や消費財、保険、建築などの産業で、大規模で政治的影響力もある協同組合の、長く強力な伝統がある。これらの企業は緊密に連携し、協同組合をスタートさせる人々に対して訓練や支援を提供している。
b)伝統的に協同組合は集団的所有と政策決定に組合員の訓練や力づけが伴った、民主的形態である。1人−1票−1株なのだ。このように協同組合はある共通の大義を中心に人々を組織し、エネルギーを集中させるが、同時に個別の金儲けはさせない。これは、税金を資金源とするお金を使う場合に重要な観点である。事実、我々が株式会社になる道を選んでいたら、プロジェクトをうまくスタートさせることはできなかったと私は確信する。
 敵からは不法に利益を得ていると疑われたことだろう。ここで明確にしておくが、協同組合は事業を行う形態であり、組合員がどこに、そのように住んでいるかとは全く関係ない。だから現在の組合員は一般の人と同様に生活している。小さなアパートや大きな家に一人きりで、あるいは家族や友人と一緒に、ストックホルムや、我が国の最北端でも暮らしている。
 毎年春、STILは年次総会を開く。組合の会計報告が読み上げられ、承認を受け、役員会が選出され、会費が決められ、様々な方針が決定する。免税措置を受けており、また財政規模も大きいので、法律によって公認会計士による帳簿監査が義務づけられている。
しかし、監査を行う一番の理由は、組合員との契約で、組合員が消費した介助時間数の証拠を社会保険基金に提出しなければならない義務があるからだ。
 STILは国立社会保険基金とは全く契約しておらず、組合員とだけ契約している。こうすることで、STILは組合員の利害に集中することができる。STILが事務所を維持し、社会保険基金から介助者の報酬への流れを管理し、介助者訓練やピア・サポートなどのサービスを提供するための主な収入は、1時間の介助につきいくらの事務手数料で、現在は10スウェーデン・クローネとなっている。この手数料は組合員が社会保険基金から受け取る毎月の直接給付から支払う。手数料の額はSTILの年次総会で決められる。 STILは地方自治体からも、政府からも資金助成は受けていない。イベントの経費やデモ、あるいはプロジェクトには自前の資金を使う。こうすることで我々は独立し、かつ自由に社会改革や我々の人権を訴え、手紙やメディアやデモによって政府を批判することもできる。誰もが知っていることだが、自分に餌をくれる人の手に噛み付くのは難しいのである。

7.STILの事務管理機能
 STILでは、組合が組合員の個別の介助ニーズを評価する力を持つことまで望んだことはない。ニューヨーク市には、コンセプツ・オブ・インディペンダンスという、こうしたことを行う組織がある。州から予算をもらい、看護職員を通じて会員に配分するが、その看護職員は、個々の会員がどれだけ介助時間を必要とするかを公式に決定する責務を引き受ける。STILでは、こうした方式をとったことはない。なぜなら、STILには会員の弁護者であり続けてほしいし、半政府的な機関にはなってほしくないからだ。組合員が社会保険基金のニーズ評価に満足しない場合、STILはアドボカシー・トレーニング(権利主張の訓練)やピア・サポート・プログラムを通じ、同様に必要ならば法律の専門家の支援も提供するなどして、組合員を援助する。
 組合員は、社会保険基金に対し、毎月の給付を直接、STIL内のサブ口座に送金するよう要請できる。こうすると、多額のお金を直接、扱わなくて済む。組合員は毎月、消費した介助時間数と、向こう6ヶ月間の未消化の時間数の詳細な明細をSTILから受け取り、これを利用して介助時間の予定を組むのである。また、組合員は自分のサブ口座をチェックし、介助者が付き添う場合の飛行機代や食事代あるいは新しく介助者を募集する際の新聞に出す広告の代金など、介助者管理の経費にどれだけお金が使えるかを見ることができる。

 組合員が使う介助者の雇用主としての機能について、STILは法律でいくつもの義務を課せられている:
・毎月、介助者の税金を源泉徴収し、納税する。
・年末に、介助料と税金の額を報告する。
・プロバイダーと介助者組合との、介助料その他手当についての既存の契約を順守する
・介助者の肉体的・精神的労働条件を規制する多数の法律を順守する。
すべての組合員がこうした法律を守ることを前提としているのでーさもないと組合には重い罰金が課せられることもあるーSTILは、組合員に法律の改正や関連の事柄について最新情報を伝える講座を定期的に開いている。
 組合員は介助者について責任を持つ。各組合員が自分の介助者を募集しなければならない。STILには、組合員で共有できるような介助者のプールはない。それは我々の哲学に反するからである。我々は経験から、介助者を共有すると利用者の選択の自由が狭まり、重大な妥協を強いられてしまうことを知っている。実際には、施設での暮らしや両親の介助に慣れている人々にとっては、介助者の共有は大きな進歩かもしれない。しかし介助利用の経験が長く、生活の中で平等の機会を達成する道具として個人介助を最大限に活用したい人は、他人と介助者を共有するのは避けるものなのだ。
介助者を見つけたり、雇い続けることについてSTILが提供する唯一の援助は、介助者募集のプロセスでの、広告から契約を結ぶことまでの訓練やピア・サポートである。その上に、STILの事務所で応募者が自分の職歴や、仕事の希望について質問に答えた、
データベースが我々の手元にある。データベースは組合員なら見ることができ、就職希望者の最初のふるい分けに使える。ほとんどの組合員は新聞広告で介助者を見つけているが、その広告代は介助者管理費から支払っている。

