03/07/24 第22回社会保障審議会年金部会議事録              第22回社会保障審議会年金部会                    議事録                 平成15年7月24日 第22回 社会保障審議会 年金部会議事録 日時  :平成15年7月24日(木)10:00〜12:30 場所  :霞ヶ関ビル33階 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、岡本委員、      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、山口委員、山崎委員、      渡辺委員 ○高橋総務課長  それでは定刻になりましたので、第22回社会保障審議会年金部会を開催をいたしま す。まだ杉山委員がお見えではございませんが、追ってお見えになるかと思います。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第 のほか、次のとおりになります。資料1−1「平成14年度年金資金運用基金の資金運用 の結果について」、資料1−2「第21回年金部会における委員要求資料」、資料2−1 「被保険者に対する福祉還元の在り方について I(年金の福祉施設について)」、資 料2−2は、その参考資料であります。資料2−3「被保険者に対する福祉還元の在り 方について II(教育資金貸付等)」、資料3−1「平成14年度の国民年金の加入・納 付状況」、資料3−1の参考資料として「都道府県別申請免除率の変化」、資料3−2 「国民年金納付実績と今後の収納対策」、資料4「第22回年金部会委員提出資料」、資 料5−1「年金制度改革に係るこれまでの意見の整理(論点の構成)(案)」、資料5 −2「年金制度改革に係るこれまでの意見の整理(案)」という分厚いものでございま す。以上が、お手元にあるものでございます。  参考資料として、第19回及び第20回の当部会の議事録並びに平成13年度公的年金加入 状況等調査結果の概要、それから、平成14年国民年金被保険者実態調査の結果(速報版 )をお配りをいたしております。  それから、前回までの配布資料及び議事録をファイルにまとめて机の上に置いてあり ます。適宜御参照いただきたいと思います。  委員の出欠の状況でございますが、本日は大山委員、矢野委員、若杉委員につきまし ては御都合により欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の皆様方は定 数を超えておりますので、会議は成立いたしております。  それでは、部会長よろしくお願いします。 ○宮島部会長  それでは、早速議事に入ります。本日は既に今日の議題を見ていただきましてわかり ますように、前回委員の方から要望のありました資料、それから各論として議論すべき 議題がございます。また、新たにまとまった幾つかの資料もございますので、それを含 めて御議論をいただきたいと思っておりますが、時間は無限にあるわけではございませ んので、委員の方々にも本日はできるだけ最後の総括的な議論に向けての議題に入れる ように時間に配慮していただきたいと思いますので御協力をお願いします。また、事務 局は資料説明を簡潔にお願いします。  議題1は「委員要求資料に関する説明等」でございますが、これと議題の2の「被保 険者への福祉還元の在り方について」、この2つを一括して事務局から説明をしていた だいた上で議論を行いたいと思います。  その前に昨日、既に御承知かと思いますが、年金資金運用分科会におきまして平成14 年度の積立金の運用実績に関する報告がございましたので、その報告をまずお願いをし たいと思います。それでは、事務局の方からお願いいたします。 ○泉運用指導課長  それでは、お手元の資料1−1、「年金資金運用基金の資金運用の結果について」を ごらんいただければと思います。  まず一番後ろの6ページ目を開けていただきたいと思います。積立金の運用の仕組み でございますが、下の方に「従来の仕組み」とございますように、平成12年度までは年 金の積立金は全額旧大蔵省の資金運用部の方へ預託をするということが義務付けられて ございました。それで、預託の利子収入をいただくという形であったわけでございま す。これが上の方の「新たな仕組み(13年度から)」とございますように、財政投融資 制度の改革に伴いまして、年金の積立金は厚生労働大臣から、年福事業団を廃止して、 新たに設立されました年金資金運用基金に寄託をして、市場運用をしていくという仕組 みに変更になったわけでございます。  しかしながら、かつて行っておりました預託は、7年間の期限を付けて預託をしてい まして、まだ全体は償還されておりません。上の方に小さく書いてございますが、期限 到来の都度償還し、20年度までに完了するということでございます。したがいまして、 積立金全体で見ますと、まだ預託部分が相当多いというような形でございます。2ペー ジの方にそれを図でかいてございますが、2ページの図の黒く塗ったところが年金積立 金でございます。左の方の四角が今、申し上げました財政投融資資金、旧資金運用部へ の預託金でございますが、14年度末で約112兆円、全体の4分の3程度を占める形でご ざいました。こちらの方は利子収入として下に小さい字で書いてございますが、約3兆 3,000億円ほどの利子収入をいただいたという形でございます。  一方で右側の方の黒く塗りました、年金資金運用基金に厚生労働大臣から寄託してい る部分でございますが、こちらの方は大変市場環境が厳しい中、特にこの1年間、国内 株式は20%以上、外国株式は30%以上という大きな下落がございました。そういうこと もありまして、運用結果としましては2兆4,700億円ほどの損失が発生してございます。 また、年福事業団時代に行っておりました資金運用部からの借入れの利息の利払いとい う部分もございまして、都合いたしますと3兆円を上回る損失が計上されたという形で あったわけです。  そこで、1ページの方に今、申し上げましたような全体の状況をまとめて文章にして います。積立金全体で見た場合には今、申し上げました預託金収入利子収入がわずかに 上回ってございましたので、全体として約2,400億円、0.17%のプラスという結果でご ざいました。  また、(2)のところで年金財政上の予定との比較が書いてございますが、賃金上昇率 をどれだけ上回っているかというところでの対比でございます。財政上の予定といいま すのは、前回11年再計算の際に行いました見通しでございますが、その際には名目利回 りは3.48、注の2に細かく書いてございますが、かつての預託部分と新規に預ける部分 との加重平均でこういった数字が出てございます。賃金上昇率は2.5%と見込んでおり ましたので、それを上回る0.96%が確保されていれば年金財政上、支障はないという形 でございます。運用実績のところにございますように名目利回りは小さい数字でござい ましたが、この間、賃金上昇率もマイナスで推移していたということもございまして、 1.34%という実質的な利回りが確保できたということでございます。  市場環境が大変厳しい中、市場運用部分では大変厳しい結果だったわけでございます が、積立金全体で見ますとまだ預託部分での利子収入が寄与いたしまして、全体として はこういう結果だということでございます。  簡単でございますが、説明は以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。後ほど、もし何かあれば少し御意見を伺うことにいたしま して、委員から要望のございました資料についての説明を進めさせていただきたいと思 います。それでは、事務局の方から順を追って説明していただけますか。 ○木倉年金課長  お手元の資料1−2でございますが、最初の方の遺族給付の変遷をごらんをいただき たいと思います。  遺族年金の変遷でございますが、国民年金の方は、従来の母子年金から遺族基礎年金 と、余り大きく変わっておりませんので、ここでは厚生年金の変遷を簡単に付けており ます。まず発足当初、戦前でございますが、労働者年金という制度でした。吹き出しで 書いているところを主にごらんいただければと思いますが、有期の10年の給付としての 発足いたしました。これは、当時の保険財政上の事情から、終身が望ましいところを有 期での発足であったという説明をされております。その2年後、すぐに終身年金に改め られて、終身年金という形になっております。  次のページをごらんいただきまして、戦後の混乱の中でございますが、20年以上加入 された方が亡くなった場合の遺族年金と別途、応急的に短期の場合でもその給付をする 必要があるという判断で、20年未満の方でありましても亡くなった場合には給付すると いうことで、寡婦年金、あるいはかん夫年金、遺児年金というものが創設をされており ます。  それで、29年に現在の厚生年金の前身になるものが立て直しをされたときに、従来か らの遺族年金と統合されております。その後40年代にかけまして女性の年金の給付の対 象を拡大をされているということでございます。  そして次の最後のページでございますが、50年代が過ぎまして60年の基礎年金を創設 するに至りまして、先般御説明申し上げました子を有する妻、あるいは中高齢の妻に対 する給付の重点化ということでございまして、定額部分を基礎年金に分けて、子のない 妻には基礎年金は出ないという形にするとともに報酬比例部分、厚生年金部分につきま しては4分の3とするわけでございますけれども、子を有する妻や中高年の妻に対する 給付の重点化ということで中高齢の寡婦加算というものが設けられておるということで ございます。それで、最後に平成6年改正でございまして、2分の1選択の方式が導入 されているというふうな変遷でございます。簡単でございますが、以上でございます。 ○宮島部会長  リバースモーゲージについてはいかがですか。 ○石塚資金管理課長  4ページ、5ページがリバースモーゲージの簡単な説明資料でございます。  リバースモーゲージと申しますのは、高齢者が居住している不動産を担保にして老後 の生活資金を借り受けて、死亡等の際に債務を一括償還する仕組みでございます。アメ リカ、イギリス等においては広く普及している制度でございますけれども、我が国にお きましては金利変動等に対する担保切れリスクを回避するための仕組み、保険制度のよ うな仕組みがまだ未整備であること、あるいは住宅流通市場が余り発達していないとい うようなこともありまして、民間ベースでの取組みは進んでいないという現状でござい ます。  最近の行政における取組み事例といたしましては、5ページに資料の概要を記載して おりますけれども、厚生労働省の社会・援護局の方で講じている施策でございますが、 低所得階層を対象にして各都道府県の社会福祉協議会がこのリバースモーゲージの類似 制度を構築する場合に、その貸付原資の3分の2を国庫補助しようという制度が平成14 年度からスタートいたしておりまして、既に11の都道府県の社会福祉協議会で業務を開 始している状況でございます。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。これらも一括して最後に御質問があれば伺うことにいたし まして、その次は「被保険者への福祉還元の在り方について」ということで、これも今 回初めて取り上げることになりますが、これにつきましても続けて説明をお願いいたし ます。 ○庁・十菱企画課長  資料2−1でございますが、「被保険者に対する福祉還元の在り方についてI」とい う資料を御参照ください。  1ページで、年金の福祉施設の設置根拠がそれぞれの年金法の中に規定されておりま して、厚生年金保険法で言いますと79条でございますが、政府は被保険者、被保険者で あった者及び年金受給権者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる、と 規定されています。これは厚生年金会館のようなハードの施設、あるいは融資事業のよ うなソフトの施設を含む概念でございます。こういった規定が年金各法に置かれており ますのは、年金制度というものが長期保険であるということで、現役の加入者の方の理 解を得るためにはこういった目に見える施設で還元をするということが必要だという趣 旨から設けられているものでございます。  2ページは、厚生年金、国民年金、それぞれの福祉施設がどのように展開されてきた かを簡単に整理したものでございます。厚生年金で申し上げますと大体3つぐらいのス テージがございますが、一番早い時期、昭和19年くらいからでございますけれども、障 害者の方に対して整形外科療養、温泉療法等を実施をするというところから始まってお りまして、戦後にかけまして障害者に対する整形外科療養を中心に行ってきたという時 期がございます。  第2期が昭和36年、国民皆年金の時期でございますが、年金制度が整ったということ に伴いまして厚生年金会館、老人ホーム、スポーツセンターなどを展開していった時期 でございます。  第3期は昭和48年ごろからでございますが、5万円年金や物価スライド制の導入で、 年金制度本体が本格的な給付水準になる段階で、高齢化社会をにらみながら、長期化す る老後生活や健康保持増進への関心の高まり等に対応するという観点から、休暇センタ ーあるいは休暇センターの小型であります健康福祉センター、サンピアを設置してまい りました。  それに対しまして国民年金の方は制度発足が新しいということもありまして、厚生年 金で申し上げますと第3期に対応するような昭和40年代後半くらいから、厚生年金に比 べるとややコンパクトな健康保養センターというようなものを設置いたしております。  3ページにまいります。こうした厚生年金、国民年金の福祉施設に加えましてもう一 つ、制度共通の福祉施設というカテゴリーがございます。これは年金だけではなくて健 康保険の財源を持ち寄りまして、健康づくりや生きがいづくりを行う総合的な福祉施設 ということで、50年代後半から設置されているものでございます。