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薬食安発第0730004号
薬食監麻発第0730001号
薬食血発第0730001号
平成15年 7月30日
日本赤十字社社長 殿

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長

厚生労働省医薬食品局血液対策課長

遡及調査に伴う日本赤十字社から医療機関への情報提供等について

 輸血用血液製剤について、「供血者の供血歴の確認等の徹底について」(平成15年6月12日付け医薬血発第0612001号。以下「第0612001号通知」という。)により貴職あて通知したところであるが、本年7月16日に開催された平成15年度第2回薬事・食品衛生審議会血液事業部会における審議の結果等を踏まえ、血清学的検査又は核酸増幅検査(以下「病原微生物検査」という。)の陽性が判明した供血者について、供血歴が確認され、かつ直近の採血から採取された血液が輸血用血液製剤の原料として使用された場合、当該輸血用血液製剤(以下「対象製剤」という。)は通常の輸血用血液製剤と比較し感染リスクが高いと考えられることから、貴職におかれては、第0612001号通知にのっとり、下記の情報を医療機関に提供するとともに、対象製剤が未使用の場合には回収されたい。
 なお、医療機関より対象製剤を回収した場合は、薬事法(昭和35年法律第145号)第77条の4の3に基づく回収の報告を行われたい。また、医療機関から貴社の製造した輸血用血液製剤による感染症の発生(疑いも含む。)について報告を受けた場合は、同法第77条の4の2に基づく副作用等の報告を行うこととされているが、対象製剤について同報告を行う際は、過去に貴職から厚生労働大臣あてに提出した副作用等の報告に当該製剤が関連していないかを確認の上報告されたい。
 さらに、本日施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和31年法律第160号)第7条にのっとり、貴職におかれては、新鮮凍結血漿の貯留保管体制の確立、貴社が現在情報収集・評価を行っている輸血用血液製剤における病原体不活化技術の早期導入等について、至急検討を行い、一層の安全確保対策の充実を図られたい。

1 遡及調査に至った経緯に関する情報
 輸血用血液製剤の原料となる血液に対し実施した病原微生物検査により、第0612001号通知のII.に掲げる病原微生物のいずれかについて陽性と判明した供血者について供血歴を確認(以下「遡及調査」という。)した結果、医療機関に納入された輸血用血液製剤が、ウインドウ期に採取された可能性のある血液を原料としていることが判明したこと。

2 対象となる輸血用血液製剤に関する情報
 対象製剤に係る以下の情報。
(1) 名称
(2) 製造番号、医療機関への納入年月日、納入数量
(3) 対象製剤の原料となった血液の供血年月日及び当該血液にウイルス等が混入していること、又は、混入の可能性が判明した年月日
(4) 対象製剤の原料となった血液について貴社が実施した病原微生物検査の種類及び検査結果
(5) 対象製剤の原料となった血液を供血した後に供血していた場合は、当該血液についての病原微生物検査の検査結果
(6) 遡及調査に伴い追加的に病原微生物検査を実施した場合は、その検査結果

3 危惧される具体的な健康被害に関する情報
(1) 上記2の(3)〜(6)に掲げる結果に基づき、対象製剤について貴社がリスク評価(別紙1参照)を行った結果。
(2) 医療機関が貴社の実施したリスク評価の結果を確認できるよう、別紙2に規定する貴社における病原微生物検査に関連する技術的基礎情報。

4 貴社担当者に関する情報
 貴社において医療機関との連絡の窓口となる担当者の氏名、連絡先等


(別紙1)

遡及調査における感染リスクの評価について

 対象製剤について、以下の分類を参考にリスク評価を行うものとする。

ウイルス等混入血液由来
 遡及調査の結果、個別核酸増幅検査で不適となった血液から製造された輸血用血液製剤。
ウインドウ期血液由来
 遡及調査の結果、ウインドウ期間内に採血されたことがほぼ確実な血液から製造された輸血用血液製剤。
ウインドウ期の可能性がある血液由来
 遡及調査の対象となった血液から製造された輸血用血液製剤のうち、「ウイルス等混入血液由来」及び「ウインドウ期血液由来」以外のもの。


(別紙2)