8.STIL仕組みにおける当事者代表制
 組合の定款により、個人介助のニーズを持たない者は組合員になることも、STILの理事に立候補することもできない。このやり方で我々は、スウェーデンの多くの障害者団体で非障害者が多数を占めたり、理事になり、あるいは理事長に立候補できるために起きる問題を回避している。こうした団体では、政策決定に関わりたいいい意味での非障害者に障害者の考えを説明し、弁護しなければならないので、効率的な仕事が困難になる場合が多い。STILでは、当事者代表制は決定的な民主的原理であり、これによって信頼性や凝集力、力が与えられるのである。
 全く同じ理由で、我々はSTILの職員には障害者を雇うようにあらゆる努力をしている。だから我々の事務所の職員は大多数が障害者であり、多くは職場でも介助者を使っている。我々は長年にわたり、何十人もの障害者を訓練し雇用してきたが、その多くが貴重な仕事の体験を得て、STIL以外でも仕事ができるようになった。

9.サービス(情報提供)
 STILは多数のサービスを提供している。たとえば障害者やその親戚、政府の機関、他の障害者団体、そして広く一般にも、自立生活や個人介助について、また利用者組合方式についても情報を提供している。こうした問題を扱うSTILETTENという雑誌を発行したり、インターネットのホームページも持っている。また個人介助やピア・サポート、障害者の権利、反差別法などを主題に、国内外でイベントや会議、ワークショップを開催もしている。海外でもセミナーを開いてきたが、その一つがヒューマンケア協会との共済だった。またENIL(ヨーロッパ自立生活ネットワーク)や自立生活スウェーデン(スウェーデン自立生活連合)に加盟していること、またEUが支援する障害者プログラムを通じて、我々は他の国で同じ領域で活動している団体と常時、接触している。

10.訓練及びピア・サポート
 STILは定期的に講座を開いているが、中でも将来の組合員を対象の講座がある。これは夕方行われる連続講座で、介助利用者なら誰でも受講できる。この講座の受講が組合員になる条件の一つになっている。STILは雇用主としての典型的な機能の多くを個々の組合員に任せているので、組合員にその責任を果たす用意ができていることさえ確認すればいい。用意ができていないと、他の組合員が困るし、STILの評判も、実のところ障害者は有能で責任能力もあるというイメージそのものが破壊されかねない。
講座では、講義やケース・スタディ、ロールプレイイングを通じて、自分の介助ニーズをどう評価するか、また社会保険事務所でケースワーカー相手に行う介助ニーズについての交渉にどう臨むかを組合員に教える。個人介助を利用して自分の人生の目標をどう達成するか、また毎日の生活を自分で管理する道具として個人介助がいかに有効かを教える。
 講座で一番力を入れる部分は介助者の監督で、新聞に出す広告の文面の作り方から始まって面接の仕方、契約の仕方やスケジュールの組み方、介助者に最高の仕事をさせるための教え方、動機づけや訓練方法まで及ぶ。重要なのは介助利用者が自由に使えなければならない法律や規則である。スウェーデン全土に組合員がいるので、マニュアルを作り、ストックホルムに来られない人にもインターネットを通じて講座を提供している。
 ピア・サポートは、組合員・非組合員に関わらず、障害者に対してグループ・セッションの形で一年中、行っている。また個人セッションは事務所が開いている時間なら、受けられる。ピア・サポートのスタッフは個人介助の利用者の経験が長く、しかも何らかの訓練を受けた人である。さらにテーマ別に常設グループを組んでいて、たとえば女性、若年者、障害を持つ親、介助活動をしている親戚、現に仕事中の介助者、あるいは旅行についてのグループがある。
 我々の障害者優先、及び理想的には個人介助利用者優先の方針は、ピア・サポートの観点から見ることも必要である。組合員も他のビジターも、障害や個人介助を直接体験した人々からこそ、最良のサービスを受けられる。障害を持つ組合員やビジターは我々のスタッフと自分を同一に感じることができ、彼らをロール・モデルとして受け入れられるに違いないのである。

11.代理監督者方式
 増え続ける組合員の中には、個人介助を管理するための判断力や能力に影響する障害を持つ人がいる。我々のところにも、法的代理人として親が介助者管理の機能のほとんどを引き受ける、未成年の組合員が数十名いる。また大人でも、脳の損傷などの原因で認識力に欠陥があり、協同組合の会員としての義務や介助者管理の機能の一部、あるいは全部を果たすのが困難な組合員もいる。こうした人々が直接給付によって可能な自由を享受できるように、我々は数年間、「代理監督者」と呼ぶ方式の実験を行ってきた。代理監督者は、介助利用者自身あるいは、その信託を受けた者が任命する、利用者の親戚、友人または介助者がなる。この代理人は、組合員の残った認識機能をサポートし、補うことができる。言うまでもなく、この仕事には代理人の方に多大な洞察力、誠実さ、感覚の鋭さが求められる。良い代理人はなかなか見つからない。その結果、認識・情緒障害を持ち、我々は組合員として迎えたい多くの人を援助できないでいる。