これはいわゆるフィ ットネスクラブ的な健康づくりの部分、それからカルチャーセンター的な文化教養的な 部分、こういったものが利用できる施設というものでございます。  これらの施設は、ここにございますように、厚生年金の施設が114、国民年金の施設 が59、共通の施設が92ということで全国に設置されております。  そこから先はそれぞれの施設類型についてどういうような展開をしてきたかというこ とを右側にまとめておりますが、数だけ確認いたしますと、厚生年金病院は全国に10か 所、4ページにまいりまして厚生年金会館は全国に21か所、老人ホームというのは比較 的低額の料金で契約による入所ということで、生活の場を提供する一種の有料老人ホー ムでございますが、こういったものが32か所、スポーツセンターが4か所、それから総 合老人ホーム、休暇センターと呼んでおりますが、老人ホームから発展いたしまして3 世代交流の場等々ということで余暇を提供する施設でございまして、これが17か所で す。それから健康福祉センターは休暇センターの小型版という位置付けで、サンピアと 呼んでおりますが、これが25か所です。  保養ホームという施設がわかりにくいですが、これは温泉地の病院と同じエリアに設 置をするということでございまして、整形外科療養で病院に入院された方が自宅に帰ら れる間のリハビリテーション、あるいは生活指導、栄養指導等を一定期間行う施設とい うことで、全国に4か所ございます。最後の終身利用老人ホームというのはゴールドプ ラン推進という観点からモデル的に社会保険でも取り組んだものでございますが、1か 所ということでございます。  5ページは国民年金の施設でございますが、健康保養センターという宿泊保養休養施 設が全国に47か所、大体各県に1か所ございます。それから、国民年金会館というもの が東京と京都にそれぞれ1か所、健康センター・総合健康センターというのは健康保養 センターの第2巡目でございますけれども、健康づくり、体力づくりに重点を置いた施 設ということで10か所ございます。  そして、制度共通の施設でございますが、社会保険センターというグループがやはり 各県、大体県庁所在地に48か所ございます。それから、これも2巡目につくりましたの が社会保険健康センターということで、これは県下の第2番目くらいの都市に置かれて いるものが多いわけでございますが、44か所となっています。  そこで6ページでございますが、「運営方式」についてです。こうした年金の福祉施 設でありますが、これは保険者である国がその設置に際し、保険料財源により整備する ということでございますので、その土地建物は国有財産、行政財産でございます。その 運営に当たっては、運営の効率化という観点から民間団体に委託をしております。民間 の公益法人というようなものでございますが、そういうことで国有民営方式をとってお ります。  それから、往々にして誤解があるわけでございますが、施設整備に関しては保険料財 源を投入してございますが、運営にかかる経費というのは原則的に各施設の独立採算、 事業収益により賄われるということで、基本的には運営費の補助は行っておりません。  続きまして、7ページはこうした福祉施設が年金財政の中でどのような位置にあるか ということを示しています。厚生年金の例で見ますと、左側にございますように歳入、 歳出の規模が大体31兆円でございますが、その中で福祉施設費が0.2兆円ということで ございます。右側に吹き出しになってございますが、1,731億円というのが15年度予算 の数字でございます。広い意味での福祉施設と呼ばれておりますものは大きく2つに分 かれておりまして、いわゆる狭い意味での福祉施設等事業費、それから受給者等へのサ ービス向上のための事務的経費ということで、これは年金相談への対応ですとか、ある いは年金の裁定事務を迅速化するというような観点からオンライン経費などを中心に充 当されておりまして、これが大体888億円で、全体の半分くらいでございます。残りの 半分が狭義のいわゆる福祉施設等事業費という部分でございます。  この部分も幾つか分かれておりますが、後ほど御説明を申し上げます年金資金運用基 金等の融資事業あるいはグリーンピア事業に645億円、それから私どもが自ら設置して おります厚生年金会館等の施設整備に199億円という現状でございます。  8ページは、それを国民年金について見たものでございます。同じような図でござい ますけれども、特別会計の財政規模が大体10分の1くらい、3.8兆円ということでござ いますので福祉施設費も10分の1、161億円というような規模でございます。  続きまして、9ページは私どもの施設整備関係予算の推移というものを見たものでご ざいます。平成6年間から10年間を見てございますが、平成6年、7年、8年、9年と かなり高水準の整備を行ってまいりました。600億円オーダーでございます。平成9年 に新しい整備方針をつくったわけでございますが、ちょうど平成9年は政府の財政状況 が大変厳しい中で、財革法(財政構造改革の推進に関する特別措置法)というものが制 定された年でございます。こういった状況の中で、施設整備というものを圧縮をしよう という意思決定を行いました。  2つございまして、1つは吹き出しにございますが、計画進行中のものを除き新たな 施設整備はしないということです。それから、施設整備費の水準を大幅に圧縮をいたし まして、平成11年度までに半減するということでございます。その方針にのっとりまし て、平成11年には平成9年の水準の半分に落としているということでございます。そし て、平成14年度以降、一層厳しくなる年金財政というものを踏まえまして、更に整備費 の縮減ということで進めてまいりまして、これが現状でございます。  10ページは年金福祉施設の収支状況ということで、厚生年金、国民年金、共通施設、 それぞれ大ぐくりで3年間の収支というものを見たものでございます。ごらんいただく と分かりますけれども、全体とすれば若干の黒字ということでございます。個別の施設 で見れば、大体全体の3分の2から4分の3の施設はフローで黒字を計上し、残りがフ ローで赤字を計上しているという状況でございます。  11ページは、こういった収支状況を施設類型ごとに見たものでございます。一番右側 に平成14年度末累計とありますのが、これまでの収支累積でございまして、おおむね黒 字基調でございます。黒字の大きい施設というのは厚生年金病院でありますとか、ある いは社会保険センター、あるいは厚生年金会館も比較的黒字です。それに対しましてサ ンピア健康福祉センターの赤字が少し大きいかといった状況でございます。経営状況に ついては、こうした福祉施設のフレームの中では、おおむね堅調に推移してきたという ことが言えるのではないかと思います。  12ページは、こうした年金の施設が年間どの程度利用されているのかということで、 施設の種類ごとに利用者数を延べ数で計上してございます。全体を合計いたしますと、 年間4,400万人の利用者がいます。  こういった年金の施設を、今後どのようにしていくのかということでございますが、 資料2−2の1ページをお開きください。年金の福祉施設に関しましては、グリーンピ アなどの特殊法人の関係施設とは違いまして、明確な整理合理化の政府方針というもの はございません。唯一政府レベルの決定として、平成12年5月の閣議決定がございま す。「民間と競合する公的施設の改革について」というものでございますけれども、民 間競合の観点から取り上げられているということでございまして、この中で施設の新 設、増築の禁止、既存施設の廃止、民営化、その他の合理化を行うということが決定さ れておりまして、こういった閣議決定を踏まえまして、今回の年金制度改正に合わせま して整理合理化を考えていきたいと思っております。一番重要なことは、年金財政に負 担をかけないということでございますので、そういった観点からの見直しに取り組んで まいりたいと思います。以上でございます。 ○石塚資金管理課長  続きまして、資料番号2−3という横長の資料に基づきまして、還元融資と呼ばれて いる分野の概況について御説明いたします。  表紙と目次をおめくりいただいて1ページでございます。還元融資の中心的な実施機 関でありました年金福祉事業団業務の再編状況をごらんいただいております。年金住宅 融資、あるいはグリーンピアについては、既に17年度までに廃止するということで閣議 決定で方針が示されております。  一方、右上の四角にありますように、年金政策上の被保険者還元融資の在り方につい ては別途財政再計算時に検討し、決定するという取扱いになっております。この一環と して教育資金貸付制度等について本審議会で御議論をいただいているというのが全体的 な構図でございます。  2ページは、ただいま申し上げました閣議決定の文章でございますので省略させてい ただきます。  3ページには、被保険者住宅融資の各種データを書かせていただいております。一番 下にありますように、ピーク時には毎年2兆円近くの新規貸出がありましたけれども、 近年民間金融機関が住宅金融の分野に進出してきたということを受けまして、直近の平 成14年度では236億円ということで大幅に新規貸出が減っているという状況でございま す。  4ページは、ただいま申し上げましたような「融資額等の推移」をグラフにしたもの でございますので、ごらんいただきたいと思います。  続いて5ページですが、グリーンピアの状況でございます。下の日本地図にあります ように、13か所の基地のうち既に6か所の基地の運営を停止しているという状況でござ います。譲渡につきましては、地元自治体の譲渡を優先にして交渉を進めております。 二本松基地と岩沼基地につきましては、それぞれ地元自治体に本年中に譲渡できる見込 みがたったという状況でございます。  6ページは、グリーンピアに関する給付の負担状況を示したものでございます。建設 費1,914億円については3,500億円を財投に償還中でございます。そのほかに固定資産税 等ということで毎年10億円前後、計233億円を年金財源から支出いたしております。  その他の基地従業員の人件費等のいわば純粋の基地の運営費につきましては、赤字が 生じれば受託団体の責任でそれを補てんするというのがグリーンピアに対する経費負担 の仕組みでございます。  7ページ以降が、教育資金貸付制度に関する資料でございます。これまでの経過でご ざいますけれども、女性と年金検討会報告書におきまして若者皆奨学金制度というよう なものの提案を受けまして、昨年12月公表の厚生労働省の「方向性と論点」では公的な 育英奨学金の充実と合わせて年金資金を活用した貸付制度についても検討を行ったらど うかという提案をいたしまして、同様のことが本年3月の少子化対策推進関係閣僚会議 決定に記載されているということがこれまでの経過でございます。  8ページ、9ページに教育に関する基礎資料を幾つか載せております。9ページの一 番下の欄をごらんいただきたいと思いますけれども、奨学金の受給状況でございます。 大学の学部制についてごらんいただきますと、3割弱の学生が奨学金を受給いたしてお ります。全く必要ない学生が5割以上いる一方で、申請したが不採用、あるいは希望す るけれども申請しなかったという方が合わせて2割弱というような状況でございます。  続いて10ページに、既に存在しております公的な奨学金なり貸付制度の概要を示して おります。左が日本育英会の奨学金という代表的な奨学金制度でございます。第1種が 無利子で貸し付けている制度、学力要件あるいは家計要件が比較的厳しい制度でござい ます。一番下にありますように、40万件というのが現在の貸出状況でございます。次の きぼう21プランというのが0.2%とありますけれども、有利子の貸付ということで35万 件の貸付実績があり、右側が、国民生活金融公庫が実施しております国の教育ローンと 称しておりますけれども、教育資金の貸付でございます。1回200万円以内ということ で年1.5%の利子で貸し付けておりますが、これも直近で申し上げますと23万件近い利 用があるということでございます。右端は、被保険者向けに200万円の一般貸付につい て融資額を上載せするという制度でございますが、こちらの利用は年間5,000件という ことでやや低調であるということでございます。  欄外に都市銀行の教育ローンの貸付金利を記載しておりますけれども、4%から6% ということで、教育ローンの分野についてはまだ公的な貸付制度と相当の差があるとい うような状況でございます。  11ページは育英会と国民生活金融公庫、それぞれ特殊法人合理化計画でどのようなこ とが指摘をされているかということを示しておりますが、説明は省略させていただきま す。 12ページが教育資金貸付に関する主要な論点ということで、幾つかの論点を例と して示させていただいております。1番目が、そもそも年金資金を活用した教育資金貸 付制度の創設の是非についてどう考えるかということについて意見が分かれているとい う状況を示しております。本年5月の有識者調査におきましても、積極的に取り組むべ きだという方々が50%いらっしゃる一方で、年金資金は給付に当てるべきであってその ような取組みは必要ないという方が42%ということで、肯定派がやや上回る状況でござ いますけれども、ほぼ二分されているという状況でございます。そもそも次世代育成支 援対策を年金制度にどう位置付けるのか、あるいは少子化に対して効果があるのかどう か、更には公民の役割分担ということでどう考えるかというようなことについて賛否両 論、それぞれの立場から意見が寄せられているという状況でございます。  続きまして13ページは、仮に新たにこういう制度を設けた場合にどういった制度設計 をするべきか、幾つか論点があるということでお示ししております。1番目は貸付原資 の調達方法をどうするのかということです。財投改革の趣旨からしますと、貸付制度の 実施主体が財投機関債を市中発行して資金調達するということが原則的な考え方になる と思いますけれども、そのような方法で十分な量の資金を低いコストで調達できるのか どうかという問題に始まりまして、貸付金利をどういう水準に設定するか、逆に言いま すと、年金財政でどの程度の利子負担や事務費負担をするのか。