供血血液について日本赤十字社が実施する病原微生物検査に関する
技術的基礎情報

1)病原微生物検査の内容に関する情報
 各病原微生物検査の内容(検査法の名称、原理等)に関する情報。

2)ウインドウ期に関する情報
 各病原微生物検査のウインドウ期の期間及び科学的根拠に関する情報。

3)病原微生物検査の精度に関する情報
 各病原微生物検査の精度に関する情報。なお、以下の情報を付記すること。
各病原微生物検査の感度、特異性に関する情報。
次に掲げる各病原微生物検査の検出限界に関する情報
 (ア) 検出限界
 (イ) 核酸増幅検査については、使用しているプローブの種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先、ジェノタイプへの対応等
 (ウ) 血清学的検査については、検査方法、使用している抗体の種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先等
次に掲げる各病原微生物検査の再現性に関する情報
 (ア) 標準品における再現試験結果等

4)留意点
 上記情報については、論文等による一般的な情報に基づく数値等ではなく、貴社で実施している病原微生物検査における数値等を示すこと。なお、貴社においてこのような数値等を有しない情報については論文等を示すことも差し支えない。また、科学的根拠に基づかない情報、客観的事実でない情報、誇大な表現については、厳に慎まれたい。


薬食安発第0730005号
薬食監麻発第0730002号
薬食血発第0730002号
平成15年 7月30日






(社)日本医師会会長
(社)日本歯科医師会会長
(社)日本薬剤師会会長
(社)日本看護協会会長
(社)日本病院会会長
(社)全日本病院協会会長
(社)全国自治体病院協議会会長






殿

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長

厚生労働省医薬食品局血液対策課長

遡及調査に伴う日本赤十字社から医療機関への情報提供等について

 日頃より、血液行政の推進に御尽力いただき御礼申し上げます。
 さて、輸血用血液製剤について、「供血者の供血歴の確認等の徹底について」(平成15年6月12日付け医薬血発第0612001号。以下「第0612001号通知」という。)により日本赤十字社社長あて通知したところですが、本年7月16日に開催された平成15年度第2回薬事・食品衛生審議会血液事業部会における審議の結果等を踏まえ、血清学的検査又は核酸増幅検査(以下「病原微生物検査」という。)の陽性が判明した供血者について、供血歴が確認され、かつ直近の採血から採取された血液が、輸血用血液製剤の原料として使用された場合、当該輸血用血液製剤(以下「対象製剤」という。)は、通常の輸血用血液製剤と比較し感染リスクが高いと考えられることから、日本赤十字社は、第0612001号通知にのっとり、医療機関に情報提供するとともに、対象製剤が未使用の場合には回収することとされました。
 つきましては、対象製剤に関する情報の提供を日本赤十字社より受けた場合の医療機関における対応手順、留意事項等を下記のとおり取りまとめましたので、貴職におかれても御了知の上、貴会会員への周知方よろしくお願いいたします。
 さらに、本日施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和31年法律第160号)第8条に医師等の医療関係者の責務として、血液製剤の適正使用に努めるとともに、血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供に努めなければならないことが規定されたことも踏まえ、特段の御配慮をお願いいたします。
 なお、本通知の内容については、保険局医療課とも協議済みであることを申し添えます。

第1 対応手順
 1 購入した対象製剤が未使用の場合
 対象製剤が未使用であることを日本赤十字社の担当者に連絡し、回収させること。
 2 購入した対象製剤が使用されていた場合
(1)輸血後検査を実施している場合
受血者が非陽転の場合
 対象製剤を投与された患者(以下「受血者」という。)に対し「血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針について」(平成11年6月10日付け医薬発第715号)の「輸血療法の実施に関する指針」(別紙1参照。以下「実施指針」という。)のVIII.の4.、5.及び6.に規定する輸血後の感染症マーカー検査(以下「輸血後検査」という。)の結果及び対象製剤が投与された事実を通知すること。
受血者が陽転の場合
 受血者に対し、検査結果及び対象製剤のリスク評価の結果を説明するとともに、必要に応じ適切な医療を提供すること。また、薬事法(昭和35年法律第145号)第77条の3に基づき日本赤十字社に情報の提供等を、又は同法第77条の4の2に基づき厚生労働大臣に副作用等の報告を行うこと(別紙2参照)。
(2) 輸血後検査を実施していない場合
 受血者に対し、対象製剤が投与された事実及び当該対象製剤のリスク評価の結果を説明するとともに、輸血後検査を速やかに実施し、その検査結果を説明すること。なお、検査後の対応は上記2(1)に準じて行うこと。

第2 受血者への対応に関する留意事項
 1  一般的に輸血用血液製剤は、現在の科学水準の下では技術的に排除できないウイルス等の混入による感染のリスクを有すること。
 2  受血者に対する輸血後検査については、実施指針に従い実施する
こと。なお、本検査の診療報酬の請求に当たっては、輸血を実施した日時を診療報酬明細書に記載するなど、実施の理由を明確にするよう留意すること。