12.STILの副産物
 STILはスウェーデンで自立生活の概念を実現したいという、我々の最初の試みだった。STILがパイロット・プロジェクトを開始してまもなく、我々は国中を旅行し、また個人やグループを招いて勉強してもらった。その結果、スウェーデンの6つの都市で障害者グループが関心を示し、STILが実践面や資金面で援助したこともあって、同様の事業の準備を始めた。我々は、定款や契約、内部規定、管理基準などの文書を自由に提供した。こうして1993年には、STILをモデルにした先駆的事業がいくつか誕生した。STILモデルが他の地域にも移転可能なことが、政府が個人介助法を提案する上で大きな力となった要素の一つだった。
 個人介助法が1994年に施行されて以後、我々のシステムを学び、講座を受講した上で一部の人が個人的に、新法に基づき直接給付を受ける人々に対して個人介助を提供するビジネスを始めた。だが、これまでに大金持ちになった者はごく僅かしかいない。
現在、我が国には小規模な組合が多数ある。実数はつかんでいないが、数十あるに違いない。そのほとんどが、自立生活運動の一員と公言しないまま、STILモデルに似た方式を採用している。スウェーデン自立生活運動に公式に所属するのは現在、6団体である。全部合わせると組合員は約800名で、我が国で直接給付の対象となっている介助時間総数のほぼ10%に相当する。
 1998年以降、「自立生活スウェーデン」という、国に助成を受けた組織で、直接給付に関するパイロット・プロジェクトや公開討論を通じて自立生活の哲学を浸透させる仕事を行っている。我々が特に主張したいのは、障害を理由とした差別を禁止するような、憲法修正を含む反差別法の制定である。もう一つ、STILの外部組織として自立生活研究所がある。1993年に、自立生活、特に直接給付の領域での情報収集、訓練、技術支援の目的で作られた。その活動には、直接給付及び個人介助のパイロット・プロジェクトの開始や、1997年にスロバキア共和国で始めたタクシーのメインストリーム化サービスがある。このタクシーは一般の人だけでなく車椅子所有者も乗れるのである。スロバキアでの仕事はEUの助成を受けている。また、我々の影響ですでに同国では個人介助のための直接給付とモビリティを提供する法律が成立している。
 我々の最近のプロジェクトには、EUの資金援助を受けたホームページの開設があり、そこには自立生活や個人介助についての完全な文献の図書館が開かれている。
 STILは個人介助の利用者によって設計され、設立され、今でも他の障害者と一緒に運営されている。1984年にはビジョンに過ぎなかったものが、今では職員1400名、年間予算が2000億米ドルを超える、安定し成功したビジネスに成長した。
 STILの最も有益な成果の一つは、介助利用者は無力で依存的な対象という一般に共通の偏見に挑戦したことだと私は確信する。我々は、個人介助利用者が正しい条件さえ整えば有能で、他の人と同様に事業も行えることを示したのである。

13.直接給付の将来
 自立生活運動の持続的成長とその哲学が社会政策に与える影響の拡大につれ、特に自己決定と選択の自由を要求する点において、次の世紀に直接給付は障害者に対するサービス提供の、より一般的方法になるだろうと私は確信する。この講演で私が触れた直接給付擁護論は容易に実証できる。次の世代の障害者は、現在我々が受け入れている状況には満足しないだろう。基本的人権の概念は、住宅や移動、教育、文化、社会・経済活動など、すべてのインフラにおける、すべてのマイノリティのためのユニバーサルな設計、すべてのマイノリティの完全参加を意味するものと解釈されるようになる。介助機器や個人介助など、それでもなお個別のサポート・サービスを必要とし、また自立と自己決定の生活を望む我々のような者にとって、直接給付は魅力的な選択肢だろう。また、経費が安く済むから、政府にとっても魅力的なはずだ。誰が支払うかについての我々の闘いは終わるだろう。明らかに我々にとって、資金源はできるだけ中央の方がベストである。資金が中央政府から来れば、それぞれの国の中で自由に動き回れるし、地域による支払額や受給資格の違いもなくなる。だが、ここ2、3年我々が目にする、中央政府に代わって地方自治体が責任領域を増やす傾向が続くのを、私は懸念している。ある種の世界政府が基準を満たした世界中の障害者全員に直接給付を与えるという私の夢は、次の世紀になってもSFのままというのが確実なようだ。