あるいは3番目にあり ますように、育英会の状況等を見ましても相当貸倒れリスクの高い分野でございますの で、このための信用保証制度が制度化できるのかどうか、更に、既存制度との役割分担 をどのように考えて貸付の対象者あるいは貸付額を設定していくのかというようなこと について、今後議論が必要だということでお示しさせていただいております。以上でご ざいます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。少し性格の異なった幾つかの議題を一括して御報告いただ きました。このうち、最後の教育資金貸付の話は一度少し議論はしておりますが、初め の14年度運用実績についての報告、それから委員からの要望資料で説明がございました 遺族年金に関する件、リバースモーゲージの資料、これは報告に近いものでございま す。それから、被保険者の福祉還元の在り方についての説明が今ございました。  これらにつきまして、今の説明の範囲で御意見なり御質問を伺っておきたいと思いま す。既に意見書等でも触れている面がございますけれども、特に今回これについて御意 見なり御質問がございますでしょうか。 ○堀委員  資料4の意見の25ページにこの問題について若干意見を書きましたので、簡単に説明 したいと思います。  福祉施設・還元融資の問題ですが、基本的には、現在の福祉施設等には意義を失って いるものもありますので、廃止・譲渡を含めた見直しが必要ではないかと考えていま す。ただし、短期保険と違って長期保険である年金制度は、40年から45年保険料を納め るのみでメリットが少ない。このことが特に若い世代の年金制度に対する無関心や未加 入・未納問題を生んでいるとすると、年金制度のメリットを示し、年金制度の理解を深 めるための施策があっていいのではないかと思います。  2番目の教育資金の貸付ですが、大学教育を受けている子がいる世帯の子育てコスト は平均して月22.6万円であるとする調査もありますので、次世代育成支援等の考え方か ら融資する意義はあるのではないかと思います。  それからリバースモーゲージですが、今後年金の給付水準が低下していくことになる と、自助努力によって老後の生活を営む必要性が格段に高まるわけで、リバースモーゲ ージはそのための有力な手段となるのではないかと思います。リバースモーゲージは民 間でも行っていますけれども、信託銀行等は必ずしも積極的ではありません。それは市 場の失敗があるからで、御承知のように担保切れのリスクがあるだけではなくて、もう 一つ貸し付けた対象者が死亡するまで元本も利子も入ってこないという、資金が長期固 定化するといった問題があります。リバースモーゲージの運営は基本的には民間に委ね るとしても、民間で対応できない問題は公的に行う必要があるのではないかと思いま す。特に資金の長期固定化という問題については、長期資金である年金積立金を利用す るのが適切ではないかと思っております。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それは御意見として伺っておきます。  それでは、小島さん、翁さんとどうぞ。 ○小島委員  前回の部会で私が幾つか資料請求をしたものを出していただきましてありがとうござ いました。その中で年金積立金の運用の問題です。今日冒頭に説明のありました資料1 −1運用実績ですが、2年続けて運用基金の市場運用分は厳しい結果が出ています。積 立金全体の運用としてはかろうじて預託金があるのでプラスになっているということで すけれども、これを今後どう考えるかということは大きな課題だと思っております。運 用の問題についてはこれまで述べておりますけれども、そんなに公的年金の積立金を多 く持つ必要はないと思っております。市場運用、特に株式運用については極力縮小して いくという意見です。一方で、現在保有している積立金の還元融資の方を広げればいい という考えを持っております。  その中で1つリバースモーゲージといいますか、そういうものを年金積立金の活用と いう中で検討すべきではないかと思っております。そういう意味で、前回リバースモー ゲージについての資料要求をしたところです。  それで、資料1−2のリバースモーゲージについて質問があります。5ページのとこ ろで長期生活支援資金を各都道府県の社協が実施しているということです。これは14年 度創設の事業で11の社協で開始をしているということですが、11の事業を実施してどの ぐらいの利用件数があるのかということがわかりましたら教えていただきたいと思いま す。 ○宮島部会長  これは14年度実施なのでわかりませんが、もし情報があればどうぞ。 ○石塚資金管理課長  まだ担当局の方で集計はしていないようでございますけれども、東京都等で幾つかの 貸付実績が生じているというふうに聞いております。 ○宮島部会長  それ以上は把握していないということですね。それでは、翁委員どうぞ。 ○翁委員  資金貸付について意見を申し上げたいと思います。先ほど資料2−3の2ページで、 「特殊法人等整理合理化計画」で年金政策上の還元融資の在り方については検討すると いうことになっているという御説明があったのですけれども、現行業務の整理縮小とい う方向ですべて考えていくということがこの整理合理化計画の趣旨でございます。 そ れは御承知のとおり一般論としてでございますが、特殊法人の経営責任の不明確性や非 効率性が原因で今までいろいろな問題が出てきているということにかんがみてこういっ た整理合理化計画がつくられて、すべての省庁でいろいろな形で整理合理化が行われて いるというところでございます。その意味でも、この趣旨を超えて新たに新しい特殊法 人をつくるとか、新たに事業を始めようということであるとするならば、よほどしっか りとした根拠や必要性が求められるわけでございまして、私は今から申し上げることに かんがみてもやはりそれは少し難しいのではないかと考えております。  それで、1つはここでも御紹介のありました日本育英会の実態でございます。たまた ま私も特殊法人に関係する仕事に従事しているわけですが、ホームページなどでも公開 されておりますように、日本育英会の奨学金の焦付きというのは、非常に大きな問題に なっております。ホームページでも出ていたのですけれども、平成12年の総務省の政策 評価をしたものでも、平成12年の時点で貸与実績が2,661億で要回収額が1,369億円にな っているということで、滞納後、特に1年を過ぎると回収率が極度に低下してしまう実 態が出ています。そこでの評価としては早期に法的な手続に入るとともに、短期間に回 収できるような措置をとるような勧告がなされているという実態です。それで、今回育 英会は独立行政法人に変わるわけなのですけれども、そこでは回収が非常に大きな問題 になっていて、これは民間にアウトソーシングして、とにかく回収に力を入れていくと いうことで考えているようでございます。  この背景には、御承知のとおりフリーターとか、今でも高卒の方でも1割、大卒の方 でも2割、就職難でなかなか働けないということが背景にあることもそうだと思います し、こういった現状というのは早く打開していかなければならない問題だと思っている のですけれども、そういう現状で新たにこういった業務を始める危険性は十分に承知し ておく必要があると思っております。  それから、今回御説明いただきました最後の方で原資の話とノウハウの話についてお 書きいただいているのですけれども、例えば13ページのところで、今までの御提案で は、今ある積立金を使ってという御提案が紹介されていたのですが、それ自体がもし回 収ができなくなったら大変なことになると感じておりました。そうではなくて今回のご 提案は財投改革の精神を貫徹して、今度は新しく資金を財投機関債で調達して奨学金融 資を実施するというようなことだと思います。私は、なぜ新たな財投機関債を発行して 財源調達してまで新たな事業を始めようとするのか、今度の提案についてはその趣旨す らわからない、という感じを受けます。  しかも、財投機関債は、やはりそれなりの財務状況がなければ低コストでの調達が難 しいと思います。  もう一つは、(3)の貸倒れリスクの軽減方法ということですが、今、育英会の話でも 出ておりますように、厚生労働省の方に回収のノウハウはそれほどあるわけでもないと 思いますし、より効率的で合理的に奨学金の趣旨を貫徹しようとするのであれば、むし ろ育英会の方を充実させていくとか、そういった合理的、効率的なやり方を考えていく という方が国トータルとして考えた場合にはよいのではないかと思います。  仮にこのリスクが本当に顕在化してしまった場合には、保険料の補填がかさんでしま って、将来世代にとってコストの高い負担の大きな制度になってしまいます。始めるの は簡単ですけれども、それが始まってしまってコストが出たときの大きな問題というの は今まで私どもが何度も経験してきたことでもありますので、よほど慎重に考える必要 があると私は考えております。 ○宮島部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。御意見なり御質問があ れば伺います。  今の翁さんの最後の点ですが、この仕組はどんな考え方をすればいいんですが。少し わかりにくいところがあるのですが、財投機関債の関係ですね。 ○吉武年金局長  私どもとしては、例えば厚生労働省関係の特殊法人でやりたいということは一切考え ておりません。むしろ検討したいのは、年金制度の一環としてこういう機能を考えるこ とが必要かどうかということだろうと思いますので、今のお話で、こういう教育資金の 運用を担当しておりますのは公的機関で申し上げれば育英会でございますけれども、も う一方で国民生活金融公庫があります。  例えば育英会は、現実に保証を取れていますのは個人保証しかございません。通常の 保証機関による保証契約の世界ではございませんので、そういう意味ではフリーターの 問題が出てきたときには個人保証というのはある意味では担保力が不安定であります し、逆に個人保証を求められる人にとっては厳しい制度だという点がありますので、端 的に申し上げて私どもの目から見ましても少し古い形の融資制度という感じがします。  それで今、申し上げましたような制度が本当に必要なのかどうかという問題と、仮に 必要だとしても翁委員がおっしゃるように、例えばここで論点に挙げさせていただいて おりますけれども、貸倒れの可能性等についても十分検討していきたいと思っておりま す。それで、その実施の主体をどうするかというのはむしろ最後になるかと思います。 ○宮島部会長  今、幾つか御意見が出てまいりまして、特にリバースモーゲージについてはいろいろ これまでも議論があったわけですけれども、むしろリバースモーゲージと年金資金の関 係をどうするかということの御指摘が1つございまして、これまでの議論では余り意識 されていなかった点ではなかったかと思っております。  それから、今の教育貸付の件については今日12ページから13ページにいろいろ論点を 改めて整理していただいておりまして、全体的に意見がやや割れているということでも ございますので、こういう論点を中心にかなり細かい議論をしなければいけないテーマ であることは間違いないだろうと思っております。ほかにいかがですか。 ○渡辺委員  資料1−1の昨日発表になった運用結果ですが、1点簡単にお伺いしたいのは、昨年 度の総合利回りマイナス8.46%ということで、これは別にかばうわけではないけれど も、厚年基金も昨年は大体13%のマイナスで3年連続マイナスでした。それが今年に なって、特に最近の株高で9,000円台の回復によって、厚年基金に関して言うと4月、 5月、6月を取ってみると7%くらいプラスという速報が出ています。昨日公表になっ たこの資料では3兆円のマイナスということで、非常に不安感を与えているわけなので すが、これに関して最近の数字はないのですか。できればそういった努力を是非しても らいたいと思います。 ○泉運用指導課長  今お話がありましたように5月、6月と株式市場の株価の回復等もございまして、公 的年金、年金資金運用基金の運用も直近の状況は時価が相当程度回復してございます。 それで、私ども四半期ごとに報告をまとめてございますので、6月末で締めたものを9 月ごろになるかと思いますが、発表させていただくことになると思います。そこはまだ 数字は集計中でございますけれども、何%ということはなかなか申し難いのでございま すが、例えば株式の指標で申し上げますと十数%の回復、外国株式ですと20%以上回復 しているというような状況がございますので、粗々で申し上げまして1.5兆から2兆程 度は時価ベースで回復しているのではないかというような感じはございます。 ○吉武年金局長  もし必要でしたら6月末のベンチマークはわかりますので委員の方にお配りしたいと 思いますが、今、運用指導課長が申し上げましたように外国株式は約2割、国内株式は 15%程度、外国債権も為替が安定をしておりますので好調です。  ただ、ここに少し兆候がございまして、国内債権は若干のマイナスになっています。 これが最近起きております金利の上昇によるキャピタルロスが現実に4月、5月、6月 に若干出てきているということでございます。資金運用分科会でも御議論をしていただ いておりますが、債権もある程度のリスクがあり、株式ももちろんリスクがあり、その 中でどういう組合せを選択していくかという問題が出てきているのかなと思います。国 内債権が若干マイナスになってきているということでございまして、債権のウェートが 高いわけでありますので、債権のマイナスの大きさはトータルの運用の中では大きな影 響が出てまいります。  それで、これまでのところ金利が相当低い局面だということで、財投債の当面の経過 的な引き受けをやっているわけですが、財投債につきましては金利が上昇するというこ とも想定をいたしまして簿価で引き受けるということをやっております。そういう意味 で簿価の財投債、時価の国債、それから外国株式、国内株式ということで、ある程度分 散をしておるわけですけれども、この点についてむしろ16年度の年金制度改正に合わせ まして資金運用分科会で既に議論を始めていただいておりますが、全体のポートフォリ オ構成をできるだけ安定した構成で、しかもできるだけ効率的となるように検討してい ただくことは必要だろうと思っております。