第3 その他
 1  一般的に輸血用血液製剤は、現在の科学水準の下では技術的に排除できないウイルス等の混入による感染のリスクを有していることを認識し、実施指針の趣旨を踏まえ、より適正な使用を推進する必要があること。
 2  院内採血による輸血を行った場合にあっても、供血後に供血者が感染症に罹患していたことが判明した場合は、同様の安全対策を講じられたいこと。


(別紙1)

血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針について(抄)
(平成11年6月10日付け医薬発第715号医薬安全局長通知)

輸血療法の実施に関する指針
VIII.輸血に伴う副作用・合併症
 輸血副作用・合併症には免疫学的機序によるもの、感染性のもの、及びその他の機序によるものとがあり、さらにそれぞれ発症の時期により即時型(あるは急性型)と遅発型とに分けられる。輸血開始時及び輸血中ばかりでなく輸血終了後にも、これらの副作用・合併症の発生の有無について必要な検査を行う等、経過を観察することが望ましい。
 これらの副作用・合併症を認めた場合には、遅滞なく輸血部門あるいは輸血療法委員会に報告し、その原因を明らかにするように努め、類似の事態の再発を予防する対策を講じる。特に人為的過誤(患者の取り違い、転記ミス、検査ミス、検体採取ミスなど)による場合は,その発生原因及び講じられた予防対策を記録に残しておく。

1.〜3. (略)

4. 輸血後肝炎
 本症は、早ければ輸血後2〜3週間以内に発症するが、肝炎の臨床症状あるいは肝機能の異常所見を把握できなくても、肝炎ウイルスに感染している場合がある。特に供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる。このような感染の有無を見るためには、輸血後最低3カ月間、できれば6カ月間程度、定期的に肝機能検査と肝炎ウイルス関連マーカーの検査を行う必要がある。

5. ヒト免疫不全ウイルス感染
 後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では、感染後2〜8週で、一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状が現われることがあるが、多くは無症状に経過して、以後年余にわたり無症候性に経過する。特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。感染の有無を確認するためには、輸血後2〜3カ月以降に抗体検査等を行う必要がある。

6. その他
 輸血によるヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-I) などの感染の有無や免疫抗体産生の有無などについても、問診や必要に応じた検査により追跡することが望ましい。


(別紙2)

薬事法(昭和35年法律第145号)(抄)

(情報の提供等)
第七十七条の三
  医薬品若しくは医療用具の製造業者若しくは輸入販売業者、卸売一般販売業の許可を受けた者、医療用具の販売業者若しくは賃貸業者(薬局開設者、医療用具の製造業者、販売業者若しくは賃貸業者若しくは病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に対し、業として、医療用具を販売し若しくは授与するもの又は薬局開設者若しくは病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に対し、業として、医療用具を賃貸するものに限る。次項において「医療用具の卸売販売業者等」という。)、外国製造承認取得者又は国内管理人は、医薬品又は医療用具の有効性及び安全性に関する事項その他医薬品又は医療用具の適正な使用のために必要な情報(第六十三条の二第二号の規定による指定がされた医療用具の保守点検に関する情報を含む。次項において同じ。)を収集し、及び検討するとともに、薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者、医薬品の販売業者、医療用具の販売業者若しくは賃貸業者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者に対し、これを提供するよう努めなければならない。
 薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者、医薬品の販売業者、医療用具の販売業者若しくは賃貸業者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品若しくは医療用具の製造業者若しくは輸入販売業者、卸売一般販売業の許可を受けた者、医療用具の卸売販売業者等、外国製造承認取得者又は国内管理人が行う医薬品又は医療用具の適正な使用のために必要な情報の収集に協力するよう努めなければならない。
 薬局開設者、病院若しくは診療所の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師その他の医薬関係者は、医薬品及び医療用具の適正な使用を確保するため、相互の密接な連携の下に第一項の規定により提供される情報の活用(第六十三条の二第二号の規定による指定がされた医療用具の保守点検の適切な実施を含む。)その他必要な情報の収集、検討及び利用を行うことに努めなければならない。
 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医薬品を一般に購入し、又は使用する者に対し、医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供するよう努めなければならない。

(副作用等の報告)
第七十七条の四の二
 医薬品、医薬部外品、化粧品若しくは医療用具の製造業者若しくは輸入販売業者又は外国製造承認取得者若しくは国内管理人は、その製造し、若しくは輸入し、又は承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具について、当該品目の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生、当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生その他の医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の有効性及び安全性に関する事項で厚生労働省令で定めるものを知つたときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない。
 薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品又は医療用具について、当該品目の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生又は当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知つた場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない。


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