14.結論
 過去10年間、私は多くの時間とエネルギーをSTILに注いできた。そうするだけの価値はあった。STILは多くの点で私の生活を改善した。たとえば、昔ながらの自治体によるホームヘルプ制度は信頼度が低く、融通も効かないので、結婚しようという気になれなかった。結婚したら妻に頼りきりになっただろうから。妻も私も、そうした相互依存には我慢きなかったし、その状況では子供を持つことなど考えられなかっただろう。
 妻は、私を手伝わなければならない上に、子供の世話も、家事も全部しなければならない。私は子供の世話や家事など日常的な用事で何も貢献できないことを重荷に感じただろう。子供と父親はいつも母親の手を借りている、私を介助しなくちゃならないために他の家族なら当たり前のこともできなかった、という印象を持ったまま成長するだろう。
 現在、妻はプロとしてのキャリアを持ち、私も持っている。我々は家事を分担している。私は自分の分を介助者に手伝ってもらってやっている。妻が仕事で旅行しなければならない時にも、自分がいなくて夫は大丈夫か、などと心配せずに済む。
 私がいないと妻は家事ができないなどと思わずに私が旅行するのと、全く同じだ。
今、5歳になる娘がいる。介助者が私の身辺介助をしてくれ、また家事の分担も引き受けてくれるので、私は他の父親と同様に、できるだけ多くの時間を娘と過ごすことができる。娘とは一緒に遊んだり、森に散歩に行ったり、買い物や博物館見物にも行く。もちろん娘は、私に障害があって、遊び仲間のお父さんとは違うことに気づいている。だが私が多くの実用的介助を必要とするにも関わらず、娘が私を尊敬し、愛して成長してくれる可能性は高いと感じている。それが私にとって、STILとスウェーデン個人介助法のために働いたことの一番美しい報酬なのである。


○カナダのセルフマネジドケア、ダイレクトファウンディングプログラムについて

(「セルフマネジドケア・ハンドブック」ヒューマンケア協会,2000年より抜粋)

第2章 カナダにおける自己管理型直接給付介助サービス

第1節 問題の所在と背景
 トロント自立生活センターはカナダのオンタリオにあります。(OHP資料1)オンタリオには他に9つの自立生活資源センターがあり、すべてのセンターが自己管理プログラムの運営と支援に携わっています。
 このプログラムはカナダにしかない独特なもので、私の知る限り、世界でも同様の介助プログラムは僅かしかありません。いつの日か、多くの国で実施して欲しいと願っております。というのも、このプログラムによってオンタリオの障害者を持つ人々の生活は、それ以前よりはるかに向上したからです。
 障害者で介助者を使っている人のニーズは様々です。したがって、我々のサービスでは選択できることが必要です。オンタリオには2種類の介助サービス・プログラムがありますが、ここではその詳細は紹介しません。すぐれたプログラムではありますが、どちらも、利用者によってコントロールされていないという限界を持っております。我々の自己管理型プログラムが独特な理由は多くありますが、それをこれから説明します。
 簡単に言うと、自己管理型プログラムは障害を持つ人が介助者のボスになることを可能にします。すなわち、お金が、ある機関を通じて介助者に行くのではなく、トロント自立生活センターがお金を直接、私やあなたに与えるわけです。私やあなたは介助者を雇い、訓練し、報酬を払います。すべての手配に私とあなたが責任を持つのです。介助者のために税金の支払いまでするのです。一言で言うなら、障害を持つ人が雇用主で、介助者は雇われ人なのです。
 2言、3言で言ってしまうと非常に簡単ですが、このプログラムを始めるには長い年月がかかりました。政府の役人に興味を持ってもらうのが大変でした。最初は誰もがコンセプトを理解してくれたわけではないからです。障害を持つ人々が責任を果たすことができる、ということを彼らは信じませんでした。二種類の責任があります。我々は、お金を個人に直接渡し、同時に、お金とプログラムの両方を自立生活センターを通じて管理したいと考えました。
 行政は、お金を障害者に直接渡すことを心配しました。最初の頃、「障害者がお金をビールに使っちゃったら、どうなります」などと聞かれたものです。我々は、彼らは自分で食べることも、ベッドに行くこともできないから、責任を学ぶのはいいことだと答えました。このプログラムが安全に設計されていることに、我々は自信がありました。
 障害を持たないカナダ人の多くは、昔ながらの考え方に慣れていますから、我々がどんなにこのプログラムを必要としているか、なかなか理解できませんでした。
 また、多くのカナダ人は、私のような障害者は子供のように世話をすべきなのだと信じてもいました。未だに、我々は何もできないとか、病気なのだと思い込んでいる人も多いのです。