その検討を秋くらいまでしていただきまし て、これにつきましてまたいずれ部会にもその検討の経過を御説明申し上げたいと思っ ております。 ○宮島部会長  正式には四半期ごとのようですけれども、我々としては経済状態がこれだけ動いてい ますから、なるべく最新の情報や予測を、推計を交えてもいいから伝えてほしいと思っ ております。  それでは、第1議題、第2議題につきましては一応ここで区切らせていただきまし て、次の第3議題に移りたいと思います。これは平成14年度の国民年金の収納実績がま とまったということでございますので、これについての報告と今後の対策につきまして 少し説明を受け、議論をしたいと考えております。それでは、事務局からお願いいたし ます。 ○庁・十菱企画課長  それでは、資料3−1でございますが、「平成14年度の国民年金の加入・納付状況」 ということで、その状況と分析という資料でございます。平成14年度という年は、13年 度までは市町村が保険料の収納を行っておりましたが、14年度からは国に移管されたと いうことで、社会保険庁が自ら保険料収納事務を行った初年度でございます。  1ページをお開きください。1ページは1号被保険者の動向でございます。上の方の 枠囲みのところを中心に御説明を申し上げます。1号被保険者は増加傾向でありまし て、平成14年度の数字は2,237万人ということで、前年度より30万人の増加ということ でございます。それから、14年度は免除制度が大きく変わった年でございます。半額免 除制度の導入と、それに合わせて免除基準の明確化ということで、基本的には前年度の 所得で判断することといたしました。それで、従来比較的柔軟に対応しておりました特 例免除については、災害の場合、天災の場合と失業の場合に限るというような明確化を 行いました。その結果といたしまして、14年度の全額免除者数というものは前年度に比 べてほぼ半減いたしまして144万人となりました。  この1番目と2番目の話を合わせまして、平成14年度末の納付対象者数が前年度に比 べて大幅に増加いたしまして1,836万人ということでございます。このページの下にグ ラフがございますけれども、13年度と14年度を見ますと若干連続性がない部分がありま す。納付対象者数が大きく増えて、免除者数が大きく減っているという状況でございま す。  2ページにまいりまして、全国の納付状況はどうであったかということでございま す。国民年金の保険料は毎月毎月一人ひとりの方から集めますので、保険料をどれだけ の月数収納できたかということは大変重要な指標でございますが、その納付月数という 指標で見た場合は1億3,627万月ということで、前年度と比べほぼ同程度、若干の減でご ざいました。  一方、先に申し上げましたように14年度分の保険料の納付対象者が増えておりますの で、納付対象月数が大幅に増加し、前年度に対して12.6%の増ということで2億1,712 万月という数字でございます。こちらが分母になりまして、納付月が分子になって納付 率が計算されます。その納付率は計算上62.8%ということで、前年度の70.9%から見ま すと8.1%の大きな低下となってございます。  このページの真ん中ほどに「平成14年度の納付状況(納付率)」がございます。14年 度の納付率は62.8%でございましたが、私どもは過年度分ということで2年間さかの ぼって保険料を追いかけておりまして、その部分については、13年度分が2.3%、12年 度分が1.3%という水準でございました。14年度に関しましても今後更に納付をお願い するということでございますので、最終的には62.8よりも4%くらいは上がると見込ん でおります。  3ページは年齢別の納付率を見たものでございます。14年度においては、残念ながら 全年齢階層で納付率が下がったということでございますが、特に中高齢層、35歳から49 歳といった働き盛りの年代での落ち込み幅が大きいという結果になってございます。そ れから、年齢階級別の納付率に関しまして、やはり年齢階級が低い者ほど低く、年齢が 高い者ほど高いという結果が顕著に出てございます。  4ページは、未納者・未加入者がどういう状況になっているかということで、これは 別添で参考資料の3と4という形で添付しておりますが、平成13年に実施いたしました 公的年金加入状況等調査、あるいは平成14年に実施いたしました国民年金被保険者実態 調査の結果を用いている数字でございます。  まず未加入者でございますが、平成13年の調査の結果でございますけれども、63万 5,000人という形で前回の3年前の調査に比べまして35万8,000人減少でございます。20 歳になった方に対する年金手帳送付による職権適用等が功を奏したということでござい ます。  一方、未納者の方はどうかということでございますが、これは326万7,000人というこ とで、3年前の前回調査に比べまして62万1,000人増加しています。未納者と未加入者 を合算いたしますと、これがよく国民年金の空洞化ということで言われる数字でござい ますが、13年度の数字は390万2,000人ということで、前回の3年前よりも26万3,000人 の増加でございます。こういった未納者・未加入者の割合を公的年金加入対象者に占め る割合で示しますと5.5%でございます。現行の基礎年金の仕組みの下で、5.5%の方に 払っていただけないという状態でございます。平成10年度の5.1%に比べまして若干の 増でございます。  5ページの「第1号被保険者の動向と納付状況」に入りますが、経済・就業状況の動 向との関係はどうかということでございます。いろいろな経済指標を見ますと、入職者 より離職者が多いということで、雇用環境が厳しいということがございます。それか ら、延べ労働移動率と書いておりますが、入職率と離職率の合計も増加傾向にあるとい うことでございまして、これが1号被保険者の方にも反映をいたしまして、1号被保険 者の資格取得者が全体の3割ということで、非常に出入りが多いということがうかがえ るわけでございます。  それから、中でも2号被保険者から1号被保険者になる、雇用者から1号被保険者に なる方が多くなっている状況でございます。こういった新しい資格取得者のうち、2号 から1号になる方の納付率は52.6%、それから20歳到達者の納付率は42.5%ということ で、平均よりも低くなっているという状況でございます。  6ページは「第1号被保険者の年齢構成の変化」を過去10年程度グラフで見たもので ございますが、若年層の雇用の厳しさ、あるいはフリーターの増加といったいろいろな 状況の中で、20代、30代の被保険者が増えており、20代、30代の被保険者の合計が51.4 %ということで、1号被保険者の半分以上ということになっております。  7ページは前年度免除者等に関する納付状況でございますが、冒頭に申し上げました ように免除制度の変更によりまして全額免除者数は前年度に比べて半減しました。結果 といたしまして、14年度は前年度は免除であったけれども、今年度は納付対象になった という方の数が大変増えまして、13年度との比較で3倍強というような数字が出ており ます。そういった13年度の全額免除者で、14年度は納付対象となった者の納付率という ものが、残念ながらここにありますように14.5%ということで極めて低かった。このこ とが全体の納付率の低下の大きな要因になっています。数字で申し上げますと、8.1% の低下の大体半分くらいがこの要因によるものでございます。  8ページは、14年度から新しく導入されました半額免除の状況がどうであったかとい うことでございます。14年度に半額免除月を1か月でも有する方は40万人であったとい うことで、こういった方々の納付率は36.4%でございます。前年度全額免除から今年度 は半額に移行したという方は21万人で、それらの方の納付率は31.7%でございます。そ れから、前年度未納であって今年度は半額免除になった方は5万人でございまして、納 付率は14.2%と相当低くなってございます。  9ページは「被保険者属性別の現年度分納付率の変化」ということで、被保険者のグ ループというものを分けて納付率を見ていこうということでございます。まず、前年度 から引き続き納付対象となった方のグループでございますが、図で申し上げますと、真 ん中に両年度とも納付対象月がある者ということになっております。この部分は比較的 安定している層でございまして、この2年間引き続き納付対象となっている者の納付率 は70.0%と、若干の低下ではございますが、平均よりは高い数字を維持してございま す。  それから、逆に14年度に新たに納付対象となったグループは、下の図では一番下の方 です。14年度のみ納付対象月がある者というグループでございますが、前年度の全額免 除者が14年度は納付対象となった場合、納付率は14.5%と低くなっています。それか ら、14年度に20歳に到達し、手帳送付により適用された者の納付率も27.4%と低いで す。この辺が保険料収納についてなかなか難しいグループでございます。  10ページは、これまで申し上げましたいろいろな要素が納付率低下にどのように影響 を与えるかという要因別影響度を載せています。「○」が4つございますが、前年度免 除者が今年度納付対象となった者の納付率が低いということによる影響、これが先程申 し上げました約半分、マイナス4.1%の低下影響ということでございます。  それから、14年度に新規に資格取得した者の納付率が低いことによる影響が約2割で ございます。そのうち、第2号被保険者から第1号になった方の影響が大きいというこ とでございます。  3つ目でございますが、2年間引き続き納付対象となっている者の納付率低下による 影響、これは低下の数字自体は小さいですが、母集団が大きいということで全体は1.5 割程度の影響でございます。  それから、最後のグループは2年間に1回以上資格喪失、再取得した者の納付率低下 でございますので、ある程度出入りのある1号被保険者に関しましての影響でございま す。ここが1割という状況でございました。  11ページは、都道府県別に納付率の状況を載せています。この表の一番右側が13年度 と14年度の比較という形になってございますが、ご覧いただきますと、まず納付月数の ところで47都道府県のうち11都道府県は納付月数が増えているということでございま す。これはある意味で明るい材料の一つではございます。ただ、納付率で見ますと、こ れは全県おしなべてマイナスが立っているということでございます。地域エリアで見ま すと、東北地方あるいは九州地方の各県というものが納付率の低下が数字として大き い。それから、大都市を抱える地域というものは納付率の低下幅が比較的小さいという ことがうかがえるわけでございます。  それをもう少し見たものが12ページでございまして、14年度の納付状況を政令市とそ の他の市、そして町村というように分けて見たわけでございます。そうしますと、納付 率の絶対値は町村が最も高く、政令市が最も低いということになっておりますが、納付 率の低下幅は今度は逆でございまして町村の低下幅が大きくなっています。もう一つ心 配なのは、納付月数が政令市とその他の市においてはプラスになってございますが、町 村においては、数字でマイナスになっております。この部分をてこ入れをする必要があ るだろうと思うわけでございます。  13ページは今、申し上げましたこととも絡む話でございますが、納付率の変化と免除 率の変化を載せており、免除率の低下が大きい県ほど納付率が低下しているという傾向 がうかがえます。それから下の方は納付組織、これは自治会などを市町村が納付組織と して利用しておりましたが、これが14年度から使えなくなったという現状で、納付組織 の利用率が高かった県ほど納付率の低下が大きいという傾向がうかがえるわけでござい ます。  14ページは今、申し上げましたようなことを都道府県別に見た資料でございます。追 加の参考資料といたしまして免除率の各県別変化も別紙の1枚紙で添付しておりますの で、御参照いただければと思います。以上でございます。 ○庁・渡邉年金保険課長  引き続きまして、資料3−2の「国民年金納付実績と今後の収納対策」について説明 をさせていただきます。  平成14年度は今、申し上げましたように国民年金の保険料について国が収納事務を行 うということから、社会保険庁としても最重要課題ということで位置付けて取り組んで きたわけですが、結果として3つの大きな要素があり、納付状況は大変厳しい結果と なったという分析をしております。  まず1つ目は先ほどの話にもありましたように、免除制度改正によりまして申請全額 免除者数が半減をしたということ。それから2つ目は、事務移管に伴いまして実務の対 応の遅れがあったということ。3つ目としまして、大変厳しい経済情勢の下で保険料の 負担能力の低下あるいは高い離職率によって厳しい結果となったということです。  2ページでございますが、分析の要因については先ほど御説明したとおりでございま す。(5)の「事務移管に伴う実務の対応遅れ」でございますけれども、これは14年4 月に国に移管をしたわけでございますが、この年度当初、被保険者から多くの照会が寄 せられて体制の整備に若干時間がかかったということ、それから市町村と関係が深かっ た納付組織について利用をやめたということが納付率の低下の要因ということで分析を しております。  次のページでございますが、14年度に国に移ってどういう対策を講じてきたかという ことを実績として示してございます。まず「未納者に対する対策」でございますが、未 納保険料の催告状の送付ということで、1か月でも未納になっている被保険者に対して 年6回催告状を送付するということにしておりますが、これが延べ2,830万件実施をしま した。それで納めない人に対しては電話によって納付督励を実施をするということに整 理をしてございましたが、これについても延べ330万件の納付督励を実施をしました。 