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資料2
血漿分画製剤におけるSARSウイルスの安全性評価について


○ 製造業者等における安全性評価の報告(会議後回収)

○ 製剤業者等における安全性評価の概要(別表1,2は会議後回収)

(参考1) WHOにおけるSARSと血液の安全性確保のための指針(5月15日)
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update57-bld.html)(仮訳)
http://www.who.int/csr/sars/guidelines/bloodsafety/en)(原文)
(参考2) 米国食品医薬品局FDA 業界向けガイダンス 重症急性呼吸症候群(SARS)あるいはSARSへの曝露が疑われる場合における供血者の適格性および血液製剤の安全性の評価に関する勧告(2003年4月)
http://www.bpro.or.jp/publications/letters/75/75.htm)(概要)
 (※仮訳本文は大部に渡るため、概要の掲載先を示す。)
http://www.fda.gov/cber/gdlns/sarsbldgd.htm)(原文)



製造業者等における安全性評価の概要

1 資料提出のあった製造業者等(五十音順)
・Aventis Behring
・財団法人 化学及血清療法研究所
・鳥居薬品株式会社
・日本製薬株式会社
・日本赤十字社
・バイエル薬品株式会社
・バクスター株式会社
・株式会社ベネシス
・ユーシービージャパン株式会社

2 原料血漿へのSARSウイルス混入の可能性

(1)供血者のチェック
 ・ 初期感染から臨床症状が認められるまで2〜7日間を要するとされており、ウインドウピリオドの段階で採血される可能性が少なからずある。
 ・ 我が国においては、問診等により発熱等の有所見者や帰国(入国)後3週間以内の者からの採血は行っていない。
 ・ 米国においては、FDAの2003年4月のガイダンスに準拠し供血者をチェックし採血を行っている。
 ・ 独、墺の供血センターにおいても米国と同様な問診が実施されている。
 ・ 独はSARSの国内発生がない。

(2)貯留保管
 ・ SARSの潜伏期間は2週間以内とされている。
 ・ 我が国においては、血漿分画製剤用の原料血漿については、6ヶ月の貯留保管期間が設けられている。
 ・ 米国においては、採血された血漿は60日のインベントリーホールドの後のみに使用される。この間に、SARSを発症した場合は、供血者を診断した医師や家族からの連絡等により、製造用原料として投入される前に排除されるシステムになっている。

(3)その他
 ・ 米国での最悪のケースを想定した結果、製造血漿プールに1人のSARS患者由来血漿が混入するが、この場合、10000倍の希釈により理論的な感染力は減少するものと考えられる。

(4)小括
 原料血漿にSARSウイルスの混入する可能性は少ない。

3 ウイルス不活化・除去効果

(1)SARSウイルスの性状
 ・ コロナウイルス科に類すると推察
 ・ コロナウイルスは、一般的に直径80〜220nmの円形もしくは楕円形の脂質エンベロープを有する大型RNAウイルスである。

(2)モデルウイルスの選定
 SARSウイルスの性状より、別表1のモデルウイルスが選定されている。

(3)効果が期待される工程
 ・ SD処理
 ・ ウイルス除去膜(35nm)
 ・ 液状加熱(65℃/15分)
 ・ エタノール分画
 ・ PEG(ポリエチレングリコール)処理
 ・ 酸性処理

(4)ウイルスクリアランスの結果
 ウイルスクリアランスの値は、別表2参照。

(5)小括
 血漿分画製剤の製造工程の不活化処理は、コロナウイルスであるSARSウイルスに対しても有効と考えられる。

4 その他の関連情報

(1)WHOの認識
 ・ 新型コロナウイルスは、56℃15分間の加熱により、およそ4log10以上のウイルス不活化を認める

(2)FDAの認識
 ・ 現時点では、血漿分画製剤を介したSARS伝搬はなく、原因と考えられる脂質エンベロープを有するRNAウイルスは血漿分画製剤の製造過程において容易に除去・不活化される

(3)コロナウイルス不活化に関する関連知見
 ・ マウス肝炎ウイルス(MHV)は、脂質エンベロープを有するRNAウイルスでコロナウイルス科に属し、SARSウイルスに比較的近縁とされているが、55℃及び65℃処理により最初の1時間で不活化されたことが確認され、60℃5〜10分の不活化処理で4.0log10の除去能が認められた(社内資料)。
 ・ コロナウイルスと他のエンベロープウイルスの類似性については、公表データで確認されており、コロナウイルスの感染性は溶剤及び界面活性剤に対し影響を受けること、紫外線、pH及び加熱処理により不活化される、という文献がある。
 ・ SARS症状が認められる3症例に由来する血漿について、2例からはウイルスは検出されず、残り1例からは190コピーのウイルス血症が検出(超遠心分離を行った濃縮液のサンプル)されたことなどからは、SARS感染者からの供血であっても低レベルのウイルス血症の血漿であると予測される。

5 結論
 各社とも、自社の製品についてはSARSウイルスに関し安全性に問題はないものと結論している。


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