第2章は、カナダ・トロント自立生活センター所長のヴィク・ウィリー(Victor R. Willi)氏の1999年日本講演会内容の概要である。

 今日、私の話を聞いてくださっている中で私と同じ障害者の方なら、これがいかに不当な見方かご存じでしょう。いつか必ず人は大人になる。そうして傷つきます。突然、子供扱いされるのですから。我々のような境遇にあっても、進んだ科学技術を利用し、人権についても学べるのに、どうしてこんなことに我慢できるでしょうか。
 幸運にも、行政の中に我々の主張を理解して、我々を信用してくれる人を何人か見つけました。彼らは我々がプログラムを設計し、行政の中でそれを浸透させる手伝いをしてくれました。オンタリオ州保健担当相には、介助者を使っている伯母さんがいたのです。
彼は我々の主張に同情的でしたし、他にも同じような職員を見つけることができました。
 このプログラムを支える哲学や原理について、背景となる情報をいくつかお伝えしましょう。それから、プログラムのメカニズムをお話しします。その設計や運営法、これまでの成果、それに現状の懸念などを。それから、問題が起きた部分と、その処理についてもお話しします。我々の経験から学び取ってください。
 自立生活の原理は1960年代に、カリフォルニア大学の数人の障害者の学生によって打ち立てられました。初めての、医学でも慈善でもない障害の捉え方でした。
この学生たちは、障害を持つ人々が病気でも、治療が必要なのでもなく、また何もできないわけではないという考えを導入しました。我々は「障害者」という少数派ではあるが、それは、我々が生きて行くために依存せざるを得ないサービスについて、たとえば選択権、融通性、管理権を社会が認めないからなのです。(資料2)我々は、すべての人のニーズが違うからこそ、プログラムを選択する必要があると確信しています。人生は予測不能だから、我々には融通性が必要だし、毎日の生活がこうしたサービスに依存しているから、管理権が必要なのです。自立生活の哲学は北米で1970年代、80年代の初期に急速に浸透しました。