なお納めない者について、戸別訪問によって保険料納付督励収納を実施したということ で、社会保険事務所職員あるいは14年度から新たに設置をしました国民年金推進員によ り、延べ730万件の戸別訪問を行って保険料収納を実施をしました。  4番目には、収納窓口を拡大をし、市町村との連携を図って役場、スーパーなどで窓 口を6,400回開設をしたということでございます。  合わせて4ページでございますが、年金広報あるいは年金教育についても従来以上に 実施をしてきたという実績を書いてございます。  それから、免除制度につきましても14年4月から半額免除制度の導入あるいは免除基 準の見直し等があったわけで、これにつきましても納付者一人ひとりに対するダイレク トメールで周知を図ったということでございます。  それから、学生の納付督励についても一部の大学においては学園祭などで相談窓口を 設置をして制度の周知や申請書の受付を実施をしてきております。  「納付しやすい環境づくり」として、口座振替の利用の促進をしてまいりました。利 用者数につきましては13年度と比べて22万人増加をしたわけでございますが、結果とし て被保険者数が増加をしておりますので、口座振替率としては35.2%ということで前年 度に比べて1.9%低下をしたという実績でございます。  5ページでございますが、15年度以降の収納対策の強化でございます。大変厳しい状 況を受けて15年度以降どういう対策を講じていくかということを示してございます。  まず1つは、厚生労働大臣を本部長とした国民年金特別対策本部を設置し、各地方社 会保険事務局にもこの対策本部を設け、全省を挙げて先ほどの要因分析を踏まえた新た な個別収納対策を実施をするということと、保険料納付は国民の義務であるという意識 の徹底を図って着実な収納体制を確立するということにしてあります。  2つ目として中長期的な目標設定をするということで、今後5年間で納付率80%を目 指して、その目標の達成に向けて一丸となって収納対策を実施をし、計画的に収納対策 を実施することによって制度に対する不安感、不信感を払拭し、国民の年金制度に対す る信頼を回復するということにいたします。  それから、先ほどの実績にもありましたように各県によって納付率は相当のばらつき があるわけでございますが、この低調な地域を抱える社会保険事務局あるいは社会保険 事務所を対策強化事務局、事務所として一丸となって重点的な指導、支援を実施をして いくという方針でございます。  6ページは「要因分析を踏まえた新たな個別収納対策の実施」でございます。国民年 金については個人が相手でございますので、未納者一人ひとりに対していわゆる地道な 制度への理解を求め、納付を促していくということが一番重要な収納対策でございます ので、国になって行いました催告状、電話、戸別訪問、この3つの収納対策を更に強化 をして実施していきたいと考えております。  それから要因分析の結果、今回の収納低下は約5割ということで免除制度の改正が あったわけでございますが、この見直しの検討について行っていくということで、新た に多段階免除制度等の創設が考えられるわけでございますが、その中でも柔軟な免除制 度の導入について検討を図っていくということです。それから、現在未納者の中で本 来、申請をすれば免除になる者がいるわけでございますので、その方について制度の周 知を徹底していき、特に失業者の特例の免除については実態から見て余り周知が図られ ていないということもあり、今後周知徹底を図っていくということでございます。  それから、特に若者の納付率が悪いということでございますので、納付しやすい環境 づくりとしてコンビニエンスストアの活用を16年2月から、あるいはインターネットバ ンキングの活用を16年4月から実施をすることにしております。  更に7ページでございますが、口座振替の促進のために口座振替割引制度の導入を検 討をしていくということにしてございます。  それからもう一つ、納付組織についての影響があったという分析から、(3)にござ いますが、「地域に根ざした収納活動の強化」ということで、13年度まで納付組織を活 用していた自治組織に対しまして保険料の収納の協力を依頼をする、あるいは収納業務 の委託を行うといったことを考えていくことにしてございます。それから、制度に対す る信頼感を醸成するため国民年金委員を設置をし、地域に根差した啓発活動を推進して いくことにしてございます。  8ページでございますが、年金制度の意識、役割、あるいは有利さについて正しく理 解をしてもらうということが第一でございますが、そういう中にあって(1)の強制徴 収についても実施をする。これは度重なる納付督励によっても納付義務を果たさない 者、特に十分な所得や資産がありながら納めていない者に対して滞納処分、いわゆる強 制徴収を実施をしていくという方向づけにしてございます。ただ、強制徴収を本格的に 実施するためには所得情報が不可欠でございます。したがって、制度的な対応として法 的整備について検討をするということが第一でございますが、当面14年度の国になって の納付督励結果を踏まえながら滞納処分の対象者について現在検討をしているところで ございます。  それから、制度的対応として今、申し上げました所得、資産に関する情報、それから 未納者に対して社会保険料控除の手続の見直しなど、税制改正においても収納対策とし て位置付けられるものとして、国民年金の保険料の控除の手続について納付証明書の添 付を義務づけるなど、こういうことについて検討、要望をしてまいりたいと思います。  それから、年金広報、年金教育については更に実施強化を図っていきたいと考えてお ります。以上です。 ○宮島部会長  それでは、この国民年金の徴収問題、あるいは加入納付状況等につきまして、何度か これまで議論としては行ってまいりましたが、新しい資料が出てまいりまして、新しい 対策について説明がございましたが、これについても御意見を伺っておきたいと思いま す。どうぞ。 ○岡本委員  感想も含めた意見なのですが、今、国民年金の加入納付状況の御説明、それから主要 な対策の御説明をいただきまして、改めて国民年金の未加入問題が極めて深刻であると いうことを実は痛感した次第であります。  今、保険料の収納事務を最重要課題と位置付けて取り組んでいただいているという御 報告もありましたので、私はその御努力を多とするわけでございますが、やはりどのよ うな立派な社会保障制度をつくりましても、国民の遵法精神が欠如するという実態を放 置することは、国の社会保障の在り方そのものを問われかねないわけで、これから介護 保険あるいは健康保険を含めて社会保障費がどんどんふくらんでいくという事態でござ いますので、私はやはりこれについては最重点課題として今後とも御努力をお願いした いです。  特に、私は先般大阪の年金対話集会に行きましたが、先ほどの御説明の中で大阪が一 番国民年金の納入率が悪く、53%という数字でしたので、私はその会場でもやはり遵法 精神をきちんと持ってこういう社会保障制度を運用していかないといけないということ を申し上げたのですが、今後とも是非広報、教育も含めて御努力をお願いしたいと思い ます。  それからもう一つ、年金改革との関連でございます。支え手を増やすという議論がご ざいますが、私はものの順序としては支え手を増やすにはどうするかということも大事 でありますけれども、やはり国民年金の未納・未加入の問題をどう解決するかというこ とが最優先であって、それをどう解決するかということと同時に、やはり支え手をどう 増やすかという議論をすべきだと考えておりまして、そこの位置付けについては私はき ちんと理解をすべきであろうと思っております。 もう一つは、国民年金の未納・未加 入の問題が解決しませんと、国民年金と厚生年金が共存するという現行制度そのものを 危うくしてしまいます。あるいは、一層厚生年金に入っている皆さん方の不信感を増大 させるという危険も内包しておりますので、そこについてもきちんと私は理解をしてお くべきではなかろうかと思います。  それから、大変な御努力によって中期計画で5年後80%を目指すという御説明があり ましたが、私は現在の状況から言うと極めてチャレンジングな目標であるということは 評価しておりますので、私はそれ自身否定するものではございませんが、やはりあるべ き姿は100%であろうと思いますので、大変努力のいることではございますけれども、 行政の方にも格段の御努力をお願いする必要があるだろうと思っております。  それから、財政が厳しい中で工夫しなければならない問題は徴収のコストの問題であ ろうかと思います。限られた予算の中で一生懸命御努力しておられるということは私た ちはよくわかっておるのですが、やはりいろいろな省庁等々、横の協力関係も深めても らいながら、効率的にコストパフォーマンスを高めて徴収の実を上げていくという御努 力も合わせてよろしくお願いをしたいと思います。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。では、杉山委員どうぞ。 ○杉山委員  個人的な経験も踏まえますと、私の場合、ここ10年余りの間に2号から3号、そして 1号になりまして、それで事業主になったということで2号になるというようにずっと 変遷してきたわけなのですが、そういう意味で言いますと1号の間の納付の困難さもさ りながら、手続のために役所に行くということもなかなか面倒な部分がございました。 資料4の意見の20ページにもその辺りを書かせていただいたのですけれども、やはりそ ういう手続の簡略化について、わざわざ役所に行かなければならないという部分をどう 気軽に手続ができるようになるかということも、合わせて納付と一緒に考えていく必要 があるのではないかと思っております。  それと同時に私の意識が非常に低かったということがあるのかもしれないのですけれ ども、就職するまで年金というものはよくわかりませんでした。就職してからも、お給 料から保険料が天引きされ、第3号になったときには保険料を納付しなくても年金がも らえ、1号になったら納付しなければならなくなるなど、そういうさまざまな状況の変 化があって、やはり自分の問題なのだ、自分の老後を支えるものなのだといった年金自 身に対しての理解を学ぶ機会が少なかったのではないかということを経験から思ってお ります。  それで、再三教育、教育ということを申し上げてまいりまして、こちらでも年金教育 の推進ということで頑張っていらっしゃるということで安心をしているわけですけれど も、もちろん学校での教育もさりながら、生涯教育のような場で社会人に対して折に触 れて学習というか、自分たちの問題として知ってもらうことも必要ではないかと思って おります。この辺りは学校で少し時間をもらって年金のことを教えるということではな くて、もう少し文部科学省なりと一緒になってカリキュラムの中でどのようにこの問題 を伝えていくかということに踏み込んで御検討いただければと思っております。  そういったことがあって納付もするようになると思いますし、一方で先ほども出まし た奨学金の問題なども、私は次世代育成のために是非実施して欲しいと思う次第なので すが、焦付きなどの育英会の現状を見ますと、やはり先に年金に対する理解があってこ そと感じる次第です。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございます。山口委員、どうぞ。 ○山口委員  国民年金の納付実態を聞きますと、職場でも私ども第2号被保険者としては保険料を 毎月だけではなくて納めている中で、未加入者、未納者の実態を知る度に大変憤りを感 じるわけです。それで、公的年金に対する不信、不満というものは世代間というような ことをよく言われますが、現役の中でも保険料をきちんと納付している者と納付してい ない者がいる状況に対しての不公平感というようなところで、保険料未納者が年金に対 してネガティブな姿勢を示しているだけではなくて、現状で保険料を納めている者の中 にもネガティブに考えざるを得ない2号が増えているということを受け止めなくてはい けないと思います。徴収の強化に関する部分は、さまざまな案が出ておりますが、真剣 に取り組まなくてはいけないことだと思います。  ただ、ここに記載されているような不退転の決意、あるいは地道な努力など、本当に そのレベルで徴収強化ができるのかについては疑問を感じています。やらないよりはま しということは言い過ぎかもしれませんけれども、更に国民としての義務という意識づ けについても、意識という大変抽象的なものに対してどうアプローチするか非常に取組 みの難しさがございますから、ここで具体的に出ている強制徴収という手段をまず取る べきだと思います。払ってくださいという意識喚起のレベルではなくて、まず徴収する ためのシステム、仕組みをきちんと作っていくことが重要ではないかと思います。  そういう意味では、難しいと言われている所得捕捉というものを難しいと言っていな いで、実施するという心構えが必要だと思います。今後の公的年金を考える中では非常 に重要だという視点で、是非所得捕捉ができるようなシステムを考えていただきたいと 思います。この空洞化について言及せずに年金改革の議論はできないと、私の職場の周 りでも言われておりますので、この場で申し上げておきたいと思います。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございます。それでは小島委員、翁委員とどうぞ。 ○小島委員  納付率の状況は予想以上に厳しい結果が出ていると思います。そういう意味で、国民 年金の保険料の納付状況を踏まえた場合に、国民年金の制度体系の在り方の根本に関わ る問題だろう。果たしてこれからも保険方式が可能かどうかという、まさにその根本に 関わる問題だと思っております。それについてはこれまで税方式の導入という主張をし ておりますけれども、そういう問題意識を持っています。  それで、細かな質問になりますが、資料3−2の2ページに納付率低下の要因分析と いうことで、1番目に掲げているのが全体の納付率の5割くらいあります免除制度の見 直しですが、この影響が極めて大きいという点です。これは13年度から14年度にかけて 免除制度を厳しくした結果、免除であった人が納付対象者になった場合の納付率が14.5 %と低いということです。これが14年度限りの影響だということで15年度以降はもっと 改善するということだと思いますけれども、この層が飛躍的に改善するというのはなか なか困難だと思いますが、その見通しをどう考えているのか、これは質問であります。  それともう一つ、資料3−1であります。この中の9ページで納付率の変化に対して 細かな分析がされています。9ページの右側の図の一番下に新規資格取得者の納付率の 関係ですが、この中で2号から1号被保険者になった場合の納付率が52.6%、3号から 1号になった場合の納付率が76.2%ということで、24%くらいの開きがあります。この 要因としては、2号から1号になった者の中の失業者等も含まれていると思われます が、その人たちの納付率の低下が考えられると思います。それと、3号から1号になっ た場合ということですが、これは多分夫が年金受給者になり、妻が3号から1号になら ざるを得なかった場合も含まれているでしょう。そういう人たちについては納付率が高 いということが考えられますけれども、この違いをどう分析なり評価しているのでしょ うか。その2つの質問でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。後でお答えいただくとして、それでは翁委員どうぞ。 ○翁委員  多くの方の発言と重なる部分がありますので簡単に申し上げますが、大変緻密な分析 をされて、原因についても大分わかってきましたし、徴収に関しての地道な御苦労にも 敬意を表したいと思っているのですか、やはりこの問題は非常に深刻で、特に若年層の 納付率が20%台であるし、こういった状況は大変深刻な問題だととらえております。そ れで、これが厚生年金財政にも影響してサラリーマン全体にも不公平感を助長するとい うことは非常に大きな問題だと考えておりまして、現行制度の下でやれることは本当に きちんとしていただきたいと思っています。  ただ、何人かの方からも御指摘がありましたが、やはり強制的に徴収する手段は本当 にコストがかかります。やれば徴収コストがどんどん大きくなっていくというイタチご っこのような状況になることを非常に恐れていて、よりインセンティブを付けるような 形での年金制度改革の体系についても議論をしていくことが必要なのではないかと思い ます。例えば、何人かの方が挙げられましたけれども、所得比例年金というもので一本 化していくというようなことで、基礎年金を例えばスウェーデン型のような最低保障の ような形で財源を税にしていくなど、いろいろな考え方はあると思うのですけれども、 そういったことについても未納・未加入の問題を解決する実務的なレベルの対策と同時 に考えていく必要があるのではないかと思います。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、山崎委員、渡辺委員から簡潔にお願いいたしま す。 ○山崎委員  ここで私が発言しないと、山崎の意見が変わったのかと思われますので、変わってお りませんということで申し上げます。  強制徴収は、少なくとも市町村国保でやっている程度のことは中央としてもやるべき だと思います。ただ、ただいまの翁委員の御発言にありましたように非常にコストがか かるわけでございまして、他の施策と連携をとるということも大事だと思います。  そこで持論ですが、例えば生命保険料、特に個人年金保険料の相当な金額をお払いに なっていて国民年金の保険料は未納だというケースも相当あるわけでございますから、 国民年金の保険料が理由なく未納であるという場合については生命保険料控除の適用を 外すということは当然やるべきだと思っております。  更に、車に乗って事故を起こすこともあることを考えると、未納の方々には免許証を 交付しない方が、むしろ親切な施策ではないかと思います。安くない車に乗っていてガ ソリン代を払える人がなぜ国民年金の保険料を払えないのか、わかりません。  更に、パスポートもこういった法律を守らない方には発行しないということがあって いいと思います。  実は連合もかつてこういったことは主張されていたのです。連合の主張で非常に感心 しましたのは、まさに自治体の行政の第一線を担っている組合員もいらっしゃるという ことだと思うのですが、私以上にはっきりしたことを主張されていました。それは、印 鑑証明を交付しないということでございます。  ただ、連合も最近はそういう提案を取り下げられておりまして、年金局長も年金週間 で江戸のかたきを長崎でというのはいかがなものかとおっしゃっておりますから、全く のれんに腕押しということなのでございますが、意見は変わらないということで申し上 げます。○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、渡辺委員どうぞ。 ○渡辺委員  手短に質問中心で申し上げます。資料の3−1の4ページのですが、そこにあります 未加入の問題で、たしか平成7年から職権適用をなさったわけですが、職権適用をやっ たけれどもまだ63万5,000人未加入がいますが、これがよくわかりません。職権適用を すれば、よほど特殊なことがない限りほぼゼロになるのが普通ですが、なぜ63万5,000 人もいるかということが1点です。  もう一点は、未納者は326万7,000人となっていますが、未納者の中には11か月納めて いる人もいれば12か月丸々納めない人もいるという分布を今まで私は聞いたことがあり ません。例えば1か月、2か月滞納するといった人はちょっとした督励によって納める 可能性はあるわけだけれども、確信犯的に職権適用で加入したものの、全く納めない人 には、今お話があった強制徴収が必要だと思うので、その辺の分析や分布がもしわかれ ば教えていただきたいと思います。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、堀委員どうぞ。 ○堀委員  この問題についても意見を出しております。資料4の26ページです。基本的には基礎 年金制度を維持するために収納対策を強化することは重要だということです。  資料の2の方ですが、今の免除制度が果たして負担能力に応じた免除制度になってい るかどうかという点に、疑問があります。社会保険は負担能力に応じた保険料とするべ きで、そこに例が書いてありますが、制度的に見直しをする必要があるのではないかと 思います。  それから、先ほど小島委員が少し触れられましたし、また前に使用者側、労働者側の 御意見がありました基礎年金制度の空洞化、あるいは税方式化についてです。私はこの ような御主張にはいろいろ問題があるのではないかと思っていますが、このことを言う 機会がなかったものですから、「1.基本的考え」の2つ目の「・」のところに書まし たので、後でお読みいただきたいと思います。 ○宮島部会長  ありがとうございます。それでは、事務局の方で小島委員と渡辺委員から質問がござ いましたけれども、それについて今、答えられることであれば少し簡潔にお答えいただ くということで、この議題は終わりにしたいと思います。どうぞ。 ○庁・渡邉年金保険課長  小島委員からの質問でございます。2ページの免除者数の免除制度改正の影響は14年 度限りであるというところでございますが、今回の結果を見ると13年度244万人の免除 者数から133万人が却下されたということになってございます。したがって、免除制度 の見直しは今年度に影響が出ているので、新たな部分についての増加は基本的にはない だろうということでございます。 ○庁・十菱企画課長  資料3−1について小島委員から御質問がありましたのは、9ページの新規取得で2 号から1号になった方と、3号から1号になった方とで納付率が随分違うということで ございます。2号から1号の場合は年齢的に比較的若い方が多いということで、いわば 失業に伴うケースが多いことがうかがえまして、結果として低くなっています。それか ら3号から1号の部分は、御指摘のとおり夫が退職されまして3号から1号になった方 が多いということが要因でございます。いずれにしても、2号から1号の場合の、この 52.6%という数字は深刻でございますので、これは雇用との連携が必要ではないかと思 いまして、ハローワークの業務との連携ということも現在検討を進めている状況でござ います。  それから、渡辺委員の方から御質問のありました4ページの数値における未納者の概 念についてですが、調査の統計上の概念としまして、2年間納付がない方を未納者とし て算出しておりますので、ここに出ている数字はそういう意味で24か月納付がない方で ございます。  しかし、実際に払ったり払わなかったりという方はいらっしゃるだろうということで ございまして、前回の国民年金被保険者実態調査で調べてございますが、納付月数を12 か月納めた人から全然納めない人までの分布がどうであったかということでございま す。平成10年度保険料の納付月数でございますが、これは両極端に大きな分布がござい まして、12か月納めた方は71.8%、1か月も納めなかった方は21.6%、その間はほとん ど0.4%や0.3%といった小さな数字でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。また必要に応じまして少し補足をしていただくことになる かと思いますが、何かございますか。 ○庁・磯部運営部長  2点ほど。杉山委員のおっしゃいました文部科学省との協力でありますが、13年度、 14年度と、本省レベルで協議を続けてきまして、その結果、各県レベルでもこういった 年金教育についての協議会を設けるということで、今年から各県にも通知をさせていた だいております。どういうカリキュラムでやるかなどについては、各県の委員会レベル でやろうということになっております。  それから、山崎委員のおっしゃった生命保険料控除の話です。生命保険そのものは死 亡に備えるという点もあろうかと思いますが、個人年金保険料につきましては御指摘の とおりのようなことで税制要望にも載せて何らかの対応ができないかと思っておりま す。  それから、免許証、パスポートは我々も随分研究しましたけれども、世界的にはなか なか例がないようでありますが、なお今の御指摘を踏まえて検討したいと思っておりま す。 ○宮島部会長  ありがとうございました。今ほとんどの委員の方から御発言がありましたように、こ の問題は、年金制度改革に関して基本的な問題だという認識が非常に強ようございます し、先ほどの今後の対策の中にも税制改正の関連で所得把握を検討するとございますの で、私としてもこれは厚生労働省全省を挙げ、同時に内閣、政府の問題としても考えて もらうように是非お願いしておきたいと思っております。  それでは、本来この議題が終わった後に休みを取るつもりでおりましたけれども、時 間が押しておりまして、各自工夫していただくことにいたしまして、その次の議題に入 りたいと思っております。  既に前回の部会の際に私の方から申し上げておりますし、局長の方からもお話がござ いましたように、本年に入りましてから「方向性と論点」に示されました各論部分につ きまして議論を続けておりまして、追加的に議論すべき課題も含めまして今日議論を進 めてまいりました。もちろんまだ時間的にも十分でない点もございますけれども、そこ で一応論点はそろったものと理解しております。それで、これから9月に年金部会とし て意見をまとめていくという段階に入ってまいりますので、総括的な議論を、意見書と いう形でまとめる作業も念頭に置きながら進めていきたいと思います。  本日は、後ほど事務局の方から説明をしてもらうつもりでございますが、特に今後の 意見の整理につきましてどういう構成にするかということをお願いするつもりでござい ますが、ただ、この2回ほどの部会におきまして特に企業年金、それから遺族年金、離 婚時の年金分割につきまして、質疑なり議論が十分ではありませんでした。この間、意 見書をこの問題について提出された方につきましてはそういう点が特にございました。  ただ、既に皆様方から今回いただきました意見書につきましては、基本的に意見の整 理の方にはまず含めております。それから、今回御提出がございましたかなり分厚い意 見書につきましては、基本的には申し訳ありませんが、これをお読みいただきたいとい うことをまずお願いしたいと思います。  それで、今回の意見書の中には今お話ししましたように企業年金、遺族年金、離婚時 の分割という最近のものに限った意見書もあれば、これまでのすべての論点にわたって 包括的に書かれた意見書もございまして、統一されているわけではございませんけれど も、まずこの数回の企業年金、遺族年金、離婚時の年金分割等の各論のところで意見書 を提出されたにもかかわらず、その際、ご発言の機会がなかったというような方がい らっしゃいましたら、数人の方に限って伺いたいと思っております。いかがでございま しょうか。  ちょっと私が気になっておりましたのは、近藤委員からは随分早く企業年金について の意見書が出ていたのを、ご説明は少し待ってほしいとのことでしたので、近藤委員か ら、よろしければどうぞ。 ○近藤委員  大分前にお出ししたものですが、今日お配りした議事録の中で総論的なことは述べて いまして、18ページの具体的な対応をどうするかというところで幾つか述べています。 1番、2番については当局からの資料の中にもございますし、それぞれ前向きな対応を お願いしたいと思います。  資料の15ページにあります支払保証制度についてですが、これは新しい動きとして、 イギリスにおいてもアメリカにより近い仕組みで導入してはどうであろうかということ が現在行われております。ただ、これが具体的に実現するかどうかはこれからの問題で すけれども、これが新しい情報です。  あとは、企業会計その他についてはここに書いてあるとおりですし、時間もあります ので私から以上にさせていただきます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。では、堀委員どうぞ。 ○堀委員  私は前回休みましたので、詳細な意見を出しております。資料4の21ページ以降です けれども、説明する時間はありませんので簡単に結論だけ申し上げたいと思います。  21ページの遺族年金については、現在の社会経済の状況においてはやはり高齢期ある いは若齢期を含めて必要ではないかということです。  それから、22ページの離婚時の年金分割は基本的に賛成ということで、具体的な仕組 みについても若干意見を述べております。  それから、障害年金は飛ばしまして、23ページの在職老齢年金ですが、私は基本的 に、被用者については、老齢年金として一定年齢の到達を理由として支給するのではな くて、退職による賃金の喪失を理由として退職年金として支給すべきではないかと思っ ています。  それから、在職老齢年金を見直す、特に繰り下げるという案については、私は問題が 多いのではないかと思います。 ○宮島部会長  ありがとうございました。近藤さんから追加をどうぞ。 ○近藤委員  井手、岡本、矢野委員提出の8ページをさっと読んで、疑問があるので教えていただ きたいのですけれども、免除保険料等の凍結問題というところで、凍結解除に伴う過去 期間にかかる負担増というのは何をイメージしているのかを具体的に教えていただきた いと思います。  それから、同じように2004年度制度改正によって負担が増加する部分というのは、 我々が考えると死亡率と利率の問題かなとは思うのですけれども、ほかに何かあるのか を教えていただきたいと思います。  それからもう一つ、これも良い方法があればいいと思っているのですけれども、具体 的に教えていただきたいのは、厚生年金基金連合会について、資産運用による不足が発 生した場合の解消方法を明らかにするということは、具体的にどのようなイメージなの か、教えていただきたいと思います。 ○岡本委員  私は実務的に考え合わせても十分わかっているわけではない部分もございますが、考 え方について御説明しておきます。先ほど御指摘のあった2番目の質問は、予定利率の 引下げや死亡率の改定等の、個々の企業ではどうしようもないような条件を指して申し 上げているということです。  それから第1番目の質問に対してですが、凍結解除時よりも過去の期間にかかる負担 増は、ものの考え方としては、運用がうまくいっていた時代の余剰等についてどう考え るかというようなことも総合的に勘案しながら、自己責任原則というものをどう持つか という幅広い考え方で議論をしていきたいということをここで申し上げているわけであ ります。  それから、3番目の御質問はなかなかいい知恵がありませんで、これからどのように していくかということをお互いに知恵を出し合ってやっていきたいと思っております。 ○近藤委員  最初の凍結解除に伴う過去期間にかかる負担というのは、凍結解除より前の部分も含 めてということですか。 ○岡本委員  そうです。 ○宮島部会長  では、ごく簡単にお願いします。 ○山崎委員  私は今回のポイント制についての意見でただし書きとして、意見を書いているのでお 聞きいただきたいと思います。  ポイント制のポイントというのはサラリーマングループについて言いますと、自分の 報酬の相対的な位置付けをするということですね。平均と同じであれば、あなたは1で す、平均に比べて半分であれば0.5ですということなのですが、平均より多い人はともか く低い人がその通知を受け取ったときに、特に妻が見たときに、賃金が平均より大分低 いということをあえて通知することになるわけで私はそういうことを懸念される方の気 持ちも非常によくわかります。ですから、年金が幾らになるということがわかればいい のであって、その人の相対的な位置については必ずしも通知する必要はないのではない かという気もします。基礎年金についての加入期間は、所得に関係ございませんからお 知らせする意味は十分あると思いますが、今、言ったようなことも私自身、少し気にな るということだけ申し上げておきます。 ○宮島部会長  わかりました。ありがとうございました。では、岡本さんどうぞ。 ○岡本委員  ポイント制の問題なのですが、私もポイント制にこだわる必要は全然ないと思うので すが、国民のニーズ、あるいは現役の従業員の方々のニーズから言いますと、やはり50 歳くらいになってきますと具体的に自分の老後の生活設計を考えますので、できるだけ 早く、少なくとも50歳くらいになれば、迅速かつ的確に個人に対していろいろな情報が 伝えられるということをきちんとしていただくことの方が、より社会的ニーズを満たす と思いますので、その辺については今後とも行政の方で御対応をお願いしたいと思って おります。 ○宮島部会長  基本的なお話と今、山崎さんの方から発言がありましたような内容についてはまだ少 し議論で注意しなければいけない点が出てくるだろうと思います。  それでは、これまでの部会の各論についての補足的な説明はここまでとさせていただ きます。  前回予告しておりましたけれども、これまで提出されておりましたいろいろな意見、 ここでの議論あるいは意見書等を踏まえる形で、各論部分も含めた意見の整理が、事務 局で用意ができているようでございます。意見書の論点の構成という資料と、各委員の 意見を書き込んだ資料と2つございますけれども、まずこの説明につきまして事務局の 方から簡単に、できれば少し重点を絞って御説明いただいて、その後、今後のまとめ方 等について、本日も少し議論に入りたいと思っております。それでは、どうぞお願いい たします。 ○高橋総務課長  それでは、資料5−1と5−2についてでございます。5−2の方は各論点の整理に 沿った各委員の方の御意見でございまして、これについては逐一私の方から御説明は加 えません。資料5−1について、「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理(論点の 構成)」について御説明申し上げます。  昨年の秋、それから5月にそれまで出た論点について一度整理しておりますが、これ までの議論の蓄積を踏まえまして、論点の構成自体もこれまでの議論の進捗に合わせて 構成を変えております。委員の方々からも、幾つかその論点の構成について御指摘いた だいているところでございます。  まず検討項目、それから論点というように並べておりますが、「年金制度改正の基本 的な視点」がまず第1番目でございます。これについては変更はございません。  それから、2番目の「公的年金制度の基本的な考え方・体系」につきましては、まず 1つが「制度の体系についてどう考えるか」ということです。2番目は従前と同じでご ざいますが、「制度の理解を深める仕組み」です。  制度の体系についてどう考えるかということにつきまして、まずこれまでの議論の結 果を踏まえまして整理をいたしますと、現行の2階建て方式(基礎年金+報酬比例年金 )の維持といった方向の意見、それからもう一つは報酬比例年金への一本化といった方 向での意見と大別をされるかと思います。  現行の2階建て方式の維持といった方向の意見につきましては、基礎年金の在り方に つきまして若干意見が分かれていまして、1つは基礎年金を社会保険方式のままで維持 すべきといった考え方、それからもう一つは基礎年金を税方式とすべきという考え方と いった大別でございます。  なお、基礎年金を社会保険方式で維持といった場合についても、現在の基礎年金拠出 金の在り方についてどうするかについて論点がございます。この辺は、従前いろいろ並 べていた論点を並べ換えて整理をしたということでございます。  それから、もう一つの報酬比例年金の一本化につきましてはその方向を目指すべきだ としても、1つは報酬比例年金への一本化を目指す場合に、自営業者の所得把握につい てどう考えるか、それから報酬比例年金に補足的な給付を組み合わせることについてど う考えるかという2つの論点がございます。  それから、制度の理解を深める仕組みという論点でございます。  それから、3つ目の「給付と負担の在り方」につきましては、少し検討項目と論点の 構成を変えておりますが、まず「給付と負担の見直しの方法」につきましては、当然大 きい論点として少子化の進行などの社会経済情勢の変化を踏まえた給付と負担を見直す 方法について、どのように考えるかということでございます。これにつきましては、こ れまでの方式の維持といった方向での御意見と、もう一つは保険料固定方式への転換を 考えるべきではないかといった御意見に分かれております。  それから、保険料固定方式にした場合に、更に幾つか講ずべきことを検討するべきと いう意見ですが、具体的にはそれぞれ資料5−2の中で挙げてございます。  それから、(2)として「保険料負担」につきましては将来の最終的な保険料水準と してどう考えるかと、引上げ方についてどう考えるかという点でございます。  それから、(3)と(3)−2ということで、(3)−2は枝番を振っております が、ここはひと塊のグループなのですけれども、保険料固定方式を取ることが前提です が、では給付の自動調整についてどのようにしていくかという論点で、マクロ経済スラ イドを行うときのスライド調整率についてどう考えるか、それから、年金改定率の下限 についてどう考えるかということです。これは具体的には名目年金額に下限を設ける方 式とするか、あるいは物価を下限とするか、その辺の改定率の下限の問題です。  それから、こういったマクロ経済スライドを取る場合においても、1階の基礎年金と 2階の報酬比例年金について給付水準の調整をどのようにしていくのか、別個にするの か、あるいは同一にするのかといった論点があるということでございます。  それから(3)−2でございますが、「自動調整を行った場合の給付水準」をどう考 えるかという点で、論点は2つございます。保険料を固定し給付の自動調整を行った場 合の給付水準の下限についてどう考えるかということと、自動調整をずっとやっていく 場合に給付水準の下限についてどのように考えるか、それから、現在の受給者に対して 一定の給付水準の調整を求めることについてどう考えるかという論点でございます。  それから、(4)として新しく「スライド制の在り方」という論点を立てておりま す。具体的には物価変動率が賃金変動率を上回るような場合における既裁定年金のスラ イドについてどう考えるかということです。現在は既裁定年金は物価スライドのみの適 用ですが、物価変動率の方が賃金変動率を上回っているような場合についてどう考える かということでございます。  それから、(5)として「高所得者に対する給付の在り方」についてどう考えるか。  それから(6)で、2ページ目にまいりますが、「年金課税」につきましては現在の 公的年金等控除について世代間あるいは世代内の公平を確保する視点からの見直しと、 年金収入に対する課税を強化した場合の増収分の取扱いをどう考えるかということでご ざいます。  それから、積立金につきましては前にございましたが、後ろの方にもう一回整理をし 直しております。  それから、経済前提の問題がございます。  大きな4番目として、「国庫負担の引上げと安定的な財源の確保」という論点がござ いますが、この論点は従前と変わっておりません。  それから、春以降議論してまいりました「支え手を増やす方策等」、あるいは女性と 年金の問題についての論点でございます。まず5の(1)でございますが、「短時間労 働者等に対する厚生年金の適用」ということで、3つの論点がございます。短時間労働 者に対する厚生年金の適用拡大を図る場合の保険料負担の増加などについて、どのよう に考えるか、短時間労働者に対する新たな厚生年金適用基準についてどう考えるか、短 時間労働者への適用拡大を行う場合の給付と負担の在り方についてどう考えるかという ことでございます。  (2)といたしまして就労者の就労促進、それから前回支給開始年齢について若干議 論され、今日提出されております御意見の中でも支給開始の言及がございますので、支 給開始年齢も新たな論点として立てております。また、高齢者の就労促進という観点か ら在職老齢年金の仕組みをどう見直すか、支給開始年齢についてどう考えるかというこ とが論点としてございます。  (3)といたしまして、「次世代育成支援」の問題でございますが、従前と同じでご ざいます。  それから6番の「女性と年金」の問題でございますが、まず(1)の「女性のライフ スタイルの変化と給付設計の在り方」は、具体的な論点は従前と同じでございます。女 性のライフスタイルが多様化する中、年金制度の給付設計についてどう考えるかと、そ れから給付設計を個人単位とした場合に女性の年金保障をどうとらえるかという論点が ございます。  (2)といたしまして、「第3号被保険者制度」についてでございます。これは4案 とそれ以外ということでございますけれども、まず年金分割案についてどう考えるか、 負担調整案についてどう考えるか、給付調整案についてどう考えるか、第3号被保険者 縮小案についてどう考えるか、あるいはほかに考え方はあり得るかという論点でござい ます。これは4案提示しておりますので、個別に御覧いただければおわかりになると思 いますが、これはそれぞれの案について賛否両論が対立をしているという状況でござい ます。  3枚目へ参ります。7番に「遺族年金等」という項目を立てております。これは前回 御説明申し上げているところでございますが、まず遺族年金につきましては高齢期の遺 族配偶者に対する遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給についてどう考えるか、若年の妻 に対する遺族年金についてどう考えるか、支給要件における男女差などについてどう考 えるかという論点でございます。  (2)といたしまして「離婚時の年金分割」、その具体的な在り方をどう考えるかと いう論点がございます。  (3)といたしまして、「障害年金」につきましては障害年金と障害者雇用との関わ り、それから無年金障害者の点についてどう考えるかという論点でございます。  (4)といたしまして、「派遣労働者・失業者」につきまして厚生年金の取扱いをど う考えるかという論点でございます。  8番目は「国民年金の保険料の徴収」で、これは従前と同じでございます。  