第2節 セルフマネジドケアのメカニズム
 カナダには現在、23の自立生活資源センターがあります。これらのセンターは、障害を持つ人々が運営し、スタッフの大半を占めていますが、我々の手に責任と生活の所有権を取り戻すよう勇気づけてくれます。日本の自立生活センターと非常によく似ています。
ここからは、障害を持つ人を「消費者」と呼ぶことにします。これには、自立生活の原理と直接つながる、重要な理由があります。
 多くの人は「消費者」という言葉を国民経済の中で商品やサービスに対する需要を表す人々という意味で理解しています。障害を持つ人を消費者と呼ぶのも、この理由からです。この用語は、障害を持つ人が障害に関連したサービスを消費することを認識しています。
したがって我々は、市場の重要なプレイヤーなのです。また我々はサービスに依存しているからこそ、そのサービスを管理する必要もあるのです。
 自己管理型プログラムの背景を説明したところで、時間も限られていますので、プログラムのメカニズムの説明に移りたいと思います。このプログラムを成功させた特徴についてお話しします。
 基本的なメカニズムは5つあります。(資料3)直接給付と自己管理が、まず2つです。直接給付とは、行政が我々の機関にお金を渡し、我々がその資金を直接、プログラム参加者・消費者に渡し、それによって消費者は自分で介助サービスを雇うことができるのです。プログラムに参加した消費者は、その属する行政に、雇用主として登録されなければなりません。消費者は、介助者を募集し、訓練し、仕事のスケジュールを組み、給料を払い、帳簿係を雇い、所得税その他の諸費用を払い、会計記録を保管し、個人介助者の仕事に関するすべての決断を下すことで自己管理を行います。言い換えれば、消費者は自身が受けるサービスを自己管理するのです。カナダでは労働者は非常に厳しい労働基準法で守られています。プログラムでは、介助者は労働者であって、召使ではないことを参加者に明確にします。人格を無視した扱いをされた介助者は辞職することができます。また雇用主の側にも、守らなければならない規定が数多くあり、たとえば介助者を勝手に辞めさせると罰金をとられることもあります。
 第3、4、5のメカニズムはこのプログラム特有のものです。自己評価、当事者選抜、それに消費者主権です。
 自己評価は、障害者こそが自身のニーズを、そしてニーズにどう対応すべきかをー専門家やソーシャル・ワーカーよりもーよく知っているという自立生活の基本原理に基づいています。そこで、このプログラムに応募する者は、自身のニーズを自分で評価し、申請書類に自身で記入し、署名します。
 申請書類は本来7ページありますが、そのうち2ページを紹介します。最初のページでは応募者に、一ヶ月間の介助サービスの必要時間を自己査定するよう求めます。(資料4)それができなければ、おそらくプログラムには参加できません。参加者は自身のニーズを理解し、また一日のうち、どの時間に何が必要かもわかっていなければなりません。次のページには、一ヶ月当たりの必要経費の見積もりを出します。(資料5)参加者を選ぶ面接の際にも、この2ページの内容をめぐって多くの議論や交渉が行われます。
 4番目のユニークなメカニズムは当事者選抜です。申請の書類を送ると、当事者で構成する選抜会議に出席を求められます。これは非常に重要です。すでに介助サービスを使っていて、理解もしている人達を納得させなければならないからですーあなたと同じ、障害の専門家なのです。このピア・モデル(当事者主体方式)こそ、自立生活運動を初めとする自助運動の特徴です。
 面接の間、応募者は自分自身について弁護します。申請書類の内容を説明し、会議側から多くの質問がなされます。自分に自己管理能力があること、自分の求めるサービスや必要経費が正当なものであることを、会議のメンバーを納得させなければなりません。その後、選抜会議はあなたをプログラムの参加者に推薦するかどうか決断を下します。
 最後の重要なメカニズムは消費者主権です。これは、プログラムの設計や日常的な管理が、障害者の運営する組織による、という意味です。同様に、すべての介助サービスを手配し、管理するのは、利用する消費者です。これが消費者主権です。
我々は、我々のような人間を正しく理解するには、障害を持ち、介助サービスを使う実生活を体験していなければならないと確信します。また障害を持った長年の経験によって、自己管理に必要な技能など、多くの技能を教われたと思っています。こうした技能を我々のモデルでは評価するのです。
 専門家が支配する、施設重視のサービス・モデルは障害の否定的側面ばかりに焦点を合わせる傾向があり、能力は無視されがちなことに、我々は気づいています。こうしたモデルを我々は「監視型」と呼んでいます。規則や決まり事がとても多いものです。
 我々のプログラムのやり方は、介助者について、したがって我々の生活についても、選択、融通性、そして主権を与えてくれることにも気づきました。それは自分自身に自由に責任を持ち、コミュニティのために働き、貢献できる、真の経済主体に、我々を変身させてくれます。
 我々のプログラムでは、伝統的な監視型システムでは得られないような、いくつもの利点を消費者は享受しています。例をあげますと、
・セルフマネジャーなら、どこからでも介助者を雇えますー家族はだめですが。地域の広告媒体や、雇用センターを利用することもできます。実際、住んでいるアパートや、新聞、掲示板、大学、自立生活資源センターの介助者名簿、あるいは友人を通じて介助者を募集しています。セルフマネジャーの要望に合った介助者が見つかる可能性は非常に高いのです。
・自己管理型介助サービスは「使い勝手」がいい。給付金が地域や地区限定ではなく、消費者本人に渡されるので、他の一般人と同様、州内のどこにでも旅行したり、生活や仕事をすることができます。
・セルフマネジャーは雇用主ですから、どこかの機関が立てたスケジュールではなく、自身の立てたスケジュールによって生活します。毎日、誰が自分の家に来るかわかっています。サービスも融通性に富んでいます。約束の変更も可能だし、仕事のスケジュールに合わせることも、また急に誰かに会いに行くこともできます。新しい可能性が生まれます。自発性です。
・セルフマネジャーは、介助者の仕事を自分で指定できます。たとえば介助者がいる時にたまたま電球が切れた場合に、電球を新しい物に代える介助者を雇うことができます。ある消費者から聞いた話ですが、直接給付以前、公的機関からの介助者は、自分の仕事に指定されていないからという理由で電球を代えるのを断ったことがあるそうです。
・介助者を直接、相手にすることで、事務管理の効率が増します。(資料6)公的機関が介在するシステムでは、経費の嵩む官僚主義に陥ります。我々のプログラムでは管理が1段階少なくなります。自己管理型プログラムには二人しか要りません。消費者と介助者だけでスケジュールの調整ができます。この結果、諸費用が非常に少なくて済み、行政にとっては大きな経費節減になります。見てわかりのように、我々のプログラムはオンタリオ州で行われている他の二つの介助サービス・プログラムと比べて、それぞれ30%と50%、経費が安いのです。
・スケジュールの調整が容易なおかげで、消費者は健康状態が改善したと報告されています。消費者は、病院にいる時間が短くなり、退院やリハビリテーション施設の利用中止が早まり、看護サービスの利用が減少しています。(これも社会的な経費節減になります)
・我々のプログラムによって、サービス提供者とケンカする無駄な時間が少なくなり、大事なこと、すなわち自己啓発、就職、生産的活動、レクリエーション、家族としての務め、生活を楽しむこと、などに多くの時間を費やせるようになります。プログラムのおかげで生活が劇的に変化したのです。たとえば、参加者のある既婚者は、プログラムが融通性に富んでいるおかげで二人、子供をもうけることができました。現在35歳の彼女はフルタイムで働いていますが、生まれつき筋ジストロフィーです。彼女は直接給付が大好きです! 介助者も、セルフマネジャーと同様、プログラムに満足しています。(資料7
 1997年にトロントのローハー研究所が行った「プログラム公式評価」で、そのことが明らかになりました。ご覧になればわかりますが、介助者の86%が、セルフマネジャーのために働くことを勧めています。また社会政策の観点から重要なのは、このプログラムが介助者にとって融通の効く、フルタイムでもありパートタイムでもある、有償の職業を作り出したということです。セルフマネジャーの側から見ると、プログラムに非常に満足しているか、だいたい満足している人が100%に達しています。非常に満足が84%でした。
 プログラムは多くのセルフマネジャーたちに、かつては夢にも思わなかった機会と展望を提供したことは明らかです。(資料8)(参加者の中には、プログラムに参加するまでは、休暇というものを取ったことがなかったという人もいた)我々は遂に、長い間持ち続けていた自立生活の理論が実現するのを目の当たりにし、かつ、ずっと予想してきたラツカの効果を享受しているのです。 しかし、プログラムが消費者を自由にするとは言え、一方で高度な説明責任と責任能力を彼らに要求することも、強調しておかねばなりません。自己管理型プログラムは誰でもできるというわけではないのです。それだからこそ、我々は、参加者の適性や選抜に関しては極めて慎重になります。適性のある消費者が数多くの責任を果たさなければなりません。自立生活の哲学は、我々がサービスの選択を必要としていること、そして我々のプログラムはオンタリオの消費者にとって第三の選択肢であることを教えています。
 セルフマネジャーも自立生活資源センターも、雇用主として、また行政の資金を託されている責任があり、説明の義務を負っています。障害者であれば、常に自分を証明しなければなりません。他人と同じでは十分ではないのです。障害を持つ人は、無力とか無価値というステレオタイプに反証しなければならないように思います。我々は、自己管理型プログラムの信用性について、また我々を助けてくれた多くの人々に対して、責任があると感じました。