9番目に、今回2つほど御意見が出ておりますが、「被用者年金の一元化」について どう考えるかということでございます。  それから、「福祉施設等」についてどう考えるかという論点がございます。  それから、11として「企業年金等」ということで、これは6月の御説明のときに提示 を申し上げた論点で、5点ございます。  そのほか、「年金改革と他の社会保障制度改革」についてどう考えるかという論点が ございます。  以上、論点の整理の項目の構成ということでございまして、幅広く御意見をいただき まして構成を変えておりますのは、制度体系の問題と給付の負担の在り方のところでご ざいます。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。もう一つの資料5−2は、資料5−1の構成に沿いまし て、これまでの御意見をそれぞれ収録しているというわけでございます。私のお願いは 先ほど申しましたように、今日は資料5−1の構成、全体のまとめ方についてできれば 御意見を伺って、その上で皆様方には資料5−2を確認していただいて、論点がきちん と整理されていないということがあれば、それに対して意見を述べていただくことと、 もう一つは今日までの議論を含めて改めて全体を読んだ上で、意見書という形で全体を ながめた形でもう一度御意見をいただければと考えております。  最後にその点は改めてまた私か総務課長の方から申し上げますけれども、まず資料5 −1に基づきまして、ただいまの御説明を受けて少し御意見を伺っておきたいと思いま す。これについては質疑というよりも御意見をお願いいたします。 ○井手委員  本日お出しした委員提出資料の中でも述べさせていただいていますが、2ページ目の 「女性と年金」のところで、「女性と年金」の6項目の中に(1)と(2)ということ で、(1)は全体的な論点のようにも見えるわけですけれども、第3号被保険者制度の みが入っております。それで、遺族年金と離婚時の年金分割については遺族年金等とい うことで別のグループに入っているわけでございますけれども、私の意見では、夫婦間 の年金をどのように考えるかということでの一貫性や整合性が必要だと思っておりまし て、ここでこれらを分ける意味自体がよくわかりません。  女性と年金検討会の中でも遺族年金、離婚時の年金分割、第3号被保険者制度はセッ トで考えられていたと思いますし、こういう形で論点を整理すると、現行制度について の問題点に対する解消策が複数出てきて、それぞれの課題ごとに選んだ解決策が、必ず しも整合性がとれるとは限らないという結果になると思います。そういったことを6の (1)でしっかり押さえるという考えがあればよろしいかと思います。第3号はこう考 える、遺族年金はこう考えると、今でも第3号の夫婦の年金分割の案の中に今の遺族年 金を維持するためにはこの案を選ばなければならないというような出方がありましたの で、そもそも遺族年金を見直すということも合わせて検討している中での論点になるべ きだろうという点で、この軸を通すような工夫を論点構成の中で行うことが必要ではな いかと思います。 ○宮島部会長  わかりました。これは初めに論点整理したときも、論点を組み立てるとそこに複数関 わってくる問題が幾つかあって、それを分けるのか、どこかになるべく一つにまとめて おいた方がいいのか、重複を避ける必要があるかなど、同じような問題がそのときに議 論になりました。世帯や夫婦とか、それに関わる基本的な話をしておいた上で論点を分 けるということはあり得ると思います。場所としていいかどうかは、検討させていただ きたいと思います。ほかにいかがでしょうか。  最初の段階で行いました論点整理と違いまして、少し今後の方向づけを考えまして整 理をさせていただいた点がございますが、今のような点がございまして、例えば今のお 話ですと最初の年金制度改正の基本的な視点に、基本的な視点に準ずるような論点を格 上げして書くのもあり得るという気もいたします。  ほかにそういう点はまだ幾つかあると思いますが、一通りごらんになっていかがで しょうか。 ○神代部会長代理  1ページの3の(4)のスライド制のところですが、これは物価変動率、賃金変動率 という言葉で書いているので、上がっている場合と下がっている場合と両方含んで書い ているのだろうと思うのですが、両方で違いがあるのでしょうか。違いがあるのだった ら、どのようにするのか、違わないのなら変動率といった時に、主に考えているのは物 価上昇率が賃金上昇率を上回る場合で、既裁定年金を物価でスライドさせて、現役の賃 金が上がるよりも年金額の上がり方の方が大きくなるという問題を考えているのか、物 価の下落率が賃金の下落率よりも大きい場合は何か歯止めがあったか、その辺ははっき り記憶していないので、ちょっと説明してください。 ○宮島部会長  今の論点整理で挙げた意味合いと問題点を少しクリアにしていただければと思いま す。 ○高橋総務課長  お手元の資料で、5月30日の第19回の部会の資料2の11ページになります。端的に申 しますと、例えば14年ですと物価も賃金も下がっているわけですけれども、賃金の低下 の方が物価の低下よりも大きくなっています。そうしますと、相対的に受給者の方が若 干年金の下落は賃金の下落よりも小さくなります。それから今お話にもありましたが、 同じ資料の11ページでございますけれども、両方ともプラスであっても例えば賃金より も物価の方が上だったら実際にどのようなスライドになるか。通常想定される経済状況 は、どちらかというと賃金、物価の両方ともプラスの方向で変化していて、かつ賃金の 上昇率の方が物価の上昇率より上回っている状況です。これは過去ほとんどずっと経験 されてきた事態であったわけですけれども、最近の経済状況ですと両方ともプラスで、 大体賃金上昇率が物価上昇率を上回っているという状況は必ずしも通常ではなくなって きています。  では、物価スライドと既裁定年金のスライドに関してそういった在り方について、今 の物価スライドだけでいいのかは、論点としてございます。そういう意味では、今回の 論点のテーマで挙げているということでございます。 ○吉武年金局長  典型的には、スウェーデンが年金改革を考えなければならなかった最大の問題は、 1990年代の4、5年ですけれども、賃金よりはるかに物価が上昇し続けたということで ございました。当時のスウェーデンの年金は物価スライドを採用しておりまして、その ことによって公共支出のGDPに対する比率が急激に上昇したというようなことがござ いました。  それは数年で通常の状態に戻ったわけですけれども、物価と賃金に相当な格差があ り、物価が激しく上昇するような状態が数年も続いて、財政全体や、社会保障財政に とっても相当大きなダメージを受けるというような事態が過去に何回かありまして、そ れが10年、20年続くということはどうもないにしても、そういう事態について考えてお く必要があるということではないかと思います。常に想定される事態ではないと思いま すけれども、そういう事態についての対応を考える必要があるか、それとも基本は年金 は物価スライドという原則であればその基本的な原則によって立つと考えるのかという のが一番典型的な例です。 ○小島委員  早目に失礼しますので、論点項目について申し上げます。  積立金の在り方について、運用の在り方、特に市場運用をどう考えるかという点と、 それから還元融資をどう考えるかということも是非論点に入れていただきたいです。今 日は意見を述べる時間はありませんので、今日資料が幾つか出ていますので、それらも 含めて後ほど意見書を出したいと思います。 ○宮島部会長  わかりました。では、岡本委員どうぞ。 ○岡本委員  今、議論がありました物価と賃金ですが、私も今回のいろいろな議論の中で一番不安 を持っているのは、今までの日本の経済の場合は比較的物価が上がりましても為替でイ ンフレが起こるとか、いろいろなインフレ事情によって日本の経済構造の中で生産性が 高まるとか、あるいは生産性を改善することによって吸収できるという一つの社会的、 経済的背景があったのですが、これからはどういう要因で物価が上がっていくのか、少 なくとも賃金はなかなかこれから上がりにくいということになりますと、賃金と物価を どのように今後の10年、20年、日本の経済社会の中で理解していくかということが明確 になりませんと、不安要因を抱えたままの意見書になるので、その辺りについて何か議 論なり、ある程度認識を持っておく必要があろうかと思っております。 ○翁委員  基本的な考え方の2と後との関係について意見を述べさせていただきたいのですが、 2の体系は今いろいろな議論がこの部会のメンバーからも出されているところだと思う のですけれども、ここの制度の体系の在り方の将来像を見据えるということと、それぞ れほかの各論の部分はかなり密接に絡んでいる話だと思います。その意味でも今改革で できることと、今後やらなければならないが、今改革でできるというのは限界があるこ とを分け、きちんとした将来像というか、幾つかの選択肢と時間軸といったものをきち んと明らかにして、例えば年金改革と税制の在り方とか、公的年金そのものの考え方と か、今の基礎年金の在り方などについていろいろな議論が出ているのですけれども、将 来像と今回の改革が密接につながるようなまとめ方に是非していただきたいと思いま す。ですから、2と3が分断されて、2が単なる前置きに終わらない形でまとめていた だくということが非常に重要なのではないかと思います。 ○宮島部会長  大変難しい課題ですね。では、堀さんどうぞ。 ○堀委員  以前にこのペーパーを渡されて意見はないかと聞かれて、意見はないと答えたので信 義に反するかもしれませんけれども、少し意見を述べさせていただきます。  1ページの3の「給付と負担の在り方」についてですが、保険料負担は出ているので すが、一番の問題の給付水準については余り明確には出ていないわけです。また、「マ クロ経済スライド」と「スライド制の在り方」と重複するような感じがします。給付に ついては(3)−2の「自動調整を行った場合の給付水準」という書き方でしか出てい ませんが、給付水準、あるいは給付という大きな枠組みとして出すようにすべきだとい うような感じもします。 ○宮島部会長  わかりました。私はやや大きな流れとしてはこういうような方向でということは事務 局に指示したのですが、今の「マクロ経済スライド」と「スライド制の在り方」辺り は、論点としては議論が分かれたと思いますけれども、まとめ方としてこれでいいかど うかというのはもう少し考える工夫があるように思います。ほかにいかがでしょうか。  今、資料5−1について御意見を伺いましたが、やや順不同で、「女性と年金」の基 本的な考え方のところは少し総括的な部分に入れておいた上で、第3号の問題ですとか 短時間労働、あるいは遺族年金という論点については制度的には別の問題が出てくるけ れども、全体を見通せるようにしたいというのが1つございます。  それから、今日議論がありました年金資金の運用と還元融資の話についても意見書に ございますので、今日のところでは積立金の役割の中でそういう話をすることも考えて おります。もう一つ、後の方の「福祉施設等」というところはもう少し広げていいの で、年金資金の運用ですか、そういうことで論点として整理するということがあると思 います。  それから、先ほど堀委員から出ました「マクロ経済スライド」、自動調整、「スライ ド調整の在り方」については、論点としては非常に細かいことが出てくるのは承知して おりますけれども、まとめ方としては全体にこれもまとめた方がいいような気がいたし ます。  それから、翁委員から発言があったように、2と3をどういう形でうまくつなぐかと いうことで、2の今後の在り方の中で16年年金制度改革をどういう形で位置付けるかと いうことについての論点整理をきちんとするということであろうと思います。  それでは、そういう点は気をつけることにいたしまして、改めてもう一度ここの構成 案については考えさせていただきますが、とりあえず今日この論点の構成案と、今、出 ました御意見を少し皆さんも念頭に置かれまして、資料5−2の方の「年金制度に係る これまでの意見の整理(案)」を御覧いただき、全体を俯瞰した上でさらなる御意見を いただきたいと思っております。  ただ、既に今日資料4の中で井手委員、岡本委員、矢野委員連名の資料、それから今 井委員の提出資料、翁委員の提出資料、杉山委員の提出資料はいずれもほぼ総括的な議 論を念頭に置いた意見書という形で出されておりますので、これはこれで尊重させてい ただきます。もちろん追加があれば結構でございます。ほかの委員の方々におきまして は、これから総括的な意見の整理に入る段階にまいりましたので、今日の資料の5− 1、5−2をもう一度御覧いただきまして、総括的な意見書を改めてお願いしたいと考 えております。それで、これから先、議論をなるべく能率的に進めたいと思っておりま すので、その意見書をいただいた上でこの意見の整理案をもう一度練り直して、それを 元に次回、総括的な議論、そしてまとめに向けた議論に入りたいと考えております。  それでは、本日の議論そのものはこれで終わりにいたしますが、事務局の方から今の 手続きなども含めて少し説明していただければと思います。 ○高橋総務課長  今、部会長からお話がありましたように、総論的部分はかなり出てくるかと思います けれども、追加の御意見などがございましたら資料をまとめる関係がございますので、 大変厳しいかもしれませんが、できれば今月中に事務局まで提出をお願いしたいと思い ます。お忙しいところでございますけれども、よろしくお願いいたします。  それから、次回の開催日程につきましてはまた調整の上、改めて御連絡を申し上げた いと思います。  なお、お食事を用意いたしておりますので、閉会後もしばらくお話いただきたいと思 います。 ○宮島部会長  それでは、本日の会議はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございまし た。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3316)