第3節 介助料直接支給システムの実際
 自己管理型介助サービス・パイロット・プロジェクトは1994年から96年に行われました。プロジェクトの評価が行われ、先に示したデータも、この公式評価によるものです。パイロット・プロジェクトは、直接給付や自己管理などの比較的新しいメカニズムを使った実験というばかりでなく、自立生活の原理に基づいた、選択と自己管理、資金配布、運営のための新たなメカニズムのテストでもありました。我々はこのテストに、我々の信念を盛り込みました。
 オンタリオ州政府や障害者関係の機関の代表者との継続的協議が、このプログラムの重要な構成要素になっています。
 パイロット・プロジェクトやプログラムの設計には、多数の個人やグループ、団体が関わりましたが、たとえばCILのスタッフ、運営委員会(Steering Committee)の委員、行政の職員、オンタリオ自立生活資源センターの代表、それに介助サービスを使っている多くの人達も時間と専門知識を無償で提供してくれました。ガイドラインや施行の方法、手順、マニュアルの作成、宣伝・広報、パイロット・プロジェクトの参加者の選抜や面接、パイロット・プロジェクトの評価作業などに、数年が費やされました。
 このプログラムを推進する上で直面したいくつかの重要な問題と、それをどう処理したかについて、短く触れることにしましょう。

(1)月に180時間のサービスの上限
 それ以前にあった介助サービスの1日当たりの時間数を3時間増やしたものです。例外的な事情について、たとえば呼吸器を使っている人などの場合、さらに時間を増やすよう要請しました。ですが行政の返事はノーで、やむなく受け入れました。

(2)家族を雇ってはならない
 場合によっては、たとえば過疎地に住んでいる利用者には、家族を介助者として雇ってもいいのではないかと勧告しましたが、行政は認めようとしませんでした。

(3)オンタリオの医師会は特別立法を要請
 これが成立すれば、介助者がカテーテルや吸引機などの操作を定期的に行うと法律違反になるところでした。我々はオンタリオ州医師会と話し合って介助サービスについて説明し、医師会は規定を変えました。

(4)政権交代
 開発や試行の段階で政権が3度も代わったのです。パイロット・プロジェクトを推進した政権が次の選挙で負けたこともあります。我々は自己管理や直接給付について政権が代わるごとに説得に行かなければなりませんでした。

(5)労働組合が我々のプロジェクトに疑心暗鬼になり、介助者から搾取する恐れがあると非難してきました。
 我々はむしろ弱い立場の雇用主であって、組合と協力して戦い、議論もしていかなければならないと答えました。この新しい概念には組合はなかなかなじめませんでした。我々は、在宅の孤独なセルフマネジャーを強力な労働組合が敵視していることを、不快に感じています。

(6)オンタリオ保険委員会は介助者を医療従事者と定義して保険金を払わなくてもいいようにしようとしました。
 今度は行政が、それを認めませんでした。わかりのように、時には困難な時期もありましたが、しかし闘う価値はあります。オンタリオ州自立生活センター(ONILC)とカナダ自立生活センター協会(CAILC)のネットワークが我々に力と信用を与えてくれました。行政の職員も大いに力を貸してくれました。我々は自立生活の哲学に確信を持っており、その正しさが証明されたのです。我々の確信はすぐれたプログラムで報われました。講演を終わる前に、今でもある、いくつかの懸念にちょっと触れておきたいと思います。このプログラムがすべての消費者にとって幸福への一本道だなどと考えられないように、次の警告を熟読含味するのが賢明でしょう。
 時々、消費者の適性が十分ありそうな人がパイロット・プロジェクトへの応募を断ることがあります。その際の言い分は、理由は様々ですが監視型の介助サービスの方がいい、あるいはそっちの方が必要だというものです。私もその一人ですが、理由は、現在使っている介助サービスのあるアパートから引っ越す用意ができていないからです。また介助者と揉め事があると思われたくないことも大事な理由です。ですがこのプログラムは信用できますので、数ヶ月以内には申し込みます。
 逆に、面接には熱心に参加しながら、結局は適性の基準に達していないことを思い知るだけの応募者もいます。実用面に限って言えば、我々はこのプログラムを重要な、もう一つの選択肢であると考えていて、誰にとってもベストなシステムとは見ていないのです。
 自己決定や自己管理が困難な障害者の場合、多くはこの種のプログラムは必ずしも役に立たないということに、我々は気づいています。障害を持つすべての人が地域で生きる権利を持つと我々は信じます。自己管理型プログラムに適していない人達には、適切なサービス提供と資金援助のモデルが必要です。障害者のコミュニティは、このことを目指して活動すべきであり、管理や責任を分担するメカニズムを開発しなければなりません。
 自己管理型プログラムは、たとえば現状の統合性やメカニズム、経費の少なさを保ったまま、家族管理型システムにはなりえません。
 そのような修正は自己管理−自身が管理し、法的・金銭的責任を自分で取り、様々な機会を獲得し、説明の責任を自覚し、リスクを引き受け、過ちを犯し、生活の悪習を糺すことまで時にはするーの重要性を理解している、すべての人にとってあってはならないことであり、害をなすことでもあります。
 もう一つ考えなければならないのは、自立生活を営むには消費者が快適にかつ自由に使える住居がなければならないということです。住居がなければ、このプログラムは選択肢になりません。そこで我々は、障害を持つ人が地域で暮らせるような住宅をもっと多く建設する政策を行政に勧告しています。
 最後に、1999年にはプログラムが大幅に拡大し、将来についても楽観的な用意をしていることをお伝えしたい。これは、オンタリオ州政府が98年7月に、プログラムに予算がついたと通知してきたからです。700人程度の消費者がプログラムに参加することになります。これ以上は望み過ぎというものでしょう。


資料2

自立生活サービスの概念



選択


我々はみんな違っている。

我々はそれぞれ異なるサービス、選択肢、オプションを必要とする。



柔軟性


サービスは我々のスケジュールに合うものでなければならない。

物事は常に移り変わるのだから。



管理


お金の管理 → サービスの管理 → 生活の自主管理


資料3

5つの基本的なメカニズム


1. 直接給付  お金 →  消費者
(お金が直接、サービス利用者のもとに行く)

2. 自己管理:消費者  介助者
(消費者が自らのサービス・プロバイダーになる)

3. 自己評価:障害者は障害の専門家である。

4. 当事者選抜:我々は障害者を一番理解している当事者である。

5. 消費者主権:我々は自分の生活を自分で管理すべきである。


資料4

申請書類の見本


4.直接給付プログラムを通じて受ける一ヶ月当たりの介助時間
 あなたが介助を必要とする主な活動をあげ、介助者を雇わなければならない時間を月曜日から日曜日まで所定欄に時間数で記入してください(月曜から日曜)。1時間未満は少数で記入すること(例えば30分ではなく、0.5時間というように)

a) 午前の介助
月  火  水  木  金    土  日
月曜から日曜までを合計    一週間の午前の必要介助時間

(21)
b) 午後/夕方の介助(昼食、夕食含む)
月  火  水  木  金    土  日
   一週間の午後/夕方の必要介助時間

(22)
c) 夜の介助(就寝時も含む)
月  火  水  木  金    土  日
   一週間の夜の必要介助時間

(23)
 (21)、(22)及び(23)を合計    一週間の必要介助時間

(24)
 (24)に4・35を掛ける    一ヶ月の必要介助時間

(25)
d) 緊急時を含む、不定期介助(介助者の訓練、利用者の病気やレジャー。
4のa、b、cに含まれない時間数を月平均で
   不定期介助の一ヶ月の必要時間

(26)

(25)と(26)を合計    一ヶ月の総介助必要時間

(27)


資料5

申請書類の見本

5.一ヶ月の経費見積もり
a) 選択的経費:
選択的経費があれば、その見積もりを項目ごとに示すこと(月平均)

i) 宿泊介助、待機料、介助者交通費、すなわち介助者報酬のうち課税対象のもの
   計算
(28)
ii) 代理店購入のサービス、ボケベルその他、介助者に払わない料金
(29)
  計算
選択的経費の一ヶ月の総額:(28)と(29)を合計
(30)
b) 定期時間給:
一ヶ月の総介助時間:前ページの(27)より
(31)
1時間当たりの平均介助料
(32)
一ヶ月当たりの平均介助料:(31)に(32)を掛ける
(33)
c) 保険料等の雇用主負担分:
介助者が受け取る報酬の総額:(28)と(33)を合計
(34)
保険料等の雇用主負担分:(34)の15%
(35)
d) 諸雑費:
帳簿付けのサービスー月平均額:
(36)
広報、郵便料などー月平均額:
(37)
銀行手数料ー月平均額:
(38)
賠償責任保険料の雇用主負担分ー月平均額:
(39)
諸雑費:(36)、(37)、(38)及び(39)を合計
(40)
e) 予備費:(40)の5%


資料6

パイロット・プロジェクト、アウトリーチ、SSLUの時間当たり経費


パイロット・プロジェクト、アウトリーチ、SSLUの時間当たり経費の表


資料7

介助者の満足度

□セルフマネジャーのために働くことを 勧める(86%)
勧めない(14%)
融通が利く
利用者との関係が良好
官僚的でなく、セルフマネジャーと直接、交渉できる
提供したサービスは同じでも感謝される度合いが大きい
その他


セルフマネジャーの満足度

セルフマネジャーの満足度の図

  全セルフマネジャー (%)
常に満足 74 88
だいたい
 満足
10 12
 計 84 100


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